結論
CSSホールディングスは、ホテルの宴会場やレストランの洗い場を請け負う会社だ。皿やグラス、鍋を洗い、厨房を片付ける仕事を「スチュワード」と呼ぶ。筆者の結論は、今の値段は割安である。
この会社の強みは、地味な仕事を40年以上続けてきたことにある。取引するホテルは約200件で、宴会の売上で上位10のホテルのうち5つを押さえる。洗い場が止まれば宴会は回らない。ホテルにとっては手放しにくい相手だ。
追い風ははっきりしている。訪日客で大型ホテルは忙しく、人手不足で洗い場を自前で回せなくなっている。最低賃金の上昇は受託料に乗り、売上の値段の側を押し上げる。2025年9月期の ROE は19%と高い。
一方で、稼ぎの源は人を集める力だけだ。臨時の働き手は6,600人を超え、集められなければ仕事は取れない。コロナの時は宴会が消え、3期続けて営業赤字だった。
筆者は、取引ホテルが少しずつ増え、利益率が今とほぼ同じで続く所を中心に置く。そこで測ると、今の値段は本質価値を3割ほど下回る。工場も機械も持たず、稼いだ利益の半分近くを配当と自社株買いで返す。そうした会社を、利益の8倍ほどで買える値段は控えめだと筆者は見る。ただし、人が集まらなくなった時の下振れは深く、強気一辺倒にはなれない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、地味だが、資本をほとんど使わずに稼ぐ会社だ。
筆者がこの会社を評価するのは、仕事が簡単にはなくならない点だ。宴会の皿は誰かが洗わなければならない。大型ホテルの洗い場を任されるには、人を集め、教え、宴会の段取りに合わせて動かす力が要る。その力は、40年の積み重ねでしか手に入らない。
しかも、工場も機械も要らない。稼いだ利益の多くを配当と自社株買いに回せる。ROE が高いのはそのためだ。
懸念は二つある。一つは、ホテルの景気に振られることだ。コロナの時のように宴会が消えれば、利益はすぐに消える。もう一つは、人を集める力が続くかだ。
それでも今の値段は、利益が今の水準から少し伸びる程度の筋書きで、その価値を下回る。安全域は大きくないが、確かにある。筆者は、この会社を長く持つなら、毎年の新規開業の件数と、受託料の改定が人件費の上昇に追いついているかを見続ける。この二つが崩れない限り、地味な洗い場の仕事は、株主に着実な利益を運び続ける。
何で稼ぐ会社か
事業は三つある。2025年9月期の売上195億円のうち、スチュワードが94億円と半分を占め、利益の柱になる。残りは給食のフードサービスが46億円、映像や音響の機器を扱う空間プロデュースが55億円だ。
スチュワードは、ホテルの洗い場をまるごと引き受ける仕事だ。食器や鍋を洗い、厨房を片付け、ごみを出す。宴会で数百人分の皿が一度に戻ってくる大型ホテルでは、段取りの良し悪しが宴会の回り方を決める。売上の82%がホテル向けで、帝国ホテルやニューオータニといった名門が顧客に並ぶ。契約は人を何人、何時間出すかで決まり、人件費の上昇は受託料の改定に乗せる。
フードサービスは、ホテルの従業員食堂やホテル内のレストラン、高齢者施設の給食を運営する。ここも売上の85%がホテル向けで、スチュワードと同じ顧客に売れる。利益率は2%前後と薄い。
空間プロデュースは毛色が違う。商業施設や銀行に、監視カメラ、音響、映像、香りの機器を設計して納める。テーマパークの音響もこの部門だ。納めた時に売上が立つので、年ごとの波がある。会社はこれを保守と消耗品のサブスクに変えようとしている。
グループの正社員は613人だが、現場を支えるのは年平均6,630人の臨時の働き手だ。持株会社の CSS ホールディングスの下に、スチュワードのセンダン、給食の会社、映像・音響の会社がぶら下がる。本社の費用は年に2億円強で、各事業の利益から差し引かれる。
優良さと弱いところ
強みは、ホテルの洗い場という狭い市場で積み上げた信用だ。宴会の売上で上位10のホテルのうち5つ、上位15のうち8つで洗い場を任されている。洗い場は宴会の裏方だが、止まれば客に料理を出せない。大型ホテルが業者を変えるのは手間もリスクも大きく、一度取った契約は長く続きやすい。
資本効率も高い。洗い場の仕事は機械も工場も要らず、人と段取りで回る。だから少ない資本で稼げ、2025年9月期の ROE は19%に達した。
弱みは、値決めの力が限られることだ。受託料はホテルとの交渉で決まり、人件費の上昇を乗せられても、利幅を広げる力は小さい。営業利益率は3〜4%で、20年前の8%には戻っていない。
もう一つの弱みは、顧客がホテルに偏ることだ。コロナで宴会が消えた2020〜2022年9月期は、3期続けて営業赤字だった。人を抱える請負は、売上が落ちると赤字に転じやすい。もっとも、コロナの間も配当をやめず、2023年9月期には黒字に戻した。顧客のホテルが戻ると、契約もほぼそのまま戻ってきた。この戻りの速さは、洗い場を任される信用の厚さを示している。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ホテル業界は、訪日客で潤っている。2025年の外国人の延べ宿泊者数は約1億7,800万人泊と過去最高を更新した。大型ホテルの宴会や朝食の会場は忙しく、洗い場の仕事は増えている。新しいホテルの開業も続く。一方で日本人の宿泊は減り始め、伸びの勢いは鈍っている。
洗い場の外注は、人手不足で広がる。ホテルは調理や接客の人手さえ足りず、洗い場まで自前で回す余裕がない。最低賃金は年に5%前後上がり、政府は全国平均を今より2割ほど高い水準へ引き上げる目標を掲げる。人件費の上昇は受託料に乗るので、売上の値段の側を押し上げる。
問題は、人を集められるかだ。洗い場は体を使う仕事で、若い働き手は集まりにくい。会社は外国籍の人材の採用を進め、教育の仕組みを整える。人を集められる会社に仕事が集まる構図で、規模のある会社が有利になる。
技術の変化も見ておく必要がある。食器洗浄機は進化し、調理ロボットも出てきた。会社は調理ロボットのTechMagicと手を組んだが、洗い場の自動化はまだ先だと説明する。10年で自動化が進めば、人を出す仕事は減る。その時、機械を入れて運用する側に回れるかが問われる。競合は中小の清掃会社やホテル系の子会社が多く、全国で大型ホテルを束ねる規模の会社は限られる。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。方針は、安定的かつ継続的な配当で、2025年9月期は記念配当を含めて配当性向38%だった。コロナの赤字の時期も配当をやめなかった。株数は1年で約3%減っており、自社株買いも実行している。
株主は、個人と資産管理会社が上位に並び、合わせて過半を持つ。経営陣に近い株主が多く、買収の対象にはなりにくい。逆に言えば、経営の方針が株主の利益と同じ向きにある限り、還元は安定しやすい。会社は説明会で ROE 15%超を掲げ、病院の洗い場や清掃などの周辺業務を、M&Aと提携で広げる方針を示す。
純現金は約8億円あるが、6,600人の働き手の給与を毎月払う運転資金に要る。余った現金と呼べる額ではない。工場や機械への大きな投資が要らないので、利益の大半は還元か買収に回せる。資本の使い方は、これまでのところ堅実だ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ホテルの洗い場の外注は、これから本格的に広がる。人手不足で、ホテルは洗い場まで手が回らない。宴会の売上で上位のホテルの半分を押さえる CSS は、その受け皿の筆頭だ。2025年9月期だけで、スチュワードの新しい現場が15件開いた。
最低賃金の上昇は、むしろ追い風になる。人件費が上がれば受託料も上がり、売上の値段の側が伸びる。人を集める力のない小さな業者は退き、仕事は規模のある会社に集まる。
広げる余地も大きい。病院の食器洗浄、高齢者住宅の給食、床やグリストラップの清掃は、どれも同じ人と段取りで回せる。会社はM&Aと提携でここを取りにいく。
資本はほとんど要らないので、利益は配当と自社株買いに回る。ROE は19%で、PER は1桁にとどまる。10年で取引先が4割増えれば、利益は倍を超える。コロナの赤字は、宴会が丸ごと消えるという例外の出来事だった。ホテルの需要が戻った今、2025年9月期の売上は過去最高を更新した。悲観の筋書きは、例外を常態と見誤っている。
慎重な見方
稼ぎの源は人を集める力だけで、それが一番もろい。洗い場は若い働き手が集まりにくい仕事で、最低賃金が年5%近く上がる中で、人を確保する費用は増え続ける。ホテルが受託料の値上げを渋れば、利益率はすぐに削られる。2017〜2019年9月期の営業利益率は1〜2%台だった。
顧客はホテルに偏る。コロナでは宴会が消え、3期続けて営業赤字になった。景気の後退や感染症で同じことが起きれば、人件費を抱えたまま売上が落ちる。
自動化も脅威だ。食器洗浄機は年々賢くなり、調理ロボットも現場に入り始めた。大型ホテルが洗い場を機械に置き換えれば、人を出す仕事そのものが減る。
空間プロデュースは納品の時に売上が立つ商売で、年ごとの波が大きい。フードサービスの利益率は2%と薄い。三つの事業のうち、厚く稼げるのはスチュワードだけだ。そのスチュワードの利益率も6%に届かない。今の ROE 19%は、コロナ後の需要の戻りが重なった山の数字で、10年続くとは限らない。過去10年の ROE の中央値は5.6%にすぎない。
どちらに重みを置いたか
ホテルの外注化と人手不足の追い風は確かで、資本を使わずに稼ぐ形も確かだ。一方で、人を集める力に頼る請負の弱さと、ホテルの景気の波も消えない。確率は中立を中心に、強気側を35%、悲観側を27%と、やや強気に寄せた。上位ホテルの洗い場を押さえる実績と、新しい現場が毎年開いている事実を重く見た。ただ ROE は今の19%から1割前後に落ち着くと見て、中立の利益の伸びは控えめにした。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/09 期)
確率で加重した株価時価総額 2,244 円111 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 584 円29 億円)。 今の値に割り戻すと 1,381 円69 億円、今との差 +52.9%、 期待の年率 +12.1%(資本コスト 8.5%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 4,173 円207 億円 | 911 円45 億円 | +463.0% | +18.9% | 508 円25 億円 |
| やや楽観 | 25% | 3,171 円157 億円 | 742 円37 億円 | +333.3% | +15.8% | 978 円49 億円 |
| 中立 | 38% | 2,362 円117 億円 | 593 円29 億円 | +227.2% | +12.6% | 1,123 円56 億円 |
| やや悲観 | 18% | 648 円32 億円 | 399 円20 億円 | +15.9% | +1.5% | 188 円9 億円 |
| 悲観 | 9% | 218 円11 億円 | 121 円6 億円 | −62.5% | −9.3% | 30 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,244 円111 億円 | 584 円29 億円 | +213.2% | +12.1% | 2,828 円140 億円 |
今の株価時価総額 903 円45 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 10% 病院と高齢者施設に広がり、値上げも通って利益が倍以上になる 利益 12 億円 · PER 16.2 倍 · 株価時価総額 4,173 円207 億円
ホテルは人手不足で洗い場を自前で回せなくなり、外注が当たり前になる。CSSは宴会売上の上位ホテルの半分を押さえた実績を武器に、取引先を200件から280件に増やす。病院の食器洗浄、高齢者住宅の給食、床やグリストラップの清掃にも広がる。
最低賃金の上昇は受託料にそのまま乗り、1件あたりの受託額は名目1.50倍になる。外国籍の人材の採用と、調理ロボットとの組み合わせで、現場の生産性も上がる。
売上は約370億円、営業利益は約16億円になる。ROE は高いまま、配当と自社株買いで還元が増える。周辺業務の買収も、値段を抑えて成果を上げる。人を集める力が、そのまま規模の強みになる筋書きだ。
- スチュワード:数量 280(取引ホテル数(件))× 価格 0.70(1ホテルあたり年間受託額(億円))→ 売上 197 億円・営業利益 13 億円。数量 1.40倍・単価 1.50倍・営業利益率 6.5%
- フードサービス:数量 1,216(現場の臨時従業員(人))× 価格 0.06(1人あたり売上(億円))→ 売上 78 億円・営業利益 3 億円。数量 1.20倍・単価 1.42倍・営業利益率 3.5%
- 空間プロデュース:数量 127(社員(人))× 価格 0.66(1人あたり売上(億円))→ 売上 83 億円・営業利益 5 億円。数量 1.10倍・単価 1.36倍・営業利益率 6.0%
倍率:事業の純利益 12 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 21.0% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.2 倍。全体の PER 16.19 倍、時価総額 197 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:訪日客で大型ホテルの宴会と朝食は高い水準が続き、人手不足で洗い場の外注は増える。病院の食器洗浄や周辺の清掃にも広がれば、件数は大きく伸びる。ただ人を集められるかに上限があり、同じ人手の業種の強気と同じ程度に置いた。
やや楽観 25% 取引ホテルが着実に増え、利益率が少し上がる 利益 9 億円 · PER 15.5 倍 · 株価時価総額 3,171 円157 億円
新しいホテルの開業と、ホテルの外注化が続く。取引先は10年で200件から250件に増える。受託額は人件費の上昇を映して名目1.45倍になる。
フードサービスは高齢者施設の給食を増やし、利益率を3%台に引き上げる。空間プロデュースは監視カメラや音響の保守をサブスクに切り替え、売上の波が小さくなる。
売上は約330億円、営業利益は約13億円になる。全社の利益率は4%近くまで上がる。配当は利益に合わせて増え、自社株買いも時々行う。人手不足で小さな業者が退き、上位の会社に仕事が集まる流れが、静かに効き続ける。
- スチュワード:数量 250(取引ホテル数(件))× 価格 0.68(1ホテルあたり年間受託額(億円))→ 売上 170 億円・営業利益 10 億円。数量 1.25倍・単価 1.45倍・営業利益率 6.0%
- フードサービス:数量 1,114(現場の臨時従業員(人))× 価格 0.06(1人あたり売上(億円))→ 売上 71 億円・営業利益 2 億円。数量 1.10倍・単価 1.40倍・営業利益率 3.0%
- 空間プロデュース:数量 121(社員(人))× 価格 0.65(1人あたり売上(億円))→ 売上 78 億円・営業利益 4 億円。数量 1.05倍・単価 1.34倍・営業利益率 5.5%
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.1% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.5 倍。全体の PER 15.54 倍、時価総額 146 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2025年9月期はスチュワードの新規開業が15件、フードが17件あった。2026年9月期も第3四半期まで増収で、通期の営業利益8億円の計画を据え置く。今の勢いが10年続く形を強気側の中心に置いた。
中立 38% ホテルの数とともに件数が少し増え、人件費の上昇を値段に乗せる 利益 7 億円 · PER 14.7 倍 · 株価時価総額 2,362 円117 億円
取引ホテルは10年で200件から220件に増える。新しいホテルの開業と病院への広がりが、閉館や契約の切り替えを上回る。受託額は最低賃金の上昇を映し、名目1.42倍になる。物価よりやや速いが、その分は人件費の上昇で消える。
スチュワードの利益率は5.5%と今とほぼ同じ。フードは2.5%、空間プロデュースは5%に落ち着く。本社の費用も物価並みに増える。
売上は約300億円、営業利益は約10億円、純利益は約7億円になる。ROE は1割前後と、資本コストをわずかに上回る。還元は利益の半分弱で、自己資本は厚くなる。
- スチュワード:数量 220(取引ホテル数(件))× 価格 0.67(1ホテルあたり年間受託額(億円))→ 売上 146 億円・営業利益 8 億円。数量 1.10倍・単価 1.42倍・営業利益率 5.5%
- フードサービス:数量 1,064(現場の臨時従業員(人))× 価格 0.06(1人あたり売上(億円))→ 売上 67 億円・営業利益 2 億円。数量 1.05倍・単価 1.38倍・営業利益率 2.5%
- 空間プロデュース:数量 115(社員(人))× 価格 0.63(1人あたり売上(億円))→ 売上 72 億円・営業利益 4 億円。数量 1.00倍・単価 1.30倍・営業利益率 5.0%
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.2% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.7 倍。全体の PER 14.72 倍、時価総額 105 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ホテルの外注化と訪日客の追い風は確かだが、人手を集める難しさと、ホテルの景気の波も確かだ。過去にはコロナで2期続けて営業赤字に沈んだ。双方の言い分が釣り合う所を中心にした。
やや悲観 18% 人が集まらず、値上げも追いつかずに利益率が下がる 利益 3 億円 · PER 8.2 倍 · 株価時価総額 648 円32 億円
最低賃金は毎年5%近く上がるが、ホテルは受託料の値上げを渋る。受託額は名目1.30倍にとどまり、人件費の上昇に追いつかない。人が集まらず、取引先も10年で5%減る。
スチュワードの利益率は3.5%に下がり、フードは1%、空間プロデュースは4%になる。
売上は約240億円、営業利益は約4億円で、今の6割の水準に落ちる。ROE は資本コストを下回り、配当は保つが自社株買いは止まる。事業は続くが、人を集める費用に利益が食われ、株主の取り分は細る。外国籍の人材の採用も、期待ほど進まない。空間プロデュースも、銀行の店舗が減り、監視カメラの需要が細る。
- スチュワード:数量 190(取引ホテル数(件))× 価格 0.61(1ホテルあたり年間受託額(億円))→ 売上 116 億円・営業利益 4 億円。数量 0.95倍・単価 1.30倍・営業利益率 3.5%
- フードサービス:数量 962(現場の臨時従業員(人))× 価格 0.06(1人あたり売上(億円))→ 売上 56 億円・営業利益 1 億円。数量 0.95倍・単価 1.28倍・営業利益率 1.0%
- 空間プロデュース:数量 109(社員(人))× 価格 0.60(1人あたり売上(億円))→ 売上 66 億円・営業利益 3 億円。数量 0.95倍・単価 1.25倍・営業利益率 4.0%
倍率:ROE 5.3% は k 8.5% を下回り、ためた利益は額面未満の価値。PER の上限は 1÷k の 11.8 倍で、利益率が細る筋書きなので、上限の約70%の8.2倍に置いた。
確率:人件費の上昇を受託料に乗せきれなければ、利益率はすぐに削られる。2017〜2019年9月期は営業利益率が1〜2%台だった。人手の業種の悲観側と同じ程度に置いた。
悲観 9% ホテルの需要が落ち込み、大口の契約も失って利益が消える 利益 −1 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 218 円11 億円
リーマン級の不況でホテルの宴会と訪日客が落ち込み、取引ホテルは2割減る。人件費は下がらず、受託料は名目1.1倍にとどまる。上位のホテルが洗い場を自動化し、大口の契約も失う。
スチュワードの利益率は1%、フードは赤字、空間プロデュースも細る。
売上は約200億円、営業利益はわずかになる。厚い自己資本は持たないので、価値は細った稼ぐ力の所まで下がる。人を雇う事業は、帳簿の資産も売れる値段が低い。配当は大きく削られ、10年の還元は6億円ほどにとどまる。会社が残っても、株主の価値はわずかになる。ホテルとの信用も、一度崩れると戻すのに時間がかかる。
- スチュワード:数量 160(取引ホテル数(件))× 価格 0.52(1ホテルあたり年間受託額(億円))→ 売上 82 億円・営業利益 1 億円。数量 0.80倍・単価 1.10倍・営業利益率 1.0%
- フードサービス:数量 861(現場の臨時従業員(人))× 価格 0.05(1人あたり売上(億円))→ 売上 43 億円・営業利益 0 億円。数量 0.85倍・単価 1.10倍・営業利益率 -1.0%
- 空間プロデュース:数量 97.8(社員(人))× 価格 0.53(1人あたり売上(億円))→ 売上 52 億円・営業利益 2 億円。数量 0.85倍・単価 1.10倍・営業利益率 3.0%
倍率:稼ぐ力は消える。売れる資産の床(floor_assets_oku)をそのまま時価総額に置き、今の自己資本31億円に対する PBR は約0.35倍。人を雇う請負は、帳簿の資産に売れる値段が乏しい。
確率:2020〜2022年9月期にはコロナでホテルの宴会が消え、3期続けて営業赤字だった。同じことが景気の後退や感染症で起きうる。人を抱える請負は赤字に転じやすく、悲観の確率を10%近くに置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
スチュワード
ホテルの宴会場やレストランの食器洗浄・鍋洗浄・厨房清掃を一括で請け負う。売上の82%がホテル向け。
| 数量取引ホテル数(件) | 価格1ホテルあたり年間受託額(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 200 | 0.47 | 94 | 6 |
| 10 年後 中立 | 220 | 0.67 | 146 | 8 |
取り方:売上93.74億円を、会社が説明会で示した取引ホテル約200件で割った。レストランや病院の受託も含むので、1件あたりは平均の値。
フードサービス
従業員食堂・ホテル内レストラン・高齢者施設の給食を運営する。売上の85%がホテル向け。
| 数量現場の臨時従業員(人) | 価格1人あたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 1,013 | 0.05 | 46 | 1 |
| 10 年後 中立 | 1,064 | 0.06 | 67 | 2 |
取り方:売上45.98億円を、フードサービスの臨時従業員の年平均1,013人で割った。1人あたり約450万円の売上。
空間プロデュース
映像・音響・監視カメラ・香りの機器を設計・施工・販売する。企業と銀行が顧客。
| 数量社員(人) | 価格1人あたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 115 | 0.48 | 55 | 3 |
| 10 年後 中立 | 115 | 0.63 | 72 | 4 |
取り方:売上55.42億円を、空間プロデュースの社員115人で割った。施工と機器販売のフロー型の売上。
リスクと懸念
人が集まらない
現場を支える臨時の働き手は6,600人を超える。洗い場は若い働き手が集まりにくい仕事で、最低賃金は年5%近く上がる。人を集められなければ新しい現場を開けず、今の現場も回らない。外国籍の人材の採用が、どこまで穴を埋めるかが分かれ目になる。
ホテルの景気と感染症
売上の8割がホテル向けだ。コロナの時は宴会が消え、3期続けて営業赤字になった。景気の後退で宴会や訪日客が減れば、人件費を抱えたまま売上が落ちる。
受託料の値上げが追いつかない
人件費の上昇は受託料に乗せるが、交渉の相手はホテルだ。値上げが遅れれば、薄い利益率はすぐに削られる。2017〜2019年9月期の営業利益率は1〜2%台だった。
洗い場の自動化
食器洗浄機と調理ロボットは年々進化する。大型ホテルが洗い場を機械に置き換えれば、人を出す仕事は減る。会社が機械を入れて運用する側に回れるかが問われる。
衛生事故と労働災害
給食で食中毒を出せば、契約の打ち切りに直結する。洗い場ではけがや器物の破損も起きる。一つの事故が、ホテルとの長い取引を失う原因になりうる。
空間プロデュースの波
機器を納めた時に売上が立つ商売で、銀行や商業施設の投資の波を受ける。サブスクへの切り替えが進まなければ、年ごとの利益の振れは残る。
今後の分かれ目
- スチュワードの新規開業が年20件を超える
- ホテルの外注化が加速している合図だ。やや強気の筋書きに寄る。
- 病院の洗い場や清掃の会社を買収する
- ホテル以外に顧客が広がり、景気の波が小さくなる。買収の値段が高すぎないかも見る。
- 営業利益率が3%を割る
- 人件費の上昇を受託料に乗せきれていない合図で、やや悲観の筋書きに寄る。
- 訪日客や宴会の需要が大きく落ちる
- 売上がすぐに細り、悲観側に寄る。コロナの時の赤字が繰り返されるかを見る。
- 洗い場の自動化の機械を自社で運用し始める
- 人を出す請負から、機械と人を組み合わせる請負に変わる。自動化を脅威から武器に変える合図だ。
見ておくもの
- スチュワードとフードの新規開業の件数
- 営業利益率と受託料の改定
- 臨時従業員の数と採用の状況
- 訪日客の延べ宿泊者数と宴会の需要
- 自社株買いの実行額
- 病院・清掃など周辺業務の買収
倍率と資本コストの決め方
取引ホテル数と1件あたりの受託額、臨時従業員と社員の数から利益を積み、倍率は式で置いた。中立は ROE が k を上回るので正当化 PER の85%にした。今の PER 7〜8倍・PBR 1.4倍には寄せていない。純現金8億円は給与の運転資金として分けず、還元は配当と自社株買いで利益の半分弱とした。リースの約束は小さく、新しいリース会計の影響は軽い。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.5→16.19 倍・やや楽観 PER 12.2→15.54 倍・中立 PER 11→14.72 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本7.5% + quality 1.0% = 8.5%。人が集まらない危うさやホテルの景気は、筋書きの数量・利益率と確率で表した。