結論
アソインターナショナルは、歯科医院から注文を受けて矯正装置を作る技工所の会社だ。筆者の結論は、事業の質はよいが、今の値段はその質をおおむね映しており、適正の範囲にあるというものだ。
強みは、40 年以上の取引で積み上げた歯科医院との関係と、フィリピンのマニラに置いた製作拠点にある。ROE は 16% あり、借金は無く、現金と有価証券は 26 億円ある。時価総額の 3 分の 1 にあたる額だ。
一方で、矯正の世界はデジタルに移りつつある。マウスピース型の装置、いわゆるアライナーは伸びるが、AI が設計を担い、参入も増える。数量が伸びても単価は物価ほど上がらない、と筆者は見る。
創業者が資産管理会社と合わせて 65% を持つ。配当は利益の半分を払うが、手元の現金は積み上がりやすい。成長と現金の両方を足しても、今の値段に大きな安全域は見当たらない。
筆者がいちばん気にしているのは、10 年後に「技工所」という仕事がどれだけ残っているかだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の目で見ると、この会社は「よい小さな事業」の部類に入る。患者ごとの一品物を、品質と納期で歯科医に選ばれて作る。借金が無く、ROE は 16% ある。オーナーとして持つ気になれる事業だ。
気になるのは 10 年後の姿だ。作り方がデジタルに移るなかで、手作業の技と人手の規模という強みが、そのまま残るとは限らない。AI と 3D プリンターは、技工所という仕事の価値を下げる方向に働く。
もう一つは資本の使い方だ。利益の半分を配るのは誠実だが、残りの現金は積み上がるだけで、支配株主のもとでは戻り方が読みにくい。
筆者は、事業の質に見合う値段は今の値段の前後と見る。大きな安全域があるとは言えない。
もし値段が大きく下がり、手元の現金を差し引いた事業の値段が利益の 10 倍を切るなら、話は変わる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ方は単純だ。矯正歯科医が患者の歯型やスキャンのデータを送り、会社が装置を作って返す。1 つ作るたびに代金が入る。
売上 42 億円の半分は、手作業で作るアナログの技工物だ。石膏の型から、ワイヤーや樹脂で歯を動かす装置や、治療後に歯並びを保つ装置を作る。21 億円あり、年 5% ほど伸びている。
3 割はデジタルの技工物で、13 億円ある。口腔内スキャナーのデータから 3D プリンターでアライナーを作る。年 8% 伸び、成長の中心だ。
残りの 2 割は商品の販売で、ドイツの FORESTADENT のブラケットや、口腔内スキャナー、3D プリンターを歯科医院に売る。前期は 28% 伸びた。機器を入れた歯科医院は、そのデータで装置を注文してくれる。
作るのは東京とマニラだ。マニラの子会社には 260 人が働き、手間のかかる工程を担う。単体の技工士は 48 人で、協力先を含めると 100 人を超える。海外売上はまだ 6% だが、米国と欧州での開拓を始めた。
単一の事業なので、会社はセグメントを分けて開示していない。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは中くらいだ。矯正の装置は、患者ごとに作る一品物で、歯科医は品質と納期で技工所を選ぶ。長く取引した技工所を変えるのは手間がかかり、ここに切り替えの難しさがある。
利益率の高さもそれを裏づける。営業利益率は 5 年続けて 15〜20% にある。技工所の多くが家族経営の小さな所であるなか、マニラで人手のかかる工程をこなせる規模は強みだ。
弱みもはっきりしている。第一に、仕入れの 3 分の 1 をドイツの 1 社に頼る。第二に、創業者への依存が大きい。第三に、デジタル化で作り方そのものが変わる途中にある。AI が装置を設計し、歯科医院が自前の 3D プリンターで作るようになれば、技工所の出番は減る。
資本の使い方は堅実だが、受け身でもある。借金は無く、余った現金は有価証券や保険積立金に置いたままだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内で矯正を手がける歯科医院は約 2.8 万ある。矯正は保険の効かない自費の治療が中心で、景気の影響は受けるが、大人の審美目的の需要は着実に伸びている。会社は、アライナーの市場が年 1〜2 割伸びると見込む。
作り方は大きく変わりつつある。口腔内スキャナーで歯型を取り、データを送って 3D プリンターで作る流れが広がった。手作業の比率は下がり、装置 1 つにかかる手間は減る。
競争の形も変わる。世界では米国のアライン・テクノロジーがインビザラインで大きなシェアを持ち、メーカーが歯科医院に直接売る。国内でも、技工所の新しい参入や、歯科医院が院内で作る動きが出てきた。AI の設計ソフトは、技工士の経験に頼っていた工程を短くする。
一方で、技工士の不足は深刻だ。若い人が入らず、高齢化が進む。人手を確保できる会社に仕事が集まる面もある。
10 年の見通しとして、筆者はデジタルの数量を 2 倍強、アナログを 2 割減と置く。単価は、デジタルで物価を下回り、アナログは手間のぶんだけ物価並みに上がると見る。
資本政策と M&A
還元の方針ははっきりしている。配当性向 50% を目途とし、株主資本に対する配当率 5% 以上を続ける。前期の配当は 2.6 億円で、性向は 49% だった。
借金は無い。現金 14 億円に、有価証券 5 億円、投資有価証券 4 億円、保険積立金 3 億円があり、計 26 億円になる。利益の半分を配っても、残りは現金として積み上がる形だ。
創業者の阿曽敏正氏が、資産管理会社と合わせて 65% を持つ。少数株主の利益が後回しになる恐れは、会社自身がリスクとして挙げている。大きな買収の歴史は無く、同業のデンタスの株を少し持つ程度だ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
矯正は伸びる市場だ。大人が見た目のために歯並びを直すのは当たり前になりつつあり、アライナーは目立たずに治療できる。会社自身が年 1〜2 割の伸びを見込む。
会社はその波に乗る準備ができている。口腔内スキャナーと 3D プリンターを売り、その機器から届くデータで装置を作る。機器を入れた歯科医院は、自然と取引先として固まる。
マニラの 260 人の拠点は、国内の技工士不足を逆に強みに変える。小さな技工所が人手を確保できずに閉じれば、仕事はこの会社に集まる。
米国の大学や欧州の技工所との提携も動き出した。海外売上が 2 割になれば、数量は国内の人口に縛られない。借金が無く、現金が時価総額の 3 分の 1 あるので、下値は堅い。
これだけの質の事業が、現金を除けば利益の 10 倍台で買える。前期も円安と人件費の上昇を吸収して増益だった。値上げを通す力は、すでに数字で示されている。成長と財務の強さを併せ持つ小さな会社は、そう多くない。
慎重な見方
作り方の変化は、技工所の存在そのものを脅かす。AI が歯並びのデータから装置を自動で設計し、安い 3D プリンターで歯科医院が院内で作れるようになれば、外注する理由は薄れる。
アライナーは、世界ではアライン・テクノロジーが規模で圧倒する。国内でも新しい参入が増え、単価は下がる方向だ。数量が伸びても、利益は伸びにくい。
仕入れの 3 分の 1 はドイツの 1 社で、ドルとユーロで払う。円安が続けば利益が削られる。創業者への依存も大きく、事業の承継は見えない。
現金は時価総額の 3 分の 1 あるが、支配株主の会社で、利益の半分以上を配る気配は無い。現金は株主のものというより、会社の安全網として置かれ続ける。
利益率 2 割の今が山かもしれない。前期の伸びも、商品の販売という利益の薄い部分が支えた面が大きい。技工物そのものの伸びは 5〜8% にとどまる。人手で作る仕事の価値が下がる時代に、人手の多さを強みとする会社に高い値は払いにくい。
どちらに重みを置いたか
両者の言い分は拮抗する。矯正の需要が伸びるのは確かで、会社の利益率と財務も強い。一方で、デジタル化が単価と技工所の役割を削るのも確かだ。筆者は数量の伸びと単価の下押しを中心に置き、確率は中立の 4 割弱を軸に、やや楽観の側へわずかに厚くした。
いずれにしても、価値の幅は今の値段を中心に上下に広く、確信を持てる方向は無い。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/06 期)
確率で加重した株価時価総額 1,817 円179 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 329 円32 億円)。 今の値に割り戻すと 1,088 円107 億円、今との差 +36.3%、 期待の年率 +10.4%(資本コスト 7.8%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 3,122 円308 億円 | 453 円45 億円 | +348.0% | +16.2% | 358 円35 億円 |
| やや楽観 | 22% | 2,547 円251 億円 | 393 円39 億円 | +268.5% | +13.9% | 647 円64 億円 |
| 中立 | 38% | 2,052 円202 億円 | 341 円34 億円 | +199.9% | +11.6% | 909 円90 億円 |
| やや悲観 | 20% | 723 円71 億円 | 251 円25 億円 | +22.0% | +2.0% | 195 円19 億円 |
| 悲観 | 10% | 199 円20 億円 | 171 円17 億円 | −53.6% | −7.4% | 37 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,817 円179 億円 | 329 円32 億円 | +168.9% | +10.4% | 2,146 円212 億円 |
今の株価時価総額 798 円79 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 10% アライナーの国内普及と米欧の開拓が実る 利益 13 億円 · PER 22.5 倍 · 株価時価総額 3,122 円308 億円
大人の審美目的の矯正が当たり前になり、国内のアライナーの需要が 10 年で 3 倍を超える。会社は口腔内スキャナーの販売で歯科医院を囲い込み、そのデータで装置を受ける流れを固める。
米国の大学や欧州の技工所との提携が実り、海外売上は 2 割を超える。マニラの拠点は人員を倍にし、手作業の工程も安い人件費で吸収する。
単価は AI の設計の普及で物価ほどは上がらないが、数量の伸びが上回る。営業利益率は 2 割を超え、ROE は配当性向 50% のもとで 15% 前後を保つ。
手元の現金は配当の残りで積み上がり、自己資本は 2 倍を超える。
- 矯正歯科技工物(アナログ):数量 7.6(製作数(万個・推定))× 価格 3.35(1 個あたりの単価(億円/万個=万円/個・名目))→ 売上 25 億円・営業利益 5 億円。数量 0.9 倍、利益率 20%
- 矯正歯科技工物(デジタル):数量 13.6(製作数(万個・推定))× 価格 3.60(1 個あたりの単価(億円/万個・名目))→ 売上 49 億円・営業利益 11 億円。数量 3.2 倍(国内の普及と米欧)、単価 1.2 倍、利益率 23%
- 商品(材料・機器の販売):数量 34.5(販売点数(万点・推定))× 価格 0.63(1 点あたりの単価(億円/万点・名目))→ 売上 22 億円・営業利益 2 億円。点数 2.2 倍、利益率 8%
倍率:事業の純利益 13 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 43.1% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 25.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 22.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 22.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)15 億円。全体の PER 22.47 倍、時価総額 301 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:アライナーの市場は年 1〜2 割伸びる見込みで、米国と欧州の開拓も始まっている。海外売上はまだ 6% で実績が薄いので 1 割にとどめた。
やや楽観 22% デジタルが伸び、アナログの減りを補う 利益 11 億円 · PER 22.2 倍 · 株価時価総額 2,547 円251 億円
デジタルの装置は年 8% 前後で伸び、10 年で 2.7 倍になる。アナログは少しずつデジタルに置き換わるが、子どもの矯正や保定装置で底堅い。
商品の販売は、スキャナーと 3D プリンターの入れ替えで伸びる。ただし機器は値下がりが続き、利益の柱にはならない。
技工士の人件費は物価以上に上がるが、マニラでの製作と工程の自動化で吸収する。営業利益率は 17% 台を保ち、純利益は 10 年で 2 倍弱になる。配当は利益の半分を払い続け、残りの現金は手元に積み上がる。
商品の販売で入れた機器が、そのまま装置の注文の入り口になる。この循環が回る限り、取引先の歯科医院は増え続ける。
- 矯正歯科技工物(アナログ):数量 7.2(製作数(万個・推定))× 価格 3.35(1 個あたりの単価(億円/万個=万円/個・名目))→ 売上 24 億円・営業利益 5 億円。数量 0.85 倍、利益率 19%
- 矯正歯科技工物(デジタル):数量 11.5(製作数(万個・推定))× 価格 3.54(1 個あたりの単価(億円/万個・名目))→ 売上 41 億円・営業利益 9 億円。数量 2.7 倍、単価 1.18 倍、利益率 21.5%
- 商品(材料・機器の販売):数量 31.3(販売点数(万点・推定))× 価格 0.61(1 点あたりの単価(億円/万点・名目))→ 売上 19 億円・営業利益 1 億円。点数 2 倍、利益率 7.5%
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 39.9% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 23.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 22.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 22.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)15 億円。全体の PER 22.19 倍、時価総額 244 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:過去 5 年の売上は年 6〜10% 伸び、利益率も 15〜20% を保ってきた。その延長の筋書きで 2 割強。
中立 38% 矯正の需要は伸びるが、デジタルの単価が下がる 利益 9 億円 · PER 21.9 倍 · 株価時価総額 2,052 円202 億円
国内の矯正の需要は、大人の審美目的とアライナーの普及で伸びる。デジタルの装置は 10 年で 2.2 倍になる。一方で、アナログは 2 割減る。
デジタルの単価は物価ほど上がらない。設計の工程は AI のソフトで短くなり、新しく参入する技工所との値下げ競争も起きる。米国のインビザラインのような、メーカーが歯科医院に直接売る形とも競う。
技工士の人件費は上がるが、マニラでの製作で吸収し、営業利益率は 16% 台に少し下がる。純利益は 10 年で 1.6 倍ほどになる。現金は配当の残りで積み上がり、自己資本に対する ROE は 12〜13% に落ち着く。
- 矯正歯科技工物(アナログ):数量 6.7(製作数(万個・推定))× 価格 3.35(1 個あたりの単価(億円/万個=万円/個・名目))→ 売上 23 億円・営業利益 4 億円。数量 0.8 倍(デジタルへ置き換え)、利益率 18%
- 矯正歯科技工物(デジタル):数量 9.4(製作数(万個・推定))× 価格 3.45(1 個あたりの単価(億円/万個・名目))→ 売上 32 億円・営業利益 6 億円。数量 2.2 倍、AI の設計と競争で単価 1.15 倍、利益率 20%
- 商品(材料・機器の販売):数量 28.2(販売点数(万点・推定))× 価格 0.60(1 点あたりの単価(億円/万点・名目))→ 売上 17 億円・営業利益 1 億円。点数 1.8 倍、機器の値下がりで単価 1.2 倍
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 36.8% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 22.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 21.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 21.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)15 億円。全体の PER 21.88 倍、時価総額 195 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:数量の伸びは会社の見込みより控えめに、単価は AI の設計と競争で物価を下回ると置いた。最も起こりやすい形として 4 割弱。
やや悲観 20% アライナーが価格競争になり、利益率が下がる 利益 5 億円 · PER 11.0 倍 · 株価時価総額 723 円71 億円
アライナーには、技工所だけでなく海外のメーカーや、歯科医院が自前の 3D プリンターで作る動きまで加わる。数量は 1.7 倍に伸びるが、単価は 10 年でほとんど上がらない。
アナログは置き換えが速く、3 割減る。技工士の人件費は上がり続け、マニラの賃金も上がる。
営業利益率は 12% 台に下がり、純利益は今とほぼ同じ水準にとどまる。ROE は 8% 前後まで落ち、資本コストにほぼ並ぶ。配当は利益の半分のままなので、伸びない利益に合わせて据え置きになる。
アライナーの価格競争は世界ではすでに起きており、日本に及ぶのは時間の問題だ。
- 矯正歯科技工物(アナログ):数量 5.9(製作数(万個・推定))× 価格 3.13(1 個あたりの単価(億円/万個=万円/個・名目))→ 売上 18 億円・営業利益 3 億円。数量 0.7 倍、利益率 15%
- 矯正歯科技工物(デジタル):数量 7.2(製作数(万個・推定))× 価格 3.00(1 個あたりの単価(億円/万個・名目))→ 売上 22 億円・営業利益 3 億円。数量 1.7 倍、単価は上がらない、利益率 15%
- 商品(材料・機器の販売):数量 23.5(販売点数(万点・推定))× 価格 0.55(1 点あたりの単価(億円/万点・名目))→ 売上 13 億円・営業利益 1 億円。利益率 5%
倍率:ROE 9% 前後で k 7.75% にやや勝るだけ。稼ぐ力を純利益÷k で見た 12.5 倍より下の 11 倍。
確率:アライナーは参入が増えており、値下げ競争の兆しはすでに会社の資料に出ている。技工士の不足も続くので 2 割。
悲観 10% 歯科医院が自前で作り、技工所の仕事が消える 利益 2 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 199 円20 億円
AI が歯並びのデータから装置を自動で設計し、歯科医院が院内の 3D プリンターで作る。技工所に外注する理由が薄れ、デジタルの数量は 1.2 倍にとどまり、単価は 15% 下がる。
アナログは 4 割以上減り、手作業の技工士を抱えたマニラの拠点は重荷になる。仕入れ先の FORESTADENT との取引条件が変われば、商品の利益も消える。
営業利益率は 6% 台に落ち、純利益は今の半分以下になる。手元の現金は残るが、支配株主の下で株主に戻る分は限られる。
株主に残るのは、配当で戻る分と、細っていく事業だけになる。
- 矯正歯科技工物(アナログ):数量 4.6(製作数(万個・推定))× 価格 2.88(1 個あたりの単価(億円/万個=万円/個・名目))→ 売上 13 億円・営業利益 1 億円。数量 0.55 倍、利益率 8%
- 矯正歯科技工物(デジタル):数量 5.1(製作数(万個・推定))× 価格 2.55(1 個あたりの単価(億円/万個・名目))→ 売上 13 億円・営業利益 1 億円。数量 1.2 倍、単価 0.85 倍、利益率 6%
- 商品(材料・機器の販売):数量 18.8(販売点数(万点・推定))× 価格 0.50(1 点あたりの単価(億円/万点・名目))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。利益率 3%
倍率:ROE 4% 台で k 7.75% を下回る。稼ぐ力は純利益÷k の 12.5 倍までだが、事業が縮む途中なので 8 倍。余った現金は半分の 10 億円を戻り方 0.75 で足す。
確率:口腔内スキャナーと 3D プリンターが安くなり、AI が装置を設計すれば、歯科医院が院内で作れるようになる。構造の負けとして 1 割を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
矯正歯科技工物(アナログ)
石膏の歯型から手作業で作る矯正装置・保定装置。歯科医院と歯科大学の附属病院から受注する。
| 数量製作数(万個・推定) | 価格1 個あたりの単価(億円/万個=万円/個・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 8.4 | 2.50 | 21 | 4 |
| 10 年後 中立 | 6.7 | 3.35 | 23 | 4 |
取り方:売上 21.05 億円(有報の品目別)。数量は開示が無く、平均単価 2.5 万円と見て 8.4 万個と推定。全社の営業利益 7.23 億円を、手間と単価から利益率 19% と配って推定した。
矯正歯科技工物(デジタル)
口腔内スキャナーのデータから 3D プリンターなどで作るアライナー(マウスピース型の矯正装置)や間接接着の装置。
| 数量製作数(万個・推定) | 価格1 個あたりの単価(億円/万個・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 4.3 | 3.00 | 13 | 3 |
| 10 年後 中立 | 9.4 | 3.45 | 32 | 6 |
取り方:売上 12.78 億円(有報の品目別)。平均単価 3 万円と見て 4.3 万個と推定。利益率は 21% と推定した。10 年の単価は、AI の設計ソフトで工程が短くなり参入も増えるので、物価(1.34 倍)より低く置く。
商品(材料・機器の販売)
独 FORESTADENT のブラケットなどの矯正材料や、口腔内スキャナー・3D プリンターを歯科医院に売る。
| 数量販売点数(万点・推定) | 価格1 点あたりの単価(億円/万点・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 15.7 | 0.50 | 8 | 1 |
| 10 年後 中立 | 28.2 | 0.60 | 17 | 1 |
取り方:商品売上 7.36 億円とその他 0.47 億円の計。平均 0.5 万円と見て 15.7 万点と推定。仕入れて売るだけなので利益率は 7% と推定した。
リスクと懸念
AI と院内製作による技工所の置き換え
AI が装置を自動で設計し、歯科医院が院内の 3D プリンターで作るようになれば、外注の需要は減る。デジタルの単価も下がる。技工所という仕事の価値が下がる、もっとも大きな構造の変化だ。
仕入れ先 1 社への依存
ドイツの FORESTADENT から仕入れの 33% を買う。取引条件の変更や供給の途絶があれば、商品の売上と利益が大きく揺れる。
為替
仕入れの 26% がドル建て、34% がユーロ建てだ。為替は 150 円で固定して考えるが、ユーロ高や現地の値上げを歯科医院に転嫁できなければ利益率が下がる。
創業者への依存と支配株主
創業者が資産管理会社と合わせて 65% を持つ。経営の承継が見えず、余った現金の使い方も少数株主の思いどおりにはならない。
技工士とマニラの人件費
国内の技工士は高齢化で減り続ける。マニラの賃金も上がる。人を確保できなければ、受注があっても作れない。
今後の分かれ目
- 海外売上が 2 割を超える
- 数量が国内の人口に縛られなくなった証拠になり、楽観の側へ確率を寄せる。
- デジタルの技工物の単価が下がり始める(売上の伸びが数量の伸びを下回る)
- 値下げ競争が来た証拠で、やや悲観の側へ寄る。
- 自社株買いや配当性向の引き上げで現金を戻す
- 余った現金の戻り方を 1.0 に上げて見直す。
- 歯科医院向けの院内製作の仕組み(AI 設計と 3D プリンター)が大手から出て広がる
- 悲観の筋書きの確率を上げる。
- 創業者の資産管理会社による非公開化や、同業との統合が出る
- 単独で続く前提が変わるので、提示の条件で考え直す。
見ておくもの
- デジタル技工物の売上の伸びと単価
- 商品(スキャナー・3D プリンター)の販売台数
- 海外売上の比率
- 営業利益率(15〜20% を保てるか)
- 配当性向と現金・有価証券の残高
倍率と資本コストの決め方
倍率は ROE・g・k の式から決めた。中立の事業の ROE は 16% 前後で、残る割合 1/2・g 4%・k 7.75% の式で上限は 15 倍前後になり、その 8 割強に置いた。今の PER 15 倍前後は見ていない。余った現金 20 億円は、現金・有価証券・保険積立金の 26 億円から運転の手元 6 億円を引いた額で、支配株主の会社なので戻り方 0.75 を掛けた。新株予約権の行使は holder_share で別に扱った。設備は小さく、償却の物価の影響は無視できる。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15→22.47 倍・やや楽観 PER 14→22.19 倍・中立 PER 13→21.88 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に寿命 +0.5% で 8.0%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.75%。