結論
ファルコホールディングスは、京都を拠点に、病院や診療所から検体を預かって調べる臨床検査と、調剤薬局を営む会社だ。電子カルテなど医療ITの小さな事業も持つ。筆者の結論は「やや割高」だ。十年後の価値は今の時価総額を1割台半ば下回る。現金と配当の厚みが下値を支えるが、利益が伸びない分、値段に余裕はない。
足元の数字は悪くない。2026年3月期の営業利益は25億円で、臨床検査は1割以上増えた。自己資本比率は7割、時価総額の3割近い純現金があり、会社は配当を純資産の5%ほどに引き上げ、自社株買いも続けている。
一方、伸びる理由は乏しい。検査も調剤も、値段の土台は国が決める診療報酬だ。人件費と集配の費用は物価で上がるのに、単価は物価に届かない。売上は10年で年1%ほど縮んできた。筆者が気にしているのは、この構造だ。
調剤薬局は店を6つ閉じた。門前の薬局が減る流れの中で、利益は2割近く落ちた。検査と医療ITの利益で穴を埋めている形である。
悲観でも下値は浅い。現金と保有株が支えになり、配当の水準も高いからだ。大きく崩れにくいが、大きく伸びる会社でもない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、この会社の第一の魅力は、資本の戻し方だ。純利益の9割近くを配当と自社株買いで戻し、借金はほとんどない。経営の方向が、株主の取り分を増やす側にある。
第二に、事業の堀は広くない。検査は寡占だが、ファルコは中堅で、値決めの力は弱い。調剤薬局は規制と報酬に縛られる。堀は十年スパンで見て「普通以下」だ。資本コストをわずかに超える程度の稼ぐ力で、それが長く続くかが問われる。
第三に、予測しやすい事業かどうかだ。検査も調剤も、需要はなくならない。ただし、診療報酬の改定という国の判断が価格を左右する。収益の予測は外れにくいが、伸びの予測は難しい。
払う値段に安全域があるかどうかは、結論のとおりだ。現金と保有株を引いた事業の価値で見ると、今の値段は少し高い。
オーナーとして持ち続けたいかと言えば、配当を重視する地味な会社として好ましい。ただし、増配は利益の成長ではなく、現金の取り崩しに支えられている部分もある。筆者は、そこを見極めたい。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は三つある。第一は臨床検査で、売上の約6割、営業利益の約6割を占める。子会社のファルコバイオシステムズが、病院・診療所・健診機関から血液や尿などを預かって検査し、結果を返す。体外診断用の試薬の製造・販売や、出生前検査(NIPT)などのゲノム関連も扱う。第二は調剤薬局で、売上の約35%だ。子会社のファルコファーマシーズとチューリップ調剤が、101店舗(うち3店はフランチャイズ)を運営する。第三はICT事業で、売上は17億円と小さいが、営業利益率は2割を超える。クラウド型のレセプト支援「レセスタ」と、中小病院向けの電子カルテ「HAYATE」を提供する。
検査は、診療報酬の点数に連動する。病院が検査会社に支払う価格は、公定価格を土台にした値決めだ。調剤は、調剤報酬と薬価の改定に収益が左右される。つまり、売上の大半が国の価格表に縛られる事業である。
従業員は連結で約1,000人。臨床検査570人、調剤373人、ICT71人。検査は集配網と大型の分析設備、調剤は賃借した店舗が資産の中心だ。2026年3月期の設備投資は18億円で、名古屋の事業用不動産の取得を含む。
筆頭株主は同業のビー・エム・エルで、約1割を持つ。ファルコ側もビー・エム・エル株を持つ。
優良さと弱いところ
筆者が評価するのは、検査事業の地域密着と、配当を重視する姿勢だ。検査は、病院との関係が長く、集配の網と結果の報告の速さが選ばれる理由になる。ICTで電子カルテまで持つことで、病院の中に入り込む窓口もある。
資本の使い方は株主寄りだ。2024年に長期ビジョンを定め、還元の指標を純資産配当率(DOE)に切り替えた。目標は5%程度で、配当性向は6割を超える。さらに自社株買いを加えると、総還元は純利益の9割に達する。借金はほとんどなく、自己資本比率は7割だ。
弱点は三つある。第一に、規模が小さい。検査市場は6千億円ほどで、ファルコのシェアは5%に届かない。上位3社には集配の網でも設備の効率でも劣る。第二に、値決めの力が弱い。公定価格の下で、病院が値下げを迫れば受け入れざるを得ない。第三に、調剤薬局は薄い利益の上に、報酬の適正化で収益が落ちている。
中計の目標(ROE8%以上、営業利益28億円、純利益20億円)は、ほぼ達成圏にある。ただし、目標の水準が低く、資本コストを大きくは超えない。検査の誤りや個人情報の漏えいは、事業の許可に響くリスクとして有価証券報告書にも挙がっている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
臨床検査の受託市場は、約6,200億円とされる(矢野経済研究所)。高齢化で検査の件数は少しずつ増えるが、診療報酬の検査点数は長期的に引き下げ圧力を受けてきた。病院が検査を院内で行う動きと、大手による外部委託の取り込みが同時に進む。
競争の形は寡占だ。上位はビー・エム・エル、H.U.グループホールディングス(SRL)、LSIメディエンスの3社で、規模の効果が効く。ファルコは中堅で、地域と顧客の近さで戦う。同業の再編が進めば、中堅の位置づけは難しくなる。
診療報酬は、令和8年度の改定で本体が2.41%上がったが、内訳は賃上げと物価の対応が中心で、調剤分は0.08%の伸びにとどまった。薬価等は0.87%下がる。調剤薬局は、長期処方・リフィル処方の強化と、報酬の適正化で、収益の伸びが抑えられる。
調剤薬局は、大手チェーンの集約が進む成熟市場だ。医療機関の近くに店を構える門前薬局は、診療所の減少と電子処方箋で苦しくなる。ファルコは当期に6店を閉じた。かかりつけ薬局や在宅医療に寄せる方向だが、規模の効果は大手に及ばない。
医療ITは、中小病院の電子カルテの更新と、レセプトの自動化の需要がある。市場は小さいが、利益率は高い。
人手不足は、検査技師・薬剤師の確保と、集配の人件費に響く。賃上げの分は診療報酬に一部しか反映されず、コストが先に上がる。
資本政策と M&A
還元は手厚い。2026年3月期は配当性向が6割を超え、会社は次期も増配を見込む。さらに自社株を5億円ほど買った。配当の指標はDOEで、目標は5%程度だ。純利益の9割近くを株主に戻す水準である。
純現金は72億円で時価総額の約27%にのぼる。ただし、すべてが余剰ではない。検体の回収から入金までの運転資金、集配と分析機器の更新、調剤薬局の賃借の約束がある。これらを売上の1割強の約50億円と見て、残る約22億円を余った現金として分けた。戻している実績が強く、帳簿どおりに戻るとみる。
政策保有株は、ビー・エム・エルを18.7億円分、ODKソリューションズを5.2億円分持つ。当期に売却益が4.25億円出た。保有株の配当は純利益に入っているので、価値を別に足していない。
M&Aは目立たない。過去にはICTや調剤薬局を買い足してきた。今後は、検査の同業の再編に巻き込まれる可能性がある。筆頭株主が同業のビー・エム・エルであることは、提携や統合の選択肢を残すが、独立性を保つ限り、数字には入れていない。
名古屋の事業用不動産など、検査拠点の整備に資金を使う。大型の買収は想定しにくい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
経営が変わった。2024年に長期ビジョンと中計を定め、DOEを指標にし、配当を純資産の5%に引き上げた。自社株買いも続く。純利益の9割近くを株主に戻すのは、日本の上場企業では目立つ水準だ。
事業も改善している。臨床検査の営業利益は1割以上増え、ICTは3割増えた。2027年3月期の第1四半期は営業利益が2割増えた。電子カルテとクラウドのレセプト支援は、中小病院のデジタル化の流れに乗る。ゲノム関連やNIPTは、検査単価を押し上げる成長分野だ。
診療報酬は令和8年度に賃上げと物価の対応で本体が上がり、検査業界にとって悪い環境ではない。同業の再編が進めば、ファルコの検査網と顧客を評価する買い手も出る。筆頭株主が同業のビー・エム・エルであることも、提携や統合の余地を残す。
調剤薬局は不採算の店を閉め、利益率の底は見えてきた。かかりつけと在宅に寄せれば、薄いが安定した収益になる。借金がなく、保有株も含めて財務は厚い。十年のうちに、利益が3割増えて、配当がそれに連れて増える筋書きは十分にある。
慎重な見方
売上は十年で年1%ほど縮んできた。2022年3月期に営業利益率は11%まで上がったが、新型コロナ関連の検査需要が重なったとみられ、平時は5%前後だ。今の水準が利益の山に近い。
検査も調剤も、値段を国が決める。令和8年度の本体の引き上げは賃上げと物価の対応が中心で、調剤分は0.08%にとどまる。薬価等は0.87%下がる。人件費と集配のコストは物価で上がるが、単価は物価に届かず、利益率は構造的に圧迫される。
検査の寡占は上位3社が握り、ファルコは中堅で、集配の網でも設備の効率でも劣る。病院は価格で外注先を乗り換える。調剤薬局は、門前の診療所が減り、電子処方箋でさらに競争が強まる。当期の利益は2割近く落ちた。
増配は利益の成長ではなく、現金の取り崩しに支えられている。純利益の9割近くを戻せば、自己資本は増えず、利益も増えない。ROEは資本コストの手前で、倍率を押し上げる材料がない。
同業の再編も不利に働く。上位3社が規模で勝ち、中堅のファルコは病院の入札で値段を下げさせられる。買い手が付く保証もない。筆頭株主のビー・エム・エルは同業であり、独立の価値を高く評価する理由は薄い。保有株や現金は評価に含まれており、これ以上の上積みは期待しにくい。
どちらに重みを置いたか
経営の方向と財務の厚さでは強気の言い分が強い。一方、値決めを国に握られる構造と、売上が縮んできた過去の事実では慎重な言い分が勝つ。そこで中立の営業利益率を足元より少し低い5%台前半に置き、確率はやや悲観をやや楽観より厚くした。悲観は借金がなく、現金と保有株があるので、1割にとどめた。総合の差は、中立の利益が横ばいで、還元の厚みが価値の大半を占める形になっている。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,498 円246 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,706 円168 億円)。 今の値に割り戻すと 2,239 円221 億円、今との差 −17.6%、 期待の年率 +4.5%(資本コスト 8.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 5,903 円582 億円 | 2,547 円251 億円 | +211.1% | +12.0% | 591 円58 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,863 円381 億円 | 2,141 円211 億円 | +121.0% | +8.3% | 1,201 円118 億円 |
| 中立 | 37% | 2,621 円258 億円 | 1,867 円184 億円 | +65.2% | +5.1% | 1,660 円164 億円 |
| やや悲観 | 26% | 1,104 円109 億円 | 1,299 円128 億円 | −11.5% | −1.2% | 625 円62 億円 |
| 悲観 | 10% | 551 円54 億円 | 710 円70 億円 | −53.6% | −7.4% | 126 円12 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,498 円246 億円 | 1,706 円168 億円 | +54.8% | +4.5% | 4,203 円414 億円 |
今の株価時価総額 2,716 円268 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 検査の再編を主導し、ゲノムと医療ITで利益の質が上がる 利益 39 億円 · PER 14.4 倍 · 株価時価総額 5,903 円582 億円
診療報酬の改定が賃上げと物価を一部反映して検査単価が下げ止まり、ファルコバイオシステムズは同業の中小の検査会社を買い取りながら、関西と中部の受託を伸ばす。NIPT(出生前検査)や遺伝子検査キットなどゲノム関連が育ち、検査の利益率は 8% 台に上がる。調剤薬局は不採算店を整理して在宅医療に寄せ、売上は保つ。ICT 事業は電子カルテ「HAYATE」とクラウドのレセプト支援が中小病院に広がり、利益の柱の一つになる。DOE 5% の還元は続き、名目の ROE は 14% 近くまで上がる。売上は 660 億円台、営業利益は 50 億円を超え、今の倍の水準になる。現金の厚みは保ったまま、配当と自社株買いで純利益の 9 割を戻し続けるため、株主の取り分は大きく増える。ただし、これは検査の再編と医療ITの拡大が同時に成功する理想的な十年である。
- 臨床検査:数量 6,800(国内の受託臨床検査市場(億円・今の値段の実質))× 価格 6.2%(1億円の市場あたりの自社売上(億円)=シェア × 価格の指数(診療報酬を含む))→ 売上 420 億円・営業利益 36 億円。臨床検査:市場 6800 億円(今の値段)× 価格 0.0617(シェア × 診療報酬を含む価格の指数)、利益率 8.5%
- 調剤薬局:数量 150(処方箋の応需枚数(万枚、推定))× 価格 1.30(1枚あたり売上(万円・名目))→ 売上 195 億円・営業利益 10 億円。調剤薬局:150 万枚 × 1 枚あたり 1.297 万円(調剤報酬・薬価が公定で物価に届かない)、利益率 5.0%
- ICT:数量 12.0(契約施設数(千施設、推定))× 価格 4.01(1千施設あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 48 億円・営業利益 12 億円。ICT:12 千施設 × 1 千施設あたり 4.014 億円、利益率 25.0%
倍率:事業の純利益 39 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.3% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)22 億円。全体の PER 14.43 倍、時価総額 582 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:同業の再編を主導できるかは、この会社の規模と経営の資源から見て確度が高くない。連続成功が要るため 7% に置いた。
やや楽観 20% 検査の効率化と医療ITが効いて、利益率が 6% 台に乗る 利益 28 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 3,863 円381 億円
検査・集配業務の効率化が進み、同業の中小が抜けた顧客を取り込んで検体数が伸びる。検査単価は診療報酬の改定を受けて、物価には届かないが下がらない。調剤薬局は不採算店の閉局で薄い利益率が戻り、ICT は電子カルテの拡販が続く。営業利益は 37 億円ほどに増え、純利益は 28 億円に届く。還元は DOE 5% を守る。ただし検査の価格競争は続き、利益率が大きく上がることはない。売上は 570 億円ほどで、今の 3 割増になる。調剤薬局は規模を保つが、利益は小さい。ICT は 10 億円規模の営業利益に育ち、検査と並ぶ柱の一つになる。大きな失敗も成功もない、良い方に偏った十年だ。
- 臨床検査:数量 6,600(国内の受託臨床検査市場(億円・今の値段の実質))× 価格 5.4%(1億円の市場あたりの自社売上(億円)=シェア × 価格の指数(診療報酬を含む))→ 売上 358 億円・営業利益 27 億円。臨床検査:市場 6600 億円(今の値段)× 価格 0.0543(シェア × 診療報酬を含む価格の指数)、利益率 7.5%
- 調剤薬局:数量 142(処方箋の応需枚数(万枚、推定))× 価格 1.20(1枚あたり売上(万円・名目))→ 売上 170 億円・営業利益 7 億円。調剤薬局:142 万枚 × 1 枚あたり 1.196 万円(調剤報酬・薬価が公定で物価に届かない)、利益率 4.0%
- ICT:数量 10.0(契約施設数(千施設、推定))× 価格 3.90(1千施設あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 39 億円・営業利益 9 億円。ICT:10 千施設 × 1 千施設あたり 3.899 億円、利益率 24.0%
倍率:事業の純利益 28 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.5% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)22 億円。全体の PER 12.86 倍、時価総額 381 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計の目標がほぼ達成圏にあり、足元の営業利益が伸びていることから、会社の方向どおりに進む筋書き。
中立 37% 検査は微増、調剤は縮み、利益は今の水準で横ばい 利益 20 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 2,621 円258 億円
臨床検査は高齢化で検体数が少し増えるが、診療報酬の単価は物価に届かず、売上は名目で 2 割ほど増えるにとどまる。調剤薬局は門前薬局の閉局が続き、処方箋の枚数が減る。ICT は電子カルテの普及で伸びる。人件費と集配のコストは物価並みに上がるので、営業利益率は 5% 台前半で、足元とほぼ同じ。営業利益は 27 億円ほど、純利益は 20 億円で、今とほぼ変わらない。配当は DOE 5% に沿って出し、自社株買いも続ける。自己資本は増えず、ROE は 7% 台にとどまる。売上は 510 億円ほどで、検査が 320 億円、調剤が 160 億円、ICT が 30 億円。営業利益の内訳では、検査が 21 億円、調剤が 5 億円、ICT が 7 億円で、全社費用を引いて 27 億円になる。会社は縮まないが、伸びもしない。株主にとっては、配当を受け取り続ける十年になる。
- 臨床検査:数量 6,500(国内の受託臨床検査市場(億円・今の値段の実質))× 価格 4.9%(1億円の市場あたりの自社売上(億円)=シェア × 価格の指数(診療報酬を含む))→ 売上 321 億円・営業利益 21 億円。臨床検査:市場 6500 億円(今の値段)× 価格 0.0495(シェア × 診療報酬を含む価格の指数)、利益率 6.5%
- 調剤薬局:数量 135(処方箋の応需枚数(万枚、推定))× 価格 1.17(1枚あたり売上(万円・名目))→ 売上 157 億円・営業利益 6 億円。調剤薬局:135 万枚 × 1 枚あたり 1.165 万円(調剤報酬・薬価が公定で物価に届かない)、利益率 3.5%
- ICT:数量 8.0(契約施設数(千施設、推定))× 価格 3.84(1千施設あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 31 億円・営業利益 7 億円。ICT:8 千施設 × 1 千施設あたり 3.842 億円、利益率 22.0%
倍率:事業の純利益 20 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.8% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)22 億円。全体の PER 11.76 倍、時価総額 258 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:売上が 10 年で年 1% 縮んできた過去と、会社自身の予想(営業利益 27 億円)の落としどころ。
やや悲観 26% 診療報酬の引き下げと価格競争で、利益が半分になる 利益 10 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 1,104 円109 億円
診療報酬の改定で検体検査の点数が引き下げられ、病院が検査会社に値下げを迫る。大手の検査会社が価格で攻め、中堅のファルコは単価を守れずに検体数も失う。調剤薬局は調剤報酬の適正化で収益が落ち、閉局が増える。ICT は伸びるが小さい。営業利益は 13 億円ほどに減り、純利益は 9 億円台になる。配当は DOE の目標を引き下げて維持する。自己資本は積み上がらず、現金の一部は赤字補填に回る。それでも借金はなく、事業は続く。売上は 420 億円ほどに縮み、今より 1 割近く少ない。調剤は 120 万枚まで処方箋が減り、薬局の数も 8 割前後に減る。ICT は 7 億円ほどの営業利益で、全体の穴は埋まらない。配当は性向が 8 割まで下がっても維持するが、増配は止まる。
- 臨床検査:数量 6,200(国内の受託臨床検査市場(億円・今の値段の実質))× 価格 4.3%(1億円の市場あたりの自社売上(億円)=シェア × 価格の指数(診療報酬を含む))→ 売上 268 億円・営業利益 12 億円。臨床検査:市場 6200 億円(今の値段)× 価格 0.0432(シェア × 診療報酬を含む価格の指数)、利益率 4.5%
- 調剤薬局:数量 120(処方箋の応需枚数(万枚、推定))× 価格 1.06(1枚あたり売上(万円・名目))→ 売上 128 億円・営業利益 3 億円。調剤薬局:120 万枚 × 1 枚あたり 1.064 万円(調剤報酬・薬価が公定で物価に届かない)、利益率 2.0%
- ICT:数量 7.0(契約施設数(千施設、推定))× 価格 3.58(1千施設あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 25 億円・営業利益 5 億円。ICT:7 千施設 × 1 千施設あたり 3.584 億円、利益率 18.0%
倍率:事業の ROE 約 3.5% は k 8.5% を大きく下回る。ためた利益は額面未満の価値なので、PER の上限 1÷k=12.5 倍の約 68%(8.5 倍)を置いた。
確率:検査も調剤も公定価格に縛られ、診療報酬の改定が続けば利益が削られる展開は同業でも現実的。やや楽観より厚めの 26% に置いた。
悲観 10% 検査が大手に取られ、調剤も縮み、残るのは現金と保有株になる 利益 3 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 551 円54 億円
検査の大手 3 社(BML・H.U.グループ・ファルコの上位)への集約が進み、ファルコは大口の病院顧客を失う。小さな規模では集配の網を維持できず、単価の下落が続く。調剤薬局は大手チェーンとの競争と調剤報酬の引き下げで赤字店が増え、店舗が半分近くに減る。ICT は小さく、全体を支えられない。営業利益は 5 億円ほどに落ち、利益で見れば価値は小さい。清算はされず、現金は経営の裁量に残り、少数株主は動かせない。純現金と保有株の価値が下値の目安になる。売上は 330 億円ほどに縮み、検査は 200 億円、調剤は 100 億円、ICT は 20 億円。営業利益は 5 億円で、利益率は 1.5% しかない。配当は大きく削られ、増配の期待は消える。それでも事業は続き、現金はほとんど減らない。価値は事業の稼ぎでなく、資産に宿る十年だ。
- 臨床検査:数量 5,800(国内の受託臨床検査市場(億円・今の値段の実質))× 価格 3.5%(1億円の市場あたりの自社売上(億円)=シェア × 価格の指数(診療報酬を含む))→ 売上 201 億円・営業利益 6 億円。臨床検査:市場 5800 億円(今の値段)× 価格 0.0347(シェア × 診療報酬を含む価格の指数)、利益率 3.0%
- 調剤薬局:数量 100(処方箋の応需枚数(万枚、推定))× 価格 1.03(1枚あたり売上(万円・名目))→ 売上 103 億円・営業利益 1 億円。調剤薬局:100 万枚 × 1 枚あたり 1.034 万円(調剤報酬・薬価が公定で物価に届かない)、利益率 1.0%
- ICT:数量 6.5(契約施設数(千施設、推定))× 価格 3.44(1千施設あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 22 億円・営業利益 3 億円。ICT:6.5 千施設 × 1 千施設あたり 3.440 億円、利益率 15.0%
倍率:純利益が小さく、稼ぐ力では値が付きにくい。床の資産(純現金のうち運転資金を除いた分と、保有株の税後)を基に、今の自己資本に 0.21 倍を掛けた。
確率:同業の大手への集約と診療報酬の引き下げが重なる構造は実在する。ただし実質無借金で自己資本が厚く、保有株もあるため、悲観は 1 割にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
臨床検査
病院・診療所・健診機関から検体を預かって検査する受託検査、体外診断用試薬、ゲノム関連。
| 数量国内の受託臨床検査市場(億円・今の値段の実質) | 価格1億円の市場あたりの自社売上(億円)=シェア × 価格の指数(診療報酬を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 6,200 | 4.3% | 267 | 18 |
| 10 年後 中立 | 6,500 | 4.9% | 321 | 21 |
取り方:受託臨床検査の市場を約6,200億円(矢野経済研究所)とし、臨床検査事業の売上266.6億円をシェア約4.3%とみた。数量は実質の市場規模で、シェアと診療報酬を含む価格の分は価格の欄に入れた。検査単価は公定価格が土台で、物価の1.34倍には届かない前提で将来を置く。
調剤薬局
101店舗(うちフランチャイズ3店)で処方箋に基づく調剤を行う。
| 数量処方箋の応需枚数(万枚、推定) | 価格1枚あたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 150 | 1.01 | 152 | 7 |
| 10 年後 中立 | 135 | 1.17 | 157 | 6 |
取り方:処方箋の枚数は開示が無い。売上152億円と、1店あたり約1.5億円・1枚あたり約1万円という業界の目安から、約150万枚と推定した。物価と調剤報酬・薬価の動きは1枚あたり売上(価格)に入れる。
ICT
クラウド型レセプト支援「レセスタ」と電子カルテ「HAYATE」「NEO」。
| 数量契約施設数(千施設、推定) | 価格1千施設あたり年間売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 6.0 | 2.87 | 17 | 5 |
| 10 年後 中立 | 8.0 | 3.84 | 31 | 7 |
取り方:契約施設数は開示が無く、売上17.2億円から約6千施設と推定した(1施設あたり約29万円)。物価の分は1施設あたり売上に入れる。
リスクと懸念
診療報酬の引き下げ
検査料も調剤報酬も国が決める。令和8年度の改定で調剤分は0.08%の伸びにとどまり、薬価等は0.87%下がった。次の改定で検体検査の点数が引き下げられれば、検査事業の利益が直接削られる。
検査業界の寡占と再編
受託検査は上位3社が規模で勝つ。ファルコは中堅で、病院が価格で外注先を替えれば顧客を失う。同業の再編が進むと、独立の中堅として生き残る余地が狭まる。
調剤薬局の収益悪化
調剤薬局は2026年3月期に営業利益が2割近く減り、6店を閉じた。門前の診療所の減少、電子処方箋、大手チェーンとの競争が重なる。不採算店の整理が遅れると、利益の足を引っ張る。
検査過誤と個人情報
検査の取り違えや調剤の誤りは、訴訟と許可の取り消しにつながる。医療情報の漏えいやサイバー攻撃も、事業の信頼を損なう。有価証券報告書も主要なリスクに挙げている。
現金の取り崩しによる増配
配当性向は6割超、自社株買いを含めると純利益の9割近い。利益が伸びない中で続けると、自己資本が減り、安全域が薄くなる。増配が止まれば、評価は下がる。
人手と集配のコスト
検査技師・薬剤師の不足と、集配の人件費の上昇が続く。賃上げは診療報酬に一部しか反映されず、コストが価格に先行して上がる。
今後の分かれ目
- 次の診療報酬改定で、検体検査の点数が引き下げられたら
- 検査の利益率の前提を下げ、やや悲観の確率を上げる。
- 検査の同業の再編(上位3社による中堅の買収)が公表されたら
- ファルコが買われる側か、取り残される側かで見直す。買われるなら価値の上振れ、取り残されるなら悲観に寄せる。
- 調剤薬局の営業利益が黒字を保ち、閉局が一巡したら
- 調剤の利益率の下値が固まったと見て、中立の前提を少し引き上げる。
- ICT事業の営業利益が10億円を超えたら
- 医療ITが第二の柱になったと見て、やや楽観の確率を上げる。
- 配当の指標が下げられ、自社株買いが止まったら
- 増配の維持が難しくなったとみて、還元の前提を下げる。
- 筆頭株主のビー・エム・エルとの提携や持分の変更が公表されたら
- 統合の可能性が高まる。価格と条件を確かめて見直す。
見ておくもの
- 臨床検査の営業利益率と検体数の動き
- 調剤薬局の店舗数と営業利益
- 診療報酬・調剤報酬・薬価の次回改定の内容
- DOEの実績と自社株買いの有無
- ICT事業の営業利益と契約施設数
倍率と資本コストの決め方
事業ごとに、臨床検査は市場(実質)×シェア×価格の指数、調剤は処方箋枚数×1枚あたり売上、ICTは契約施設×1施設あたり売上で積み上げた。検査と調剤の価格は診療報酬に縛られ、物価の1.34倍には届かない前提(1.15倍)を置き、費用は物価で上がるので利益率は少し下がる。倍率は資本コスト8.5%(quality +0.5%)と、余った現金を除いた事業のROE約8%から正当化PERを計算し、ROEがkとほぼ同じなので1÷kの12.5倍の約9割を置いた。今のPERやPBR、過去の倍率は使っていない。減価償却は、今ある検査設備の分は物価で増やさず、設備投資が年18億円と小さいので利益率に含めた。余った現金は戻している実績が強く、帳簿どおり足した。政策保有株の配当は純利益に入っており、価値は足していない。悲観は構造的に負けた後の稼ぐ力と、売れる資産の床で置いた。今の株価には寄せていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.5→14.43 倍・やや楽観 PER 12.8→12.86 倍・中立 PER 11.3→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.5%(循環 −0.5、値決め +0.5、寿命 +0.5)。事業は傾いていないので上乗せなし。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 8.50%。