結論
ヒューマンクリエイションホールディングスは、IT技術者の派遣を土台に、システム開発、経営コンサルティング、M&A仲介へ事業を広げてきた会社である。長く持つ株主の立場からの結論は「やや割高」だ。10年後に事業がなくなるとは考えないが、人の稼働時間を販売する仕組みが今のまま通用するとは考えにくい。確率加重後の現在価値は約28億円で、基準時価総額約33億円を約16%下回る。
過去の数字だけなら魅力的に見える。2019年9月期から2025年9月期まで売上高は約42億円から約90億円に伸び、営業赤字の年度はない。2025年9月期のROEも高い水準にある。しかし、成長の一部は買収によるものであり、買収に払った資金が高い利回りを生んだかは別の話だ。2025年9月期末の自己資本約15億円に対し、のれんが約13億円あることは見逃せない。
直近の変化はさらに重い。会社は2026年10月15日、2026年9月期の営業利益予想を7.85億円から4.20億円に引き下げた。M&A仲介子会社で成約が遅れたことに加え、別の子会社で取引先従業員による不正な取引が発生し、4億円の特別損失を見込む。2027年9月期の会社予想も、売上高110億円、営業利益4.70億円と、従来の中長期計画から後退している。過去の高ROEをそのまま10年先へ延ばせない理由が、すでに現れている。
ただし、事業のすべてがAIに置き換わるわけではない。顧客の現場に入り込むシステム移行、責任を伴う経営判断、介護・医療施設での人の仕事には残る需要がある。2026年7月に取得したライフシールドは、その方向への分散策だ。一方で、同社自身の買収前利益率は低く、取得しただけでは株主価値は増えない。中立の筋書きでは、残る仕事をより高い単価で請け負っても、販売できる人月と案件数は細ると見ている。
安全域を判断するうえで大事なのは、株価の過去の安さではなく、次の10年間で得られる利益と株主への還元である。配当と自社株買いの実績には価値があるが、買収、信用管理、AIによる収益構造の変化が重なる今は、利益の先行きを十分な精度で読めない。価値が株価を明確に上回るまで、高い確信を持ちにくい銘柄だ。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主がまず問うのは、10年後も顧客がこの会社に料金を支払い続ける理由である。システムの構築と運用、技術者の採用、医療・介護の人員確保、企業売却の交渉には需要が残る。しかし、需要が残ることと、現在の供給者が今と同じ利益を得ることは違う。技術者の人月に請求する事業では、AIの進歩によって顧客が購入する工数そのものが減る可能性が高い。
この会社の歴史的な高ROEには魅力がある。大規模な工場を必要とせず、技術者の稼働によって資本を回転させられるからだ。だが、それを将来の高い増分ROICの証拠とはしない。約10億円で取得したM&A仲介会社と、約4億円を投じた医療・介護人材会社の買収前利益率を見る限り、追加の資金を過去と同じ高利回りで運用できるとはまだいえない。現在の株主に必要なのは買収による売上高ではなく、支払った金額を回収した後に残る利益である。
株主に帰属する利益を測る時は、純利益と自由に使える現金を分けて考えたい。2025年9月期には営業活動で現金を生んだが、企業取得を含む投資活動でも多額の現金を使った。買収した事業の利益が期待どおりでなければ、のれん償却、追加投資、借り換えによって将来の自由な現金が細る。2026年に表面化した取引先従業員の不正取引は、投資判断に内部統制の質も含める必要があることを教える。
一方、経営陣は配当と自社株買いを実行してきた。余剰現金の株主への戻り方には一定の信頼を置ける。事業の堀は弱くても、利益を無理に買収へ再投資せず、採算の合わない事業を見直し、現金を還元するなら価値を守れるだろう。逆に、高ROEを維持するため薄い自己資本の上にのれんを積み続けるなら、見かけの資本効率は株主の豊かさにつながらない。
この銘柄の難しさは、良い経営判断が続けば今の時価総額を上回る価値がある一方、悪い買収とAI代替が重なると、価値の下限が急に小さくなることだ。十分に理解できる堀がない事業には高い価格を払わない。現状では、その安全域を確保できたとは考えていない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、顧客企業のシステム開発現場に技術者を送り込むSES事業である。顧客は人員の稼働に応じて月額料金を支払い、会社は技術者の採用、育成、配置、労務管理を引き受ける。2025年9月期のSES売上高は53.03億円で、連結売上高の約6割を占めた。通期平均の稼働人員は705人、開示された月額契約単価は66.7万円だった。技術者を確保し、より上流の工程へ移すほど単価を改善できるが、人件費と稼働率が利益を左右する。
もう一つの柱は、顧客の経営課題をITで解く戦略領域である。受託開発、保守運用、DX支援、経営コンサルティングを組み合わせ、2025年9月期の売上高は36.42億円だった。中堅・中小企業向けの案件は、最初の取引を小さく始め、取引先内で仕事を増やすことを狙う。期末時点の稼働案件は68件、顧客継続率は65.4%、元請け比率は53.4%と開示されている。ただし、継続率が高いことと、契約を失いにくい独占的な基盤を持つことは同じではない。
戦略領域には、2025年4月に取得したペアキャピタルを改称したHCフィナンシャル・アドバイザーも含まれる。M&Aの売り手と買い手を仲介し、案件が成立した時点で成功報酬を得る。2025年9月期の成約は24件だった。成約までの時間が長く、案件の不成立によって売上が突然消えるため、IT派遣と同じ安定収入として扱うべきではない。2026年10月の業績下方修正は、この違いを示した。
2026年7月にはライフシールドを買収し、看護師、介護士、保育士の派遣・紹介に参入した。対象会社は登録スタッフ約2万人、取引先約400社を持ち、買収前の年間売上高は約15億円だった。しかし、登録者が全員就業しているわけではない。稼ぎの実体は、有償で働いた人数、勤務時間、派遣料金、紹介成約数である。人が現場で働く部分はAIに代替されにくいが、採用やマッチング事務は効率化される。
会社の報告セグメントと、ここで用いる経済的な事業区分は一致しない。利益の性質を見分けるため、SES、IT受託・コンサルティング、M&A仲介、医療・介護人材の4つに分けた。2025年9月期のIT受託とM&A仲介の売上・利益の内訳には推定が含まれる。全社実績と推定値の境界を明示したうえで、10年後の数量と価格を別々に考える。
優良さと弱いところ
強みは、開発現場で人を採用し、顧客へ配置する実務をグループで積み重ねてきたことである。案件を経験した技術者が顧客システムを理解し、次の仕事にも呼ばれることには価値がある。2026年9月期第3四半期には契約単価の上昇も確認できる。しかし、その上昇は永続的な値決め力の証明ではない。顧客が他社へ発注できる市場であり、技術者の賃金も同時に上がるため、単価上昇がそのまま高い増分利益になるとは限らない。
本物の堀、つまり競合が容易に奪えない強みは、まだ狭い。SESの契約は技術者の技量と配置力で競い、受託開発も人と工数の競争にさらされる。SMB向け事業には顧客継続の実績があるものの、解約率5%未満、年単位の切り替え障壁、法令で指定された記録の正本、業界共同利用の基盤、値上げが長期に通る実績といった強い堀の証拠はそろっていない。BaaS製品「海根」の著作権登録も、商用売上や高い継続率を証明するものではない。
資本効率の見かけには注意がいる。2025年9月期の自己資本は約15億円と薄く、そこから約4億円の純利益を得ればROEは高くなる。しかし、ペアキャピタルには約10億円を投じた。取得前の年間営業利益は約0.51億円で、取得価額に対する税前の利益利回りは約5%にすぎない。2026年に取得したライフシールドも、取得関連費用を含む約3.95億円に対し、取得前の年間営業利益は約0.11億円だった。買収後の改善を実現しなければ、追加投資の利回りは資本コストに届かない。
財務は直ちに危機的ではない。2025年9月期には約2.8億円の純現金があった。ただし、総借入金は相応に存在し、買収のための資金調達も行っている。2026年6月末には純現金が約1億円まで減少した。さらに4億円の特別損失を見込む取引が発生し、与信と取引権限の確認体制に課題を残した。簿価の大きなのれんを現金と同じ安全資産として評価することはできない。
総じて、顧客接点と人材供給力には競争力があるが、価格を自由に決める力も、買収資金の高利回り再投資も、まだ立証途上だ。優良企業として評価する条件は、将来の売上規模よりも、既存顧客の継続、買収先の営業利益、営業キャッシュフローの改善にある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内ITサービスの需要そのものは大きい。情報サービス産業協会が示す2024年の国内情報サービス業売上高は約33.6兆円であり、受託ソフトウェア開発がその過半を占める。ただし、この数字はSESだけの市場規模ではない。ヒューマンクリエイションのSES売上約53億円は同市場全体の約0.016%に相当するにすぎず、全国のIT支出を競争市場と考えれば非常に小さい。SESに限定した厳密な市場シェアは、比較可能な公開統計がなく確定できない。
競争相手は、技術者派遣ではメイテックグループホールディングス、オープンアップグループ、テクノプロ・ホールディングス、同規模のエスユーエスやヒップなどである。上流の受託開発では大手SI企業に加え、顧客の内製開発部門とも競う。規模の大きい競合は採用、教育、営業拠点、案件の組み替えで優位を持つ一方、小規模企業は特定顧客への密着で対抗できる。ヒューマンクリエイションが10年間で大幅にシェアを奪う根拠は、現時点では十分にない。
最大の構造変化はAIエージェントである。これまで人が設計書を書き、コードを作り、テストし、保守画面を操作することで生まれた請求時間の一部は、顧客がAIを使って内製化できる。IT投資総額が伸びても、外部へ発注する人月が同じ割合で伸びるとは限らない。会社がAIを使って技術者1人当たりの生産性を高めても、人月単価を維持したまま余剰時間を販売できなければ、需要の減少が収益に現れる。この問題は、派遣と受託の両方に及ぶ。
M&A仲介には、事業承継と企業再編という長期の需要がある。レコフの集計では2025年の国内関連M&A件数は5,115件で、同社の年間24件は単純比較で約0.5%にあたる。ただし、件数の定義と決算期間が異なり、正式な仲介市場シェアではない。日本M&Aセンターホールディングス、ストライク、M&Aキャピタルパートナーズなどが競合し、買い手探索にはAIが普及しても、条件交渉や契約責任は残る。一方、候補企業の調査・資料作成・案件探索は自動化され、成功報酬への価格競争が起こりうる。
医療・介護の人材派遣市場は、IT派遣とは異なる。矢野経済研究所による2025年度の医療・介護・福祉等の人材派遣市場予測は約4,670億円である。ライフシールドの取得前売上約15億円は、この広い市場と比較して約0.3%に相当する。厚生労働省は2040年度の介護職員必要数を約272万人と推計しており、現場で働く人の確保という課題は長く続く。ただし、賃金や派遣料金には施設側の支払い能力、診療・介護報酬、人材紹介規制が影響し、需要不足よりも利益率の低さが問題になりやすい。
10年後の会社は、IT市場が拡大することよりも、どの仕事で人月販売から成果に対する対価へ移れるかで姿が変わる。筆者は、SESと受託の数量減少を中立の前提にする一方、資格を要する現場の人材供給と、交渉責任を伴うM&A仲介は別の性質として評価する。
資本政策と M&A
2024年に策定した中長期経営方針では、2027年9月期に売上高120億円を目指し、そのうち戦略領域を50億円、SESを70億円とする構想を掲げた。2030年9月期にはROE30%超と、株式分割後の基準で示された高い一株利益目標を追う。ただし、2026年10月に公表した2027年9月期の会社予想は売上高110億円、営業利益4.70億円、純利益2.65億円である。計画と最新予想の差は、成長の約束をそのまま将来価値に換算してはならない理由になる。
株主還元では、総還元性向30%以上を基本方針とし、継続増配と機動的な自社株買いを掲げる。2025年9月期には約2.2億円の自己株式を取得し、総還元性向は63.8%だった。2026年9月期の期末配当予想も増配方向で示している。ただし、当期は特別損失により赤字予想となったため、配当を維持するなら利益以外の資金が必要になる。今後も同じ率で還元できると自動的には考えない。
資本配分の中心は買収である。2025年4月にM&A仲介のペアキャピタルを約10億円で取得し、2026年7月には医療・介護人材派遣のライフシールドを関連費用込み約3.95億円で取得した。両社の買収前利益から判断すると、取得直後の投下資本利益率は十分ではない。経営陣が語るクロスセルや採算改善が実現すれば価値は生まれるが、実現する前からのれんを利益創出力として評価することはできない。
会社は、自己資本比率が4四半期連続で40%を上回らないよう資本構成を最適化する考えも示す。余剰資本を放置しない姿勢は評価できる一方、買収余力の維持と自己株買いは現金を奪い合う。2026年の不正取引に伴う損失は、拡大したグループの内部統制にも資金を使わなければならないことを示した。今後は買収件数よりも、買収代金と追加投資を含む増分ROICが資本コストを超えたかを確認したい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
SESだけを見て、会社全体を陳腐化する人月商売と断じるのは早い。顧客企業のシステムは複雑で、データ移行、既存業務との整合、セキュリティ、稼働後の責任までAIにすべて任せられるわけではない。現場を知る技術者と、顧客の課題を経営層から聞ける営業組織の組み合わせは、単なるコード作成より長く必要とされる。AIによって社内の開発効率が上がれば、残る案件をより少ない人員でこなし、利益率を改善する可能性もある。
2025年9月期の戦略領域は大きく伸びた。SMB向けDX支援では既存顧客の案件を広げ、元請け比率も過半に達している。顧客の経営課題を起点に案件を提案できれば、労働時間の販売から、問題解決そのものへの対価へ移る道はある。M&A仲介も、企業売却を決断する経営者との信頼関係と交渉能力が重要であり、単純な検索作業が自動化されても成功報酬がすぐになくなるわけではない。
2026年の利益低下には、一過性の影響がある。コスモピアの特別損失は通常の営業費用ではなく、HCFAでも成約が翌期へ移った案件がある。翌期には医療・介護人材会社の通期連結も始まる。ライフシールドの約400社の顧客にグループのITサービスを販売し、採用費と管理費を改善できれば、買収前の低利益率を高められる。介護や医療の現場では人が必要であり、需要の消滅は考えにくい。
還元姿勢も評価できる。2025年には2億円を超える自社株買いが行われ、増配も続いた。2026年の損失を収束させ、買収先の営業利益を回復し、株主還元を再び利益で賄えるなら、会社は高いROEと現金配分を両立できる。規模は小さく、国内の巨大なITサービス市場でのシェアも小さい。特定の顧客業種に深く入り、堅実な買収で事業構成を変えられれば、10年後の利益が大きく上振れる余地はある。
慎重な見方
過去の成長を支えた仕組み自体が変わる。SESでは、技術者が何人、何か月働いたかが売上の基礎だ。顧客がAIエージェントを使い、設計、開発、試験、保守の一部を内部で処理できるようになれば、外部の技術者に発注する人月は減る。たとえ会社が優秀な技術者を確保しても、その技術者の稼働時間を以前と同じ単価で売れる保証はない。単価引き上げの効果を人月減少が上回る可能性がある。
経営コンサルティングや受託開発も、事務的な調査、資料作成、業務設計、ソフトウェアの実装部分は自動化されやすい。顧客が必要とする成果は残っても、そこに費やす人の時間は減る。受注契約を成果報酬に変えるには、失敗時の責任と価格交渉を引き受ける必要がある。自社の継続課金ソフトや規制上不可欠なデータ基盤を持たない限り、AIによる生産性改善は顧客への値下げとして渡ってしまうかもしれない。
買収に関する懸念は仮説ではなく、数字に現れている。HCFAには約10億円の取得資金を投じたが、成約時期がずれ、2026年10月には通期営業利益予想の大幅な引き下げにつながった。ライフシールドも売上規模のわりに取得前の営業利益が小さい。事業承継や医療人材という有望な市場に参入することと、高い価格を払って投資利回りを得ることは別の問題である。
さらに、取引先従業員による不正取引で4億円の損失が見込まれた。金額は2025年9月期の純利益に匹敵し、純現金を上回る。取引権限や与信管理を十分に確認できていなかった可能性があり、グループの規模を広げた経営者の統制能力が問われる。2025年9月期末の自己資本の大半はのれんであり、買収先の収益が落ちれば実体のある純資産は薄くなる。高いROEの実績を頼りに利益回復を期待するには、株主が負う不確実性が大きすぎる。
どちらに重みを置いたか
事業が残るかという問いでは、残るという見方が妥当である。ただし、株主が十分に稼げるかという問いでは、慎重な見方を重く採る。SESの顧客基盤と配当・自社株買いには価値があるが、2026年10月の下方修正、HCFAの成約不振、買収先の低い取得前利益率、4億円の不正取引関連損失は会社固有の懸念だ。確率は楽観側25%に対し、悲観側41%へ寄せた。AIの影響は中立の数量減少と長期成長率に織り込んでおり、同じ理由で資本コストや悲観確率をさらに悪化させてはいない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/09 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 1,457 円45 億円(+ 還元の換算額還元の合計 323 円10 億円)。 今の値に割り戻すと 895 円28 億円、今との差 −16.6%、 期待の年率 +5.8%(資本コスト 8.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 4,104 円128 億円 | 835 円26 億円 | +360.4% | +19.0% | 395 円12 億円 |
| やや楽観 | 17% | 2,773 円86 億円 | 559 円17 億円 | +210.5% | +13.6% | 566 円18 億円 |
| 中立 | 34% | 1,591 円50 億円 | 321 円10 億円 | +78.2% | +6.6% | 650 円20 億円 |
| やや悲観 | 25% | 403 円13 億円 | 161 円5 億円 | −47.5% | −7.1% | 141 円4 億円 |
| 悲観 | 16% | 97 円3 億円 | 74 円2 億円 | −84.1% | −19.5% | 27 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,457 円45 億円 | 323 円10 億円 | +65.9% | +5.8% | 1,780 円55 億円 |
今の株価時価総額 1,073 円33 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 8% 人月依存を減らし、買収先の利益率を改善 利益 9 億円 · PER 12.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 4,104 円128 億円
IT技術者派遣では、高度な基幹システムや規制対応を担う技術者へ人員を移し、外部へ請求できる人数を2025年並みに保つ。単純なプログラム作成は顧客のAIエージェントに移るが、残る案件は既存システムの統合、セキュリティ、品質保証など責任の重い仕事に集中する。契約単価は賃金上昇を上回らない範囲で引き上げる。
SMB向けDXでは、元請け比率が高まり、顧客の複数部門を継続して支援する。新しい自社ソフトの独占的収益を仮定するのではなく、既存案件の規模を大きくして人月減少を補う。M&A仲介は、案件の審査と成約管理を改め、2026年に発生した成約遅延を克服する。営業組織と顧客ネットワークを生かし、企業売却とIT導入をつなぐ提案が定着する。
ライフシールドでは、登録スタッフの実稼働率が上がり、取引先を増やす。医療・介護の人材不足が続く中、現場の仕事はAIに置き換わらない。採用と管理の共通化によって買収前にはほとんどなかった利益を確保する。コスモピアの不正取引に伴う損失は一度限りで収束し、内部統制の整備によって同種の事故は再発しない。還元と買収資金の配分が改善し、10年後には現在より大きな事業利益を得る。
- SES・IT技術者派遣:数量 705(年間の月平均有償稼働技術者数(人))× 価格 84(有償稼働技術者1人・1か月当たり実現売上(万円))→ 売上 71 億円・営業利益 6 億円。数量705人を維持、実現単価は2025年比1.34倍。AIによる人月減少を高付加価値案件への配置転換で補うが、人員増加は仮定しない。
- 受託開発・DX支援・経営コンサルティング:数量 95.0(通期換算の有償受託プロジェクト件数(件、推定))× 価格 0.40(通期換算の案件1件当たり売上(億円、推定))→ 売上 38 億円・営業利益 6 億円。案件数は現状維持。元請け化と大型化で案件単価を改善するが、AI関連商用売上の未確認部分は加算しない。
- M&A仲介・財務アドバイザリー:数量 24.0(年間M&A成約案件数(件))× 価格 0.44(成約1件当たり売上高(億円、推定))→ 売上 11 億円・営業利益 2 億円。年間成約24件を回復し、大型案件比率上昇で平均手数料を改善。
- 医療・介護・保育向け人材派遣・紹介:数量 550(年間有償稼働人数の通期換算(人、推定))× 価格 0.07(有償稼働1人・年当たり売上高(億円、紹介収入を含む推定))→ 売上 37 億円・営業利益 2 億円。取得前の推定有償稼働313人から550人へ拡大。料金と稼働率の改善で利益率6.5%を目指す。
倍率:k8%、AIエージェント代替後の長期名目成長率g_long0%。2036年ROEは約21.2%で資本コストを上回るが、弱い堀の超過収益残存率1/3を適用しても、g=0では正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=12.5倍となる。純利益9.099億円から余剰現金17億円の税後利息相当0.238億円を除いた事業利益8.861億円に適用し、現金を戻り方1.0で加える。
確率:SESの現時点の有償稼働量を守りながら、単価改善、受託の高付加価値化、医療人材の稼働拡大、M&A仲介の再建に同時に成功する筋書きである。個別には実現可能だが、取得先の低い利益率や2026年の下方修正を考えると連続成功の確率は高くない。
やや楽観 17% 開発人月は減るが、医療人材と案件単価が支える 利益 6 億円 · PER 12.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,773 円86 億円
システム開発の顧客はAIエージェントによる自動化を進め、SESの有償稼働人数は減る。会社は採用人数を拡大する戦略を改め、上流設計や複雑な既存システムの移行を担う人材へ集中する。売上数量は減るものの、仕事の難しさに応じた料金と稼働率の管理によって、SESの採算は大きく崩れない。
受託開発とDX支援では、案件数は減るが、顧客内で複数の課題を扱う契約が増え、単価が改善する。2025年に開示されたSMB顧客の継続関係を足場にできるため、全面的な競争敗北は避けられる。M&A仲介は成約の変動が残るものの、案件審査を改善し、大型取引への過度な依存を減らす。
ライフシールドは約400社の顧客基盤を維持し、現場人材の派遣需要を取り込む。採用と勤怠管理にはAIを使えるため、事務費用の抑制が進む。一方、介護施設の料金支払能力には限界があり、利益率の上昇は緩やかである。新規買収を急がず、既存買収先の利益と現金回収を優先することで、株主還元も一定程度続けられる。2036年には売上の構成が大きく変わっているが、利益を生む会社として残る。
- SES・IT技術者派遣:数量 599(年間の月平均有償稼働技術者数(人))× 価格 83(有償稼働技術者1人・1か月当たり実現売上(万円))→ 売上 59 億円・営業利益 4 億円。数量は2025年比0.85倍。減員と配置転換を進め、単価は物価累積に近い1.32倍。
- 受託開発・DX支援・経営コンサルティング:数量 81.0(通期換算の有償受託プロジェクト件数(件、推定))× 価格 0.40(通期換算の案件1件当たり売上(億円、推定))→ 売上 32 億円・営業利益 5 億円。有償案件数0.85倍を、元請け化による単価1.32倍で部分的に補う。
- M&A仲介・財務アドバイザリー:数量 22.0(年間M&A成約案件数(件))× 価格 0.41(成約1件当たり売上高(億円、推定))→ 売上 9 億円・営業利益 1 億円。成約22件、平均手数料は大型案件獲得によって2025年比約1.25倍。
- 医療・介護・保育向け人材派遣・紹介:数量 420(年間有償稼働人数の通期換算(人、推定))× 価格 0.06(有償稼働1人・年当たり売上高(億円、紹介収入を含む推定))→ 売上 26 億円・営業利益 1 億円。有償稼働人数は取得前推定313人から420人へ増加。利益率4%まで改善。
倍率:資本コストk8%、g_long0%。2036年ROE約16.5%であり、弱い堀の残存率1/3を通したRONICでも正当化PERは12.5倍。余剰現金14.5億円に係る税後利息0.203億円を純利益から除き、事業利益5.746億円×12.5倍+現金14.5億円で求める。市場のPERは根拠にしない。
確率:SESの数量縮小を認めながら、上流工程への集中、既存SMB顧客の案件大型化、医療人材の採算改善が進む。買収の投資採算を改善する必要があるが、既存の顧客関係と2026年7月の買収で得た販路に一定の根拠がある。
中立 34% 人月商売は縮み、取得した医療人材が下支えする 利益 3 億円 · PER 12.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,591 円50 億円
顧客企業のIT支出そのものは増えても、外部へ発注される人月は減る。AIエージェントが設計、プログラム作成、テスト、保守の反復作業を引き受け、SESの有償稼働人数は2025年の705人から445人となる。会社は人材を上流工程へ移し、物価上昇に近い単価改善を得るが、数量減少を完全には補えない。人件費と案件の管理を進めるため、残ったSESでは低いながらも黒字を維持する。
受託開発と経営コンサルティングの案件も、顧客の内製化と競合によって減る。既存顧客との関係は残るが、案件の規模が大きくなるだけでは受注数量の減少を埋められない。自社BaaSを販売する構想は評価するものの、継続課金の売上、解約率、独占的な顧客データが確認できるまでは、記録の正本を持つソフトウェア企業としては扱わない。
M&A仲介は事業承継ニーズに支えられ、年間20件程度の成約を維持する。しかし、案件調査や候補探索の自動化により高い手数料を取り続けるのは難しく、成約の遅れも断続的に発生する。ライフシールドでは看護・介護の現場で働く人を確保でき、年間売上約21億円まで伸びるが、施設側の価格負担力と採用費が利益率を抑える。新たな大型買収を前提とせず、2026年の損失処理後に内部統制と既存子会社の採算を立て直す。2036年の会社は2025年より幅広い事業を持つが、利益の規模は過去の延長線より小さい。
- SES・IT技術者派遣:数量 445(年間の月平均有償稼働技術者数(人))× 価格 81(有償稼働技術者1人・1か月当たり実現売上(万円))→ 売上 43 億円・営業利益 2 億円。AIエージェント代替を織り込み、有償稼働人数は705人の0.63倍。月額実現単価は62.683万円の1.29倍。
- 受託開発・DX支援・経営コンサルティング:数量 62.0(通期換算の有償受託プロジェクト件数(件、推定))× 価格 0.36(通期換算の案件1件当たり売上(億円、推定))→ 売上 22 億円・営業利益 3 億円。有償案件数は95件の0.65倍。案件単価は2025年比1.20倍で、物価累積1.34倍を下回る。
- M&A仲介・財務アドバイザリー:数量 20.0(年間M&A成約案件数(件))× 価格 0.35(成約1件当たり売上高(億円、推定))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。年間成約20件。手数料単価は競争を考慮して緩やかな上昇にとどめる。
- 医療・介護・保育向け人材派遣・紹介:数量 330(年間有償稼働人数の通期換算(人、推定))× 価格 0.06(有償稼働1人・年当たり売上高(億円、紹介収入を含む推定))→ 売上 21 億円・営業利益 0 億円。買収前の有償稼働推定約313人から330人。単価は10年間の物価累積に近い1.33倍、営業利益率2%。
倍率:k8%、AI代替を反映したg_long0%で正当化PERは1÷k=12.5倍。2036年の全社ROEは約10.5%だが、超過利益の持続には弱い堀の残存率1/3しか認めない。g=0のためRONICの違いで正当化PERは増えない。純利益3.136億円から余剰現金12.5億円の税後利息0.175億円を除く事業利益2.961億円に12.5倍を掛け、現金12.5億円を加える。
確率:SESと受託の数量はAIエージェント代替による減少を中心に考える。新たに取得した医療人材会社には現場需要があるが、買収前の低利益率を踏まえ、全社成長の主役になるほど高く評価しない。2027年の会社予想を出発点とし、2025年までの高い利益率への自動回帰を仮定しない。下に寄せる理由:HCFAの成約不振、2026年10月の通期業績下方修正と不正取引関連損失により、買収・内部統制の実行力について固有の不確実性がある。
やや悲観 25% 工数需要の減少と買収採算の低迷 利益 1 億円 · PER 9.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 403 円13 億円
AIが開発工程に普及するなか、顧客は外部技術者を減らすだけでなく、継続案件を大手SI企業や自社開発部門に集約する。ヒューマンクリエイションは技術者の採用と育成に費用をかけても、十分な案件を確保できなくなる。SESの稼働人数は大きく減少し、料金も物価ほど上げられない。稼働率を維持するための値引きが始まり、営業利益率が低下する。
受託開発・コンサルティングでは、顧客が成果物の作成にAIを利用し、外部委託を縮小する。会社は既存顧客の一部を守るものの、新規顧客の開拓費用が重くなる。顧客の業務を独占的に支える基盤がないため、案件単価は強くならない。M&A仲介では成約の延期が繰り返され、手数料競争に巻き込まれる。固定的な営業人件費を抱え、利益率は低い。
ライフシールドにも人材需要はあるが、登録者の確保と有償稼働は別である。介護・医療施設は賃上げ分の料金転嫁に苦しみ、派遣事業者へ支払える金額には上限がある。実際に働く人を増やせず、営業利益はわずかに残る程度となる。グループ全体では不採算部門の整理が続き、株主還元も縮小する。直ちに破綻するほどの資金不足には至らないが、既存株主が受け取る長期の利益はかなり小さくなる。
- SES・IT技術者派遣:数量 317(年間の月平均有償稼働技術者数(人))× 価格 72(有償稼働技術者1人・1か月当たり実現売上(万円))→ 売上 27 億円・営業利益 1 億円。705人から317人へ縮小。実現単価の上昇は約15%にとどまり、賃金・待機費用の負担が重くなる。
- 受託開発・DX支援・経営コンサルティング:数量 47.0(通期換算の有償受託プロジェクト件数(件、推定))× 価格 0.33(通期換算の案件1件当たり売上(億円、推定))→ 売上 15 億円・営業利益 1 億円。受託案件の半減と値決め力の低下。残る契約も利益率が下がる。
- M&A仲介・財務アドバイザリー:数量 15.0(年間M&A成約案件数(件))× 価格 0.27(成約1件当たり売上高(億円、推定))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。成約15件、平均手数料は2025年を下回る。成約遅延による固定費負担が残る。
- 医療・介護・保育向け人材派遣・紹介:数量 250(年間有償稼働人数の通期換算(人、推定))× 価格 0.06(有償稼働1人・年当たり売上高(億円、紹介収入を含む推定))→ 売上 14 億円・営業利益 0 億円。有償稼働人数は取得前の推定を下回り、施設側の料金負担力が利益を抑える。
倍率:営業利益が細り、2036年ROE約3.3%は資本コスト8%を下回る。低ROEの事業で新規投資による価値創出を見込まないため、成長を数えない利益価値1÷k=12.5倍を上限とし、事業の縮小と継続費用を反映した9.5倍とする。純利益0.772億円から余剰現金6億円の税後利息0.084億円を除く事業利益0.688億円に適用し、現金を加える。
確率:AIによる工数減少は中立数量に織り込み済みとし、この筋書きでは会社固有の競争敗北を追加する。技術者採用や顧客への配置で大手競合に劣後し、HCFAと医療人材事業の採算改善も遅れる場合である。2026年の収益下振れと買収先の取得前利益率の低さから、無視できない確率と判断する。
悲観 16% 技術者派遣の競争力喪失と買収資産の減損 利益 −2 億円 · PBR 0.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 97 円3 億円
SESでは顧客のAI内製化と大手競合への発注集約が進み、ヒューマンクリエイションの有償稼働人数は2025年の約3分の1になる。高度な技術者の採用は難しくなり、残る案件でも顧客の値下げ要求を拒みにくい。待機人員、管理部門、採用費をすぐには減らせず、派遣事業が営業赤字に転じる。受託開発とコンサルティングも、顧客が作業を内製化し、競合の成果報酬型サービスへ発注を移すことで赤字になる。
HCFAでは売り手案件の獲得が成約につながらず、手数料単価も下がる。M&A仲介を買収した際に期待した顧客紹介とITコンサルティングの相互送客は広がらない。ライフシールドも、採用費と派遣先から受け取る料金の差を改善できず、赤字が続く。グループ全体の人件費と管理費が売上の減少に追いつかず、営業損失が定着する。
こうした状態では、過去に買収した事業に付けたのれんの大部分は回収できない。2025年9月期に約12.8億円あったのれんに対して、大幅な減損を想定する。新しい買収を止め、配当と自社株買いを削り、現金の流出を抑える必要がある。ここで評価するのは、過去の高ROEを取り戻す会社ではなく、稼ぐ力を失った会社が持つ限られた換金可能資産である。
- SES・IT技術者派遣:数量 240(年間の月平均有償稼働技術者数(人))× 価格 69(有償稼働技術者1人・1か月当たり実現売上(万円))→ 売上 20 億円・営業利益 0 億円。人月は2025年の約0.34倍。価格上昇は累積約10%にとどまり、固定費を賄えない。
- 受託開発・DX支援・経営コンサルティング:数量 44.0(通期換算の有償受託プロジェクト件数(件、推定))× 価格 0.29(通期換算の案件1件当たり売上(億円、推定))→ 売上 13 億円・営業利益 0 億円。受託案件は半分以下。顧客の内製化と価格競争が進み営業赤字。
- M&A仲介・財務アドバイザリー:数量 12.0(年間M&A成約案件数(件))× 価格 0.25(成約1件当たり売上高(億円、推定))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。成約件数半減、平均手数料も低下。仲介営業の固定費を吸収できない。
- 医療・介護・保育向け人材派遣・紹介:数量 260(年間有償稼働人数の通期換算(人、推定))× 価格 0.06(有償稼働1人・年当たり売上高(億円、紹介収入を含む推定))→ 売上 14 億円・営業利益 0 億円。医療人材の実需は残るが採用費・人件費が上昇し、料金転嫁できず赤字。
倍率:2036年の営業利益と純利益が赤字であり、PERによる継続的な利益価値は置かない。2025年9月期の自己資本15.1億円には約12.8億円ののれんがあり、減損を想定すると実体ある簿価は約2.3億円に縮む。PBR0.20倍は減損前の現在の自己資本15.1億円を分母にする表現であり、15.1×0.20=3.02億円。これは基準時点の純現金約2.8億円を上回る。2036年の減損後自己資本2.5億円に同じPBRを掛けてはいない。
確率:既存顧客の契約縮小、受託開発の競争敗北、M&A仲介の成約減少、医療人材の赤字が重なる構造的な敗北を想定する。すべてが同時に起きる確率は中立より低いが、既にのれんが自己資本の大部分を占め、2026年には予想外の損失が発生したため、低確率の例外として切り捨てない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
SES・IT技術者派遣
グループの技術者を顧客の開発現場に配置し、主に人月単位で料金を得る。AIエージェント代替の区分は「人月・工数で売る」である。
| 数量年間の月平均有償稼働技術者数(人) | 価格有償稼働技術者1人・1か月当たり実現売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 705 | 63 | 53 | 4 |
| 10 年後 中立 | 445 | 81 | 43 | 2 |
取り方:会社開示の2025年9月期SES売上53.03億円、通期平均稼働人員705人を用いた。価格は53.03億円÷705人÷12か月で求めた実現売上換算の月62.683万円である。会社開示の契約単価66.7万円とは、稼働・請求の定義と売上換算の差があるため一致しない。営業利益3.71億円は非開示のため全社利益と事業特性から推定した。ITサービス市場は情報サービス産業協会の2024年約33.6兆円を広義の比較対象とするが、SESだけの会社別シェアは算出できない。AI代替により中立の2036年数量は705人の約0.63倍とし、料金は名目1.29倍にとどめる。市場規模の参考:https://www.jisa.or.jp/explain/tabid/755/Default.aspx
受託開発・DX支援・経営コンサルティング
SMB向けDX、システムの設計・構築・保守、経営課題の解決支援など。主な売り方は工数と案件単位の受託であり、AIエージェント代替の区分は「人月・工数で売る」である。
| 数量通期換算の有償受託プロジェクト件数(件、推定) | 価格通期換算の案件1件当たり売上(億円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 95.0 | 0.30 | 29 | 4 |
| 10 年後 中立 | 62.0 | 0.36 | 22 | 3 |
取り方:会社の2025年9月期戦略領域売上36.42億円からM&A仲介の推定7.80億円を控除し28.62億円とした。会社は期末SMB稼働68案件を開示しているが、受託全体の通期換算案件数は非開示である。SMB案件の継続期間とその他の受託を含む通期有償換算95件を分析上の推定値とし、28.62億円÷95件=0.301263億円を案件単価とした。期末68件を年間95件の実測値と取り違えない。営業利益3.88億円も推定である。中立数量は95件から62件に減らし、設計・コード作成・試験・資料作成をAIエージェントが代替する分を織り込む。成果報酬の商用実績が金額で確認できないため、売上をAI成長市場として上積みしない。
M&A仲介・財務アドバイザリー
HCフィナンシャル・アドバイザーによる企業売買の仲介と助言。主に案件成立時の成功報酬で稼ぎ、調査・候補探索・資料作成の部分がAIエージェント代替の対象となる。
| 数量年間M&A成約案件数(件) | 価格成約1件当たり売上高(億円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 24.0 | 0.33 | 8 | 1 |
| 10 年後 中立 | 20.0 | 0.35 | 7 | 0 |
取り方:会社開示の2025年9月期成約24件を数量の基準にする。売上高7.80億円は2025年4月連結開始後のHCFA寄与を、2025年7~9月の開示約5.5億円とそれ以前の概算から見積もった推定であり、独立した会計セグメントの確定数値ではない。案件平均売上0.325億円、営業利益0.75億円もモデル上の推定である。レコフの2025年国内関連M&A5,115件と単純比較すると件数比は約0.47%だが、対象案件・期間の違いから正式な市場シェアではない。M&Aの交渉・責任は残るが、候補探索・調査は自動化されうる。出典:https://www.recof.co.jp/crossborder/jp/market_information/
医療・介護・保育向け人材派遣・紹介
2026年7月に子会社化したライフシールドの看護師・介護士・保育士派遣・紹介。対面の身体的・専門的労務は残るためAI代替の型は「現場の体」であり、マッチングや事務のみ代替対象とする。
| 数量年間有償稼働人数の通期換算(人、推定) | 価格有償稼働1人・年当たり売上高(億円、紹介収入を含む推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 0.0 | 0.05 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 330 | 0.06 | 21 | 0 |
取り方:2025年9月期には未取得のため連結売上・利益を0とする。2026年7月に買収したライフシールドの取得前2026年3月期売上15.01億円、営業利益0.11億円、登録スタッフ約2万人、取引先約400社を将来数量の出発点に用いる。登録者2万人は稼働人数ではない。紹介手数料を含む年間実現売上を仮に1人0.048億円とすると有償稼働換算は約313人となり、これは推定である。中立では2036年に330人、1人当たり0.064億円とする。矢野経済研究所の2025年度医療・介護・福祉等人材派遣市場約4,670億円に対し取得前売上は約0.32%だが市場範囲は完全一致しない。出典:https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/4085
リスクと懸念
AIエージェント代替
SESと受託開発では、顧客が購入する人月・工数そのものが減る恐れがある。コード作成、試験、資料作成、システム保守の反復作業はAIエージェントの代替対象であり、顧客企業による内製化も進みうる。2025年のSES契約単価の上昇だけでは、将来の外注工数減少を補えると証明できない。中立の数量はすでに縮小させ、2036年以降の全社名目成長率も0%とした。
買収価格に見合わない増分ROIC
HCFAの取得価額は約10億円、ライフシールドは関連費用を含め約3.95億円だった。買収前の年間営業利益を取得価額で割った利回りは、それぞれ約5%、約3%にとどまる。買収後の利益率改善を実現できなければ、資本コスト8%を超える再投資にはならない。売上規模を拡大するための買収が続くほど、株主価値が毀損される可能性がある。
取引権限・与信管理と内部統制
2026年10月15日、子会社コスモピアで取引先従業員による不正な取引があり、4億円の特別損失を見込むと公表した。不正行為を行ったのは取引先側の従業員であり、同社役職員の不正と断定してはならない。一方、グループ側が取引権限や与信をどのように確認したかという問題は残る。回収可能性、内部調査、再発防止策を確認する必要がある。
のれんと自己資本の薄さ
2025年9月期末の自己資本約15.1億円に対し、のれんは約12.8億円ある。のれんを控除すると、実体のある自己資本は約2.3億円にすぎない。買収先の業績が計画を下回れば減損が発生し、会計上の自己資本と借入余力が急減する。過去のROEの高さは、経済的な安全性や買収の成功を保証しない。
M&A仲介の成約時期と手数料競争
HCFAの利益は企業売買が成約した時点に偏る。2026年9月期の下方修正では、案件の長期化、翌期へのずれ、不成立が主要因となった。候補先の調査・資料作成はAIで効率化され、競合する日本M&Aセンター、ストライク、M&Aキャピタルパートナーズなどとの手数料競争も続く。未成約案件数だけを将来売上とみなすのは危険である。
医療人材の現場需要と低利益率の両立
介護職員不足は長期的な需要の根拠となるが、派遣会社が高い利益を得られるとは限らない。施設側の賃金負担能力、診療・介護報酬、採用費、資格を持つ人材の確保が利益を制限する。ライフシールドは取得前の年間売上約15億円に対して営業利益が約0.11億円だった。登録スタッフ数2万人をそのまま有償稼働人数に置き換えることもできない。
株主還元と買収資金の競合
2025年の自社株買いは評価できるが、その後に買収と不正取引関連損失が重なった。2026年9月期は純損失予想であり、従来の増配姿勢を続ければ、手元資金または借入への依存が強くなる。借入金利が上昇する環境では、利益を生まない買収と固定的な還元を同時に続けることは難しい。還元の実績を将来10年間の保証とは考えない。
今後の分かれ目
- SESの有償稼働人数が減っても、実現単価と営業利益率が複数期連続で上昇したら
- 技術者を上流工程へ移す成果が確認できる。数量減少を緩めるのではなく、単価・利益率の前提を引き上げ、中立とやや楽観の価値を見直す。
- SESの人員数と受託案件数が継続して減少し、顧客のAI内製化が理由として確認されたら
- AIエージェント代替の進行が中立を上回っていると判断する。人月・工数の数量前提を下げ、やや悲観に近い売上構造へ見直す。
- HCFAの年間成約件数と成約1件当たり手数料がそろって改善し、買収取得価額に対する税後利益率が8%を超えたら
- 買収が資本コストを超える価値を生んだ証拠として評価する。M&A仲介の利益率と資本配分への信頼を引き上げる。
- ライフシールドの有償稼働人数と営業利益が増え、営業利益率5%以上が定着したら
- 医療・介護の現場人材を守りの事業として再評価する。登録者数ではなく実稼働と顧客当たり採算を確認し、中立の利益率を引き上げる。
- コスモピアの不正取引に関する損失が回収され、第三者を含む調査と再発防止が完了したら
- 2026年の特殊損失を継続利益に引きずらず、内部統制に関する悲観の重みを下げる。ただし、回収した金額を本業の成長利益として二重に数えない。
- 追加買収を続ける一方、買収先の営業利益が伸びず、のれんと純有利子負債が増えたら
- 資本コストを下回る再投資が続いていると判断する。株主還元余力と悲観の資産価値を引き下げ、資本配分の失敗をより重く評価する。
- 2027年9月期の最新会社予想である売上110億円・営業利益4.70億円を継続的に上回り、営業キャッシュフローも改善したら
- 2026年の利益低下からの回復が確認できる。ただし中期計画120億円への接近だけでは十分でなく、買収によらない増分利益と現金収支を見て中立の前提を改める。
見ておくもの
- SESの四半期平均有償稼働人数と実現請求単価。会社開示の契約単価との違いも確認する。
- SES・戦略領域の売上に対する営業利益率と、受託案件数・元請け比率の推移。
- 顧客のAIエージェント内製化に伴うSES契約終了件数と、成果報酬型契約の実売上。
- BaaS製品「海根」の外部顧客への商用売上、継続率、解約率。著作権登録だけでは評価を上げない。
- HCFAの年間M&A成約件数、成約率、平均手数料、未成約案件の滞留期間。
- ライフシールドの登録人数ではなく有償稼働人数、紹介成約数、売上総利益率、営業利益率。
- 買収先ごとの取得原価と追加投資を含む増分ROIC。特にHCFAとライフシールドの採算。
- コスモピアの不正取引に係る損失額の確定、債権回収、調査結果、再発防止と追加損失の有無。
- のれん残高、減損の兆候、総借入金、純現金、営業キャッシュフロー、買収支出。
- 配当と自社株買いの合計金額、利益に対する還元率、自己資本比率の推移。
- 2027年9月期の会社予想と2030年の資本効率目標の進捗。売上の増加より利益・現金の増加を優先して確認する。
倍率と資本コストの決め方
2026年10月22日の株価と時価総額は比較の最後にのみ使用した。2025年9月期のSES53.03億円、戦略領域36.42億円という財務実績を基礎とし、M&A仲介と受託の内訳は推定値だと明記した。SESは有償人員×実現月額単価、受託は有償案件数×単価、仲介は成約件数×報酬、医療人材は実稼働換算人数×年間売上から2036年の利益を作った。物価3%は価格側だけに含めた。AIエージェント代替は人月・受託の中立数量と2036年以降のg_longに反映し、資本コストの寿命や悲観確率で重ね引きしていない。楽観から中立のPERは株価や同業倍率ではなくk8%とg0%による利益価値12.5倍で統一した。2026年10月15日公表の特別損失は恒常的な営業原価として扱わず、財務と資本配分の危険として反映した。日本基準の新リース会計基準による将来の表示変更にかかわらず、2036年の営業利益は現在と比較できるよう賃借費用を営業費用とする経済実態で評価した。悲観の床にはのれん約12.8億円を含めていない。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%と株式リスクプレミアム4.5%の合計7.5%に、会社の値決め力の弱さ0.5%を加える。赤字化は2026年の特殊損失が主因であり、恒常的な資金繰り破綻は確認できないためdistress上乗せは行わない。