結論
エアトリは、航空券やホテルをネットで売る旅行予約サイトの大手だ。国内航空券のネット販売では最大手に数えられる。ほかにIT開発、訪日客向けの旅行、メディア、ベンチャー投資を手がける。
筆者の結論は「割高」だ。今の値段は、大きな配当が長く続くことを織り込んでいるように見える。だが会社の方針では、配当は3年で打ち切られる。そのあとの稼ぎは、旅行の薄い手数料と、当たり外れの大きい投資に左右される。
今期は利益の全額を配当に回す。総額で約35億円だ。ただし権利は9月末で確定済みで、今から買う人には入らない。残る配当は、あと2年分で約70億円にとどまる。
稼ぎの中身も割り引いて見る必要がある。2025年9月期の営業利益は、会社の見せ方では46.6億円で過去最高だった。だがここには、投資先の売却益が11億円入る。会社は毎年10億円以上の減損も出すので、実際に残る利益は31.5億円だ。
10年先の中立は、営業利益37億円、純利益24億円とみる。旅行は薄利のまま物価並みに伸び、ほかの事業が買収で加わる。だが利益の質は高くない。AIが予約の入口を奪う恐れもある。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、エアトリは持ち続けたい事業ではない。堀が薄く、利益が毎年きちんと積み上がる型でもないからだ。
オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益を考える。2025年9月期の営業利益は、見せ方では46.6億円だった。そこから投資の売却益11億円は毎年あてにできない。さらに減損15億円は、毎年のように出る。実際に残るのは、旅行の約29億円と、周辺事業の数億円だ。
今期の配当は、利益の全額を回す形で、一見すると魅力的だ。だが3年で終わる配当と、続く配当は価値が違う。3年後に小さな水準へ戻るなら、その先の価値は事業の稼ぎだけで決まる。
資本の使い方は、再建の途中というより、攻めと守りが入り混じっている。自社株買いと増配は株主を向く。一方、買収を続けて減損を重ねる姿勢は変わっていない。
安全域は厚くない。中立の筋書きでも、今の値段には届かない。確信度は低めに置いた。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、航空券やホテルを1件売るたびに入る手数料だ。2025年9月期の取扱高は1,203億円で、グループ全体の粗利は161億円だった。粗利を取扱高で割ると13%ほどになる。
柱は旅行事業で、取扱高の9割近くを占める。国内旅行が639億円、海外旅行が421億円だ。国内は航空券と宿泊のセット販売が主力で、航空券のネット販売では最大手とされる。海外は円安と運賃高で戻りが鈍く、前の年より1割以上減った。
二つ目は「エアトリ経済圏」と呼ぶ、旅行以外の21事業だ。IT開発のハイブリッドテクノロジーズは、2025年10月に連結に加わった。訪日客向けのインバウンドプラットフォーム、メディアのまぐまぐも上場子会社である。法人向けの経営者コミュニティは、有料会員が800社に増えた。
三つ目は投資事業だ。145社に出資し、毎年5社ほどが上場する。2025年9月期の投資損益は10.8億円で、営業利益のほぼ4分の1を占めた。
グループは毎年7〜8件の買収や資本提携を重ねる。「毎年1事業を立ち上げる」と掲げ、買った事業を束ねて大きくする経営だ。
優良さと弱いところ
優良さを分けるのは、集客力と運営の効率だ。国内航空券のネット予約で最大手の座にあり、画面の使いやすさを磨き続けている。人の入れ替わりが少ないことも、運営の安定につながっている。
ただ、堀、つまり他社がまねできない強みは薄い。航空券とホテルは、楽天トラベルやじゃらん、海外勢のブッキング・ドットコムやエクスペディア、航空会社の直販でも買える。客は値段を比べるので、手数料を上げる力は弱い。旅行事業の成長は鈍り、競争も激しくなっている。
財務は一見厚い。現預金は121億円あり、借入金は31億円だ。ただし現金の多くは、航空会社やホテルに払う前の旅行代金の預かりで、全部が株主のものではない。
資本の使い方には傷がある。2020年9月期は90億円の営業赤字を出した。2021年以降も毎年、買収した事業や投資先の評価を切り下げ、10億円台の減損を計上している。会社はこれを「早めの手当て」と説明するが、買収の勝率は高くないと筆者は見る。
創業者の大石崇徳氏が約27%を持つ。経営の意思決定は速いが、少数株主の利益がどこまで優先されるかは、これからの行動で測るしかない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日本のオンライン旅行の売上は、2023年で約4.7兆円とされる。コロナ後の旅行需要は戻り、国内旅行の消費額も過去最高圏にある。ただ、人口は減り、海外旅行はまだコロナ前に戻っていない。エアトリの国内旅行は横ばい、海外旅行は減っている。
競争は三方向から来る。宿泊に強い楽天トラベルやじゃらんなど国内の大手。ブッキング・ドットコムやエクスペディアなど世界の大手。そして、航空会社が自社のサイトで直接売る動きだ。客は検索サイトで値段を比べるので、手数料で差をつけにくい。
10年の最大の変化はAIだ。Googleは2026年8月、検索の会話型AIに航空券の価格追跡とホテル予約の完了を加えた。旅行の相談から予約までがAIの中で済めば、予約サイトが「入口」としてもつ価値は薄れる。一方、ChatGPTは直接予約の計画を縮小したと報じられ、OTAの出番が残るとの見方もある。どちらに転ぶかは、まだ見えない。
旅行以外の事業にも同じ圧力がある。IT開発は人の工数で売る仕事で、AIが開発作業を肩代わりすれば単価と受注が減る。メディアの広告収入も、AIの要約で来訪が減る恐れがある。
景気、感染症、戦争の影響は旅行の宿命だ。コロナ禍のように、需要が突然ゼロに近づく局面がある。
資本政策と M&A
還元は、2026年9月期から大きく変わった。2028年9月期までの3期間は、減損等を引く前の税引後営業利益の全額を配当にする。総額は100億円を超える。今期は期末に総額約35億円を出し、自社株買いも約24億円実行した。
ここで見るべきは「3年で打ち切り」という点だ。2029年9月期からは「投資フェーズ」に入り、配当は記念配当前のごく小さな水準へ戻す計画である。大きな配当が続く前提で値段を付けるのは危うい。
今期の期末配当は、権利が9月末で確定した。今から買う人には入らない。今の株主が受け取れるのは、2027年9月期と2028年9月期の2回分だ。
M&Aは断続的に続く。これまでに約40件の買収・提携を行い、直近2年で15件だった。買収は、買った後に評価を切り下げる形で終わることも多い。全従業員向けの業績連動ストックオプションもあり、減損等を引く前の営業利益50億円を達成すると行使できる。希薄化の余地がある。
上場子会社が3社ある。親会社が増益を示しても、少数株主に流れる分がある。創業者の持株比率が約27%と高く、TOB(株式公開買い付け)の可能性は、当サイトの参考値で2割ほどだ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
旅行は、まだ伸びる余地がある。海外旅行は、円安が落ち着き、運賃が下がれば戻る。コロナ前の水準まで8割ほどしか戻っておらず、取扱高の伸びしろは大きい。国内でもUIの改善と新しい商品で、シェアを守れる。
旅行以外の事業は育つ。ハイブリッドテクノロジーズの連結で、利益の裾野が広がった。経営者コミュニティは有料会員が800社まで伸び、年間の安定収入が積み上がる。毎年1事業を育てる経営は、旅行の成長鈍化を補う設計だ。
投資事業は、145社の投資先から毎年5社前後が上場する。その売却益が利益の下支えになる。
還元の姿勢も明確だ。3年間は利益の全額を配当に回し、自社株買いも実行した。2028年9月期までに減損等を引く前の営業利益50億円を達成し、その先の100億円を目指す。株主価値を高める姿勢は、これまでの経営とは違う。
AIも味方になる。旅行の相談から予約までAIが担うなら、その裏で在庫と決済を提供するOTAの出番が残る。AIで工数を減らせる会社は、利益率が上がる。
慎重な見方
旅行事業は伸びない。2026年9月期の第3四半期までで、旅行の売上は0.4%増にとどまり、セグメント利益は9.6%減った。会社自身が「成長鈍化」と「競争激化」を認めている。国内の取扱高は微減で、海外は1割以上減った。
利益の質が悪い。見せ方の営業利益46.6億円には、投資先の売却益が11億円入る。これは毎年出る保証がない。減損は毎年10億円以上を計上している。実際に残る利益は、見せ方の7割ほどだ。
配当は3年で終わる。今期の約35億円は権利落ち済みで、あと2年分しかない。2029年9月期から配当は小さな水準に戻り、会社は買収に資金を回す。買収を重ねるたびに減損が積み上がってきた会社だ。
AIの脅威は、旅行事業の中心に刺さる。Googleは航空券とホテルの予約をAIの会話内で完結させる機能を加えた。予約の入口を握られれば、手数料を払う側に回る。IT開発も、人の工数で売る仕事がAIに置き換わる。
財務は見かけほど強くない。現預金の多くは、旅行代金の預かりと未払金だ。創業者が約27%を持ち、少数株主の取り分は後回しにされうる。
どちらに重みを置いたか
旅行の成長鈍化と利益の質の低さは、慎重な言い分のとおりだ。一方、周辺事業の広がりと、株主還元の姿勢には、強気の言い分に分がある。
そこで、中立に最も厚く置き、やや悲観と悲観を合わせて36%とした。楽観とやや楽観は合わせて28%である。AIが予約の入口を奪う筋書きと、減損が続く筋書きを、確率で重くみた。
結果として、本質価値は今の時価総額を大きく下回った。3年で終わる配当と、薄い堀、不安定な利益の組み合わせでは、今の値段に見合わない。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/09 期)
確率で加重した株価時価総額 1,679 円368 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 376 円82 億円)。 今の値に割り戻すと 1,013 円222 億円、今との差 −30.0%、 期待の年率 +3.6%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 3,935 円862 億円 | 685 円150 億円 | +219.3% | +12.3% | 370 円81 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,937 円643 億円 | 502 円110 億円 | +137.7% | +9.0% | 688 円151 億円 |
| 中立 | 36% | 1,814 円397 億円 | 402 円88 億円 | +53.1% | +4.4% | 798 円175 億円 |
| やや悲観 | 24% | 412 円90 億円 | 251 円55 億円 | −54.2% | −7.5% | 159 円35 億円 |
| 悲観 | 12% | 209 円46 億円 | 128 円28 億円 | −76.7% | −13.6% | 40 円9 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,679 円368 億円 | 376 円82 億円 | +42.0% | +3.6% | 2,055 円450 億円 |
今の株価時価総額 1,447 円317 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 8% 旅行が踏みとどまり、周辺事業が育って利益が倍に近づく 利益 49 億円 · PER 17.0 倍 · 株価時価総額 3,935 円862 億円
海外旅行が戻り、国内でもシェアを保つ。旅行の取扱高は実質で9%ほど増え、手数料率は今の水準を守る。AIの予約窓口でも、エアトリは在庫と決済をつなぐ裏方として選ばれる。
旅行以外の事業は36に増える。ハイブリッドテクノロジーズは、AIで開発の工数を減らして利益率を上げる。経営者コミュニティは有料会員が2,000社に近づき、年間の安定収入が積み上がる。投資事業は、毎年5社前後の上場で売却益が出続ける。
減損等を引く前の営業利益は96億円に達し、会社の「100億円」に近づく。引いたあとの営業利益は74億円、純利益は49億円になる。3年間の大きな配当のあとも、利益の一部は配当と自社株買いに回る。
- エアトリ旅行事業(国内・海外の航空券、宿泊、ツアー):数量 1,150(取扱高(今の値段で測った実質・億円))× 価格 0.16(実質の取扱高 1 億円あたりの粗利(億円)=粗利率 × 物価の倍率)→ 売上 181 億円・営業利益 49 億円。取扱高は実質で9%増。海外旅行が戻り、国内でもシェアを保つ
- エアトリ経済圏(IT開発・訪日・メディア・クラウド・人材・CXOなど):数量 36.0(事業の数)× 価格 4.11(1 事業あたりの粗利(億円・名目))→ 売上 148 億円・営業利益 33 億円。36事業へ。AIを使う新規事業が育つ
- 投資事業(エアトリCVC):数量 5.0(年間の上場・売却の件数(件))× 価格 2.89(1 件あたりの投資損益(億円・名目))→ 売上 15 億円・営業利益 15 億円。IPOの売却益が今の水準を保つ
倍率:事業の純利益 49 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 26.6% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 14.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.0 倍。全体の PER 16.97 倍、時価総額 837 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:海外旅行の戻り、周辺事業の拡大、投資の成功、AIの追い風がそろう必要がある。旅行の成長鈍化を会社自身が認めている現状を考え、8%と低めに置いた。
やや楽観 20% 周辺事業が育ち、旅行の鈍化を補う 利益 38 億円 · PER 16.4 倍 · 株価時価総額 2,937 円643 億円
旅行の取扱高は実質で4%ほど増えるが、手数料率は競争でわずかに下がる。国内は横ばい、海外は緩やかに戻る。
旅行以外の事業は34に増える。買収した事業が育ち、IT開発とインバウンドが利益を伸ばす。AIで工数を減らせた会社は利益率が上がるが、人月売りの部分は縮む。投資事業の売却益は、今の8割強にとどまる。
減損等を引く前の営業利益は78億円、引いたあとの営業利益は57億円、純利益は38億円だ。3年間は大きな配当が続き、そのあとは配当を少し増やして自社株買いも折にふれて行う。会社が掲げる「50億円」は2028年9月期までに超え、その先の成長も周辺事業が担う。一方、買収した事業の減損は毎年残り、投資損益の振れも続く。ROEは14〜15%で、資本コストを上回る。
- エアトリ旅行事業(国内・海外の航空券、宿泊、ツアー):数量 1,100(取扱高(今の値段で測った実質・億円))× 価格 0.15(実質の取扱高 1 億円あたりの粗利(億円)=粗利率 × 物価の倍率)→ 売上 168 億円・営業利益 42 億円。取扱高は実質で4%増。手数料率はわずかに下がる
- エアトリ経済圏(IT開発・訪日・メディア・クラウド・人材・CXOなど):数量 34.0(事業の数)× 価格 3.51(1 事業あたりの粗利(億円・名目))→ 売上 119 億円・営業利益 24 億円。34事業。買収した事業が育つ
- 投資事業(エアトリCVC):数量 5.0(年間の上場・売却の件数(件))× 価格 2.46(1 件あたりの投資損益(億円・名目))→ 売上 12 億円・営業利益 12 億円。IPOの売却益は今の8割強
倍率:事業の純利益 38 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 23.0% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 13.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.4 倍。全体の PER 16.38 倍、時価総額 616 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:周辺事業と投資が旅行の鈍化を補い、会社の「50億円」を上回る道筋。ただし減損は残り、手数料率もわずかに下がる。蓋然性のある強気の姿として20%を置いた。
中立 36% 旅行は薄利で物価並みに伸び、周辺事業が買収で加わる 利益 24 億円 · PER 15.3 倍 · 株価時価総額 1,814 円397 億円
旅行の取扱高は実質で5%ほど減る。国内は人口減と競争で横ばいから微減、海外は緩やかに戻る程度だ。手数料率は競争で5%ほど下がるが、物価並みの値上がりが粗利を支える。旅行の営業利益は33億円ほどになる。
旅行以外の事業は32に増える。買収した事業が積み上がるが、IT開発の人月売りはAIで縮み、1事業あたりの粗利の伸びは実質で2割にとどまる。投資事業の売却益は、今の5割強に落ち着く。
減損等を引く前の営業利益は57億円で、会社の「50億円」を達成したあと、緩やかに増える。毎年約18億円の減損等を引くと、営業利益は37億円、純利益は24億円だ。配当は2028年9月期まで大きく、そのあとはごく小さな水準になる。ROEは11%台である。
- エアトリ旅行事業(国内・海外の航空券、宿泊、ツアー):数量 1,000(取扱高(今の値段で測った実質・億円))× 価格 0.15(実質の取扱高 1 億円あたりの粗利(億円)=粗利率 × 物価の倍率)→ 売上 149 億円・営業利益 33 億円。取扱高は実質で5%減。手数料率は競争で5%下がる
- エアトリ経済圏(IT開発・訪日・メディア・クラウド・人材・CXOなど):数量 32.0(事業の数)× 価格 2.90(1 事業あたりの粗利(億円・名目))→ 売上 93 億円・営業利益 17 億円。32事業。人月売りの部分はAIで縮み、1事業あたりの粗利は実質で2割増にとどまる
- 投資事業(エアトリCVC):数量 2.0(年間の上場・売却の件数(件))× 価格 2.89(1 件あたりの投資損益(億円・名目))→ 売上 6 億円・営業利益 6 億円。IPOの件数は2件に減り、売却益は今の5割強
倍率:事業の純利益 24 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.8% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 11.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.3 倍。全体の PER 15.3 倍、時価総額 373 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:旅行は薄利のまま緩やかに伸び、周辺事業が買収で増える一方、減損とAIの圧力が利益を削る。いちばん確からしい筋書きとして36%を置いた。
やや悲観 24% AIが予約の入口を奪い、旅行の利益が細る 利益 10 億円 · PER 7.0 倍 · 株価時価総額 412 円90 億円
旅行の取扱高は実質で13%ほど減り、手数料率は15%下がる。GoogleなどのAIが予約の入口を握り、エアトリはその裏方として低い手数料で受ける立場になる。国内の航空券は、航空会社の直販にも取られる。
旅行以外の事業は28にとどまる。IT開発の人月売りがAIで置き換わり、メディアの広告収入も来訪の減少で細る。買収した事業の評価を切り下げる減損が続く。投資事業の売却益は、今の4割ほどだ。
減損等を引く前の営業利益は33億円、引いたあとの営業利益は16億円、純利益は10億円になる。配当は2028年9月期までは出るが、利益が縮むのでその額も減る。そのあとはごく小さな水準だ。
- エアトリ旅行事業(国内・海外の航空券、宿泊、ツアー):数量 920(取扱高(今の値段で測った実質・億円))× 価格 0.13(実質の取扱高 1 億円あたりの粗利(億円)=粗利率 × 物価の倍率)→ 売上 123 億円・営業利益 21 億円。取扱高は実質で13%減。手数料率は15%下がる
- エアトリ経済圏(IT開発・訪日・メディア・クラウド・人材・CXOなど):数量 28.0(事業の数)× 価格 2.42(1 事業あたりの粗利(億円・名目))→ 売上 68 億円・営業利益 8 億円。28事業。実質の粗利は伸びない
- 投資事業(エアトリCVC):数量 3.0(年間の上場・売却の件数(件))× 価格 1.16(1 件あたりの投資損益(億円・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 4 億円。IPOの売却益は今の4割
倍率:事業のROEは5〜6%で、資本コスト8.25%に届かない。この場合のPERの上限は1÷k=10.5倍で、式の約9倍の範囲で稼ぐ力として約7割の7.0倍を置いた。
確率:AIの予約窓口と競争激化で、手数料率が下がる姿。周辺事業の伸びも限られ、減損が続く。計画を何度も入れ替えてきた会社なので、24%と中立に近い厚みで置いた。
悲観 12% 構造的に負ける:AIと直販に中抜きされ、買収の減損が重なる 利益 −3 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 209 円46 億円
AIの予約窓口と航空会社の直販が、旅行の入口を奪う。旅行の取扱高は実質で24%ほど減り、手数料率は3割下がる。旅行の営業利益は7億円ほどまで細る。
IT開発とメディアはAIに置き換わり、周辺事業は22に減る。赤字の事業は畳むが、買収した事業の減損が重なる。投資先の上場は減り、売却益は今の2割ほどだ。
営業利益は赤字に沈み、純損益もわずかな赤字になる。配当は2028年9月期までに急減し、そのあとはほぼ出ない。それでも会社は存続し、営業投資有価証券などの売れる資産が、株主の価値を下支えする。自己資本は減損と配当で137億円まで細るが、現金の借入超過はなく、買収を止めて事業を畳めば、残る資産は帳簿の半分以上で換金できる。上場子会社の持分を売る手もあり、すぐに行き詰まる姿ではない。
- エアトリ旅行事業(国内・海外の航空券、宿泊、ツアー):数量 800(取扱高(今の値段で測った実質・億円))× 価格 0.11(実質の取扱高 1 億円あたりの粗利(億円)=粗利率 × 物価の倍率)→ 売上 88 億円・営業利益 7 億円。取扱高は実質で24%減。手数料率は3割下がる
- エアトリ経済圏(IT開発・訪日・メディア・クラウド・人材・CXOなど):数量 22.0(事業の数)× 価格 2.06(1 事業あたりの粗利(億円・名目))→ 売上 45 億円・営業利益 2 億円。22事業に縮む。赤字の事業を畳む
- 投資事業(エアトリCVC):数量 2.0(年間の上場・売却の件数(件))× 価格 0.58(1 件あたりの投資損益(億円・名目))→ 売上 1 億円・営業利益 1 億円。IPOの売却益は今の2割
倍率:稼ぐ力はほぼなく、事業のROEは資本コスト8.25%を大きく下回る。そこで値は、営業投資有価証券の税後を中心にした床の資産42億円(今の自己資本152.5億円の約0.30倍)で置いた。市場の値付けは根拠にしない。
確率:AIの予約窓口と航空会社の直販に旅行の入口を奪われ、IT開発も縮む構造的な負けの姿。自己資本が厚くはないので、損失が重なれば資本が先に削られる。12%を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
エアトリ旅行事業(国内・海外の航空券、宿泊、ツアー)
総合旅行サイト「エアトリ」で航空券、ホテル、ツアー、レンタカーを売る。収益は取扱高に対する手数料と差益で、売上は純額の粗利で置く。
| 数量取扱高(今の値段で測った実質・億円) | 価格実質の取扱高 1 億円あたりの粗利(億円)=粗利率 × 物価の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 1,059 | 0.12 | 124 | 29 |
| 10 年後 中立 | 1,000 | 0.15 | 149 | 33 |
取り方:国内旅行の取扱高639億円・粗利98.0億円と海外旅行の421億円・26.3億円を合わせた取扱高1,059億円、粗利124.3億円は、2025年9月期の決算説明資料による。営業利益29.1億円は減損等控除前の旅行事業の値。粗利率11.7%を価格とし、物価3%は価格に入れた。売上収益ではなく粗利で置く(旅行は手数料の純額収益)。
エアトリ経済圏(IT開発・訪日・メディア・クラウド・人材・CXOなど)
ハイブリッドテクノロジーズ(ITオフショア開発)、インバウンドプラットフォーム(訪日客向け)、まぐまぐ(メディア)、かんざし(クラウド)、GROWTH(人材)、CXOサロンなど21の事業。
| 数量事業の数 | 価格1 事業あたりの粗利(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 21.0 | 1.80 | 38 | 7 |
| 10 年後 中立 | 32.0 | 2.90 | 93 | 17 |
取り方:旅行・投資以外の事業は、開示が事業ごとの粗利で、その他注力事業の粗利33.8億円と新規事業の4.1億円を合わせて37.9億円、事業数21で割って1事業あたり約1.8億円とした。営業利益6.7億円は、控除前の営業利益46.6億円から旅行29.1億円と投資損益10.8億円を引いた値。数量は事業の数、物価3%と1事業あたりの実質の規模は価格に入れた。2025年10月からハイブリッドテクノロジーズが連結に入るので、1事業あたりの粗利は今期から大きく増える。
投資事業(エアトリCVC)
成長企業に出資し、上場や売却で利益を得る。投資先は145社、年に5社前後が上場する。
| 数量年間の上場・売却の件数(件) | 価格1 件あたりの投資損益(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 5.0 | 2.16 | 11 | 11 |
| 10 年後 中立 | 2.0 | 2.89 | 6 | 6 |
取り方:投資損益10.8億円(決算説明資料)を、今期の上場5件で割って1件あたり2.16億円とした。費用は他の事業に含まれるので収益と利益を同じ額で置いた。この利益は年によって大きく振れる。
リスクと懸念
旅行事業の成長鈍化と競争
2026年9月期の第3四半期までで、旅行の売上は0.4%増にとどまり、セグメント利益は9.6%減った。会社自身が成長鈍化と競争激化を認めている。手数料率は上がらず、広告費の負担は重い。主力の稼ぎが細れば、周辺事業では穴を埋めきれない。
AIエージェント代替:予約の入口が奪われる
Googleは2026年8月、会話型AIに航空券の価格追跡とホテル予約の完了を加えた。予約の入口をAIが握れば、エアトリは手数料を払って裏方に回る。IT開発(人月売り)やメディア広告(来訪の減少)も、AIに置き換えられる部分が大きい。
利益の質:投資損益のぶれと毎年の減損
営業利益の約4分の1は投資先の売却益で、年ごとに大きく振れる。減損等は2021年9月期から毎年3億〜17億円を計上している。会社が示す減損等を引く前の営業利益だけを見ると、実際に残る利益を過大に見る。
3年で打ち切られる大きな配当
配当は2028年9月期までの3期間で、2029年9月期からは小さな水準に戻る計画だ。今期の約35億円は権利が確定済みで、今から買う人には入らない。大きな配当を前提に値段を付けると、3年後に評価が崩れる恐れがある。
M&Aの回収と上場子会社
毎年7〜8件の買収・提携を重ね、買った後に評価を切り下げることも多い。上場子会社が3社あり、利益の一部は少数株主に流れる。全従業員向けの業績連動ストックオプションは、行使されれば既存株主の持ち分が薄まる。
海外旅行の戻りの遅さと外部ショック
海外旅行の取扱高は前の年より1割以上減った。円安と運賃高、若者の海外離れが重なる。感染症や戦争が起きれば、需要が突然ゼロに近づく。コロナ禍では営業利益が90億円の赤字になり、自己資本が20億円まで細った。
創業者の持株比率と経営の意思決定
創業者の大石崇徳氏が約27%を持つ。意思決定は速いが、少数株主の取り分が後回しになりうる。一方で、TOB(株式公開買い付け)の可能性は、当サイトの参考値で10年以内に2割ほどある。
今後の分かれ目
- 旅行事業のセグメント利益が前の年を上回り、手数料率が持ち直す
- 成長鈍化が一時的だった証拠になる。楽観・やや楽観の確率を上げる。
- GoogleなどのAI予約で、エアトリ経由の予約が増える(裏方として組み込まれる)
- AIの脅威が限られる証拠になる。やや悲観・悲観の確率を下げる。
- 2028年9月期までに、減損等を引く前の営業利益が50億円を超える
- 周辺事業が育った証拠になる。中立の利益を引き上げる。
- 減損等の額が毎年20億円を超えて膨らむ
- 買収の勝率が低い証拠になる。実際に残る利益を下げ、中立を見直す。
- 2028年9月期のあとも、大きな配当を続ける方針に変わる
- 価値が上向く。10年の還元の合計を引き上げる。
- 創業者による買収提案や、TOBの発表が出る
- 値段が提示価格に寄る。内容次第で価値の見方を見直す。
見ておくもの
- 旅行事業の取扱高・手数料率・セグメント利益
- 減損等を引く前と引いたあとの営業利益の差
- 投資事業(エアトリCVC)の投資損益と、投資先の上場件数
- ハイブリッドテクノロジーズなどIT開発の受注と利益率
- GoogleなどAIの予約機能と、航空会社の直販の動き
- 配当方針(2028年9月期以降)と自己株式の取得
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価やPERを見ず、各筋書きのROEと資本コスト8.25%(基本7.5%に循環+0.75・値決め+0.5・寿命+0.75)から正当化PERを計算し、弱い堀(残る割合1/3)の上限の9割前後に置いた。ROEがkに届かないやや悲観は稼ぐ力、悲観は営業投資有価証券の税後を床にした。今の時価総額は権利落ち後の値で、今期の期末配当(約35億円)は今の株主に入らないので、自己資本の起点から外し、還元にも入れていない。実行済みの自社株買い24億円も、起点と還元の両方から外した。旅行代金の預かりを含む現金は、余った現金として足していない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11→16.97 倍・やや楽観 PER 10.8→16.38 倍・中立 PER 10→15.3 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にquality+2.0%(循環+0.75・値決め+0.5・寿命+0.75)を足してk 8.25%。純現金で借金の上乗せは置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.50% → 8.50%。