結論
翻訳センターは、特許と医薬の翻訳で国内最大級の会社だ。製薬会社や特許事務所から原稿を受け、登録翻訳者に割り振り、品質を検めて納める。筆者の結論は「やや割高」で、一番の理由は生成AIが人手の翻訳量を削ることにある。
稼ぎ方は人の作業量に比例する。機械翻訳の精度がここ数年で跳ね上がり、顧客は「訳してから人が直す」形へ移っている。直しの単価は全訳より安い。2026年3月期は売上が3%減り、翻訳部門の利益は3割落ちた。変化はもう数字に出ている。
支えは財務だ。時価総額の6割強にあたる約50億円の純現金を持ち、借入はない。中期計画では配当を自己資本の6%以上、総還元を利益の100%以上とした。現金を抱え込まない姿勢ははっきりしている。
それでも、10年後の稼ぐ力は今より細る公算が大きい。現金の厚みを足しても、確率で重みを付けた価値は今の時価総額を2割ほど下回る。現金が下値を守るので、大きく割高というわけではない。ただ、事業の部分に払う値段に安全域は見えない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「良い商売だったが、10年先の姿が読みにくい」の箱に入る。顧客の信頼と専門の翻訳者の層は本物の資産だ。しかし、その資産で売っているのは人の作業時間で、生成AIはまさにそこを安くする。
持ち主の目で見ると、利益の大半を配り、現金を溜め込まない姿勢は好ましい。設備もほとんど要らず、稼いだ利益がそのまま株主のものになる。オーナー利益と会計上の利益の差が小さい会社だ。
問題は安全域だ。今の値段の6割強は現金で裏付けられ、事業の部分に払う値段は小さい。それでも事業の利益が10年で細るなら、その小さな値段すら高い。筆者は、機械の訳文を検めて責任を負うという新しい売り物が、数字で見えるまで待つのが筋だと考える。わからない事業に高い値を払わない、という原則がここでは効く。現金の厚さは下値の支えであって、事業を買う理由にはならない。
何で稼ぐ会社か
売上の4分の3が翻訳だ。内訳は特許が約29億円、医薬が約27億円、工業製品の取扱説明書やソフトの現地語化が約19億円、金融・法務が約5億円になる。特許は国内外への出願明細書、医薬は治験や承認申請の書類が中心だ。どちらも誤訳が権利や承認に直結するので、専門の知識を持つ翻訳者と、訳文を検める工程に価値がある。
翻訳者の多くは社外の登録者で、案件ごとに外注する。費用の大半は外注費で、売上が減れば費用も減る。固定費は社員の品質管理担当と営業、システムだ。
残りは通訳が約13億円、翻訳者や通訳者を企業に送る派遣が約11億円、語学研修などのその他が約3億円だ。通訳は国際会議や商談、学会での同時通訳が多い。2026年3月期は通訳だけが11%伸び、対面の催しの戻りを取り込んだ。
2023年に多言語のウェブ制作のシトラスジャパンと、広島の福山産業翻訳センターを買い、2025年には子会社のFIPASを吸収した。小さな買収で顧客と人を足す型だ。顧客は国内の製薬会社、大手メーカーの知財部門、特許事務所が中心で、海外向けの出願や申請の波に売上が連動する。
優良さと弱いところ
強みは顧客の信頼と工程の厚さだ。特許事務所や製薬会社は、誤訳の責任を負える相手に頼む。数十年かけて積んだ用語集や訳文の蓄積、専門分野ごとの翻訳者の層は、新しく入る会社には作りにくい。
弱みは、その強みが人の作業量に結び付いている点にある。機械翻訳が下訳をこなすようになると、顧客は「直すだけなら安く」と求める。品質の責任という価値は残っても、1件あたりの作業時間は縮む。売上は量と単価の両方で押される。会社が効率化しても、その果実は値下げで顧客に渡りやすい。
営業利益率は過去12年で4〜8.5%と薄い。値決めの力は強くない。ROEは10%前後で、現金を厚く持つ分だけ見かけより低く出る。
経営は堅実で、無理な借入も大きな買収もしない。ただ、生成AIで翻訳の仕事の形が変わる局面で、自社の売り物を作り直せるかはまだ見えない。機械の訳文を検める工程に値段を付けられるかが、次の10年の優良さを決める。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の産業翻訳の市場は2,000〜3,000億円規模とされ、上場する専業は少ない。競合は大手の翻訳会社、特許事務所の内製、外資の大手、そして無数の個人翻訳者だ。翻訳センターは特許と医薬に絞った会社として最大級の位置にある。顧客の切り替えは遅く、取引は長く続く。
構造の変化は生成AIだ。DeepLや大規模言語モデルの訳文は、一般のビジネス文書なら人の手直しがほとんど要らない水準に来た。企業の社内文書や取扱説明書は、まず機械で訳す流れが定着した。人に残るのは、法的な責任が重い文書、専門用語の誤りが許されない文書、そして最終の品質保証だ。
特許は出願の件数自体が国内で横ばい、海外出願は緩やかに増える。医薬は国際共同治験の増加で書類の量は増えるが、ここでも機械翻訳と人の確認の組み合わせが標準になりつつある。
筆者は、業界全体で人が手を動かす翻訳の量は10年で3〜4割減ると見る。生き残るのは、機械の訳文を検める工程と責任を売れる会社だ。規模の小さい翻訳会社は淘汰され、仕事は大手に寄る。翻訳センターはその受け皿になりうるが、受け皿の大きさそのものが縮む。
資本政策と M&A
還元は手厚い。中期計画の3年間は、配当を自己資本の6%以上、総還元性向を100%以上とした。2026年3月期の配当は総額4.7億円で、純利益とほぼ同じ額を配った。
借入はなく、純現金は約50億円ある。うち3か月を超える定期預金が6億円ほど含まれる。外注費の支払いなど運転に要る分を除いても、30億円ほどは事業に要らない現金と見る。
買収は小ぶりで、価値を壊した例は見当たらない。株主優待はない。時価総額が小さく現金が厚いので、同業や事業会社による買収、経営陣による非公開化の候補にはなりうる。ただ、そうした観測は確かめられなかった。中期計画の後も全額還元が続くかが、現金の値打ちを左右する。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
特許と医薬の翻訳は、生成AIが来ても人が消えない分野だ。出願明細書の一語の誤りが権利の範囲を変え、承認申請の誤訳は審査の遅れになる。顧客は責任を負える相手に頼み続ける。機械翻訳はむしろ道具になり、翻訳者1人がこなせる量が増える。外注費が減れば利益率は上がりうる。
会社は機械翻訳と大規模言語モデルを工程に組み込み、案件を回す人の知恵をシステムに移すと言っている。単価が下がっても、1人あたりの処理量が倍になれば利益は残る。過去にも機械翻訳の進歩はあったが、利益率は8%前後を保ってきた。
財務も強い。約50億円の純現金と、総還元100%の方針がある。事業が縮む筋書きでも、株主は現金で守られる。時価総額の6割強が現金なら、事業に払っている値段は利益の数年分にすぎない。通訳は対面の催しの戻りで伸びており、ここは機械に置き換わりにくい。重要な交渉の場で、通訳の誤りの責任を機械に負わせる会社はない。小さな同業が淘汰されれば、残った仕事は大手に集まる。
慎重な見方
変化はすでに数字に出ている。2026年3月期は売上が3%減り、翻訳部門の利益は7.8億円から5.5億円へ3割落ちた。顧客が機械翻訳を自分で使い、人への発注を減らし始めた。これは一時の景気の波ではなく、仕事の形の変化だ。過去の機械翻訳の波とは精度の桁が違う。特許や医薬でも、下訳を機械に任せ、人は直すだけという発注に変わる。直しの単価は全訳の半分以下になりうる。
翻訳の会社が売っているのは人の時間で、それが安くなる以上、売上は量と単価の両方で削られる。機械翻訳を工程に入れても、その便益は値下げで顧客に渡る。翻訳者を外注で使う会社は、効率化の果実を自分の手元に残しにくい。
通訳も安全ではない。同時通訳の機械化は会議の場で広がり始めた。派遣も、翻訳者を企業に送る仕事そのものが細る。現金は厚いが、事業の価値が年々目減りするなら、時価総額の4割にあたる事業の部分は高い。会社はAIへの対応を語るが、それで増えた売上の金額はまだ一つも示していない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方のほうが強い。翻訳部門の利益の急な落ち込みは、生成AIの影響がもう始まっている証拠だ。特許と医薬の専門性は下値を支えるが、人の作業量で稼ぐ形は変わらない。確率はやや悲観と悲観に合わせて37%を置き、楽観は低めにした。一方で、純現金と全額還元の方針が悲観の深さを和らげる。事業が縮んでも、利益と現金が株主に戻る道筋ははっきりしているからだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,842 円96 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,327 円45 億円)。 今の値に割り戻すと 2,303 円77 億円、今との差 +4.7%、 期待の年率 +6.6%(資本コスト 7.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 6,026 円203 億円 | 1,992 円67 億円 | +264.5% | +13.8% | 561 円19 億円 |
| やや楽観 | 18% | 4,439 円149 億円 | 1,695 円57 億円 | +178.8% | +10.8% | 1,104 円37 億円 |
| 中立 | 38% | 3,143 円106 億円 | 1,427 円48 億円 | +107.7% | +7.6% | 1,736 円58 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,290 円43 億円 | 1,041 円35 億円 | +6.0% | +0.6% | 513 円17 億円 |
| 悲観 | 15% | 951 円32 億円 | 743 円25 億円 | −23.0% | −2.6% | 254 円9 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,842 円96 億円 | 1,327 円45 億円 | +89.5% | +6.6% | 4,169 円140 億円 |
今の株価時価総額 2,200 円74 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 機械翻訳を道具にして利益率を上げる 利益 9 億円 · PER 20.5 倍 · 株価時価総額 6,026 円203 億円
特許と医薬の顧客は、責任を負える相手に頼むことをやめない。翻訳センターは機械翻訳と大規模言語モデルを工程の中心に入れ、翻訳者1人がこなす量を大きく増やす。人が手を動かす量は1割減るが、品質保証の値段は物価並みに近く保つ。外注費が減り、翻訳の利益率は10%に上がる。通訳は対面の国際会議と商談で需要を保ち、物価並みの値上げを通す。総還元100%の方針は続き、現金は30億円前後を保つ。営業利益は今の1.6倍になる。成果に応じて値を取る形に移れたので、10年より先もわずかに伸びる。同業の淘汰で、残った大きな顧客の仕事も集まってくる。
- 翻訳:数量 365(翻訳した原文の量(百万字・年、推定))× 価格 26(1字あたりの売上(円・名目))→ 売上 95 億円・営業利益 9 億円。人の作業量 0.9 倍・単価 1.30 倍・利益率 10%
- 通訳:数量 8,820(通訳者の稼働(人日・年、推定))× 価格 0.00(1人日あたりの売上(億円・名目))→ 売上 18 億円・営業利益 2 億円。人日 横ばい・単価 物価並み・利益率 9%
- 派遣:数量 150(派遣している人数(人・年平均、推定))× 価格 0.08(1人あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 12 億円・営業利益 0 億円。人数 0.8 倍・利益率 3.5%
- その他(語学研修など):数量 3,280(受講者(人・年、推定))× 価格 0.00(1人あたりの売上(億円・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。受講者 横ばい・利益率 3%
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 20.8% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)30 億円。全体の PER 20.51 倍、時価総額 203 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AIを自社の売り物にした売上の開示がまだ無く、AIエージェント代替の決まりで楽観も量は1.0倍以下。単価を守りつつ処理量で稼ぐ形が10年続く確度は低いので7%。
やや楽観 18% 専門分野で量の減りを単価と効率で補う 利益 7 億円 · PER 18.8 倍 · 株価時価総額 4,439 円149 億円
生成AIで一般の文書の翻訳は人の手を離れるが、特許の明細書と医薬の申請書類は人の確認が続く。人が手を動かす量は10年で2割強減る。単価は物価にやや届かない。工程の効率化で利益率は8.5%と過去の山に近い水準を保つ。通訳は会議の機械化で件数がやや減るが、重要な商談と学会で値上げを通す。派遣は縮む。総還元100%の方針で利益はほぼ全額株主に戻り、自己資本は横ばいで推移する。利益は今より2割ほど多い水準に戻る。機械翻訳は脅威であると同時に、外注費を減らす道具として働く。小さな同業の廃業で、特許事務所からの仕事は少しずつ集まる。
- 翻訳:数量 316(翻訳した原文の量(百万字・年、推定))× 価格 26(1字あたりの売上(円・名目))→ 売上 81 億円・営業利益 7 億円。人の作業量 0.78 倍・単価 1.28 倍・利益率 8.5%
- 通訳:数量 8,114(通訳者の稼働(人日・年、推定))× 価格 0.00(1人日あたりの売上(億円・名目))→ 売上 16 億円・営業利益 1 億円。人日 0.92 倍・利益率 8.5%
- 派遣:数量 131(派遣している人数(人・年平均、推定))× 価格 0.08(1人あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。人数 0.7 倍・利益率 3%
- その他(語学研修など):数量 2,952(受講者(人・年、推定))× 価格 0.00(1人あたりの売上(億円・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。受講者 0.9 倍・利益率 2.5%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.8% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)30 億円。全体の PER 18.78 倍、時価総額 149 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:特許・医薬の専門性で人の工程が一定残る筋書き。翻訳部門の利益がすでに落ち始めているので、中立より上は控えめに18%。
中立 38% 人の翻訳量が3割強減り、利益は細る 利益 5 億円 · PER 16.5 倍 · 株価時価総額 3,143 円106 億円
顧客の多くが下訳を機械に任せ、人には直しと品質保証だけを頼むようになる。人が手を動かす量は10年で3分の2に減る。直しの単価は全訳より安く、平均の単価は物価に届かない。翻訳の利益率は7%前後で、過去の平均並みを保つのがやっとだ。通訳は対面の場が残り、量は1割強減るが値上げは通す。派遣は4割減る。営業利益は今より1割ほど少ない。利益は総還元の方針でほぼ配られ、純現金は50億円前後のままだ。事業は小さくなるが、赤字にはならない。売上は今の85%ほどに縮む。会社は配当で利益を返し続け、株主はその配当で報われる。顧客の信頼と翻訳者の層は残り、専門の分野で細く長く稼ぐ会社になる。
- 翻訳:数量 263(翻訳した原文の量(百万字・年、推定))× 価格 25(1字あたりの売上(円・名目))→ 売上 66 億円・営業利益 5 億円。人の作業量 0.65 倍・単価 1.25 倍・利益率 7%
- 通訳:数量 7,497(通訳者の稼働(人日・年、推定))× 価格 0.00(1人日あたりの売上(億円・名目))→ 売上 15 億円・営業利益 1 億円。人日 0.85 倍・利益率 8%
- 派遣:数量 112(派遣している人数(人・年平均、推定))× 価格 0.08(1人あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。人数 0.6 倍・利益率 3%
- その他(語学研修など):数量 2,624(受講者(人・年、推定))× 価格 0.00(1人あたりの売上(億円・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。受講者 0.8 倍・利益率 2%
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.4% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)30 億円。全体の PER 16.49 倍、時価総額 106 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業界ノートの横断テーマとAIエージェント代替の決まり(人月型の量 0.55〜0.75 倍)の中ほど。翻訳部門の利益がすでに3割落ちた事実と、特許・医薬の専門性が支える分を合わせた中心の筋書き。
やや悲観 22% 単価の崩れで利益率が半分に 利益 2 億円 · PER 10.6 倍 · 株価時価総額 1,290 円43 億円
大手の製薬会社や特許事務所が機械翻訳を自前で回し、人への発注は半分に減る。残った仕事も直しが中心で、単価は物価に大きく届かない。外注費は減っても社員の品質管理と営業の固定費が残り、翻訳の利益率は4%に落ちる。通訳は会議の機械化で3割減る。派遣は半分以下になる。配当は自己資本の6%の方針を守れず、途中で減らす。営業利益は今の3分の1ほどになる。小さな買収で穴を埋めようとしても、買う先もまた同じ波に洗われている。純現金は一部を下支えに使い、20億円台に減る。事業はかろうじて黒字だが、資本コストに届く稼ぎではなくなる。
- 翻訳:数量 203(翻訳した原文の量(百万字・年、推定))× 価格 23(1字あたりの売上(円・名目))→ 売上 47 億円・営業利益 2 億円。人の作業量 0.5 倍・単価 1.15 倍・利益率 4%
- 通訳:数量 6,174(通訳者の稼働(人日・年、推定))× 価格 0.00(1人日あたりの売上(億円・名目))→ 売上 12 億円・営業利益 1 億円。人日 0.7 倍・利益率 5%
- 派遣:数量 84.2(派遣している人数(人・年平均、推定))× 価格 0.08(1人あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。人数 0.45 倍・利益率 1%
- その他(語学研修など):数量 1,968(受講者(人・年、推定))× 価格 0.00(1人あたりの売上(億円・名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。受講者 0.6 倍・収支とんとん
倍率:事業のROEが約4%でk 7.5%を下回るので、ためた利益は額面未満の価値で、PERの上限は1÷k=11.4倍。量の縮みが続く筋書きなので稼ぐ力に対して8割弱の10.59倍に置いた。余った現金は谷で使う分を引いた22.5億円を戻り方1.0で足した。
確率:AIエージェント代替の決まりでやや悲観と悲観の合計を35%以上とする。そのうち、量と単価がともに崩れる筋書きに22%。
悲観 15% 人の翻訳が細り、現金の会社になる 利益 0 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 951 円32 億円
機械翻訳が特許と医薬でも審査に耐える水準に達し、人の確認は顧客の社内で済むようになる。翻訳センターに残る仕事は3割で、単価は今と同じ名目のまま上がらない。翻訳は赤字に近く、通訳と派遣も半分に縮む。会社は人を減らし、拠点を畳むための費用を払う。売上は今の4割を切る。顧客の信頼という資産は残っても、それに値段を付ける仕事がなくなる。専門の翻訳者も業界を去り、品質の層も薄れる。配当は早い段階で大きく減る。事業はほぼ稼がなくなり、価値は手元の現金で決まる。現金も整理の費用と途中の赤字で目減りし、株主に残るのは30億円強だ。
- 翻訳:数量 122(翻訳した原文の量(百万字・年、推定))× 価格 20(1字あたりの売上(円・名目))→ 売上 24 億円・営業利益 0 億円。人の作業量 0.3 倍・単価 据え置き・赤字
- 通訳:数量 4,410(通訳者の稼働(人日・年、推定))× 価格 0.00(1人日あたりの売上(億円・名目))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。人日 0.5 倍・利益率 2%
- 派遣:数量 56.1(派遣している人数(人・年平均、推定))× 価格 0.08(1人あたりの年間売上(億円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。人数 0.3 倍・収支とんとん
- その他(語学研修など):数量 1,312(受講者(人・年、推定))× 価格 0.00(1人あたりの売上(億円・名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。受講者 0.4 倍・収支とんとん
倍率:事業がほぼ稼がなくなるので、価値は純現金から整理の費用と赤字の補てんを引いた床の資産32億円で決まる。今の自己資本70.2億円に対して0.456倍。
確率:人の作業量で売る型が10年で7割消える構造的な負け筋。AIエージェント代替の決まりの悲観(売上が半分前後)にあたり、15%を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
翻訳
特許・医薬・工業製品・金融法務の文書翻訳。登録翻訳者に外注し、品質を検めて納める。
| 数量翻訳した原文の量(百万字・年、推定) | 価格1字あたりの売上(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 405 | 20 | 81 | 5 |
| 10 年後 中立 | 263 | 25 | 66 | 5 |
取り方:量は開示が無いので推定。翻訳の売上80.96億円を、産業翻訳の平均単価を1字あたり二十円前後とみて原文約4億字に割った。AIエージェント代替の人月型として、量は人が手を動かす字数で見る。
通訳
国際会議・商談・学会の同時通訳と逐次通訳。
| 数量通訳者の稼働(人日・年、推定) | 価格1人日あたりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 8,820 | 0.00 | 13 | 1 |
| 10 年後 中立 | 7,497 | 0.00 | 15 | 1 |
取り方:量は推定。通訳の売上13.23億円を、1人日15万円前後の単価で割り約8,800人日とした。
派遣
翻訳者・通訳者・語学の専門人材を企業に派遣する。
| 数量派遣している人数(人・年平均、推定) | 価格1人あたりの年間売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 187 | 0.06 | 11 | 0 |
| 10 年後 中立 | 112 | 0.08 | 9 | 0 |
取り方:量は推定。派遣の売上11.23億円を、1人年600万円前後で割り約190人とした。
その他(語学研修など)
企業向けの語学研修、翻訳者の育成講座など。
| 数量受講者(人・年、推定) | 価格1人あたりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,280 | 0.00 | 3 | 0 |
| 10 年後 中立 | 2,624 | 0.00 | 4 | 0 |
取り方:量は推定。その他の売上3.28億円を1人10万円前後で割った。
リスクと懸念
生成AIによる翻訳量の減少
機械翻訳の精度が上がり、顧客が自分で訳す、または人には直しだけを頼む形が広がる。AIエージェント代替の型で、量と単価の両方が削られる。2026年3月期に翻訳部門の利益が3割落ちたのは、その始まりと見る。
単価の下落
下訳を機械が担うと、顧客は人の工程に払う単価を下げるよう求める。効率化の便益が値下げで顧客に渡れば、処理量が増えても利益は残らない。
特許出願の減少
国内の特許出願は長く横ばいから減り気味だ。企業が出願を絞る、または海外出願を現地の事務所に直接頼む形が増えれば、最大の分野の量が減る。
翻訳者の確保
仕事が減ると専門の翻訳者が業界を去る。品質を保つための層が薄くなり、残った案件の質と納期を守れなくなる恐れがある。
通訳の機械化
会議やウェブ会議での同時通訳を機械が担う場面が増えている。対面の重要な商談は人が残るが、件数の多い普通の会議から置き換わる。
今後の分かれ目
- 翻訳部門の売上が2年続けて5%以上減ったら
- やや悲観の筋書きに近づいていると見て、量の縮みを中立より深く見る。
- 機械翻訳と人の確認を組み合わせた新しい売り物の売上を金額で開示し、伸ばしたら
- 楽観側の確率を上げてよい。利益率が9%を超えて定着するかを見る。
- 総還元100%以上の方針を中期計画の後も続けたら
- 現金が株主に戻る確かさが増し、悲観側の価値の下支えが強まる。
- 大型の買収で現金を使ったら
- 買った事業がAIで縮む翻訳でないか、払った値段が利益の何倍かを確かめる。
- 同業や事業会社による買収や非公開化の話が出たら
- 純現金の厚さが値段に乗るかを見る。事業の価値の見立ては変えない。
見ておくもの
- 翻訳部門の売上と利益(特許・医薬・工業の別)
- 機械翻訳を使った売り物の売上の開示
- 配当と自社株買いの合計と純利益の比
- 通訳の受注件数
- 特許庁の出願件数の推移
倍率と資本コストの決め方
セグメントごとに量(百万字・人・人日・受講者)と単価で積み、翻訳と派遣はAIエージェント代替の人月型で中立の量を10年0.6〜0.65倍に縮めた。倍率は資本コスト7.5%(基本7.5%に値決め力+0.25%と寿命+1.0%)と、人月型の長期の名目の伸び0%から、正当化PER=1÷kの11.4倍とし、楽観だけ成果報酬に移れた場合として伸び1%を置いた。今の株価やPERは見ていない。余った現金30億円は戻り方1.0で足した。新リース会計の影響は事務所の賃借だけで小さい。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.04→20.51 倍・やや楽観 PER 11.43→18.78 倍・中立 PER 11.43→16.49 倍・やや悲観 PER 9→10.59 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。