結論
フィットイージーは、24時間営業のジムにゴルフ、サウナ、セルフエステなどを組み合わせ、フランチャイズを中心に全国展開する会社である。筆者の結論は「適正」だ。成長の余地は大きいが、現在の時価総額約451億円に対し、10年先の事業価値と株主還元を確率でならした現在価値は約479億円にとどまり、十分な安全域があるとは言いにくい。
事業の勢いは確かだ。2025年10月末の238店舗、約22.5万人から、2026年9月末には308店舗、約31.1万人へ拡大した。2026年10月期の会社予想も売上高143億円、営業利益35億円と、前年から大幅な増収増益を見込む。健康志向の広がりに加え、運動以外の目的でも通いたくなる店舗づくりは、従来型のジムとの差別化につながっている。
ただし、売上の質は見かけほど安定していない。2025年10月期の売上高97億円のうち、約61億円は加盟店への設備卸売や店舗譲渡などの開発関連収入だった。会員が毎月通って生まれる継続収入より、新店舗を開く際に生まれる収入のほうが大きい。出店が減速すれば、会員が増え続けても全社売上は伸び悩みうる。
10年後の中立的な姿は、全国約1,000店舗のチェーンとして、継続的な加盟店収入を収益の柱に育てた会社である。一方、低価格ジムとの競争、加盟店の採算、店舗賃料と設備更新費の上昇を見過ごせない。成長企業としての魅力は認めるが、長期保有の判断では、新規出店の速さよりも、既存店が何年も利益を生み続けるかを重視したい。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主にとって、この会社の魅力は毎日の生活に入り込めることだ。運動する場所は10年後も必要とされる。近所に使いやすい店舗があり、ゴルフやサウナも一緒に楽しめるなら、会員は料金だけでなく習慣や利便性で通い続ける。その積み重ねが地域内の競争力になる。
しかし、需要がなくならないことと、特定の会社が高い利益率を保ち続けることは別だ。マシンやサウナは競合も設置できる。会員は引っ越しや生活の変化で退会し、加盟店は5年ごとに契約を見直せる。値上げを続けても利用者が残るという実績が十分でない以上、現在の高い利益率を永久のものとは扱わない。
オーナー利益も慎重に見るべきだ。フランチャイズ方式は直営で全国に設備投資するより資本効率が良い。ただし、本部は加盟店に機器を卸し、会費を回収し、物件を転貸している。売掛金や敷金が膨らむ間は、損益計算書の利益ほど現金を自由に使えない。2025年には営業活動で稼いだ現金を投資支出が上回った。新規出店が減速してからもロイヤリティと現金が増えるかが、本物の優良さを測る試験になる。
再投資の判断では、出店数だけでなく一店舗当たりの会員数と加盟店の継続年数を重視したい。増分の投下資本利回りが資本コストを十分に上回る地域には投資すべきだが、競争が厳しくなった地域では出店を止め、株主に現金を返す規律が必要だ。計画の成長をある程度認めても、今の株価に大きな安全域はない。事業を所有する魅力と、現在の価格で所有する魅力を区別したい。
何で稼ぐ会社か
収益の仕組みは、直営店、加盟店の継続運営、加盟店の開発という三つに分けると理解しやすい。会社の開示上は「フィットネスクラブ運営事業」の単一セグメントである。しかし、10年先の利益を考えるには、毎月入る会費やロイヤリティと、開業時だけ発生する設備販売を分ける必要がある。
直営店では、会社自身が店舗やマシンに投資し、会員から月会費を受け取る。2025年10月末時点で23店舗、会員は23,948人だった。24時間営業と他店舗の相互利用に加え、店舗によってシミュレーションゴルフ、サウナ、酸素ルーム、ラウンジなどを提供する。設備や賃料の負担は重いが、利用者の行動や好みを把握し、新サービスを試す場所にもなる。
加盟店の運営収入は、本部として最も大切な稼ぎである。2025年10月末の加盟店は215店舗、会員は200,792人だった。加盟店が店舗投資やスタッフ費用を主に負担し、本部は会員数に応じたロイヤリティ、システム利用料、広告負担金、会費回収などの代行手数料を受け取る。契約期間は原則5年間で自動更新があるが、会員や加盟店が永久に残る契約ではない。
一方、開発収入には加盟金、トレーニングマシンの卸売、開業関連サービス、直営店の加盟店への譲渡が含まれる。2025年10月期はこの区分が売上の約63%を占めた。加盟店が増えるほど開発収入と将来のロイヤリティが同時に増えるが、両者の利益の持続性は異なる。前者は出店の波を受け、後者は既存店舗の会員数と採算に支えられる。
さらに、加盟店物件の転貸借や会費の集中回収を本部が担うため、単純な商標貸与ビジネスではない。加盟店の資金繰りが悪化すると、家賃や売掛金の負担が本部にも及ぶ。新規出店の見栄えより、加盟店の回収状況と営業キャッシュ・フローを追う必要がある。
優良さと弱いところ
強みは、通う理由を一つに限定しない店舗づくりと、東海地方で積み上げた出店経験にある。2025年10月末の238店舗のうち137店舗が東海地方に集中していた。商圏ごとの会員需要を予測し、近隣店舗の相互利用を広げることで、地域内の認知度と使い勝手を高めている。全国一律に強いブランドというより、地域ごとに強みを築いてきた会社と考えるべきだ。
加盟店が増えるほど本部の広告、会員管理、会費回収、仕入れ交渉の規模が大きくなる。加盟店側もブランドと運営の仕組みを一から作る必要がなく、出店時の負担を減らせる。この関係には一定の規模の利益がある。ただし、退会率が極めて低いことや、値上げを繰り返しても会員が離れないことを証明する長期の定量開示はまだ乏しい。したがって、堀は存在するが、強固な独占的優位とまでは評価しない。
利益率と資本効率は魅力的だ。2025年10月期の営業利益率は約24%で、ROEも34.5%だった。2024年から2025年にかけての増分利益と、自己資本から純現金を引いた資本の増加を粗く比べると、増分資本に対する税引後利益の利回りは2割台となる。ただし、出店費用と売上回収には時間差があり、増資も行われたため、この数字が新店の永続的な投資利回りを証明するわけではない。
弱点は、急成長の途中であることだ。2025年10月期は純利益15億円に対して営業キャッシュ・フローが約14億円、投資キャッシュ・フローが約17億円の支出だった。売掛金や保証金、設備への投資が膨らみ、利益がそのまま自由な現金になってはいない。設備更新が必要な実店舗事業では、この違いを軽く扱えない。
AIエージェント代替の分類は非該当である。会員が買っているのは身体を動かす施設と、その場での体験であり、人月販売や席課金の業務ソフトではない。AIによる運動指導が普及しても施設そのものは代替できないが、アプリの機能だけを長期の堀と評価することもできない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のフィットネス市場は拡大している。帝国データバンクは2024年度の市場規模を約7,100億円と見積もった。健康志向の高まりと低価格ジムの普及が利用者の裾野を広げた一方、建設費の高騰と顧客獲得競争で、企業の採算には大きな差が生じている。市場が伸びても、すべての運営会社が利益を増やせるわけではない。
競争相手は明確だ。エニタイムフィットネスは2026年に国内会員120万人を突破し、同年10月には1,300店舗に達した。chocoZAPは低価格と小型店の大量展開によって、新たな利用者を市場に呼び込んだ。さらに、女性向けピラティス、パーソナルジム、総合型スポーツクラブも、同じ家計の運動・健康支出を奪い合う。フィットイージーの2026年9月末の会員約31万人は急成長を示すが、最大手との差はなお大きい。
2025年10月期の期中平均会員数と月会費の仮定からチェーン全体の会費を概算すると、年間約150億円台となる。市場規模7,100億円との比較では、会費市場に対する存在感はおおむね2%台という粗い目安になる。ただし、年度と市場の定義が一致せず、加盟店の会費は本部の売上高にそのまま計上されないため、会社の売上高97億円を市場規模で割ってシェアと呼ぶことはしない。
10年先には、高齢化が運動需要を支える面と、人口減少が商圏の利用者を細らせる面が並存する。業界全体の会員数が伸びても、出店が集中した地域では一店舗当たりの会員数が下がりうる。筆者は国内の市場全体が過去のような速度で成長し続けるとは考えない。フィットイージーの成長の中心は、市場自体の拡大よりも、既存競合からの会員獲得と新しい地域への出店だ。
2035年の中立ではチェーン約1,000店舗、年間平均会員約91万人を想定する。これは国内のフィットネス会員市場で1割前後の存在感を目指す姿であり、現在の地位からみれば十分に挑戦的である。価格は物価上昇におおむね沿って上がるが、低価格競争があるため、実質的な大幅値上げは期待しない。開業関連の売上は店舗純増の減速とともに比重が下がり、会員に連動する運営収入が主役になると見る。
資本政策と M&A
会社は2025年12月に中期経営計画を上方修正した。2028年10月期の目標は売上高240億円、営業利益56.5億円、当期純利益38億円である。年間165店舗の新規出店、期末会員56万人、ROE30%以上も掲げた。2026年10月期の予想はその後さらに引き上げられ、売上高143億円、営業利益35億円となった。目標の具体性は評価できるが、2035年まで同じ出店速度が続く約束ではない。
株主還元は2026年10月期から年間配当性向30%程度に引き上げ、年2回の配当に変更した。DOE、総還元性向、自社株買いの金額について、確認できた資料に数値目標はない。2026年9月には株主優待も拡充した。優待の実際の会社負担額は開示されていないため、株主数と利用率に応じて年間おおむね1億円前後までの費用を想定し、各筋書きの累計還元に概算額を含めた。
資本配分では、出店投資と株式の発行に注意が要る。2025年の市場変更時には新株発行で約17億円を調達した。2026年9月の約200万株の売出しと追加売出しは既存株主による売却であり、会社の新たな資金調達ではない。創業者側の共同保有比率は売出し後に低下したが、なお大株主として影響力を持つ。現在までに、大型買収の成功実績を基に将来の買収価値を加算できる材料は乏しい。
今後の資本配分で最も大切なのは、加盟店の数を増やすために回収不能な債権や過大な賃貸借契約を抱えないことである。営業利益の伸びを現金の増加に変えられれば、配当の余地は広がる。一方、出店が鈍ったときにも無理に設備を販売して成長を維持しようとすれば、株主の資本を傷つけかねない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
この会社は、まだ全国展開の初期にいる。2025年末の238店舗から2026年9月末には308店舗へ伸び、会員数も31万人を超えた。しかも既存店の会員数も増えており、新店を増やしただけの成長ではない。複数店舗を相互利用できる仕組みと、ジム以外のサービスの組み合わせは、低価格のマシン特化型ジムと正面から料金競争をしないための工夫になっている。
2028年10月期に会社が掲げる会員56万人、新規出店165店舗という目標が実現すれば、加盟店の運営収入は一段と厚くなる。ゴルフ、サウナ、ラウンジ、健康管理など複数の利用目的を持つ会員が増えれば、施設の稼働と会員継続率が改善する。開店時には機器卸売で資金を得られ、その後も会員数に連動する手数料を受け取れる。加盟店が初期投資を負担するため、本部は直営店だけで拡大する競合より資本を効率的に使える可能性がある。
独自の会員管理データ、商圏分析、運営の標準化も規模の拡大とともに価値を増す。2026年にはAIを利用した運動データ管理に関する特許の進展も開示した。機能そのものは模倣されても、店舗と会員データを一体で扱う経験の蓄積は簡単には再現できない。全国1,000店舗を超えてからも継続収入が積み上がれば、新規出店の比重が下がっても高い資本効率を維持できる。
株主にとっては、2026年から配当性向の目安が引き上げられたことも追い風だ。成熟後に新店投資を抑えて余剰資金を還元できれば、売上成長率以上の価値を生む余地がある。2026年の株式売出しで株主層が広がったことも、長期的にはガバナンスを改善する契機になりうる。重要なのは、目標店舗数に達することより、加盟店が長年にわたり利益を上げ、継続的に本部へ対価を払う構造が定着することだ。
慎重な見方
最大の問題は、成長の質を見誤りやすいことである。2025年の売上の約63%は設備卸売や店舗譲渡を含む開発売上だった。新しい加盟店が多い時期には売上も利益も大きく伸びるが、出店の余地が減った瞬間に同じ規模の収入を維持するのが難しくなる。会員数が増え続けても、開発収入の減少がそれを上回る可能性がある。
競争相手の規模も大きい。エニタイムフィットネスは国内に1,300店舗を持ち、低価格ジムのchocoZAPは別の価格帯から会員を取り込んでいる。総合スポーツクラブや専門スタジオも立地と設備を変えて対抗できる。ゴルフやサウナは魅力的だが、独占的な技術ではない。複数サービスを用意するほど設備投資と修繕費が増え、価格を上げられなければ加盟店の採算を圧迫する。
加盟店中心の事業だから安全という見方にも疑問がある。会社自身が物件を借り、加盟店へ転貸している例がある。2025年末の解約不能な賃借契約の未経過額は約29億円で、貸主側として見込まれる未経過額は約22億円だった。加盟店が撤退しても、すべての家賃支払いが同時に消えるとは限らない。本部の売掛金、保証金、加盟店への貸付金にも回収の危険がある。
2025年には営業キャッシュ・フローより投資支出が多く、市場変更に伴う増資が財務を厚くした。高いROEの一部は、過去の小さな自己資本を土台として急成長した結果である。全国へ広げるにつれて競争の厳しい立地が増えれば、新店の増分利回りは低下しやすい。直近の成長をそのまま10年間延ばすことはできない。
株主還元の拡充は歓迎できるが、今後も多額の設備・加盟店支援資金を必要とするなら、現金が余るとは限らない。2026年の創業者側によるまとまった株式売出しは希薄化ではないものの、保有の意思と経営規律を継続的に確かめる材料となる。出店の勢いが落ちた後に利益率まで低下する危険を、現在の高い成長率だけでは否定できない。
どちらに重みを置いたか
事業の成長余地では強い見方に分があるが、利益の持続性と現金化の確実性では慎重な見方を重視する。中立では全国約1,000店舗への拡大を認め、それでも出店関連の売上が成熟とともに減速すると見た。将来の余剰資金を資本の増加と必要投資から切り分けても、確率加重の現在価値は時価総額を約6%上回る程度である。
確率は上側27%、中立33%、下側40%と、慎重な方向へ寄せた。理由は事業一般の景気変動ではなく、開発売上への集中と加盟店・賃貸借に残る本部の負担である。一方、地域内の店舗網と既存店会員数の伸びを認め、悲観だけを過度に重くはしない。結論は「適正」であり、大幅な割安とは判定しない。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/10 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 5,032 円840 億円(+ 還元の換算額還元の合計 700 円117 億円)。 今の値に割り戻すと 2,868 円479 億円、今との差 +8.6%、 期待の年率 +8.7%(資本コスト 7.8%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 14,337 円2,393 億円 | 1,437 円240 億円 | +497.5% | +21.2% | 1,420 円237 億円 |
| やや楽観 | 18% | 8,734 円1,458 億円 | 1,038 円173 億円 | +270.2% | +15.2% | 1,759 円294 億円 |
| 中立 | 33% | 5,743 円959 億円 | 780 円130 億円 | +147.1% | +10.3% | 2,153 円359 億円 |
| やや悲観 | 27% | 901 円150 億円 | 399 円67 億円 | −50.8% | −7.8% | 351 円59 億円 |
| 悲観 | 13% | 241 円40 億円 | 147 円24 億円 | −85.3% | −19.8% | 50 円8 億円 |
| 加重平均 | 100% | 5,032 円840 億円 | 700 円117 億円 | +117.1% | +8.7% | 5,733 円957 億円 |
今の株価時価総額 2,640 円441 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 9% 全国展開が成功し、加盟店網が生活インフラになる 利益 129 億円 · PER 17.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 14,337 円2,393 億円
フィットイージーの店舗網は全国に広がり、2035年には約1,600店舗のチェーンになる。2028年に会社が目標とする全国展開の勢いがその後も続き、都市部と地方のどちらでも一定の知名度を獲得する。ゴルフ、サウナ、健康管理などの複合サービスが会員の利用頻度を高め、年間平均の加盟店会員数は145万人に達する。国内のジム利用者が増える中で、チェーンの会員シェアも大きく上がる。
加盟店の新規開発は年間165店規模を維持し、機器卸売と開業支援の需要が続く。物価上昇に加え、サービスの充実によって会員当たりの実現単価も上昇する。運営収入は会員の増加を受けて厚みを増し、本部の仕組みを全国で共通利用することで高い利益率を維持する。
加盟店の多くが安定して更新を続け、出店費用の回収遅れや転貸借の損失も限定的となる。大型の買収や新株発行に頼らず、投資と配当を両立させる。10年の後半には新規出店のための資金を超える現金が蓄積し、株主へ返せる余力が大きくなる。差別化と店舗網の規模がともに強くなった理想的な10年である。
- 直営店舗の会費・サービス収入:数量 43,000(年度平均直営会員数(人))× 価格 0.88(直営会員1人当たり月間売上(万円、名目))→ 売上 45 億円・営業利益 9 億円。直営会員の年度平均4.3万人。サービス充実で実現単価は2025年の約1.52倍となり、直営利益率20%。
- 加盟店の継続運営収入:数量 1,450,000(年度平均加盟店会員数(人))× 価格 0.16(加盟店会員1人当たり本部月間収入(万円、名目))→ 売上 280 億円・営業利益 154 億円。全国約1,600店舗への拡大と高い会員密度を反映。加盟店運営収入は約280億円、利益率55%。
- 加盟店開発・機器卸売・店舗譲渡:数量 165(年間FC店舗純増数(店、開発取引件数の代理))× 価格 1.55(FC店舗純増1店当たり開発関連売上(億円、名目))→ 売上 256 億円・営業利益 36 億円。年間165店相当の開発需要を維持。卸売競争と建設費上昇を考慮し、営業利益率14%。
倍率:資本コストk=7.75%、長期名目成長g=2.75%。2035年の純利益129.4億円から余剰現金290億円に対応する税後利息約4.06億円を外すと事業純利益約125.34億円。自己資本591億円から余剰現金290億円を外した事業自己資本301億円に対し、事業ROEは約41.6%となる。通常の堀で超過利回りの半分が残るとし、RONIC=約24.7%。正当化PER=(1-0.0275÷RONIC)÷(0.0775-0.0275)=約17.77倍。事業利益の価値に余剰現金の75%である217.5億円を加える。余剰現金290億円は、売上増加に対して約50%の追加自己資本を事業に要するとした残余であり、現金が全額配分可能とはみない。
確率:2028年の計画達成後も年間150店前後の開発能力を維持し、強い競合のいる地域でも高い会員密度を保つ必要がある。複数の成功が重なる筋書きであり、可能性はあるが中心とはしない。
やや楽観 18% 地域の強みを全国で再現し、継続収入が厚くなる 利益 79 億円 · PER 17.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 8,734 円1,458 億円
2035年にはチェーン全体で約1,250店舗を展開する。東海地方で培った商圏分析と店舗運営の仕組みを関東、関西、その他の地方都市へ広げ、加盟店の年間平均会員数は112万人になる。エニタイムフィットネスやchocoZAPとの競争は続くが、運動以外の複数サービスを利用できることが、一定の価格差を保つ理由になる。
毎年の開発案件は110店程度で推移する。2028年の会社計画が示す勢いからは減速するものの、閉店を上回る新規加盟が続く。機器卸売と開業支援による収入は高水準を維持し、加盟店会員数の増加によって月々のロイヤリティも積み上がる。
直営店の採算も改善し、加盟店の集客と更新が順調に進む。転貸借の管理や設備更新の負担は増えるが、店舗ごとの会員データを利用して不採算立地への進出を抑える。大型買収や追加の大規模増資は必要とせず、配当を増やしながら自己資本を蓄積する。全国最大手には届かなくても、独自の業態を持つ有力チェーンとして定着する10年となる。
- 直営店舗の会費・サービス収入:数量 36,000(年度平均直営会員数(人))× 価格 0.82(直営会員1人当たり月間売上(万円、名目))→ 売上 35 億円・営業利益 6 億円。直営会員の年度平均3.6万人。物価をやや上回る単価上昇と運営効率改善を想定。
- 加盟店の継続運営収入:数量 1,120,000(年度平均加盟店会員数(人))× 価格 0.15(加盟店会員1人当たり本部月間収入(万円、名目))→ 売上 202 億円・営業利益 95 億円。FC会員の年度平均112万人。加盟店からの継続収入は約202億円、利益率47%。
- 加盟店開発・機器卸売・店舗譲渡:数量 110(年間FC店舗純増数(店、開発取引件数の代理))× 価格 1.46(FC店舗純増1店当たり開発関連売上(億円、名目))→ 売上 161 億円・営業利益 21 億円。年間110店相当の開発需要。建築費・仕入原価上昇を考慮し、利益率13%。
倍率:k=7.75%、g=2.75%。余剰現金227億円の税後利息約3.18億円を純利益78.6億円から除くと、事業純利益は約75.42億円。事業自己資本209億円に対するROEは約36.1%。残存超過利回りを半分とするRONICは約21.9%で、正当化PER=(1-g÷RONIC)÷(k-g)=約17.49倍。事業価値に余剰現金の75%である170.25億円を加える。余剰現金は、増加売上の約半分の資本を事業に再投資する保守的な必要資本を差し引いて見積もった。
確率:2028年までの事業計画に近い出店能力を確認できれば視野に入るが、都市部での競争や加盟店の採算を長期にわたって管理する必要があり、楽観側の条件を含む。
中立 33% 出店は成熟するが、全国チェーンとして定着 利益 51 億円 · PER 17.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 5,743 円959 億円
2028年までに店舗と会員が大きく増え、その後は出店余地のある地域が徐々に少なくなる。2035年にはチェーン全体で約1,000店舗を持ち、加盟店の年間平均会員数は87.5万人に達する。現在より大きな会員基盤を持つが、都市部ではエニタイムフィットネス、地方では低価格ジムや地域のスポーツクラブとの競争が続く。
新規開発は年間70店相当へ減速する。2028年の中期計画にある165店舗の新規出店を、2035年まで延長しない。開発売上はなお一定規模を保つものの、全社の成長を主導するのは、増えた既存加盟店から受け取るロイヤリティや代行手数料となる。会員当たりの本部収入は物価上昇にほぼ沿って増えるが、実質的な大幅値上げは行えない。
加盟店運営は高採算を維持する一方、直営店は設備更新と人件費の負担が残る。競争の厳しい地域で開店した加盟店には追加支援を要し、本部費用も全国展開に合わせて膨らむ。借入の金利上昇は純現金であるため大きな痛手にはならないが、運転資金と転貸借の約束には継続して現金が必要となる。株主還元は配当性向30%程度を基本とし、大規模な買収や増資を前提としない。強い成長企業から、一定の資本効率を持つ成熟チェーンへ移る10年である。
- 直営店舗の会費・サービス収入:数量 34,000(年度平均直営会員数(人))× 価格 0.76(直営会員1人当たり月間売上(万円、名目))→ 売上 31 億円・営業利益 4 億円。直営会員の年度平均3.4万人。実現単価は2025年の約1.31倍で、物価累積約1.34倍をやや下回る。
- 加盟店の継続運営収入:数量 875,000(年度平均加盟店会員数(人))× 価格 0.14(加盟店会員1人当たり本部月間収入(万円、名目))→ 売上 148 億円・営業利益 64 億円。加盟店会員の年度平均87.5万人。本部収入単価は2025年の約1.33倍で、物価上昇並み。
- 加盟店開発・機器卸売・店舗譲渡:数量 70.0(年間FC店舗純増数(店、開発取引件数の代理))× 価格 1.37(FC店舗純増1店当たり開発関連売上(億円、名目))→ 売上 96 億円・営業利益 12 億円。年間70店相当の開発需要。単価は物価上昇並みだが、利益率は仕入れ・施工費の上昇で12%。
倍率:k=7.75%、2035年以降の名目g=2.75%。純利益51.0億円から余剰現金193億円に対応する税後利息約2.70億円を除くと、事業純利益約48.30億円。自己資本341億円から余剰現金193億円を外した事業自己資本148億円に対し、事業ROEは約32.6%。堀は通常とし、RONIC=k+0.5×(ROE-k)=約20.2%。正当化PER=(1-g÷RONIC)÷(k-g)=約17.28倍の上限を用いる。余剰現金193億円は、現在の投下資本密度に比べて厚めの『増加売上の約50%を必要自己資本として再投資』という仮定を使い、2035年自己資本から必要資本を差し引いた額である。2024~2025年の実際の増分資本密度は約6割と高く、必要資本を過小評価しないようにした。戻り方75%を掛けた144.75億円を事業価値に加算する。
確率:下に寄せる理由:2025年の売上の約63%が開発関連で、加盟店の開業速度が落ちたときの利益をまだ長期実績で確認できない。2028年の会社計画までは一定の達成を認める一方、そこから2035年までは出店速度が低下する中心的な見方とした。
やや悲観 27% 出店余地が早く狭まり、加盟店採算が低下 利益 12 億円 · PER 10.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 901 円150 億円
2028年ごろまでは出店が続くものの、競合の集中する地域で新店舗の集客が鈍り、加盟店の採算が悪化する。2035年のチェーン全体は約620店舗にとどまる。会員数が伸び悩む店舗では、月会費の割引やキャンペーンが常態化し、会員当たりの本部収入も物価上昇ほど増えない。加盟店の年間平均会員数は47.5万人となる。
新規開発は年間18店相当に落ち込む。既存加盟店の更新やマシンの交換需要は残るが、設備卸売を伴う新店開業が少なくなり、かつて全社売上の過半を支えた開発収入が縮む。加盟店の閉店や業態変更が増え、会費回収の遅延、設備の転用、物件の転貸し直しに本部の負担が生じる。
直営店も設備と人件費を維持するため、利益率が低下する。会社は不採算立地への出店を抑え、投資の一部を改装と既存店支援に回す。大型買収で成長を補うことはせず、借入も慎重に管理するが、売上の減少に対して固定費を十分に下げられない。配当は利益水準に合わせて縮小する。事業は残るものの、かつての成長企業としての優良さを失う10年となる。
- 直営店舗の会費・サービス収入:数量 22,000(年度平均直営会員数(人))× 価格 0.71(直営会員1人当たり月間売上(万円、名目))→ 売上 19 億円・営業利益 1 億円。直営会員は伸びず、値引きと更新費により利益率は4%まで低下。
- 加盟店の継続運営収入:数量 475,000(年度平均加盟店会員数(人))× 価格 0.13(加盟店会員1人当たり本部月間収入(万円、名目))→ 売上 72 億円・営業利益 22 億円。本部の実現単価は10年で約1.20倍にとどまり、加盟店支援費用が利益率を圧迫。
- 加盟店開発・機器卸売・店舗譲渡:数量 18.0(年間FC店舗純増数(店、開発取引件数の代理))× 価格 1.14(FC店舗純増1店当たり開発関連売上(億円、名目))→ 売上 21 億円・営業利益 1 億円。年間18店相当の開発需要。設備の価格競争と開業支援費用で利益率6%。
倍率:余剰現金60億円の税後利息約0.84億円を除いた事業純利益は約10.86億円、事業自己資本は146億円、事業ROEは約7.4%で資本コスト7.75%を下回る。したがって正当化PERの上限は1÷k=約12.9倍。成長を追わず、固定費と加盟店の信用損失を抱える筋書きなので、稼ぐ力を10倍で評価する。余剰現金は、事業縮小に伴う保証金回収難や閉店費用を考慮し、帳簿上の余りを大幅に減額して60億円とする。株主に戻る割合75%の45億円を別に加える。
確率:国内の価格競争、建設費上昇、FC加盟店の回収負担という三つの問題は独立した例外ではなく、同時に起こりやすい。出店中心の売上構成から、伸びの減速が利益に及ぶ可能性を中心より重く見る。
悲観 13% 競争と加盟店撤退が重なり、成長モデルが崩れる 利益 −2 億円 · PBR 0.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 241 円40 億円
低価格ジムと専門スタジオが各地で会員を獲得し、フィットイージーは複合設備に見合う料金を維持できなくなる。会員離れと新規加盟希望者の減少が重なり、閉店が増える。2035年のチェーンは約300店舗へ縮小し、年間平均の加盟店会員数は17.5万人となる。店舗数が残っても、一店舗当たりの会員数と収益力は大きく低下している。
新規開発は年間2店程度となり、機器卸売や店舗譲渡による収入はほぼ失われる。既存加盟店は契約更新時に条件緩和を求め、本部のロイヤリティ単価も実質的に低下する。設備を多く持つ直営店は固定費負担によって赤字となり、開発関連でも在庫処分や機器の値引きが必要になる。
本部は不採算店の閉鎖、契約解除、売掛金の回収を進めるが、店舗賃料と転貸借の契約は簡単に消えない。閉店費用や債権損失が途中年度の利益を削り、配当は大幅に縮小する。大きな買収で事業を立て直すことも、新株発行で成長を再開することも価値には織り込まない。需要自体は残るが、会社は高収益チェーンという地位を失い、現金と売れる資産が株主価値の主要な支えとなる。
- 直営店舗の会費・サービス収入:数量 10,000(年度平均直営会員数(人))× 価格 0.60(直営会員1人当たり月間売上(万円、名目))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。直営会員が減少し、価格もほぼ据え置き。家賃・人件費・設備維持費で赤字化。
- 加盟店の継続運営収入:数量 175,000(年度平均加盟店会員数(人))× 価格 0.11(加盟店会員1人当たり本部月間収入(万円、名目))→ 売上 24 億円・営業利益 4 億円。加盟店会員は大幅減少。会員当たり本部収入は2025年と大差なく、実質では値下がり。
- 加盟店開発・機器卸売・店舗譲渡:数量 2.0(年間FC店舗純増数(店、開発取引件数の代理))× 価格 0.98(FC店舗純増1店当たり開発関連売上(億円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。開業需要はほぼ消滅。機器処分や開業支援の固定費で赤字。
倍率:赤字でPERを使用できず、現在の自己資本58.8億円を基準に、清算費用、賃貸借契約の負担、売掛金・設備の回収難を織り込んだPBR0.7倍で評価する。2035年の自己資本の増減に高い倍率を掛けて悲観価値を膨らませない。時価総額は58.8億円×0.7=41.16億円で、純現金を中心とした資産換価額の床29億円を上回る。現在の市場の過去最低PBRなどは根拠に用いない。
確率:身体を動かす施設への需要が消えるとは考えないが、設備・賃料を抱える店舗網で競争力を失うと、本部のロイヤリティと開発売上が同時に縮む。破綻を前提にせず、構造的な劣後が起こる確率として13%を見込む。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
直営店舗の会費・サービス収入
直営の24時間ジムが会員から受け取る月会費と付帯サービス収入。店舗の賃料、設備投資、維持費を会社が負担する。
| 数量年度平均直営会員数(人) | 価格直営会員1人当たり月間売上(万円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 21,964 | 0.58 | 15 | 2 |
| 10 年後 中立 | 34,000 | 0.76 | 31 | 4 |
取り方:2025年10月期有価証券報告書の直営売上15.26118億円と、2024年10月末直営会員19,980人、2025年10月末23,948人を使用。両期末の平均21,964人を年度平均会員数の代理とし、売上高÷平均会員数÷12か月で月間約5,790円を算出した。割引、途中入退会、物販等を含む実現単価で、店頭表示料金そのものではない。数量×価格×0.0012で億円に換算する。営業利益1.53億円は全社営業利益を分析用に配賦した推計で、会社が区分別利益を開示した数字ではない。
加盟店の継続運営収入
加盟店会員数に連動するロイヤリティ、会費回収等の代行手数料、システム利用料、広告負担金など。本部に継続して入る収入。
| 数量年度平均加盟店会員数(人) | 価格加盟店会員1人当たり本部月間収入(万円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 164,898 | 0.11 | 21 | 12 |
| 10 年後 中立 | 875,000 | 0.14 | 148 | 64 |
取り方:有価証券報告書の運営売上20.96818億円を使用。内訳はロイヤリティ11.35939億円、代行手数料6.50070億円、その他3.10809億円である。加盟店会員は2024年10月末129,004人、2025年10月末200,792人であり、期首末平均164,898人を年度平均の代理にした。本部の月間実現収入は加盟店会員1人当たり約1,060円となる。これは利用者が加盟店に払う月会費ではなく、本部に帰属する収入である。営業利益11.53億円は加盟店運営の相対的な高採算性を踏まえた分析上の推計であり、開示されたセグメント利益ではない。
加盟店開発・機器卸売・店舗譲渡
新規出店に伴う加盟金、開業監修、トレーニングマシン・備品卸売、直営店の加盟店への譲渡など。継続会費ではなく出店活動に強く連動する収入。
| 数量年間FC店舗純増数(店、開発取引件数の代理) | 価格FC店舗純増1店当たり開発関連売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 60.0 | 1.02 | 61 | 12 |
| 10 年後 中立 | 70.0 | 1.37 | 96 | 12 |
取り方:2025年10月期の開発売上60.87246億円に、区分外のその他売上約0.21324億円を合わせて61.08570億円とした。開発売上の主な内訳は加盟金0.71964億円、加盟店卸売43.76968億円、店舗譲渡5.01590億円、その他11.36722億円である。FC店舗数は2024年10月末155店から2025年10月末215店へ60店純増したため、これを開発取引の数量代理とし、純増1店当たり約1.018億円を推定した。過去に開業した店舗への追加販売や譲渡も含み、新規1店の契約単価そのものではない。利益12億円は推計で、直営・継続運営の推計と合わせた25.06億円から本部費等約1.95億円を控除して、実際の全社営業利益23.11億円に整合させた。
リスクと懸念
売上の過半を占める開発売上の減速
2025年の開発売上は約61億円で、全社売上の約63%を占めた。機器卸売、開業支援、直営店譲渡は、新しい加盟店が開く時に大きく発生する。会員が積み上がるほど安定するロイヤリティと違い、新店開発が減れば翌年度の売上が落ちやすい。2035年の中立でも新規開発の速度は2028年の会社計画より低下するため、開発売上の減少を継続収入で補えるかが重要となる。
低価格ジムとの競争と会費の値決め力
エニタイムフィットネスやchocoZAPは、会員数と店舗網で大きな規模を持つ。さらにピラティスなどの専門業態も成長している。ゴルフやサウナを組み合わせる差別化には意味があるが、設備は模倣でき、競合が近隣に出店すれば会費割引や広告費が必要になる。10年間の物価上昇をそのまま会費へ転嫁できなければ、加盟店と本部の両方の利益率が低下する。
転貸借と加盟店の信用リスク
本部は一部店舗の物件を借り、加盟店に転貸している。2025年10月末の解約不能な借主側未経過リース料は約29億円、貸主側は約22億円だった。加盟店が閉店すると、本部が支払う家賃と受け取る家賃が同時には解消しない可能性がある。売掛金、貸付金、保証金の回収遅延も重なれば、損益計算書上の利益があっても現金が不足しうる。
増分投資の利回り低下
東海地方での出店成功は、全国のすべての地域で再現できるわけではない。新規商圏で会員数の予測が外れれば、加盟店は初期投資を回収できず、本部もブランド維持や店舗支援に追加費用を要する。2025年は営業キャッシュ・フロー約14億円を投資支出約17億円が上回った。新店投資が資本コストを下回るようになっても出店を続けることが、長期株主にとって最も避けたい事態である。
設備更新費と新リース会計の影響
ゴルフシミュレーター、マシン、サウナ、空調などは定期的な更新が必要であり、建設費や設備価格の上昇が将来の現金支出を増やす。既存設備の減価償却費は過去の取得価格を基にするため、物価上昇で会計利益が増えても、交換費用が同じ割合で済むとは限らない。2027年4月以後に始まる年度から適用される新リース会計では、賃借契約が貸借対照表に載り、見かけの純負債や利益の表示も変わる。
創業者側の株式売出しと将来の希薄化
2026年9月の創業者側による約200万株の売出しは、会社の新株発行ではなく、発行済株式数を増やさない。しかし、創業者側の保有比率が低下したことは、資本政策を継続して観察する理由となる。一方、2025年の市場変更時には約63万株を新たに発行し、新株予約権の行使も株数を増やしてきた。将来の出店資金を増資で賄う場合、会社全体が成長しても既存株主の持分価値は薄まる。
今後の分かれ目
- 2028年10月期に売上高240億円、営業利益56.5億円、会員56万人という計画をおおむね達成したら
- 全国展開の実行力が確認できる。加盟店の継続収入と営業キャッシュ・フローも同時に伸びていれば、やや楽観側の確率を高められる。
- 既存店会員数が前年割れとなり、会員当たりの本部収入も低下したら
- 値決め力と地域内の競争優位が弱まっていると判断する。加盟店運営収入の数量・単価を下げ、やや悲観と悲観の可能性を高める。
- 年間の新規開発店舗数が大きく減っても、ロイヤリティ収入と営業利益が増え続けたら
- 開業関連売上から継続収入への転換が成功した証拠になる。成熟後の利益率と必要資本の見通しを改善し、事業の持続性を再評価する。
- 営業キャッシュ・フローが複数年にわたり純利益を下回り、加盟店向け売掛金や保証金が増え続けたら
- 報告利益の現金化に問題があると判断する。余剰現金の見込みを減額し、増分の投下資本利回りを再検証する。
- 閉店や加盟店の契約解除が増え、転貸借の家賃負担が本部に残るようになったら
- 新規出店よりも既存加盟店の撤退費用が大きくなり始めたと考える。営業利益率と悲観時の資産換価額を下げる。
- 出店が成熟した後、配当性向の引き上げや自社株買いが実施され、余剰現金の株主還元が確認できたら
- 留保現金の株主への戻り方を現在の75%より高く評価できる。事業の成長率を変えずに、既存株主に帰属する価値を上方修正する。
見ておくもの
- 毎月開示される全店・既存店の会員数、店舗数、会員数の前年同月比
- 加盟店の期末店舗数、純増数、撤退・契約解除件数
- 加盟店会員1人当たりのロイヤリティ・代行手数料収入
- 開発売上の内訳、機器卸売額、新規開発店舗1店当たり売上
- 営業キャッシュ・フローと純利益の差、売掛金と保証金の増減
- 解約不能な賃貸借契約の借主側と貸主側の未経過額
- 2028年10月期中期計画の進捗と、ROE30%以上の達成状況
- 株主還元率、新株予約権による希薄化、既存株主の持分変化
- 競合の店舗数・会員数と、フィットイージーの地域別出店構成
倍率と資本コストの決め方
現在の株価や同業のPERを起点にせず、直営会員数、加盟店会員数、FC店舗純増数という実際の数量と、それぞれの名目単価から2035年の売上を積み上げた。中立では2028年の新規165店舗という会社計画を2035年まで延ばさず、年間70店相当まで減速させた。倍率は資本コスト7.75%、長期成長率2.75%、通常の堀で超過利回りが半分残るという前提から計算した。未来の余剰現金は、出店に必要な運転資金、設備、保証金を見込んで自己資本から切り分け、戻り方を75%に制限した。2035年の営業利益は家賃を費用とする現在と同じ会計上の形で比較し、新リース会計による表示上の増益を成長とみなさない。計算後に初めて現在の時価総額約451億円と比較した。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%と株式リスクプレミアム4.5%の合計7.5%に、事業の質による+0.25%を加えた。規模や株価の変動率による上乗せは使わない。
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読んだ資料
- フィットイージー 2025年10月期 有価証券報告書(事業区分別売上、店舗・会員、財務、キャッシュ・フロー、賃貸借、配当)
- フィットイージー 2025年12月12日 中期経営計画のローリングに関するお知らせ
- フィットイージー 2026年10月期 第3四半期決算短信(2026年9月14日)
- フィットイージー 2026年10月期9月度 主要KPI(会員数及び店舗数)
- 帝国データバンク「フィットネスクラブ・スポーツジム」業界動向調査(2024年度)
- Fast Fitness Japan 会社沿革(エニタイムフィットネス国内会員数・店舗数)
- フィットイージー 2026年9月14日 株式の売出し及び親会社以外の支配株主の異動に関するお知らせ