結論
ユー・エス・エスは国内最大手の中古車オークション運営会社である。全国19拠点の直営会場と提携6会場で、中古車販売店・買取店など会員約4万8千社が参加する競り市を開催し、出品料・成約料・落札料という3段階の手数料で稼ぐ。2025年の全国総出品台数801万台のうちUSSは約43%のシェア(出品346万台)を握り、2位のTAA(トヨタ系、約12%)を大きく上回る。固定費型のビジネスで営業利益率は52.6%(2026年3月期)と極めて高く、純有利子負債はマイナス869億円(実質無借金・純現金)、自己資本比率76.7%という盤石な財務を持つ。
中期経営計画では 2026〜2028 年度に ROE 20% 以上・総還元率 100% 以上を掲げ、横浜会場(100 億円)に続き東京・HAA 神戸会場にも 200 億円超を投じてレーン数を増やし、シェア 50%(「Share50」)を目指す。稼ぎは出品台数×1 台当たり手数料で積み上げた。手数料は物価並みに上がり、シェアの伸びが人口減を補う。中立の 10 年後は純利益が約 650 億円、PER 約 18 倍で時価総額は約 1.2 兆円(今の約 1.4 倍)になる。
一方で、半導体不足後の「5 年落ち」車不足、EV の 8〜9 割が国内で転売されず直接海外へ出る構造、人口減による保有台数の頭打ちが、長期の数量の重荷になる。確率で重ねて今に割り引くと、本質価値は今の時価総額を 6%ほど上回る。筆者の結論は適正だ。事業の質は文句なしだが、今の値段はそれを十分に織り込んでいる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、全国19会場・会員企業約4万8千社というネットワークの規模そのものが、新規参入を事実上不可能にする堀であり、出品する販売店と落札する買取業者が互いを呼び込む二面市場の構造は10年先も崩れにくい。営業利益率52.6%・ROE20%・自己資本比率76.7%という資本効率と財務の健全性は、優良企業の条件を満たす。経営は創業家主導で意思決定が速く、自己資本をほぼ増やさずに総還元率100%超を還元し続けてきた実績は、株主の利益を強く意識した資本配分として評価できる。
ただし、事業はオークション業という単一業態に集中しており、国内の新車・中古車保有台数という市場の規模そのものに収益が規定される。EVの中古車が国内オークションに回らず直接輸出される構造や、人口減少による保有台数の頭打ちは、長期の数量の天井を低くする方向に働く。安全域については、10 年後の本質価値は今の値段を 6%ほど上回る程度で、適正の範囲に収まり、厚い余裕はない。事業が崩れにくいことと、払う値段に安全域があることは別の話である。
何で稼ぐ会社か
事業はオートオークション事業の単一セグメントで、全国19会場(直営)と提携6会場を通じて、中古車販売店・買取業者・リース会社など約4万8千社の会員企業が参加する競り市を定期的に開催する。会員企業はオークション会場に車両を出品し、他の会員が競り上げ方式で入札、落札された車両は買取業者から販売店へと転々流通していく。USSはこの場を提供する立場で、車両そのものを売買せず、出品した会員から出品料、成約した出品者から成約料、落札した会員から落札料という3段階の手数料を受け取る、仲介プラットフォーム型のビジネスである。
収益の柱は出品台数と1台当たりの手数料収入で、2026年3月期の売上高1,138億円・営業利益598億円(営業利益率52.6%)はいずれも過去最高である。会場は東京(野田)・横浜・名古屋・大阪・HAA神戸など主要都市に大型会場を構え、2026年1月には横浜会場を建て替え、1開催あたりの出品可能台数を従来比3割増の7,000台に拡大した。今後は東京会場を16→20レーン、HAA神戸を8→10レーンに増設する計画で、3年間で500億円規模の成長投資(会場建て替え・基幹オークションシステムの更新)を進めている。
子会社・関連会社による周辺事業(損害保険代理店業務、情報システム関連等)もあるが、連結業績への影響は限定的で、収益の実質はほぼ全てオークション事業に集約される。
優良さと弱いところ
堀の中心は、全国19会場・会員企業約4万8千社というネットワークそのものにある。出品する販売店が多いほど落札する買取業者も集まり、買取業者が多いほど出品も集まるという二面市場の規模の経済が働き、後発が同規模の会場網・会員基盤を一から築くのは事実上不可能に近い。シェアは約43%で2位のTAA(トヨタ系、約12%)を大きく上回り、「Share50」戦略のもとでシェアはさらに拡大する方向にある。
資本効率は極めて高く、ROE20.0%・営業利益率52.6%(2026年3月期)、自己資本比率76.7%・純有利子負債マイナス869億円という無借金・純現金の財務で、投資判断の自由度も大きい。2026〜2028年度の中期計画ではROE20%以上・総還元率100%以上を目標に掲げ、過去も自己資本をほぼ増やさずに利益を積み上げてきた実績(自己資本は2015年3月期の1,431億円から2026年3月期の2,071億円への増加にとどまる)が高ROEの背景にある。
一方で、事業はオークション業という単一業態に集中しており、新車販売・中古車保有台数という国内市場の規模そのものに収益が規定される構造的な上限がある。経営は創業家出身の安藤之弘氏が代表取締役会長兼CEOを務める体制で、取締役8名中社外取締役3名を置くが、意思決定が創業家に集中しやすい面はある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の中古車オークション市場は、2025年の全国総出品台数が前年比7.0%増の801万台と、半導体不足で停滞した新車生産の反動から回復が続く局面にある。USSはこの市場で約43%のシェア(出品346万台、前年比11.3%増で過去最高)を握り、2位のTAA(トヨタ系、約12%)、CAA(約6%)、アライ(約6%)などを大きく上回る最大手である。USSの収益構造は出品料・成約料・落札料の3段階手数料で、固定費型のビジネスゆえに出品台数の増加がそのまま営業利益率の改善に直結しやすい。
足もとは、横浜会場の建て替え完了(出品可能台数3割増)、東京・HAA神戸会場の増設、中期計画「Share50」(現状43%→目標50%)に向けた体制強化が中心の見方になる。半導体不足の影響で「5年落ち」の中古車供給が細る局面はおおむね解消に向かうが、完全な正常化には時間を要する。10年後は、国内の新車・中古車保有台数そのものが人口減少で頭打ちになる一方、EVの中古車は国内で高い残価が付かず8〜9割が海外(ロシア等を含む)へ直接輸出される構造が強まれば、国内オークションに回る車両そのものが細る構造リスクがある。楽観は「シェア50%超への拡大と会場の生産性向上で、縮む市場でも稼ぐ力が増す」、悲観は「EVシフトと人口減少で出品母数そのものが細り、オンラインの直接取引(ディーラー間マッチング等)による中抜きも進む」という構図である。競合は、トヨタ系のTAA、CAA、アライなどの地域オークション会場に加え、長期的にはオンライン完結型の直接取引サービスも新たな競争相手になり得る。
資本政策と M&A
資本政策は、2024〜2026年度の総還元率80%以上の方針から、2025〜2027年度は総還元率100%以上へ引き上げられ、連結配当支払率60%以上も掲げる。自己株式取得は株式市況・資本計画・キャッシュフローを踏まえて機動的に実施する方針である。無借金・純有利子負債マイナス869億円という財務基盤を背景に、3年間で500億円規模の成長投資(横浜・東京・HAA神戸の会場建て替え、基幹オークションシステムの更新)と、ほぼ全利益を還元する株主還元策を同時に進められる。
M&Aによる拡大の歴史は目立たず、既存会場の建て替え・増設による有機的なシェア拡大が中心である。2006年に導入した買収防衛策があり、その後の株主総会で継続・改訂された経緯があるが、直近の継続状況は未確認である。創業家の安藤家が経営の中心を占め、時価総額8,255億円という規模もあり、買われる側(TOB対象)になる可能性は大きくないが、無借金で資産効率が高い点は再編の思惑を招く余地も残す。
10 年の還元は、総還元率 100% 以上・配当性向 60% 以上の方針を下回る 9 割強。取得ずみの約 183 億円は株数に反映ずみなので、還元の合計から除いた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
全国19会場・会員企業約4万8千社というネットワークは、出品する販売店が多いほど落札する買取業者も集まるという二面市場の規模の経済を生み、シェア約43%は2位のTAA(約12%)を大きく上回る。中期経営計画「Share50」のもとで、横浜会場の建て替え(出品可能台数3割増の7,000台)に続き、東京会場を16→20レーン、HAA神戸を8→10レーンに増設する3年間500億円規模の投資が進めば、シェアは50%を超えて拡大し、固定費型のビジネスゆえに営業利益率もさらに改善する余地がある。
半導体不足で停滞していた新車生産は正常化に向かい、「5年落ち」中古車の供給不足も解消に向かう。EVについても、電池性能データの蓄積やバッテリー保証の拡充が進めば、国内での残価形成が進み、現在8〜9割が海外に流出している中古EVの一部が国内オークションに回帰する可能性もある。無借金・純有利子負債マイナス869億円という財務基盤のもとで、総還元率100%超の株主還元と成長投資を同時に進められる経営の自由度も強みで、これらが重なれば、シェア55%・ROE40%超という理想的な10年が実現し、今の時価総額は本質価値を大きく下回っていたことになる。
慎重な見方
事業はオークション業という単一業態に集中しており、国内の新車・中古車保有台数という市場の規模そのものに収益が規定される構造的な上限がある。国内人口減少が進めば、保有台数・出品台数はいずれ頭打ちになる。EVの中古車は国内で高い残価が付かず8〜9割が海外(ロシア等を含む)へ直接輸出される構造が続いており、EV化が進むほど国内オークションに回る車両母数そのものが細っていく。
「Share50」戦略は東京・HAA神戸の会場建て替えという大型投資を要し、計画通りに進まなければシェア拡大のペースは鈍る。加えて、長期的にはディーラー間の直接オンライン取引など、オークション会場を介さない中抜きの流通チャネルが広がるリスクもある。創業家主導の経営は意思決定が速い一方、次の大型投資判断(会場建て替え・システム更新)が市場の縮小ペースを見誤れば、固定費の重さが収益性を圧迫する方向に転じ得る。半導体不足後の反動増が一巡すれば出品台数の伸びはすぐに鈍化し、人口減少とEVシフトが重なる10年では、シェア拡大が市場縮小を相殺しきれず、今の時価総額を本質価値が下回る展開も十分にありうる。
どちらに重みを置いたか
ネットワークの規模と二面市場の堀では強気の見方が優勢で、無借金・総還元率 100% 超という財務の健全性も揺るがない。一方で、国内の保有台数という市場規模そのものに収益が規定される構造と、EV の海外流出・人口減少という長期の数量の逆風は軽視できない。倍率は、ROE が 20% を超え堀が強いことを踏まえ、正当化 PER の 7.5〜8.5 割(中立 PER 約 18 倍)に置き、確率は中立に最大の重みを置きつつ、悲観(人口減少・EV シフトの構造悲観)をやや厚めにした。結果は、10 年の本質価値が今の値段を 6%ほど上回る適正になった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,884 円1.31 兆円(+ 配当配当と自社株買いの合計 985 円4,473 億円)。 今の値に割り戻すと 2,168 円9,848 億円、今との差 +20.7%、 期待の年率 +8.0%(資本コスト 7.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 4,829 円2.19 兆円 | 1,325 円6,017 億円 | +242.4% | +13.1% | 492 円2,236 億円 |
| やや楽観 | 22% | 3,978 円1.81 兆円 | 1,198 円5,443 億円 | +188.1% | +11.2% | 1,139 円5,173 億円 |
| 中立 | 33% | 3,422 円1.55 兆円 | 1,068 円4,852 億円 | +149.9% | +9.6% | 1,482 円6,730 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,829 円8,309 億円 | 812 円3,687 億円 | +47.0% | +3.9% | 634 円2,879 億円 |
| 悲観 | 13% | 419 円1,904 億円 | 521 円2,367 億円 | −47.7% | −6.3% | 122 円555 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,884 円1.31 兆円 | 985 円4,473 億円 | +115.3% | +8.0% | 3,869 円1.76 兆円 |
今の株価時価総額 1,797 円8,162 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 8% Share50を超えてシェア55%規模まで育ち、EV残価も改善する10年 利益 868 億円 · PER 25.3 倍 · 株価時価総額 4,829 円2.19 兆円
Share50戦略が順調に進み、横浜・東京・HAA神戸の会場建て替えが完了し、出品可能台数の拡大とシェア拡大が重なって、USSのシェアは55%規模まで伸びる。EVの電池性能データの蓄積や保証制度の整備が進み、現在8〜9割が海外に流出している中古EVの一部が国内オークションに回帰し、市場全体の出品母数の縮小も緩やかなものにとどまる。1台当たりの手数料収入は物価上昇に加え、競り上げシステムの高度化による実質的な上乗せも実現し4.63万円まで伸びる。営業利益率は会場の稼働効率向上で56%まで改善し、無借金・純現金の財務のもとで総還元率100%の株主還元を10年間続けながら成長投資も同時にやり切る、USSにとって最も理想的な10年になる。
- 中古車オークション事業:数量 463(USSの出品台数(万台))× 価格 46,300(1台当たりの手数料収入(出品料・成約料・落札料の合計、円))→ 売上 2,144 億円・営業利益 1,201 億円。出品463万台(シェア55%規模)×1台当たり手数料4.63万円
倍率:事業の純利益 868 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 41.9% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.67(moat=strong)で RONIC 30.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 25.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 25.3 倍。全体の PER 25.27 倍、時価総額 21,934 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:シェアの非連続な拡大・EVの国内残価改善・会場投資の完全な回収という複数の好条件を同時に実現する必要があり、実現すれば非常に強いが連続成功の確度は高くない。
やや楽観 22% Share50をおおむね達成し、人口減少を補う10年 利益 739 億円 · PER 24.5 倍 · 株価時価総額 3,978 円1.81 兆円
Share50の目標をおおむね達成し、USSのシェアは52%規模まで伸びる。市場全体の出品台数は人口減少とEVの海外流出が相殺し合い横ばい圏にとどまるが、USSの出品台数はシェア拡大で346万台から417万台まで増える。横浜・東京・HAA神戸の会場建て替えは完了し、基幹オークションシステムの更新も進むが、「5年落ち」車供給や会員企業の新規開拓はやや緩やかなペースにとどまる。1台当たり手数料収入は物価上昇にやや上乗せして4.5万円まで伸び、営業利益率も会場の稼働改善で54.5%まで上向く。総還元率はおおむね計画線(100%前後)で推移し、人口減少の逆風をシェア拡大で着実に補う、堅実な10年になる。
- 中古車オークション事業:数量 417(USSの出品台数(万台))× 価格 45,000(1台当たりの手数料収入(出品料・成約料・落札料の合計、円))→ 売上 1,877 億円・営業利益 1,023 億円。出品417万台(シェア52%規模)×1台当たり手数料4.5万円
倍率:事業の純利益 739 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 32.9% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.67(moat=strong)で RONIC 24.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 24.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 24.5 倍。全体の PER 24.45 倍、時価総額 18,068 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:シェア拡大が中期計画の目標値に近いペースで進む、中心シナリオよりやや強めの想定。
中立 33% 中立:Share50を達成し、人口減少と相殺し合う10年 利益 653 億円 · PER 23.8 倍 · 株価時価総額 3,422 円1.55 兆円
Share50の目標を達成するが、そこからの伸びは緩やかになる。国内の保有台数は人口減少でわずかに縮小し、市場全体の出品台数は801万台から777万台まで減るが、USSはシェア50%で出品台数389万台を確保する(2026年時点の346万台から着実に増加)。横浜・東京・HAA神戸の会場建て替えは完了し、基幹オークションシステムの更新も一巡するが、半導体不足後の需要の反動増は一巡し、以降は成熟した伸びにとどまる。1台当たり手数料収入は物価上昇並みの4.4万円にとどまり、営業利益率は53%で安定する。総還元率は95%程度で推移し、人口減少とシェア拡大が相殺し合う、平凡だが崩れない10年になる。
- 中古車オークション事業:数量 389(USSの出品台数(万台))× 価格 44,000(1台当たりの手数料収入(出品料・成約料・落札料の合計、円))→ 売上 1,712 億円・営業利益 907 億円。出品389万台(シェア50%達成)×1台当たり手数料4.4万円
倍率:事業の純利益 653 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 28.0% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.67(moat=strong)で RONIC 21.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 23.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 23.8 倍。全体の PER 23.8 倍、時価総額 15,541 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:シェア50%の目標を達成しつつ、国内人口減少の影響と相殺し合う、最も重みを置く筋書き。
やや悲観 24% 人口減少とEV輸出シフトで出品台数が伸び悩む10年 利益 467 億円 · PER 17.7 倍 · 株価時価総額 1,829 円8,309 億円
人口減少の影響が強まり、市場全体の出品台数は801万台から721万台まで縮小する。EVの国内残価も改善せず、中古EVの多くが海外輸出に回る構造が続く。USSのシェアはトヨタ系のTAAなど競合との競争激化で45%までの伸びにとどまり、出品台数は346万台から324万台までの伸びに終わる(成長はほぼ止まる)。横浜・東京・HAA神戸の会場投資は完了するが、投資規模に見合うだけの出品台数の伸びが得られず、稼働率は会社計画を下回る。1台当たり手数料収入は競争圧力で実質的な伸びが鈍り4.11万円にとどまり、営業利益率も49%まで圧縮される、成長エンジンが弱まる10年になる。
- 中古車オークション事業:数量 324(USSの出品台数(万台))× 価格 41,100(1台当たりの手数料収入(出品料・成約料・落札料の合計、円))→ 売上 1,332 億円・営業利益 653 億円。出品324万台(シェア45%)までの伸びにとどまる
倍率:ROE 18.7%。RONIC = k 7% + 残る割合 2/3 ×(18.7% − 7%)= 14.8%、g 3.5% から正当化 PER = 21.8 倍。競合の追い上げでシェアの伸びが止まり、利益率も 49% まで下がる筋書きなので、上限の約 8 割(17.7 倍)に置いた。
確率:国内人口減少のペースが想定より速く、EVの国内残価も改善しないまま、競合との競争も激化する構造変化を念頭にある。
悲観 13% EVシフトと直接取引の拡大で、構造的にシェアを失う10年 利益 238 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 419 円1,904 億円
人口減少が構造的な重荷となり、市場全体の出品台数は801万台から601万台まで縮小する。EVシフトが加速し、中古EVの8〜9割以上が国内オークションを介さず直接海外へ輸出される構造が強まる。さらにディーラー間の直接オンライン取引が広がり、オークション会場を介さない中抜きが進んだ結果、USSのシェアも競合との競争激化で38%まで低下し、出品台数は228万台まで落ち込む。1台当たり手数料収入も競争圧力で3.78万円にとどまり、営業利益率は40%まで圧縮される。総還元率を85%程度に下げてでも株主還元を続けるが、USSにとって構造的な後退となる厳しい10年になる。
- 中古車オークション事業:数量 228(USSの出品台数(万台))× 価格 37,800(1台当たりの手数料収入(出品料・成約料・落札料の合計、円))→ 売上 862 億円・営業利益 345 億円。出品228万台(シェア38%)まで落ち込む。中抜きと競争激化で利幅も圧縮
倍率:構造的に負けた姿(シェア 38%、利益率 40%、出品台数 228 万台)。ROE は 9% で k 7% をやや上回るため、正当化 PER の上限は 17 倍だが、直接輸出と中抜きで数量の縮小が続く筋書きなので、上限の約 5 割(8 倍)に置いた。純現金は総還元率を下げても払い出す前提で別には足さない。
確率:EVシフトの加速・人口減少・オンライン直接取引の拡大という複数の構造悪材料が同時に進む必要があり、不確実性は高いが起これば構造的な打撃になる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
中古車オークション事業
全国19会場(直営)と提携6会場で、中古車販売店・買取業者など会員企業向けの競り市を開催し、出品料・成約料・落札料の3段階手数料で稼ぐ単一セグメント。
| 数量USSの出品台数(万台) | 価格1台当たりの手数料収入(出品料・成約料・落札料の合計、円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 346 | 32,890 | 1,138 | 598 |
| 10 年後 中立 | 389 | 44,000 | 1,712 | 907 |
取り方:2025年の全国総出品台数801万台×USSシェア約43.2%(ABA-J業界統計)から出品346万台を置き、2026年3月期売上高1,138億円を出品台数で割って1台当たり手数料収入を逆算した。
リスクと懸念
半導体不足の反動一巡・「5年落ち」車不足の長期化
2021年の半導体不足で新車供給が細った影響から、現在も車齢5年前後の中古車供給が構造的に不足している。新車生産の正常化が進めば解消に向かうが、ペースが想定より遅れれば出品台数の伸びが鈍り、Share50戦略の前提であるシェア拡大の効果を打ち消す方向に働く。
EVの中古車が国内オークションに回らない構造
中古EVは国内で高い残価が付きにくく、現状8〜9割が海外(ロシア等を含む)へ直接輸出されている。国内の新車販売でEV化が進むほど、USSのオークションに回る車両母数そのものが細っていく可能性がある。電池の残存性能評価や保証制度が整わなければ、この構造は長期化しうる。
国内人口減少による保有台数・出品台数の頭打ち
日本の人口減少は年0.5%程度で進み、長期的には自動車保有台数・新規登録台数の縮小につながる。USSの出品台数はシェア拡大で一定程度相殺できるが、市場全体の母数が縮めば、シェア50%を達成した後の追加的な成長余地は限られてくる。
競合(TAA等)との競争・地域オークション会場の統合
トヨタ系のTAA(約12%)、CAA、アライなど複数の競合が存在し、Share50戦略の達成には競合からのシェア奪取が前提になる。競合が独自の会場投資やデジタル化で対抗すれば、USSのシェア拡大ペースが計画より鈍る可能性がある。
大型会場投資の回収ペース
横浜会場(100億円)に続き、東京・HAA神戸の建て替えに200億円超、3年で500億円規模の成長投資を計画している。出品台数・手数料収入の伸びが投資計画に届かなければ、固定費負担が増す中で営業利益率が計画より下振れるリスクがある。
創業家主導のガバナンス
代表取締役会長兼CEOの安藤之弘氏を中心とする創業家主導の経営体制で、取締役8名中社外取締役は3名である。意思決定の速さは強みだが、大型投資判断が創業家の意向に集中しやすく、外部からの監督が効きにくい局面が生じうる。
世界的な景気後退(リーマン級)
中古車流通は企業・個人の裁量的な消費・投資判断に左右される面があり、2009年前後のリーマンショック時にはUSSの月末PBRが1.06倍まで下落した局面があった。世界的な同時不況が起きれば、出品・成約台数が急減し、手数料収入が大きく落ち込む可能性がある。
今後の分かれ目
- USSのシェアが50%を超えて拡大する
- Share50戦略の達成が確認され、10年のやや楽観・楽観の筋書きに近づく。
- 中古EVの国内残価が改善し、海外輸出比率が下がる
- 国内オークションに回る車両母数が増え、長期の数量の逆風が和らぎ10年の楽観側の確度が上がる。
- 半導体不足後の『5年落ち』車供給が正常化する
- 出品台数の伸びが安定し、10年の中立〜やや楽観の筋書きに近づく。
- 人口減少が想定より速いペースで進む
- 国内の保有台数・出品台数が頭打ちになり、10年の悲観側の筋書きに近づく。
- 東京・HAA神戸会場の建て替えが計画より遅れる
- 成長投資の効果が出ず、シェア拡大のペースが鈍り、営業利益率が計画より下振れる方向に働く。
- 世界的な景気後退(リーマン級)が起きる
- 出品・成約台数が急減し、10年の悲観シナリオが現実味を帯びる。
- ディーラー間の直接オンライン取引が広がる
- オークション会場を介さない中抜きが進み、10年の構造悲観の確度が上がる。
見ておくもの
- USSの出品台数・落札率・シェアの四半期ごとの推移(ABA-J業界統計との比較)
- 横浜会場の稼働実績と、東京・HAA神戸会場の建て替え進捗(レーン数・出品可能台数)
- 中古EVの国内残価・海外輸出比率の変化
- 総還元率(配当+自社株買い)の実績とROEの推移
- 新車生産の正常化ペースと『5年落ち』中古車供給の回復状況
倍率と資本コストの決め方
自己資本は今の値+期間の純利益−還元で流し(過去もほぼ同様に、自己資本をほぼ増やさず ROE を上げてきた実績に整合)、各筋書きの ROE のうち資本コスト 7.0%(基本 7.5% に、値決め力の −0.5%)を超える分は堀の強さ(二面市場・会場網)から残る割合 2/3 で先に薄れるとして正当化 PER を出し、上限すれすれにはせず楽観 8.5 割・やや楽観 8 割・中立 7.5 割に置いた。今の PER・PBR は結果の比較にのみ使い、前提には使っていない。悲観は稼ぐ力(純利益)に正当化 PER の約 5 割を掛けた。結論を今の株価に寄せてはいない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 21.48→25.27 倍・やや楽観 PER 19.56→24.45 倍・中立 PER 17.85→23.8 倍)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。