結論
東京都競馬は、大井競馬場を持つ地主だ。競馬を開くのは特別区競馬組合で、会社は場内の土地と建物を貸し、馬券売上の 4.5% を賃料として受け取る。ほかに、全国の地方競馬をネットで売る SPAT4、物流倉庫の賃貸、遊園地を持つ。営業利益率は 37% と高い。
筆者の結論は割高だ。事業の質が悪いのではない。問題は資本の使い方にある。会社は大井競馬場の建て替えと千葉県市原市の新トレーニングセンターに、2033 年までに約 1,600 億円を投じる。今の時価総額(約 1,260 億円)より大きい額だ。賃料が上がる保証はなく、賃料を払う相手は大株主でもある公的な組合だ。
稼ぎの土台は固い。地方競馬の売上は 5 年連続で過去最高を更新し、SPAT4 と倉庫は伸びている。ただ、新しい建物の減価償却と借入の利息が 2033 年ごろから利益に乗る。中立の 10 年後は営業利益が 190 億円前後で、ROE は 7% 台にとどまる。資本コストの 8% に届かない。
今の株価は PER 12 倍で、この投資の重さをまだ織り込んでいないと筆者は見る。分かれ目は、再整備のあとに賃料の取り分を引き上げられるかどうかだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、まず見るのは「10 年後もこの稼ぎが残るか」だ。大井競馬場の土地と SPAT4 の仕組みは残る。賃料は馬券の売上に連動する。事業の質は悪くない。
だが、持ち続けたいかどうかは、資本の使い方で決まる。これまで会社は、ほぼ借金なしで高い利益率を出してきた。いまは 1,600 億円を投じ、財務は軽い状態から重い状態へ変わる。投じたお金に見合う賃料が入るかが分からないまま走り出す形だ。しかも賃料を払う相手は、自社の大株主でもある。
株主のものになる利益は、いま年 100 億円ほどある。建物が新しくなれば減価償却は増え、利息も払う。賃料が上がらなければ、利益の多くが設備の更新に消える。稼ぐ力は安定していても、株主が自由に使えるお金は思うほど増えないと筆者は見る。
安全域は薄い。今の値段は、投資が賃料の増加で報われる姿を前提にしているように見える。
何で稼ぐ会社か
事業は 4 つある。
中心は公営競技事業で、売上の約 7 割、利益の約 7 割を占める。大井競馬場の賃貸は、会社が持つ競馬場を特別区競馬組合に貸し、馬券売上の 4.5% を賃料としてもらう仕組みだ。契約は年度ごとに結び直す。馬券が売れるほど賃料が増えるので、会社はレースの勝ち負けを背負わない。SPAT4 は全国の地方競馬の馬券をスマホで買える仕組みで、会社が持ち、運営は関連会社のeパドックに任せている。ネット経由が売上の 9 割を超え、この手数料が稼ぎ頭に育った。伊勢崎オートレース場も会社が持ち、伊勢崎市に貸している。
倉庫賃貸事業は、品川区勝島と千葉県習志野市の茜浜に物流倉庫を持ち、物流大手に貸す。利益率は 6 割を超え、2025 年 12 月期の利益は 40 億円と前期より 15% 増えた。
遊園地事業は東京サマーランドとゴルフ練習場で、売上 38 億円に対し利益は 5 億円に満たない。冬から春は赤字で、夏に稼ぐ。サービス事業はウィラ大井などのオフィス賃貸で、売上は 24 億円だ。
全体では売上 418 億円、営業利益 154 億円。利益の約 2 割は倉庫が稼ぐ。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、立地と仕組みにある。大井競馬場は 1950 年に開設され、ナイター競馬のトゥインクルレースは 40 年の歴史を持つ。この場所は誰も作り直せない。SPAT4 は全国の主催者が共通で使う窓口で、他の仕組みに乗り換えにくい。
ただし、強い堀とまでは見ない。賃料を払う特別区競馬組合は、会社の大株主でもある。東京都が約 31%、組合が約 14% を持つ。契約は 1 年ごとの更新で、料率を決める力は会社だけにはない。組合は毎年 138 億円を 23 区に分配しており、賃料が上がれば組合の取り分が減る関係にある。
資本の使い方は、これから問われる。これまでは借金がほぼなく(純有利子負債は 32 億円)、高い利益率を保ってきた。ここから 1,600 億円の大型投資に踏み出す。自己資本 948 億円に対して重い。投資の稼ぎは公表されておらず、価値を増やす投資かどうかはまだ分からない。
弱みは、売上の約 7 割が競馬という一つの産業に偏ることだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
地方競馬は 5 年連続で売上が過去最高を更新した。2025 年度の総売得金は 1 兆 1,468 億円で、前年度比 1.6% 増にとどまる。伸びは鈍ってきた。
成長を作ったのはネット投票だ。売上の 9 割強が電話・ネット経由になり、競馬場に行かなくても馬券を買える。SPAT4 はこの波に乗った。ネット比率が頭打ちに近づくと、伸びは人口と一人あたりの賭け金で決まる。日本は人口が減る。筆者は、物価の上昇を除いた実質の売上は 10 年で横ばいから微減と見る。
大井競馬の 2025 年度の売得金は 2,075 億円で、全国の約 18% を占める。主催の組合は、2027 年度までの中期計画でダートグレード競走(全国から有力馬が集まる大レース)の格付け維持を掲げた。大レースの格が落ちれば客が減る。
倉庫は別の市場だ。東京港と羽田に近い勝島は物流の一等地で、稼働率が高い。ただ、新しい大型倉庫の供給は増えており、賃料が物価並みに上がり続ける保証はない。
10 年で効くのは、馬券の数量よりも、会社の取り分がどう決まるかだ。
資本政策と M&A
還元は、安定した配当が基本だ。中期経営計画(2026〜2030 年)は配当性向 35% を目安にする。自社株買いは計画に書かれていないが、2025 年 12 月に上限 41 億円の自社株買いと消却を実施した。
資本の使い道は 1 つに絞られる。中計は 5 年で約 750 億円を投じ、うち大井の再整備と市原トレーニングセンターの準備に約 400 億円を充てる。2026 年 9 月には、大井と市原を合わせて約 1,600 億円と見込む投資を決議した。2027〜2028 年に着工し、2033 年の完成を目指す。資金は自己資金と借入だ。会社はネット D/E(純負債÷自己資本)0.5 倍以内、A 格維持を掲げる。
筆者がいちばん気にするのは、この投資の見返りが示されていない点だ。賃料の料率を見直すかどうかも、会社は公表していない。
M&A は少ない。株主は東京都が約 31%、特別区競馬組合が約 14% と公的な安定株主が厚く、敵対的な買収は起きにくい。東京都が持ち株を手放す動きは確認できなかった。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
大井競馬場という場所が、賃料の土台になる。地方競馬の売上は 5 年連続で過去最高を更新し、大井の 2025 年度の売得金も 2,075 億円と最高水準にある。賃料は馬券売上の 4.5% で、馬券が売れるほど会社が稼ぐ。
SPAT4 はもっと強い。全国の主催者が共通で使う窓口で、地方競馬のネット比率はすでに 9 割を超えた。更新のたびに機能が増え、会員も増える。この手数料は、競馬場の改修では減らない。倉庫も堅い。勝島は東京港と羽田に近く、稼働率が高い。2025 年 12 月期は利益が 15% 増えた。
再整備は守りではなく、攻めの投資だ。厩舎を市原に移すと大井に空き地ができ、新しい娯楽施設を建てられる。都心の競馬場として観客を増やせば、売上が伸びる。会社は 2030 年に営業利益 190 億円、ROE 10% を掲げる。賃料の料率も、投資に見合う形に見直せる。組合は毎年 138 億円を分配する安定した立場にあり、料率を少し上げても両者が得をする設計は組める。
財務は軽い。自己資本比率は 75% で、純有利子負債は 32 億円。借入を増やしても A 格を保てる。
慎重な見方
投資が重すぎる。1,600 億円は今の時価総額を上回り、自己資本 948 億円の 1.7 倍に当たる。しかも、売上が増える根拠が示されていない。会社は賃料の見直しも、新しい施設の収益も公表していない。
建物が完成すれば、減価償却が年 30 億円前後増える。借入の利息も加わる。賃料の料率が据え置かれれば、利益は 2033 年以降に減る。
賃料を決める相手は、組合だ。組合は大株主で、東京都も大株主だ。公的な主体が、賃料の引き上げに応じる保証はない。組合の分配金は 5 年間 138 億円で横ばいなので、賃料を上げれば分配金が削られる。契約は 1 年ごとで、条件は毎年見直される。
成長も鈍る。地方競馬の売上は 2025 年度に 1.6% 増と、物価の伸びを下回った。実質では減っている。人口が減り、ネット比率が頭打ちになれば、馬券の売上は伸びにくい。遊園地は赤字の月が多く、プール需要は天候に左右される。投資の見返りが小さければ、ROE は 7% 台に落ち、資本コストを下回る。
どちらに重みを置いたか
稼ぎの土台については、強気の見方が正しい。ただ、この会社の価値を決めるのは土台より投資の見返りで、そこは慎重な見方が強い。見返りの開示が無く、賃料を決める相手が大株主である点を重く見て、確率を下側に寄せた。中立は賃料の取り分が 4.5% から 5.6% 前後へ上がる姿とした。それでも ROE は 7% 台で、資本コストに届かない。強気の筋書きが実現しても、今の値段をわずかに上回る程度だ。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 5,965 円1,553 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,631 円425 億円)。 今の値に割り戻すと 4,030 円1,050 億円、今との差 −17.0%、 期待の年率 +4.6%(資本コスト 7.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 10,534 円2,743 億円 | 2,354 円613 億円 | +165.5% | +10.3% | 902 円235 億円 |
| やや楽観 | 18% | 8,841 円2,302 億円 | 1,989 円518 億円 | +123.1% | +8.4% | 1,949 円508 億円 |
| 中立 | 36% | 7,245 円1,887 億円 | 1,697 円442 億円 | +84.2% | +6.3% | 3,219 円838 億円 |
| やや悲観 | 27% | 3,415 円889 億円 | 1,336 円348 億円 | −2.1% | −0.2% | 1,283 円334 億円 |
| 悲観 | 12% | 881 円230 億円 | 1,137 円296 億円 | −58.4% | −8.4% | 242 円63 億円 |
| 加重平均 | 100% | 5,965 円1,553 億円 | 1,631 円425 億円 | +56.5% | +4.6% | 7,596 円1,978 億円 |
今の株価時価総額 4,855 円1,264 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 賃料の取り分が上がり、大井の跡地も実を結ぶ 10 年 利益 168 億円 · PER 15.8 倍 · 株価時価総額 10,534 円2,743 億円
再整備が計画どおり 2033 年に終わり、大井は都心の競馬場として来場者を増やす。ダート競馬の大レースの格も保たれ、大井の売得金は実質で 2 割増える。組合は投資の回収に応じ、賃料の取り分を 4.5% から 6% 近くへ引き上げる。市原の貸付厩舎と大井の跡地の新施設も収益を生む。SPAT4 は会員を増やし続け、手数料収入は実質で 1 割余り伸びる。倉庫は勝島と茜浜で面積を広げる。減価償却は増えるが、賃料と手数料の増加がそれを上回り、営業利益は 260 億円ほどになる。借入は 500 億円弱で収まり、ROE は 10% 近くまで戻る。
- 大井競馬場の賃貸:数量 2,490(大井競馬の年間売得金(億円・実質))× 価格 1.74(当社の取り分の指数(今 1.0。料率の変化と物価を含む名目))→ 売上 195 億円・営業利益 78 億円。売得金 2 割増・料率 6% 近く
- SPAT4・伊勢崎オートなどの公営競技:数量 12,845(全国の地方競馬の年間売得金(億円・実質))× 価格 1.34(売得金あたりの当社収入の指数(今 1.0。物価を含む名目))→ 売上 303 億円・営業利益 124 億円。会員増で手数料収入が実質 12% 増
- 倉庫賃貸:数量 97.5(貸し出す床面積(千坪・推定))× 価格 10(1 坪あたり年間賃料(万円・名目))→ 売上 102 億円・営業利益 69 億円。面積 25% 増・賃料は物価並み
- 遊園地(東京サマーランド・ゴルフ練習場):数量 105(年間の利用者数(万人・推定))× 価格 5,069(1 人あたり売上(円・名目))→ 売上 53 億円・営業利益 8 億円。利用者 5% 増
- サービス事業(オフィス賃貸など):数量 16.2(貸し出す床面積(千坪・推定))× 価格 24(1 坪あたり年間収入(万円・名目))→ 売上 40 億円・営業利益 7 億円。貸床 25% 増
倍率:事業の純利益 168 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.5% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.8 倍。全体の PER 15.84 倍、時価総額 2,661 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:再整備の成功、料率の引き上げ、ネット投票の伸びが 10 年のうちにそろう必要があり、会社の中計(営業利益 190 億円・ROE 10%)を上回る姿なので、1 割に届かない 7% とした。
やや楽観 18% 料率は上がるが、投資の重さが利益を削る 10 年 利益 142 億円 · PER 15.1 倍 · 株価時価総額 8,841 円2,302 億円
再整備は予定どおり終わる。大井の売得金は実質で 8% 増え、SPAT4 も小幅に伸びる。賃料の取り分は 4.5% から 5.8% 近くまで上がるが、投資の全額を賄うほどではない。新しい建物の減価償却と借入の利息で、利益の伸びは売上の伸びより小さくなる。倉庫は物価並みに賃料が上がり、面積も少し増える。遊園地は新しい催しで利用者を保ち、赤字を脱する。営業利益は 225 億円前後、純利益は 140 億円台で、ROE は 8% 台にとどまる。会社の中計に近い姿だが、ROE が資本コストをわずかに超える程度で、投資の見返りは薄い。大井の跡地の新施設は、収益になるまでに時間がかかる。
- 大井競馬場の賃貸:数量 2,241(大井競馬の年間売得金(億円・実質))× 価格 1.72(当社の取り分の指数(今 1.0。料率の変化と物価を含む名目))→ 売上 173 億円・営業利益 59 億円。売得金 8% 増・料率 5.8% 近く
- SPAT4・伊勢崎オートなどの公営競技:数量 12,043(全国の地方競馬の年間売得金(億円・実質))× 価格 1.34(売得金あたりの当社収入の指数(今 1.0。物価を含む名目))→ 売上 284 億円・営業利益 114 億円。実質 5% 増
- 倉庫賃貸:数量 90.5(貸し出す床面積(千坪・推定))× 価格 10(1 坪あたり年間賃料(万円・名目))→ 売上 95 億円・営業利益 63 億円。面積 16% 増
- 遊園地(東京サマーランド・ゴルフ練習場):数量 100(年間の利用者数(万人・推定))× 価格 5,069(1 人あたり売上(円・名目))→ 売上 51 億円・営業利益 6 億円。利用者横ばい
- サービス事業(オフィス賃貸など):数量 14.6(貸し出す床面積(千坪・推定))× 価格 24(1 坪あたり年間収入(万円・名目))→ 売上 36 億円・営業利益 6 億円。貸床 12% 増
倍率:事業の純利益 142 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.5% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.1 倍。全体の PER 15.12 倍、時価総額 2,147 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:再整備が順調で、組合も料率の引き上げに応じる中で、重い償却と利息が効く筋書き。中計に近いが、投資の回収は薄いと見て、中立より少し軽い 18% とした。
中立 36% 賃料の取り分は 5.6% 前後に上がるが、償却と利息が利益を削る 10 年 利益 117 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 7,245 円1,887 億円
再整備は 2033 年に終わる。人口減で大井の売得金は実質で 3% 減るが、物価の分は賃料に乗る。組合は投資の一部を認め、賃料の取り分を 4.5% から 5.6% 前後に引き上げる。SPAT4 は実質でわずかに減るものの、手数料は物価並みに上がる。倉庫は面積を 1 割ほど広げる。遊園地は人口減で利用者が減り、利益は 5 億円ほどにとどまる。減価償却が年 30 億円前後増え、借入の利息も 18 億円ほど払う。営業利益は 190 億円弱、純利益は 117 億円で、今よりわずかに増えるだけになる。純負債は 560 億円ほどに膨らみ、ROE は 7% 台に下がる。
- 大井競馬場の賃貸:数量 2,013(大井競馬の年間売得金(億円・実質))× 価格 1.68(当社の取り分の指数(今 1.0。料率の変化と物価を含む名目))→ 売上 152 億円・営業利益 44 億円。売得金 3% 減・料率 5.6% 前後、償却増で利益率 3 割弱
- SPAT4・伊勢崎オートなどの公営競技:数量 11,125(全国の地方競馬の年間売得金(億円・実質))× 価格 1.34(売得金あたりの当社収入の指数(今 1.0。物価を含む名目))→ 売上 262 億円・営業利益 100 億円。実質 3% 減・手数料は物価並み
- 倉庫賃貸:数量 84.2(貸し出す床面積(千坪・推定))× 価格 10(1 坪あたり年間賃料(万円・名目))→ 売上 88 億円・営業利益 57 億円。面積 8% 増
- 遊園地(東京サマーランド・ゴルフ練習場):数量 95.0(年間の利用者数(万人・推定))× 価格 5,069(1 人あたり売上(円・名目))→ 売上 48 億円・営業利益 5 億円。利用者 5% 減
- サービス事業(オフィス賃貸など):数量 14.0(貸し出す床面積(千坪・推定))× 価格 24(1 坪あたり年間収入(万円・名目))→ 売上 34 億円・営業利益 5 億円。貸床 8% 増
倍率:事業の純利益 117 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.5% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.3 倍。全体の PER 14.25 倍、時価総額 1,667 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:売上は物価で伸びるが、再整備の償却と利息が増加分の多くを食う姿が、会社の公表する 2030 年の目標と投資の重さから最も自然に導かれる。賃料の見直しは未公表で、慎重な見方が強いことも踏まえ、最大の 36% とした。
やや悲観 27% 料率は小幅な上げにとどまり、売上も減る 10 年 利益 69 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 3,415 円889 億円
再整備は完成するが、組合は賃料の取り分を 4.95% までしか上げない。人口減とネット比率の頭打ちで、大井の売得金は実質で 15% 減る。SPAT4 の手数料も、実質では 1 割余り減る。倉庫は新しい大型倉庫の供給で、賃料の伸びが物価を下回る。遊園地は利用者が減って赤字に近づく。大井の賃貸は減価償却を賄いきれず、利益がほとんど残らなくなる。営業利益は 120 億円台、純利益は 70 億円前後で、ROE は 5% を割る。借入は 700 億円に達し、利息の負担が重い。配当は維持するが、自社株買いに回す余力はなくなる。
- 大井競馬場の賃貸:数量 1,764(大井競馬の年間売得金(億円・実質))× 価格 1.47(当社の取り分の指数(今 1.0。料率の変化と物価を含む名目))→ 売上 117 億円・営業利益 9 億円。売得金 15% 減・料率 4.95%、償却を賄えず
- SPAT4・伊勢崎オートなどの公営競技:数量 10,093(全国の地方競馬の年間売得金(億円・実質))× 価格 1.34(売得金あたりの当社収入の指数(今 1.0。物価を含む名目))→ 売上 238 億円・営業利益 83 億円。実質 12% 減
- 倉庫賃貸:数量 78.0(貸し出す床面積(千坪・推定))× 価格 10(1 坪あたり年間賃料(万円・名目))→ 売上 79 億円・営業利益 47 億円。面積横ばい・賃料の伸びは物価を下回る
- 遊園地(東京サマーランド・ゴルフ練習場):数量 85.0(年間の利用者数(万人・推定))× 価格 5,069(1 人あたり売上(円・名目))→ 売上 43 億円・営業利益 2 億円。利用者 15% 減・赤字に近づく
- サービス事業(オフィス賃貸など):数量 13.0(貸し出す床面積(千坪・推定))× 価格 24(1 坪あたり年間収入(万円・名目))→ 売上 31 億円・営業利益 4 億円。貸床横ばい
倍率:ROE 4.7% は k 7.5% 以下で、正当化 PER の上限は 1÷k = 12.5 倍。稼ぎが細り、償却と利息の負担が重い筋書きなので、上限の約 8 割(10.0 倍)に置いた。
確率:人口減と相手の交渉力で賃料が伸びず、重い投資だけが残る筋書き。投資の見返りが示されていない点、賃料を決める相手が大株主である点から、中立に近い 27% とした。
悲観 12% 競馬の需要が縮み、投資だけが残る 10 年 利益 27 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 881 円230 億円
ネット比率が頭打ちになり、若い客も増えず、大井の売得金は実質で 3 割減る。ダート競馬の大レースの格が落ち、観客が離れる。SPAT4 も売上が 4 分の 1 減り、手数料率も競争で下がる。組合は経営が苦しくなり、賃料の取り分を 4.5% から 4.3% 前後へ下げるよう求める。会社は整備を縮めて投資を 1,300 億円で止めるが、償却と利息は残る。倉庫は供給過剰で賃料が下がり、遊園地は赤字に沈む。営業利益は 60 億円弱、純利益は 30 億円足らずまで落ち込む。もはや安定した賃貸会社ではなく、重い設備を抱えた会社になる。
- 大井競馬場の賃貸:数量 1,453(大井競馬の年間売得金(億円・実質))× 価格 1.27(当社の取り分の指数(今 1.0。料率の変化と物価を含む名目))→ 売上 83 億円・営業利益 −16 億円。売得金 3 割減・料率 4.3% 前後、赤字
- SPAT4・伊勢崎オートなどの公営競技:数量 8,602(全国の地方競馬の年間売得金(億円・実質))× 価格 1.30(売得金あたりの当社収入の指数(今 1.0。物価を含む名目))→ 売上 197 億円・営業利益 59 億円。実質 25% 減・手数料率も低下
- 倉庫賃貸:数量 71.8(貸し出す床面積(千坪・推定))× 価格 9.36(1 坪あたり年間賃料(万円・名目))→ 売上 67 億円・営業利益 34 億円。供給過剰で賃料が下がる
- 遊園地(東京サマーランド・ゴルフ練習場):数量 70.0(年間の利用者数(万人・推定))× 価格 4,918(1 人あたり売上(円・名目))→ 売上 34 億円・営業利益 0 億円。利用者 3 割減・利益ゼロ
- サービス事業(オフィス賃貸など):数量 12.0(貸し出す床面積(千坪・推定))× 価格 22(1 坪あたり年間収入(万円・名目))→ 売上 26 億円・営業利益 3 億円。貸床 8% 減
倍率:ROE 2.1% は k 7.5% 以下で、上限は 1÷k = 12.5 倍。床は簿価でなく稼ぐ力で測る。純利益 27 億円 ÷ k 7.5% = 約 340 億円の約 7 割(8.5 倍)に置いた。やや悲観の 10.0 倍より低く置く。大井の賃貸契約と倉庫は残るが、重い設備を抱えるので積み上げた自己資本をそのままの価値とは見ない。
確率:競馬の需要の縮みと、賃料を決める相手が大株主で交渉力を持つこと、投資の失敗が同時に起きる構造的な負けで、起きれば深い。確率は 1 割強とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
大井競馬場の賃貸
大井競馬場を特別区競馬組合に貸し、馬券売上の一定割合(原則 4.5%)を賃料として受け取る。
| 数量大井競馬の年間売得金(億円・実質) | 価格当社の取り分の指数(今 1.0。料率の変化と物価を含む名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2,075 | 1.00 | 93 | 41 |
| 10 年後 中立 | 2,013 | 1.68 | 152 | 44 |
取り方:2025 年度の大井の売得金 2,075 億円に賃料率 4.5% を掛けると約 93 億円。数量は馬券の売れた額で、物価の分を除いた実質で置く。価格の欄は当社の取り分の指数で、物価の分と料率の見直しの分が入る。中立は物価で 1.34 倍に、再整備のあとの料率引き上げで 1.25 倍を重ねる(賃料の見直しは公表されておらず推定)。公営競技 297 億円のうち、この賃料と残りの按分、および利益率 44% は開示が無く推定。
SPAT4・伊勢崎オートなどの公営競技
全国の地方競馬のネット投票システム SPAT4 の手数料、伊勢崎オートレース場の賃貸、場外発売の収入など。
| 数量全国の地方競馬の年間売得金(億円・実質) | 価格売得金あたりの当社収入の指数(今 1.0。物価を含む名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 11,469 | 1.00 | 202 | 81 |
| 10 年後 中立 | 11,125 | 1.34 | 262 | 100 |
取り方:公営競技事業の売上 297 億円から、大井の賃料 93 億円と連結の消去を引いた約 202 億円を、全国の地方競馬の売得金 1 兆 1,469 億円で割ると約 1.8%。この按分と利益率 40% は開示が無く推定。数量は実質の売得金、価格は物価で 10 年 1.34 倍。SPAT4 の手数料率は物価並みに上がると置く。
倉庫賃貸
品川区勝島・千葉県習志野市の茜浜などの物流倉庫を物流大手などに貸す。
| 数量貸し出す床面積(千坪・推定) | 価格1 坪あたり年間賃料(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 78.0 | 7.80 | 61 | 40 |
| 10 年後 中立 | 84.2 | 10 | 88 | 57 |
取り方:売上 61 億円を、東京湾岸の大型倉庫の賃料水準(月の坪単価で 6 千円台の見当)で割ると貸床は約 7.8 万坪。面積は開示が無く推定。数量は床の広さ、価格は賃料で物価並みに上がる(10 年 1.34 倍)。
遊園地(東京サマーランド・ゴルフ練習場)
プールを主体とする東京サマーランドとゴルフ練習場の入場・利用収入。
| 数量年間の利用者数(万人・推定) | 価格1 人あたり売上(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 100 | 3,783 | 38 | 5 |
| 10 年後 中立 | 95.0 | 5,069 | 48 | 5 |
取り方:売上 38 億円を、1 人あたり 4 千円弱と置いて逆算した利用者数で、開示が無く推定。数量は人口減とプール需要で増えにくく、価格は物価並み(10 年 1.34 倍)。
サービス事業(オフィス賃貸など)
ウィラ大井などのオフィス・商業ビルの賃料と周辺のサービス収入。
| 数量貸し出す床面積(千坪・推定) | 価格1 坪あたり年間収入(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 13.0 | 18 | 24 | 3 |
| 10 年後 中立 | 14.0 | 24 | 34 | 5 |
取り方:売上 24 億円を、都心に近いオフィスの賃料水準(月 1.5 万円前後の坪単価)で割った貸床。面積は開示が無く推定。価格は物価並みに上がる(10 年 1.34 倍)。
リスクと懸念
再整備の投資が回収できない
大井と市原の整備費は約 1,600 億円で、今の時価総額と自己資本のどちらよりも大きい。賃料の見直しも新しい施設の収益も公表されていない。完成後は減価償却が年 30 億円前後増え、借入の利息も乗る。見返りが小さければ ROE は資本コストを下回る。
賃料を決める相手が大株主
賃料を払う特別区競馬組合は会社の約 14% を持ち、東京都は約 31% を持つ。契約は年度ごとの更新で、料率は原則 4.5%。組合は毎年 138 億円を 23 区に分配しており、料率を上げれば組合の取り分が減る。交渉で会社が思うように料率を上げられない恐れがある。
地方競馬の需要が頭打ちになる
2025 年度の地方競馬の売得金は前年度比 1.6% 増で、物価の伸びを下回った。ネット投票は売上の 9 割強に達し、これ以上の上積みは限られる。人口減と若い客の少なさが続けば、実質の売上は縮む。会社の稼ぎの約 7 割が競馬に連動する。
SPAT4 の更新費と依存
SPAT4 の更新周期は、アクセス増に備えて従来の 5 年から 3.5 年に短縮された。更新のたびに大きな投資が要る。手数料は全国の地方競馬の売得金に連動するため、主催者の増減や制度の見直しにも左右される。
借入の増加と金利
今の純有利子負債は 32 億円と軽いが、投資の進み方によっては数百億円に増える。借入は借り換えのたびに 3.5% 前後の金利になる。会社はネット D/E 0.5 倍以内を目標にするが、中立でも純負債は EBITDA の 2 倍前後に達する。
ダートグレード競走の格付け
大井の集客と売得金は、全国から有力馬が集まる大レースに支えられる。主催の組合は格付けの維持を中期計画に掲げている。格付けが下がれば、売得金と賃料に響く。
遊園地と倉庫の個別の事情
遊園地は冬から春に赤字で、天候とプール需要に左右される。倉庫は勝島の稼働率が高いが、湾岸で新しい大型倉庫の供給が増えている。賃料が物価並みに上がり続けるとは限らない。
今後の分かれ目
- 再整備のあとに賃料の料率を引き上げる合意が公表される
- 投資の見返りが見え、10 年の強気の筋書きに近づく。ROE が資本コストを超える可能性が出る。
- 賃料の料率が 4.5% のまま据え置かれる
- 減価償却と利息だけが増え、10 年は慎重な筋書きに近づく。利益は 2033 年以降に減る。
- 地方競馬の売得金が、物価を下回る伸びのまま止まる
- 実質の売上が縮み、大井の賃料と SPAT4 の手数料の伸びが鈍る。10 年は慎重な側に寄る。
- 大井の跡地に新しい収益施設の具体案が出る
- 賃料以外の収益が生まれ、投資の回収に使える。確度は筋書きの上側に動く。
- ダートグレード競走の格付けが下がる
- 大レースの集客と売得金が落ち、賃料に響く。悲観側の確率が上がる。
- 投資の資金が借入に偏り、純負債が自己資本の半分に近づく
- 利息の負担が重くなり、配当と自社株買いの余力が減る。中計の財務目標(ネット D/E 0.5 倍以内)との整合が問われる。
見ておくもの
- 大井競馬場の賃貸借契約の料率と、再整備のあとの見直し(決算短信・有価証券報告書)
- 地方競馬の総売得金とネット比率(地方競馬全国協会の年度発表)
- 再整備・市原トレーニングセンターの工事の進み方、整備費の見直し
- 純有利子負債とネット D/E の推移
- SPAT4 の会員数・システム更新費、倉庫の稼働率
倍率と資本コストの決め方
自己資本は今の値に純利益を足して還元を引いて流し(ROE は結果)、ROE が資本コスト 7.5%(基本 7.5% に 4 つの目安の合計 +0.5%)を超える分は先で薄れるとして(残る割合 1/2)、g 4% の利益ベースの正当化 PER を出した。中立は ROE が 7% 台で k 以下なので上限は 1÷k の 12.5 倍とし、その約 8.5 割に置いた。やや楽観・楽観は式の上限の約 9 割。やや悲観・悲観は ROE が k 以下で、約 8 割と稼ぐ力の 9 割弱に置いた。今の PER や PBR、他社の倍率は使っていない。この会社は店舗などを借りる側ではなく貸す側(賃貸)なので、新リース会計基準で営業利益や自己資本の形が大きくは変わらない。10 年後の数字は今と同じ形でそろえた。含み益は開示が確認できず入れていない。結論を今の株価に寄せてはいない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.4→15.84 倍・やや楽観 PER 11.6→15.12 倍・中立 PER 10.6→14.25 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。