結論
セレスポは、企業の催しや自治体の式典、マラソンなどの大会、皇室がご臨席になる全国行事の設営と運営を請け負うイベントの会社だ。2027 年に創立 50 年を迎える老舗で、全国に営業拠点を持つ。筆者の結論は、今の値段は割安だというものだ。
一番の理由は手元の現金にある。2022 年前後に大きな仕事で稼いだ現金が残り、定期預金を含めた純現金は約 60 億円と、時価総額を上回る。事業の稼ぎだけで見れば並の会社だが、この現金の厚みが値段を下から支えている。
事業の質は高くも低くもない。営業利益率は普通の年で 4〜7%、ROE は資本コストに少し届かない。イベントの請負は人と段取りの商売で、強い堀、つまり他社がまねできない強みは持たない。一方で、皇室の行事のように毎年決まった数がある仕事を長く任されてきた実績は、信頼という形の資産だ。
気になる点もある。東京五輪のテスト大会をめぐる談合で、会社は二審でも有罪となり上告している。公共の仕事の入札で不利に扱われる期間が延びれば、稼ぎの一部が細る。それでも筆者は、現金と並の稼ぎを合わせれば、今の値段には安全域があると見る。
10 年で見れば、現金を株主に戻すかどうかと、公共の仕事の信頼を取り戻せるかが分かれ目になる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、セレスポは「並の事業に、厚い現金が付いた会社」だ。事業そのものに強い堀は無い。イベントの請負は人の段取りの商売で、利益率は普通の年で 5% 前後、ROE は資本コストに少し届かない。長く持って複利で増やす種類の会社ではない。
それでも値段が安ければ話は別だ。オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益は純利益とほぼ同じだ。設備投資がほとんど要らず、稼いだ利益は現金で残る。手元の純現金は時価総額を上回る。事業の稼ぎに付く値段はほとんどゼロに近い。
経営の資本の使い方には注文がある。現金をため込んだまま使い道を示さず、談合事件で信頼を傷つけた。それでも配当を増やし、自社株買いもしており、株主を無視しているわけではない。
安全域は、強い事業からでなく、現金と低い値段から来ている。筆者は、この安全域は本物だと見る。ただし現金の戻り方しだいで厚みは変わる。
事業が並でも、払う値段が十分に低ければ、時間が味方になる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ方は、イベント 1 件ごとの請負だ。客の目的に合わせて企画を立て、会場を設営し、当日の進行と運営を担う。テントや音響の機材を自社で持つより、協力会社を束ねて現場を回すのが中心で、大きな設備投資は要らない。
事業は三つに分かれる。いちばん大きいのはベース事業で、2026/03 期の売上は 107 億円と全体の 7 割を占める。全国の拠点が、企業の販促や式典、自治体の催し、国際会議などを請け負う。大阪・関西万博のような国際的な催しが重なった年は、1 件あたりの額が大きくなる。
二つ目はスポーツ事業で、売上は 14 億円。中央の競技団体が主催するマラソンや陸上などの大会の設営と運営を担う。2026/03 期は世界陸上や東京デフリンピックが重なり、売上は 4 割近く伸びた。
三つ目はロイヤルイベント事業で、売上は 30 億円。国民スポーツ大会や全国植樹祭のように、皇室がご臨席になり、毎年都道府県を持ち回りで開く行事を手がける。行事の数は毎年ほぼ決まっており、景気に左右されにくい。会社の売上の 2 割を占める安定した柱だ。
利益は人の段取りの力で決まる。案件の粗利をどれだけ管理できるかが利益率を左右し、会社は今、拠点ごとの採算の管理を立て直している。
売上は年度の後半に偏る。春から秋に催しや大会が集まり、年度の初めの 3 か月は赤字になりやすい。2027/03 期の 1Q も営業損失で始まった。季節の波は毎年のことで、年間で見れば利益は残る。
優良さと弱いところ
強みは信頼と現場の対応力だ。皇室の行事は失敗が許されず、主催する自治体は経験の長い会社を選ぶ。セレスポはこの分野で長く実績を積み、毎年の仕事を続けて任されてきた。マラソンなどの大会も、警備や交通規制と一体の段取りが要り、経験の無い会社は入りにくい。
ただし堀は狭い。イベントの請負は入札や見積もりの競争で決まることが多く、電通・博報堂の系列の会社や地域の業者と値段で競う。値上げは物価並みが精一杯で、利益率は普通の年で 4〜7% にとどまる。2022 年の高い利益は、ワクチン接種の会場の運営などの特需だった。
資本の効率は資本コストに少し届かない。ROE の中央値は 8% で、現金をため込んでいる分だけ低く出る。財務は無借金に近く、倒れる心配はほとんど無い。
弱点はガバナンスだ。東京五輪のテスト大会の談合で、会社と元専務が有罪となり、上告している。公共の仕事の入札で不利に扱われる期間があり、信頼で稼ぐ会社にとって痛い傷になった。
筆者がいちばん評価しているのは、毎年の仕事を続けて任されてきた積み重ねだ。皇室の行事は数が決まっており、運営の手順と人のつながりは一朝一夕には作れない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
イベントの市場は、景気と社会の出来事に大きく振れる。企業の販促や式典の予算は景気が悪くなると真っ先に削られ、2020 年のコロナでは市場がほぼ止まった。逆に、国際的な大会や博覧会が重なる年には大きな仕事が集中する。
10 年で見ると、量は横ばいに近いと筆者は見る。人口が減り、企業の催しはオンラインとの組み合わせに移る。一方で、訪日客を呼ぶ国際会議や、マラソンなど参加型のスポーツ大会は増えている。自治体の行事は数が決まっており、量は安定する。
値段は物価並みに上がる。会場の設営や運営は人の手が要り、人件費が上がれば請負の値段も上がる。ただし入札で決まる公共の仕事は、値上げが通るまでに時間がかかる。
競合は大手の広告会社の系列と、地域のイベント会社だ。大きな国際大会は大手の広告会社が全体を取りまとめ、セレスポのような会社が運営の現場を担う形が多い。五輪の談合事件は、この構図そのものへの批判を呼んだ。今後の大きな大会では、発注の仕組みが変わり、透明な競争が強まる。実績のある会社には機会が開く一方、値段の競争は厳しくなる。
AI の広がりは、企画書づくりや事務の作業を軽くするが、会場を設営し当日を回す人の仕事は置き換えにくい。筆者は、AI による量の減りは企画と事務の一部にとどまると見る。
筆者がいちばん気にしているのは、景気の谷の深さだ。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。年 1 回の配当を続け、2027/03 期も増やす予定で、3 期続けての増配になる。配当性向は 4 割前後になる。2024/03 期には自社株買いもした。
最大の論点は手元の現金だ。2022 年前後の特需で稼いだ現金がたまり、定期預金を含めた純現金は約 60 億円ある。イベントの立て替えに要る運転資金を引いても、30 億円台が事業に要らない現金だと筆者は見る。会社はこの使い道をまだはっきり示していない。
大株主には光通信が 6% ほどの持分を持つ。還元を求める声が強まれば、自社株買いや増配で現金が戻る余地がある。親会社は無く、小さな会社なので、同業や広告会社からの買収の候補にもなりうる。
筆者は、還元の方針を数字で示すことが、この会社の値段を正す一番の近道だと見る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
今の値段は、事業の稼ぎをほとんど評価していない。定期預金を含めた純現金は約 60 億円で、時価総額を上回る。運転資金を引いても 30 億円台が余り、配当と自社株買いで戻す余地は大きい。光通信のような株主が還元を求めれば、現金は早く戻る。
事業の柱も堅い。皇室がご臨席になる全国行事は毎年数が決まり、長く任されてきた実績は簡単には奪われない。マラソンなどの参加型の大会は全国で増え、訪日客を呼ぶ国際会議も伸びる。2026/03 期は世界陸上やデフリンピックで、大会の運営の力を改めて示した。
人の手の要る仕事なので、人件費が上がれば請負の値段も上がる。AI は企画書や事務を軽くするので、むしろ利益率を押し上げる。談合事件の影響は時間とともに薄れ、透明な発注の仕組みが整えば、実績のある会社に仕事が戻る。創立 50 年に向けた中期経営計画で、拠点ごとの採算の管理も立て直している。
仮に事業の利益が今のままでも、配当と現金だけで今の値段の多くは説明がつく。事業の稼ぎはおまけのようなものだ。それでいて会社は 50 年近く続き、皇室の行事という毎年の仕事を持つ。大きく外れる筋書きは考えにくい。
慎重な見方
事業の稼ぐ力は弱い。営業利益率は普通の年で 4〜7%、2022 年の高い利益はワクチン接種の会場の運営などの特需だった。その特需の現金が今の値段を支えているだけで、事業そのものが評価に値するわけではない。
談合事件の傷は深い。会社は二審でも有罪となり上告している。公共の仕事の入札で不利に扱われる期間が延び、皇室の行事のような自治体の仕事でも、発注の側が慎重になりうる。信頼で稼ぐ会社にとって、信頼の傷は売上の土台を削る。
現金も株主に戻るとは限らない。会社は使い道を示しておらず、事業の立て直しや小さな買収に使われれば、株主の手元には届かない。イベントの市場は景気に振れ、コロナのような出来事で一度に止まる。2027/03 期の 1Q も赤字で始まった。人手の不足で現場の人を確保できなければ、仕事を取ってもこなせない。
現金は使われて初めて株主の価値になる。50 年近い歴史の中で、会社は現金を株主に大きく戻した例が少ない。戻り方を控えめに見るべきで、事業の稼ぎが資本コストに届かない以上、ためた利益は帳簿ほどの値打ちを持たない。
どちらに重みを置いたか
強気の見方が強い。事業の質という点では慎重な見方の指摘が当たっているが、手元の現金が時価総額を上回るという事実は重い。現金の戻り方は 0.75 と控えめに置き、それでも中立の価値は今の値段を上回る。確率は中立を厚くし、談合事件と景気の振れを見てやや悲観と悲観にも十分な重みを置いた。安全域は現金から来ており、事業の強さからではない。強気の筋書きが実るかは、事業の伸びよりも、経営が現金をどう扱うかにかかっている。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,392 円131 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 563 円31 億円)。 今の値に割り戻すと 1,432 円79 億円、今との差 +55.2%、 期待の年率 +12.3%(資本コスト 8.5%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 3,913 円215 億円 | 858 円47 億円 | +416.9% | +17.9% | 477 円26 億円 |
| やや楽観 | 22% | 3,139 円173 億円 | 698 円38 億円 | +315.8% | +15.3% | 844 円46 億円 |
| 中立 | 36% | 2,709 円149 億円 | 604 円33 億円 | +258.9% | +13.6% | 1,193 円66 億円 |
| やや悲観 | 20% | 1,345 円74 億円 | 446 円25 億円 | +94.0% | +6.9% | 358 円20 億円 |
| 悲観 | 12% | 546 円30 億円 | 146 円8 億円 | −25.1% | −2.9% | 83 円5 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,392 円131 億円 | 563 円31 億円 | +220.2% | +12.3% | 2,955 円162 億円 |
今の株価時価総額 923 円51 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 10% 大会と国際会議の波に乗り、現金も戻る 利益 13 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 3,913 円215 億円
訪日客を呼ぶ国際会議と、全国のマラソンなど参加型の大会が増え、件数は 1 割増える。談合事件の影響は判決の確定とともに薄れ、透明になった発注の仕組みの中で、実績のある会社として大きな大会の運営を取り戻す。皇室の行事は今と同じく毎年任される。人件費の上昇を請負の値段に乗せ、1 件あたりの売上は物価を少し上回る。AI で企画書や事務の作業が軽くなり、営業利益率は 8% と過去の普通の年の上限を超える。配当性向は 45% に上がり、余った現金の一部は自社株買いで株主に戻る。ROE は資本コストを上回り、ためた利益が株主の価値として積み上がる。上告の結果を待たずに、民間の大きな催しで実績を重ね、会社の名前は信頼の象徴として戻ってくる。
- ベース事業(企業・自治体・国際会議などのイベント):数量 3,300(請け負ったイベントの件数(件・年、推定))× 価格 500(1 件あたりの売上(万円・名目))→ 売上 165 億円・営業利益 13 億円。3300 件 × 1 件 500 万円(今の 1.40 倍)、営業利益率 8.0%
- スポーツ事業:数量 170(請け負った大会の件数(件・年、推定))× 価格 1,631(1 件あたりの売上(万円・名目))→ 売上 28 億円・営業利益 2 億円。170 件 × 1 件 1631 万円(今の 1.40 倍)、営業利益率 8.0%
- ロイヤルイベント事業:数量 13.0(請け負った行事の件数(件・年、推定))× 価格 3.53(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 46 億円・営業利益 4 億円。13 件 × 1 件 3.53 億円(今の 1.40 倍)、営業利益率 9.0%
倍率:事業の純利益 13 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.6% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)26 億円。全体の PER 13.81 倍、時価総額 203 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国際会議とスポーツ大会の増加、公共の仕事の信頼の回復、現金の還元が同時に進む形。どれも起こりうるが、三つが揃う確度は高くない。
やや楽観 22% 全国の拠点で堅く稼ぐ 利益 11 億円 · PER 13.0 倍 · 株価時価総額 3,139 円173 億円
企業の催しはオンラインとの組み合わせに移るが、対面の式典や販促は残り、件数は少し増える。マラソンなどの大会も地方で増え、スポーツ事業は柱の一つに育つ。皇室の行事は毎年決まった数を任される。拠点ごとの粗利の管理が定着し、営業利益率は 7% を保つ。談合事件の影響は残るが、民間の仕事が伸びて穴を埋める。配当は利益に合わせて増え、配当性向は 4 割を超える。現金は積み上がるが、使い道ははっきりしないままだ。談合事件の影響は残るが、民間と地方の大会で補う。ROE は資本コストとほぼ同じ水準になり、ためた利益はようやく帳簿どおりの値打ちを持ち始める。株主の手元に戻るのは主に配当だ。
- ベース事業(企業・自治体・国際会議などのイベント):数量 3,100(請け負ったイベントの件数(件・年、推定))× 価格 489(1 件あたりの売上(万円・名目))→ 売上 152 億円・営業利益 11 億円。3100 件 × 1 件 489 万円(今の 1.37 倍)、営業利益率 7.0%
- スポーツ事業:数量 150(請け負った大会の件数(件・年、推定))× 価格 1,596(1 件あたりの売上(万円・名目))→ 売上 24 億円・営業利益 2 億円。150 件 × 1 件 1596 万円(今の 1.37 倍)、営業利益率 7.0%
- ロイヤルイベント事業:数量 12.0(請け負った行事の件数(件・年、推定))× 価格 3.45(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 41 億円・営業利益 3 億円。12 件 × 1 件 3.45 億円(今の 1.37 倍)、営業利益率 8.0%
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.8% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)26 億円。全体の PER 13.02 倍、時価総額 158 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2026/03 期の利益の回復が、大きな大会の無い年も続く形。拠点ごとの採算の管理が実を結べば届く。
中立 36% 並の稼ぎと厚い現金が続く 利益 9 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 2,709 円149 億円
10 年後の件数は今より 5% ほど少ない。企業の催しの一部はオンラインに移り、人口の減りで地方の催しも細る。その分を国際会議と参加型の大会が補う。1 件あたりの売上は人件費とともに物価並みに上がる。営業利益率は 6.5% と、普通の年の上の方に落ち着く。皇室の行事は毎年の仕事として続き、売上の 2 割を支える。談合事件の後、公共の大きな大会では発注が慎重になり、取れる仕事は限られる。配当性向は 4 割を保ち、余った現金は使われずに残る。ROE は資本コストに少し届かない。会社は 50 年を超えて続くが、事業の稼ぎは並のままで、株主の価値は主に配当と現金の厚みから来る。
- ベース事業(企業・自治体・国際会議などのイベント):数量 2,850(請け負ったイベントの件数(件・年、推定))× 価格 478(1 件あたりの売上(万円・名目))→ 売上 136 億円・営業利益 9 億円。2850 件 × 1 件 478 万円(今の 1.34 倍)、営業利益率 6.5%
- スポーツ事業:数量 130(請け負った大会の件数(件・年、推定))× 価格 1,561(1 件あたりの売上(万円・名目))→ 売上 20 億円・営業利益 1 億円。130 件 × 1 件 1561 万円(今の 1.34 倍)、営業利益率 6.0%
- ロイヤルイベント事業:数量 12.0(請け負った行事の件数(件・年、推定))× 価格 3.38(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 41 億円・営業利益 3 億円。12 件 × 1 件 3.38 億円(今の 1.34 倍)、営業利益率 7.5%
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.8% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)26 億円。全体の PER 12.48 倍、時価総額 131 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:件数は横ばいに近く、利益率は普通の年の上の方に落ち着く形。過去 10 年の特需の年を除いた姿に近く、最もありそうなものとして厚く置いた。
やや悲観 20% 景気の谷と信頼の傷が重なる 利益 5 億円 · PER 9.3 倍 · 株価時価総額 1,345 円74 億円
景気が冷え、企業は販促や式典の予算を削る。件数は 15% ほど減る。談合事件の判決が確定し、公共の入札で不利に扱われる期間が延びる。皇室の行事でも、発注する自治体が慎重になり、いくつかを他社に譲る。人件費は上がり続けるが、請負の値段は競争で物価ほど上がらない。営業利益率は 4% に落ちる。現金は谷を越えるために一部を使い、配当は利益に合わせて減る。ROE は資本コストの半分ほどにとどまる。大きな大会の運営を大手の広告会社の系列に譲る場面も増える。会社は拠点を減らして固定費を削るが、人を減らせば次の山で仕事を取れない。ためた利益は帳簿ほどの値打ちを持たない。
- ベース事業(企業・自治体・国際会議などのイベント):数量 2,600(請け負ったイベントの件数(件・年、推定))× 価格 446(1 件あたりの売上(万円・名目))→ 売上 116 億円・営業利益 5 億円。2600 件 × 1 件 446 万円(今の 1.25 倍)、営業利益率 4.0%
- スポーツ事業:数量 110(請け負った大会の件数(件・年、推定))× 価格 1,456(1 件あたりの売上(万円・名目))→ 売上 16 億円・営業利益 1 億円。110 件 × 1 件 1456 万円(今の 1.25 倍)、営業利益率 3.0%
- ロイヤルイベント事業:数量 10.0(請け負った行事の件数(件・年、推定))× 価格 3.15(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 32 億円・営業利益 2 億円。10 件 × 1 件 3.15 億円(今の 1.25 倍)、営業利益率 5.0%
倍率:事業の ROE 3.9% が k 8.5% を大きく下回るので PER は 1÷k の 11.4 倍まで。稼ぐ力(純利益÷k)を上限に、その 8 割の 9.34 倍。余った現金は谷で一部を食うので 0.75 倍で足した。
確率:企業の販促の予算が景気で削られ、公共の仕事でも談合事件の影響が長引く形。イベントの市場の振れの大きさを見て、十分な重みを置いた。
悲観 12% 市場が止まり、仕事を失う 利益 1 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 546 円30 億円
感染症の流行や深い不況で、催しの市場が長く冷え込む。企業はオンラインに移ったまま戻らず、件数は 3 分の 2 に減る。談合事件の判決の確定で、公共の仕事の多くから外され、皇室の行事も半分ほどを失う。人の段取りで稼ぐ会社は、仕事が減っても現場の人を抱え続け、利益はほぼ消える。会社は手元の現金で谷を越えるが、その間に現金は細る。株主に残るのは、運転資金と赤字の補填を引いた後の現金だけになる。配当は最初の数年で細り、自己資本は赤字で削られる。会社は存続しても、もう全国行事を任される会社とは呼べない姿になる。手元の現金だけが、株主の価値の最後の支えになる。
- ベース事業(企業・自治体・国際会議などのイベント):数量 2,000(請け負ったイベントの件数(件・年、推定))× 価格 411(1 件あたりの売上(万円・名目))→ 売上 82 億円・営業利益 0 億円。2000 件 × 1 件 411 万円(今の 1.15 倍)、営業利益率 0.5%
- スポーツ事業:数量 80.0(請け負った大会の件数(件・年、推定))× 価格 1,340(1 件あたりの売上(万円・名目))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。80 件 × 1 件 1340 万円(今の 1.15 倍)、営業利益率 0.0%
- ロイヤルイベント事業:数量 7.0(請け負った行事の件数(件・年、推定))× 価格 2.90(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 20 億円・営業利益 0 億円。7 件 × 1 件 2.90 億円(今の 1.15 倍)、営業利益率 2.0%
倍率:利益がほぼ消えるので PBR で。稼ぐ力は残らず、純現金から運転資金と赤字の補填を引いた残りに戻り方を掛けた約 30 億円を床とし、今の自己資本に 0.307 倍を掛けた。
確率:コロナのような出来事で市場が止まるか、談合事件で公共の仕事を広く失う筋書き。2021/03 期に売上が 4 分の 1 になった実績があり、無視できない重みを置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ベース事業(企業・自治体・国際会議などのイベント)
全国の営業拠点が、企業の販促や式典、自治体の催し、国際会議などの企画・設営・運営を請け負う。
| 数量請け負ったイベントの件数(件・年、推定) | 価格1 件あたりの売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,000 | 357 | 107 | 8 |
| 10 年後 中立 | 2,850 | 478 | 136 | 9 |
取り方:件数の開示は無いので推定。ベース事業の売上 107.1 億円を、小さな催しから国際会議までならした 1 件あたり平均 357 万円とみて年 3,000 件と置いた。部門の利益は開示が無く、全社の営業利益率 7.2% を目安に配った。
スポーツ事業
中央の競技団体などが主催するマラソン・陸上などの大会の設営と運営。
| 数量請け負った大会の件数(件・年、推定) | 価格1 件あたりの売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 120 | 1,165 | 14 | 1 |
| 10 年後 中立 | 130 | 1,561 | 20 | 1 |
取り方:件数の開示は無いので推定。スポーツ事業の売上 14.0 億円を、1 件あたり平均約 1,165 万円とみて年 120 件と置いた。2026/03 期は世界陸上・デフリンピックで件数と単価が上振れした。
ロイヤルイベント事業
国民スポーツ大会・全国植樹祭など、皇室がご臨席になり全国を持ち回りで開く行事の設営と運営。
| 数量請け負った行事の件数(件・年、推定) | 価格1 件あたりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 12.0 | 2.52 | 30 | 3 |
| 10 年後 中立 | 12.0 | 3.38 | 41 | 3 |
取り方:件数の開示は無いので推定。ロイヤルイベント事業の売上 30.3 億円を、年に十数件の大きな行事で 1 件あたり約 2.5 億円とみた。行事の数は毎年ほぼ決まっており、数量は人口に左右されにくい。
リスクと懸念
談合事件と公共の仕事
東京五輪のテスト大会の談合で、会社は二審でも有罪となり上告している。判決が確定すれば、国や自治体の入札で不利に扱われる期間が延びうる。皇室の行事やスポーツ大会の多くは自治体や公的な団体が発注しており、売上の土台に響く。
景気と出来事による市場の停止
企業の販促や式典の予算は景気が悪くなると真っ先に削られる。2021/03 期はコロナで売上が前の年の 4 分の 1 に落ち、大きな赤字を出した。人の段取りで稼ぐ会社は、仕事が止まっても固定費が残る。
AI エージェントによる企画と事務の置き換え
企画書づくり、見積もり、事務の作業は AI エージェントで軽くなる。値段が下がる圧力にもなりうる。一方、会場の設営と当日の運営は人の手が要り、置き換えは企画と事務の一部にとどまると筆者は見る。
人手の不足
イベントの現場は、設営と運営に多くの人が要る。人件費が上がり、協力会社の人も集めにくくなっている。人を確保できなければ、仕事を取ってもこなせず、値段の転嫁が遅れれば利益率は削られる。
現金の使い道
純現金は時価総額を上回るが、会社は使い道をはっきり示していない。事業の立て直しや、値段に見合わない買収に使われれば、株主の手元には戻らない。還元の方針が弱いまま現金が積み上がれば、資本の効率はさらに下がる。
大きな大会の波
2026/03 期は世界陸上やデフリンピックなどの大きな大会が重なった。大きな大会の無い年は売上と利益が下がりやすい。2027/03 期の 1Q も赤字で始まり、年ごとの振れは大きい。
今後の分かれ目
- 談合事件の上告が退けられ、指名停止が広がったら
- 公共の仕事の減りが長引くとみて、やや悲観と悲観に重みを移す。
- 自社株買いや特別配当で余った現金を戻す方針が出たら
- 余った現金の戻り方を 1.0 に上げ、価値を見直す。
- 大きな大会の無い年も営業利益率 7% を保ったら
- 拠点の採算の管理が定着した証拠とみて、やや楽観の重みを上げる。
- 企業の販促の予算が景気で 2 割以上削られたら
- ベース事業の件数を下げ、やや悲観の重みを増やす。
- 現金を使った大きな買収を発表したら
- 買う値段と相手の稼ぐ力を見て、余った現金の価値を引き直す。
見ておくもの
- 事業ごとの売上(ベース・スポーツ・ロイヤルイベント)
- 談合事件の上告の行方と指名停止の範囲
- 定期預金を含む手元の現金と使い道
- 配当と自社株買いの額
- 大きな大会の無い年の営業利益率
倍率と資本コストの決め方
倍率は市場の値付けから置かず、事業の ROE と資本コスト 8.5% から決めた。中立は ROE が k にわずかに届かないので PER の上限は 1÷k、その 8.5 割にした。余った現金は facts の現金同等物だけでなく定期預金 20 億円も含めて約 60 億円の純現金から運転資金を引いた 35 億円とし、戻り方 0.75 を掛けて別に足した。悲観は稼ぐ力が消えるとして、現金の残りを床にした。今の値段が現金を下回ることは根拠にしていない。新リース会計の影響は事務所の賃借だけで小さい。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.5→13.81 倍・やや楽観 PER 9.71→13.02 倍・中立 PER 9.71→12.48 倍・やや悲観 PER 9.14→9.34 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。