結論
イオンファンタジーは、イオンのショッピングセンターを中心に、子ども向け遊び場「モーリーファンタジー」やプライズ(景品)・カプセルトイの店を約 1,300 店運営する会社だ。親会社はイオンで、60% 余りを持つ。
筆者の結論は割高である。直近の決算は過去最高で、国内は勢いがある。それでも利益で測った本質価値は、今の時価総額の半分ほどにとどまる。理由は二つある。自己資本が薄く借金が重いこと。そして、儲けの伸びがすでに株価に織り込まれていることだ。
稼ぎの中心は国内だ。売上の 8 割、営業利益のほぼすべてを国内が生む。中国は赤字の止血中で、アセアンは競争が強まり利益が細った。国内の来店客は人口減で増えにくい。伸ばせるのは、大人も遊ぶプライズやカプセルトイの小型店と、値上げだ。
中立の 10 年後は、営業利益が 140 億円ほど、純利益が 65 億円ほどになる。会社の中期計画(2030 年度に営業利益 150 億円)に、6 年ほど遅れて届く姿だ。今の値段を上回るのは、確率 8% の楽観の筋書きだけだ。
分かれ目は二つある。小型店の出店が当たり続けるか。借金を抱えたまま、コロナのような客足の蒸発に耐えられるか。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見ると、この会社は「良い事業だが、払う値段に安全域がない」。
事業は理解しやすい。親が子どもを連れて遊びに来る。大人が景品を取りに来る。小型店という出店の型も育ってきた。ここは評価できる。
一方で、堀は浅い。区画は借り物で、景品の人気は仕入れ先の手の内にある。参入も易しい。オーナーとして長く持ちたい会社の条件である、競争に負けない強さまでは確認できない。
資本の使い方も気がかりだ。自己資本は 78 億円しかなく、借金は 268 億円ある。投資を借金で進める形で、コロナのような客足の蒸発に弱い。実際、2021 年 2 月期は営業赤字が 74 億円に達し、自己資本が 4 分の 1 に縮んだ。
筆者は、株主にとっての利益、つまり投資を引いて手元に残る利益が、まだ小さいと見る。営業利益は伸びているが、償却と店の更新投資に多くが消える。
値段を見ると、利益の伸びを先に買っている。中期計画を上回る楽観の筋書きでようやく、今の値段を超える。事業は悪くないが、いま払う値段は高い。
何で稼ぐ会社か
事業は国内、アセアン、中国の三つに分かれる。売上は国内が約 755 億円、アセアンが約 152 億円、中国が約 29 億円(2026 年 2 月期)。営業利益は国内の約 70 億円が稼ぎ頭で、アセアンは約 5 億円、中国は約 14 億円の赤字だった。
国内の柱はモーリーファンタジーで、約 380 店ある。イオンモールなどの区画を借り、ゲーム機や乗り物、遊具を置いて、親子連れから、小口の利用料を積み重ねて稼ぐ。収益は来店客数と、1 人あたりの使う額で決まる。
いま伸びているのは小型店だ。カプセルトイ専門店は累計約 240 店、プライズ専門店は約 80 店に増えた。小型店の売上は 2020 年度の約 8.5 倍に育っている。大人向けの「クレーン横丁 極」は、1 店で年商約 5 億円、大型の 2 号店では約 15 億円を見込む。景品は人気のキャラクターで、客が来る理由は景品が決める。
海外はマレーシア、タイ、インドネシア、ベトナムなどのアセアンと、中国で店を持つ。アセアンは売上が 1 割台で伸びたが、都市部の競争で既存店の稼ぎは落ちた。中国は不採算店を閉じる構造改革の最中で、赤字は縮んでいる。
2026 年 2 月期の営業利益は 61 億円、売上は 933 億円。利益率は 6.6% で、過去 20 年の最高 10.8% には遠い。2027 年 2 月期の会社予想は、営業利益 80 億円、純利益 30 億円だ。
店は借りて営む。家賃は固定の約束で、純負債 268 億円と合わせて見ないと、財務の重さは測れない。
優良さと弱いところ
優良さは「立地に守られた、普通に良い会社」だ。強い堀があるとまでは言えない。
強みは三つある。第一に、イオンモールという集客の器に入れること。親会社の信用で、出店の区画を確保しやすい。第二に、子どもの遊び場と景品という、親が財布を開きやすい分野に立つこと。第三に、小型店という低コストの出店の型を持ったことだ。
弱みも三つある。第一に、自己資本比率が 12% と薄い。コロナ禍とその後の赤字で、自己資本は 2020 年 2 月期の 266 億円から、2025 年 2 月期には 66 億円まで削られた。第二に、家賃という固定費が重い。客が減っても家賃は減らない。第三に、プライズもカプセルトイも、GENDA やセガ系など競う相手が多い。人気キャラクターの権利は、売り手の側が握っている。
資本効率は見かけほど良くない。直近の ROE は 36% だが、これは自己資本が小さいからだ。過去 10 年の中央値は 2.6% にとどまる。
経営は、親会社イオンの色が強い。意思決定は安定するが、少数株主の取り分は後回しになりやすい。配当性向は 10〜15% と低く、利益は店と借金の返済に回る。筆者は、これを成長の途中の姿として受け入れるが、株主に厚い会社ではないと見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の遊び場とアミューズメントは、二つの流れが重なっている。一つは、子どもが減ること。もう一つは、大人がプライズやカプセルトイにお金を使うようになったことだ。
カプセルトイの市場は 2024 年度に約 1,400 億円とされ、アミューズメント機器の市場も年 6% ほど伸びた。景品の種類が増え、観光客が遊びを求めて店に入る。最低賃金は年 3% ほど上がり、人手のかからない小型店が有利になる。
競争は、ここで激しくなる。GENDA はセガの店を買って国内外で 450 店を超え、景品の卸まで抱えた。ラウンドワンは大型の総合店を持つ。イオンファンタジーは、モールの区画という強みで小型店を増やす。小型店は参入が易しく、客を呼ぶ景品の仕入れ競争になりやすい。
アセアンは、人口が若く、モールの数も増える。ただ、都市部は現地の同業と日本勢が入り乱れ、既存店の稼ぎが落ちている。国によって明暗が分かれ、ある月の既存店は、インドネシアが 5 割近く増え、タイは 3% 余り減るなど開きがある。
中国は消費の弱さと競争で、不採算店の整理が続く。10 年先の中国は、黒字になれば御の字で、大きな稼ぎ手にはならないと見るのが妥当だ。
10 年を通じて効くのは、三つだ。子どもの数、小型店の出店余地、そして物価と人件費の差。物価で売上は上がるが、人件費と家賃も同じように上がる。値上げで人件費の上昇を吸収できる間は、利益率は保てる。
資本政策と M&A
資本政策の軸は、出店への投資と借金の管理だ。2026〜2030 年度の中期計画は、5 年間で約 790 億円を投じ、2030 年度に売上 1,500 億円、営業利益 150 億円、ROE 23% を目指す。借金と自己資本の比は 1 倍程度に整える計画だ。
還元は控えめだ。配当性向は 10〜15% を目安にしている。自社株買いの実績は見当たらない。稼いだ利益は店の投資に回す方針である。
親会社のイオンは 60.5% を持つ。かつては 65% 余りだったが、2024 年以降は 60% 台に下がった。イオンは完全子会社化の手を打てる立場にある。ただ、株価が利益の裏付けを超えていれば、親会社にその動機は薄い。筆者は買収の可能性を評価には入れていない。
過去に大きな買収はなく、海外も自前の出店が中心だ。中国は構造改革で店を閉じており、アセアンも収益重視へ舵を切った。投資の回収を厳しく見る姿勢は評価できる。
株主優待は、100株以上で施設利用券(年2回)。会社は優待の費用を開示していないため、株主 約4万人(割引額×利用率8割×変動費率4割)から年3億円と推定した。優待は株主が受け取る現物の還元なので、10年の還元に年額×10年を、中立1.0・やや悲観0.75・悲観0.5の係数で足した(費用は販管費として利益から引き済みで、自己資本の流れには入れない)。
点検済み:中立の営業利益率9.5%は会社の中期計画(2030年度に営業利益150億円=約10%)と28年2月期予想(9.2%)より低く、海外・中国は今以下に置いている。数字は据え置く。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
国内の勢いは本物だ。キッズプライズの既存店は、直近で 2 割近く伸びた。小型店の売上は 2020 年度の約 8.5 倍に育ち、出店の型は確立している。クレーン横丁 極は 1 店で年商 5 億円、2 号店は 15 億円を見込む。当たりの店を増やせば、利益は大きく伸びる。
イオンモールという集客の器は、今後も出店の区画を保証する。モールの数は海外でも増える。アセアンはインドネシアの月次既存店が 5 割近く伸びた月もあり、国によっては収益を取り戻す。ここに運営の力が付けば、海外は営業利益 20 億円を超える。
利益の質も上がる。固定の家賃と人件費は、売上が増えるほど薄まる。営業利益率は 2018 年の 8% を超え、中期計画の 10% が定着する。中国は赤字を止め、黒字に戻る。
資金面は、営業の稼ぎで返せる。償却前の営業利益は 172 億円あり、投資を賄いながら借金を減らせる。親会社の信用もあり、借り換えの不安は小さい。
利益が計画に近づけば、自己資本は厚くなり、ROE は 15% を超える。会社が掲げる 2030 年度の営業利益 150 億円は、その延長にある。
慎重な見方
今の好調は、人気景品と値上げが重なった結果だ。景品の人気は移ろう。小型店は参入が易しく、GENDA やセガ系、玩具店までが同じ客を奪い合う。出店が増えるほど、1 店あたりの売上は薄まる。
国内の来店客は、人口減で構造的に細る。モーリーファンタジーの主な客は子どもで、その数は人口減で細り続ける。大人向けの小型店で埋められるかは、まだ証明されていない。
財務はもろい。自己資本は 78 億円、純負債は 268 億円で、自己資本比率は 12% だ。家賃は固定で、客が減れば営業利益が先に消える。2020 年 2 月期以降、純損益の赤字は 5 期あった。次の景気後退で、同じ形が繰り返されうる。
アセアンは営業利益が 6 割ほど落ち、中国は赤字の止血中だ。海外は成長の柱というより、重しになる可能性がある。
利益の見通しにも不安が残る。2027 年 2 月期の経常利益は、為替差益が消えて減る予想だ。中期計画の営業利益 150 億円は、5 年で 2.5 倍にあたる。過去の実績に照らすと強気だ。値段は、これらの強気をすでに織り込んでいる。
どちらに重みを置いたか
国内の勢いと親会社の後ろ盾は強気の見方に分がある。ただ、自己資本の薄さと家賃の固定費、競争の激しさは、悲観側の指摘の方が重い。国内の来店客が構造的に細ることも、数字に裏付けがある。
確率は、中立に 4 割弱を置き、やや悲観に 24%、悲観に 12% を置いて、悲観側へやや寄せた。楽観は 8% にとどめた。借金の重さと客足の蒸発という弱点は、資本コストにすでに足してあるので、悲観の確率の方は二重に上げていない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 4,924 円974 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 440 円87 億円)。 今の値に割り戻すと 2,366 円468 億円、今との差 −12.9%、 期待の年率 +7.0%(資本コスト 9.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 11,105 円2,197 億円 | 753 円149 億円 | +336.3% | +15.9% | 949 円188 億円 |
| やや楽観 | 20% | 7,845 円1,552 億円 | 586 円116 億円 | +210.2% | +12.0% | 1,686 円334 億円 |
| 中立 | 36% | 5,826 円1,152 億円 | 480 円95 億円 | +132.0% | +8.8% | 2,270 円449 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,361 円269 億円 | 281 円56 億円 | −39.6% | −4.9% | 394 円78 億円 |
| 悲観 | 12% | 357 円71 億円 | 187 円37 億円 | −80.0% | −14.9% | 65 円13 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,924 円974 億円 | 440 円87 億円 | +97.4% | +7.0% | 5,364 円1,061 億円 |
今の株価時価総額 2,718 円538 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 小型店の当たりが続き、計画どおりに利益が伸びる 10 年 利益 120 億円 · PER 17.2 倍 · 株価時価総額 11,105 円2,197 億円
国内は小型店とクレーン横丁の出店が当たり続け、来店客は 1 億 2,900 万人まで増える。値上げも通り、国内の営業利益率は 13% に乗る。
アセアンはインドネシアなどの勢いが全体に広がり、営業利益は 30 億円を超える。中国は店を絞った後に黒字へ戻る。
営業利益は 220 億円を超え、会社の 2030 年度の目標を 6 年後には大きく上回る。償却前の稼ぎで投資を賄い、借金は減る。自己資本は厚くなり、ROE は 15% を超える。ただ、堀が浅いことは変わらず、倍率は上限の手前に置く。
この筋書きの前提は、景品の人気が 10 年のあいだ途切れないことだ。イオンモールとの関係が続き、小型店のノウハウが他社に追いつかれない。どれも成り立ちうるが、全部が同時に成り立つ確度は高くない。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年3億円×10年×1.0=30億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 国内(モーリーファンタジー・小型専門店):数量 12,876(年間の延べ来店客数(万人、推定))× 価格 1,139(1 人あたりの利用額(円、推定))→ 売上 1,467 億円・営業利益 191 億円。来店 1.29 億人、1 人あたり利用額は今の 1.34 倍。小型店の出店が当たり続け、営業利益率 13%
- アセアン:数量 6,080(年間の延べ来店客数(万人、推定))× 価格 536(1 人あたりの利用額(円換算、推定))→ 売上 326 億円・営業利益 33 億円。来店 6,080 万人、利用額は 1.34 倍。インドネシアなどが伸び、利益率 10%
- 中国:数量 448(年間の延べ来店客数(万人、推定))× 価格 938(1 人あたりの利用額(円換算、推定))→ 売上 42 億円・営業利益 3 億円。来店 448 万人。黒字に戻り利益率 6%
倍率:事業の純利益 120 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 47.3% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 28.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.2 倍。全体の PER 17.16 倍、時価総額 2,063 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:小型店の出店が当たり続け、アセアンと中国も立て直す必要があり、連続で成功する確度は高くない。過去の最高利益率を大きく超える筋書きでもある。
やや楽観 20% 出店は順調だが、競争で利益率の伸びが緩やかになる 10 年 利益 87 億円 · PER 16.7 倍 · 株価時価総額 7,845 円1,552 億円
国内は小型店が伸び、来店客は 1 億 1,700 万人に増える。値上げは物価並みに通るが、景品の仕入れ競争で利益率は 11.5% で頭打ちになる。
アセアンは国によって明暗が分かれ、全体で営業利益 20 億円ほどに育つ。中国は赤字が止まり、収支均衡に近づく。
会社の計画にはおおむね届くが、数年遅れる。借金は少しずつ減り、親会社の信用で借り換えも滞らない。
小型店は出店の初期に利益が出やすい反面、店が増えるほど当たりの店は見つけにくくなる。会社が示す 2030 年度の目標に近づく姿だが、そこから先は、物価並みの成長に落ち着く。モーリーファンタジーの来店客は、子どもの減少で緩やかに細る。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年3億円×10年×1.0=30億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 国内(モーリーファンタジー・小型専門店):数量 11,722(年間の延べ来店客数(万人、推定))× 価格 1,139(1 人あたりの利用額(円、推定))→ 売上 1,335 億円・営業利益 154 億円。来店 1.17 億人、利用額は 1.34 倍。計画に 4 年ほど遅れて近づく。利益率 11.5%
- アセアン:数量 5,510(年間の延べ来店客数(万人、推定))× 価格 536(1 人あたりの利用額(円換算、推定))→ 売上 295 億円・営業利益 22 億円。来店 5,510 万人、利用額は 1.34 倍。利益率 7.5%
- 中国:数量 407(年間の延べ来店客数(万人、推定))× 価格 938(1 人あたりの利用額(円換算、推定))→ 売上 38 億円・営業利益 1 億円。来店 407 万人。ほぼ収支均衡の手前で利益率 3%
倍率:事業の純利益 87 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 38.9% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 24.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.7 倍。全体の PER 16.66 倍、時価総額 1,446 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の勢いが数年は続く蓋然性は高い。ただ、競争で利益率の上がり方は会社の計画より緩やかになる。
中立 36% 小型店の伸びが人口減と相殺し、計画に 6 年遅れで届く 10 年 利益 66 億円 · PER 16.2 倍 · 株価時価総額 5,826 円1,152 億円
国内の来店客は、子どもの減少を小型店の出店が埋めて、1 億 700 万人まで緩やかに増える。値上げは物価並みに通り、国内の営業利益率は 10.5% に上がる。
アセアンは競争が続き、営業利益は 16 億円ほどにとどまる。中国は損益が均衡し、規模は小さいままだ。
営業利益は 143 億円、純利益は 66 億円になる。会社の 2030 年度の目標(営業利益 150 億円)に、ほぼ 6 年遅れで届く姿だ。借金は店の投資で横ばいか微増にとどまり、財務の重さは残る。
この筋書きは、会社の計画より遅く、ただ崩れない。子どもの減少、景品の競争、家賃と人件費の上昇は、すべて織り込んである。それでも自己資本が薄いことは変わらない。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年3億円×10年×1.0=30億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 国内(モーリーファンタジー・小型専門店):数量 10,656(年間の延べ来店客数(万人、推定))× 価格 1,139(1 人あたりの利用額(円、推定))→ 売上 1,214 億円・営業利益 127 億円。来店 1.07 億人、利用額は 1.34 倍。小型店が国内の伸びを担う。利益率 10.5%
- アセアン:数量 4,940(年間の延べ来店客数(万人、推定))× 価格 536(1 人あたりの利用額(円換算、推定))→ 売上 265 億円・営業利益 16 億円。来店 4,940 万人、利用額は 1.34 倍。競争で利益率は 6% どまり
- 中国:数量 366(年間の延べ来店客数(万人、推定))× 価格 938(1 人あたりの利用額(円換算、推定))→ 売上 34 億円・営業利益 0 億円。来店 366 万人、利用額は 1.34 倍。損益は均衡
倍率:事業の純利益 66 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 33.0% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 21.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.2 倍。全体の PER 16.19 倍、時価総額 1,064 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の勢いはあるが、人口減と競争、固定費の重さで計画どおりには進まない。最も重みを置く筋書き。
やや悲観 24% 景品の競争で値上げが通りにくくなり、利益が伸び悩む 10 年 利益 26 億円 · PER 8.3 倍 · 株価時価総額 1,361 円269 億円
国内の来店客は 8,900 万人で横ばいとなり、1 店あたりの売上が薄まる。値上げは人件費の上昇に追いつかず、国内の営業利益率は 7.5% にとどまる。
アセアンは都市部の競争で利益がほぼ消える。中国は店を減らしても赤字が残る。
営業利益は 76 億円で、今より少し増えるだけだ。借金は高い金利で借り換えられ、利息が利益を削る。ROE は資本コストに届かず、成長しても価値は増えない。
モーリーファンタジーは親子連れの客が減り、小型店は値引きで客を呼ぶ形になる。店を増やしても、1 店あたりの稼ぎは物価に負ける。会社の計画からは大きく離れ、財務の余裕も狭まる。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年3億円×10年×0.8=22.5億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 国内(モーリーファンタジー・小型専門店):数量 8,880(年間の延べ来店客数(万人、推定))× 価格 1,088(1 人あたりの利用額(円、推定))→ 売上 966 億円・営業利益 73 億円。来店 8,880 万人、価格は物価に 1.28 倍。景品競争で値上げが通りにくい。利益率 7.5%
- アセアン:数量 3,990(年間の延べ来店客数(万人、推定))× 価格 512(1 人あたりの利用額(円換算、推定))→ 売上 204 億円・営業利益 5 億円。来店 3,990 万人。競争で利益率 2.5%
- 中国:数量 244(年間の延べ来店客数(万人、推定))× 価格 896(1 人あたりの利用額(円換算、推定))→ 売上 22 億円・営業利益 −1 億円。来店 244 万人。店の縮小後も赤字が残る
倍率:ROE 8.0% は k 9% 以下なので、正当化 PER は 1÷k = 11.1 倍が上限。競争で新しく投じるお金が稼がない筋書きなので、上限の約 7.5 割(8.3 倍)に置いた。
確率:小型店は参入が易しく、景品の仕入れ競争が激しくなる蓋然性は高い。家賃と人件費は物価で上がり、値上げが追いつかない筋書き。
悲観 12% 景品の競争と客足の細りで、固定の家賃が利益を食う 10 年 利益 9 億円 · PER 8.3 倍 · 株価時価総額 357 円71 億円
国内の来店客は 7,100 万人まで細る。子どもが減り、小型店は GENDA やセガ系との値引き競争に巻き込まれ、物価ほど値上げできない。
家賃は固定のまま残り、国内の営業利益率は 6% に落ちる。アセアンは利益が出ず、中国は大半の店を閉じて整理損が残る。
営業利益は 40 億円、純利益は 8 億円まで細る。借金は高い金利で借り換えられ、利息が利益の多くを持っていく。財務の余裕はなく、投資は止まる。
この筋書きでは、イオンが追加の支援に動く可能性があるが、それは少数株主に有利とは限らない。事業は残るが、成長企業ではなくなる。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年3億円×10年×0.5=15億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- 国内(モーリーファンタジー・小型専門店):数量 7,104(年間の延べ来店客数(万人、推定))× 価格 977(1 人あたりの利用額(円、推定))→ 売上 694 億円・営業利益 42 億円。来店 7,100 万人、利用額は 1.15 倍どまり。家賃が固定のまま利益率 6%
- アセアン:数量 3,230(年間の延べ来店客数(万人、推定))× 価格 460(1 人あたりの利用額(円換算、推定))→ 売上 149 億円・営業利益 0 億円。来店 3,230 万人。赤字ぎりぎりで利益率 0%
- 中国:数量 122(年間の延べ来店客数(万人、推定))× 価格 805(1 人あたりの利用額(円換算、推定))→ 売上 10 億円・営業利益 −1 億円。来店 122 万人。大半の店を閉じ、整理損が残る
倍率:ROE 3.6% は k 9% 以下なので、正当化 PER は 1÷k = 11.1 倍が上限。純利益 8.5 億円の稼ぐ力は構造的な負けで細っている。上限の約 7.5 割(8.3 倍)に置いた。
確率:構造的な負けの筋書き。借金の重さと客足の減少が同時に来る必要があり、確度は高くないが、起きれば打撃は大きい。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内(モーリーファンタジー・小型専門店)
イオンモールなどの区画を借りた子ども向け遊び場と、プライズ・カプセルトイの小型専門店。連結店舗 1,303 店のほとんどを占める。
| 数量年間の延べ来店客数(万人、推定) | 価格1 人あたりの利用額(円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 8,880 | 850 | 755 | 70 |
| 10 年後 中立 | 10,656 | 1,139 | 1,214 | 127 |
取り方:来店客数は開示されない。国内売上 755 億円を、国内の遊具・ゲーム・景品の 1 人あたり利用額の目安で割った推定値。数量は実質で、子どもの減少を小型店の出店が埋める前提。価格には物価が乗り、中立で 10 年 1.34 倍。
アセアン
マレーシア、タイ、インドネシア、ベトナムなどのモールに出す店。都市部の競争が強まっている。
| 数量年間の延べ来店客数(万人、推定) | 価格1 人あたりの利用額(円換算、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 3,800 | 400 | 152 | 5 |
| 10 年後 中立 | 4,940 | 536 | 265 | 16 |
取り方:売上 152 億円を、国内の半分弱の 1 人あたり利用額の目安で割った推定値。為替は 1 ドル 150 円で固定し、現地の物価は円換算で国内並みに上がるとして中立 10 年 1.34 倍。
中国
中国のモールに出していた店。不採算店を閉じる構造改革の最中で、営業赤字が続いている。
| 数量年間の延べ来店客数(万人、推定) | 価格1 人あたりの利用額(円換算、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 407 | 700 | 29 | −14 |
| 10 年後 中立 | 366 | 938 | 34 | 0 |
取り方:売上 28.5 億円を、国内よりやや低い 1 人あたり利用額の目安で割った推定値。店の整理で数量は減り、10 年後の価格は物価並み。営業損失は 13.7 億円(前期から 16.8 億円改善)。
リスクと懸念
借金と自己資本の薄さ
自己資本 78 億円に対し純負債は 268 億円、自己資本比率は 12% だ。コロナ禍の赤字で自己資本は 4 分の 1 に縮んだ。次の景気後退や客足の蒸発が来れば、借り換えと投資の両方が止まる。金利の上昇で、利息の負担も増える。
家賃という固定費
店はモールの区画を借りて営む。家賃は売上が落ちても減らない固定の約束で、営業利益が先に消える。家賃は年に 100 億円超と推定され、純負債と合わせて見ないと財務の重さを見誤る。2028 年 2 月期からの新リース会計で、借金の見かけは増える。
景品と小型店の競争
プライズもカプセルトイも、参入が易しい。GENDA やセガ系、玩具店までが同じ客を奪い合う。景品の人気は仕入れ先の手の内にあり、出店が増えるほど 1 店の売上が薄まる恐れがある。
子どもの減少
国内の主な客は子どもだ。少子化で数は構造的に減る。大人向けの小型店で埋められるかが、国内の来店客を左右する。人口減は物価の上昇でも埋まらない。
アセアンの競争と中国の赤字
アセアンは都市部の競争で営業利益が約 6 割減った。国ごとの明暗も大きい。中国は構造改革で赤字が縮んだが、四半期ごとに赤字が出る状態が続く。10 年のうちに黒字化できる確度は高くない。
親会社への依存と少数株主
イオンが 60% 余りを持ち、出店の区画も親会社のモールに頼る面が大きい。意思決定は安定するが、少数株主の取り分は後回しになりやすい。配当性向は 10〜15% と低い。完全子会社化の可能性もあるが、評価には入れていない。
今後の分かれ目
- 小型店の既存店売上が、2 割近い伸びのあとも落ちずに続く
- 国内の営業利益率が 10% を超える形で定着し、楽観とやや楽観の確度が上がる。
- プライズやカプセルトイの競争で、既存店が前年を割る
- 値上げが通らず、やや悲観の筋書きに近づく。家賃が固定のため、営業利益が先に減る。
- 中国が 2027 年 2 月期のうちに黒字へ転じる
- 構造改革が実を結んだ証拠になり、全社の営業利益が計画に近づく。
- コロナ級の外出制限が再び起きる
- 家賃と借金が残り、赤字と自己資本の毀損で悲観の筋書きが現実になる。
- アセアンの都市部で競争が一段と強まる
- 海外の営業利益が消え、全社の伸びは国内だけで支える形になる。
- イオンが完全子会社化の TOB を発表する
- 少数株主の評価が一時的に上がる。ただ、事業の本質価値が変わるわけではない。
見ておくもの
- 国内の小型店(カプセルトイ・プライズ専門店)の既存店売上と出店数
- 純負債と自己資本比率、営業利益に対する利息の倍率
- アセアン各国の既存店と、中国の四半期の営業損益
- 中期計画(2030 年度の営業利益 150 億円)の進み具合
- イオンの持株比率の変化
倍率と資本コストの決め方
国内・アセアン・中国それぞれの来店客数(実質)と 1 人あたりの利用額(名目)で 10 年の売上を積み、営業利益率はその筋書きの競争と家賃の構造から置いた。自己資本は今の 78 億円に純利益を足して還元を引く流れで置き、ROE は結果として出る。倍率は資本コスト 9% と長期の成長 4% から出した式の PER の約 7.5〜8.5 割で、今の PER や過去・同業の PER は使っていない。今の株価が倍でも半分でも、この数字は動かない。店は借りて営むので、10 年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)で置いた。2028 年 2 月期からの新リース会計で営業利益は少し増え、純負債と自己資本比率は悪く見えるが、価値は変わらない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.5→17.16 倍・やや楽観 PER 11.8→16.66 倍・中立 PER 11.2→16.19 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.5% を足した。