結論
日本ホスピスホールディングスは、末期がんや難病の患者が暮らすホスピス住宅で、訪問看護と介護を一体提供する会社だ。筆者の結論は割安である。ただし、伸びる市場の株だからではない。2026年の診療報酬改定で稼ぎ方が揺らいだ後の利益を慎重に見ても、現在の時価総額は回復余地を十分には映していないからだ。
2025年の売上高は約142億円だったが、営業利益は約8億円に落ちた。翌2026年6月には訪問看護の包括報酬が始まり、入居者一人当たりの医療保険収入が前月から約20万円減少した。会社が家賃などを値上げすると入居者も百人以上減り、5月に黒字だった月次経常損益は6月に赤字へ転じた。通期業績と配当の会社予想も撤回された。これは景気循環ではなく、事業の値決めと費用構造に関わる転機である。
それでも患者の身体を支える看護や看取りの必要性はなくならない。病院から生活の場への移行、スギホールディングスとの共同開発、現場職員の育成は、長い目で施設数と稼働を支える。筆者は、改定前の高い利益率が戻ると決めつけず、利用者数が増えても単価の伸びは物価に負けると考える。加えて、約85億円のファイナンス・リース債務を伴う施設網は、空室が増えると重荷になる。
10年後の中立的な会社価値は約111億円で、10年間の還元を合わせた現在価値は約58億円となる。さらに上下の可能性を会社固有の確率で加重した本質価値は約64億円で、起点の時価総額約39億円を約65%上回る。ただし、利益回復の遅れと再度の制度改定を軽視できず、これは低リスクの割安株ではない。
バリュー投資の観点から
長く保有する株主にとって、この会社には社会に必要とされ続ける事業と、株主利益が必ずしも一致しない難しさがある。患者の痛みを和らげ、最期の時間を慣れた生活環境で過ごせるよう支える機能は、人口が減っても消えない。だが、それが高い投下資本利益率を保証するわけではない。請求の単価は公的制度で決まり、競争が強まれば住宅費も自由には上げられない。
本当の堀は、看護の質が紹介を呼び、既存施設を高稼働に保ち、そこで得た資金から次の良い施設を作れる循環にある。その循環が築ければ、施設の開発ノウハウと医療機関との関係は積み重なる。逆に稼働が足りないのに出店を急げば、賃料の約束だけが残る。過去二年の増資・借入・賃貸契約を伴う拡大が利益を減らした事実は、経営の再投資利回りを厳しく点検すべき理由になる。
筆者が重視するのは、帳簿上の利益より、看護職員を適切に配置し、既存建物の維持と新規施設の準備を賄った後に残る現金だ。2026年の改定を乗り越えれば、看護師の訪問時間の最適化と適正な住宅費の回収でこの現金を増やせる。ただし改善には利用者の納得が必要で、経営陣の計画通りになるとは限らない。設備や賃料の固定費を無視して利益率だけを伸ばす見方も採らない。
現在の株価が映す時価総額は、単年度の採算悪化をかなり重く織り込んでいる。10年を通じて低い利益しか得られない場合には投資価値は小さいが、そこそこの回復と慎重な施設拡大でも、現在の評価からは上振れがある。強い独占的な堀がないことを認めた上で、必要性の持続と支払う値段の差を評価する。持ち続ける条件は、医療の質と財務の健全化が同時に進むことだ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎは、居室を埋めて実際の看護・介護を届けることで生まれる。主力子会社ファミリー・ホスピスが「ファミリー・ホスピス」などの住宅を運営し、末期がんや筋萎縮性側索硬化症など、医療依存度が高い利用者を受け入れる。住宅費・食費などは入居者の自己負担となり、訪問看護は医療保険、訪問介護は介護保険などから収入を得る。医師は地域の在宅医療機関と連携する仕組みで、病院そのものを経営する商売とは異なる。
会計上の報告セグメントは「在宅ホスピス事業」の一つだけである。訪問看護と介護、住宅収入を、開示のない比率で独立事業へ分割して利益を作ることはしない。2025年末には59施設・2,024室を運営し、2026年6月末には60施設・2,059室となった。2025年は既存施設の平均入居率が77.8%、開設から一年以内の施設は49.8%だった。新しい施設は開設当初から職員と賃料が必要なのに、満室になるまで売上が足りない。この立ち上がりの差が利益を大きく左右する。
約9割の施設は賃貸方式であり、自己所有の不動産を積み上げるより少ない初期現金で広げられる。一方、ファイナンス・リースにより将来の賃料支払いが負債として認識される。単に出店数を増やすだけでは、契約に縛られた支出を賄えない。2026年の制度改定後は、看護師の訪問時間や一棟の利用人数ごとに定められた包括報酬の下で、必要なケアと請求可能な時間を両立させる必要がある。
地域の医療機関からの紹介、看護師の定着、入居者と家族の評判が集客に直結する。スギホールディングスとの資本業務提携では調剤機能を併設する共同開発が七施設まで進んだ。店舗型の顧客を囲い込む商売とは違い、患者の在所期間には限りがある。次の利用者の紹介が絶えれば、ブランドだけでは固定費を払えない。
優良さと弱いところ
同社の強みは、最期まで医療的ケアを要する利用者に対応する現場の経験と、地域の紹介経路である。看護師・介護士の採用、教育、夜間配置、在宅医との連携を一度に整えるには時間がかかる。スギホールディングスと調剤を組み合わせる施設づくりは、新規参入者が一施設ずつ築くよりも効率的な可能性がある。しかし、施設そのものに独占的な許認可や特許があるわけではない。
最大の弱みは値決め力である。医療・介護の保険単価は国が決める。しかも2026年に住宅費などを引き上げると、競合施設へ利用者が流れ、月内に百人以上の入居者減が起きた。価格を上げても顧客が離れないという強い堀は、少なくとも現時点では証明されていない。患者本人の切り替え負担は重くても、看取りによる入れ替わりが多く、長期契約による囲い込みは成立しにくい。
資本効率にも黄信号がある。2023年の営業利益は約13億円だったが、2025年は約8億円に縮んだ。その間、自己資本と純有利子負債の合計は大きく増えた。新施設の準備費を含むため一時期だけで増分投資利回りを断定できないが、今は新たな投下資本が資本コストを超えているとは言い切れない。2025年末の自己資本比率は19%程度で、施設のリース負債は通常の純有利子負債よりもはるかに厚い。
AIエージェント代替の人月受託・席課金ソフトの型には当たらない。看護と身体介助、夜間対応をAIが単独で肩代わりすることはできないからだ。請求・記録・シフト作成の自動化は利益改善の手段になるが、患者に提供するケアの品質を犠牲にして訪問時間を伸ばす前提には立たない。堀の評価は「普通」であり、強い堀を前提とする長期の超過収益は認めない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ホスピス住宅市場は拡大中だが、死亡者数が増えるだけで同じ勢いが続くわけではない。会社が2025年に示した民間調査では、同年の市場は644施設・約3万600室、売上高約2,804億円だった。10年前の2015年には99施設・約5,100室、売上高約514億円である。病院で長期療養していた重症患者が、生活の場で看護を受ける方向へ移ったことが主な成長源だ。今後も医療費と病床の制約からこの流れは続きうるが、報酬改定と人手不足が供給側の速度を決める。
日本ホスピスの2025年末の居室数を市場全体に対比するとシェアは約6.6%である。競合のアンビスホールディングスが運営する「医心館」は2025年9月末に約6,700床で、同じ市場を母数にすれば二割超を占める。シーユーシーのホスピス事業も約3,000床規模に育った。アンビス、シーユーシーのほか、PDハウスなど医療対応型の住宅が患者と看護職員を取り合う。各社の集計時点と施設定義は完全には一致しないが、同社は最大手ではなく、有力な中堅である。
2035年の国内市場については、人数そのものの伸びを過大視しない。死亡者数は2030年代後半から2040年前後にかけて高水準となる見通しだが、増えるのは既存の病院から移る需要の割合だ。中立では市場の供給室数が約5万6,000室まで伸び、同社は約3,400室へ拡大しながらシェアをおおむね維持するとみる。強い場合は約6万室の市場で同社が約5,800室を運営し、一割近くを得る。弱い場合は市場が広がっても他社に紹介と採用で負け、二千室余りのままになる。
2026年6月の包括型訪問看護療養費は、この業界にとって値段の決まり方を変える制度である。従来の訪問ごとの請求から、一日の合計看護時間と同一建物の人数に応じた報酬へ変わった。必要な看護を効率よく提供する会社には道が残るが、制度に合わせた記録管理や人員配置を誤れば赤字になる。2年ごとの診療報酬、3年ごとの介護報酬の改定は続くため、名目物価3%がそのまま売上単価に乗ることは期待しない。
資本政策と M&A
資本配分の成績は、出店数ではなく、新施設が十分に稼働した後の現金収益で測るべきだ。2022年にノーザリーライフケアの株式70%を取得し、翌年に完全子会社化して吸収合併した。2025年には11施設を開設したが、立ち上がり費用と管理・採用費の増加が利益を圧迫した。2026年8月には一般の介護付き有料老人ホーム二施設を日本アメニティライフ協会に譲渡する方針を決め、事業の選別へ舵を切った。譲渡価額は非開示であり、売却益は将来利益に算入しない。
2025年3月公表の旧中期経営計画は、2027年に売上高285億円、経常利益33億円、95施設・3,320室を目指した。しかし、2026年の改定で前提が変わり、2026年8月には当年の業績予想も期末配当予想も取り下げられた。2027年以降の新計画の公表時期も未定であり、現時点で有効な売上・利益・ROEの定量目標や、配当性向・DOE・総還元性向・自社株買い額の数字の約束はない。2028年末に向けた既存施設の月次採算改善ロードマップはあるが、新たな連結中期計画ではない。
配当は2024年分が約1.2億円、2025年分が約2.1億円となり、2025年は純利益のかなりの部分を配った。ただし、長期にわたり安定的に利益の半分を戻してきた実績はなく、自社株買いによる大幅な株数減少も確認できない。スギホールディングスとの提携には開発面の利点があるが、買収価格や希薄化を伴う成長策は常に検証が必要だ。新規施設の多くが賃貸でも、リース契約は将来の固定費となる。増配より先に、新制度の下で稼働と財務の安全を立て直すことが望ましい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
終末期の専門的な看護と介護は、今後10年間で社会的な必要性がさらに高まる。高齢者が急増する地域だけでなく、従来は急性期・慢性期病院で長く暮らしていた患者にも選択肢が広がる。ホスピス住宅の居室数は10年で大きく増えたが、病院から生活の場へ移る余地はまだ大きい。全国的な大手は限られており、特定の地域で病院・在宅医・薬局との紹介の仕組みを築いた事業者は、次の施設を開く際の信用を得やすい。
2026年の報酬改定は、適切に看護する会社まで一律に不利にする制度ではない。会社は訪問時間の配分を見直し、看護の生産性を回復させる計画を説明している。住宅費を適正化し、追加の生活支援サービスを提供すれば、医療保険への過度な依存を和らげられる。管理部門を増やした費用も、施設数と稼働が伸びれば収益に対する負担が軽くなる。会社が掲げる既存施設の採算改善策を全面的に信じる必要はないが、その一部が実現するだけでも低い現在利益との比較では大幅な改善になる。
スギホールディングスとの共同開発はすでに七施設へ進み、調剤とホスピスを近づけることで紹介・薬剤管理・開発面の効率が上がる。拡大の速度を落としながら新しい施設の採算を確かめる規律が定着すれば、借入やリースへの依存を抑えて利益を増やせる。今の時価総額は既存施設の価値に対して低く、回復が広がった場合の株主価値の上振れは大きい。
慎重な見方
2026年6月は、この業態の収益が公的保険に強く依存していることを一か月で示した。入居者一人当たり医療保険収入が約20万円減り、住宅費の値上げでは顧客流出が起きた。改定は一時的な病院稼働率の変化ではなく、看護時間と建物人数による新しい報酬体系そのものである。会社が目指す看護師の稼働率回復は、重症患者の安全と職員負荷の間で難しい判断を伴う。職員が離職すれば、生産性どころか品質と紹介件数まで傷む。
病院との関係や看護職の配置は参入障壁ではあっても独占ではない。アンビスの医心館は既に6,000床を超え、シーユーシーも全国に施設を増やしている。競合が低めの住宅費を維持すれば、同社だけが値上げして稼働を回復させるのは難しい。2025年には売上が伸びながら利益が縮み、2026年には会社予想が撤回された。増分投資の採算が確認できない間は、施設の増加を企業価値の増加と同一視できない。
財務面も脆い。自己資本比率は二割弱、普通の純有利子負債に加えて施設のファイナンス・リース債務が約85億円あり、空室となった部屋の費用も消えない。借入金利の上昇より、毎月の賃料を払い続けることが本質的な負担である。診療・介護の次の制度改定でさらに単価が下がるか、現場の採用に失敗すれば、余裕の乏しい株主持分は薄くなる。賃貸物件を整理するにも撤退費用がかかり、帳簿上の自己資本がそのまま換金できるとは限らない。
どちらに重みを置いたか
必要な医療機能が残るという主張には説得力があるが、現在の収益力をそのまま将来に引き延ばすことはできない。2026年の制度変更、入居者流出、予想撤回、リース負担は会社固有の重い証拠であるため、確率は上側25%に対して下側44%と慎重な側へ寄せた。一方、強い側には制度適応と施設拡大による大きな余地がある。期待本質価値は約64億円と現在の時価総額を上回り、現段階では割安と判定するが、既存施設の稼働と現金収益が回復しなければこの判断は変わる。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 1,490 円126 億円(+ 還元の換算額還元の合計 195 円17 億円)。 今の値に割り戻すと 756 円64 億円、今との差 +67.6%、 期待の年率 +15.4%(資本コスト 9.0%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 5,362 円455 億円 | 731 円62 億円 | +1,251.0% | +34.2% | 427 円36 億円 |
| やや楽観 | 18% | 2,959 円251 億円 | 365 円31 億円 | +637.0% | +24.6% | 598 円51 億円 |
| 中立 | 31% | 1,305 円111 億円 | 212 円18 億円 | +236.3% | +14.3% | 470 円40 億円 |
| やや悲観 | 27% | 412 円35 億円 | 45 円4 億円 | +1.3% | +0.1% | 123 円10 億円 |
| 悲観 | 17% | 390 円33 億円 | 0 円0 億円 | −13.4% | −1.4% | 66 円6 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,490 円126 億円 | 195 円17 億円 | +273.6% | +15.4% | 1,685 円143 億円 |
今の株価時価総額 451 円38 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 7% 制度適応と全国展開が並び立つ 利益 36 億円 · PER 12.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 5,362 円455 億円
制度変更を契機に、医療保険だけでなく居住と生活支援の価値で選ばれる会社になる。住宅費の適正化を地域の病院や利用者家族が受け入れ、看護師の配置も安全性を損なわずに改善する。既存施設の入居率は八割台半ばで安定し、新施設も早く立ち上がる。スギホールディングスとの調剤併設開発が全国へ広がり、北海道・三大都市圏・東北・九州で良い候補地を獲得する。
2035年にはおよそ5,800室を運営し、年度平均で4,400人が入居する。国内ホスピス住宅市場を約6万室とすればシェアは一割弱へ伸びる。保険単価はなお公定だが、住宅費と付帯サービスの対価を継続的に得られ、一人当たり売上が高まる。2025年からの管理費先行増加を吸収し、営業利益率も好調期に近い水準を取り戻す。買収に依存せず内部から開設費を賄い、増配を続けながら財務の安全性が改善する。
- 在宅ホスピス事業(看護・介護・住宅費一体):数量 4,400(年度平均の実入居者数(人。延べ入居室数÷365日))× 価格 0.13(入居者1人1年当たりの医療・介護保険、住宅自費等の売上合計(億円/人年))→ 売上 581 億円・営業利益 78 億円。実入居者4,400人は運営約5,800室・稼働率約76%相当。保険価格は抑制されても住宅自費を回復。稼働時13.5%の営業利益率。
倍率:現在の市場倍率を参照せず、資本コスト9.0%、10年より先の名目成長率g=2.0%、堀は普通で超過収益の残存率1/2とする。2035年ROE=24.9%、RONIC=9.0%+1/2×(ROE−9.0%)=16.9%から、正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)=12.60倍。利益の質による追加の割引はしない。拡大期のリース負担は営業利益率と純利益に織り込み、別に負債元本をPER価値から引かない。
確率:2026年の医療保険減収と住宅費値上げの両方を克服したうえで、毎年の新施設開設と高い入居率を維持する必要がある。現在の既存施設入居率約78%と低い自己資本比率を踏まえ、実現頻度は7%に抑える。
やや楽観 18% 採算が回復し施設増加を再開 利益 20 億円 · PER 12.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,959 円251 億円
2026年の報酬改定で受けた損失は数年をかけて縮小する。家賃を一度に上げるのではなく、入居者・家族への説明と追加サービスを改善し、稼働率の下落を止める。看護師一人当たりの適正な訪問時間を増やし、保険請求の漏れを防ぐ運営が軌道に乗る。旧計画ほど急がず、紹介経路を確認できる場所から出店する。
2035年の運営居室は約4,400室となり、年度平均の利用者は3,350人に増える。全国の市場で七%台のシェアを持ち、同業との競争でも中堅の位置を一段固める。施設の新設はまだ利益を薄めるが、既存の成熟施設が稼ぐため全体の採算は改善する。純利益は2025年の水準を大きく上回り、配当を少しずつ厚くできる。スギとの共同開発は出店費用を抑えるが、大型買収による飛躍は織り込まない。
- 在宅ホスピス事業(看護・介護・住宅費一体):数量 3,350(年度平均の実入居者数(人。延べ入居室数÷365日))× 価格 0.12(入居者1人1年当たりの医療・介護保険、住宅自費等の売上合計(億円/人年))→ 売上 412 億円・営業利益 46 億円。運営約4,400室・稼働率76%、年単価は2025年比約15%高いが物価累積には届かない。
倍率:現在の市場倍率を参照せず、資本コスト9.0%、10年より先の名目成長率g=2.0%、堀は普通で超過収益の残存率1/2とする。2035年ROE=20.7%、RONIC=9.0%+1/2×(ROE−9.0%)=14.9%から、正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)=12.36倍。利益の質による追加の割引はしない。拡大期のリース負担は営業利益率と純利益に織り込み、別に負債元本をPER価値から引かない。
確率:住宅費の段階的回復と既存施設の稼働改善には具体策があるが、競合と人員配置に制約がある。制度適応が成功し市場よりやや多く施設を増やす場合に限定し18%とする。
中立 31% 数量は伸びるが単価と利益率は慎重に回復 利益 10 億円 · PER 11.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,305 円111 億円
ホスピス住宅は病院の外で終末期を過ごす場所として定着する。ただし2026年に変わった訪問看護の報酬は、その後も利用者一人当たり単価の上限となる。会社は住宅費を上げられる地域と、競争が強く値上げできない地域を分けて運営する。新施設の開設は選別し、平均入居率が再び七割台半ばに戻るまで投資の速度を抑える。
2035年には約3,400室を運営し、年度平均で2,600人が入居する。国内市場が約5万6,000室まで増えるなかで、シェアは2025年とほぼ同じ六%台を保つ。入居者単価は2025年とあまり変わらず、物価上昇分を国や利用者にすべて転嫁することはできない。それでも成熟施設が増え、開設準備費と本部費の比率が下がるため、営業利益率は2025年を上回る。利益の大半は次の施設と財務の立て直しに使われ、還元は小規模にとどまる。
- 在宅ホスピス事業(看護・介護・住宅費一体):数量 2,600(年度平均の実入居者数(人。延べ入居室数÷365日))× 価格 0.11(入居者1人1年当たりの医療・介護保険、住宅自費等の売上合計(億円/人年))→ 売上 291 億円・営業利益 25 億円。運営約3,400室・稼働率76.5%。年単価0.112億円は2025年比ほぼ横ばいで、医療保険の抑制が物価3%を相殺。
倍率:現在の市場倍率を参照せず、資本コスト9.0%、10年より先の名目成長率g=2.0%、堀は普通で超過収益の残存率1/2とする。2035年ROE=12.7%、RONIC=9.0%+1/2×(ROE−9.0%)=10.8%から、正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)=11.65倍。利益の質による追加の割引はしない。拡大期のリース負担は営業利益率と純利益に織り込み、別に負債元本をPER価値から引かない。
確率:ホスピス住宅への需要は残り、会社に既存の拠点と医療連携の蓄積がある。一方で2026年の単価引下げ・入居者減少と制度改定の継続が確実なため、旧来の高い利益率までは回復しない中心シナリオを31%とする。
やや悲観 27% 値上げで空室が残り成長が鈍化 利益 2 億円 · PBR 1.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 412 円35 億円
2026年の住宅費引き上げが、患者家族の負担感と競合の安い料金によって十分に浸透しない。看護師の働き方も包括報酬の理想通りには変わらず、看護の質を守る人員配置が収益を圧迫する。新施設は初年度の空室が長引き、稼働の弱い施設は撤退や譲渡を余儀なくされる。配当を絞り、契約上の家賃支払いと借入返済を優先する。
2035年の施設網は約2,600室にとどまり、平均入居者は1,900人となる。市場そのものは伸びてもシェアは五%前後へ低下し、アンビスやシーユーシーとの規模差が広がる。住宅費は一部取り戻すが、将来の診療報酬改定も負担となり、一人当たりの実質売上は細る。営業利益率は低いままで、自己資本から大きな利益を生まない。現在の有形資産の残存価値を除けば、事業の超過利益はほとんど評価できない。
- 在宅ホスピス事業(看護・介護・住宅費一体):数量 1,900(年度平均の実入居者数(人。延べ入居室数÷365日))× 価格 0.10(入居者1人1年当たりの医療・介護保険、住宅自費等の売上合計(億円/人年))→ 売上 184 億円・営業利益 9 億円。運営約2,600室・稼働率73%。競合に対する家賃の値決め力が回復せず、名目単価も現状を下回る。
倍率:2035年ROE=5.4%は資本コスト9%未満で、稼ぐ力による価値は小さい。現在の自己資本36.8億円からのれん2.92億円・その他無形資産約0.99億円を差し引いた有形純資産の約32.9億円を悲観側の参考床とする。過去の株価やPBRの底は使わず、現在自己資本×0.95を資産基準価値とし、リース負債を別途二重控除しない。実際の清算時に全額回収できる保証はない。
確率:2026年6月に医療保険収入約20万円減と入居者100人以上減が同時に起きた。2025年の開設費増とリース固定費もあり、改善策の一部が未達となる経路には27%を割り当てる。
悲観 17% 制度と競争に押され施設再編が続く 利益 −1 億円 · PBR 0.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 390 円33 億円
診療・介護報酬の次の改定でも単価の抑制が続く。医療対応の住宅が増える一方、紹介を得られる大手と価格競争になり、同社の新規開設は止まる。高齢者住宅を転用した物件で採算が合わず、運営施設の一部を売却・閉鎖する。看護人材の確保費用と既存の長期賃貸契約はすぐに縮まらず、会社は縮小と再建を繰り返す。
2035年の運営居室は約2,100室にとどまり、年度平均入居者は1,450人となる。国内の市場は成長してもシェアは五%を割り、売上高は物価上昇にもかかわらず2025年の水準を下回る。医療の質を守るための費用を削り切れず、少額の営業黒字も利払いで失われる。配当は停止する。財務的な破綻を前提とするのではなく、損益が低迷したまま既存資産を保有・処分する苦しい再建状態を想定する。
- 在宅ホスピス事業(看護・介護・住宅費一体):数量 1,450(年度平均の実入居者数(人。延べ入居室数÷365日))× 価格 0.09(入居者1人1年当たりの医療・介護保険、住宅自費等の売上合計(億円/人年))→ 売上 125 億円・営業利益 5 億円。運営約2,100室・稼働率69%。再改定・空室・退店費用で株主利益は赤字。
倍率:2035年ROE=-1.7%は資本コスト9%未満で、稼ぐ力による価値は小さい。現在の自己資本36.8億円からのれん2.92億円・その他無形資産約0.99億円を差し引いた有形純資産の約32.9億円を悲観側の参考床とする。過去の株価やPBRの底は使わず、現在自己資本×0.90を資産基準価値とし、リース負債を別途二重控除しない。実際の清算時に全額回収できる保証はない。
確率:制度変更が一度で終わらず、再改定や人員配置規制が重なる可能性がある。実際の2026年6月の月次赤字とリース固定費の厚さを根拠に17%とする。ただし必要な医療の需要は残るため、即時破綻を既定とはしない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
在宅ホスピス事業(看護・介護・住宅費一体)
末期がん・難病の方の居住、訪問看護、訪問介護、付帯の生活サービス。保険請求は医療・介護制度、家賃や食費などは利用者自己負担。会計上は一つの報告セグメント。
| 数量年度平均の実入居者数(人。延べ入居室数÷365日) | 価格入居者1人1年当たりの医療・介護保険、住宅自費等の売上合計(億円/人年) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,320 | 0.11 | 142 | 9 |
| 10 年後 中立 | 2,600 | 0.11 | 291 | 25 |
取り方:2025年12月期の売上141.7億円、営業利益8.5億円は添付factsを正とする。会社の2026年上期資料は2024年末1,609室、2025年末2,024室、既存施設年間平均入居率77.8%、開設1年以内49.8%を開示するが、2025年通期の厳密な延べ入居日数は開示されない。そこで期中に開設した415室と既存・新設の稼働差を考慮し、年間平均入居者を約1,320人と推計し、141.7億÷1,320人=一人年約0.10735億円(月約89.5万円)と逆算した。これは会社開示の医療報酬単価でなく、介護保険と家賃を含む連結全体の平均である。2026年6月の月次売上11.24億円、同月末入居者1,393人から見た参考月額約80万円との差は包括報酬移行と自己負担引上げ後の退去による。医療・介護・住宅の個別売上内訳はないため架空の別セグメントに配分しない。2026年以降の料金の物価未満の伸びは、新たな包括報酬と次期改定による単価抑制を想定する。
リスクと懸念
包括型訪問看護療養費と次期報酬改定
2026年6月の制度改定は入居者一人当たり医療保険収入を前月比約20万円押し下げた。報酬は人数と訪問時間の区分で決まり、必要な看護の質を保ちながら時間だけ増やす余地は限られる。診療報酬は原則二年ごと、介護報酬は三年ごとに見直される。将来の引下げを物価上昇で埋めることはできず、単価と利益率の双方に尾を引く。
住宅費の値上げと入居率の背反
値上げができる商売なら物価上昇は売上の追い風になるが、同社では2026年6月の料金見直し直後に百人以上の入居者が減った。既存施設でも高い入居率が保証されず、競合が安い家賃を続ければ値上げ分を空室で失う。介護を必要とする家族は住宅費と医療品質を同時に比較するため、看護の質だけで価格競争を免れない。
リース債務と空室時の固定費
2025年末の純有利子負債約27億円だけで財務負担を測ってはいけない。施設のファイナンス・リース債務は約85億円あり、家賃に相当する固定支払義務が続く。会社説明ではリース由来の利息は市場金利の変動を直接受けにくいが、空室が増えても減らないことが問題である。撤退時の解約条件や再賃貸費用が想定以上なら自己資本が急速に減る。
看護・介護職の確保と品質事故
看護師や介護士の勤務体制を、保険報酬の時間区分だけで設計することはできない。重い疾患や夜間の急変に対応するには余裕ある職員配置が必要だ。賃金が上がる一方で保険単価が据え置かれれば採用と利益率が衝突する。ケアの品質低下や不適切な請求が起きれば、自治体の行政指導と病院からの紹介減少が連鎖しうる。
市場シェア喪失と競合の資本力
アンビスの医心館は2025年に約6,700床、シーユーシーもホスピス施設を約3,000床規模まで増やした。看取り需要は大きいが、同じ地域で病院の紹介と看護人材を取り合えば、施設数を増やしても顧客が増えるとは限らない。とりわけ新たな東北・九州エリアで入居まで時間がかかれば、管理費と家賃だけが先に発生する。
増分投資の収益性と株式希薄化
2023年から2025年にかけて売上は増えたが営業利益は減り、投下資本は大きく膨らんだ。新規施設の赤字が解消するか未確認のままM&Aや出店を続ければ、簿価の成長が株主利益につながらない。会社は短期の株式発行は不要と説明する一方、自己資本比率の健全化も課題と認めている。将来の増資や条件の悪い資産譲渡が既存株主の取り分を薄める。
悲観側の資産価値の回収不能
悲観側の参考床は現在自己資本からのれんなどを引いた約33億円である。しかし多くの施設は借りた不動産であり、帳簿のリース資産を自由に売却できるわけではない。解約金、原状回復費、入居者の転居支援費が重なれば、実際の清算価値は大幅に低くなる。継続企業の資産価値と即時清算の現金価値は区別する必要がある。
今後の分かれ目
- 既存施設の平均入居率が80%を継続的に超え、値上げ後も紹介患者数が増えたら
- 住宅費の値決め力が一部実証されたと判断する。中立の平均利用者数と利益率を引き上げ、楽観側への確率配分を増やす。
- 包括報酬下の一人当たり月次売上と月次経常損益が2026年末までに回復しなかったら
- 会社が掲げた採算再建の時期が後ずれしたとみなし、事業単価と2027~2029年の利益を減らしてやや悲観側に寄せる。
- 新施設の開設後12か月の入居率が50%前後から改善せず、施設網だけ増えたら
- 資本コストを超える増分収益が生まれていないと判断する。新規施設の数量見通しを削り、追加のリース固定費を利益率に反映する。
- 会社が正式な新中期計画を公表し、売上・営業利益・ROE・株主還元の目標と実績が整合したら
- 前提を失った旧計画でなく新しい実行データを基準に、施設数と稼働、還元総額の10年見積りを更新する。
- 既存施設のリース負債が縮小し、有利子負債と合わせた固定支払いに対する営業キャッシュ創出力が改善したら
- 財務面の破綻余地が減る。悲観確率と資本コストの借金要因を見直すが、帳簿の自己資本だけで堀を認定しない。
- 診療報酬または介護報酬が再び厳格化され、包括報酬の算定要件が不利になったら
- 中立の一人当たり単価を物価想定と切り離して下げる。住宅費での穴埋めが難しければ悲観側の筋書きの重みを増す。
- スギホールディングスとの共同開発の入居率が単独施設を上回り、質の高い紹介が定着したら
- 追加施設の立ち上がり損失が小さくなる裏付けとし、数量のシェア見通しと増分投資利回りを引き上げる。
見ておくもの
- 月次の平均入居者数と全施設入居率、既存・新規施設の稼働率の差
- 医療保険・介護保険・住宅費を含む一人当たり月次売上とその内訳の開示
- 包括型訪問看護の区分別訪問時間、請求可能時間割合、職員一人当たり適正訪問時間
- 月次経常損益、営業キャッシュフロー、家賃・リース料支払い後の自由現金
- 新規開設居室数・12か月後の稼働・撤退施設・既存施設への出店競合
- 借入金残高・リース債務・施設当たり賃料の推移、出店時の契約年数
- スギホールディングス共同開発施設数と単独施設との差
- 診療報酬・介護報酬の次の改定と新中期計画の正式公表、配当予想の再開
倍率と資本コストの決め方
2026年10月22日の株価459円と発行済株式から自己株を控除した8,482,700株は、今の時価総額約38.94億円を計算する最後の比較にだけ使った。2025年の売上高と営業利益を起点に、会社が報告する単一セグメントの年度平均入居者数×医療・介護・住宅費の名目年単価で2035年の収入を積み上げた。過去株価や同業PERは価値の倍率に使用していない。資本コストは基本7.5%と固定賃料を含む負担などの品質+1.5%から9%。以後の名目成長率2%、堀は普通でRONICへの超過利回り残存1/2として、楽観~中立は正当化PERの上限そのものを使った。床は過去のPBRでなく、現在自己資本からのれん等を控除した有形純資産の参考値とした。ファイナンス・リース会計と2027年以降の新リース会計適用による表示差は、現金賃料と利益を二重控除しない。株価を半値・倍値にしてもこれらの事業仮定と倍率は変えない。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に品質要因+1.5%を加算。報酬改定と経営失敗の個別不確実性は利益率および確率へ反映し、追加の二重罰は加えない。
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読んだ資料
- 日本ホスピスホールディングス 2026年12月期第2四半期決算説明資料(2026年8月14日、報酬改定と月次損益、施設稼働)
- 日本ホスピスホールディングス 2026年12月期第2四半期決算FAQ(2026年8月14日、業績予想・配当撤回、リース、提携)
- 日本ホスピスホールディングス 2026年3月25日 事業計画及び成長可能性に関する事項
- 日本ホスピスホールディングス 2025年12月期第2四半期決算説明資料(KPMG推計の市場規模・居室数)
- 2025年3月3日公表 中期経営計画2025~2027(撤回前の当初数値)
- 厚生労働省 令和8年度診療報酬改定について(包括型訪問看護療養費・2026年6月適用)
- 日本ホスピスホールディングス 2025年12月期有価証券報告書(事業・固定費・賃借方式・配当方針)