結論
Orchestra Holdingsは、デジタル広告の運用と制作を稼ぎ頭に、システム開発・試験、ゲーム開発、占いアプリを束ねる企業である。結論は「割高」だ。事業は10年後も必要だが、その多くは人の作業時間や広告運用の手数料を売るため、自律型AIが仕事そのものを減らす構造にある。株価から逆算せずに収入源を細かく見積もると、現在の時価総額約213億円に対して、本質価値は80〜90億円程度と大きく下回る。
会社には強みがある。デジタルアイデンティティはMetaの広告代理店表彰を受け、ソフトウエア試験のヴェスやSalesforce開発のSharing Innovationsにも専門技術が蓄積している。しかし、専門人材の厚みと、価格を上げても顧客が離れない経済的な堀とは違う。2025年には157.7億円の売上と14.4億円の営業利益を計上したが、その後に買った企業も含め、長期の増分利益が買収原価を超えるかは未検証である。
2026年にはSALTOを取得し、上場子会社Sharing Innovationsを株式交換で完全子会社にする方針を公表した。2027年には年3億円以上のコスト改善を計画する一方、のれんは自己資本に匹敵し、買収失敗の損失吸収力は厚くない。累進配当と優待の拡充は株主にとって実際の前進だが、広告運用とSI受託の将来利益を確実にするものではない。長く持つ株主に必要な安全域が、今の値段には不足している。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主なら、まず売上の源が十年後も顧客の予算に残るかを問う。Orchestraの売るものは広告の成果、システムの品質、使い続けたくなるコンテンツである。こうした価値は消えないが、現在の契約は人の稼働と広告代理の工程を収益化している。AIが工程を自動化したとき、顧客が節約した分をOrchestraが料金に転嫁できるとは限らない。
注目すべきは、優れた社員と強い企業価値を混同しないことだ。既存顧客の解約率が低いことを数量で示し、代替が容易でない技術や規制対応を持ち、毎年値上げしても契約が続くなら高い評価に値する。現時点ではその二つ以上を同一事業で確認できない。買収した企業の技術力は認めても、取得原価を超える増分投下資本利益率が証明されない限り、のれんの額を経済的な資産価値とはみなさない。
株主が実際に取り戻す現金も大切である。2026年の増配と優待新設は明確な改善で、企業に滞留する資金の一部を所有者へ移している。反面、SALTOを含む買収資金は将来の利益を先に買う支出であり、純利益をすべて自由な現金とは見なせない。
情報が不足した局面では予想を楽観に合わせず、値段に十分な安全域を求める。10年後の残存価値が顧客の作業時間に依存する以上、現在の時価総額はその条件を満たしていない。
何で稼ぐ会社か
収益の柱は三つである。DX事業は企業にシステム開発、クラウド導入、Salesforce構築、ソフトウエア試験を提供する。Sharing Innovations、ヴェス、SALTOなどの技術者や協力会社が作業を請け負い、稼働工数と案件の契約価格が売上を決める。2025年の外部売上は75.2億円で、技術者の稼働量と単価が最も大きな変数だ。
デジタルマーケティング事業は、デジタルアイデンティティを中心に広告主の集客を助ける。Google、Metaなどの媒体で広告を運用する仕事と、クリエイティブ制作やSEOを請け負う仕事に分かれる。有報で確認できる2025年の売上は運用型広告等21.0億円、制作・SEO等35.9億円であり、両者を一括して「広告市場の成長」とみなすのは危険だ。媒体の予算が増えても代理店の手数料率が低下すれば前者は細り、生成AIが制作を自動化すれば後者の案件単位も減る。
IP・エンタメ事業ではランド・ホーがゲーム制作・運営を受託する一方、チャット占いのウラーラなど自社アプリの利用者からも収入を得る。2025年の受託開発売上は11.6億円で、自社IP等の売上は5.8億円だった。前者は工数商売、後者は利用者を集めて継続課金を生む仕組みで、同じ利益の寿命ではない。
残る8.2億円には人材紹介、派遣、人事SaaSなどが入る。会社は案件数、運用広告の出稿額、契約席数を公表していないため、数量と単価には保守的な代理値を使う。
優良さと弱いところ
同社の長所は、デジタル広告を企画から分析・運用まで請け負い、別の子会社で顧客の業務システムも作れる点にある。デジタルアイデンティティがMetaから表彰されたことは実行力の証拠だし、ヴェスの試験技術やSharing Innovationsのクラウド実装経験も顧客の問題を解く力になる。専門分野をまたぐ受注の可能性があり、管理部門を一体化できれば固定費も下げられる。
だが、再現困難な堀はまだ確認しにくい。売上の大部分が受託工数と広告運用に依存しており、解約率5%未満の長期実績、規制で義務づけられた記録基盤、法改正のたびの値上げ、年単位の移行負担という証拠はそろっていない。2025年に大口広告案件を失注したという会社説明もあり、優良な顧客をつなぎ留める力を過大評価できない。AIによる提案効率の改善は供給する側だけでなく発注する側にも働くため、生産性向上が必ず利益率の改善を意味するわけではない。
財務は表面ほど守りが厚くない。2025年末の自己資本は65億円、純有利子負債は4億円強で、過大な借入負担はない。しかし同時点ののれんは約54億円に上り、2026年のSALTO買収後はさらに増えている。
のれんの大半を失う場合、会計上の自己資本をそのまま回収可能な資産とは扱えない。過去のROEの中央値は18.9%だが、買収で膨らんだ資本から十分な追加利益を生むかが次の試験である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
市場全体には成長余地がある。会社資料は国内ソフトウエア市場を16.7兆円、コンテンツ市場を14.2兆円と示す。2025年の国内ネット広告費は電通の統計で約4.0兆円に達した。
DX売上75.2億円はソフトウエア市場の約0.05%、IP売上17.3億円はコンテンツ市場の約0.01%にすぎないが、対象サービスの範囲が違うため厳密な市場シェアではない。運用型広告は2025年価格の出稿予算を140億円と仮定すれば、同年のインターネット媒体費約3.3兆円に対し約0.4%の取扱規模に相当する。ここには非開示の手数料率15%という推計が含まれる。
競争相手は巨大である。DXではNTTデータ、SCSK、TISなどが大口顧客の基幹案件を握り、クラウド側にはSalesforceや国内SI各社がいる。広告では電通デジタル、サイバーエージェント、セプテーニ、オプト系事業者が大きく、しかもGoogleやMeta自身が買付け・制作・最適化を自動化する。市場の広告費が年率で増えても、人が媒体の設定を代行して受け取る手数料の市場はそれほど増えない。
十年後の業界変化を決めるのは、必要な広告数やシステム需要ではなく、それを処理する人数と仲介の要否だ。生成AIはコード、試験仕様書、広告素材、SEO記事を作り、AIエージェントはクラウド画面を経由せず設定まで完了しうる。反対に、企業固有の業務判断、セキュリティ保証、成果の責任には人が残る。Orchestraはこの残る部分へ事業を移せるが、投資家は売上契約と料金上昇という実証なしに全面的な勝利を認めるべきではない。
資本政策と M&A
経営は創業以来およそ30件のM&Aを実行してきた。2025年にはヴェスの成長やランド・ホーの加入が売上を押し上げ、2026年5月にはSALTOを約17.2億円で買収した。対象会社の2025年営業利益は約1.2億円であり、買収原価を上回る増分利益を継続して得るには案件拡大と統合費削減が必要だ。
2026年10月にはSALTO、ヴェス、Sharing Innovationsなどの再編を発表し、2027年に年間3億円以上のコスト改善を見込む。これは実績ではなく達成待ちの約束である。
2026年8月に発表したSharing Innovationsの完全子会社化では、親会社Orchestra自体は上場を続ける予定だ。2026年11月に自己株式51万791株を交付する予定で、保有済みの9,341,400株を基準とする既存株主の取り分は約94.8%に下がる。一方、上場子会社の維持費は年間0.4〜0.5億円程度を削減できる見込みで、希薄化との交換条件を監視したい。
株主還元は拡充されている。2025年に23万700株を買い戻し、2026年にも約9万株を買い戻した。2026年12月期の増配予想は基準株数なら年間約4.7億円に当たり、累進配当方針も明記した。
優待は対象拡大後、年約0.6億円以内の費用を想定し、十年の還元額に含めた。ただし中期経営見通しは2030年の売上・営業利益・ROEについて数字の約束なし。配当性向・DOE・総還元性向を固定する数値目標もなく、M&Aと還元の優先順位は今後の判断に左右される。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
デジタル化で日本企業の開発・運用需要そのものは長く残る。Orchestraは創業以来の買収を通じて、媒体運用だけでなくクラウド導入、ソフトウエア試験、ゲーム開発を一つの企業集団に集めた。2025年のMetaによる代理店表彰は、世界的な媒体企業から一定の実務能力を認められた証拠だ。
営業案件を相互紹介できれば、大手SIには大きすぎる中規模案件をまとめて獲得できる。企業がAIに投じる費用の一部は、現場の課題を理解する導入支援会社へ移る余地がある。
2026年の組織再編は以前より具体的だ。Sharing InnovationsとSALTO、ヴェスの開発・試験工程を合わせれば、重複部門を減らすだけでなく、難しい案件に適した人材を選びやすくなる。年間3億円以上のコスト改善が続けば、売上が伸びなくても利益率を改善できる。
Forté.AIやMCPを使った広告運用分析が納期短縮だけでなく顧客の成果指標に結びつけば、従来の作業報酬を超える料金体系を確立できる。自社占いアプリとゲーム関連IPの売上も伸びれば、人月に依存する売上の比率を少しずつ減らせる。
累進配当への転換も変化だ。大規模な成長投資の会社に見えながら、自己株式取得と優待拡充で少数株主への現金移転を増やしている。上場子会社の集約は少数株主持分の利益流出と上場維持費をなくす。買収統合の増益が継続すれば、会社には名目売上の伸びを超えるオーナー利益の拡大余地が残っている。
慎重な見方
広告代理店が働く工程と、顧客が欲しい広告効果は別物だ。GoogleとMetaの広告自動化が進めば、広告予算が伸びても人手の運用代行が生む手数料は縮む。制作やSEOは生成AIが代わり、顧客は少人数で多数の素材を試せる。
DXで売るシステム試験や設定作業も同じ道をたどる。実際に2025年にはDM事業が大型案件を一時失注しており、契約の継続性は絶対ではない。市場の成長をOrchestraの収益成長へ直接結びつけるのは危険だ。
個々の技術力と長期の価格決定力は異なる。共有基盤で圧倒的な占有率を持つわけでも、独自データの長期蓄積で顧客が移れない仕組みを持つわけでもない。会社はForté.AIを開発したが、これを独立した成長商品として外販した受注金額は確認できない。仮に自社の作業を半分に減らせても、顧客が競争入札で料金を下げれば増えた生産性は株主の利益に残らない。
買収を多用する経営は、M&A市場の売り手に資本を移し続けるおそれがある。のれんは2025年末で自己資本の八割ほどを占め、SALTO取得後はさらに膨らんだ。景気後退が起きると、営業利益が減るだけでなく減損も株主資本を傷める。
Sharing Innovationsの株式交換では、親会社の発行済株式数が増えなくても自己株式の交付で既存株主の取り分が減る。累進配当が魅力的でも、長期で利益源が細る企業には高い時価総額を払えない。
どちらに重みを置いたか
上側の可能性は残るが、経済的な堀に関する主張は慎重な見方が勝る。組織再編による年3億円の改善は検証可能な会社計画だが、受託工数と広告運用手数料が10年後も従来どおり必要かという問いには答えきれていない。確率は楽観側30%、中立33%、悲観側37%と会社固有の買収負担も考慮して下側をやや厚くした。
ただしAIの減収自体は中立の数量と価格に入れ、確率や資本コストで同じ理由を二重には引かない。株式交換で既存株主の取り分が薄まることも反映すると、事業継続を前提にしても今の時価総額への安全域は乏しい。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 1,292 円121 億円(+ 還元の換算額還元の合計 476 円44 億円)。 今の値に割り戻すと 922 円86 億円、今との差 −56.1%、 期待の年率 −2.0%(資本コスト 8.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 3,962 円370 億円 | 964 円90 億円 | +134.2% | +10.1% | 493 円46 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,241 円209 億円 | 690 円64 億円 | +39.4% | +3.9% | 586 円55 億円 |
| 中立 | 33% | 1,112 円104 億円 | 508 円47 億円 | −23.0% | −3.0% | 534 円50 億円 |
| やや悲観 | 25% | 267 円25 億円 | 254 円24 億円 | −75.2% | −15.9% | 130 円12 億円 |
| 悲観 | 12% | 112 円10 億円 | 91 円9 億円 | −90.3% | −24.0% | 24 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,292 円121 億円 | 476 円44 億円 | −15.9% | −2.0% | 1,768 円165 億円 |
今の株価時価総額 2,103 円196 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% 収益の成果化が進み、統合効果を取り切る 利益 29 億円 · PER 12.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3,962 円370 億円
2027年の子会社統合が計画どおり機能し、共有営業と技術者の再配置で大型案件の受託が続く。AIエージェントへの代替自体は止まらないが、Forté.AIの分析技術と成果連動型の料金が定着し、広告で獲得した顧客をDX開発へ送る相互紹介が太くなる。国内システム開発を握るNTTデータやSCSKとの競争は続くものの、専門領域で案件を選べるようになる。広告制作では生成された成果物の品質保証と提案責任に報酬が残り、ランド・ホーの自社コンテンツも利用者の定着で稼ぎを増す。
2026年までのSALTO買収とSharing Innovationsの完全子会社化が余計な管理費を減らし、買収価格に見合う利益を生む。技術者人年の需要は10年で今をなお下回るが、優良な案件への集中で収益性が上がる。新しい株式の発行はないものの株式交換により既存株主の取り分が薄まり、それを補える利益改善が要る。
- DX受託・クラウド・ソフトウエア試験:数量 618(稼働する技術者換算の年間受託件数(人年))× 価格 0.16(技術者換算1人年当たり売上(億円))→ 売上 96 億円・営業利益 20 億円。2025年比の数量0.95倍、名目単価1.34倍。AIエージェント代替と調達内製化を反映。
- 運用型広告の買付け・運用:数量 140(2025年価格で実質化した広告運用予算(億円))× 価格 0.15(運用予算1億円当たり受取手数料(億円))→ 売上 21 億円・営業利益 9 億円。2025年比の数量1.00倍、名目単価1.00倍。AIエージェント代替と調達内製化を反映。
- 広告制作・SEO・戦略支援:数量 600(制作・SEOプロジェクト換算件数(件/年))× 価格 0.08(1件当たり平均受託単価(億円))→ 売上 48 億円・営業利益 23 億円。2025年比の数量1.00倍、名目単価1.34倍。AIエージェント代替と調達内製化を反映。
- ゲーム開発・運営の受託:数量 30.0(ゲーム開発受託の年度換算案件(件))× 価格 0.52(1案件年当たり受託売上(億円))→ 売上 16 億円・営業利益 3 億円。2025年比の数量1.00倍、名目単価1.34倍。AIエージェント代替と調達内製化を反映。
- 自社IP・占いアプリ等:数量 38,750(有料顧客年換算の利用者数(人年、推定))× 価格 0.00(1有料顧客年当たり実効収入(億円))→ 売上 12 億円・営業利益 3 億円。2025年比の数量1.55倍、名目単価1.34倍。自社利用者の定着・流出を別建て。
- 人材紹介・派遣・人事SaaS等:数量 1,000(顧客企業契約年換算(件、推定))× 価格 0.01(1契約年当たり混合収入(億円))→ 売上 9 億円・営業利益 1 億円。2025年比の数量1.00倍、名目単価1.15倍。AIエージェント代替と調達内製化を反映。
倍率:AIエージェント代替により10年より先の名目成長gは0%。資本コストk8%で、利益は続くが新しい投資の超過利回りは薄まる。g=0の正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=1÷8%=12.5倍が上限であり、強い堀を別途認定しない。
確率:Forté.AIの対外販売額が未開示であり、AI時代に成果報酬を握れる証拠はまだ乏しい。強い案件選別と買収統合が同時に成功する確率として10%。
やや楽観 20% 専門領域に絞って再成長する 利益 16 億円 · PER 12.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,241 円209 億円
Sharing Innovationsを完全子会社にしてSALTO、ヴェス、日本技研の事業を統合することで、重複する管理機能が減り、2027年に公表されたコスト削減の大部分が実現する。大企業向けSalesforceの導入や品質保証を請け負う力は残り、顧客が新規開発を内製化しても既存案件の複雑な移行を支援できる。もっとも、テストの自動生成、広告文の作成、SEO改修は顧客企業のAIが引き受け、受託作業量は着実に減る。
デジタルアイデンティティはMetaとの取引実績を生かして手数料下落を部分的に防ぐが、媒体出稿の伸びがそのまま同社の取り分にはならない。ゲーム開発は大型案件を維持し、自社占いアプリの利用者も増える。再買収を大きく増やさず、2026年に強化した配当と優待がオーナーの回収につながる。
- DX受託・クラウド・ソフトウエア試験:数量 533(稼働する技術者換算の年間受託件数(人年))× 価格 0.16(技術者換算1人年当たり売上(億円))→ 売上 83 億円・営業利益 12 億円。2025年比の数量0.82倍、名目単価1.34倍。AIエージェント代替と調達内製化を反映。
- 運用型広告の買付け・運用:数量 119(2025年価格で実質化した広告運用予算(億円))× 価格 0.14(運用予算1億円当たり受取手数料(億円))→ 売上 17 億円・営業利益 6 億円。2025年比の数量0.85倍、名目単価0.96倍。AIエージェント代替と調達内製化を反映。
- 広告制作・SEO・戦略支援:数量 510(制作・SEOプロジェクト換算件数(件/年))× 価格 0.08(1件当たり平均受託単価(億円))→ 売上 40 億円・営業利益 16 億円。2025年比の数量0.85倍、名目単価1.32倍。AIエージェント代替と調達内製化を反映。
- ゲーム開発・運営の受託:数量 25.5(ゲーム開発受託の年度換算案件(件))× 価格 0.50(1案件年当たり受託売上(億円))→ 売上 13 億円・営業利益 2 億円。2025年比の数量0.85倍、名目単価1.30倍。AIエージェント代替と調達内製化を反映。
- 自社IP・占いアプリ等:数量 31,250(有料顧客年換算の利用者数(人年、推定))× 価格 0.00(1有料顧客年当たり実効収入(億円))→ 売上 10 億円・営業利益 2 億円。2025年比の数量1.25倍、名目単価1.34倍。自社利用者の定着・流出を別建て。
- 人材紹介・派遣・人事SaaS等:数量 900(顧客企業契約年換算(件、推定))× 価格 0.01(1契約年当たり混合収入(億円))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。2025年比の数量0.90倍、名目単価1.13倍。AIエージェント代替と調達内製化を反映。
倍率:g_long=名目0%、k8%。専門領域の高い当期ROEがあっても10年後からの新規投資の超過利益は長続きしない。g=0ならPER式はROEやRONICにかかわらず1÷k=12.5倍であり、市場のPERに合わせて動かさない。
確率:2026年の組織再編と増配は実行計画が明瞭だが、毎年の管理費削減が競争で失われない必要があるため20%。
中立 33% AIによる工数減と手数料減が優位 利益 7 億円 · PER 12.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,112 円104 億円
十年後も企業のソフトウエア統合と広告は必要だが、発注する仕事の単位が変わる。Salesforceの設定やテストを社員や自律型AIが直接担い、受託技術者の請求可能人年は減少する。国産SI大手との単価競争を避けるべく、Orchestraは品質保証と導入後の判断支援に寄せるが、その強みを示す解約率や長年の値上げ実績は確認できない。広告運用ではGoogleやMetaが買付けと最適化を自動化し、広告予算が横ばいでなくても代理店の手数料率は下がる。
制作・SEOは顧客との企画・検証工程が残るため、物価程度の単価改定は可能でも案件数は減る。2026年に取り込んだSALTOの人員も、案件当たり工数の圧縮で相殺される。2027年の管理費削減の一部が定着する一方、子会社の多さに伴う統制費用は残り、利益は新しい高収益事業へ自然には移らない。
- DX受託・クラウド・ソフトウエア試験:数量 455(稼働する技術者換算の年間受託件数(人年))× 価格 0.15(技術者換算1人年当たり売上(億円))→ 売上 70 億円・営業利益 8 億円。2025年比の数量0.70倍、名目単価1.32倍。AIエージェント代替と調達内製化を反映。
- 運用型広告の買付け・運用:数量 98.0(2025年価格で実質化した広告運用予算(億円))× 価格 0.13(運用予算1億円当たり受取手数料(億円))→ 売上 13 億円・営業利益 4 億円。2025年比の数量0.70倍、名目単価0.86倍。AIエージェント代替と調達内製化を反映。
- 広告制作・SEO・戦略支援:数量 420(制作・SEOプロジェクト換算件数(件/年))× 価格 0.08(1件当たり平均受託単価(億円))→ 売上 33 億円・営業利益 11 億円。2025年比の数量0.70倍、名目単価1.32倍。AIエージェント代替と調達内製化を反映。
- ゲーム開発・運営の受託:数量 21.0(ゲーム開発受託の年度換算案件(件))× 価格 0.50(1案件年当たり受託売上(億円))→ 売上 11 億円・営業利益 1 億円。2025年比の数量0.70倍、名目単価1.30倍。AIエージェント代替と調達内製化を反映。
- 自社IP・占いアプリ等:数量 27,500(有料顧客年換算の利用者数(人年、推定))× 価格 0.00(1有料顧客年当たり実効収入(億円))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。2025年比の数量1.10倍、名目単価1.30倍。自社利用者の定着・流出を別建て。
- 人材紹介・派遣・人事SaaS等:数量 800(顧客企業契約年換算(件、推定))× 価格 0.01(1契約年当たり混合収入(億円))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。2025年比の数量0.80倍、名目単価1.08倍。AIエージェント代替と調達内製化を反映。
倍率:10年後の自己資本約97億円に対する親会社利益約7.46億円でROE約7.7%はk8%以下。長期g=0%、将来の新規投資は超過利益を生まないので、永続的な既存利益の稼ぐ力の上限1÷k=12.5倍。現金の別建て加算はしない。
確率:既存需要はなくならず、専門性を維持する事業もあるが、広告とSIの中心商品は顧客の自律化で数量が減る。最多の33%。
やや悲観 25% 受託需要の縮小と買収のれんが重荷 利益 2 億円 · PER 10.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 267 円25 億円
顧客企業が調達先を減らし、大規模開発はNTTデータやSCSKのような大手とAI基盤を提供する企業へ集約する。Orchestraの専門子会社は案件を確保するため契約価格を据え置き、技術者の採用・育成費と給与上昇に挟まれる。AIエージェントが広告買付けやSEO運用を内製化させ、運用型広告の手数料対象予算は縮む。デジタルアイデンティティは従来の利益率を維持できず、IPの収益も補い切れない。
2026年のSALTO買収で膨らんだのれんに減損の兆しが見え、利益に十分な余力がなくなる。収益低下に合わせて人員と間接部門を大きく縮めるため、管理費は残るが2025年比では少し下がる。配当と優待は初期数年分を除いて縮小し、営業利益は残るものの資本効率は大きく損なわれる。
- DX受託・クラウド・ソフトウエア試験:数量 364(稼働する技術者換算の年間受託件数(人年))× 価格 0.14(技術者換算1人年当たり売上(億円))→ 売上 51 億円・営業利益 4 億円。2025年比の数量0.56倍、名目単価1.20倍。AIエージェント代替と調達内製化を反映。
- 運用型広告の買付け・運用:数量 70.0(2025年価格で実質化した広告運用予算(億円))× 価格 0.11(運用予算1億円当たり受取手数料(億円))→ 売上 8 億円・営業利益 2 億円。2025年比の数量0.50倍、名目単価0.76倍。AIエージェント代替と調達内製化を反映。
- 広告制作・SEO・戦略支援:数量 330(制作・SEOプロジェクト換算件数(件/年))× 価格 0.07(1件当たり平均受託単価(億円))→ 売上 22 億円・営業利益 6 億円。2025年比の数量0.55倍、名目単価1.12倍。AIエージェント代替と調達内製化を反映。
- ゲーム開発・運営の受託:数量 16.5(ゲーム開発受託の年度換算案件(件))× 価格 0.44(1案件年当たり受託売上(億円))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。2025年比の数量0.55倍、名目単価1.14倍。AIエージェント代替と調達内製化を反映。
- 自社IP・占いアプリ等:数量 21,250(有料顧客年換算の利用者数(人年、推定))× 価格 0.00(1有料顧客年当たり実効収入(億円))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。2025年比の数量0.85倍、名目単価1.13倍。自社利用者の定着・流出を別建て。
- 人材紹介・派遣・人事SaaS等:数量 700(顧客企業契約年換算(件、推定))× 価格 0.01(1契約年当たり混合収入(億円))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。2025年比の数量0.70倍、名目単価1.03倍。AIエージェント代替と調達内製化を反映。
倍率:回復後もROE約1.8%とk8%以下で再投資に価値はない。稼ぐ力の上限1÷k=12.5倍より低いPER10倍とし、利益の質の劣化と固定費残存を表す。市場で過去に付いた倍率は使わない。
確率:AIエージェント代替だけでなく、買収後の運用統合が滞れば実質請求量は半減する。のれん負担とDX市場の競争を考えて25%。
悲観 12% 事業モデルの置換と大型減損 利益 −5 億円 · PBR 0.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 112 円10 億円
AIエージェントがシステム改修、ソフトウエア試験、広告制作、検索最適化を直接行う標準経路になる。顧客はクラウド提供者やAIの運用基盤に支払い、受託SIやネット代理店を経由する比率が大きく下がる。運用型広告の手数料率は下落し、取扱高も半分以下になる。ランド・ホーのゲーム開発でも生成技術により従来の受託工程が減り、自社IPの課金利用者だけでは穴を埋められない。
買収したSALTOや既存子会社の技術者・人件費が契約減少に追いつかず、全社は営業赤字に転じる。大きなのれんの減損も資産の換金可能額を傷める。株主還元は初期分で止まり、残る価値は事業の将来利益ではなく、現金・運転資産を負債と無形資産から慎重に差し引いた回収可能額が中心になる。
- DX受託・クラウド・ソフトウエア試験:数量 293(稼働する技術者換算の年間受託件数(人年))× 価格 0.13(技術者換算1人年当たり売上(億円))→ 売上 39 億円・営業利益 0 億円。2025年比の数量0.45倍、名目単価1.15倍。AIエージェント代替と調達内製化を反映。
- 運用型広告の買付け・運用:数量 56.0(2025年価格で実質化した広告運用予算(億円))× 価格 0.11(運用予算1億円当たり受取手数料(億円))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。2025年比の数量0.40倍、名目単価0.72倍。AIエージェント代替と調達内製化を反映。
- 広告制作・SEO・戦略支援:数量 270(制作・SEOプロジェクト換算件数(件/年))× 価格 0.07(1件当たり平均受託単価(億円))→ 売上 18 億円・営業利益 2 億円。2025年比の数量0.45倍、名目単価1.12倍。AIエージェント代替と調達内製化を反映。
- ゲーム開発・運営の受託:数量 13.5(ゲーム開発受託の年度換算案件(件))× 価格 0.44(1案件年当たり受託売上(億円))→ 売上 6 億円・営業利益 −1 億円。2025年比の数量0.45倍、名目単価1.15倍。AIエージェント代替と調達内製化を反映。
- 自社IP・占いアプリ等:数量 17,500(有料顧客年換算の利用者数(人年、推定))× 価格 0.00(1有料顧客年当たり実効収入(億円))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。2025年比の数量0.70倍、名目単価1.08倍。自社利用者の定着・流出を別建て。
- 人材紹介・派遣・人事SaaS等:数量 550(顧客企業契約年換算(件、推定))× 価格 0.01(1契約年当たり混合収入(億円))→ 売上 5 億円・営業利益 −1 億円。2025年比の数量0.55倍、名目単価1.02倍。AIエージェント代替と調達内製化を反映。
倍率:営業赤字でPERが使えない。2025年末の自己資本65億円から買収のれん約53.94億円と無形資産等約0.49億円を控除した約10.6億円を保守的な回収可能資産の床とし、今の自己資本65億円に掛けたPBR0.169倍で11億円に評価。2026年追加買収ののれんは床を増やさない。
確率:倒産を既定にしないが、受託商流が縮み販管費を削り切れない場合は営業赤字になる。買収のれんが自己資本を大きく占めるため12%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
DX受託・クラウド・ソフトウエア試験
システム開発、Salesforce導入支援、ヴェスのソフトウエア試験やSALTOの技術者常駐を含む人月・工数型。
| 数量稼働する技術者換算の年間受託件数(人年) | 価格技術者換算1人年当たり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 650 | 0.12 | 75 | 7 |
| 10 年後 中立 | 455 | 0.15 | 70 | 8 |
取り方:2025年有報のDX外部収益75.24299億円(クラウド5.93558、システム67.14872、その他2.15868)を固定する。グループ約1,355人という直近公開の社員数と、買収子会社を含む技術者の稼働を参考に、実際の人数開示ではない「請求可能人年」650を逆算用代理数量として仮定した。11.58百万円/人年は会社公表の実単価ではない。AIエージェント代替の人月型で、中立は人年0.70倍、単価1.32倍とし、買収での人員増も顧客側の内製化・工数削減に吸収される。
運用型広告の買付け・運用
デジタルアイデンティティがGoogle・Meta等の媒体で広告配信を買付け、運用報酬を受け取る。
| 数量2025年価格で実質化した広告運用予算(億円) | 価格運用予算1億円当たり受取手数料(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 140 | 0.15 | 21 | 7 |
| 10 年後 中立 | 98.0 | 0.13 | 13 | 4 |
取り方:2025年有報の「運用型広告等」外部収益21.01052億円を採用。媒体への年間出稿額を140億円、手数料率を約15%とする分析上の仮定から代理数量を作った。実広告予算と料率は非開示で、営業利益はDM利益18.51053億円を広告と制作・SEO売上比で按分した推計である。2025年価格で固定した出稿額を実質数量とし、広告単価の上昇は料率・価格へ反映するが、AIによる運用手数料の圧縮を中立価格0.86倍で優先する。
広告制作・SEO・戦略支援
Web制作、SEO、クリエイティブや運用改善の受託。納品・工数と専門家の助言が収益の源である。
| 数量制作・SEOプロジェクト換算件数(件/年) | 価格1件当たり平均受託単価(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 600 | 0.06 | 36 | 12 |
| 10 年後 中立 | 420 | 0.08 | 33 | 11 |
取り方:2025年有報の「制作・SEO等」売上35.85341億円。会社は制作本数と平均受注額を公表しないため、年600件の規模感を仮定して1案件約598万円の代理単価を作った。広告調達とは別に制作・SEOの外部顧客収益を割り当て、二重計上はしていない。営業利益はDM計上額から売上比で推計する。AIエージェント代替の人月・広告制作型で、数量0.70倍、価格1.32倍を中心とする。
ゲーム開発・運営の受託
ランド・ホー等が開発会社としてゲームの企画・制作・運営を受ける、制作工数が売上の源となる部分。
| 数量ゲーム開発受託の年度換算案件(件) | 価格1案件年当たり受託売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 30.0 | 0.39 | 12 | 0 |
| 10 年後 中立 | 21.0 | 0.50 | 11 | 1 |
取り方:有報のIP・エンタメ売上内訳で「ゲーム開発・運営受託」11.58792億円。会社は作品別稼働・契約価格を示していないため年30案件相当とする仮定で、1案件年当たり約3,863万円と算出した。IPセグメント利益0.57474億円のうち0.40億円を本区分に推計配分した。生成AIにより企画・テスト・アセット制作の工数が削減され、中立数量0.70倍、価格1.30倍とする。
自社IP・占いアプリ等
チャット占い「ウラーラ」など、自社の利用者・コンテンツを顧客基盤とする権利収入と利用料。
| 数量有料顧客年換算の利用者数(人年、推定) | 価格1有料顧客年当たり実効収入(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 25,000 | 0.00 | 6 | 0 |
| 10 年後 中立 | 27,500 | 0.00 | 8 | 1 |
取り方:有報のIP・エンタメ「その他」5.75155億円を自社IP・占いアプリ等の代理売上とし、2万5千人の年間有料顧客換算を分析者仮定として置いた。実会員数、無料広告利用、支払額の内訳は非開示で、1人年約2.30万円は計算上の混合単価である。IPセグメント利益のうち0.17474億円を推計配分した。自社利用者の実績に基づく本数値は開示されていないため、数量成長を過大にしない。
人材紹介・派遣・人事SaaS等
人材紹介・IT人材派遣、タレントマネジメントSaaSを含むその他事業。会社の開示では内訳が分かれない。
| 数量顧客企業契約年換算(件、推定) | 価格1契約年当たり混合収入(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,000 | 0.01 | 8 | 0 |
| 10 年後 中立 | 800 | 0.01 | 7 | 0 |
取り方:有報の「その他」外部収益8.23543億円は人材紹介・派遣・タレントマネジメントSaaS等の合計。件数やSaaSの席数は非開示なので、顧客企業1千契約年換算を推計し、単価約82万円とした。利益はその他セグメントの損失0.42548億円。AI代替は人材紹介・派遣の人月型と業務SaaSのID課金型を混合して評価する。開示で区分できないため、単一の0.80倍・1.08倍という加重的な数量・価格とした。
リスクと懸念
AIエージェント代替
SI受託、広告運用、SEO制作、ゲーム開発、HRの席課金・紹介業務が同時に置き換わる。受託工数を短縮すると同じ案件の請求額が減り、顧客がAIを直接使えば作業が外注されなくなる。基準シナリオの数量と価格にこの影響を入れ、資本コストや確率に重ねて過大に差し引いてはいない。
M&Aの増分利回りとのれん減損
2026年のSALTO買収約17億円は過去の年間営業利益と比べても小さくない。買収先の統合に伴う品質問題、人材の離職、株主への利益の希薄化が重なると、取得原価を上回る投下資本利益率を確保できない。のれんは2025年末だけで約54億円あり、SALTO取得後の増額分も含め、大幅減損時に帳簿上の自己資本は薄くなる。
広告代理の価格決定力不足
国内広告予算がネットへ移っても、Google・Meta・電通デジタル・サイバーエージェントとの競争により代理店料率は下がり得る。2025年には大型案件を一時失注しており、運用実績が長期契約や高い解約障壁と同じとは限らない。運用型広告の数量と手数料率の双方が悪化すれば高いセグメント利益率が崩れる。
人材確保と給与の上昇
委託開発やソフトウエア試験は技術者の採用、教育、稼働率に左右される。物価が年3%上がる前提では人件費も上がり、契約単価の改定が追いつかなければ利益率は縮む。AIによる作業時間の短縮が顧客への価格引下げで吸収されれば、技術者一人当たり生産性の改善が企業利益の改善にならない。
子会社完全取得による既存株主の希薄化
Sharing Innovationsの上場廃止は親会社6533の上場廃止ではないが、株式交換に自己株式約51万株が使われる。発行済株式総数が変わらなくても既存保有者の取り分は約94.8%へ下がる。買収後の親会社取り分の増加と上場コスト削減が、交付した株式の経済価値を上回るかを検証する必要がある。
プライム市場の上場維持基準と還元政策
2026年3月の進捗開示では流通株式時価総額がプライム上場維持基準を満たしていない。改善期限までに株価や流通株の増加が足りない場合、将来の市場変更や上場継続問題が顕在化する。累進配当・優待を増やす方針は評価できるが、業績が悪化した場合の還元維持と追加の買収資金には競合する部分がある。
今後の分かれ目
- 2027年の連結費用改善が年3億円以上となり、翌期にも維持されたら
- M&A統合が資本コストを上回る利回りを生む可能性が高まり、営業利益の基準値と楽観側の確率を上げる。ただし人月需要の先細りは別に検証する。
- Forté.AIなどAI商材の外販売上や受注額、継続率が数値で開示されたら
- 工数報酬から成果報酬・独自ソフトへの移行の証拠として、その部分だけAI代替の数量上限と長期成長率を再評価する。売上の公表がない間は代替を相殺しない。
- DXの社員・協力会社の稼働率が低下し、値上げをしても売上が減り続けたら
- 請求可能人年の縮小を基準より深くし、固定費に伴う利益率の悪化を反映して、やや悲観の比重を上げる。
- DMの運用型広告売上が市場出稿額の増加に反して減少し、制作案件の数も減ったら
- 広告主による直接運用と制作自動化が進んだ可能性が高く、代理店の手数料単価と案件数量を別々に引き下げる。
- 買収後ののれんに大きな減損が生じるか、SALTOの利益が取得時の計画を継続的に下回ったら
- 回収可能な資産の床と増分ROICを下方修正し、経営の資本配分への信頼を引き下げる。帳簿価額の減少を再び時価総額から機械的に控除しない。
- 累進配当に加えて長期の自社株買いが実行され、5年累計で流通株数が5%以上減ったら
- 余剰資金の戻り方を0.75から1.0へ引き上げる根拠になる。ただし子会社取得のための自己株式交付を控除した実質株数で判断する。
見ておくもの
- DX外部売上と請求可能エンジニア稼働人数・稼働率、顧客への実効単価改定
- 運用型広告の媒体出稿額と代理店手数料率、制作・SEOの契約件数
- Forté.AI・MCP・SBOM+の独立外販売上、継続利用率と価格の開示
- 2027年公表の年3億円以上の統合費削減の達成状況と持続性
- SALTO取得後ののれん・無形資産と減損、買収資金に対する増分営業利益
- Sharing Innovationsの株式交換完了後の流通株数と既存株主の持分
- 増配・自社株買い・株主優待の総額、プライム上場維持基準の達成状況
倍率と資本コストの決め方
現在の株価2275円や過去のPERは、将来売上、利益率、正当化倍率の決定には使わなかった。2025年有報の6つの売上源を実際の案件・人年・広告運用予算・有料利用者という代理数量へ分解し、物価を各単価へ一度だけ反映した。AIエージェント代替は人月業務の基準数量0.70倍、運用広告の手数料単価0.86倍、10年より先の名目成長0%で評価し、資本コストの寿命には重ねていない。資本コスト8%からの正当化PERは中立12.5倍、悲観はのれんを除く資産の床で評価した。2026年の株式交換では自己株式交付で既存株主の取り分が減るためholder_shareだけで調整し、全社利益や時価総額に係数を先掛けしていない。2027年からの日本基準の新リース会計基準によりオフィス賃借の貸借対照表表示が変わり得るが、損益は家賃を継続費用とする同一基準で比較する。算出した価値は最後に時価総額約212.5億円と比べた。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。長期国債3%、株式リスクプレミアム4.5%の基準7.5%に、広告・SI受託の競争的な価格決定力0.5%だけを加えた。買収の実行リスクは筋書きと確率で扱い、資本コストに重複計上しない。