結論
アイ・アールジャパンホールディングスは、上場企業の実質株主を調べ、株主総会での議決権を分析し、買収や経営支配権を巡る争いを支援する専門会社である。筆者の結論は「やや割高」だ。独自の株主情報と有事対応の経験には価値があるものの、調査や助言に人手をかけて料金を受け取る収益構造が、今後10年のAIエージェント普及によって変わると考えるからだ。
同社を普通の経営コンサルティング会社と同列に扱うべきではない。委任状争奪戦や同意なき買収への対応では、議決権の予測だけでなく、顧客との信頼関係、交渉、秘密保持、最終的な責任が必要になる。40年を超える議決権関連データの蓄積も参入障壁だ。さらに証券代行では93社の受託が決定し、約57万人の株主を管理する。ただし、どれほど優れたデータを持っていても、顧客がその分析に今と同じ金額を払い続けるとは限らない。
2021年3月期に41億円近かった営業利益は、2026年3月期には13億円弱となった。直近は回復しているが、利益率が過去最高の水準に戻ることを中立の前提にはしない。AIへの投資、人材報酬の引き上げ、証券代行の提携見直しも、今後の利益と現金の使い方を左右する。
10年後の中立では売上高約56億円、営業利益約11億円、純利益8億円を見込む。株主に帰属する余剰現金も含めた10年後の時価総額は約149億円だが、10年間の資本コストを考慮すると、その価値は今より低い。5つの筋書きと途中の株主還元を合わせた現在価値は約96億円で、基準時価総額135億円を約29%下回る。十分に安い価格であれば検討に値する専門企業だが、現状の値段では予測の難しさに見合う安全域が足りない。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の見方では、この会社の価値を決めるのは、10年後にどれだけの議決権分析レポートを作るかではない。顧客が会社の経営権を守るために、誰に仕事を任せたいと思うかである。実質株主を特定する独自データと委任状争奪の経験は簡単に購入できず、その部分の収益には普通のコンサルティング以上の持続力がある。
それでも、予測できる利益の範囲は広くない。2021年の高利益率が長続きしなかったことは、事業の需要と案件構成によって稼ぐ力が大きく変わる証拠である。AIエージェントが調査、資料作成、議決権予測を担うようになれば、顧客が払うのは作業時間への対価ではなく、独自情報と最終的な判断への対価になる。会社がこの変化に対応して利益率を維持できる可能性はあるが、それを当然のものとして高い価値を付けるべきではない。
オーナー利益を見ると、純現金の厚さは魅力である。しかし、株主の自由になる現金と、金融商品取引業者の自己資本規制や情報システム維持に必要な現金は異なる。現在の約48億円の純現金をすべて余剰資産として足すのではなく、規制と運転資金のための余裕を残す。成長投資の利益率が資本コストを超えることを確認できないなら、無理な買収より配当による還元を評価する。
現在の時価総額は約135億円であり、純現金を除いても事業に相当の稼ぐ力を期待している。過去最高の利益率へ復帰するという見込みだけでは、この価格に安全域は生まれない。筆者が長期保有を考えるなら、まず通常の調査業務が縮んでも利益を維持できること、証券代行の顧客が離れないこと、利益を株主へ戻す規律が続くことを確かめる。これらに確信が持てない限り、本質価値を現在の時価総額より高く評価する理由は乏しい。
何で稼ぐ会社か
同社の仕事は、上場企業の株主が誰で、どの議案にどう投票し、企業支配権を巡る局面でどう動くかを分析することである。2026年3月期の売上高61.4億円のうち、IR・SRコンサルティングが58.6億円と95.5%を占める。残りは統合報告書などの作成を支援するディスクロージャーコンサルティング1.9億円と、情報サービスなど0.9億円である。会計上は単一セグメントだが、長期価値を見るには収益の性質をさらに分ける必要がある。
最も付加価値が高いのは、アクティビスト対応、委任状争奪、TOB、M&Aに関わる有事案件である。2026年3月期の有事案件売上は24.3億円で、このうち5,000万円以上の大型案件は18件、売上14.4億円だった。大型案件の平均売上は約8,000万円になる。残る約9.9億円は通常規模の有事案件であり、案件数は非開示である。企業の存続や経営権が懸かった場面では助言の価値が大きくなる一方、大型案件を何件獲得できるかによって年間利益が大きく変動する。
平時案件は実質株主判明調査、議決権賛否予測、企業価値向上、資本政策、株主との対話を支援する継続的な仕事である。2026年3月期の平時案件売上は37.1億円だった。株主名簿に表示される信託銀行等の名義から実質保有者を推定するには、公開情報だけでなく機関投資家との継続的な接点が必要になる。同社は独自調査網を持つが、AIによる情報収集や分析の自動化が進むほど、人手による調査工程を料金に転嫁することは難しくなる。
証券代行は別の性質を持つ。株主名簿管理人として株式事務を担うため、企業の正規の記録を扱い、単なる調査報告書より業務の継続性が高い。2026年3月末時点で受託決定済み93社、管理株主数570,372名という実績がある。ただし証券代行だけの売上は開示されておらず、平時案件の中に含まれている。そのため、この分析では大手信託銀行の株主1人当たり手数料を参考に、証券代行の売上を約7.4億円と仮に分離した。
収益構造は設備より人材と情報基盤に依存する。2026年3月期の人件費は22.9億円、IT関連費は5.6億円、地代家賃は4.4億円、減価償却費は3.4億円である。高度専門人材の採用と情報管理の維持には継続的な費用が必要になる。AIが作業時間を減らすことは同社にも利益をもたらしうるが、削減された時間を顧客への付加価値として維持できるかが、将来の利益率を決める。
優良さと弱いところ
同社の最大の堀、つまり競合が簡単にはまねできない強みは、独自の株主・議決権データと、実際の企業支配権争奪で培った経験の組み合わせにある。2026年の会社資料では、40年を超えて蓄積した議決権・株主行動データ、国内外の機関投資家の投票履歴、約9,000の投資家ネットワーク情報などが紹介されている。実質株主を特定する調査工程も内製化しており、顧客の機密情報を扱う信頼関係が競争上の強みになる。
ただし、堀の強さを過大評価してはいけない。解約率が5%未満という実績や、調査・助言料金を物価以上に引き上げても顧客が維持されたという実績は確認できない。大型案件の実績も、翌年の受託を保証するものではない。議決権分析の精度や案件対応力は優れていても、一般的な調査・資料作成工程をAIが代替すれば、競争の基準は作業量から独自情報と実行能力へ移る。
財務は強い。2026年3月期の自己資本は61.2億円、純現金は47.9億円で、自己資本比率は約82%である。借金による存続リスクは小さく、景気が悪くなっても専門人材や情報システムへの投資を維持しやすい。一方、2019年3月期から2026年3月期に自己資本が約40億円から61億円へ増えたのに、純利益は約10億円から9億円へ減った。追加的に残した資本が十分な利益成長を生んだとは言い切れず、現金を多く持つことと増分の資本効率が高いことは区別すべきだ。
ガバナンス面には慎重さが必要である。2023年には元代表取締役副社長だった人物の取引推奨行為について、証券取引等監視委員会による告発があった。会社の現在の経営活動と過去の個人の嫌疑を混同すべきではないが、機密情報を扱う会社にとって情報管理への信用は事業資産そのものである。さらに代表取締役社長が議決権の過半数を持ち、少数株主が資本配分を変える力は限られる。事業の堀は普通より特徴的だが、全社を強い独占的企業として評価するほどの証拠はない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
同社の需要を支えるのは、日本の上場企業の株主構成の変化である。政策保有株の縮減、海外投資家の増加、アクティビストの活発化によって、企業は株主との対話と議決権確保を軽視できなくなった。EYの2026年上半期調査では、株主提案を受けた企業は132社に達し、アクティビストによる提案対象企業も増えている。企業買収の行動指針や公開買付け・大量保有報告制度の見直しも、専門的な助言を必要とする場面を増やしている。
顧客となりうる企業数には上限がある。2026年10月23日時点の東証上場会社は3,884社で、うちTOKYO PRO Marketも含まれる。平時の株主分析を外部へ委託する企業が仮に年間800〜1,400社、平均契約額が1,200万円なら、市場規模は約100〜170億円になる。これは公表された市場統計ではなく、上場会社数と想定利用率による試算である。大型の有事案件についても、国内の買収・議決権争奪等から年間200〜350件の高額助言機会を想定すると、会社が開示した18件は件数ベースで約5〜9%に相当する。ただし案件の定義が一致しないため、公式な市場シェアとは扱わない。
証券代行では三井住友信託銀行、三菱UFJ信託銀行、みずほ信託銀行が強い。三井住友信託銀行の上場会社受託社数は2026年3月末で1,674社であり、東証の上場会社数と単純比較すると約43%に相当する。アイ・アールジャパンの93社は約2.4%である。さらに大手信託銀行の証券代行関連手数料を管理株主数で割った単価を当社に当てはめると、当社の推定売上は約7.4億円となり、手数料市場でのシェアは1%未満という試算になる。大手との顧客規模の違いから、これらは厳密な比較ではない。
競争は事業ごとに異なる。買収助言では野村證券、大和証券、SMBC日興証券、外資系投資銀行や独立系FAが競合する。株主対応では信託銀行系の助言部門などと競い、議決権助言会社のISSやGlass Lewisが投資家の投票行動に影響を与える。開示資料の制作ではプロネクサスやTAKARA & COMPANYグループの事業との競争がある。これらの企業は開示区分が異なり、横並びの金額シェアは確認できない。
長期の最大の変化はAIエージェントによる業務代替である。公開情報の収集、株主構成の推計、投票予測、英文資料の作成は自動化が進むと考える。反対に、顧客の経営権を懸けた交渉や法的責任を伴う証券代行は、完全には自動化しにくい。物価が年3%上がる前提でも、価格の上昇が作業数量の減少をすべて補うとは考えない。企業統治改革によって市場が広がる力と、AIによって仕事の単価体系が変わる力の両方を見なければならない。
資本政策と M&A
株主還元の基本方針は、連結配当性向50%を目処とする業績連動配当である。2026年3月期の配当性向は55.3%で、2027年3月期については2026年9月に中間配当の増配予想が示された。ただし、子会社アイ・アールジャパンが第一種金融商品取引業者であるため、自己資本規制を満たす資本の確保が優先される。利益をすべて株主へ戻せる会社ではない。
公表された中長期戦略は、専門人材の採用、情報セキュリティ、AIとデータ基盤、新規事業、M&Aへの投資を重視する内容である。2026年の決算説明会資料では新卒初任給40万円への引き上げや、株主行動予測のAI化が示された。しかし、特定年度の売上高、営業利益、ROE、買収投資額、自社株買い額を拘束する中期経営計画の数値目標は確認できない。利益成長については数字の約束なしと扱う。配当性向50%は確認できる具体的な還元方針である。
2026年には株主から上限15億円規模の自社株取得提案が出されたが、取締役会は財務健全性と成長投資を理由に反対した。大株主である社長の持株比率は50.97%で、少数株主が還元策を主導するのは難しい。過去には高配当を実施して現金が減った時期もあり、還元の実績はある一方、機動的な自社株買いには慎重である。
事業拡大では2021年設立のJOIBを通じたM&A助言機能の整備が重要であり、今後は資本市場分野での買収も選択肢となる。2026年8月にはSMBC信託銀行との証券代行業務提携の解消が開示され、将来の証券代行事業の拡大には不確実性が生じた。現時点では大規模な買収に成功した事実や、その投資利回りを示す開示は確認できない。余剰現金は買収による拡大より、既存事業の強化と株主還元に使われることを基本の価値判断にした。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
日本の資本市場では、これからも企業支配権を巡る争いが増える。政策保有株の縮減とアクティビストの増加によって、従来は安定株主に支えられていた企業でも議決権の確保が課題になる。こうした局面で必要なのは一般的な経営助言ではない。実際の投票行動を予測し、企業買収の攻防で顧客を支援できる専門家である。
アイ・アールジャパンには長年蓄積した議決権データと海外投資家への調査網がある。実質株主の把握から投票シミュレーション、委任状争奪、M&Aの財務助言までを組み合わせられることは大きな強みだ。証券代行でも93社の受託が決まり、大手信託銀行に比べて小さな企業を対象に独自のサービスを提供できる余地がある。上場企業の数が減っても、1社当たりの株主対応の重要性は高まる可能性がある。
AIは必ずしも敵とは限らない。独自データを持つ企業がAIを活用すれば、情報収集や議決権予測を短時間で処理できる。資料の作成時間を減らすことで、少数の高度専門人材がより多くの顧客に対応できるようになる。ただし、AIを新しい収益商品として販売した実績はまだ確認できないため、将来の案件数量をAIによる成長で増やす前提にはしない。利益率の改善は、既存業務の生産性向上によって実現する筋書きである。
財務面にも余裕がある。純現金は約48億円あり、大規模な設備負担も重くない。好況期のように案件の付加価値が高まり、情報システム投資の効果が利益率へ表れれば、営業利益20億円を超える水準に戻る余地はある。高配当を維持しながら企業価値が拡大する可能性は、現在の利益だけを見るより大きい。
慎重な見方
同社の顧客が買っている価値のすべてが、独自データと企業支配権争奪の経験ではない。平時の実質株主判明調査、議決権の賛否予測、開示資料の作成などには、人が情報を探し、分析し、文書へまとめる工程が多い。AIエージェントが企業の社内システムや外部データを直接利用するようになれば、顧客はこれまで外部コンサルタントに委託していた仕事の一部を自ら処理できる。
独自データの蓄積も絶対的な独占ではない。株主の公開情報や機関投資家の行使方針にアクセスする技術が広がれば、情報の一部は模倣される。さらに大手信託銀行や証券会社は、証券代行、株主対応、M&A助言を既存顧客にまとめて提供できる。証券代行の受託会社数では大手との規模の差が極めて大きい。2026年のSMBC信託銀行との提携解消も、顧客獲得の仕組みを改めて構築する必要性を示している。
2021年3月期には40億円を超えた営業利益が、その後10億円台前半へ縮小した事実は重い。好況期の大型案件を取れなければ、専門人材の高い給与やシステム費用が利益率を圧迫する。会社は2026年から給与引き上げと積極採用を進めており、需要が減る局面でも費用を直ちには減らせない。AI活用による効率化が進まなければ、営業利益率は現在の水準を下回る。
資本配分にも不安がある。代表取締役社長が議決権の過半数を保有し、2026年の大型自社株取得提案には会社側が反対した。規制上必要な自己資本を守る合理性はあるが、余剰現金をいつ株主へ戻すかを少数株主は決められない。過去の取引推奨事件による信用上の傷も無視できない。事業の優良さが失われる場合、帳簿の自己資本が増えていても、それが株主にとって同額の価値を持つとは限らない。
どちらに重みを置いたか
議決権を巡る高難度の助言と証券代行には本物の強みがあり、一般的なコンサルティング会社より下値を支える資産も厚い。しかし、利益を大きく左右する平時調査と有事助言は、AIによる作業代替と顧客の内製化から自由ではない。AIによる縮小は中立の数量と長期成長率にすでに反映し、確率で重複して引かない。
確率は上側28%、中立32%、下側40%とした。下側を厚くしたのはAIの一般論ではなく、大型案件への依存、SMBC信託銀行との提携解消、過去の情報管理問題、支配株主が資本配分を決めるという会社固有の不確実性による。財務の強さを評価しても、現在の時価総額を正当化するには利益の持続性について相当強い確信が必要である。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 764 円136 億円(+ 還元の換算額還元の合計 230 円41 億円)。 今の値に割り戻すと 481 円86 億円、今との差 −33.7%、 期待の年率 +3.7%(資本コスト 8.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 1,507 円268 億円 | 377 円67 億円 | +159.5% | +11.5% | 188 円33 億円 |
| やや楽観 | 18% | 1,220 円217 億円 | 315 円56 億円 | +111.5% | +8.9% | 276 円49 億円 |
| 中立 | 32% | 839 円149 億円 | 236 円42 億円 | +48.2% | +4.6% | 344 円61 億円 |
| やや悲観 | 26% | 334 円59 億円 | 169 円30 億円 | −30.7% | −4.3% | 131 円23 億円 |
| 悲観 | 14% | 276 円49 億円 | 113 円20 億円 | −46.5% | −6.9% | 54 円10 億円 |
| 加重平均 | 100% | 764 円136 億円 | 230 円41 億円 | +36.9% | +3.7% | 994 円177 億円 |
今の株価時価総額 726 円129 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% 高付加価値の有事助言を守り、AIで生産性を高める 利益 16 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,507 円268 億円
日本企業へのアクティビストの働きかけと企業再編は長期にわたって活発に続く。企業は株主の支持を得るための専門家を必要とし、アイ・アールジャパンは独立性と実績を生かして高額案件を獲得し続ける。大型有事案件は年間18件、通常規模の有事案件も現在程度の仕事量を維持する。調査・助言案件がAIによって単純に増えるとは考えないが、料金を維持しながら作業時間と外注費を減らせる。
証券代行は大手信託銀行との競争にさらされながらも93社の受託基盤を維持する。SMBC信託銀行との提携解消後も既存顧客が残り、正規の株主名簿管理と独自の議決権データの価値が認められる。平時の株主分析は過去の実績を生かし、顧客の内製化に対抗できる。開示資料の作成でもAIを道具として使い、従業員1人当たりの生産性を引き上げる。
企業買収による大きな上乗せは織り込まず、既存サービスで売上高約81億円を達成する。給与水準の上昇や情報セキュリティ投資を吸収し、営業利益率は約27%まで高まる。過去最高の50%近い営業利益率には戻らなくても、十分に高い利益を確保する。余剰現金の一部を株主に還元しながら高い財務健全性を保つ10年となる。
- 大型有事PA・FA案件:数量 18.0(年間大型有事プロジェクト件数(件))× 価格 1.06(大型案件1件当たり売上(億円))→ 売上 19 億円・営業利益 7 億円。数量は現状維持、単価は1.328倍。高付加価値の交渉と成果を評価される。AIを新しい売上の成長要因には使わない。
- 通常規模の有事PA・FA案件:数量 50.0(年間通常有事案件の契約換算件数(件・推定))× 価格 0.26(契約換算1件当たり売上(億円))→ 売上 13 億円・営業利益 4 億円。推定案件数を維持し、単価は1.312倍。調査・資料作成費用の削減が利益率に効く。
- 平時SR・実質株主調査・エクイティ助言:数量 225(年間平時SR・株主分析契約の案件換算件数(件・推定))× 価格 0.16(案件換算1件当たり売上(億円))→ 売上 36 億円・営業利益 9 億円。AIで作業効率を上げるが、件数は現在相当を上限とする。単価は1.334倍。
- 証券代行・株主名簿管理:数量 93.0(証券代行の受託決定済み企業数(社))× 価格 0.11(受託企業1社当たり推定年間売上(億円))→ 売上 10 億円・営業利益 2 億円。記録の正本性を維持し、93社の継続を想定。単価1.338倍。
- ディスクロージャーコンサルティング:数量 100(年間報告書・開示制作案件の契約換算件数(件・推定))× 価格 0.03(制作案件1件当たり売上(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。案件数は維持し、制作工程の自動化で利益率を改善。
- データベース・情報サービス:数量 200(年間情報サービスの契約換算数(契約・推定))× 価格 0.00(1契約当たり年間売上(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。契約換算数を維持、価格は1.14倍。独自データへの需要を守る。
倍率:資本コストk=7.25%、10年より先の全社名目成長率g_long=0%、moat=normalである。10年後のROEは15.6÷117.2=13.3%。事業のROEは余剰現金65億円を自己資本から、同現金の税後利息0.91億円を純利益から除いて求める。RONIC=k+0.5×(事業ROE−k)とし、正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=13.7931倍を上限そのままに使う。gが0%なのでRONICによる倍率差は生じない。時価総額は(15.6−65×0.014)×13.7931+65=約267.62億円。65億円は現在の余剰現金20億円と、10年間の利益留保のうち事業に不要となった現金の見込みである。
確率:アクティビスト対応需要が高水準で続き、独自データと交渉機能への支払いも維持される必要がある。AIによる作業効率化が顧客の値下げ要求より強く働き、現在の案件数量を維持するという複数の好条件が必要なため10%とする。AI関連商品の実際の売上は確認できず、数量が現状を超える楽観は採用しない。
やや楽観 18% 有事需要が強く、平時業務の縮小を補う 利益 13 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,220 円217 億円
株主提案や買収を巡る企業側の防衛需要は続き、金融系列に属さない助言会社としての地位は維持される。大型の有事案件は年間16件となり、件数はわずかに減るが、案件単価は物価と専門性を反映して上昇する。通常規模の有事案件と平時SR調査はAIエージェントに一部の仕事を奪われるものの、経営陣が外部の専門家に判断を求める場面は残る。
証券代行は93社の受託基盤を維持する。株主名簿管理という業務の性質上、単なる調査サービスより料金を守りやすい。ただしSMBC信託銀行との提携解消によって新規顧客開拓の勢いは鈍く、新たな大規模成長は見込まない。開示制作と情報サービスは案件数が減るが、全体への影響は限定的である。
会社はAIへの投資を既存業務の効率化に役立て、人員当たりの売上と利益を維持する。売上高は約71億円、営業利益は約17億円へ改善する。2021年のような異例の好況には戻らないが、高額案件の稼ぐ力は十分残る。配当性向50%程度の還元を続けながら、余剰資金の一部を蓄積する10年となる。
- 大型有事PA・FA案件:数量 16.0(年間大型有事プロジェクト件数(件))× 価格 1.04(大型案件1件当たり売上(億円))→ 売上 17 億円・営業利益 5 億円。案件数量は現状の0.89倍、単価は1.30倍。
- 通常規模の有事PA・FA案件:数量 45.0(年間通常有事案件の契約換算件数(件・推定))× 価格 0.25(契約換算1件当たり売上(億円))→ 売上 11 億円・営業利益 3 億円。案件数量は現状の0.90倍、単価は1.27倍。
- 平時SR・実質株主調査・エクイティ助言:数量 195(年間平時SR・株主分析契約の案件換算件数(件・推定))× 価格 0.16(案件換算1件当たり売上(億円))→ 売上 30 億円・営業利益 6 億円。平時SR助言は0.87倍の契約換算数、単価1.30倍。
- 証券代行・株主名簿管理:数量 93.0(証券代行の受託決定済み企業数(社))× 価格 0.11(受託企業1社当たり推定年間売上(億円))→ 売上 10 億円・営業利益 2 億円。受託93社を維持し、名目単価1.32倍。
- ディスクロージャーコンサルティング:数量 80.0(年間報告書・開示制作案件の契約換算件数(件・推定))× 価格 0.02(制作案件1件当たり売上(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。契約換算数は0.80倍、単価1.23倍。
- データベース・情報サービス:数量 190(年間情報サービスの契約換算数(契約・推定))× 価格 0.00(1契約当たり年間売上(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。契約換算数は0.95倍、単価1.12倍。
倍率:k=7.25%、g_long=0%により正当化PERは13.7931倍。余剰現金55億円を自己資本と税後利息から除いて事業の収益性を評価する。10年後の全社ROEは11.1%で、資本コストを上回る。利益の質はkとmoatに反映済みなので、式の上限から任意に割り引かない。時価総額=(12.5−55×0.014)×13.7931+55=約216.79億円。
確率:資本市場改革と有事対応需要の拡大には実際の裏付けがある一方、従来の調査業務はAIで一部縮むとみる。大型案件の数量減少を小幅にとどめ、既存データの料金を守れる確率として18%とした。
中立 32% 専門性は残るが、工数型サービスは緩やかに縮む 利益 8 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 839 円149 億円
日本企業の株主対応需要は今後も続く。株主総会の議決権分析や買収への助言は必要とされるが、調査と文書作成の工程はAIエージェントが担う割合を増やす。大型有事案件は年間13件、通常規模の有事案件は34件相当へ減る。AIが顧客の内部で活用されることで、従来の作業時間に対する料金は減り、同社が受け取る対価は独自データ、助言、交渉の部分へ集中する。
平時SR助言は案件換算数が225件から150件へ減る。会社が保有する独自データは依然有用だが、公開情報の収集や投票予測だけでは差別化しにくくなる。証券代行は93社の受託を維持する。株主名簿の法的・業務的な正本性が需要を支える一方、大手信託銀行との競争により市場シェアの大幅な拡大は難しい。
会社は人材の配置を見直し、AIを使って調査・制作工程を減らすことで、需要縮小の一部を費用削減で補う。それでも人件費の上昇と情報管理の費用負担は残る。売上高は約56億円、営業利益は約11億円となり、利益率は現在に近い約20%を維持する。純利益は約8億円で、内部留保を積み上げながら配当性向50%程度の株主還元を続ける。事業は存続するが、高成長の再現はない10年である。
- 大型有事PA・FA案件:数量 13.0(年間大型有事プロジェクト件数(件))× 価格 1.03(大型案件1件当たり売上(億円))→ 売上 13 億円・営業利益 4 億円。AIエージェント代替の人月型。案件数は18件から13件へ0.72倍、単価は1.29倍。
- 通常規模の有事PA・FA案件:数量 34.0(年間通常有事案件の契約換算件数(件・推定))× 価格 0.25(契約換算1件当たり売上(億円))→ 売上 8 億円・営業利益 2 億円。AIエージェント代替の人月型。案件換算数0.68倍、単価1.24倍。
- 平時SR・実質株主調査・エクイティ助言:数量 150(年間平時SR・株主分析契約の案件換算件数(件・推定))× 価格 0.15(案件換算1件当たり売上(億円))→ 売上 23 億円・営業利益 3 億円。AIエージェント代替の人月型。案件換算数0.67倍、単価1.25倍。
- 証券代行・株主名簿管理:数量 93.0(証券代行の受託決定済み企業数(社))× 価格 0.10(受託企業1社当たり推定年間売上(億円))→ 売上 9 億円・営業利益 2 億円。記録の正本・規制対応型。受託93社維持で数量1.0倍、単価1.27倍。
- ディスクロージャーコンサルティング:数量 60.0(年間報告書・開示制作案件の契約換算件数(件・推定))× 価格 0.02(制作案件1件当たり売上(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替の人月型。数量0.60倍、単価1.15倍。
- データベース・情報サービス:数量 166(年間情報サービスの契約換算数(契約・推定))× 価格 0.00(1契約当たり年間売上(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替の席・画面型。数量0.83倍、単価1.09倍。
倍率:資本コストk=7.25%、長期の名目成長率g_long=0%から、正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=13.7931倍。10年後の全社ROEは8.0÷104.2=7.68%。余剰現金48億円を除く事業ROEはさらに高くなるが、超過利益の残る割合は通常の2分の1とする。gが0%のため正当化PERの結果は13.7931倍であり、これを上限そのまま使う。時価総額=(8.0−48×0.014)×13.7931+48=約149.08億円。現在の余剰現金20億円と10年間の利益留保を合わせ、将来の余剰現金を48億円と見積もる。
確率:有事対応需要が構造的に残ることと、AIによる調査・制作の代替が進むことを同時に満たす中心的な見通しである。証券代行93社の基盤は維持するが、全社の案件数量は減る。過去最高の利益率へ戻る証拠は不十分と考え、中立の確率を32%とした。
やや悲観 26% 調査業務の内製化と競争で利益率が低下 利益 4 億円 · PBR 1.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 334 円59 億円
AIエージェントの普及により、平時の実質株主判明調査や議決権予測の多くが顧客企業の内部で実施されるようになる。外部の専門家が必要な場面は残るが、調査工程の対価は減少する。平時SR助言は年間125件相当となり、通常規模の有事案件も25件相当まで減る。高額案件は年間10件となり、アクティビスト対応の市場全体が拡大しても、当社が仕事を確保する割合は下がる。
証券代行では一部顧客が大手信託銀行のサービスへ移る。受託決定済み企業数は79社となり、管理株主数と1社当たり単価も伸び悩む。SMBC信託銀行との提携解消後の販売力不足が表れた形である。開示制作とデータベースの契約数も縮み、制作事業は採算を維持できなくなる。
会社は人員削減や組織再編で固定費を減らすが、専門人材の維持、コンプライアンス、情報セキュリティの費用は残る。売上高は約42億円、営業利益は約5.5億円へ縮小する。純利益は約3.8億円となり、ROEは資本コストを下回る。配当は減額しながら維持されるが、これまでの高い利益率と成長期待を失い、帳簿の自己資本が増えても価値は大きく下がる。
- 大型有事PA・FA案件:数量 10.0(年間大型有事プロジェクト件数(件))× 価格 0.98(大型案件1件当たり売上(億円))→ 売上 10 億円・営業利益 2 億円。大口案件獲得で競争に負け、件数は0.56倍。
- 通常規模の有事PA・FA案件:数量 25.0(年間通常有事案件の契約換算件数(件・推定))× 価格 0.23(契約換算1件当たり売上(億円))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。通常有事案件の数量は半減し、価格上昇は限定的。
- 平時SR・実質株主調査・エクイティ助言:数量 125(年間平時SR・株主分析契約の案件換算件数(件・推定))× 価格 0.14(案件換算1件当たり売上(億円))→ 売上 17 億円・営業利益 2 億円。顧客の内製化で案件換算数0.56倍。
- 証券代行・株主名簿管理:数量 79.0(証券代行の受託決定済み企業数(社))× 価格 0.09(受託企業1社当たり推定年間売上(億円))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。受託企業は93社から79社へ減少。
- ディスクロージャーコンサルティング:数量 55.0(年間報告書・開示制作案件の契約換算件数(件・推定))× 価格 0.02(制作案件1件当たり売上(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。AI制作の普及で低採算化する。
- データベース・情報サービス:数量 140(年間情報サービスの契約換算数(契約・推定))× 価格 0.00(1契約当たり年間売上(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。席・画面型の情報サービスは契約数が減り、利益が残らない。
倍率:ROEは3.8÷95.2=約4.0%で、資本コスト7.25%を下回る。再投資で超過価値を生む力が失われるため、将来の自己資本全額に市場的なPBRを掛けない。床の物差しとして現在の自己資本61.2億円を使用し、0.97倍の約59.36億円とする。これは現在の純現金47.9億円を上回り、弱体化後の稼ぐ力と資産回収可能性の両方を考慮した保守的な価値である。将来の自己資本95.2億円に0.97倍を掛けない。
確率:AIによる単純工程の代替だけでなく、大手信託銀行や金融機関との競争、証券代行提携解消後の新規顧客開拓難が重なる筋書きである。市場全体の有事案件は存在しても、同社が獲得できる案件の比率が下がる会社固有の危険を考え26%とした。
悲観 14% AI代替と顧客喪失が重なり、専門企業としての優位を失う 利益 1 億円 · PBR 0.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 276 円49 億円
株主情報の収集、投票予測、開示資料の作成はAIエージェントや大手金融機関のシステムによって広く代替される。平時SR助言は85件相当まで縮小し、報告書作成事業とデータベース事業は赤字になる。大型の有事案件は年7件となり、通常規模の有事案件も18件相当しか獲得できない。会社は独自データを持ち続けるが、その利用に顧客が払う対価は小さくなる。
証券代行では競争と提携解消後の営業力不足が重なり、受託企業数が70社へ減少する。法令対応や株主名簿管理そのものはなくならないが、大手信託銀行との差を埋めることはできない。機密情報を扱う会社として必要なシステム費用とコンプライアンス費用を削れず、過去の高い利益率は戻らない。
売上高は約26億円まで減り、営業利益は1億円にも届かない。純利益は約0.5億円で、資本をほとんど有効に使えていない。業務の縮小に合わせて人員整理と投資抑制を行い、事業としては存続するものの、成長企業ではなくなる。10年の前半に実施した配当は株主の受取額として残るが、期末の価値は主として現金と売却可能な資産に支えられる。現在の純現金を下回るような安易な清算価値の引き下げは行わず、資産の床に近い価値まで低下する筋書きとする。
- 大型有事PA・FA案件:数量 7.0(年間大型有事プロジェクト件数(件))× 価格 0.87(大型案件1件当たり売上(億円))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。大型案件は7件へ減り、共通費負担で利益率5%。
- 通常規模の有事PA・FA案件:数量 18.0(年間通常有事案件の契約換算件数(件・推定))× 価格 0.20(契約換算1件当たり売上(億円))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。数量0.36倍、採算はほぼゼロ。
- 平時SR・実質株主調査・エクイティ助言:数量 85.0(年間平時SR・株主分析契約の案件換算件数(件・推定))× 価格 0.12(案件換算1件当たり売上(億円))→ 売上 10 億円・営業利益 0 億円。数量0.38倍。AIと顧客内製化により利益がほぼ消える。
- 証券代行・株主名簿管理:数量 70.0(証券代行の受託決定済み企業数(社))× 価格 0.08(受託企業1社当たり推定年間売上(億円))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。受託企業が70社へ減少し、設備・規制対応費用が残る。
- ディスクロージャーコンサルティング:数量 35.0(年間報告書・開示制作案件の契約換算件数(件・推定))× 価格 0.02(制作案件1件当たり売上(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。開示制作の仕事量が大幅に減り、撤退費用も残る。
- データベース・情報サービス:数量 100(年間情報サービスの契約換算数(契約・推定))× 価格 0.00(1契約当たり年間売上(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。契約数半減、価格低下、維持費用の負担で赤字。
倍率:ROEは0.5÷88.7=約0.56%であり、稼ぐ力による価値はほぼ消えている。正当化PERで将来の自己資本を評価せず、現在の自己資本61.2億円に対して0.80倍の約48.96億円とする。現在の純現金47.9億円をわずかに上回り、運転資本や現金回収可能性を含む資産の床に近い。これは過去の株式市場で付いたPBRから決めた倍率ではない。将来の自己資本88.7億円を分母として掛けず、将来留保された会計利益を稼ぐ力の床として二重に評価しない。
確率:従来型SR調査が構造的に縮小し、有事案件でも大手金融機関との競争に負け、証券代行の受託も減る複合シナリオである。財務の厚さにより直ちに存続不能とはならないが、専門サービスの優位を取り戻せない危険を14%とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
大型有事PA・FA案件
アクティビスト対応、TOB、支配権争奪、企業側M&A助言など、5,000万円以上の大型プロジェクト。高い専門性と交渉責任を伴うが、調査・助言工程はAIエージェント代替の人月・工数型に分類する。
| 数量年間大型有事プロジェクト件数(件) | 価格大型案件1件当たり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 18.0 | 0.80 | 14 | 5 |
| 10 年後 中立 | 13.0 | 1.03 | 13 | 4 |
取り方:2026年3月期決算説明資料および有報に、大型プロジェクト18件、売上14.37億円と開示されている。1件当たり売上は14.37÷18=約0.798億円。内訳はアクティビスト対応10.12億円、企業側FA2.63億円、支配権争奪PA・FA1.62億円。営業利益4.74億円は全社営業利益12.83億円を各サービスの直接原価と共通費の負担で推定配分した値であり、会社開示の個別利益ではない。高額案件の国内市場件数と正式なシェアは非開示。AIエージェント代替の人月・工数型として中立数量を現状の0.55〜0.75倍、価格を物価10年分の1.34倍以内で考える。
通常規模の有事PA・FA案件
大型案件以外のアクティビスト対応、買収対応、議決権確保等のプロジェクト。高額案件より資料作成、調査、分析などの反復工程が多いとみて、人月・工数型のAI代替リスクを強く反映する。
| 数量年間通常有事案件の契約換算件数(件・推定) | 価格契約換算1件当たり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 50.0 | 0.20 | 10 | 2 |
| 10 年後 中立 | 34.0 | 0.25 | 8 | 2 |
取り方:会社開示の有事対応案件24.28億円から大型案件14.37億円を引き、通常規模の有事案件売上を9.91億円とした。実際の契約件数は非開示である。EY調査の2026年上半期株主提案対象132社を市場需要の参考とし、買収・非公開提案・防衛助言を含む市場を考え、当社の通常規模の受託を年50件相当と仮定した。この場合1件当たり0.1982億円となり、大型案件の基準5,000万円を下回る。50件は実績ではなく契約換算の推定値であり、実案件数が増減すれば単価の推定も変わる。営業利益も推定配賦である。AIエージェント代替の人月・工数型を適用する。
平時SR・実質株主調査・エクイティ助言
実質株主判明調査、議決権予測、ガバナンス改善、資本政策助言等。独自データに強みがあるが、調査報告と分析の工数に対する支払いが中心であり、AIエージェント代替の人月・工数型とする。
| 数量年間平時SR・株主分析契約の案件換算件数(件・推定) | 価格案件換算1件当たり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 225 | 0.12 | 27 | 4 |
| 10 年後 中立 | 150 | 0.15 | 23 | 3 |
取り方:会社会計上のIR・SRコンサルティング売上58.64億円から、有事24.28億円と証券代行の独立推定7.40億円を引き、平時SR助言を26.96億円とした。証券代行7.40億円は会社開示ではなく同業手数料から推定したため、残余の26.96億円にも推計誤差がある。東証上場会社約3,884社に対し、外部SR助言の年間利用率約30%、当社のその市場における受託比率約19%を仮定すると約225件となる。1件単価は26.96÷225=約0.120億円。利用率、会社シェア、契約件数はいずれも公開統計で確認された値ではなく、案件数と市場規模を連動させるための推計である。中立数量はAI代替の人月型0.55〜0.75倍の範囲内とする。
証券代行・株主名簿管理
上場会社の株主名簿管理人として、株式事務、株主総会、株主データ管理を担う。上場規程に対応する正規の記録を扱い、長期に蓄積した独自の株主・議決権データと実務基盤を持つため、規制対応・記録の正本型として別に扱う。
| 数量証券代行の受託決定済み企業数(社) | 価格受託企業1社当たり推定年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 93.0 | 0.08 | 7 | 2 |
| 10 年後 中立 | 93.0 | 0.10 | 9 | 2 |
取り方:会社が開示する受託決定済み企業93社、管理株主570,372名を数量の根拠とした。三井住友トラストグループの2026年2月会社説明会には、2024年度の証券代行関連手数料547億円、2025年3月末管理株主数約4,200万人が記載されている。約1,300円/名・年という同業単価を570,372名に適用すると約7.4億円となり、93社で割ると1社約796万円となる。信託銀行の手数料には管理株主数に連動しない収入も含まれ、顧客規模と契約内容も異なるため、これは実際の証券代行売上を示すものではない。資料:https://www.rakuten-sec.co.jp/web/special/smth/pdf/pdf-02.pdf?20260304= 。AI分類は記録の正本・規制対応型とし、根拠は上場企業の正規名簿管理を担う基盤としての役割と、独自の株主・議決権履歴の蓄積である。ただし解約率と契約移行期間は未開示のため、全社の強い堀には拡張せず、中立数量は1.0倍以下、価格は1.15〜1.34倍の範囲に置く。
ディスクロージャーコンサルティング
統合報告書、株主通信、IR資料、M&A関連の英文・和文書類などの作成支援。制作・翻訳・情報整理の反復工程が多いため、AIエージェント代替の人月・工数型とする。
| 数量年間報告書・開示制作案件の契約換算件数(件・推定) | 価格制作案件1件当たり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.02 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 60.0 | 0.02 | 1 | 0 |
取り方:会社開示のディスクロージャーコンサルティング売上1.91億円を正とする。契約数は非開示。東証上場企業約3,884社のうち外部制作を利用する企業の割合を25%、その中で当社が獲得する案件の割合を約10%とする試算から年100件相当とし、1件の平均売上を191万円と推定した。プロネクサス、宝印刷系の競争とAIによる作成・翻訳自動化を考え、中立数量0.55〜0.75倍、価格は物価上昇より弱いとする。営業利益は共通費配賦後の推定。
データベース・情報サービス
IR-Pro、Stock Watch、投資家向け情報などのデータ提供と業務支援サービス。席課金・情報調査・画面操作型に近い部分が中心で、AIエージェントが直接データにアクセスする場合の利用契約減少を想定する。
| 数量年間情報サービスの契約換算数(契約・推定) | 価格1契約当たり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 200 | 0.00 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 166 | 0.00 | 1 | 0 |
取り方:会社開示のデータベース・その他売上0.86億円を使用する。契約数、契約単価、継続率は非開示である。東証上場会社約3,884社の一部と市場関係者を顧客母集団とし、年間200契約相当を仮定すると1契約43万円になる。これは検証可能な契約件数ではなく、将来の数量と単価を分けるための推計である。中立数量は席課金・画面型0.70〜0.90倍、価格は1.00〜1.15倍、10年より先は名目−1%程度というAIエージェント代替の型を適用する。
リスクと懸念
AIエージェント代替
平時の実質株主判明調査、議決権分析、公開情報収集、開示資料制作などは、AIエージェントが情報を集めて処理する業務へ変わりうる。同社の独自データは残っても、そのデータを使った人手の分析に従来と同じ料金を払う顧客が減る可能性がある。中立では人月型業務の実質数量を10年で0.55〜0.75倍とし、席・画面型の情報サービスも0.70〜0.90倍とする。AI代替の影響は数量、価格、g_longに反映し、資本コストの寿命と確率へ機械的に重ねない。
大型有事案件への依存
2026年3月期の大型案件は18件、売上約14.4億円である。全社売上の約23%を、件数の少ない高額案件が占めている。アクティビスト対応やM&A助言の契約時期は予測しにくく、企業再編が活発でも同社が獲得できなければ収益に結び付かない。大型案件の件数と平均単価を分けて監視し、案件の減少を平時案件の増収で補えるかを見る必要がある。
証券代行の規模劣位と提携解消
証券代行の受託企業は93社まで増えたが、三井住友信託銀行だけでも1,674社を受託している。大手信託銀行は名簿管理の設備、運用体制、既存顧客への営業で規模の利益を持つ。2026年8月に開示されたSMBC信託銀行との提携解消によって、顧客獲得の仕組みやサービス提供体制を改めて整備する必要が生じる可能性がある。契約移管や顧客流出が広がれば、記録の正本という堀の価値も弱くなる。
高人件費と情報システム投資
2026年3月期の人件費は22.9億円で、IT関連費も5.6億円ある。会社は専門人材の積極採用と給与水準引き上げを進めており、売上が伸びない場合には固定費が利益率を圧迫する。AIへの投資も初期には支出が先行する。需要減少に合わせて人員を適切に配置できなければ、売上の減少以上に営業利益が縮む。新リース会計基準の適用で賃借契約の見え方が変わっても、家賃という固定支出の負担はなくならない。
信用と情報管理
2023年には元代表取締役副社長だった人物に関する取引推奨事件が証券取引等監視委員会から告発された。現在の会社全体の行為と当該個人の嫌疑を同一視すべきではないが、議決権情報や買収に関する秘密を扱う企業では、情報管理への信用が受注能力に直結する。法令違反、情報漏えい、内部統制の欠陥が再発すれば、主要顧客と専門人材の流出を招き、利益の回復が難しくなるおそれがある。
支配株主と資本配分
代表取締役社長が議決権の過半数を保有しているため、少数株主が余剰現金の使途を変更させることは難しい。2026年の15億円規模の自社株買い提案には会社側が反対し、規制上の自己資本と成長投資を優先した。必要資本を守ることには合理性があるが、投資利回りの低い新規事業や買収へ資金を使えば、会計上の自己資本は残っても株主価値が増えない。配当性向50%の継続と投資案件の実行結果が重要になる。
市場構造の変化と顧客の内製化
上場会社数の減少、MBOによる非公開化、大手金融機関への助言業務の集約は、潜在顧客数に影響する。アクティビスト活動が増えても、企業のIR・法務・財務部門がAIを使って業務を内製化すれば、外部の調査・助言への支出が減る。逆に経営支配権を巡る案件が高度化すれば専門家への支払いは増えるため、単に市場の件数だけでは業績を予測できない。業務の難易度と顧客から受け取る単価を分けて確認する。
今後の分かれ目
- 大型有事案件が年間18件以上を複数年維持し、1件当たり売上も約8,000万円以上で推移したら
- 高難度の助言への需要と価格維持力が確認できる。中立の大型案件数量を引き上げ、やや楽観・楽観の確率を増やす。ただし一般的な調査案件のAI代替を打ち消す材料とは区別する。
- 証券代行の受託企業数がSMBC信託銀行との提携解消後も93社以上を維持し、管理株主数が継続して増加したら
- 記録の正本としての継続性と販売力への確信が高まる。証券代行の数量減少リスクを下げ、実際の売上と解約率が開示されれば、その部分の長期成長率を個別に見直す。
- 平時SR案件が増収でも契約換算数量が減り、平均単価の上昇だけに依存するようになったら
- AIエージェント代替による実質数量の縮小が進んでいると判断する。平時SRの数量を下げ、営業利益率と中立の純利益を再検討する。
- AIを組み込んだ独自サービスについて、外部顧客からの受注額と継続売上が明示され、数億円規模まで成長したら
- AIを単なる内部効率化ではなく新しい収益源として評価できる。確認された売上部分に限って楽観側の数量成長と長期成長率を引き上げる。研究開発計画や商品発表だけでは変更しない。
- 人材報酬とIT費用の増加に対して売上が伸びず、営業利益率が15%を継続して下回ったら
- AI利用による省力化が費用増加を補えていないと判断する。中立よりやや悲観に近い利益構造へ移り、資本効率と蓄積余剰現金を下方修正する。
- 配当性向50%以上を維持し、余剰現金を使った自社株取得や投資利回りの明確な開示が継続したら
- 資本配分への信頼が高まり、蓄積現金が少数株主の価値になる可能性を確認できる。還元額と事業への必要資本を再計算する。ただし現行の余剰現金の戻り方はすでに1.0なので、同じ現金を二重に上乗せしない。
- 大手信託銀行への証券代行顧客の移管が相次ぎ、受託社数が80社を下回ったら
- 証券代行の継続性に疑問が生じるため、やや悲観の受託79社という筋書きに近づいたと判断する。証券代行の単価と利益率を引き下げ、平時SRの顧客基盤にも波及するかを調べる。
見ておくもの
- 四半期・通期の大型有事案件の件数、売上金額、平均案件単価
- 有事対応案件と平時対応案件の売上高、通常プロジェクト売上高の推移
- 証券代行の受託決定済み企業数と管理株主数、顧客移管の有無
- AI関連商品・サービスの外部売上高、受注金額、継続課金の開示
- 人件費・IT関連費・減価償却費と売上高営業利益率の推移
- 配当性向、配当総額、自社株式取得、純現金と自己資本規制比率
- 2026年のSMBC信託銀行との証券代行提携解消後の営業・運用体制
- 日本の株主提案企業数、アクティビスト活動件数、M&A・TOB案件数
- 元役員の取引推奨事件に関連する情報管理・コンプライアンス体制の改善状況
- 株主構成、支配株主の持株比率、少数株主に関する資本政策の変更
倍率と資本コストの決め方
基準株価761円と純株式数17,763,376株から計算した現在の時価総額は約135.18億円である。10年後の収益は、開示された大型案件18件と証券代行93社を実数で用い、他のサービスは契約換算件数と平均単価を市場規模から推定した。証券代行の7.4億円は同業比較による推計であり、正式な売上内訳ではない。利益率は各サービスに共通費を配分した後の率とし、adjust_okuは0とした。
物価3%の10年分は名目単価にだけ含め、実質数量には含めない。人件費・家賃などの物価上昇と案件数減少に対応する人員の適正化を利益率に織り込んだ。2026年3月期の減価償却費3.36億円は機械的に1.34倍とせず、既存システムの償却と新たなAI・情報セキュリティ投資の償却を分け、10年後中立では概ね4億円前後の負担を想定する。日本基準の新リース会計基準によって将来の表示は変わるが、比較する営業利益は賃借費用を含む現在と同じ経済的な形で考える。
倍率は過去・現在・同業のPERやPBRではなく、k=7.25%、moat=normal、g_long=0%と事業のROEから求めた。楽観から中立までの正当化PERは13.7931倍で、上限から恣意的な割引は行わない。悲観側は現在の自己資本61.2億円と純現金47.9億円を床の基礎とし、将来積み上がる自己資本へ床のPBRを掛けていない。10年後の悲観時価総額48.96億円は純現金の床を上回り、還元との合計も現在の時価総額未満である。
10年の株主価値は各筋書きの時価総額を(1.0725)の10乗で、途中の累積還元を同じ利率の5乗で割り引き、10%・18%・32%・26%・14%の確率で平均した。現在価値は約96.20億円、基準時価総額との差は約−28.84%で、判定は「やや割高」となる。証券代行の推定売上や将来の人員削減効率には不確実性があるため、この差を小数点以下まで予測できるとは考えない。中立の需要・利益を現在株価へ逆算していない。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。共通前提の国債利回り3%と株式リスクプレミアム4.5%による基本7.5%から、財務の厚さによるquality−0.25%を反映した。βや時価総額の小ささは上乗せしない。個別の情報管理・経営支配・AI代替リスクは筋書きと確率に反映する。