結論
クリーク・アンド・リバー社は、映像、ゲーム、Web、医療、会計、法曹などの専門家と仕事を結び付け、制作受託や人材紹介でも稼ぐ会社である。筆者の結論は「やや割高」だ。専門家46.3万人、取引先5.7万社という営業基盤は容易に作れないが、売上の大部分が人の工数や仲介サービスに依存しているため、10年後の稼ぐ力を過去の延長で考えることはできない。
会社は2026年2月期に売上高614億円、営業利益49億円を達成した。2027年2月期の上期も増収増益で、直近の営業状態はむしろ良い。ただし、前期の純利益41億円には高橋書店グループの買収に伴う税効果などの一時的な押し上げがあり、恒常的な利益はそれより小さい。売上が増えた事実と、既存事業の1単位当たりの価値が高まった事実も分けて考える必要がある。
長期の強みは、企業が仕事を発注するときに必要となる専門家の選定、制作現場の管理、医師の転職支援、著作権の処理まで引き受けられることだ。特に医療分野の「民間医局」と、高橋書店の手帳・カレンダーには、単なる人材仲介とは異なるブランドや取引関係がある。一方、ゲーム制作、Web制作、広告、事務系専門人材の紹介では、生成AIが顧客の必要工数を減らし、仲介の値決め力を弱める可能性が高い。
10年後の中立では、売上高は現在をやや下回る一方、医療と出版が支えとなり、営業利益は50億円程度を維持する姿を考えた。新しい資本を高い利回りで使い続けられるという確信までは持てない。資本コスト8%、5つの筋書きの確率、将来の株主還元、潜在株式による希薄化を考慮した現在の本質価値は約232億円となり、基準時点の時価総額約307億円を約25%下回る。事業の存続可能性よりも、投じた資本が10年後にも十分な利益を生むかどうかが、長く持つ株主にとっての難所である。
バリュー投資の観点から
長く会社を保有する株主にとって、最初の問いは「この会社が明日なくなったら、顧客は何に困るか」である。テレビ局やゲーム会社は必要な専門家を自力でも集められるが、短い納期で多数の制作職を組み合わせるには手間がかかる。医療機関も医師を直接採用できるが、勤務地や専門性を合わせるには経験が要る。この面でクリーク・アンド・リバー社は確かな便益を提供している。
次の問いは、その便益の対価を10年後にも現在と同じ方法で請求できるかだ。人月や稼働時間で売る事業では、AIが仕事を短くすることが、必ずしも供給側の増収につながらない。顧客に成果を納めるための時間が半分になれば、顧客は支払額の削減を求める。自社の生産性向上で一時的に利益率が改善しても、競争会社も同じ道具を使えば、その利益は価格競争で消えていく。
その点、高橋書店の手帳と「民間医局」の専門性は、制作受託とは違う価値を持つ。手帳のブランドは一朝一夕には作れず、医師の転職では免許や勤務条件の確認が残る。ただし、高橋書店は買収で得た事業であり、支払った対価を忘れて収益だけを評価することはできない。出版在庫、返品、借入金、季節的な資金需要を含め、買収後の投下資本利益率を見たい。
筆者が最も気にするのは、内部留保の行き先である。人材事業はもともと資本をあまり使わずに高いROEを生みやすい。そこから得た利益を、成長を急ぐために収益性の低い新規事業や買収へ使えば、会社全体の価値はむしろ薄まる。増配と自社株買いが続いていることは救いだが、追加投資で資本コストを超える収益を生んでいるという証拠にはまだ不足がある。
会社の存続と、株主が十分な利回りを得ることは別の問題である。現在の事業には守る価値があり、経営の取り組みにも見るべきものがある。それでも、将来の利益を保守的に考えると、基準時点の時価総額には長期の不確実性を受け止めるだけの安全域がない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は日本のクリエイティブ事業である。テレビ番組、ゲーム、Webサイト、広告などの制作を企業から受託し、専門家を派遣・紹介する。2026年2月期の売上は395億円で全社の約64%を占めた。分野内の売上構成はゲーム約41%、映像約30%、Web約26%であり、権利関連は約3%にとどまる。受託制作では制作した成果物に対して、派遣では稼働期間に対して、紹介では成約時に対価を受け取る。単なる登録者数より、顧客から継続的に有償発注される工数と案件数が収益を決める。
韓国のクリエイティブ事業は31億円の売上を持つ。放送局向けの人材派遣や漫画・Webtoonの制作を手掛けるが、独自作品の制作費が先行し、直近は営業赤字である。市場全体が伸びても、作品の権利を確保できず制作費だけが膨らめば株主の利益は増えない。日本の事業と同じく、AIによる制作工程の短縮が有償工数を減らす危険を抱える。
医療事業の売上は約58億円、営業利益は約14億円で、利益率が最も高い。「民間医局」は約18.5万人の医師・医学生会員、約1.9万の契約医療機関を持ち、年間約6.5万件の紹介を行う。医師の採用は免許、専門性、勤務地、勤務条件の確認が欠かせないため、単純な求人検索とは違う。もっとも、紹介件数のすべてが有料の採用成約ではなく、求人探索や日程調整が自動化されれば、1件当たりの実現収入は下がり得る。
会計・法曹事業は約23億円を売り上げる。公認会計士や弁護士などの転職・派遣支援が中心で、顧客に代わって専門業務の記録を長期保管する事業ではない。資格確認には人の判断が残るが、候補者探索や書類作成に使う人手は減ると見る。その他の約44億円にはIT、AI・DX支援や新規事業が含まれ、まだ収益の安定した柱には育っていない。
2025年に買収した高橋書店グループは、CRES事業に新たな性質を持ち込んだ。手帳、カレンダー、書籍は人材の稼働時間ではなく、商品そのものを売る。季節性と返品の負担はあるが、店頭で長年選ばれてきたブランドと出版物の著作権を持つ。CRESの事業承継・経営人材紹介と分けて評価すべき収益源である。全社売上の増加を見ただけでは、この物販の寄与と既存の人材事業の成長を取り違える。
優良さと弱いところ
同社の堀、つまり競争相手が短期間ではまねできない強みは、専門家と顧客企業の双方を長く集めてきたことにある。会社が公表するネットワークは46.3万人、取引先は5.7万社に及び、日本のクリエイティブスタジオには多数の専門職が在籍する。テレビ制作では幅広い番組に関わり、ゲーム開発でも複数の大型案件を担ってきた。発注者は必要な技術と納期を知る担当者を探しやすく、専門家は次の仕事を得やすい。この両面の利便性には価値がある。
しかし、登録者が多いことと、顧客が値上げを受け入れることは同じではない。制作受託は競合との見積もり比較を受け、派遣単価には賃金相場という制約がある。解約率の低さ、法令対応に伴う継続的な値上げ、顧客が数年かけなければ移行できない共通基盤といった証拠は確認できない。したがって、人材・制作事業を強固な「記録の正本」とは評価しない。AIが仕事を探し、制作物を作り、納品まで管理するようになるほど、仲介者としての堀は狭まりやすい。
対照的に、医療事業の専門性には相対的な守りがある。医師免許や診療科、勤務条件を確かめ、本人と医療機関の合意を得る仕事は、単なる文章生成では完結しない。高橋書店の手帳・カレンダーにも、店頭での取扱実績と買い替え習慣がある。この二つは10年後にも必要とされる可能性が高いが、医療の仲介手数料と紙製品の販売数量は、それぞれ別の理由で圧力を受ける。
過去のROEはおおむね高かった。だが、その高さは固定資産の少ない人材事業の性質にも助けられている。2026年2月期には高橋書店買収により借入金と返金負債が増え、自己資本比率は約41%まで下がった。買収で得た利益が買収資金と新しい自己資本に見合うかを見極めなければならない。長く持つ株主が求めるのは、過去に高いROEを出したという記録ではなく、追加の1億円を投じたときにも資本コスト以上の利益を生む証拠である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
事業を取り巻く市場は一つではない。日本のコンテンツ産業全体は2025年に約14.9兆円と大きいが、これは作品や配信の売上を含み、同社が受注できる制作・派遣市場とは一致しない。矢野経済研究所による2025年度の動画制作サービス市場は約4,364億円である。同社の日本クリエイティブ事業の映像分野売上は約119億円に相当し、単純比率は約2.7%となる。ただし、放送番組の人材派遣と企業向け動画制作では市場の範囲が違い、この数字を厳密なシェアとは呼べない。テレビ制作には日テレアックスオンなど、ゲーム開発にはトーセなどの競合がいる。
最大の構造変化はAIエージェント代替である。企画書、画像、動画、プログラム、広告素材をAIが作り、顧客が制作工程の一部を内製できるようになれば、外部発注の案件数や請求工数が減る。市場全体の動画視聴やゲーム利用が伸びても、制作会社への支払額が同じだけ伸びるとは限らない。今後10年の中立では、制作・派遣・紹介を人の稼働に換算した数量が現在の55~75%程度まで縮むと考える。名目単価は物価上昇を一部転嫁できても、数量減を完全には補えない。
医療では、厚生労働省の2024年統計で医師数が約34.8万人に達した。高齢化や地域偏在のため医師の採用支援は引き続き必要だが、エムスリーキャリアやリクルートドクターズキャリアなどとの競争が続く。「民間医局」の年間紹介約6.5万件は大きな取引基盤だが、全国の有料採用成約件数との統一された比較値がないため、正確な市場シェアは算出できない。医師不足という追い風をそのまま紹介件数の増加に読み替えず、紹介業務の自動化による単価圧力を差し引く。
出版市場は別の方向に動く。2025年の紙の出版物の推定販売額は9,647億円で、前年比4.1%減だった。高橋書店は手帳・カレンダーの書店販売で首位級の地位を持つが、正確な市場シェアの比率は確認できない。紙の需要全体が減る中でも、使い慣れた手帳を毎年買う顧客や贈答・法人用途は残る。中立では販売部数が減り、値上げがその一部を補う姿を想定する。韓国のコンテンツ市場も大きいが、Webtoon制作にAIが普及すれば、市場拡大より制作単価の低下が勝つ可能性がある。
競争の勝敗を決めるのは、登録者の総数よりも、顧客の業務に欠かせない成果をどこまで自社の権利や独自サービスとして持てるかだ。作品の著作権、医療機関との深い関係、手帳のブランドを拡大できれば、請求工数が減っても利益は残る。これを確認できない限り、市場全体の成長をそのまま同社の売上成長に結び付けない。
資本政策と M&A
資本配分は、同社の長期価値を決めるもう一つの柱である。2023年4月公表の中期経営計画は、2026年2月期に売上高605億円、営業利益56.5億円を目指し、配当性向を従来の20%水準から30%水準に引き上げると明示した。実績の売上高614億円は目標を超えたが、営業利益49億円は届かなかった。計画で重視した新規事業とM&Aの効果は、売上と利益を分けて判定する必要がある。ROE、DOE、総還元性向、長期の自社株買い額については、同計画に確定的な数字の約束はなかった。
2025年には、高橋書店グループを保有するT&Wオフィスを約95億円で取得した。手帳・出版事業に新しい収益源を得たことは評価できるが、買収先の多額の現預金、借入金、返品に備える負債も連結された。取得に伴う税効果で一時的に増えた純利益を買収投資の成果と取り違えてはならない。今後は出版事業の営業キャッシュフロー、返品率、借入金の返済額を追うことが欠かせない。
株主還元には改善が見られる。2022年2月期から2026年2月期にかけて増配を重ね、2025年2月期には約10億円の自社株買いを行った。2026年10月には2027年2月期の増配予想も公表した。発行済株式から自己株式を引いた株数は、2022年2月末から2026年5月末までに約7%減少しているため、余剰現金が株主に戻る可能性を過度に低く評価する理由はない。
ただし、配当性向30%では利益の大半が社内に残る。制作スタジオの増床、専門分野の買収、新規事業への投資が続けば、自己資本だけが増え、追加投資の利回りが低下する危険がある。高橋書店の出版物を使った株主優待も始まったが、その費用は公表額がないため、対象株主数と配送費を含めて年約0.08億円と推計した。10年の株主還元にはこの現物給付も含めた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
同社は単なる派遣会社ではなく、専門家と顧客を結び付け、制作、教育、権利管理、事業承継まで関与する事業基盤を持つ。専門家46.3万人、取引先5.7万社のネットワークを他社が短期間で築くことは難しい。ゲーム、映像、Webで長年蓄積した仕事の実績が、新しい大型案件の受注につながる。スタジオを拡張し、制作の品質管理まで引き受ける能力は、単に人を紹介する競合よりも強い。
生成AIは制作の一部を自動化するが、企画の判断、クライアントとの調整、作品の権利処理、品質保証まで完全に置き換えるとは限らない。同社がAIを制作工程に取り込み、従来と同等の成果物を少ない費用で納められれば、外注工数が減っても営業利益率を引き上げられる。ここでは、AI製品の新規販売による架空の成長を想定する必要はない。既存の顧客関係を失わずに、工程の効率化で採算を改善するだけでも意味は大きい。
医療事業も見逃せない。年間約6.5万件の紹介、約18.5万人の登録会員、約1.9万の医療機関との取引を持つ「民間医局」は、専門職の市場で認知されている。地域や診療科による需給の偏りが続く限り、経験ある担当者と医療機関の関係は価値を保ちやすい。高橋書店は手帳・カレンダーで店頭の有力ブランドを持ち、物販の利益は制作工数の縮小と同じ速さで失われるわけではない。
経営陣も増配と自社株買いを行っており、少数株主への利益還元を軽視しているとは言い切れない。高橋書店の買収が通年寄与し、その他の赤字事業が黒字化すれば、既存の専門家ネットワークの価値を保ったまま利益率が大きく改善する余地がある。追加の買収資金を高い収益率で使えるなら、10年後には現在より強い複合サービス企業になっている。
慎重な見方
同社の売上の中心は、結局のところ顧客が外部の人間に支払う工数や紹介手数料である。AIが制作、検索、資料作成、照合、管理を担うようになれば、顧客は同じ成果を少ない人数で得られる。大きな登録者ネットワークは引き続き存在しても、年間の有償稼働人数や請求時間が減れば、売上は縮む。案件ごとの見積もり競争があるため、値段だけで数量減を埋めることも難しい。
ゲーム開発や映像制作は参入者が多く、顧客自身が制作機能を内製できる。生成AIを使いこなす小さな制作会社との競争も強まる。韓国のWebtoon制作では、独自作品を持つ利点より先に制作費や回収期間の問題が表面化している。AIを社内の道具として使うことは守りになるが、誰もが同じ技術を利用できるなら恒久的な値上げ力にはなりにくい。
医療事業も安全とは限らない。医師が直接医療機関の募集情報に到達でき、AIが候補先を比較して交渉の準備を助ければ、紹介会社に払う手数料は見直される。資格確認などの重要な仕事は残っても、人材紹介全体の価格が現在の水準にとどまる保証はない。会計・法曹の紹介でも同じ変化が起こる。
高橋書店は有力ブランドだが、買収価格約95億円に見合う現金を長期間生み出せなければ投資は失敗となる。紙の出版市場は縮小しており、返品に備える負債も大きい。借入金とリースの固定的な負担は、売上が減ったときにすぐ消えない。さらに、投資先の非上場株や新規事業の評価損が重なれば、帳簿上の自己資本は安全な床ではなくなる。
過去の高いROEは、利益をあまり多くの資本で生み出さずに済んだ時代の成果でもある。今後、利益が伸びないまま買収と内部留保で自己資本を積み上げれば、ROEは資本コストに近づく。企業として生き残っても、株主にとっての価値が長期間増えない可能性は十分にある。
どちらに重みを置いたか
専門家ネットワークの規模、医療事業の採算、高橋書店のブランドを考えると、全面的な衰退だけを予想するのは行き過ぎである。一方、全社の大半が工数、派遣、紹介に依存し、AI導入で顧客の支払総額が減るという懸念には十分な根拠がある。中立の数量にはすでにAIによる縮小を反映し、その理由で資本コストをさらに上げてはいない。
確率は楽観9%、やや楽観18%、中立36%、やや悲観24%、悲観13%とした。下側を37%にしたのは、複数の制作・仲介分野が同時に顧客の内製化圧力を受ける可能性と、買収後の借入・返品・投資負担を抱える会社固有の事情による。直近の増収増益と医療・出版の守りを認めても、現在の時価総額を十分に上回る確率加重価値にはならない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 1,665 円353 億円(+ 還元の換算額還元の合計 476 円101 億円)。 今の値に割り戻すと 1,095 円232 億円、今との差 −26.9%、 期待の年率 +4.1%(資本コスト 8.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 3,828 円811 億円 | 807 円171 億円 | +209.4% | +13.6% | 417 円88 億円 |
| やや楽観 | 18% | 2,884 円611 億円 | 667 円141 億円 | +137.1% | +10.2% | 639 円135 億円 |
| 中立 | 36% | 1,883 円399 億円 | 528 円112 億円 | +60.9% | +5.6% | 868 円184 億円 |
| やや悲観 | 24% | 413 円87 億円 | 307 円65 億円 | −52.0% | −8.6% | 173 円37 億円 |
| 悲観 | 13% | 189 円40 億円 | 151 円32 億円 | −77.3% | −16.4% | 44 円9 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,665 円353 億円 | 476 円101 億円 | +42.9% | +4.1% | 2,141 円453 億円 |
今の株価時価総額 1,498 円317 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 9% 専門家ネットワークを守り、制作と医療の利益率が大きく改善 利益 70 億円 · PER 12.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3,828 円811 億円
生成AIによる制作工程の短縮は進むが、同社は企画、品質保証、権利処理、制作進行という顧客が手放したくない仕事を押さえる。ゲーム、映像、Webでの有償稼働量は現在並みを維持し、物価に近い値上げも通る。市場全体のコンテンツ利用が広がる中、制作・派遣の売上シェアをほぼ守る。顧客の内製化は起きるものの、信頼できる制作チームを継続的に必要とする大型発注先は離れない。
医療では「民間医局」が医療機関との長い関係を生かし、紹介件数を大きく失わずに高い利益率を保つ。高橋書店は手帳・カレンダーのブランドを維持し、紙市場が縮んでも競合から顧客を獲得する。韓国ではWebtoonの制作費を抑え、保有する権利から利益を回収できるようになる。新規事業では赤字事業を整理し、採算の良いサービスへ資本を集中する。
M&Aは小規模な専門分野の補完に絞り、高橋書店のような買収先について投下資本の回収を優先する。オプション2系列の行使が進むため株式は希薄化するが、既存事業の営業利益は大幅に増える。10年後には派遣主体の会社ではなく、顧客が重要な成果物を安心して任せる専門サービス企業として評価できる状態になる。
- クリエイティブ分野・日本:数量 4,000(年間の有償稼働人年換算。制作受託、派遣、紹介を請求可能な専門職の年間稼働量に換算した推定値)× 価格 1,323(稼働人年換算1単位当たり売上高、万円)→ 売上 529 億円・営業利益 64 億円。AI導入後も有償人年を維持し、顧客からの直接発注と制作管理に集中。数量1.00倍、単価1.34倍。
- クリエイティブ分野・韓国:数量 500(年間の有償制作・派遣人年換算、推定値)× 価格 809(稼働人年換算1単位当たり売上高、万円。為替は1ドル150円で固定)→ 売上 40 億円・営業利益 2 億円。制作費管理と権利収益で黒字化。工数型の数量は1.00倍以下。
- 医療分野・民間医局:数量 61,750(年間の医師等紹介件数。無料・有料の紹介を含む会社公表件数)× 価格 12(紹介1件当たり実現売上高、万円。紹介料と関連サービス収入を含む平均)→ 売上 74 億円・営業利益 21 億円。医師の紹介基盤を維持し、案件当たり実現売上も物価分を転嫁。
- 会計・法曹分野:数量 784(専門職の年間紹介・派遣契約換算件数、推定値)× 価格 392(契約換算1件当たり売上高、万円)→ 売上 31 億円・営業利益 4 億円。高度専門職への集中で取引を保ち、選考の効率化が利益率に寄与。
- CRES分野・高橋書店の手帳・出版:数量 5,500,000(手帳・カレンダー・書籍の年間販売部数換算、部・冊)× 価格 0.14(1部・冊当たり実現売上高、万円)→ 売上 74 億円・営業利益 11 億円。手帳・カレンダーの店頭首位級の地位を守り、部数1.10倍、単価1.38倍。
- CRES分野・事業承継と経営人材:数量 33.3(事業承継・経営人材支援の年間契約換算件数、推定値)× 価格 4,940(契約換算1件当たり売上高、万円)→ 売上 16 億円・営業利益 2 億円。大型案件に集中し、人的工数は増やさず採算を改善。
- その他・IT、AI/DX、新規事業:数量 950(年間の企業向け有償プロジェクト換算件数、推定値)× 価格 576(プロジェクト換算1件当たり売上高、万円)→ 売上 55 億円・営業利益 5 億円。既存のAI/DX・IT支援を効率化し赤字案件を整理。AI製品の未確認売上は足さない。
倍率:資本コストk=8.0%、10年後以降の名目成長g_long=0%。事業のROEは70.2÷544.2=12.9%でkを上回るが、AIによる工数需要の長期的な縮小を踏まえると再投資収益の超過分を恒久成長として評価できない。正当化PER=(1-g÷RONIC)÷(k-g)=1÷0.08=12.5倍。過去や同業の市場倍率は使わない。時価総額877.5億円=純利益70.2億円×12.5倍。10年に蓄積する利益は新規事業と設備・運転資金に再投資され、別の余剰現金として二重に足さない。
確率:現在の幅広い顧客基盤を維持し、制作の工数縮小を内部の生産性改善で吸収する必要がある。医療と出版の採算改善、赤字事業の黒字化も同時に実現するため、可能性はあるが高い確率にはしない。
やや楽観 18% 工数は少し減るが、効率化と出版・医療が成長を支える 利益 53 億円 · PER 12.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,884 円611 億円
ゲームとWebの顧客はAIを積極的に導入し、1案件で必要な人員を減らす。しかし同社も制作工程と営業の効率を高め、案件の選定や品質保証、権利管理を担うことで、売上の減少を抑える。日本クリエイティブ事業の有償稼働人年は現在の9割となるが、長期契約先を維持でき、物価に沿った単価改定が進む。市場で圧倒的なシェアを取るわけではなく、既存の有力発注先との取引を守る姿である。
医療の「民間医局」は医師紹介の一部が自動化されても、条件の難しい採用や医療機関との関係を強みに利益を伸ばす。会計・法曹の人材紹介も高付加価値の案件に集中する。韓国では制作コストの管理が進み、わずかながら黒字化する。高橋書店は手帳の販売部数を維持し、価格改定と人気書籍の販売によって収益を増やす。
買収は小規模にとどめ、経営陣は不採算事業を早めに整理する。大幅な値上げ力やAI製品の新規販売を前提とせず、既存の顧客に提供するサービスの採算改善を中心に利益が増える。株主還元も継続するが、オプションによる希薄化を伴うため、会社全体の利益成長がそのまま既存株主の取り分の伸びにはならない。
- クリエイティブ分野・日本:数量 3,600(年間の有償稼働人年換算。制作受託、派遣、紹介を請求可能な専門職の年間稼働量に換算した推定値)× 価格 1,323(稼働人年換算1単位当たり売上高、万円)→ 売上 476 億円・営業利益 45 億円。有償人年0.90倍、単価1.34倍。案件選別と制作効率の改善。
- クリエイティブ分野・韓国:数量 435(年間の有償制作・派遣人年換算、推定値)× 価格 809(稼働人年換算1単位当たり売上高、万円。為替は1ドル150円で固定)→ 売上 35 億円・営業利益 1 億円。韓国の受託数量0.87倍。作品制作費の規律を回復。
- 医療分野・民間医局:数量 57,850(年間の医師等紹介件数。無料・有料の紹介を含む会社公表件数)× 価格 12(紹介1件当たり実現売上高、万円。紹介料と関連サービス収入を含む平均)→ 売上 69 億円・営業利益 19 億円。紹介件数0.89倍でも医療機関との関係が残り、高採算を維持。
- 会計・法曹分野:数量 704(専門職の年間紹介・派遣契約換算件数、推定値)× 価格 389(契約換算1件当たり売上高、万円)→ 売上 27 億円・営業利益 2 億円。高度資格者の案件で価格改定を実現。
- CRES分野・高橋書店の手帳・出版:数量 5,300,000(手帳・カレンダー・書籍の年間販売部数換算、部・冊)× 価格 0.13(1部・冊当たり実現売上高、万円)→ 売上 70 億円・営業利益 9 億円。部数1.06倍、単価1.35倍。店頭ブランドを維持。
- CRES分野・事業承継と経営人材:数量 29.8(事業承継・経営人材支援の年間契約換算件数、推定値)× 価格 4,940(契約換算1件当たり売上高、万円)→ 売上 15 億円・営業利益 1 億円。案件数換算は0.85倍、単価は1.30倍。
- その他・IT、AI/DX、新規事業:数量 900(年間の企業向け有償プロジェクト換算件数、推定値)× 価格 576(プロジェクト換算1件当たり売上高、万円)→ 売上 52 億円・営業利益 3 億円。受託工数0.90倍でも、不採算案件の整理で黒字化。
倍率:k=8.0%、g_long=0%なので、利益が資本コストを上回っていても10年後以降の利益成長を別に買わない。正当化PER=1÷k=12.5倍を上限そのものとして使用。純利益52.9億円×12.5倍=661.25億円。希薄化による既存株主の取り分は時価総額に手で掛けず、holder_shareで別に扱う。
確率:既存顧客の維持と利益率改善は実現可能だが、制作量の減少と物価以上の賃上げを同時に吸収する必要がある。現状の増収基調と専門家ネットワークの価値を踏まえ、中立より上の可能性を十分に残す。
中立 36% 工数は縮むが医療と出版が支え、営業利益は横ばい圏 利益 33 億円 · PER 12.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,883 円399 億円
日本のゲーム、映像、Web市場は引き続き大きいが、制作会社に発注される工数は減る。AIによる下書き、画像生成、映像編集、コード作成が広がり、顧客は案件ごとに必要な外部人員を削減する。日本クリエイティブ事業の有償稼働人年は現在の72%、韓国は66%に縮む。物価分に近い単価改定はできるが、売上は数量の減少を埋め切れない。専門家ネットワークの順位は維持しても、市場の成長を収益として十分に受け取れない。
医療では「民間医局」の紹介件数が現在の75%となり、効率化によるコスト削減と医療機関との関係が利益率を支える。会計・法曹では採用活動の内製化が進み、売上の一部を失う。高橋書店の手帳・カレンダーは紙の需要減で部数が減るが、長年のブランドを生かして値上げを進め、営業利益を維持する。その他の事業は赤字案件の整理により小幅な黒字へ転じるものの、新しい成長の柱にはならない。
M&Aは続くが、積み上がる自己資本に見合う利益を増やすほど成功しない。年間の利益は約33億円で、過去の最高益を大きく上回らない。配当と自社株買いを継続しても利益の相当部分が社内に残るため、ROEは資本コストに近づく。オプションの一部は行使されるが、会社全体としては堅実に存続し、優良さだけが以前より薄れた企業になる。
- クリエイティブ分野・日本:数量 2,880(年間の有償稼働人年換算。制作受託、派遣、紹介を請求可能な専門職の年間稼働量に換算した推定値)× 価格 1,304(稼働人年換算1単位当たり売上高、万円)→ 売上 375 億円・営業利益 27 億円。AIエージェント代替で有償工数0.72倍、単価1.32倍。顧客シェアは大きく失わないが請求量が減る。
- クリエイティブ分野・韓国:数量 330(年間の有償制作・派遣人年換算、推定値)× 価格 809(稼働人年換算1単位当たり売上高、万円。為替は1ドル150円で固定)→ 売上 27 億円・営業利益 0 億円。工数0.66倍、単価1.30倍。制作費の回収はできるが大きな利益は残らない。
- 医療分野・民間医局:数量 48,750(年間の医師等紹介件数。無料・有料の紹介を含む会社公表件数)× 価格 12(紹介1件当たり実現売上高、万円。紹介料と関連サービス収入を含む平均)→ 売上 58 億円・営業利益 15 億円。紹介件数0.75倍、平均実現単価1.34倍。医療機関との関係で利益率を維持。
- 会計・法曹分野:数量 544(専門職の年間紹介・派遣契約換算件数、推定値)× 価格 386(契約換算1件当たり売上高、万円)→ 売上 21 億円・営業利益 1 億円。契約換算数量0.68倍、単価1.32倍。選考業務の内製化が進む。
- CRES分野・高橋書店の手帳・出版:数量 4,600,000(手帳・カレンダー・書籍の年間販売部数換算、部・冊)× 価格 0.13(1部・冊当たり実現売上高、万円)→ 売上 59 億円・営業利益 7 億円。紙製品の部数0.92倍、単価1.30倍。手帳のブランドが下支え。
- CRES分野・事業承継と経営人材:数量 23.8(事業承継・経営人材支援の年間契約換算件数、推定値)× 価格 4,940(契約換算1件当たり売上高、万円)→ 売上 12 億円・営業利益 0 億円。案件換算数量0.68倍、単価1.30倍。コンサル工数を減らされる。
- その他・IT、AI/DX、新規事業:数量 680(年間の企業向け有償プロジェクト換算件数、推定値)× 価格 571(プロジェクト換算1件当たり売上高、万円)→ 売上 39 億円・営業利益 1 億円。数量0.68倍、単価1.29倍。不採算投資と赤字の受託を整理。
倍率:2036年2月期のROEは33.1÷406.2=約8.1%で、k=8.0%にほぼ等しい。過去のROE中央値16.7%を機械的に維持しない。人月・工数型が全社の大半であり、AIエージェント代替後の永続成長g_long=0%とした結果、正当化PER=(1-0÷RONIC)÷(0.08-0)=12.5倍。これはROEが資本コストを上回る場合の下限であり、資本コスト以下の場合の上限でもある。時価総額413.75億円=33.1億円×12.5倍。過去の市場PERや同業比較を根拠にしていない。
確率:会社の専門家ネットワークと2027年2月期の好調を認めつつ、制作・派遣・紹介の有償工数がAIで減るという構造変化を中心に据える。既存事業の利益率改善には限界があり、医療と出版が利益を支える姿を中立とする。
やや悲観 24% 制作の請求量が急減し、医療・出版の守りだけでは補えない 利益 9 億円 · PER 9.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 413 円87 億円
動画やゲームの制作需要そのものは消えないが、発注企業は制作物の一部をAIで作り、外部に任せる工程を大幅に減らす。日本クリエイティブ事業の有償工数は現在の56%となり、顧客が内製できない品質保証や一部の大型制作だけが残る。市場全体の作品数が増えても、同社の売上シェアは縮み、低い単価改定しか通らない。映像、ゲーム、Webで競合が増え、案件獲得のための固定費が重くなる。
韓国ではWebtoonの制作収入が十分に回収できず、営業赤字が続く。医療分野は医師の紹介需要が残るものの、顧客が候補者を直接探す仕組みを整え、紹介手数料を見直す。会計・法曹の求人仲介では価格競争が激しくなる。手帳と書籍は販売部数の減少が進み、値上げで売上を補い切れず、出版事業の利益率も低下する。
会社はスタジオの一部を縮小し、赤字の子会社を整理するが、解約できない賃借契約や人員再配置の費用が残る。経営は配当を続けるものの、利益減に応じて還元総額を縮めざるを得ない。追加の大型M&Aで利益を取り戻すことは前提としない。事業は存続しても、株主が受け取れる利益は大きく減り、ROEは資本コストを明確に下回る。
- クリエイティブ分野・日本:数量 2,240(年間の有償稼働人年換算。制作受託、派遣、紹介を請求可能な専門職の年間稼働量に換算した推定値)× 価格 1,165(稼働人年換算1単位当たり売上高、万円)→ 売上 261 億円・営業利益 9 億円。制作工数0.56倍、単価1.18倍。顧客の内製化で会社シェアも低下。
- クリエイティブ分野・韓国:数量 260(年間の有償制作・派遣人年換算、推定値)× 価格 722(稼働人年換算1単位当たり売上高、万円。為替は1ドル150円で固定)→ 売上 19 億円・営業利益 −1 億円。受注量0.52倍。作品回収難で赤字継続。
- 医療分野・民間医局:数量 35,750(年間の医師等紹介件数。無料・有料の紹介を含む会社公表件数)× 価格 11(紹介1件当たり実現売上高、万円。紹介料と関連サービス収入を含む平均)→ 売上 39 億円・営業利益 7 億円。紹介件数0.55倍、実現単価1.22倍。直接採用が増える。
- 会計・法曹分野:数量 440(専門職の年間紹介・派遣契約換算件数、推定値)× 価格 351(契約換算1件当たり売上高、万円)→ 売上 15 億円・営業利益 0 億円。採用仲介の価格競争と固定費負担で赤字。
- CRES分野・高橋書店の手帳・出版:数量 3,500,000(手帳・カレンダー・書籍の年間販売部数換算、部・冊)× 価格 0.11(1部・冊当たり実現売上高、万円)→ 売上 40 億円・営業利益 3 億円。紙の部数0.70倍、単価1.17倍。書店での優位は一部残る。
- CRES分野・事業承継と経営人材:数量 19.3(事業承継・経営人材支援の年間契約換算件数、推定値)× 価格 4,408(契約換算1件当たり売上高、万円)→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。企業再生・経営人材支援の案件数と単価が弱含む。
- その他・IT、AI/DX、新規事業:数量 500(年間の企業向け有償プロジェクト換算件数、推定値)× 価格 518(プロジェクト換算1件当たり売上高、万円)→ 売上 26 億円・営業利益 −2 億円。工数0.50倍。投資先の整理費用を吸収できない。
倍率:最終年度のROEは9.2÷326.2=約2.8%と資本コスト8%を大きく下回る。将来の投資は価値を増やさず、稼ぐ力としての上限は純利益÷k=115億円、PER12.5倍。固定契約負担、追加の撤退費用、事業縮小の持続性を考慮して9.5倍、時価総額87.4億円とする。現在の純現金と処分可能な資産から見た床約32億円は上回るため、清算価値を重複加算しない。
確率:顧客が制作業務を内製化し、AIによる価格交渉力の変化が複数の分野に同時に及ぶ可能性を考えた。高橋書店のブランドと医療の専門性が残るため、全面的な事業喪失ではなく収益力の著しい低下として扱う。
悲観 13% AIと顧客内製化で制作の仲介価値が崩れ、買収資産も傷む 利益 −7 億円 · PBR 0.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 189 円40 億円
企業はAIを使って広告、画像、動画、ソフトウエアの制作を内製し、外部に任せる仕事は専門的な監修や現場の撮影などに限られる。日本クリエイティブ事業の有償工数は現在の42%、韓国は40%に減り、単価の上昇も物価を大きく下回る。競合に案件を奪われるとともに、業界全体で制作会社に支払われる売上が縮む。登録者が多いという従来の強みは、顧客が直接AIと専門家を使える世界では十分な防御にならない。
医療機関は独自の求人データやAI採用支援を使い、医師紹介会社に支払う手数料を削減する。医師の免許確認や調整業務は残るが、高い紹介利益率は保てない。会計・法曹、事業承継支援、ITの受託も縮小し、多くの分野で赤字となる。高橋書店は紙の手帳を必要とする固定客を残す一方、販売部数の減少と返品負担によって利益をほぼ失う。
経営は大規模な新規投資を止め、スタジオを縮小する。過去に取得したのれん、非上場株式、設備などについて減損と撤退関連費用が発生し、会社は優良な複合サービス企業という性質を失う。10年の前半には配当を受け取れるが、終盤には赤字となり還元は止まる。倒産や即時清算を決めつけず、預金、売れる有価証券、土地の残余価値を重視して評価する。
- クリエイティブ分野・日本:数量 1,680(年間の有償稼働人年換算。制作受託、派遣、紹介を請求可能な専門職の年間稼働量に換算した推定値)× 価格 1,037(稼働人年換算1単位当たり売上高、万円)→ 売上 174 億円・営業利益 −6 億円。工数0.42倍、単価1.05倍。顧客の内製化とシェア喪失で赤字。
- クリエイティブ分野・韓国:数量 200(年間の有償制作・派遣人年換算、推定値)× 価格 647(稼働人年換算1単位当たり売上高、万円。為替は1ドル150円で固定)→ 売上 13 億円・営業利益 −1 億円。制作量0.40倍。独自作品の投資回収も失敗。
- 医療分野・民間医局:数量 27,950(年間の医師等紹介件数。無料・有料の紹介を含む会社公表件数)× 価格 9.96(紹介1件当たり実現売上高、万円。紹介料と関連サービス収入を含む平均)→ 売上 28 億円・営業利益 2 億円。紹介件数0.43倍、単価1.12倍。医療機関の直接採用に押される。
- 会計・法曹分野:数量 336(専門職の年間紹介・派遣契約換算件数、推定値)× 価格 316(契約換算1件当たり売上高、万円)→ 売上 11 億円・営業利益 −1 億円。件数0.42倍。採用仲介の価格競争に敗れる。
- CRES分野・高橋書店の手帳・出版:数量 2,750,000(手帳・カレンダー・書籍の年間販売部数換算、部・冊)× 価格 0.11(1部・冊当たり実現売上高、万円)→ 売上 30 億円・営業利益 0 億円。手帳・出版の数量0.55倍、単価1.12倍。返品と固定費でほぼ無利益。
- CRES分野・事業承継と経営人材:数量 13.3(事業承継・経営人材支援の年間契約換算件数、推定値)× 価格 3,952(契約換算1件当たり売上高、万円)→ 売上 5 億円・営業利益 −1 億円。案件数0.38倍。買収関連の支援需要も減少。
- その他・IT、AI/DX、新規事業:数量 400(年間の企業向け有償プロジェクト換算件数、推定値)× 価格 470(プロジェクト換算1件当たり売上高、万円)→ 売上 19 億円・営業利益 −2 億円。工数0.40倍。新規投資の撤退費用が残る。
倍率:最終年度は営業赤字・純損失のためPERを使用しない。帳簿の将来自己資本224.2億円ではなく、今の自己資本191.2億円をPBRの分母とする。40.0÷191.2=0.2092倍である。価値の基礎は純現金と税後処分可能資産であり、過去の市場PBRの谷を根拠にしていない。10年間の初期の利益留保約120億円、配当・買戻し32億円、減損・撤退関連損失約55億円を反映した将来自己資本は約224億円だが、低収益のまま残る帳簿額を床とは評価しない。
確率:制作・紹介の複数市場で仲介者の取り分が急減し、韓国の制作投資と国内新規事業の失敗、出版の縮小が重なる複合的な事態。医療と手帳の一部に価値が残るため破綻を既定とせず、売却可能資産を床にした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
クリエイティブ分野・日本
テレビ・動画、ゲーム、Web、広告などの制作受託、専門職の派遣・紹介、少数の権利管理。工数・人材仲介型を中心とする。
| 数量年間の有償稼働人年換算。制作受託、派遣、紹介を請求可能な専門職の年間稼働量に換算した推定値 | 価格稼働人年換算1単位当たり売上高、万円 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 4,000 | 988 | 395 | 29 |
| 10 年後 中立 | 2,880 | 1,304 | 375 | 27 |
取り方:売上395.0億円は2026年2月期有価証券報告書の外部顧客売上。会社開示の日本クリエイティブ分野の常用従業員1,885人、臨時雇用者および外部契約者、スタジオ在籍者の規模を手掛かりに、有償稼働量を約4,000人年と推定した。4,000人年×1人年当たり987.5万円で売上を再現する。実際の人年、顧客への平均請求額は未開示であり推定値である。売上構成はゲーム41%、映像30%、Web26%、権利等3%。中立はAIエージェント代替の人月・工数型として数量0.72倍、単価1.32倍。rev_factorの0.0001は万円から億円への換算。
クリエイティブ分野・韓国
韓国の放送向け人材派遣、ゲーム・映像、オリジナル漫画・Webtoonの制作と配信。
| 数量年間の有償制作・派遣人年換算、推定値 | 価格稼働人年換算1単位当たり売上高、万円。為替は1ドル150円で固定 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 500 | 622 | 31 | 0 |
| 10 年後 中立 | 330 | 809 | 27 | 0 |
取り方:売上31.1億円、営業損失約0.4億円は有報の韓国セグメント実績。派遣と外部クリエイターによる制作を年500人年の有償稼働量に換算し、1単位622万円を逆算した。実際の契約件数と単価は非開示のため代理数量であり、同国の従業員数そのものではない。中立は制作のAIエージェント代替とWebtoonの競争を反映し数量0.66倍、単価1.30倍とする。
医療分野・民間医局
医師の人材紹介、勤務支援、医学生・研修医向け説明会、医療機関向け情報・サービス。
| 数量年間の医師等紹介件数。無料・有料の紹介を含む会社公表件数 | 価格紹介1件当たり実現売上高、万円。紹介料と関連サービス収入を含む平均 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 65,000 | 8.89 | 58 | 14 |
| 10 年後 中立 | 48,750 | 12 | 58 | 15 |
取り方:子会社メディカル・プリンシプル社の2026年3月公表資料では、登録医師・医学生約18.5万人、契約医療機関約1.9万、年間紹介約6.5万件としている。2026年2月期セグメント売上57.8億円を65,000件で割り、全紹介1件当たり約8.89万円の実現売上とした。これは有料の医師転職成約1件当たり手数料ではない。無料紹介、説明会、その他の医療サービスが混ざるため、成約当たり紹介料とは区別する。中立はAIによる候補者探索・日程調整の効率化を反映し数量0.75倍、単価1.34倍とする。出典:https://www.cri.co.jp/news/006175.html
会計・法曹分野
ジャスネットコミュニケーションズなどによる会計士・経理専門職・弁護士の紹介、派遣、関連支援。
| 数量専門職の年間紹介・派遣契約換算件数、推定値 | 価格契約換算1件当たり売上高、万円 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 800 | 293 | 23 | 1 |
| 10 年後 中立 | 544 | 386 | 21 | 1 |
取り方:有報の外部売上23.4億円を、紹介手数料と派遣契約の年間売上を組み合わせた約800件の契約換算数で表した。1件当たり約292.5万円は、高度専門人材の紹介・継続派遣を混ぜた有効平均であり、実際の成約件数は未開示。中立は候補者探索や事務処理のAIエージェント代替により数量0.68倍、価格1.32倍とする。
CRES分野・高橋書店の手帳・出版
手帳、カレンダー、書籍の企画・編集・販売。ブランドと著作権、販売網を持つ物販・知的財産事業。
| 数量手帳・カレンダー・書籍の年間販売部数換算、部・冊 | 価格1部・冊当たり実現売上高、万円 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 5,000,000 | 0.10 | 49 | 6 |
| 10 年後 中立 | 4,600,000 | 0.13 | 59 | 7 |
取り方:2026年2月期のCRES分野全体は売上62.3億円、営業利益約6.43億円。高橋書店の独立した実績部数・利益はセグメント内で未開示のため、会社が公表した同年度の高橋書店グループ売上計画約49億円を代理値とし、年間約500万部×卸売等を含む1部平均980円で組み立てた。500万部は推計であり公表出荷部数ではない。計画額を使うことによる不確実性は残りのCRES事業に分けて示した。手帳・カレンダーの店頭シェアは首位級だが、正確な比率は未開示。人月・工数型ではないため、中立数量0.92倍、単価1.30倍とする。
CRES分野・事業承継と経営人材
C&R EVERLASTING STORY等による事業承継投資、経営人材紹介、再生・経営支援。
| 数量事業承継・経営人材支援の年間契約換算件数、推定値 | 価格契約換算1件当たり売上高、万円 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 35.0 | 3,800 | 13 | 0 |
| 10 年後 中立 | 23.8 | 4,940 | 12 | 0 |
取り方:CRES分野全体の売上62.3億円から、高橋書店の売上代理値49.0億円を引いた13.3億円を事業承継・経営人材その他の代理値とした。約35件の大型案件・継続契約換算、1件3,800万円は推定であり会社が公表した成約件数ではない。実際には投資事業や経営支援が混在し、契約単価の誤差は大きい。中立はコンサル・紹介のAIエージェント代替を反映して数量0.68倍、価格1.30倍とする。
その他・IT、AI/DX、新規事業
IT人材と開発支援、AI/DX関連サービス、新規投資、その他の小規模事業。
| 数量年間の企業向け有償プロジェクト換算件数、推定値 | 価格プロジェクト換算1件当たり売上高、万円 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 1,000 | 443 | 44 | −1 |
| 10 年後 中立 | 680 | 571 | 39 | 1 |
取り方:2026年2月期のその他外部売上44.3億円、営業損失約1.1億円を、有償の開発・派遣・支援案件約1,000件×平均443万円の代理数量・単価で表す。投資事業や現場型の仕事も含むため全案件が同質ではない。AI/DXという事業分類の売上があることは、AIエージェント製品そのものの受注が金額付きで確認されたことを意味しない。楽観でもAI販売を理由に数量を1倍超へ伸ばさず、中立は工数型を中心に数量0.68倍、価格1.29倍とする。
リスクと懸念
AIエージェント代替で有償工数が減る
制作受託、派遣、紹介、コンサルティングの多くは、人が行う作業や仲介に対して対価を受け取る。AIが企画、制作、検索、照合、資料作成、進行管理を代替すれば、顧客が同じ成果を得るために必要な外部人員が減る。登録者ネットワークの規模が維持されても請求可能な工数が減るため、成長を過去の売上推移から外挿できない。この影響は10年の数量とg_longに入れ、資本コストの寿命には重ねていない。
医療紹介の直接採用と手数料圧縮
「民間医局」は医療機関との取引や専門性が強いが、収益の源は紹介と関連サービスである。医師と医療機関がAIを使って直接候補先を探し、採用条件を比較できるようになれば、紹介会社の取り分を見直す動きが広がる。年間紹介約6.5万件という規模を維持することと、同じ実現単価を維持することは別であり、手数料の動きを継続して確認する必要がある。
高橋書店買収後の資金負担と出版物の返品
手帳・カレンダーにはブランドがあるが、紙の出版市場は縮小している。出版社では返品に備える負債と年末年始の出荷集中により、会計上の利益と手元の現金の動きが一致しない。高橋書店グループの取得額は約95億円に達し、買収時には多額の借入金と現預金が連結された。返品率が上がり在庫回転が悪くなれば、見かけの純現金は事業の安全余裕にならない。
新規事業と買収の増分ROICが資本コストを下回る
既存の人材事業は固定資産が比較的少ないため、過去に高いROEを生んできた。ところが、制作スタジオの増床や事業承継投資に内部留保を使っても、その投資から十分な利益が生まれなければ自己資本だけが増える。2026年2月期は売上が拡大したものの、以前の中期計画に掲げた営業利益目標を下回った。新たに投じた資本の利回りを、連結売上の成長とは別に確認すべきである。
借入金の借換金利とオフィス賃借の固定費
2026年2月末には有利子負債約115億円があり、現預金約177億円と相殺すると純現金に見える。だが、借入金の金利は将来3%台へ上がる前提であり、解約不能な不動産賃借契約の未経過リース料も約49億円ある。制作量が縮むと賃料やスタジオ維持費が利益を圧迫する。新リース会計基準で負債の見え方が変わっても、同じ家賃を利益と負債の双方から二重に引かない。
潜在株式による既存株主の希薄化
2026年2月期末には2021年付与分80万株、2023年付与分95万株の有償ストック・オプションが未行使だった。両方が行使されれば、現在の自己株控除後株式数に対する既存株主の持分は約92.4%まで下がる。払込金は会社の資金となるものの、資本コストを上回る投資先に使えなければ希薄化を補えない。将来の自社株買いによる株数減少とオプション行使による増加を区別して見る。
今後の分かれ目
- 日本クリエイティブ事業の有償稼働量が減らず、売上と営業利益率が複数年連続で改善したら
- AI代替による数量の縮小を見直し、やや楽観・楽観の重みを高める。値上げではなく顧客の支払う工数が維持されているかを確認する。
- 医療分野の年間紹介件数と実現単価がともに維持され、営業利益率25%前後が続いたら
- 民間医局の専門性と顧客関係がAI時代にも収益力を守っている証拠として、中立の医療利益を引き上げる。
- 高橋書店の通年営業キャッシュフローが安定し、返品負債と借入金が減ったら
- 買収後の資本効率と悲観時の現金の床を改善して評価する。会計上の営業利益だけでなく、現金の回収を重視する。
- 制作・派遣案件の請求工数が2~3年続けて減少し、単価の改定も物価上昇に追い付かなくなったら
- 中立の数量と営業利益率を下方修正し、やや悲観側の筋書きが近づいたと判断する。
- 新規事業の赤字が続き、追加の買収後に連結ROEが下がり続けたら
- 内部留保を高い利回りで再投資できないと評価し、増分投資の価値を引き下げる。株主還元を強化するかも確認する。
- 配当性向の引き上げや継続的な大規模自社株買いが明確に約束され、実行されたら
- 社内に滞留する資本が減り、既存株主に帰属する還元の価値が上がる。利益の数量前提とは独立して還元額を修正する。
見ておくもの
- 日本クリエイティブ分野の売上をゲーム・映像・Webに分けた成長率と受託制作の粗利益率
- 制作スタジオの在籍専門職数、稼働率、請求可能な人月・案件数
- 民間医局の年間紹介件数、医師・医学生登録者、契約医療機関数、紹介1件当たり実現売上
- 高橋書店の販売部数、返品率、CRESの通年営業利益と営業キャッシュフロー
- 2026年2月期の3か月超定期預金48.95億円と、借入金115.45億円の増減
- 出版事業の返金負債約36.8億円と解約不能リース約48.8億円の推移
- 新規事業・買収事業別の投下資本利益率と減損の発生
- 2027年2月期の修正会社計画である売上665億円・営業利益56.5億円・純利益35.5億円の達成状況
- 2021年・2023年付与の有償ストック・オプションの行使状況
- 自己株式取得後の実質株数、配当性向、総還元額の推移
倍率と資本コストの決め方
基準時点の時価総額は約307.5億円だが、事業数量や利益率は現在のPERから逆算していない。FY2026の6つの報告区分を出発点に、CRESを物販と事業承継に分け、実際に確認できる医師紹介件数と推定した制作工数・出版部数から10年後の売上を作った。工数型はAIエージェント代替の数量0.55~0.75倍、価格は物価3%による10年約1.34倍を上限としている。楽観側でも確認できないAI製品の売上を創作していない。倍率はk8%、g_long0%の正当化PER12.5倍を使用し、悲観は清算可能資産から評価した。
現預金と定期預金、出版の返金負債、リースの約束を確認し、現金の二重加算を避けた。中立の利益約33億円と現時点の自己資本から、長期に資本効率が低下する筋書きとした。5つの筋書きの会社全体の時価総額と還元を、holder_shareによる既存株主の取り分を反映して10年間割り引くと、現在価値は約232億円、基準時価総額との差は約マイナス25%となる。2028年2月期からの新リース会計基準による表示変更は利益創出力の改善とはみなさず、家賃を営業費用に含む現在と同じ経済的な形で比較した。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。国債3%と株式リスクプレミアム4.5%による基本資本コスト7.5%に、顧客の交渉力による値決め力の弱さ0.5%を加えた。M&Aの成否とAI代替は筋書き・数量に反映し、個別の上乗せ金利は課さない。