結論
INTLOOPは、企業のIT改革にフリーランスや自社のコンサルタントを送り込み、子会社でシステム構築やネットワーク工事も請け負う会社である。長く持つ株主の立場では、現状の時価総額約200億円は割高と判断する。顧客と専門人材を結びつける仕組みは確かに役立つが、利益の中心が人の稼働時間に結びつき、AIエージェントによる仕事の省力化を正面から受けるからだ。
2026年7月期は売上高が404億円に伸びたのに、営業利益は13億円へ落ちた。採用を先行させたためで、実際に高収益案件への移行によって売上総利益率は改善している。翌期の会社予想は大幅な利益回復であり、短期の反発余地は否定しない。しかし、2030年の売上高1,000億円という経営目標が達成されることと、2036年にも同じ人数・単価で稼げることは別の問題である。
最も気になるのは財務の変化だ。2025年7月期には純現金が約24億円あったが、2026年7月期には借入金が増え、手元現金とほぼ見合う状態になった。買収した企業の利益や現場作業は支えになる一方、のれんと開発中ソフトへの投資が膨らみ、資産を売れば必ず回収できる会社でもなくなった。予想外にAI関連の成果報酬が育てば見直せるが、その金額はまだ確かめられない。五つの将来像を確率で合わせた現在価値は、いまの時価総額をおよそ五割下回る。
バリュー投資の観点から
長く事業を保有するなら、まず顧客が毎年どうしても買わなければならないものかを問う。INTLOOPの人材網は便利だが、企業が買っているのは主に専門家の時間である。必要な時間が半分になれば、登録者が二倍に増えても売上は同じとは限らない。顧客の支出が増える業界にいることと、自社が長く超過利益を取れることは分けて考えたい。
ここに少数ながら魅力的な部分もある。複雑な顧客の課題を理解し、専門家を短期間で集め、責任を持って案件を進める営業と管理の技術は、AIが普及しても必要だ。ディクスの施工やインフラ整備は現場作業のため、言葉を生成するだけでは代替できない。もし顧客の成果に基づいて課金でき、その契約が更新され続ければ、労働時間を売る事業から一段上の事業へ変わりうる。
しかし、現時点で会社全体に強い堀があるとは言いにくい。営業利益率が改善した時期と、採用費で利益が急減した時期が近いことは、人への投資に高い固定負担が伴う証拠である。買収の広がりも、資本効率が高いと証明されるまでは価値の源泉ではなく試験中の投資として扱う。
資産面でも2025年の純現金をそのまま安全域とみなせない。翌期には借入が増え、現金の裏に返済義務がある。のれんや開発中のソフトは帳簿額で売れるとは限らない。支払う価格を決めるときは、十年後に残る利益と株主に戻る現金を重く見て、立派な経営目標には代金を払わない。この株に十分な安全域があるとはまだ判断できない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの大きな柱は、High PerformerやTECH STOCKなどを通じた専門人材の紹介・稼働支援である。企業や大手SIerがIT改革の仕事を持ち込み、INTLOOPが登録する独立コンサルタントやエンジニアを案件へつなぐ。紹介した人が働いた期間に応じて売上が生まれ、専門性と稼働率、請求単価が粗利を左右する。2026年3月末には登録者が5万7千人を超え、稼働者は約1,650人だったが、登録者全員が毎月売上を生むわけではない。
もう一つは自社のコンサルタントによる戦略支援、ITコンサルティング、PMOと呼ばれる大型案件の進行管理である。企業が要件を整理し、業務を変え、技術を現場に落とす仕事を担う。少人数の紹介から複数人のチームを派遣する案件へ移り、伊藤忠商事グループなどとの取引拡大や単価改定で粗利率を改善させた実績はある。ただし人を採る時点で給与と採用費が出るため、案件に入るまでの空白が利益を大きく削る。
ディクスホールディングス傘下には日本ディクス、コムテック、クロスシステムサービスなどがあり、通信網・ネットワークの工事、ITインフラ導入、システム開発、運用や人材支援を担う。配線や設備の設置といった現場作業は、文章作成やコード生成だけではなくならない。一方で子会社のSIやBPOは、人月売上である点で本体と似た危険を持つ。
会社の正式な報告は実質的に単一セグメントであり、これらの売上内訳は開示されていない。そのため以下の四区分は投資判断のための推計である。AIエージェント製品INTLOOP Pocketや投資ファンドは新しい選択肢だが、独立して検証できる売上額はなく、将来の利益の柱として先取りしていない。
優良さと弱いところ
強みは、フリーランスの候補者を集める力と、発注企業が必要とする専門性を見極めて配置する営業力にある。登録者の増加と伊藤忠商事との資本・業務提携は、案件と人材が集まるほど紹介しやすくなる循環を生む。高単価案件へのシフトと価格改定も実際に進み、2026年7月期の売上総利益率は30.1%になった。需要のある仕事を見つける速さには価値がある。
ただし、これは顧客が乗り換えられない堀ではない。顧客はアクセンチュア、ベイカレント、シグマクシス、大手SIer、他の人材仲介会社に相談でき、フリーランス自身も複数の仲介先に登録できる。独自データの蓄積や解約率の低さが数値で示された基幹システムではないため、登録者数だけから恒久的な値上げ力を認めるべきではない。AIで初級の調査・実装・進行管理が軽くなるほど、顧客が買う人月も減る。
収益性の弱さは実績にも現れている。2026年7月期には社員採用が先行し、単体営業利益が前年から大きく落ちた。連結営業利益も四割近く減った。翌期の稼働率回復を期待できても、高い固定人件費と採用競争が続く限り、増収が増益に直結するとは限らない。ディクスの設備施工は差別化の一助だが、全社を守るほどの規模ではない。
過去数年のROEは高かったが、それを将来の追加投資の利回りと同一視しない。買収したのれん、開発中ソフト、ベンチャー投資へ資金が移り、借入も増えた。投下した新しい一円が従来と同じ利益を生むかは、数年の営業利益と現金収支で改めて示す必要がある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内では企業の基幹システム刷新、セキュリティ対策、AI導入、データセンター整備が仕事を生んでいる。IDCは国内のビジネス・ITコンサルティング支出を2025年の約1兆4,554億円から2030年に約2兆2,897億円と予測する。INTLOOP本体の売上をこの市場と比較すると規模は約2%だが、人材仲介と受託開発を含むため、これは厳密なシェアではなく大きさの目安である。競合にはアクセンチュア、ベイカレント、大手SIer、フリーランス仲介のギークスやレバテックなどがいる。
市場が拡大しても人月売上が増えるとは限らない。AIエージェントが設計書、調査、コード、試験、会議記録を処理すると、顧客が必要とする工数は減る。少数の高度な人材や現場に入る技術者の需要は残るものの、会社全体の人員を増やせば売上が増えるという過去の方程式は弱くなる。中立では人月型の実質稼働量が十年で約三分の二になると考える。単価は物価上昇をおおむね転嫁できても、省力化による工数減少を埋め合わせるほどの値上げは想定しない。
一方、ネットワーク配線、工事設計、設備の更新には人が現場へ行く必要がある。ディクスの設備・施設部門は、工事人材の不足と再開発、通信網の更新を追い風にできる。とはいえ電気工事やIT設備工事にも大手施工会社と地場企業がおり、同社だけが価格を決められる市場ではない。2026年の受注残は複数年の先行需要を示すが、十年続く独占力の証拠ではない。
会社は人材の多さに加え、AIを自ら運用する受託方式へ移る方針を示している。これは生き残る道だが、INTLOOP Pocketの売上・受注額が独立して示されていないため、AIが売上の急成長源になるという楽観は数字に含めない。今後の競争は、人数の競争から顧客の成果に対価を取れるかの競争へ移る。
資本政策と M&A
中長期経営計画「VISION2030」は、2030年7月期の売上高1,000億円以上、営業利益150億円、営業利益率15%を掲げる。2027年7月期の会社予想は売上高480億~505億円、営業利益35億~46億円であり、採用費の平準化と稼働率の改善が前提になる。ただし、2030年目標は将来の保証ではない。ROE、配当性向、DOE、総還元性向について数値の約束は確認できない。
会社は2026年6月に上限19万株、3億円の自社株買いを決議したが、9月末までの取得実績はゼロだった。配当も2026年7月期までゼロである。創業者とKSM社の保有比率だけで七割を超えるため、将来たまる余剰資金を少数株主が自由に引き出せるとは考えにくい。余剰現金の戻り方には慎重な評価を用いる。
買収ではディクスへの出資比率を58.35%から84.66%へ引き上げ、コムテックやクロスシステムサービスも取り込んだ。伊藤忠商事との提携、ベトナムのKOZOCOM、アンダーワークスの取得も事業を広げる。一方、投資有価証券評価損が発生し、2026年7月期末には借入金が約56億円、のれんが約11億円、開発中ソフトが約14億円になった。買収先の稼ぎと持分の帰属を示せなければ、成長投資は株主価値を薄めうる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
国内企業の情報システムは古く、セキュリティ対策、データセンター投資、AI導入支援の案件は途切れにくい。専門人材不足も深刻であり、登録者を集めたINTLOOPには短期間でチームを組める価値がある。単価改定と高収益案件への移行によって、2026年7月期には売上総利益率を改善させた。これは単なる人数増よりも質の良い成長の兆しである。
2026年の営業減益は、将来の案件を取るために人を先に採った時期の歪みとも読める。採用後の稼働率が会社の想定する85%に戻れば、利益率は大きく改善する。ディクスのネットワーク工事には数十億円規模の受注残があるという説明があり、現場の担い手不足が続けばグループの利益を支える。子会社持分の追加取得は将来の利益の帰属を親会社に近づける。
AIエージェントは競争相手であると同時に、案件へ組み込む道具にもなる。戦略設計と実装を束ね、成果に応じた契約へ移れれば、高度な専門家の単価を保ち、人数が伸びなくても粗利を増やせる。INTLOOP Pocketが実売を伴う収益源へ育てば、経営計画に届かなくても現在の期待を上回る利益を長く残せる。
慎重な見方
今までの成長は、稼働するフリーランスと雇用コンサルタントの人数を増やし、高単価で請求する仕組みによる部分が大きい。AIエージェントが顧客の設計・調査・試験・運用をまとめて引き受けると、案件が存在しても企業は従来ほどの人数を買わない。発注元の大手コンサルティング会社やSIer自身も、内製AIで一部の外注を減らせる。登録人数は持続的な買い手の契約や独占的なデータとは違う。
採用費が利益を圧迫した2026年7月期は、この事業の脆さを示した。会社は次期に利益回復を見込むが、実際に稼働率が上がらなければ賃金は固定費として残る。資本配分にも疑問がある。のれんと開発中ソフト、投資有価証券を増やすため借入を重ね、利益よりも売上規模の拡大を先に追っている。取得先の案件が減れば償却と減損が重なる。
2030年の営業利益150億円という目標は、2026年の実績から大きな飛躍を要する。2030年を超えた後もAIによる省力化が続くなら、短期に一度利益が跳ねても永久には続かない。配当はなく、決議した自社株買いもまだ実行されていない。創業者側への持株集中が強い会社で、余剰資産が株主へ確実に戻ると期待するのも早い。
どちらに重みを置いたか
人材網の規模、顧客との関係、ディクスの施工能力は評価する。しかし、長期に守られる契約と独自データの証拠は乏しく、人月売上がAIに置き換わる危険の方が十年後の利益を左右する。下側の確率を41%、上側を25%とした理由は、採用投資による実際の減益、借入と無形資産の増加、まだ金額の見えないAI製品にある。中立の数量自体にAI代替を織り込んでいるため、同じ理由で資本コストを重ねて上げてはいない。現状の価格には安全域がない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/07 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 2,115 円199 億円(+ 還元の換算額還元の合計 158 円15 億円)。 今の値に割り戻すと 1,136 円107 億円、今との差 −41.9%、 期待の年率 +1.6%(資本コスト 7.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 5,163 円486 億円 | 843 円79 億円 | +207.0% | +13.1% | 480 円45 億円 |
| やや楽観 | 17% | 3,878 円365 億円 | 316 円30 億円 | +114.4% | +8.3% | 713 円67 億円 |
| 中立 | 34% | 2,272 円214 億円 | 84 円8 億円 | +20.5% | +1.9% | 801 円75 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,002 円94 億円 | 32 円3 億円 | −47.2% | −6.3% | 258 円24 億円 |
| 悲観 | 16% | 126 円12 億円 | 0 円0 億円 | −93.6% | −24.0% | 20 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,115 円199 億円 | 158 円15 億円 | +16.2% | +1.6% | 2,273 円214 億円 |
今の株価時価総額 1,956 円184 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 8% 高付加価値案件を守り施工を広げる 利益 34 億円 · PER 13.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 5,163 円486 億円
AI導入が進んでも、顧客の上流課題の整理と複雑な案件の責任者には高い対価が払われる。INTLOOPは伊藤忠商事グループなど大企業との取引を広げ、少人数の戦略人材と必要なフリーランスを束ねる。稼働人年は現在と同じ水準を保ち、価格は物価上昇を転嫁する。INTLOOP Pocketは仕事を支える道具となるが、開示された製品売上がないため、独立した成長売上は見込まない。
ディクスは再開発や設備更新で施工案件を増やし、現場の人手不足を受注単価にも反映できる。買収企業ののれんは減損を避け、グループの管理費は売上増より緩やかに伸びる。2026年の採用先行による利益の落ち込みが解消し、利益率は過去の水準を上回る。事業から生まれた資金の一部を自社株買いへ振り向けるようになり、創業者による支配の下でも少数株主への還元が改善する筋書きである。
- フリーランス専門人材の案件紹介・稼働支援:数量 1,500(年間平均で稼働するフリーランス人数(人年))× 価格 0.18(稼働者1人年当たりの顧客請求売上(億円、稼働の月数を含む))→ 売上 271 億円・営業利益 26 億円。数量は現状維持、請求単価は物価並み1.34倍。人月型のAI代替でも高度人材に仕事が残る上限。
- 自社コンサルティング・PMO:数量 675(顧客向けデリバリー社員の換算人数(人年))× 価格 0.19(社員1人年当たりの顧客請求売上(億円、採用直後の非稼働を含む))→ 売上 129 億円・営業利益 14 億円。上流のFDE型支援と高い稼働率が維持される。人数は増やさない。
- ディクス傘下のITインフラ・ネットワーク現場施工:数量 198(年当たり設備・ネットワーク工事案件の換算件数(件))× 価格 0.67(工事案件1件当たりの売上(億円))→ 売上 133 億円・営業利益 15 億円。施工案件換算件数は1.65倍、単価は1.34倍。現場の工事・設備更新が拡大。
- 子会社のSI・IT運用・BPOと人材支援:数量 480(子会社側の有償稼働技術者・業務担当者の換算人年(人年))× 価格 0.13(1人年当たりの顧客請求売上(億円))→ 売上 60 億円・営業利益 4 億円。人月数量は維持し、単価は物価並み。AI工数削減を高度人材への移行で補う。
倍率:10年後ROEは33.59÷349.02=9.62%、k=7.5%、弱い堀で超過収益の残る割合1/3、RONIC約8.21%。長期名目g=0.4%から正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)約13.40倍。AI代替をgに反映済みであり、倍率に別の恣意的な割引は加えない。
確率:高単価案件の営業と施工子会社の受注を十年間ともに維持し、採用費も抑える難度が高い。AI製品の金額未開示のため、人月数量の増加は楽観でも認めない。
やや楽観 17% 上流シフトで利益率が回復 利益 24 億円 · PER 13.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3,878 円365 億円
初級の調査や開発の一部をAIエージェントがこなすが、金融・通信・大企業のシステム刷新に伴うプロジェクト管理や変革の責任者は残る。フリーランスと自社コンサルタントの有償稼働量は現在の85%へ減る。単価改定は続き、名目価格は物価に追随するので売上の落ち込みは限られる。会社の営業は人数を積み上げる方式から課題解決チームへ移り、固定的な採用費も落ち着く。
ディクスのネットワーク工事は需要の拡大で標準案件数が増え、親会社が保有比率を高めた効果で利益の帰属も改善する。買収は既存事業と相性のよいものに絞り、のれんの大きな減損を避ける。2030年の経営目標には届かなくても、2026年に見られた売上と利益の逆行が解消し、複数の業態を持つ会社として相応の利益を残す。株主還元はなお限定的だが、一部の自社株買いが実行される。
- フリーランス専門人材の案件紹介・稼働支援:数量 1,275(年間平均で稼働するフリーランス人数(人年))× 価格 0.18(稼働者1人年当たりの顧客請求売上(億円、稼働の月数を含む))→ 売上 231 億円・営業利益 18 億円。AI代替後の稼働人年0.85倍、名目単価1.34倍。
- 自社コンサルティング・PMO:数量 574(顧客向けデリバリー社員の換算人数(人年))× 価格 0.19(社員1人年当たりの顧客請求売上(億円、採用直後の非稼働を含む))→ 売上 110 億円・営業利益 10 億円。上流案件の高稼働を保つが人年は0.85倍。
- ディクス傘下のITインフラ・ネットワーク現場施工:数量 168(年当たり設備・ネットワーク工事案件の換算件数(件))× 価格 0.67(工事案件1件当たりの売上(億円))→ 売上 113 億円・営業利益 11 億円。現場施工量1.4倍、単価は物価並み。
- 子会社のSI・IT運用・BPOと人材支援:数量 408(子会社側の有償稼働技術者・業務担当者の換算人年(人年))× 価格 0.13(1人年当たりの顧客請求売上(億円))→ 売上 51 億円・営業利益 3 億円。SI・BPOは0.85倍の人年でも価格を保つ。
倍率:ROE=24.20÷309.52=7.82%、k=7.5%、弱い堀のRONIC約7.61%、10年より先の名目g=0.4%。式(1−g÷RONIC)÷(k−g)は約13.34倍。高成長は持続する成長率には入れない。
確率:現在進めている単価改定と稼働率の回復が進む確度はあるが、AIにより人月が15%減る状況でも高い粗利を守り続ける必要がある。
中立 34% AIの省力化と施工需要が相殺する 利益 13 億円 · PER 13.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,272 円214 億円
顧客はシステム刷新や業務改革を続けるが、資料作成、プログラム作成、検証、定型運用にAIエージェントを使う。コンサルタントの人数を一律に増やす必要はなくなり、フリーランス、自社コンサル、子会社SIの実質稼働量は現在の65%へ減る。高度な案件には物価相当の単価改定が通るが、工数削減分を単価で取り返すことはできない。
ネットワークの新設や老朽設備の更新は、人が現場に入るため比較的持ちこたえる。ディクスは標準案件数を少し増やし、施工売上が会社全体の下支えとなる。ただし設備工事にも競争があり、利益率の大幅上昇は見込まない。採用費の異常な高止まりは解消するものの、買収先の管理費とソフト投資の償却が重く、2030年に掲げた営業利益率には届かない。人月の減少と蓄積した自己資本でROEも低下する。配当はなく、買い戻しを実行しても規模は小さい。
- フリーランス専門人材の案件紹介・稼働支援:数量 975(年間平均で稼働するフリーランス人数(人年))× 価格 0.18(稼働者1人年当たりの顧客請求売上(億円、稼働の月数を含む))→ 売上 176 億円・営業利益 11 億円。人月型はAI代替で実質稼働量0.65倍、名目単価1.34倍。
- 自社コンサルティング・PMO:数量 439(顧客向けデリバリー社員の換算人数(人年))× 価格 0.19(社員1人年当たりの顧客請求売上(億円、採用直後の非稼働を含む))→ 売上 84 億円・営業利益 6 億円。FDEやPMOは残るが仕事量は約3分の2。
- ディクス傘下のITインフラ・ネットワーク現場施工:数量 138(年当たり設備・ネットワーク工事案件の換算件数(件))× 価格 0.67(工事案件1件当たりの売上(億円))→ 売上 92 億円・営業利益 8 億円。設備更新と再開発で標準案件1.15倍、物価転嫁。
- 子会社のSI・IT運用・BPOと人材支援:数量 312(子会社側の有償稼働技術者・業務担当者の換算人年(人年))× 価格 0.12(1人年当たりの顧客請求売上(億円))→ 売上 38 億円・営業利益 2 億円。受託SI・BPOの人年は0.65倍、単価上昇は1.30倍にとどまる。
倍率:ROE=13.20÷232.72=5.67%でk=7.5%を下回る。再投資しても株主の超過利益を生まないので長期成長を値に足さず、ROE≦kの上限1÷k=13.33倍を採用。人月型のAI代替は数量0.65倍とg_long0.4%に反映済み。
確率:国内のIT刷新需要は続き、現場工事も残る一方、売上の大半を占める人月の稼働数はAI代替によって約35%減ると判断する。下に寄せる理由:2026年7月期に採用先行で大幅減益となり、借入・無形資産が増えた一方、AI製品の独立した売上額が開示されていない。
やや悲観 25% 元請けが内製AIへ移行し採算が細る 利益 6 億円 · PER 12.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,002 円94 億円
大手SIerと直接の発注企業は自社のAIエージェントを使い、従来なら複数の外部技術者が担当した調査や実装を少人数で終わらせる。INTLOOPの案件紹介、コンサルティング、子会社SIの稼働人年は現在の52%になる。価格改定にも限界があり、名目単価は十年間の物価上昇を下回る。仕事の薄い時期に採った人の賃金が残り、人材仲介の利益率も縮む。
ディクスの現場施工は受注を維持しやすいが、公共・通信事業者の予算や下請け単価の競争には逆らえない。工事の件数は小幅に減り、利益の厚い大型案件の比率も落ちる。ソフト投資と企業買収の成果は一部にとどまり、大きな成長投資を続けられなくなる。会社は黒字を保ち返済もできるが、新たに残した利益を再投資しても資本コストに届かない。会社が配る資金も少なくなり、少数株主に帰属する企業価値は縮む。
- フリーランス専門人材の案件紹介・稼働支援:数量 780(年間平均で稼働するフリーランス人数(人年))× 価格 0.16(稼働者1人年当たりの顧客請求売上(億円、稼働の月数を含む))→ 売上 126 億円・営業利益 5 億円。実質人年0.52倍、名目単価1.20倍で物価負け。
- 自社コンサルティング・PMO:数量 351(顧客向けデリバリー社員の換算人数(人年))× 価格 0.17(社員1人年当たりの顧客請求売上(億円、採用直後の非稼働を含む))→ 売上 60 億円・営業利益 2 億円。戦略・PMOでも外部委託を減らされる。
- ディクス傘下のITインフラ・ネットワーク現場施工:数量 114(年当たり設備・ネットワーク工事案件の換算件数(件))× 価格 0.63(工事案件1件当たりの売上(億円))→ 売上 71 億円・営業利益 6 億円。工事件数0.95倍、名目単価1.25倍。
- 子会社のSI・IT運用・BPOと人材支援:数量 250(子会社側の有償稼働技術者・業務担当者の換算人年(人年))× 価格 0.11(1人年当たりの顧客請求売上(億円))→ 売上 28 億円・営業利益 1 億円。SI・BPOの実質工数0.52倍。
倍率:ROE=5.80÷162.32=3.57%はk7.5%未満で、稼ぐ力の上限は1÷k=13.33倍。成長の再投資価値は認めず、低収益・運転資金の余裕を考えた12.4倍。稼ぐ力約77.3億円と売却可能資産6億円の大きい方を超えない。
確率:AIを取り込んだ大手SIer・コンサル会社が外注の人月を減らし、INTLOOPの中間マージンにも競争が及ぶ場合。人材ネットワークだけでは顧客の引き留めが難しい。
悲観 16% 人月商売が崩れ買収資産を減損 利益 −6 億円 · PBR 0.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 126 円12 億円
顧客企業と大手SIerが汎用的な業務エージェントを内製化し、これまで人月で外注していた作業を大幅に減らす。INTLOOPが供給するフリーランス、自社コンサルタント、子会社SIの実質稼働量は現在の35%まで縮む。単価も十年間で物価ほどには上がらず、質の高い担当者だけを残して事業を縮小する。登録者は多数いても案件の量と値決め力が消え、紹介・管理を担う固定費が採算を壊す。
ディクスの通信設備工事には現場需要が残るが、大手の工事会社との価格競争と発注量の減少で成長は止まる。AI製品の売上は既存人月の減少を補うほど大きくならず、投資有価証券と買収先の一部は失敗する。のれん、開発中ソフトと投資案件に約25億円の減損が生じ、10年間の純損益も合計で約2億円の赤字となる。配当・自社株買いは行わない。会社は小さく存続していても、株主が期待した高ROE企業としての姿は残らない。
- フリーランス専門人材の案件紹介・稼働支援:数量 525(年間平均で稼働するフリーランス人数(人年))× 価格 0.15(稼働者1人年当たりの顧客請求売上(億円、稼働の月数を含む))→ 売上 77 億円・営業利益 −1 億円。実質人年0.35倍、名目単価1.08倍。中立比でも大幅に縮小。
- 自社コンサルティング・PMO:数量 236(顧客向けデリバリー社員の換算人数(人年))× 価格 0.15(社員1人年当たりの顧客請求売上(億円、採用直後の非稼働を含む))→ 売上 37 億円・営業利益 −2 億円。人月0.35倍、管理職の固定人件費が残り赤字。
- ディクス傘下のITインフラ・ネットワーク現場施工:数量 90.0(年当たり設備・ネットワーク工事案件の換算件数(件))× 価格 0.55(工事案件1件当たりの売上(億円))→ 売上 50 億円・営業利益 2 億円。現場工事件数0.75倍、価格1.10倍。案件薄と競争による低採算。
- 子会社のSI・IT運用・BPOと人材支援:数量 168(子会社側の有償稼働技術者・業務担当者の換算人年(人年))× 価格 0.10(1人年当たりの顧客請求売上(億円))→ 売上 17 億円・営業利益 0 億円。SI・BPOの人年0.35倍、元請けがAI内製化。
倍率:赤字のため永久利益へのPERは使わない。2026年の親会社帰属自己資本66.52億円から、十年間の累計損失約2億円と、のれん・開発ソフト・投資の減損約25億円を反映した自己資本39.52億円が対象。清算時に回収し得る資産は約6億円で、0.30倍の12億円弱はその床を超える。過去の市場PBRの谷は参照しない。
確率:AIがSIerの外注、人材仲介、BPOを同時に削り、高い固定費と買収のれんが損失を増幅する複合的な場合。存続はするが本来の堀を失う。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
フリーランス専門人材の案件紹介・稼働支援
High PerformerやTECH STOCKを通じた独立コンサルタント・エンジニアの稼働に伴う売上。AI代替の型は人月・工数。
| 数量年間平均で稼働するフリーランス人数(人年) | 価格稼働者1人年当たりの顧客請求売上(億円、稼働の月数を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/07 | 1,500 | 0.14 | 203 | 5 |
| 10 年後 中立 | 975 | 0.18 | 176 | 11 |
取り方:2026年3月末の稼働フリーランスは約1,650人、7月期末に向け減少傾向との決算説明を踏まえ、年間平均稼働人年を1,500と推計した。顧客請求の通年換算を1人1,350万円とし、売上約202.5億円。会社は本体内のこの事業だけの売上・人年単価を開示しないため推計値である。登録者約5.7万人は稼働人数に混ぜない。
自社コンサルティング・PMO
社員が戦略、業務改革、IT導入、案件の進行管理を行う。AI代替の型は人月・工数。
| 数量顧客向けデリバリー社員の換算人数(人年) | 価格社員1人年当たりの顧客請求売上(億円、採用直後の非稼働を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/07 | 675 | 0.14 | 97 | −1 |
| 10 年後 中立 | 439 | 0.19 | 84 | 6 |
取り方:2026年3月末のデリバリー社員はINTLOOP本体・戦略・PMO合計で673名という会社の人数推移を採用し、年間換算675人を近似した。残る本体売上約96.6億円を年人当たり約1,431万円と推計。顧客稼働率の低い新入社員も含むため表面の請求単価とは違う。2026年7月期単体売上299.06億円からフリーランス売上推計を控除したもので、法定の報告セグメントではない。単体営業利益4.12億円はフリーランス推定5億円と当事業の採用先行損失約0.88億円の合計で近似する。
ディクス傘下のITインフラ・ネットワーク現場施工
回線・通信設備、ネットワーク配線、施設やインフラの構築を請け負う。現場の体を要する仕事が中心で、AI代替は設計・事務部分だけに効く。
| 数量年当たり設備・ネットワーク工事案件の換算件数(件) | 価格工事案件1件当たりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/07 | 120 | 0.50 | 60 | 6 |
| 10 年後 中立 | 138 | 0.67 | 92 | 8 |
取り方:会社説明ではディクスに通信設備工事・ITインフラ設置・数十億円の工事受注残があるが、案件件数と分野別の売上は未開示。2026年7月期の連単売上差約104.9億円のうち60億円を現場施工と仮に区分し、標準案件120件×約5,000万円で換算した推計。大型工事は複数の標準件数に換算する。独占シェアを仮定しない。
子会社のSI・IT運用・BPOと人材支援
ディクス傘下のシステム開発、IT人材派遣、運用・事務を含む。AI代替の型は人月・工数。
| 数量子会社側の有償稼働技術者・業務担当者の換算人年(人年) | 価格1人年当たりの顧客請求売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/07 | 480 | 0.09 | 45 | 3 |
| 10 年後 中立 | 312 | 0.12 | 38 | 2 |
取り方:2026年7月期の連結売上403.99億円と単体299.06億円の差約104.93億円が子会社と連結調整の概算である。うち現場施工推計60億円を除く約44.9億円を、技術者・BPO担当者480人年×年936万円と見積もる。職種別人数やセグメント損益の独立開示はなく、案件の人員構成も推計。子会社の内部取引消去を正確に測れないため、合計が全社実績に合うよう調整している。推計した現場施工6.20億円とSI等3.05億円の利益合計は、連結営業利益13.37億円と単体4.12億円の差9.25億円に一致する。
リスクと懸念
AIエージェント代替
企業が調査、設計、試験、文書作成、保守の一部をエージェントに移せば、フリーランス、自社コンサル、子会社SIの請求人月が減る。単価が物価並みに上がっても数量の落ち込みは補えない。独自データや不可欠な業務基盤の開示はなく、会社全体を例外的な高成長型に分類できない。
採用先行と稼働率の低下
2026年7月期は売上総利益が増えたのに、採用費と人件費の増加で営業減益となった。会社が採用後の社員稼働率を85%まで戻せなければ、売上が増えても固定的な給与と事務所費が利益を食う。顧客の発注延期とAI省人化が同時に来れば、調整はさらに難しくなる。
買収と開発ソフトの減損
2026年7月期末にはのれんが約11億円、開発中ソフトが約14億円に増えている。ディクスの利益成長が止まったり新しいAIサービスが売れなかったりすれば、簿価を回収できず減損が生じうる。2026年7月期には投資有価証券の評価損も発生しており、投資判断の成否を営業利益とは別に追う必要がある。
借入と金利の正常化
最新の現金預金約55億円に対し、有利子借入も約56億円ある。2025年の純現金をそのまま守りの資産と考えるのは危険だ。借入を約3.5%で借り換えると、2026年に計上した支払利息より年1億円強ほど費用が増えうる。営業利益が細る局面で返済と追加投資が重なれば、少数株主の取り分が薄くなる。
支配株主と還元の不確実性
創業者とKSM株式会社だけで持株の約七割を占める。配当実績はなく、2026年に決議した上限3億円の買い戻しも9月末まで実行されていない。長い間ためた利益が買収やファンドに回り続ければ、帳簿上の自己資本が積み上がっても株主の受け取る現金とは一致しない。
子会社と現場工事の受注変動
ディクスの通信網・設備工事はAIが直ちに置き換えられない仕事だが、大手顧客の工事予算、下請けの施工力、建設人件費に依存する。数十億円規模の受注残があるとの経営説明は短期の支えにすぎず、10年先の利益率を保証しない。SI・BPOの部分は本体と同じAI代替リスクを持つ。
今後の分かれ目
- フリーランス稼働人数と社員稼働率が回復し、2027年7月期の営業利益35億~46億円を実現したら
- 2026年の採用費先行が一時的だった可能性を認める。ただし2030年以後の人月数量まで伸びるとは扱わず、翌期以降の成約件数と単価を見て中立の営業利益率を見直す。
- AIエージェント製品の外部顧客への売上・受注額、継続率、粗利率が独立して開示され始めたら
- 人月型の見通しと切り離して製品収益の数量と価格を積み上げる。成果報酬への移行と顧客の乗り換えにくさを確認できた場合だけ楽観の数量上限と長期成長率を上げる。
- 案件数と稼働フリーランスが連続して減る一方、登録者数だけ増えたら
- 顧客が外部に買う人月の縮小を疑い、やや悲観・悲観の重みを高める。登録数ではなく有償人年と平均請求額を重視する。
- ディクスの工事受注残が利益と営業現金収支に変わり、現場工事の比率が増えたら
- AIに代替されにくい部分が増えたとみなし、数量の下限と会社全体の長期成長率を再評価する。買収のれんを維持できるかも同時に確認する。
- 借入金がさらに増え、のれん・ソフト仮勘定の減損や新株発行が続いたら
- 稼いだ利益の再投資利回りが資本コストを下回る危険を強く見る。悲観の床を引き下げ、既存株主の取り分も薄めて考える。
- 3億円の買い戻しが実行され、さらに継続的な増配・自社株買いが始まったら
- 現金が株主に戻る可能性が高まる。支配株主の強さだけで低く見ていた余剰現金の戻り方を、実績に合わせて改める。
見ておくもの
- 四半期の稼働フリーランス数(登録者数と区別)と実質請求単価
- デリバリー社員数と稼働率、会社が目指す85%への到達時期
- 売上総利益率と採用費・販管費の増減、営業現金収支
- ディクスの設備工事受注残、施工部門の利益、親会社への帰属持分
- INTLOOP Pocketの実際の顧客売上、継続率、成果報酬契約の比率
- のれん・ソフトウェア仮勘定・借入金・投資有価証券の変動
- 自社株買いの執行株数と配当・総還元方針の具体化
倍率と資本コストの決め方
株価を見てから将来の倍率を調節することはしていない。2026年7月期の最新実績に合わせ、まず人月三分野の人数×年請求額と現場施工の件数×契約額から2036年の売上を計算した。AIエージェント代替は中立の人月数量0.65倍とg_long0.4%に入れ、資本コストの寿命や確率へ重複して課していない。楽観でも金額が分からないAI製品売上は加えていない。倍率はk7.5%、弱い堀のRONICと長期gによる上限を使い、ROEがkを下回る中立は稼ぐ力1÷kで止めた。悲観は2026年の純現金が消えたこと、のれん・開発ソフト、非支配株主を反映した資産回収額を床にする。日本基準の新リース会計で2027年8月以降に始まる年度からBSの見え方が変わる可能性があるため、十年後も家賃を費用として扱う同じ基準で利益を比較した。基準株数は添付の2026年5月末値を写し、7月末との差は約0.02%である。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。国債3%と株式リスクプレミアム4.5%の基本7.5%。個別の買収や人材採用の失敗は将来の利益と確率に反映し、資本コストへ重複加算しない。