結論
グローバルキッズCOMPANY は、東京と横浜を中心に認可保育所と学童クラブを約 200 か所運営する会社だ。筆者の結論は「やや割高」で、確率で重みを付けた本質価値は今の時価総額を 1 割ほど下回る。
稼ぎの源は国と自治体が決める公定価格で、園児 1 人ごとに運営費が入る。景気に左右されにくい反面、値段を自分で上げることはできない。営業利益率は長く 1〜3% 台で、2026 年 9 月期にようやく 4% に届く見込みだ。
逆風は子どもの数だ。出生数の減少で待機児童はほぼ消え、都内でも定員割れの園が増えている。会社は都心への集中と不採算園の譲渡、アソシエ・アカデミーの買収で立て直しを図る。2030 年に EBITDA マージン 10% という目標は意欲的だが、今の倍近い水準で、道筋はまだ見えない。
借金は約 67 億円あり、園舎の多くは借りている。家賃は売上が落ちても下がらない固定費だ。少子化の中で利益率を上げ続けられるかが、価値を決める。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、これは「なくならないが、もうからない事業」だ。保育は社会に欠かせず、10 年後も同社の園の多くは開いているだろう。しかし値段は国が決め、利益率は薄い。
オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益は見かけより小さい。園舎の改装や新しい園の内装に毎年お金が要り、減価償却は営業利益に近い額がある。それに家賃という長い約束が重なる。
資本配分は試されている最中だ。過去の出店は減損を繰り返し、資本コストに届かなかった。今は都心への集中と買収で巻き返そうとしている。この方針が利益率の改善として数字に表れるまでは、評価を保留する。
安全域、つまり払う値段と本質価値の差は、今の値段では見当たらない。会社の目標どおりに利益率が上がれば話は変わるが、それに賭けるには材料が足りない。過去の減損の多さを思えば、なおさらだ。
何で稼ぐ会社か
事業は子育て支援の一本だ。中心は認可保育所で、東京に 136 園、神奈川に 30 園を構える。ほかに認証保育所、認定こども園、学童クラブ・児童館を運営し、施設は合わせて約 210 か所になる。在籍する園児は 1 万人を超える。
売上の大半は、国と自治体から園児 1 人ごとに払われる運営費だ。単価は子どもの年齢と地域で決まり、0〜2 歳児ほど高い。横浜市からの補助金だけで売上の 15% を占める。保護者の保育料も、いったん自治体を通る形が多い。つまり顧客は実質的に行政である。
費用の中心は保育士の人件費と園舎の家賃だ。従業員は 3,000 人を超え、園舎の多くはビルの 1 階などを借りている。人件費は国の処遇改善で上がるが、その分は公定価格の引き上げで戻ってくる仕組みだ。家賃は筆者の推定で売上の 1 割前後を占める。
2025 年 7 月にアソシエ・アカデミーを買い、施設数と売上が 2 割ほど増えた。同時に、定員が埋まらない園は他社へ譲り、都心の園に人と資金を集めている。郊外の園は子どもが減るのが早く、都心の園は保育の需要が根強い。この差に賭けるのが、今の経営の方針だ。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは普通の水準だ。認可保育所は自治体の認可が要り、一度開いた園は地域に根付く。園児は卒園まで通い続けるので、収入は読みやすい。
ただし同じ立場の運営会社は多い。JP ホールディングス、ライクのグループ、ポピンズ、ベネッセの系列などが首都圏でしのぎを削る。値段は国が決めるので、差が出るのは定員を埋める力と保育士を集める力だけだ。
資本効率は低い。ROE は過去 10 年の中央値で 5% 台にとどまり、2022 年と 2023 年は赤字だった。不採算園の減損が繰り返し利益を削ってきた。新しく園を開く投資が、必ずしも資本コストに届いていない証拠だ。
経営は創業者の色が強い。社長の資産管理会社が約 4 割を持ち、意思決定は速い。その分、少数株主の声は届きにくい。今期の採算改善が続けば、経営の評価も変わる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
保育の市場は、増やす時代から選ばれる時代へ変わった。2010 年代は待機児童を減らすため、国が園の新設を強く後押しした。その結果、首都圏の受け皿は足り、今は出生数の減少で定員割れが目立つ。
子どもの数は年 1% 前後で減り続ける。一方で、共働きの広がりで保育を使う割合は上がっており、園児の数の落ち方は出生数ほど急ではない。10 年で 1 割ほど減る姿を、筆者は中心に置く。
単価は国の公定価格で決まる。保育士の賃金を上げる処遇改善が続き、公定価格もそれに合わせて上がってきた。物価と賃金が年 3% 上がる世界では、単価もおおむね物価並みに上がると見る。ただし財政が苦しくなれば、改定が遅れる恐れはある。
競争の軸は立地と人だ。駅に近い園、保育の質で評判の園には子どもが集まり、郊外や過剰な地域の園は空く。保育士の採用は厳しく、人が足りなければ定員を減らすしかない。規模の大きい会社ほど採用と研修で有利で、小さな事業者の園を買う再編が進む。
AI による置き換えの心配は小さい。子どもを預かる仕事は現場の人の手が要る。効くのは事務と書類の手間を減らす方向で、むしろ利益率を少し押し上げる。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。配当は利益の 5 割強にあたり、利益が戻った 2026 年 9 月期も据え置きの予定だ。自社株買いの実績は乏しい。
資本の使い道は M&A と新しい園だ。2023 年に東京建物キッズ(今のおはようキッズ)を、2025 年にアソシエ・アカデミーを買った。運営会社の再編は続いており、同社は買う側に回ってきた。借入は約 67 億円で、金利が上がれば利払いが年 1〜2 億円増える。
筆頭株主は社長の資産管理会社で、約 4 割を持つ。外から経営権を握るのは難しく、TOB の可能性は低い。不採算園の譲渡は、資本を回収して都心へ回す動きとして筆者は評価する。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
利益の立て直しはもう始まっている。2026 年 9 月期は上方修正で、営業利益は前期の 1.5 倍を超える見込みだ。定員の見直しで単価が上がり、購買の集約で原価が下がり、ICT の費用も減った。どれも一度きりでなく、続く改善である。会社自身がこれを中期の戦略として掲げている。
アソシエ・アカデミーの買収で規模は 2 割大きくなった。保育は規模が効く事業で、採用・研修・購買・事務を共通にするほど 1 園あたりの費用は下がる。会社が掲げる EBITDA マージン 10% は高い目標だが、半分でも近づけば利益は今の倍になる。
少子化は確かに逆風だが、それは小さな事業者をより強く苦しめる。後継ぎのいない園を買う機会は増え、同社は再編の受け皿になれる。都心の園は定員が埋まりやすく、不採算の郊外の園を譲れば平均の採算は上がる。
公定価格は保育士の賃上げに合わせて上がり続けている。国は子育て支援を最重要の政策に掲げており、単価が物価に置いていかれる心配は小さい。都心に集めた園は定員が埋まりやすく、1 人あたりの単価も高い。
借金も利益が戻れば返せる水準だ。EBITDA は 20 億円を超え、借入はその 3 年分に収まる。今の値段は、改善が始まったばかりの会社を、悪かった頃の利益で測っている。
慎重な見方
値段を国に握られた事業で、利益率が倍になる絵は描きにくい。過去 10 年、営業利益率は 1〜3% 台を行き来し、2022 年と 2023 年は赤字だった。改善は今期の 1 年だけで、それも定員の調整という一時的な手当てが大きい。
子どもは確実に減る。出生数は 70 万人を割り込み、都内でも定員割れの園が増えた。空いた席は利益に直結する。運営費は在籍した子どもの数で入るのに、保育士と家賃の費用は簡単には減らせない。
借金と家賃が重い。借入は約 67 億円あり、金利が上がれば利払いが増える。園舎の賃貸の約束は長く、売上が 1 割落ちても家賃は落ちない。過去の減損の繰り返しは、出店の判断が甘かったことを示している。
買収も万能ではない。アソシエ・アカデミーの統合がうまくいかなければ、のれんと借金だけが残る。オーナーが 4 割を持つ構図では、少数株主が経営の規律を求める手段も乏しい。
今期の利益の回復も、都心集中の効果と定員の調整がたまたま重なった面がある。1 年の改善で 10 年を語るのは早い。
どちらに重みを置いたか
今期の改善は本物だが、それが 10 年続く根拠はまだ弱い。慎重な見方の指摘する子どもの減少と固定費の重さは、構造の問題だ。確率は中立を厚くし、やや悲観をやや楽観より少し重く置いた。利益率が 2 期続けて 4% を超えれば、評価は上に動く。逆に定員割れが都心の園まで広がれば、やや悲観が中心になる。強気の見方が正しいかは、あと 2〜3 年の数字で判る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/09 期)
確率で加重した株価時価総額 1,213 円116 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 402 円38 億円)。 今の値に割り戻すと 804 円77 億円、今との差 −19.1%、 期待の年率 +5.0%(資本コスト 8.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 2,285 円218 億円 | 566 円54 億円 | +186.8% | +11.1% | 228 円22 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,725 円164 億円 | 484 円46 億円 | +122.2% | +8.3% | 442 円42 億円 |
| 中立 | 40% | 1,342 円128 億円 | 425 円41 億円 | +77.8% | +5.9% | 707 円67 億円 |
| やや悲観 | 22% | 600 円57 億円 | 304 円29 億円 | −9.0% | −0.9% | 199 円19 億円 |
| 悲観 | 10% | 162 円15 億円 | 229 円22 億円 | −60.7% | −8.9% | 39 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,213 円116 億円 | 402 円38 億円 | +62.5% | +5.0% | 1,615 円154 億円 |
今の株価時価総額 994 円95 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 再編の受け皿になり、利益率が上がる 利益 15 億円 · PER 14.0 倍 · 株価時価総額 2,285 円218 億円
少子化で小さな運営会社の撤退が相次ぎ、同社はその園を買い取って再編の受け皿になる。郊外の不採算園は譲り、都心と横浜の駅前に園を集める。園児の数は自然減を買収で埋め、今とほぼ同じ 1 万人強を保つ。
採用・研修・購買・事務を共通にした効果が積み上がり、ICT で書類の手間も減る。公定価格は保育士の賃上げに合わせて上がり、都心の高い単価の園が増える。営業利益率は 5.5% に届き、会社の EBITDA マージン 10% の目標にも近づく。
借金は利益で少しずつ返り、配当は利益に合わせて増える。同社は首都圏の保育で上位の運営会社としての地位を固める。
- 保育所・学童の運営:数量 10,400(在籍する園児の数(人))× 価格 0.04(園児 1 人あたりの年間の売上(億円・名目。学童・周辺事業を含む))→ 売上 463 億円・営業利益 26 億円。園児 10,400 人を買収で保つ × 1 人 0.0445 億円(物価 1.34 倍と都心の高単価で 1.40 倍)、利益率 5.5%
倍率:事業の純利益 15 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.2% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.0 倍。全体の PER 14.04 倍、時価総額 205 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:後継ぎのいない事業者の園を買い続けて園児の数を保ち、会社の目標に近い利益率の改善が実る筋書き。過去 10 年の利益率の山を大きく超えるので 8%。
やや楽観 20% 都心集中で採算が少しずつ上がる 利益 12 億円 · PER 13.2 倍 · 株価時価総額 1,725 円164 億円
園児の数は年 0.5% ほど減るが、駅前の園は定員が埋まり、空きの多い園は譲る。アソシエ・アカデミーとの統合で本部の費用が薄まり、購買の集約も効く。
単価は公定価格の改定で物価並みに上がる。保育士の賃金も上がるが、処遇改善の加算で賄われる。営業利益率は 4.8% と、今期の 4.2% から一歩進む。
配当は利益の半分ほどで続き、残りは借金の返済と園の改装に回る。会社の形は今と変わらず、規模を保ったまま少しずつ稼ぐ力を上げる 10 年になる。保育の質の評判が定員を埋める力となり、採用でも有利に働く。
- 保育所・学童の運営:数量 9,880(在籍する園児の数(人))× 価格 0.04(園児 1 人あたりの年間の売上(億円・名目。学童・周辺事業を含む))→ 売上 431 億円・営業利益 21 億円。9,900 人 × 1 人 0.0436 億円(1.37 倍)、利益率 4.8%
倍率:事業の純利益 12 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.1% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.2 倍。全体の PER 13.17 倍、時価総額 152 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:都心への集中と買収の統合が進み、利益率が今期の水準から少し上がる筋書き。今期の上方修正の改善が続く形なので 20%。
中立 40% 子どもの減少を単価と効率で埋める 利益 9 億円 · PER 12.4 倍 · 株価時価総額 1,342 円128 億円
出生数の減少で園児は 10 年で 1 割減る。同社は空いた園を譲り、残った園の定員を埋めることに集中する。単価は公定価格の改定で物価に沿って上がり、売上は名目で 400 億円ほどになる。
人件費と家賃も物価に沿って上がるが、本部の効率化と ICT で少しだけ吸収する。今ある園舎の減価償却は物価で増えないので、その分だけ利益率は持ち上がる。それでも営業利益率は 4.3% と、今期をわずかに上回る程度だ。
金利の上昇で利払いは年 2 億円を超える。配当は利益の半分で続く。稼ぐ力は資本コストとほぼ同じで、事業の価値が大きく増えることはない。
- 保育所・学童の運営:数量 9,360(在籍する園児の数(人))× 価格 0.04(園児 1 人あたりの年間の売上(億円・名目。学童・周辺事業を含む))→ 売上 399 億円・営業利益 17 億円。9,400 人(年 −1%)× 1 人 0.0426 億円(物価 1.34 倍)、利益率 4.3%
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.5% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.4 倍。全体の PER 12.36 倍、時価総額 114 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:子どもの数が年 1% 減るのを、物価並みの単価と運営の効率化でほぼ埋めるという、業界の見通しに沿った中心の筋書き。最もありそうなので 40%。
やや悲観 22% 定員割れが広がり、改定が遅れる 利益 5 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 600 円57 億円
出生数の落ち込みが続き、園児は 10 年で 2 割減る。都内でも定員割れの園が増え、同社は譲渡と閉園を重ねる。閉じた園の改装費は減損として消える。
国の財政が苦しくなり、公定価格の改定は物価に追いつかない。保育士の賃金は人手不足で上がり続け、その差が利益を削る。家賃は売上が落ちても下がらず、営業利益率は 3% に戻る。
利払いの増加も重なり、純利益は今の 3 分の 2 ほどになる。配当は減らさざるを得ず、買収で広げた規模が重荷になる。借金の返済が優先され、都心への集中も足踏みする。それでも保育は公費の事業で、園は簡単にはなくならない。
- 保育所・学童の運営:数量 8,320(在籍する園児の数(人))× 価格 0.04(園児 1 人あたりの年間の売上(億円・名目。学童・周辺事業を含む))→ 売上 331 億円・営業利益 10 億円。8,300 人 × 1 人 0.0398 億円(改定の遅れで 1.25 倍)、利益率 3.0%
倍率:事業の ROE 4.3% が k 8.5% を下回るので、ためた利益は額面未満の値打ちしかなく PER は 1÷k=12.9 倍が上限。定員割れと改定の遅れで稼ぐ力が落ちた筋書きなので、その下の 9.5 倍に置いた。
確率:出生数の減少が想定より速く、公定価格の改定も財政の都合で遅れる筋書き。過去 2 期の赤字と減損の繰り返しを踏まえ 22%。
悲観 10% 少子化と固定費に押しつぶされる 利益 2 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 162 円15 億円
園児は 10 年で 3 割減り、首都圏でも保育所の淘汰が本格化する。国は財政の制約から公定価格を据え置き、保育士の賃金だけが上がる。人が集まらない園は定員を減らし、売上はさらに細る。
園舎の家賃は長い約束で、閉園しても違約金がかかる。営業利益率は 2% まで落ち、利払いを引くと純利益はほとんど残らない。不採算園の減損が続き、自己資本は増えない。
配当は細り、借金の返済が優先される。価値は事業の稼ぎではなく、残った園の細い稼ぎでしか測れない。社会に必要な事業でも、株主に残る価値が小さいことはありうる。
- 保育所・学童の運営:数量 7,280(在籍する園児の数(人))× 価格 0.04(園児 1 人あたりの年間の売上(億円・名目。学童・周辺事業を含む))→ 売上 278 億円・営業利益 6 億円。7,300 人 × 1 人 0.0382 億円(1.20 倍)、利益率 2.0%
倍率:事業の ROE 1.7% が k 8.5% を大きく下回り、PER は 1÷k=12.9 倍が上限。構造的に負けた筋書きの稼ぐ力から 9.0 倍に置いた。PBR は 0.2 倍を割るが、自己資本の多くは園舎の内装・のれん・保証金で、閉園すれば値が付かず違約金もかかる。純負債が約 40 億円あり、純現金や売れる資産の床は無いとみた。
確率:少子化の加速、公定価格の据え置き、保育士の不足が同時に起きる構造的な負けの筋書き。制度の事業で倒産までは考えにくいので 1 割。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
保育所・学童の運営
東京・神奈川の認可保育所を中心に、認証保育所・こども園・学童クラブ・児童館を運営し、国と自治体の運営費(公定価格)と補助金で稼ぐ。
| 数量在籍する園児の数(人) | 価格園児 1 人あたりの年間の売上(億円・名目。学童・周辺事業を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/09 | 10,400 | 0.03 | 331 | 14 |
| 10 年後 中立 | 9,360 | 0.04 | 399 | 17 |
取り方:有報の在籍園児 10,391 人を約 10,400 人に丸めて数量に、2026 年 9 月期の会社予想の売上 331 億円(アソシエ・アカデミーを通年で含む)を割った 1 人あたり約 0.032 億円を単価に置いた。学童・周辺事業の売上も単価に含めた推定。単価は公定価格の改定で物価に沿って上がる。
リスクと懸念
出生数の減少と定員割れ
出生数は 70 万人を割り込み、首都圏でも定員割れの園が増えている。運営費は在籍した子どもの数で入るので、空いた席はそのまま売上の減少になる。保育士と家賃の費用はすぐには減らせず、利益は売上より大きく落ちる。
公定価格の改定の遅れ
単価は国と自治体が決める。保育士の賃上げに合わせた改定が続いてきたが、財政が苦しくなれば改定は遅れる。賃金と物価だけが上がり単価が据え置かれれば、もともと薄い利益率はすぐに消える。横浜市の補助金のような自治体の上乗せも見直しの対象になりうる。
家賃と借金という固定の約束
園舎の多くは借りており、家賃は売上が落ちても下がらない。借入も約 67 億円あり、金利が上がれば利払いが年 1〜2 億円増える。新リース会計基準が始まれば、家賃の約束は負債として表に出て、財務は今より重く見える。
保育士の不足
保育士が集まらなければ、定員を減らすしかない。採用の費用と賃金は上がり続け、都心ほど人の取り合いが激しい。事故や不適切な保育が起きれば、自治体の信頼と採用の両方を失う。
買収と減損の繰り返し
同社は出店と買収で大きくなったが、不採算園の減損で 2022 年と 2023 年は赤字だった。アソシエ・アカデミーの統合が思うように進まなければ、のれんと借金だけが残る。オーナーが約 4 割を持つため、外からの規律は働きにくい。
今後の分かれ目
- 営業利益率が 2 期続けて 4% を超えたら
- 今期の改善が一時的でないと見て、やや楽観の確率を上げる。会社の EBITDA マージンの目標への道筋も見直す。
- 公定価格の改定が物価や賃金を下回ったら
- やや悲観の筋書きに重みを移す。人件費の上昇分を吸収できるかを四半期ごとに見る。
- 大きな運営会社をもう一つ買ったら
- 買値と相手の利益率を見る。規模の効果で採算が上がるなら中立の利益率を上げ、借金が重くなるだけなら下げる。
- 在籍園児の数が年 2% を超えて減り始めたら
- 中立の数量を下げる。都心への集中が子どもの減少に追いついていない印と見る。
- 大株主の資産管理会社が持株を大きく売ったら
- 経営の主導権や資本政策が変わる可能性がある。還元の方針と M&A の姿勢の変化を確かめる。
見ておくもの
- 在籍園児の数と定員の充足率
- 公定価格と処遇改善の改定率
- 営業利益率と EBITDA マージン(会社目標 10%)
- 不採算園の譲渡・閉園と減損の額
- 借入金と利払いの推移
倍率と資本コストの決め方
倍率は資本コスト 8.5%(基本 7.5%+借金・寿命−循環)と長期の g 4% から利益ベースの正当化 PER で決め、楽観側は上限の 9 割、中立は ROE が k とほぼ同じなので上限の 9.2 割に置いた。今の PER(会社予想で約 13 倍)には寄せていない。単価は物価並み、数量は出生数に沿って年 1% 減と置いた。園舎は借りており、新リース会計基準(2027 年 10 月以後の年度から)で負債と利益の形が変わるが、10 年後の数字は家賃を営業費用に入れた今の形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.84→14.04 倍・やや楽観 PER 12.76→13.17 倍・中立 PER 11.93→12.36 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。