結論
ホテル、ニューグランドは、横浜・山下公園の前に建つクラシックホテルを営む会社だ。客室は 230 室で、宴会とレストランが売上の 7 割を占める。
筆者の結論は「割高」だ。理由は稼ぐ力の細さにある。売上は 65 億円と過去最高だが、営業利益は 3 億円にとどまる。過去 20 年のうち 10 期は営業赤字だった。
資産の裏付けも薄い。本館の敷地は横浜市から、タワー館の敷地はリース会社から借りている。本館の建物も横浜市との共有だ。売って値が付く土地は持っていない。
看板は本物だ。開業から 100 年近く、洋食発祥の名物と歴史の建物は、ほかのホテルがまねできない。だが建物は古く、更新の投資が利益を吸う。株主に残る利益は、時価総額に比べてあまりに小さいと筆者は見る。
今の値段は、看板と株主優待への愛着が支えている。事業の利益で測ると、最も良い筋書きでも今の時価総額に届かない。借入と手元の現金はほぼ同じで、財務が傾く心配は小さい。ただ財務の健全さは、利益の薄さを埋めてはくれない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「良い看板を持つが、株主に利益を残せない事業」だ。10 年後もホテルは港に立っているだろう。だが株主のものになる利益は細い。
株主のものになる利益で見ると、営業利益 3 億円から税を引き、償却を上回る更新の投資を引くと、手元にはほとんど残らない。今の建物の償却は取得した時の値段のままで、会計の利益は実態より少し良く見える。改修は上がった建設費で払うしかない。
堀、つまり他社がまねできない強みは、歴史と場所にある。ただ値段を自分で決める力は弱い。土地も借り物で、資産の安全域も無い。安全域は無い、と筆者は見る。
オーナーとして持ち続けたい事業かと問われれば、文化財としての愛着は分かるが、資本を預ける先としては弱い。利益が資本コストを超えて積み上がる道筋が、まだ見えないからだ。払う値段が直近の純利益の 20 倍を超える今、看板の価値はすでに値段に織り込まれている。
何で稼ぐ会社か
売上 65 億円のうち、宴会が 35%、宿泊が 32%、レストランが 22% だ。残りは百貨店などに出す支店と、わずかな賃貸収入になる。
本館は 1927 年の開業で、横浜市の歴史的建造物に認められている。1991 年に建てたタワー館と合わせて客室は 230 室、宴会場は 4 つある。館内に 6 つ、外に 4 つの飲食店を持つ。
稼ぎの仕組みは、客室で利益を出し、宴会と料飲で人を雇い続ける形だ。客室は人手が少なく利益が厚い。宴会と料飲は売上こそ大きいが、人件費と食材で利益はほとんど残らない。
費用の多くは人件費、敷地の賃料、建物の維持だ。客が減ってもこれらはすぐには減らない。売上が 1 割落ちれば、営業利益はほぼ消える。2020 年には売上が 4 割減り、営業赤字は 9 億円に達した。
いまは熱源や防災設備の更新、本館の客室の改修が続く。2025 年 11 月期の設備投資は 9 億円で、償却の 3 億円の 3 倍近い。更新が一巡するまで、会計の利益より現金の出方の方が重い。
山下公園側では「グランドメゾン山下公園 THE HOUSE」という店舗・事務所の建物を 2026 年 11 月の完成に向けて進めている。総額はまだ示されていない。
優良さと弱いところ
強みは看板と場所だ。山下公園と港を望む立地、マッカーサーが泊まった歴史、ドリアやナポリタンの発祥という物語は、新しいホテルには作れない。海外の個人客と、記念日に泊まる国内の客に効く。
弱みは三つある。一つ目は稼ぐ力だ。2014 年から 2022 年まで、営業黒字の年はわずかしかない。直近の 3 期の黒字も、営業利益率は 5% 前後にとどまる。二つ目は資産だ。土地は借り物で、本館は横浜市と共有している。三つ目は建物の古さだ。更新の投資が終わらない。
2017 年には減損で純損失 41 億円を出し、自己資本は 3 割弱まで減った。宿泊業は固定費が重く、客が消えると利益は一気に崩れる。
経営は創業家の流れをくむ原家が担い、手堅く借金を抑えてきた。ただ資本の効率は低く、自己資本利益率は 5% 台だ。資本コストの 8.5% に届かず、ためた利益は帳簿の額ほどの価値を生んでいない。直近 3 期の黒字が定着するかどうかが、優良さを測る分かれ目だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
横浜のホテルは、訪日客の追い風を東京や京都ほどは受けていない。外国人の客は東京に泊まり、横浜には日帰りで来ることが多い。単価の伸びは、都心より一歩遅れる。
一方で供給は増えた。みなとみらいには外資系の高級ホテルや大型ホテルが相次いで開いた。客は新しい客室と眺めに高い値を払う。古い名門は、歴史の価値で選ばれる客を取りに行くしかない。
宴会と婚礼は、構造的に細る市場だ。婚礼の数は人口とともに減り、企業の宴会も小さくなった。ただ式典や国際会議は戻り、宴会の売上は前の期に 1 割伸びた。
10 年で見れば、ホテルの単価は物価並みに上がるのが普通の姿だ。人手不足で賃金は物価以上に上がりやすく、サービスの質を保つ費用も膨らむ。訪日客には波があり、2025 年秋からは中国からの客が減った。
横浜市は山下ふ頭の再開発や観光の振興を進めている。山下公園の前という立地は、その恩恵を受けうる。ただ再開発の中身はまだ固まらず、10 年の数量に足す根拠にはならない。
日本全体では、2025 年の外国人の延べ宿泊は 1 億 7,800 万人泊と過去最高だった。一方で日本人の宿泊は 4% 減った。横浜の名門ホテルにとっては、外国人の個人客をどれだけ取り込めるかが単価の分かれ目になる。
資本政策と M&A
資本政策は控えめだ。配当の総額は年 0.3 億円にすぎない。自社株買いの実績もほとんど無い。利益は建物の更新と自己資本の立て直しに回る。
株主優待はホテル利用券、宿泊と飲食の 1 割引、コーヒー券だ。株数が 118 万株と少なく、会社の負担は年 0.2 億円に届かないとみられる。株主の顔ぶれは原地所のほか、横浜銀行、清水建設、JR 東日本など地元と取引先が並ぶ。
借入は約 24 億円で、手元の現金とほぼ同じだ。買収で外に出る話は今のところない。安定株主が多く、TOB が起きにくい形だ。還元を増やす力も弱く、余った現金を株主に戻す形にもなっていない。優待は小さく、還元の額には足していない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
港の前に 1927 年から建つホテルは、二度と作れない。マッカーサーや多くの文化人が泊まった歴史、洋食発祥の名物は、外資系のどの新しいホテルにもない資産だ。訪日客は歴史の本物に高い値を払う。
数字も戻った。売上は 3 期続けて過去最高を更新し、営業黒字が定着した。宴会は式典と会議で前の期に 1 割伸びた。
熱源や空調の更新が終われば、本館の客室を改修して単価を上げられる。山下公園側に建てる店舗・事務所の建物も新しい収入になる。
借入は手元の現金とほぼ同じで、金利が上がっても利払いはほとんど増えない。地元の銀行や取引先が株主に並び、経営は安定している。看板の価値に比べ、自己資本 37 億円はむしろ小さい。
優待を目当てに持つ個人株主も多く、株主の顔ぶれは安定している。急な売りで値が崩れにくい会社だ。
横浜市は山下ふ頭の再開発を進めており、港の観光の中心に立つホテルの値打ちはさらに上がる。本館は「泊まれる文化財」として、ほかに代わりが無い。
慎重な見方
看板は立派だが、利益が出ない。2014 年から 2022 年までの 9 期で、営業黒字は 2 期しかない。直近の黒字も営業利益率 5% 前後で、少し客が減れば消える。
土地は横浜市とリース会社から借りている。本館の建物も横浜市との共有だ。売れる資産が無いので、悪い時の床が無い。敷地の賃料は売上が落ちても下がらない。
建物は築 100 年と 30 年を超える。設備投資は償却の 3 倍近くに膨らみ、改修は建設費が上がるほど高くつく。会計の利益が出ても、現金は設備に消える。
みなとみらいには新しいホテルが次々に開き、客の取り合いは激しい。訪日客は東京と京都に泊まり、横浜は素通りされやすい。自己資本利益率 5% は資本コストに遠く届かない。
安定株主が多いぶん、経営に変化を迫る声も出にくい。資本の使い方が変わる見込みは小さい。2017 年には減損で純損失 41 億円を出した。同じことは、次の谷でも起こりうる。
どちらに重みを置いたか
看板の強さは慎重な見方も認めるが、利益が細く資産の床も無いので、慎重な見方が勝る。確率は中立に厚く置き、悲観側を楽観側より厚くした。最も良い筋でも、利益で測った価値は今の値段に届かない。今の値段は、看板と優待への愛着が支えているとみる。利益の裏付けが付くには、営業利益率が 6% を超えて定着する必要がある。そこまでは、過去の赤字の多さを重く見る。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/11 期)
確率で加重した株価時価総額 2,704 円32 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 293 円3 億円)。 今の値に割り戻すと 1,391 円16 億円、今との差 −77.8%、 期待の年率 −7.1%(資本コスト 8.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 6,637 円78 億円 | 517 円6 億円 | +14.1% | +1.3% | 501 円6 億円 |
| やや楽観 | 18% | 4,264 円50 億円 | 398 円5 億円 | −25.7% | −2.9% | 839 円10 億円 |
| 中立 | 42% | 2,961 円35 億円 | 322 円4 億円 | −47.6% | −6.3% | 1,379 円16 億円 |
| やや悲観 | 21% | 945 円11 億円 | 212 円3 億円 | −81.6% | −15.6% | 243 円3 億円 |
| 悲観 | 12% | 254 円3 億円 | 42 円1 億円 | −95.3% | −26.3% | 36 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,704 円32 億円 | 293 円3 億円 | −52.2% | −7.1% | 2,997 円35 億円 |
今の株価時価総額 6,270 円74 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 港町の名門として単価を上げ、改装が当たる 利益 6 億円 · PER 12.4 倍 · 株価時価総額 6,637 円78 億円
横浜の港に面したクラシックホテルという看板が、訪日客と国内の富裕層に効く。本館の客室を改修し終え、1927 年の建物で泊まる体験に高い値が付く。客室単価は 10 年で 1.6 倍になり、稼働も少し上がる。
宴会は婚礼の減りを企業の式典と会合で埋める。山下公園側の新しい店舗・事務所の建物も賃料を生む。
人件費は上がるが、単価の伸びで吸収できる。営業利益率は 8% 台と、この会社の歴史では初めての水準になる。それでも建物の更新は続き、利益の多くは設備に戻る。
創業家と地元の安定株主は経営を変えず、配当は少しずつ増える。訪日客の看板として横浜市の観光政策とも結び付き、本館は「泊まれる文化財」として値が付く。
- 宿泊:数量 6.9(販売した客室の数(万室泊))× 価格 4.90(1 室泊あたりの客室単価(万円・名目))→ 売上 34 億円・営業利益 11 億円。数量 今の 1.03 倍 × 単価 今の 1.60 倍、利益率 31.0%
- 宴会・婚礼:数量 14.6(宴会・婚礼の利用者数(万人、推定))× 価格 2.10(1 人あたり単価(万円・名目))→ 売上 31 億円・営業利益 1 億円。数量 今の 0.95 倍 × 単価 今の 1.40 倍、利益率 4.0%
- レストラン・支店・その他:数量 48.0(利用者数(万人、推定))× 価格 0.63(1 人あたり単価(万円・名目))→ 売上 30 億円・営業利益 0 億円。数量 今の 1.00 倍 × 単価 今の 1.40 倍、利益率 0.0%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.6% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.4 倍。全体の PER 12.38 倍、時価総額 70 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:過去 20 年で営業利益率 5% を超えた年は無く、8% 台は改装と訪日客の上振れがそろう時だけなので低く置いた。
やや楽観 18% 単価が物価を少し上回り、利益率 6% 台に乗る 利益 4 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 4,264 円50 億円
客室の稼働は今の水準を保ち、単価は物価を少し上回る 1.48 倍になる。横浜は東京や京都ほど訪日客が泊まらないが、港と歴史の看板は外国人の個人客に効く。
宴会は婚礼が細る分を会合と式典で埋め、売上は物価並みに伸びる。レストランは洋食発祥の名物で客を集めるが、人件費が重く利益はほぼ出ない。
熱源や空調の更新は終わり、本館の客室改修は建設費の上がった値段で行う。償却は増えるが、単価の伸びが上回る。営業利益率は 6% 台に乗る。
借入は手元の現金とほぼ同じで、金利が上がっても利払いは増えない。利益は設備と自己資本に積まれ、配当は少しずつ増える。看板を守りながら、ようやく安定して黒字を出せる会社になる。
- 宿泊:数量 6.9(販売した客室の数(万室泊))× 価格 4.53(1 室泊あたりの客室単価(万円・名目))→ 売上 31 億円・営業利益 9 億円。数量 今の 1.02 倍 × 単価 今の 1.48 倍、利益率 29.0%
- 宴会・婚礼:数量 14.2(宴会・婚礼の利用者数(万人、推定))× 価格 2.04(1 人あたり単価(万円・名目))→ 売上 29 億円・営業利益 1 億円。数量 今の 0.92 倍 × 単価 今の 1.36 倍、利益率 3.0%
- レストラン・支店・その他:数量 47.0(利用者数(万人、推定))× 価格 0.61(1 人あたり単価(万円・名目))→ 売上 29 億円・営業利益 −1 億円。数量 今の 0.98 倍 × 単価 今の 1.36 倍、利益率 -2.0%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.8% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 44 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直近 3 期は訪日客と単価の上昇で営業黒字が続き、売上は過去最高。単価が物価を少し上回る筋は現実にありうる。
中立 42% 単価は物価並み、更新の投資に利益が消える 利益 3 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 2,961 円35 億円
客室の数は増えず、稼働も頭打ちだ。単価は物価よりわずかに上の 1.38 倍にとどまる。みなとみらいには外資系の高級ホテルが増え、客の取り合いが続く。宴会は婚礼の減少で量が 1 割強減る。
営業利益率は 4% 台半ばで、直近と同じ水準だ。今ある建物の償却は取得した時の値段のままで、会計の利益は少し助かる。だが本館は築 100 年、タワー館も 30 年を超え、更新の投資は上がった建設費で払うしかない。償却を上回る現金が毎年出ていく。
配当は少額のままで、利益は設備と自己資本に積まれる。自己資本は厚くなるが、稼ぐ力は資本コストに届かず、ためた利益は帳簿の額ほどの価値を生まない。株主に戻る現金は細い。
- 宿泊:数量 6.7(販売した客室の数(万室泊))× 価格 4.23(1 室泊あたりの客室単価(万円・名目))→ 売上 28 億円・営業利益 8 億円。数量 今の 1.00 倍 × 単価 今の 1.38 倍、利益率 28.0%
- 宴会・婚礼:数量 13.6(宴会・婚礼の利用者数(万人、推定))× 価格 2.01(1 人あたり単価(万円・名目))→ 売上 27 億円・営業利益 1 億円。数量 今の 0.88 倍 × 単価 今の 1.34 倍、利益率 2.0%
- レストラン・支店・その他:数量 46.6(利用者数(万人、推定))× 価格 0.60(1 人あたり単価(万円・名目))→ 売上 28 億円・営業利益 −1 億円。数量 今の 0.97 倍 × 単価 今の 1.34 倍、利益率 -3.0%
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.8% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 30 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:稼働は高止まりで単価は物価並み、建物の更新が続くという、いちばん起きやすい形に厚く置いた。
やや悲観 21% 訪日客が細り、固定費が利益を食う 利益 1 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 945 円11 億円
円高や国際情勢で訪日客が細り、横浜の高級ホテルの単価は物価に届かない。国内の客も値上げに疲れ、稼働が 1 割近く落ちる。
宴会は企業の会合が減り、婚礼はさらに細る。人件費と敷地の賃料は物価で上がり続けるため、営業利益率は 2% を割る。
本館の客室改修は先送りされ、古さが単価の重しになる。利益はほとんど残らず、ためた利益は価値を生まない。配当は最低限にとどまる。
2016〜2019 年のように、売上は保てても営業利益は零の前後を行き来する。看板は残るが、株主に戻る価値は手元の現金と、細い利益の分にとどまる。改修を先送りした分だけ、次の更新の負担は重くなる。
- 宿泊:数量 6.2(販売した客室の数(万室泊))× 価格 3.83(1 室泊あたりの客室単価(万円・名目))→ 売上 24 億円・営業利益 6 億円。数量 今の 0.92 倍 × 単価 今の 1.25 倍、利益率 25.0%
- 宴会・婚礼:数量 12.3(宴会・婚礼の利用者数(万人、推定))× 価格 1.88(1 人あたり単価(万円・名目))→ 売上 23 億円・営業利益 0 億円。数量 今の 0.80 倍 × 単価 今の 1.25 倍、利益率 0.0%
- レストラン・支店・その他:数量 43.2(利用者数(万人、推定))× 価格 0.56(1 人あたり単価(万円・名目))→ 売上 24 億円・営業利益 −1 億円。数量 今の 0.90 倍 × 単価 今の 1.25 倍、利益率 -4.0%
倍率:純利益 0.8 億円の稼ぐ力(純利益÷k で約 9.5 億円)が売れる資産の床(約 4 億円)より大きいので PER で置く。ROE は k を大きく下回り、上限 1÷k の 76% の 9.0 倍。
確率:2016〜2022 年は 7 期のうち 6 期で営業赤字だった。高い固定費の上で訪日客が細る筋は十分に起きうる。
悲観 12% 改修できないまま古び、赤字に戻る 利益 −3 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 254 円3 億円
みなとみらいの新しいホテルとの競争に負け、本館の改修の資金を出せないまま古びる。客室単価は物価を大きく下回り、稼働も落ちる。
宴会と婚礼は大きく減り、営業赤字が続く。敷地の賃料と人件費は売上が落ちても減らない。2017 年のように建物の減損を迫られ、自己資本は細る。
売れる土地は持っていないので、床は手元の現金と有価証券の残りまでだ。会社は存続しても、少数株主に戻る価値はほとんど残らない。安定株主が多く、再編で救われる道も細い。
2020 年のコロナでは売上が 4 割減り、営業赤字は 9 億円に達した。同じ規模の谷が改修の遅れと重なれば、自己資本は 10 年前の水準まで細る。
- 宿泊:数量 5.0(販売した客室の数(万室泊))× 価格 3.37(1 室泊あたりの客室単価(万円・名目))→ 売上 17 億円・営業利益 3 億円。数量 今の 0.75 倍 × 単価 今の 1.10 倍、利益率 15.0%
- 宴会・婚礼:数量 9.2(宴会・婚礼の利用者数(万人、推定))× 価格 1.73(1 人あたり単価(万円・名目))→ 売上 16 億円・営業利益 −1 億円。数量 今の 0.60 倍 × 単価 今の 1.15 倍、利益率 -4.0%
- レストラン・支店・その他:数量 36.0(利用者数(万人、推定))× 価格 0.52(1 人あたり単価(万円・名目))→ 売上 19 億円・営業利益 −1 億円。数量 今の 0.75 倍 × 単価 今の 1.15 倍、利益率 -7.0%
倍率:赤字で PER は当てない。売れる資産の床(約 4 億円)より少し下の 3 億円を、今の自己資本 37 億円に対する PBR 0.08 倍として置いた。清算は少数株主には決められないので床を下回ってよい。
確率:コロナ前から営業赤字が続いた会社で、2017 年には減損で自己資本の 6 割を失った。構造的に負ける余地は大きい。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
宿泊
本館とタワー館の客室 230 室。
| 数量販売した客室の数(万室泊) | 価格1 室泊あたりの客室単価(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/11 | 6.7 | 3.06 | 21 | 6 |
| 10 年後 中立 | 6.7 | 4.23 | 28 | 8 |
取り方:稼働率は非開示のため、230 室 × 365 日 × 推定 80% で約 6.7 万室泊。宿泊の売上 20.6 億円を割って単価約 3.1 万円。部門の利益は非開示で、人手が少ない客室は利益率 30% と推定。
宴会・婚礼
4 つの宴会場での会議・式典・パーティー・婚礼。
| 数量宴会・婚礼の利用者数(万人、推定) | 価格1 人あたり単価(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/11 | 15.4 | 1.50 | 23 | 0 |
| 10 年後 中立 | 13.6 | 2.01 | 27 | 1 |
取り方:宴会の売上 23.1 億円を、1 人あたり約 1.5 万円と見て割り約 15 万人と推定。人手と食材が重く利益率 2% と推定。
レストラン・支店・その他
館内 6 店と百貨店などの支店 4 店、通販、わずかな賃貸収入。
| 数量利用者数(万人、推定) | 価格1 人あたり単価(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/11 | 48.0 | 0.45 | 22 | −1 |
| 10 年後 中立 | 46.6 | 0.60 | 28 | −1 |
取り方:全社の売上から宿泊と宴会を引いた 21.6 億円を、1 人あたり約 0.45 万円と見て割り約 48 万人と推定。料飲は人件費が重く利益率 −3% と推定。本社と共通の費用・償却の一部約 3.0 億円は調整に入れた。
リスクと懸念
更新の投資が利益を吸う
本館は築 100 年、タワー館も 30 年を超えた。設備投資は償却の 3 倍近くに膨らみ、本館の客室改修も控える。建設費の上昇で投資の額は増え、株主に残る現金は細る。
借地と共有の建物
本館の敷地は横浜市から、タワー館の敷地はリース会社から借りている。賃料は売上が落ちても下がらない固定費だ。売れる土地が無く、悪い時の資産の床も無い。
訪日客と景気の波
単価を支えるのは外国人の客と国内の富裕層だ。2020 年は売上が 4 割減り営業赤字 9 億円を出した。2025 年秋からは中国の客が減っている。
みなとみらいとの競争
外資系の高級ホテルや大型ホテルが近くに増えた。新しい客室と眺めを求める客は流れやすく、古いホテルは単価を上げにくい。
人手と人件費
宴会と料飲は人手に頼る。最低賃金が年 3% 前後で上がり続ける中、サービスの質を保つ費用は物価以上に膨らみやすい。
今後の分かれ目
- 本館の客室改修を終え、単価が物価を 2 割以上上回って上がったら
- やや楽観の確率を上げる。改修の額と償却の増え方も見る。
- 営業利益率が 3 期続けて 6% を超えたら
- 稼ぐ力が変わった証拠として、中立の利益率を見直す。
- 訪日客が減り、営業赤字に戻ったら
- やや悲観の確率を上げる。固定費の重さがそのまま出る。
- 敷地の賃料の改定で負担が増えたら
- 利益率の見通しを下げる。
- 安定株主の持ち分がまとまって売られるか、再編の話が出たら
- 買収の上振れを楽観に足すか検討する。
見ておくもの
- 客室単価と稼働率
- 宴会の売上と婚礼の件数
- 設備投資と償却の差
- 本館客室の改修の時期と額
- 敷地の賃料の改定
倍率と資本コストの決め方
宿泊は売った客室の数 × 客室単価、宴会と料飲は利用者数(推定)× 1 人あたり単価で積み、数量は実質、単価は名目(宿泊 1.38 倍・ほか 1.34 倍)。償却は今の約 3.3 億円を物価で増やさず、更新の投資の分だけ足して約 4.5 億円とし、調整の本社費は物価ほど増やしていない。k は 7.5% + quality 1.0% の 8.5%。ROE は 4% 台で k に届かず、PER は上限 1÷k の 8〜9 割。今の株価・PBR は倍率に使っていない。優待は年 1 億円に満たず還元には足していない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.6→12.38 倍・やや楽観 PER 10→11.76 倍・中立 PER 9.4→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.0% で 8.5%。借金の重い京都ホテル(9.0%)より借金の分だけ低く、借地と赤字の歴史の分だけ帝国ホテルより高い。