結論
ハリマビステムは横浜を地盤に、オフィス・マンション・役所の清掃、管理人、設備の保守、警備を請け負うビルメンテナンスの会社だ。筆者の結論は「割安」で、一番の理由は、毎年更新される契約が積み上がった安定した稼ぎに比べて、今の値段が控えめなことにある。
この会社の強みは地味な継続性にある。売上の 8 割強は毎月決まった額が入る基本の作業で、景気が悪くても簡単には解約されない。人手不足でビルの持ち主が自前の管理をやめ、外注に回す流れも追い風だ。2026 年 3 月期は賃上げを値段に乗せ、営業利益率は 4.9% と過去最高になった。
弱みは、仕事の大半が人の手に頼ることだ。現場の人が集まらなければ契約を受けられず、賃金に値段が追いつかなければ利益は細る。管理人や巡回の警備は、遠隔監視に置き換わる余地もある。
10 年の中立では、物件は買収で 1 割増え、値段は物価並みに上がり、ROE は資本コストをわずかに上回る水準で落ち着く。2025 年に出した CB と新株予約権が行使されると、株数は 1 割強増える。それを差し引いても、筆者は今の値段に安全域があると見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ハリマビステムは「目立たないが、毎年同じように稼ぐ事業」に近い。
オーナーとして見た稼ぎは、見た目の利益とほぼ同じだ。工場も大きな設備も要らず、再投資は買収と人の採用が中心になる。設備に食われない利益は、配当と次の買収に回せる。この軽さは評価できる。
堀は浅い。ただ、契約の更新率の高さという小さな堀がある。ビルの持ち主にとって、清掃や管理人の会社を替える手間は、数%の値下げより重い。この粘りがある限り、売上が大きく崩れることはない。
気になるのは 2 つだ。1 つは、今の利益率が過去最高の水準にあること。賃金の上昇に値段が追いつかなくなれば、利益は過去の 2〜3% に戻りうる。もう 1 つは CB と新株予約権の希薄化だ。買収が資本コストを超えて稼がなければ、株主の取り分を薄めるだけになる。それでも、払う値段に対して稼ぐ力は確かで、安全域はあると筆者は見る。
何で稼ぐ会社か
事業は実質的にビルメンテナンス一本だ。売上 309 億円(2026 年 3 月期)のうち、毎月決まった額で請ける「基本の作業」が 8 割強、修繕や特別清掃などの「臨時の作業」が 2 割弱を占める。
基本の作業の中身は、清掃が 4 割弱、マンションやビルの管理人が 3 割強で、残りを設備の保守と警備が分け合う。顧客はオフィスビルが 3 割強、マンションが 2 割、官公庁が 2 割弱だ。官公庁の仕事は入札で決まるため値段は厳しいが、一度取れば数年は続く。
利益の出方は 2 つの作業でまるで違う。基本の作業は粗利が 1 割に満たない薄利で、人件費の上がり方に値上げが追いつくかで決まる。臨時の作業は粗利が 2 割台後半あり、基本の作業で入り込んだビルから修繕や工事を受注する。薄利の継続契約を入り口にして、利幅の厚い仕事を拾う仕組みだ。
成長の手段は買収だ。2024 年に TEC サービス、2025 年にアイワサービスと武蔵野通信を傘下に入れた。中小のビルメン会社は後継者難と人手不足で売り手が多く、地域の物件をまとめて取り込める。2025 年には横浜の投資会社、横浜キャピタルと事業提携を結び、同社に CB と新株予約権を割り当てて買収の資金を用意した。
優良さと弱いところ
優良さは「堀は浅いが、底は固い」と言える。ビルメンテナンスは許認可の壁が低く、全国に数千の会社がひしめく。値段を自分で決められる会社はほとんど無い。ハリマビステムも例外ではない。
それでも契約は粘り強い。清掃や管理人の会社を替えると、ビルの持ち主は鍵の受け渡しや住民への説明など手間がかかる。だから品質に大きな問題が無ければ、契約は毎年そのまま更新される。この解約の少なさが、景気の谷でも売上が崩れない理由だ。
資本の効率はここ数年で上がった。ROE は 2010 年代の 4〜7% から、2026 年 3 月期は 12% 前後まで改善した。賃上げを値段に乗せる交渉が業界全体で通るようになったことが大きい。ただ、営業利益率は 5% に届かず、日本管財や ALSOK のような大手と比べると規模の利益で劣る。
経営は堅実だ。純現金を保ちながら小さな買収を重ね、のれんは自己資本の 1 割に収めている。配当性向は 2035 年度に 35% 以上を目指す。CB による希薄化は気になるが、提携先と組んだ買収の資金と考えれば筋は通る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ビルメンテナンスの市場は約 4 兆円とされ、成熟しているが縮んではいない。新しいビルが減っても、今あるビルは清掃と保守を必要とし続けるからだ。数量は人口ほど速くは減らず、10 年で横ばい前後と筆者は見る。
業界の最大の論点は人手だ。清掃や管理人の担い手は高齢者が多く、70 代の引退とともに人が足りなくなっていく。最低賃金は年 3% を超えて上がり、賃金に値段が追いつかない会社から脱落する。逆に、人を集められる会社には仕事が集まる。業界の再編はここから進む。
もう一つの論点は技術だ。清掃ロボット、カメラと AI による遠隔監視、ビルの設備を一括で見るシステムが広がっている。管理人を置く代わりに遠隔で見守るマンションも増えている。人の時間で稼ぐ部分は縮む一方、機械を使いこなせる会社は少ない人数で同じ仕事を回せる。
競合は全国の大手と地場の中小だ。大手には日本管財、イオンディライト、東急コミュニティーなどがあり、ハリマビステムは中堅の位置にいる。地元の神奈川では名の通った存在だが、首都圏全体では規模で劣る。官公庁の入札では大手との値下げ競争になりやすい。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。2026 年 3 月期の配当総額は約 2.9 億円で、配当性向は 25% だった。2027 年 3 月期は 32% を見込み、2035 年度に 35% 以上を目指す。自社株買いは小さく、株式報酬に使う程度だ。株主優待は確認できなかった。
資本の使い道の柱は買収だ。手元の現金と、2025 年に横浜キャピタルへ割り当てた CB・新株予約権で資金を用意した。2026 年 3 月期の潜在株を入れた 1 株利益は、基本の 1 株利益の 9 割弱で、行使されれば株数は 1 割強増える。
純現金は約 20 億円あるが、筆者はこれを余った現金とは見ない。ビルメンテナンスは毎月の人件費を先に払い、顧客からの入金を後で受け取る。月の人件費だけで 20 億円近くになり、その立て替えに現金が要る。
時価総額は 100 億円ほどで、買収の標的にもなりうる規模だ。ただ、検索した範囲では TOB や MBO の動きは無かった。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
人手不足は、この会社にとって追い風だ。ビルの持ち主も役所も、自前で清掃員や管理人を雇えなくなり、外注に回すしかない。仕事は人を集められる会社に集まる。ハリマビステムは買収で人と物件をまとめて取り込み、2 年で 3 社を傘下に入れた。
値段の交渉力も変わった。業界全体で賃金の上昇を契約の値段に乗せるのが当たり前になり、2026 年 3 月期の営業利益率は 4.9% と過去最高になった。かつての 1〜2% の利益率は、賃金が上がらず値上げを言い出せなかった時代の数字だ。
事業はストック型で、景気の谷でも売上は崩れない。長期ビジョンは 2035 年度に営業利益 30 億円を掲げ、今の 2 倍だ。横浜キャピタルとの提携で買収の資金と案件の両方を得た。純現金で財務も軽い。今の値段は、この安定した稼ぎを十分に評価していない。
技術の変化も、使う側に回れば味方になる。清掃ロボットや遠隔監視を入れて現場の人数を減らせば、同じ契約から多くの利益が残る。人手を確保できない中小の同業は、こうした投資もできずに売り手に回る。買う側にいる会社が有利な局面だ。
慎重な見方
過去 10 年の大半、この会社の営業利益率は 1〜4% だった。今の 4.9% は最も良い年の数字で、ここを起点に 10 年を描くのは危うい。2027 年 3 月期の会社予想も減益だ。賃金の上昇はこれからも続き、値上げがいつも通るとは限らない。官公庁の入札では、むしろ値下げを迫られる。
技術の変化も重い。管理人と清掃で売上の 7 割を占めるが、どちらも遠隔監視とロボットで人数を減らせる仕事だ。浮いた人件費は顧客の値下げ要求に消え、会社の利益には残りにくい。人の時間で稼ぐ事業は、その時間が減れば売上も減る。
CB と新株予約権で株数は 1 割強増える。買収で買った会社が稼がなければ、既存の株主の取り分は薄まるだけだ。中期経営計画 2023-2025 の営業利益 21 億円も届かなかった。長期ビジョンの数字をそのまま信じる理由は乏しい。
大手との差も縮まらない。日本管財やイオンディライトは全国の拠点と購買の規模で費用を下げられる。中堅のハリマビステムは、同じ値段で戦えば利幅で負ける。安定しているのは売上であって、利益ではない。
どちらに重みを置いたか
事業の安定性では強気の見方に分があるが、利益率が過去最高の水準にあるという慎重な見方の指摘も重い。中立は利益率を今の水準で横ばいに置き、確率は中立を厚く、やや悲観にもやや楽観に近い重みを置いた。希薄化を差し引いても、確率で重みを付けた本質価値は今の時価総額を 3 割ほど上回る。決め手は、契約の粘りで売上が崩れにくいことと、今の値段が稼ぐ力に比べて低いことだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,629 円237 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 444 円40 億円)。 今の値に割り戻すと 1,520 円137 億円、今との差 +38.9%、 期待の年率 +10.9%(資本コスト 8.0%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 3,899 円351 億円 | 572 円51 億円 | +308.7% | +15.1% | 447 円40 億円 |
| やや楽観 | 22% | 3,457 円311 億円 | 513 円46 億円 | +262.9% | +13.8% | 873 円79 億円 |
| 中立 | 38% | 2,887 円260 億円 | 462 円42 億円 | +206.1% | +11.8% | 1,273 円115 億円 |
| やや悲観 | 19% | 1,703 円153 億円 | 368 円33 億円 | +89.3% | +6.6% | 394 円35 億円 |
| 悲観 | 11% | 523 円47 億円 | 262 円24 億円 | −28.3% | −3.3% | 86 円8 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,629 円237 億円 | 444 円40 億円 | +180.9% | +10.9% | 3,073 円277 億円 |
今の株価時価総額 1,094 円98 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 10% 首都圏の受託を買い集め、長期ビジョンを達成 利益 24 億円 · PER 15.3 倍 · 株価時価総額 3,899 円351 億円
人手不足で自前の清掃や管理をやめるビルと役所が増え、外注の流れが強まる。ハリマビステムは横浜と首都圏で中小のビルメン会社を年 1〜2 社ずつ買い、受託物件は今の 1.2 倍になる。
賃金の上昇は契約の更新ごとに値段へ転嫁でき、清掃ロボットと遠隔監視で現場の人数を減らす分が利益率を押し上げる。臨時の工事や修繕も、老朽化したビルの改修で伸びる。
2035 年度の長期ビジョン、売上 500 億円・営業利益 30 億円に届く。CB と新株予約権は株価の上昇で行使され、株数は 1 割強増えるが、借金は消えて財務はさらに軽くなる。配当性向は目標の 35% に上がる。
- 基本の作業(清掃・管理人・設備保守・警備):数量 3,100(受託物件(件、推定))× 価格 0.14(1 物件あたり年額(億円・名目))→ 売上 440 億円・営業利益 15 億円。受託 3100 物件 × 年 0.1420 億円、営業利益率 3.5%
- 臨時の作業(修繕・工事・特別清掃):数量 12,000(臨時の作業の件数(件・年、推定))× 価格 0.01(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 85 億円・営業利益 15 億円。臨時作業・工事 12000 件 × 0.00710 億円、営業利益率 18.0%
倍率:事業の純利益 24 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.6% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.3 倍。全体の PER 15.27 倍、時価総額 366 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:長期ビジョン(2035 年度に営業利益 30 億円)は会社の目標そのもので、過去の中計は未達だった。人手を集めきって買収も当て続ける筋なので 1 割にとどめた。
やや楽観 22% 賃上げを値段に乗せ、利益率が少しずつ上がる 利益 21 億円 · PER 14.9 倍 · 株価時価総額 3,457 円311 億円
受託物件は買収と官公庁の外注の広がりで今の 1.15 倍になる。最低賃金は年 3% を超えて上がるが、契約の更新で値段に乗せ、1 物件あたりの年額は 10 年で 1.40 倍になる。
利益率は基本の作業で 3.3%、臨時の作業で 17% と、今より少し高い水準に落ち着く。管理人や受付の一部は遠隔の監視に置き換わるが、その分は人を減らす効率化として会社の利益に残る。
配当性向は 30% 台に上がり、自社株も少しずつ買う。CB と新株予約権の行使で株数は 1 割強増えるが、受け取る資金で借金を返し、買収の余力も保たれる 10 年になる。
- 基本の作業(清掃・管理人・設備保守・警備):数量 2,980(受託物件(件、推定))× 価格 0.14(1 物件あたり年額(億円・名目))→ 売上 417 億円・営業利益 14 億円。受託 2980 物件 × 年 0.1400 億円、営業利益率 3.3%
- 臨時の作業(修繕・工事・特別清掃):数量 11,400(臨時の作業の件数(件・年、推定))× 価格 0.01(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 80 億円・営業利益 14 億円。臨時作業・工事 11400 件 × 0.00700 億円、営業利益率 17.0%
倍率:事業の純利益 21 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.8% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.9 倍。全体の PER 14.88 倍、時価総額 318 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2026 年 3 月期に営業利益率は 4.9% と過去最高になり、賃上げの転嫁が進んでいる証拠がある。買収も 2 年で 3 社を連結しており、やや楽観に 2 割強を置いた。
中立 38% 物件は少しずつ増え、利益率は横ばい 利益 18 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 2,887 円260 億円
受託物件は買収と新規の契約で今の 1.1 倍になる。ただ、人が集まらずに受けられない仕事も出て、伸びはこの程度にとどまる。1 物件あたりの年額は物価並みの 1.34 倍で、賃上げの分を値段に乗せるのが精一杯だ。
清掃ロボットや遠隔監視は広がるが、浮いた分の多くは顧客の値下げ要求に回る。利益率は基本の作業で 3%、臨時の工事で 16% と、今とほぼ同じ水準で推移する。
配当性向は 30% 前後に上がる。CB と新株予約権の行使で株数は 1 割強増え、既存の株主の取り分はその分だけ薄まる。ROE は 8% 台で、資本コストをわずかに上回る 10 年になる。
- 基本の作業(清掃・管理人・設備保守・警備):数量 2,860(受託物件(件、推定))× 価格 0.13(1 物件あたり年額(億円・名目))→ 売上 383 億円・営業利益 12 億円。受託 2860 物件 × 年 0.1340 億円、営業利益率 3.0%
- 臨時の作業(修繕・工事・特別清掃):数量 10,800(臨時の作業の件数(件・年、推定))× 価格 0.01(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 72 億円・営業利益 12 億円。臨時作業・工事 10800 件 × 0.00670 億円、営業利益率 16.0%
倍率:事業の純利益 18 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.7% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.3 倍。全体の PER 14.29 倍、時価総額 257 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ビルメンテナンスはストック型で、契約の大半は毎年更新される。人手不足は外注の追い風であり逆風でもあり、両者が打ち消し合う形を中心に 4 割弱を置いた。
やや悲観 19% 人が集まらず、賃金に値段が追いつかない 利益 14 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 1,703 円153 億円
現場の人手が集まらず、受託物件は今の水準から増えない。最低賃金の上昇に契約の値上げが追いつかず、1 物件の年額は物価並みに上がっても、人件費がそれ以上に増える。
基本の作業の利益率は 2.4% に下がり、臨時の工事も競争で 14% に落ちる。官公庁の入札では大手との値下げ競争が続く。買収した会社の一部で、のれんが利益を生まなくなる。
配当は守るが、増配は止まる。ROE は 6% 台に下がり、資本コストを下回る。CB と新株予約権は行使されても、受け取った資金を生かす先が見つからない 10 年になる。
- 基本の作業(清掃・管理人・設備保守・警備):数量 2,600(受託物件(件、推定))× 価格 0.13(1 物件あたり年額(億円・名目))→ 売上 348 億円・営業利益 8 億円。受託 2600 物件 × 年 0.1340 億円、営業利益率 2.4%
- 臨時の作業(修繕・工事・特別清掃):数量 9,500(臨時の作業の件数(件・年、推定))× 価格 0.01(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 64 億円・営業利益 9 億円。臨時作業・工事 9500 件 × 0.00670 億円、営業利益率 14.0%
倍率:ROE 6.7% が k 8% を下回るので、正当化 PER は 1÷k の 12.9 倍が上限。ためた利益の目減りを見て、上限の 8 割強の 10.5 倍に置いた。
確率:過去 10 年の大半は営業利益率 1〜4% の会社で、今の 4.9% は最も良い年だ。賃上げの転嫁が止まれば利益率は簡単に戻る。2027 年 3 月期の会社予想も減益で、2 割弱を置いた。
悲観 11% 遠隔監視とロボットに仕事を奪われ、値下げが続く 利益 6 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 523 円47 億円
管理人・受付・巡回の警備が、カメラと AI の遠隔監視に置き換わる。清掃はロボットが広がり、ビルの持ち主は「人の数」でなく「結果」に払うようになる。受託物件は今の 0.88 倍に減り、1 物件の年額も実質で下がる。
大手のビルメン会社や不動産会社の系列が、価格と技術の両方で攻めてくる。基本の作業の利益率は 1% まで落ち、臨時の工事も 10% に下がる。
配当は減らす。のれんの一部を減損し、自己資本は伸びない。株主に残る値打ちは、細った稼ぎを資本コストで割った額と、手元の純現金だけになる 10 年だ。
- 基本の作業(清掃・管理人・設備保守・警備):数量 2,300(受託物件(件、推定))× 価格 0.13(1 物件あたり年額(億円・名目))→ 売上 290 億円・営業利益 3 億円。受託 2300 物件 × 年 0.1260 億円、営業利益率 1.0%
- 臨時の作業(修繕・工事・特別清掃):数量 8,000(臨時の作業の件数(件・年、推定))× 価格 0.01(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 50 億円・営業利益 5 億円。臨時作業・工事 8000 件 × 0.00630 億円、営業利益率 10.0%
倍率:ROE 3.6% が k 8% を大きく下回る。稼ぐ力(純利益÷k)は約 77 億円で、ためた利益に値打ちは無いとみて 1÷k の 7 割の 9.0 倍に置いた。
確率:ストック型で景気の谷でも売上は 1〜2 割しか落ちないが、管理人と清掃という売上の 7 割が人の手を前提にしている。技術で仕事の中身が変わる筋として 1 割強を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
基本の作業(清掃・管理人・設備保守・警備)
毎月決まった額で請ける継続契約。清掃が 4 割弱、管理人が 3 割強。
| 数量受託物件(件、推定) | 価格1 物件あたり年額(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,600 | 0.10 | 260 | 7 |
| 10 年後 中立 | 2,860 | 0.13 | 383 | 12 |
取り方:物件数の開示は無いので、売上の 84% にあたる約 260 億円を約 2,600 物件・1 物件年 1,000 万円と推定した。営業利益は粗利率 9.8% から販管費を按分して約 7 億円とした。AI エージェント代替は「現場の体」の行で、事務・受付の部分だけ数量と k に入れた。
臨時の作業(修繕・工事・特別清掃)
基本の作業で入っているビルから受ける修繕・工事・特別清掃。粗利が厚い。
| 数量臨時の作業の件数(件・年、推定) | 価格1 件あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 9,800 | 0.01 | 49 | 8 |
| 10 年後 中立 | 10,800 | 0.01 | 72 | 12 |
取り方:件数の開示は無いので、売上の 16% にあたる約 49 億円を年約 9,800 件・1 件 50 万円と推定した。粗利率 26.5% から販管費を按分し、営業利益を約 8.2 億円とした。
リスクと懸念
賃金の上昇に値段が追いつかない
最低賃金は年 3% を超えて上がり続ける。契約の更新で値上げが通らなければ、粗利が 1 割に満たない基本の作業はすぐに赤字に近づく。今の営業利益率 4.9% は過去最高の水準で、過去の 1〜3% に戻る余地がある。
人手が集まらない
清掃員や管理人の担い手は高齢者が多い。引退に採用が追いつかなければ、仕事があっても受けられない。外注の需要が増えても、人を集める競争で賃金がさらに上がり、利益が削られる。
AI エージェント代替と遠隔監視
管理人・受付・巡回の警備は、カメラと AI の遠隔監視で人数を減らせる。清掃もロボットが広がる。人の時間で稼ぐ部分は縮み、浮いた人件費は顧客の値下げ要求に回りやすい。売上の 7 割が管理人と清掃で、影響は小さくない。
CB と新株予約権の希薄化
2025 年に横浜キャピタルへ割り当てた CB と新株予約権が行使されると、株数は 1 割強増える。受け取った資金で買った会社が資本コストを超えて稼がなければ、既存の株主の取り分は薄まるだけになる。
官公庁の入札と大手との競争
売上の 2 割弱は官公庁で、入札で値段が決まる。日本管財やイオンディライトなど規模で勝る大手との値下げ競争になりやすい。落札できなければ、数年分の売上がまとめて消える。
買収の失敗
中小のビルメン会社を買い続ける戦略は、買った会社の人と契約が残るかにかかっている。人が辞め、顧客が離れれば、のれんだけが残る。2025 年の 2 社ののれんは合わせて約 9 億円ある。
今後の分かれ目
- 営業利益率が 5% 台を 3 期続けて保ったら
- 賃上げの転嫁が定着したとみて、やや楽観に重みを移す。
- 会社予想どおり 2027 年 3 月期に減益になり、利益率が 4% を割ったら
- 今の利益率は山だったとみて、やや悲観に重みを移す。
- 買収した会社の売上と利益を合わせても、のれんの償却を上回らなかったら
- 買収の規律に疑いを持ち、中立の数量の伸びを下げる。
- CB と新株予約権がすべて行使されたら
- 希薄化は確定するが、借金が消えて買収の余力が増える。受け取った資金の使い道を見る。
- 管理人を遠隔監視に置き換える契約が増えたら
- 人の時間で稼ぐ部分の縮みが始まったとみて、悲観に重みを移す。
見ておくもの
- 基本の作業と臨時の作業の粗利率
- 営業利益率(4.9% を保てるか)
- 買収の件数とのれんの残高
- CB・新株予約権の行使の状況と株数
- 配当性向(2035 年度 35% 以上)
倍率と資本コストの決め方
倍率は k 8% と g 4% から正当化 PER で出し、ROE が k を上回る中立は 1÷k の 12.9 倍を下回らせなかった。今の PER 8 倍台は使っていない。利益率は過去最高の今の水準を中立で横ばいに置き、上げなかった。CB と新株予約権の希薄化は holder_share 0.87 で最後に掛けた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.8→15.27 倍・やや楽観 PER 13.4→14.88 倍・中立 PER 13→14.29 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% + quality 0.25%。同業の日本管財(0%)より値決めと寿命で 0.25% 重い。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.75% → 8.00%。