結論
SDエンターテイメントは、もとはゲームセンターの会社で、いまは保育所・介護施設とフィットネスクラブを運営している。売上の 8 割がウェルネス事業で、親会社は RIZAP グループだ。
筆者の結論は、今の時価総額は本質価値を大きく上回る、というものだ。売上は 5 年で 4 割増えたが、営業利益は 1 億円に届かない。会社は来期に 3.5 億円まで戻す計画だが、過去 12 年で営業利益率が 4% を超えたのは 2015 年 3 月期だけだ。
保育・介護は国が単価を決める。人件費が上がっても、価格に移せるとは限らない。施設を増やしても、人が採れなければ利益は残らない。
10 年後の中立の純利益は 1.5 億円前後と見る。計画が全部うまくいく楽観でも、今の時価総額に並ぶのがやっとだ。
ただし需要そのものは堅い。見るべきは、施設を増やしながら利益率を上げられるかどうかだ。この点で、会社の過去の実績は心もとない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社の本業は、自分の資本で資本コストを稼いでいるとは言えない。10 年の純利益の合計は自己資本の増分とほぼ同じで、株主に戻る分は小さい。
保育・介護の需要は続く。ただ、単価を国が決め、人件費は市場が決める。両側から利益が挟まれる構造では、規模を広げても取り分が増えにくい。
不動産の賃貸は良い資産だが、全体の利益を引き上げるほど大きくはない。親会社の方針で資本の使い方が決まる点も、少数株主には不利になりうる。
払う値段に安全域がない。楽観でも今の時価総額と同じ程度までしか届かない会社は、買う理由が見つからない。
長く持ちたい事業かと問われれば、答えは否だ。筆者なら、同じ資金を別の場所に置く。単価も人件費も他人が決める事業は、経営者がどれだけ努力しても、成果の多くが外に流れる。
何で稼ぐ会社か
事業は 4 つに分かれる。いちばん大きいのは保育・介護で、売上の 3 分の 2 を占める。保育所の「ディノスキッズ」、通所介護、訪問介護、就労継続支援を、全国 60 の施設で運営している。1 年で 14 施設増えたのは、買収も含めてのことだ。
2 つ目はフィットネスクラブで、15 店。売上は 9 億円弱だ。3 つ目は不動産の賃貸で、4 か所から 1.7 億円ほどを得る。利益率が高く、会社の黒字の土台になっている。
そのほかに、オンラインクレーンゲームが 1 店、コールセンターや EC の受託がある。受託は前期に売上が 9 割増えたが、利益への貢献は小さい。
親会社は RIZAP グループで、議決権の 6 割を持つ。保育・介護もフィットネスも、施設の多くは借りて営む。家賃は売上が落ちても減らない固定の約束で、利益の薄い会社にはこの点が重い。
セグメントごとの利益は開示されない。どの事業が稼ぎ、どの事業が足を引っ張っているかは、外からは見えにくい。投資家は、全体の営業利益と施設数の動きから推し量るしかない。
優良さと弱いところ
優良さは高くない。堀、つまり他社がまねできない強みは、保育と介護では国の認可と地域の定員に守られる程度で、会社ごとの差は小さい。単価は公定価格と介護報酬で決まり、会社が自由に上げることはできない。
資本の効率も低い。過去 10 年の ROE の中央値は 2% 台で、赤字の期が 8 回ある。直近の純利益 2 億円は、本業ではなく一過性の利益で押し上げられたとみる(内訳は未確認)。営業利益は 0.7 億円だ。
強みは、保育・介護の需要が景気に左右されにくいことと、不動産の賃貸が安定した利益を出すことだ。経営は RIZAP の傘の下で、施設の買収で規模を広げてきた。買収した施設を黒字にできたかは、まだ数字に出ていない。
人手が最大の資源である点も見逃せない。資格者を採れる会社だけが、施設を増やせる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
保育は少子化で子どもの数が減り続ける。ただ共働きの増加で、利用する割合は上がってきた。待機児童は大都市の一部を除いて解消に向かい、施設どうしの定員の取り合いに入っている。単価は公定価格で、国が人事院勧告に合わせて賃上げ分を上乗せする。これは追い風だが、上乗せは後追いになる。
介護は高齢者の増加で需要が伸びる。ただ介護報酬は 3 年ごとに改定され、人件費の上昇を十分に反映しない年がある。訪問介護の報酬は 2024 年に引き下げられ、小さな事業者の撤退が増えた。
フィットネスは、チョコザップなど 24 時間の低価格ジムが会員を広げ、従来型のクラブは単価と会員の両方で圧力を受けている。
人手の確保が全分野の最大の制約だ。物価が年 3% で上がるなか、資格を持つ人の賃金はそれ以上に上がるおそれがある。
新しく入る大手や、地域の社会福祉法人との競争もあり、小さな民間会社が単価で勝つのは難しい。会社が選べるのは、どこに施設を出すかと、どれだけ人を確保できるかの 2 つに限られる。地方では保育の定員割れも出始めている。
資本政策と M&A
配当は性向 10〜50% を目安とする方針だが、前期末は無配で、次期も未定だ。親会社が議決権の 6 割を持ち、少数株主への還元に積極的とは言いにくい。
資金は借入で賄っており、前期は長期借入を 2.8 億円増やした。財務制限条項の付いた借入はない。自己資本比率は 38% で、不動産の賃貸が担保の余力を支える。
M&A は保育・介護の施設の買収が中心で、2024 年に横浜の合同会社 TAISETSU を取得した。買収した施設が稼ぐかどうかが資本の使い方の評価を決める。TOB や親会社による完全子会社化は否定できないが、利益が薄く、買う側の動機は弱い。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
保育・介護の需要は景気に左右されず、10 年続く。会社は 1 年で施設を 14 増やし、前期の売上は 2 割増えた。今期は営業利益 3.5 億円を見込み、赤字の中間期を挟んでも、下期に施設の利用が埋まれば黒字化は現実になる。
親会社の RIZAP は運動・食事指導のノウハウを持ち、介護の通所や就労支援に持ち込める。不動産の賃貸は、年 1.7 億円ほどの安定した利益を稼ぐ。人手不足は競合も同じで、採用に成功した会社だけが施設を増やせるなら、規模を持つ会社に有利になる。
本社費は施設が増えても大きく増えず、規模の経済が出る。営業利益率が 5% を超える年も来る。
実際、前期は施設の立ち上げ費用が重かっただけで、新しい施設が成熟すれば利益は戻る。今期の計画は、その成熟を織り込んでいる。
人材の採用が進めば、1 施設あたりの利用者も増え、固定費の重さは薄れる。介護の通所は、利用者を増やすほど利益率が上がる性質がある。親会社の営業網で、紹介も増えるはずだ。
慎重な見方
過去 12 年のうち営業利益率が 4% を超えたのは 1 期だけだ。8 回の赤字は、事業の弱さを示している。直近も売上が 2 割増えたのに営業利益は 27% 減った。施設を増やすほど利益が薄まる構造だ。
保育・介護は単価を国が決め、人件費は市場で上がる。報酬の改定は後追いで、訪問介護の報酬は実際に引き下げられた。人の確保に失敗した施設は、減損の対象になる。
施設の多くは借りており、家賃は固定の約束だ。純利益が前期に 2 億円と出たのは一過性の要因によるもので、本業の稼ぐ力は営業利益の 0.7 億円だ。親会社に資本の使い方を握られ、配当も出ない。借入は増えており、金利が 3.5% 前後に上がれば、薄い営業利益のかなりの部分が利払いに消える。
計画は毎期、期初に強気で置かれ、期末に下方修正されてきた。会社の計画を中立に置く理由はない。
加えて、保育の定員は地方から先に空き始めた。少子化は計画の前提に織り込まれにくく、施設の買収で積み上げた売上は、需要が縮めば減損として戻ってくる。
どちらに重みを置いたか
計画と実績の差が大きく、慎重な側の言い分が強い。確率は中立より下の側に厚く置いた。楽観でも今の時価総額に届く程度で、割高の結論は変わらない。
強気の言い分のうち、保育・介護の需要の堅さは認める。ただ需要が堅いことと、株主に利益が残ることは別の話だ。後者を裏づける実績が、まだない。確率は、計画どおりに運ぶ筋書きを 25% にとどめ、計画に届かない筋書きを 35% に置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 166 円15 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 32 円3 億円)。 今の値に割り戻すと 93 円8 億円、今との差 −65.7%、 期待の年率 −3.1%(資本コスト 8.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 412 円37 億円 | 80 円7 億円 | +82.2% | +6.2% | 39 円4 億円 |
| やや楽観 | 17% | 261 円23 億円 | 51 円5 億円 | +15.7% | +1.5% | 53 円5 億円 |
| 中立 | 40% | 195 円18 億円 | 35 円3 億円 | −14.5% | −1.6% | 92 円8 億円 |
| やや悲観 | 25% | 37 円3 億円 | 12 円1 億円 | −82.0% | −15.8% | 12 円1 億円 |
| 悲観 | 10% | 9 円1 億円 | 0 円0 億円 | −96.7% | −28.9% | 1 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 166 円15 億円 | 32 円3 億円 | −26.7% | −3.1% | 198 円18 億円 |
今の株価時価総額 270 円24 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 計画どおり黒字化が定着 利益 3 億円 · PER 12.0 倍 · 株価時価総額 412 円37 億円
10 年後は保育・介護が 80 施設に増え、売上の 6 割を占める。RIZAP グループの運動・食事指導のノウハウを介護の通所や就労支援に持ち込み、他社より利用率が高い施設を増やす。介護報酬の改定は人件費の上昇を一部反映し、単価は物価をわずかに上回る。
フィットネスは 20 店まで広げ、1 店あたりの会員を安定させる。コールセンターなど受託の事業も 3 割伸びる。本社費は売上の伸びほど増えず、営業利益率は 5% を超える。
この筋書きでも、利益は今の時価総額を正当化する水準にようやく届くかどうかだ。施設の数を増やす速度に人材の採用が追いつくかが最大の条件になる。
賃貸の不動産の利益も物価並みに増え、全体を下から支える。
- 保育・介護・就労支援:数量 80.0(年間の平均施設数)× 価格 0.87(1 施設あたりの年間売上(億円。公定価格・報酬と賃上げで物価並みに上がる))→ 売上 70 億円・営業利益 5 億円。平均施設数 × 1 施設あたり売上 80、単価は今の 1.36 倍、営業利益率 7.0%
- フィットネス:数量 20.0(年間の平均店舗数)× 価格 0.89(1 店あたりの年間売上(億円))→ 売上 18 億円・営業利益 1 億円。平均店舗数 × 1 店あたり売上 20、単価は今の 1.38 倍、営業利益率 7.0%
- オンラインクレーンゲーム:数量 1.0(店舗数)× 価格 0.88(1 店あたりの年間売上(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。1 店 1、単価は今の 1.34 倍、営業利益率 0.0%
- 不動産賃貸:数量 4.0(賃貸の物件数)× 価格 0.57(1 物件あたりの年間賃料(億円。物価並みに上がる))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。賃貸 4 か所 4、単価は今の 1.34 倍、営業利益率 50.0%
- 受託・EC ほか:数量 130(稼働席数の推定)× 価格 0.09(1 席あたりの年間売上(億円。賃金に連動して上がる))→ 売上 11 億円・営業利益 1 億円。稼働席の推定 × 1 席あたり売上 130、単価は今の 1.34 倍、営業利益率 6.0%
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.8% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.0 倍。全体の PER 11.99 倍、時価総額 37 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社計画の営業利益率 6〜7% が 10 年かけて実現するのは、計画を毎期達成してきた実績がない以上、少数の筋書きにとどめる。
やや楽観 17% 施設は増えるが利益率は 4% 台 利益 2 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 261 円23 億円
保育・介護が 72 施設まで増え、フィットネスも 18 店になる。施設が増えるのに合わせて本社の管理も厚くなり、営業利益率は 4% 台で止まる。
保育は少子化で定員の埋まり方に差が出る。駅近の施設は埋まるが、郊外は苦しい。介護は高齢者が増える分だけ需要があるが、報酬の改定は人件費を後追いする。
会社の計画に近い利益は出るものの、資本の稼ぐ力は資本コストを少し超える程度にとどまる。
それでも施設の数が 10 年で 3 割ほど増えるので、売上は 90 億円台になる。
新しい施設は、軌道に乗るまでに 2 年ほど赤字が出る。拡大を急ぐ期ほど利益が薄くなるので、利益率は伸びにくい。
- 保育・介護・就労支援:数量 72.0(年間の平均施設数)× 価格 0.86(1 施設あたりの年間売上(億円。公定価格・報酬と賃上げで物価並みに上がる))→ 売上 62 億円・営業利益 4 億円。平均施設数 × 1 施設あたり売上 72、単価は今の 1.34 倍、営業利益率 6.0%
- フィットネス:数量 18.0(年間の平均店舗数)× 価格 0.87(1 店あたりの年間売上(億円))→ 売上 16 億円・営業利益 1 億円。平均店舗数 × 1 店あたり売上 18、単価は今の 1.36 倍、営業利益率 6.0%
- オンラインクレーンゲーム:数量 1.0(店舗数)× 価格 0.88(1 店あたりの年間売上(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。1 店 1、単価は今の 1.34 倍、営業利益率 0.0%
- 不動産賃貸:数量 4.0(賃貸の物件数)× 価格 0.57(1 物件あたりの年間賃料(億円。物価並みに上がる))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。賃貸 4 か所 4、単価は今の 1.34 倍、営業利益率 50.0%
- 受託・EC ほか:数量 110(稼働席数の推定)× 価格 0.09(1 席あたりの年間売上(億円。賃金に連動して上がる))→ 売上 10 億円・営業利益 0 億円。稼働席の推定 × 1 席あたり売上 110、単価は今の 1.34 倍、営業利益率 5.0%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.1% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 23 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:施設数は増やせるが、人件費の上昇を単価に移すのに時間がかかり、利益率は伸びきらないという筋書きに一定の確率を置く。
中立 40% 薄い利益のまま施設が少しずつ増える 利益 2 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 195 円18 億円
保育・介護は 68 施設、フィットネスは平均 16〜17 店に増え、売上は 80 億円台になる。単価は物価並みに上がるが、人件費も同じ速さで増えるので利益率は 3% 台後半にとどまる。
賃貸の不動産は 4 か所のまま、安定した利益を出し続ける。オンラインクレーンゲームは黒字化せず、小さいまま残る。
会社は 10 年の間にも数度、閉店や減損を出す。利益は積み上がるが、自己資本は薄く増えるだけで、ROE は資本コストに届かない。
賃金と家賃が物価で増える以上、利益率を今より大きく上げる材料は見当たらない。
- 保育・介護・就労支援:数量 68.0(年間の平均施設数)× 価格 0.85(1 施設あたりの年間売上(億円。公定価格・報酬と賃上げで物価並みに上がる))→ 売上 58 億円・営業利益 3 億円。平均施設数 × 1 施設あたり売上 68、単価は今の 1.32 倍、営業利益率 5.5%
- フィットネス:数量 16.5(年間の平均店舗数)× 価格 0.86(1 店あたりの年間売上(億円))→ 売上 14 億円・営業利益 1 億円。平均店舗数 × 1 店あたり売上 16.5、単価は今の 1.34 倍、営業利益率 5.0%
- オンラインクレーンゲーム:数量 1.0(店舗数)× 価格 0.88(1 店あたりの年間売上(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。1 店 1、単価は今の 1.34 倍、営業利益率 0.0%
- 不動産賃貸:数量 4.0(賃貸の物件数)× 価格 0.57(1 物件あたりの年間賃料(億円。物価並みに上がる))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。賃貸 4 か所 4、単価は今の 1.34 倍、営業利益率 50.0%
- 受託・EC ほか:数量 100(稼働席数の推定)× 価格 0.09(1 席あたりの年間売上(億円。賃金に連動して上がる))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。稼働席の推定 × 1 席あたり売上 100、単価は今の 1.34 倍、営業利益率 4.0%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.6% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 18 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:過去 12 年のうち営業利益率が 4% を超えたのは 1 期だけで、直近も営業利益は減った。計画より実績を重く見て、最も確率の高い筋書きに置く。
やや悲観 25% 人材難で利益が削られる 利益 0 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 37 円3 億円
資格者の採用難で賃金が物価より速く上がり、保育・介護の施設は 60 に伸び悩む。単価が賃上げに追いつかず、営業利益率は 4% 台前半に下がる。
フィットネスは競合の低価格ジムに会員を奪われ、閉店が増える。コールセンターなどの受託も単価が上がらない。
本社費は固定のまま残り、営業利益は今とあまり変わらない。利益の大半は借入の利息に消える。
施設の買収で増やした分の利益は、採用費と賃金の上昇で打ち消される。会社は規模を維持するだけで精いっぱいになる。
借り換えの金利は 3.5% 前後まで上がり、10 億円の純負債でも利払いは無視できない。
- 保育・介護・就労支援:数量 60.0(年間の平均施設数)× 価格 0.82(1 施設あたりの年間売上(億円。公定価格・報酬と賃上げで物価並みに上がる))→ 売上 49 億円・営業利益 2 億円。平均施設数 × 1 施設あたり売上 60、単価は今の 1.28 倍、営業利益率 4.5%
- フィットネス:数量 14.0(年間の平均店舗数)× 価格 0.84(1 店あたりの年間売上(億円))→ 売上 12 億円・営業利益 0 億円。平均店舗数 × 1 店あたり売上 14、単価は今の 1.30 倍、営業利益率 3.0%
- オンラインクレーンゲーム:数量 1.0(店舗数)× 価格 0.85(1 店あたりの年間売上(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。1 店 1、単価は今の 1.30 倍、営業利益率 -5.0%
- 不動産賃貸:数量 4.0(賃貸の物件数)× 価格 0.57(1 物件あたりの年間賃料(億円。物価並みに上がる))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。賃貸 4 か所 4、単価は今の 1.34 倍、営業利益率 50.0%
- 受託・EC ほか:数量 80.0(稼働席数の推定)× 価格 0.09(1 席あたりの年間売上(億円。賃金に連動して上がる))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。稼働席の推定 × 1 席あたり売上 80、単価は今の 1.30 倍、営業利益率 2.0%
倍率:ROE 1.6% が k 8.75% 以下なので、伸びても価値は増えず(ためた利益は額面未満)、正当化 PER は 1÷k=12.1 倍。利益が薄く、上限の 7.0 割の 8.5 倍に置いた。
確率:人手不足と報酬・公定価格の据え置きが重なる懸念は強い。保育・介護は人材の確保に失敗した施設から利益を失うため、確率を厚めに置く。
悲観 10% 施設の撤退と減損が続く 利益 0 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 9 円1 億円
報酬の改定が賃上げに追いつかず、保育・介護の施設が採算割れで 52 まで減る。フィットネスは 10 店に縮み、オンラインクレーンも撤退に近い。
賃借の施設は家賃が固定費として残り、閉店のたびに敷金の回収と原状回復の費用が出る。親会社の RIZAP も施設の追加に資金を出さない。
営業利益は賃貸の不動産と保育がかろうじて支える程度になり、利益はほぼ消える。
手元に残るのは、賃貸の不動産と、撤退しきれなかった施設だけだ。
自己資本は積み上がらず、借入の返済が先に立つ。株主への配当は出ない年が続き、親会社も施設の追加に資金を出さない。
- 保育・介護・就労支援:数量 52.0(年間の平均施設数)× 価格 0.78(1 施設あたりの年間売上(億円。公定価格・報酬と賃上げで物価並みに上がる))→ 売上 41 億円・営業利益 1 億円。平均施設数 × 1 施設あたり売上 52、単価は今の 1.22 倍、営業利益率 3.0%
- フィットネス:数量 10.0(年間の平均店舗数)× 価格 0.77(1 店あたりの年間売上(億円))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。平均店舗数 × 1 店あたり売上 10、単価は今の 1.20 倍、営業利益率 0.0%
- オンラインクレーンゲーム:数量 1.0(店舗数)× 価格 0.78(1 店あたりの年間売上(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。1 店 1、単価は今の 1.20 倍、営業利益率 -10.0%
- 不動産賃貸:数量 4.0(賃貸の物件数)× 価格 0.55(1 物件あたりの年間賃料(億円。物価並みに上がる))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。賃貸 4 か所 4、単価は今の 1.30 倍、営業利益率 45.0%
- 受託・EC ほか:数量 60.0(稼働席数の推定)× 価格 0.08(1 席あたりの年間売上(億円。賃金に連動して上がる))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。稼働席の推定 × 1 席あたり売上 60、単価は今の 1.15 倍、営業利益率 0.0%
倍率:ROE 0.4% が k 8.75% 以下なので、伸びても価値は増えず(ためた利益は額面未満)、正当化 PER は 1÷k=12.1 倍。優位を失った後は市場の稼ぎでなく稼ぐ力(純利益÷k)で測り、上限の 7.0 割の 8.5 倍に置いた。
確率:介護報酬・公定価格の改定が人件費を下回り続け、施設の撤退と減損に追い込まれる複合の筋書き。実際に利益が出ない年は多く、確率を 1 割に置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
保育・介護・就労支援
保育所「ディノスキッズ」、通所・訪問介護、就労継続支援の運営。2026/03 末で 60 施設。
| 数量年間の平均施設数 | 価格1 施設あたりの年間売上(億円。公定価格・報酬と賃上げで物価並みに上がる) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 53.0 | 0.64 | 34 | 1 |
| 10 年後 中立 | 68.0 | 0.85 | 58 | 3 |
取り方:保育・介護等の売上 34.0 億円を、期首 46 と期末 60 の平均 53 施設で割った推定。施設ごとの売上と、セグメントごとの営業利益は開示されないので、営業利益は全社 0.71 億円から賃貸・本社費を引いた推定(推定である)。
フィットネス
フィットネスクラブの運営。2026/03 末で 15 店。
| 数量年間の平均店舗数 | 価格1 店あたりの年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 13.5 | 0.64 | 9 | 0 |
| 10 年後 中立 | 16.5 | 0.86 | 14 | 1 |
取り方:フィットネス売上 8.68 億円を、期首 12 と期末 15 の平均 13.5 店で割った推定。営業利益は非開示で推定。
オンラインクレーンゲーム
かつてのゲームセンター事業から残った、オンラインのクレーンゲーム 1 店。
| 数量店舗数 | 価格1 店あたりの年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.0 | 0.65 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 1.0 | 0.88 | 1 | 0 |
取り方:売上 0.65 億円の 1 店。営業利益は非開示で、小さな赤字と推定。
不動産賃貸
保有する 4 物件の賃貸。
| 数量賃貸の物件数 | 価格1 物件あたりの年間賃料(億円。物価並みに上がる) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4.0 | 0.42 | 2 | 1 |
| 10 年後 中立 | 4.0 | 0.57 | 2 | 1 |
取り方:賃貸売上 1.69 億円を 4 物件で割った推定。営業利益は利益率 53% の推定(償却と税金を引いた後の営業利益として)。
受託・EC ほか
コールセンター、EC などの受託・その他。前期に売上が 9 割増えた。
| 数量稼働席数の推定 | 価格1 席あたりの年間売上(億円。賃金に連動して上がる) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.07 | 7 | 0 |
| 10 年後 中立 | 100 | 0.09 | 9 | 0 |
取り方:売上 6.54 億円を、開示が無い稼働席数を約 100 席と仮置きして割った推定。数量の確かな開示が無いため、売上の規模で置いた。営業利益は推定。
リスクと懸念
人手の確保
保育士・介護福祉士・看護師など資格を持つ人の確保が難しく、賃金は物価より速く上がるおそれがある。採用に失敗した施設は定員を埋められず、赤字になる。施設数の伸びがそのまま利益にならない最大の理由だ。
報酬・公定価格の据え置き
介護報酬は 3 年ごとに改定され、人件費の上昇を後追いする。2024 年には訪問介護の基本報酬が引き下げられた。単価を国が決める以上、賃上げを価格に移せない年が出る。
賃借の固定費
施設の多くは借りて営む。売上が落ちても家賃は減らず、閉店には敷金の回収リスクと原状回復の費用がかかる。新リース会計基準が 2028 年 3 月期から適用されると、純負債と自己資本比率の見え方も変わる。
親会社への依存
RIZAP グループが議決権の 6 割を持つ。資本の使い方や、配当・自社株買いの方針は親会社の都合に左右されうる。少数株主の取り分が小さくなる可能性がある。
一過性の利益
前期の純利益 2 億円は営業利益 0.7 億円を大きく上回った。一過性の要因が混ざっているとみる(内訳は未確認)。この水準を基準に会社を評価すると、稼ぐ力を過大に見てしまう。
競合の低価格化
フィットネスはチョコザップなどの低価格ジムが会員を広げ、従来型のクラブは値上げが難しい。小さな会社が 15 店で競うのは苦しい。
今後の分かれ目
- 営業利益率が 2 期続けて 4% を超えたら
- 計画が達成可能になったとして、楽観・やや楽観の確率を上げてよい。ただし本質価値が今の時価総額を上回るには、さらに倍の利益が要る。
- 新しく買った保育・介護の施設が、1 年以内に黒字になったら
- 買収の目利きが実績として出た合図になる。中立の営業利益率を 4% 台に上げる材料だ。
- 介護報酬の改定が賃上げ率を下回ったら
- 施設の利益率は下がる。やや悲観の筋書きの確率を上げる。
- RIZAP が完全子会社化を発表したら
- 買付価格は本質価値の前後で決まり、少数株主の取り分は価格次第になる。分析は役に立たなくなる。
- フィットネスの閉店が続いたら
- 会員減に歯止めがかからない合図で、固定の家賃が利益を削る。悲観の筋書きに近づく。
見ておくもの
- 保育・介護施設の数と、1 施設あたりの売上
- 営業利益率と、期ごとの利益の振れ
- 介護報酬・公定価格の改定の内容
- 借入の残高と、純有利子負債
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や過去の倍率を見ず、ROE が資本コストを超えるかどうかと、式から出した上限の何割かで置いた。中立の営業利益率は過去 12 年の山(2015/03 の 4.4%)を超えない 3.8% にとどめた。リースは今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえ、新リース会計で形が変わることは悲観の固定費で見た。減価償却は取得時の値段のまま、新設の施設分だけ新しい値段で足される。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.81→11.99 倍・やや楽観 PER 10.3→11.43 倍・中立 PER 9.7→11.43 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。