結論
Green Earth Instituteは、微生物の働きを利用して石油以外の原料から化学品や燃料を作る技術を開発する会社だ。筆者の結論は「やや割高」である。技術の蓄積には見るべきものがあるが、それを継続的な事業利益へ変える道筋はまだ証明されていない。
同社の強みは、地球環境産業技術研究機構から受け継いだ発酵技術と、研究室から量産設備までをつなぐ開発経験にある。NEDOの支援で整備したバイオファウンドリは、外部企業の菌体や生産工程を商業化へ近づける実験設備だ。2027年度から外部向けサービスを本格化する計画で、成功すれば国の研究開発事業に依存してきた収入を民間企業からの継続収入へ置き換えられる。
ただし、技術が優れていることと、その技術が株主の利益を生むことは別である。2025年9月期は売上高約11億円に対し営業利益がほぼゼロで、純利益の黒字には営業外の助成金収益が大きく寄与した。2026年9月期第3四半期累計では営業損失が約3.83億円へ拡大している。16件の開発パイプラインは魅力的だが、大半はまだ製造販売による安定収入の段階にない。
10年後は、化粧品原料などの生産受託と、木質バイオマス由来燃料の技術供与が収益の中心になると考える。中立では会社全体の売上高約38億円、純利益約3.35億円を見込むが、立ち上がりが遅れる場合も十分にある。既存株主の潜在的な希薄化を反映した現在価値は約21億円で、基準時点の時価総額約29億円を約26%下回る。公的資金を含む現金の厚さは下値を支えるが、その全額が自由に還元できる資産ではない。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主がまず問い掛けるのは、十年後の顧客が同社にどんな仕事を任せ、その対価を継続的に支払うのかということである。石油以外の原料で化学品を作る需要は消えにくい。だが、需要が残ることだけでは株主に利益は残らない。製造工程の採算が取れず、顧客が商用化を見送れば、優れた発酵技術でも研究費を消費し続ける。
競争上の堀の候補は、菌体と発酵条件の知識、規模を変えた時の試行錯誤、共同開発から得た経験にある。茂原の実証設備を通じて顧客の工程が同社の技術を前提に設計されれば、切り替えに手間がかかる。それでも特許だけで数十年間の高収益が保証されるわけではない。量産工程は顧客が取得したり、競合の製造受託企業へ移ったりする可能性がある。
オーナー利益の観点では、2025年9月期の純利益約1.3億円を平常時の稼ぐ力とは考えない。営業外の補助金に依存しない利益が増え、設備の減価償却と更新投資を払った後も現金が残る状態が必要だ。会社が目指す製造型事業への転換は成功すれば大きいが、その実証のために株主資本を長年拘束するなら、再投資の利回りは資本コストと比較しなければならない。
純現金が厚く、買収の失敗で多額の負債を抱えた企業ではないことは評価できる。しかし、国策の受託資金や工場建設に必要な資金は、少数株主が自由に引き出せる余剰現金ではない。将来の売上を過大に見込まず、現在の株価が示す期待より低い収益でも保有価値があるかを問うと、安全域は十分とは言えない。事業の成功と、今の価格で持つことの魅力は分けて判断すべきだ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの仕組みは、顧客が持つ微生物や原料を事業化するための研究開発費を受け取り、量産に成功した後には製造売上や技術使用料を得るというものだ。技術の出発点は、地球環境産業技術研究機構で長年研究されたRITE Bioprocessである。微生物の性質を改良し、発酵槽の中で狙った物質を効率よく作る技術を核にしている。
会社は2026年の中長期ビジョンで、事業を開発型バイオファウンドリ、生産型バイオファウンドリ、テクノロジーパッケージの三つに整理した。ただし、会計上の報告セグメントは単一であり、この三分類の過年度売上高と営業利益は独立して開示されていない。本分析の現在値の三分割は、直近の事業別開示と案件数を使った推計である。
開発型は、企業や大学から菌体開発、発酵条件の改善、試作、量産可能性の検証を請け負う。千葉県茂原市のバイオファウンドリは最大3000リットル級の発酵設備を持ち、NEDOによれば2026年6月までに17件の生産実証に取り組んできた。研究成果を量産の入口まで運べる設備は価値があるが、研究開発費だけでは設備の維持費と研究員の人件費を十分に賄えないおそれがある。
生産型は、化粧品原料、食品添加物、飼料添加物などを実際に作り、販売または製造受託で稼ぐ構想である。2026年6月末には10製品の生産を検討しているが、検討案件と収益を上げる製品は同じではない。会社が示す高付加価値品の目安は1キログラム当たり1000円から1万円超、製造規模は数十トンまでである。発酵収率と精製費が量産でどう変わるかが採算を決める。
テクノロジーパッケージは、菌体や生産工程の技術を顧客に提供し、一時金やライセンス料、事業の進行に応じた収益を得る。日本製紙、住友商事、日本航空が関わる森空プロジェクト、大王製紙との開発、電源開発とのインドネシア案件が代表例だ。バイオエタノールは航空燃料そのものではなく、その原料となり得る中間製品である。工場全体の製品売上がそのまま同社に帰属するわけではないため、契約で取り決めた技術対価こそが企業価値を左右する。
優良さと弱いところ
技術の蓄積は本物だが、幅の広い経済的な堀ができたと判断するには早い。発酵の研究では、実験室で良い結果が出ても、大型設備では不純物の混入、収率の低下、熱や水の使用量増加が起こり得る。同社は研究から実証までを手掛け、2026年7月には木質バイオマスを用いた連続同時糖化発酵で34日間の連続運転を公表した。これは単なる研究構想より一歩進んだ証拠である。
さらに、NEDO案件を通じて整えた設備と、顧客企業との共同開発経験には参入障壁がある。茂原のバイオファウンドリを使った17件の実証経験が再利用できるなら、新しい顧客の試作期間を短縮できる可能性がある。しかし、競合に対する価格差、更新時の顧客継続率、技術供与後の継続ロイヤリティ率は十分に開示されていない。値上げを通した実績も確かめられないため、強い堀とは評価しない。
資本効率はまだ弱い。2019年9月期から2024年9月期まで営業赤字が続き、2025年9月期もほぼ収支均衡にすぎなかった。売上高が拡大しても研究費や設備維持費が先に増えるため、過去の増分投資収益率が資本コストを超えたとは言えない。2026年9月期第3四半期には研究開発費と人件費の先行負担で赤字が拡大した。
一方、純有利子負債は2025年9月末に約マイナス19億円で、金融借入に追い立てられる企業とは違う。ただし2026年6月末の現金預金約17.41億円に対し、仮受金は約14.90億円あった。これは国策案件などの検収前の受取額を含む負債である。見かけ上の現金を全額余剰と扱うのは危険だ。今後の研究設備の取得負担と減価償却を考えると、会計上の純利益と株主が自由に使える現金には差が残る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
バイオものづくりの市場は大きいが、同社が利益を得られる範囲はその一部にすぎない。経済産業省の推計では、世界のバイオものづくり市場は2030年に約46.2兆円、2040年に約114.8兆円とされる。ただし、この数字には燃料、化学品、食品など最終製品の売上が含まれる。設備開発費や技術使用料を主な収入とする同社の獲得可能市場へ、そのまま置き換えることはできない。
化粧品原料などの高付加価値品では、微生物でしか効率よく作れない成分が増えるほど同社に追い風となる。反対に、微生物の設計手法が一般化し、顧客の化学メーカーが研究を内製化すれば、外部の発酵技術会社に払う対価は下がる。国内ではちとせグループやバッカス・バイオイノベーション、海外ではLanzaTechなどが関連する技術を持つ。各社の対象物質と収益形態が違うため、共通分母による正確な世界シェアは公表資料から求められない。
燃料の領域では、日本の2030年SAF需要が約171万キロリットルと見込まれ、廃食油由来のHEFA法やアルコールから作るATJ法が競合する。森空プロジェクトの実証設備は年1000キロリットル規模のバイオエタノールを目指し、その先に数万キロリットル級の商用設備を構想している。エタノールとSAFは別の製品であるため、この1000キロリットルをSAF市場の生産シェアとして数えることはできない。商用設備の所有者と技術供与者を分けて見る必要がある。
2026年10月には、電源開発とインドネシアのオイルパーム廃木を使ったスケールアップ実証を開始した。木質資源や農業残渣を食料と競合しない原料にできれば、資源調達面で差別化できる。しかし、原料を集めて運び、糖化と発酵を経て燃料を作る一連の費用が、石油系燃料や他のSAF原料に競争できるかは未確定だ。
中立の市場像は、世界の需要は拡大しても、技術提供会社の収益性は競争と顧客の交渉力に左右されるというものだ。2036年に向けて同社が顧客案件を積み増す余地はあるが、市場の成長率をそのまま売上成長率と見なさない。開発型では有料案件の件数、生産型では採算の取れた製品数、技術パッケージでは実際に収益を生む契約数を、それぞれ数量の物差しにする。
資本政策と M&A
経営が優先しているのは株主還元より商業化への再投資である。2026年7月公表の中長期ビジョンでは、2031年9月期に売上高25.61億円、営業利益3.34億円、EBITDA6.50億円を目標とした。2027年のセミコマーシャルプラント稼働、2030年の商用プラント稼働、2031年からの世界展開が主要な節目だ。大規模なバイオ燃料事業を含む第二段階の構想は、この数値目標には織り込んでいない。
還元については、2025年9月期まで無配で、2026年7月の方針も成長投資を優先し、配当開始の時期は未定としている。配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い額、ROEについて数字の約束はない。2026年9月末の株主には、スタンダード市場への移行を記念し、一定条件でQUOカードを一回限り贈る優待を発表した。通常の継続配当と混同してはならない。
過去の資本配分では、上場に伴う資本調達と研究開発への投入が大きい。2022年9月期には株数が増加しており、既存株主の持ち分は薄まった。近年は住友林業との資本業務提携、森空バイオリファイナリーへの参画、Morimatsuグループとの戦略的提携など、単独で巨大設備を抱え込まない道を選んでいる。これは賢明な方向だが、合弁事業が稼ぐ利益のうち自社に帰属する割合を確認する必要がある。
2031年の営業利益とEBITDAの差は約3.16億円で、将来の減価償却負担が重くなることを示唆する。既存資産の償却費を物価とともに自動的に増やすことはしないが、新設設備の取得費はインフレ後の価格で決まり、償却と更新投資の負担が増える。今後も大きな買収より、設備の採算管理、提携先との収益分配、希薄化を抑えた資金調達の成否を重視したい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
同社は、研究段階の技術を実際の発酵設備まで持ち上げられる数少ない国内企業の一つである。NEDOの支援で築いたバイオファウンドリでは、2026年6月までに17件の実証を経験した。RITEから続く研究開発の歴史も長い。一般的な受託研究会社と違い、顧客が商業化する時に必要な菌体、発酵工程、実証設備、技術提供の各段階で収益を得られる可能性がある。
市場の追い風も強い。化粧品原料や食品添加物には、価格が比較的高く、発酵法による製造が競争力を持ちやすい分野がある。木質バイオマスからのエタノールについては、2026年に34日間の連続運転を達成し、2027年には年1000キロリットル規模の実証設備を目指す。実験室の技術を産業設備へ移す際の失敗率を下げられれば、その能力自体が高い対価を得る商品になる。
2026年6月末に公表した16パイプラインのうち、生産型の10製品と技術パッケージの3案件が商用化へ進めば、収益は一度きりの国策研究開発から継続的な製造売上と権利収入へ移る。森空プロジェクトでは日本製紙、住友商事、日本航空と関係を築き、電源開発とはインドネシアの実証へ進んだ。こうした顧客には技術を実用化する設備投資能力がある。
経営陣は2031年9月期に売上高25.61億円、営業利益3.34億円を掲げ、商業生産への転換点を明示した。成功した技術が海外で繰り返し使われるようになれば、研究員の増員に比例しない権利収入が生まれる。長期投資の価値は、現在の小さな利益よりも、将来この収益構造へ変われるかどうかにある。十分な資金余力のある今、その転換に挑戦する意義は大きい。
慎重な見方
売上高が伸びても営業利益が安定して黒字にならないという事実は重い。2019年9月期から2024年9月期まで営業赤字が続き、2025年9月期もほぼ収支均衡だった。2026年9月期第3四半期累計の営業損失は約3.83億円で、研究開発費と人件費が先に膨らんでいる。会社が言う将来のキャッシュ創出は、まだ実績で確かめられていない。
2025年9月期の純利益は黒字だが、営業外の助成金収益の影響が大きい。2026年6月末には仮受金が約14.90億円まで増え、現金預金約17.41億円の大半に相当する。公的資金が帳簿に入っていても、検収前の資金は自由に分配できる利益ではない。NEDOの事業期間が終わった後、同じ規模の民間需要が現れる保証もない。
2026年時点の生産型パイプラインは10製品あるが、量産時の原価、受注量、継続契約額はほとんど見えない。化粧品や食品原料は競合品との価格競争があり、燃料はさらに厳しい。木質原料の収集費、糖化収率、発酵と精製の費用を合わせた時に、化石燃料や他方式に勝てなければ商用工場は造られない。政府の普及目標は個別企業の利益を約束しない。
さらに、研究成果を顧客と共同で開発する以上、権利の持ち分と価格決定権を相手に握られる可能性がある。技術が使われても、GEIの取り分が小さければ株主利益は伸びない。設備投資に伴う追加出資、既存の新株予約権、将来の資金調達も持ち分を薄める要因になる。現在の純現金は一定の支えだが、資金消費が続けば十年後の下値を保証しない。技術の将来性と、その技術を保有する会社の株式価値との間には大きな距離がある。
どちらに重みを置いたか
技術の確かさと商用化の可能性については前向きに評価できる。しかし、株主利益への転換を判断する材料では慎重な見方が勝る。2026年の営業赤字拡大、国策案件への依存、量産採算と技術使用料の未開示という三つの会社固有の弱点が残るためだ。確率は楽観側15%に対し、やや悲観と悲観を合わせて54%と下側に寄せた。AIへの置き換えを重複して織り込んだ結果ではなく、物理的な商業化の失敗と資金消費の可能性を反映した判断である。現在価値は時価総額を約26%下回り、結論はやや割高となる。今後、補助金に依存しない製造売上と継続ロイヤリティが増えれば、この判断を見直す余地は大きい。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/09 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 429 円49 億円(+ 還元の換算額還元の合計 2 円0 億円)。 今の値に割り戻すと 187 円21 億円、今との差 −20.7%、 期待の年率 +6.2%(資本コスト 8.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 5% | 2,432 円276 億円 | 26 円3 億円 | +941.5% | +26.7% | 123 円14 億円 |
| やや楽観 | 10% | 1,169 円133 億円 | 9 円1 億円 | +399.0% | +17.5% | 118 円13 億円 |
| 中立 | 31% | 324 円37 億円 | 0 円0 億円 | +37.3% | +3.2% | 100 円11 億円 |
| やや悲観 | 32% | 170 円19 億円 | 0 円0 億円 | −27.6% | −3.2% | 55 円6 億円 |
| 悲観 | 22% | 162 円18 億円 | 0 円0 億円 | −31.2% | −3.7% | 36 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 429 円49 億円 | 2 円0 億円 | +82.8% | +6.2% | 431 円49 億円 |
今の株価時価総額 236 円27 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 5% 量産と海外技術供与の両輪が成功 利益 23 億円 · PER 12.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,432 円276 億円
茂原のバイオファウンドリが外部企業の試作拠点として定着し、年間9件の有償開発案件を抱える。化粧品原料、食品添加物、飼料添加物では16製品が商業生産へ進み、培養と精製の歩留まりが改善する。量産経験が次の製品開発を速め、顧客は研究から製造までを同じ会社へ任せるようになる。
木質バイオマスからのエタノール製造では森空プロジェクトが商用段階へ進み、電源開発とのインドネシア案件も大型設備へ移行する。日本製紙、住友商事、航空燃料の需要家との関係から海外の技術供与先が増え、技術パッケージの有償案件は11件となる。売上のすべてを自社設備で作るのではなく、開発費と継続的な権利収入が増えるため収益性が改善する。
国策事業の比率は下がり、民間企業への販売が収益の中心になる。研究員や設備の追加投資は続くが、技術を複数案件に再利用できるため、営業利益は30億円台へ拡大する。設備投資に伴う希薄化は既存の新株予約権の範囲に収まり、大型買収を伴わずに事業が成長する。
- 開発型バイオファウンドリ:数量 9.0(年間売上に寄与する主要有償開発・実証案件数(件))× 価格 1.42(1案件当たり年間計上収入(億円、名目))→ 売上 13 億円・営業利益 5 億円。2026年の主要3案件から年間9件へ増加。平均年間収入は1.42億円で物価上昇をやや上回る。共通費配賦前の貢献利益率42%。
- 生産型バイオファウンドリ:数量 16.0(年間売上が発生する商用化製品数(製品))× 価格 2.50(1製品当たり年間計上収入(億円、名目、販売と技術対価の混合平均))→ 売上 40 億円・営業利益 18 億円。既存10製品の多くと新規製品が量産化し、販売主体の収入が拡大。1製品平均2.5億円、貢献利益率45%。
- テクノロジーパッケージ:数量 11.0(年間売上に寄与する主要技術供与・共同開発案件数(件))× 価格 3.60(1案件当たり年間計上収入(億円、名目))→ 売上 40 億円・営業利益 24 億円。国内外11案件から技術対価を計上。権利収入が増えるため貢献利益率60%。商用工場全体の販売額は含めない。
倍率:資本コストk=8.75%、2036年ROE=22.9÷103=22.23%、弱い堀による超過収益の残存割合3分の1から、増分投下資本収益率RONIC=約13.24%。2036年以降の名目成長率g=2%を用い、正当化PER=(1-g÷RONIC)÷(k-g)=約12.58倍とする。市場での過去の取引倍率は使用しない。
確率:生産型の多数の製品が量産に成功し、国内外の燃料設備から継続権利収入を得るには複数の技術的・商業的な関門を連続して通過する必要がある。大きな可能性は認めるが、現時点の実証数だけでは高い発生確率を正当化できない。
やや楽観 10% 民間製造受託が収益の柱になる 利益 11 億円 · PER 12.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,169 円133 億円
2027年の実証設備稼働を経て、企業の発酵生産を請け負うサービスが軌道に乗る。有償の開発案件は年間7件となり、NEDOに依存しない民間企業の発注が増える。研究段階で生まれた顧客関係が製造受託へつながり、契約の単価と継続性が改善する。
生産型では11製品が収益を生むようになる。化粧品原料や食品添加物を中心に、数十トン規模の量産を必要とする顧客を獲得する。販売量が増え、設備稼働率も上がるが、競争があるため高い値上げ率には依存しない。原料と電力の費用増加を吸収できる工程を選んで製造する。
森空プロジェクトが商用設備に進み、電源開発、大王製紙などの案件も段階的に拡大する。技術パッケージでは年間8件の有償契約が成立し、一時金だけでなく権利収入も増える。ただし設備の主体は提携先であり、GEIの持ち分は限定的だ。経営は大型買収を避け、得た利益を次の設備と研究に回しながら、小規模な株主還元を始める。
- 開発型バイオファウンドリ:数量 7.0(年間売上に寄与する主要有償開発・実証案件数(件))× 価格 1.38(1案件当たり年間計上収入(億円、名目))→ 売上 10 億円・営業利益 4 億円。主要有償開発7件、平均1.38億円。契約の継続化で共通費配賦前の貢献利益率38%。
- 生産型バイオファウンドリ:数量 11.0(年間売上が発生する商用化製品数(製品))× 価格 2.20(1製品当たり年間計上収入(億円、名目、販売と技術対価の混合平均))→ 売上 24 億円・営業利益 10 億円。商業生産する製品11件、1製品平均2.2億円、貢献利益率40%。
- テクノロジーパッケージ:数量 8.0(年間売上に寄与する主要技術供与・共同開発案件数(件))× 価格 3.35(1案件当たり年間計上収入(億円、名目))→ 売上 27 億円・営業利益 15 億円。技術供与8件、平均3.35億円。権利収入比率の上昇で貢献利益率56%。
倍率:k=8.75%、ROE=11.2÷60=18.67%。弱い堀の残存割合3分の1を用いたRONIC=約12.06%、g=2%から、正当化PERは約12.36倍となる。市場の現在または過去の倍率は根拠にしていない。
確率:高付加価値製品のうち多数が商用化に成功し、森空などの燃料案件から継続技術料が入る場合である。既存の提携先と開発案件があり楽観ほど多くの新規案件を必要としないが、量産採算はまだ十分に確認できない。
中立 31% 製造と技術供与が緩やかに定着 利益 3 億円 · PER 11.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 324 円37 億円
2031年の会社目標へ向けた商業化は一定程度進むが、すべての案件が予定通りに進むわけではない。茂原のバイオファウンドリは研究開発の受託拠点として運用され、年間5件の主要有償案件を抱える。国の研究費に依存する割合は徐々に低下するものの、研究の需要は顧客の新製品開発投資に左右される。
生産型では8製品が継続的な収益を生むようになる。化粧品原料と食品添加物の一部は商用生産に進むが、残りの製品には製造コストや顧客の採用判断による遅れが生じる。製造売上は2026年の小さな規模から大きく伸びるものの、設備費と品質管理費が必要であり、高い利益率を当然視しない。
テクノロジーパッケージは年間6件の有償案件を持つ。森空プロジェクトやインドネシア案件では技術対価が発生するが、商用設備の売上の大部分は顧客と合弁事業に帰属する。2036年の売上高は約38億円となり、営業利益は約4.9億円に達する。研究開発を続ける資金が必要なため通常の配当は抑え、事業の利益を次の製造技術に再投資する。
- 開発型バイオファウンドリ:数量 5.0(年間売上に寄与する主要有償開発・実証案件数(件))× 価格 1.32(1案件当たり年間計上収入(億円、名目))→ 売上 7 億円・営業利益 2 億円。年間主要有償案件5件。平均収入は10年間で1.32倍となり物価上昇1.34倍にほぼ沿う。貢献利益率32%。
- 生産型バイオファウンドリ:数量 8.0(年間売上が発生する商用化製品数(製品))× 価格 1.65(1製品当たり年間計上収入(億円、名目、販売と技術対価の混合平均))→ 売上 13 億円・営業利益 5 億円。既存10製品の一部を含む8製品が収益化。商用製品当たり年1.65億円は製造売上を含む平均であり、2025年の試験的ロイヤリティ単価の物価調整だけではない。
- テクノロジーパッケージ:数量 6.0(年間売上に寄与する主要技術供与・共同開発案件数(件))× 価格 3.10(1案件当たり年間計上収入(億円、名目))→ 売上 19 億円・営業利益 9 億円。年6件の主要契約を計上。受託一時金と継続技術使用料を含む平均収入は3.1億円。競争により単価上昇率は物価より低い。
倍率:k=8.75%、ROE=3.35÷38=8.82%で資本コストをわずかに上回る。弱い堀の超過収益残存割合3分の1からRONIC=約8.77%。2036年以降のg=2%を用い、正当化PER=(1-g÷RONIC)÷(k-g)=約11.44倍とする。ROEが低いため、名目成長を見込んでも正当化倍率は高くならない。
確率:中立は、会社の2031年計画にある商業化の方向性を認めながら、予定通りに進む案件と遅延する案件が混在する姿とした。下に寄せる理由:2026年9月期第3四半期の営業赤字約3.83億円、国策案件への高い依存、16件のパイプラインの多くが量産収益に結び付いていない点を踏まえ、やや悲観と悲観の合計を54%とする。
やや悲観 32% 量産が遅れ、研究費負担が残る 利益 0 億円 · PBR 1.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 170 円19 億円
国策の研究開発事業が一巡した後、茂原の設備を使う民間企業の発注は増えるものの、会社が期待した水準には届かない。開発型の主要有償案件は年間4件となり、研究を継続する仕事は残る。しかし、顧客の開発予算が削られる局面では受注が途切れ、価格も物価上昇を十分に転嫁できない。
生産型では3製品だけが安定収益に達する。化粧品原料などの一部は採算が取れるが、他の製品では発酵収率と精製費の問題が残る。燃料案件では実証契約は継続するものの、商用設備の建設は延期される。技術パッケージの売上は主要3案件の開発費が中心になり、継続ロイヤリティは小さい。
経営は研究テーマを絞り、設備の維持方法を見直す。大型買収による打開は避け、不採算研究から撤退するため、本社費を現在の延長より大きく減らす。それでも営業利益はわずかな黒字にとどまり、株主資本の稼ぐ力は低い。配当開始には至らず、企業価値の中心は残る事業収益より財務資産の回収可能性になる。
- 開発型バイオファウンドリ:数量 4.0(年間売上に寄与する主要有償開発・実証案件数(件))× 価格 1.25(1案件当たり年間計上収入(億円、名目))→ 売上 5 億円・営業利益 2 億円。主要有償案件4件、平均単価は10年で1.25倍。研究テーマ縮小後の貢献利益率35%。
- 生産型バイオファウンドリ:数量 3.0(年間売上が発生する商用化製品数(製品))× 価格 1.45(1製品当たり年間計上収入(億円、名目、販売と技術対価の混合平均))→ 売上 4 億円・営業利益 2 億円。量産採算が合う3製品のみ継続。製造売上と技術対価の混合平均1.45億円。
- テクノロジーパッケージ:数量 3.0(年間売上に寄与する主要技術供与・共同開発案件数(件))× 価格 2.65(1案件当たり年間計上収入(億円、名目))→ 売上 8 億円・営業利益 4 億円。既存に近い3案件の技術対価だけが残り、継続的な工場稼働ロイヤリティは限定的。
倍率:営業利益と純利益がわずかで、事業の稼ぐ力が資本コストに届かないため資産の回収可能性を中心に評価する。2025年9月期の自己資本約21.1億円を分母とするPBR0.957倍で、時価総額約20.19億円となる。これは2025年の純現金約19.2億円を床とし、その他の換金可能資産にほとんど価値を認めない評価である。2036年の自己資本22億円に同じ倍率を掛け直さない。
確率:有償研究の需要は一定程度続くが、商業生産に移る製品が少なく、燃料の技術供与が実証中心にとどまる場合である。2026年時点で商用売上が小さく、研究費と工場費が先行するため、この停滞は十分起こり得る。
悲観 22% 量産に敗れ、研究設備を縮小 利益 0 億円 · PBR 0.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 162 円18 億円
開発した微生物は実験室では性能を発揮しても、大型設備では歩留まりを保てず、製造コストが下がらない。生産型バイオファウンドリの検討製品は商業生産に結び付かず、継続的な製造売上は失われる。顧客は研究テーマを止めるか、より大きな化学メーカーや海外の技術企業へ開発を移す。
木質バイオマス由来エタノールでは、原料の収集費と燃料価格の差を埋められず、森空プロジェクトの本格拡大が止まる。インドネシアのパーム残渣利用も実証段階で終わり、技術供与の継続料はわずかになる。国策案件の期間終了後には代替の大型受託収入が得られず、研究所の維持費が重くのしかかる。
経営は高額な設備投資を中止し、研究設備を整理して知的財産の一部だけを維持する。営業赤字は縮小後もわずかに残るが、巨額の新規借入や破綻を前提にはしない。早期撤退によって既存の現金を極力保全できた場合を資産価値の下限として考える。撤退判断が遅れて資金が消費されれば、この下限すら実現できない点が最も大きな危険である。
- 開発型バイオファウンドリ:数量 1.0(年間売上に寄与する主要有償開発・実証案件数(件))× 価格 1.10(1案件当たり年間計上収入(億円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。少数の研究受託契約だけを維持。年間1件、1件1.1億円。
- 生産型バイオファウンドリ:数量 0.0(年間売上が発生する商用化製品数(製品))× 価格 1.30(1製品当たり年間計上収入(億円、名目、販売と技術対価の混合平均))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。量産製品の商用化に失敗し、製品売上はゼロ。単価は仮の指標で、売上には寄与しない。
- テクノロジーパッケージ:数量 1.0(年間売上に寄与する主要技術供与・共同開発案件数(件))× 価格 2.10(1案件当たり年間計上収入(億円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。残存する小規模技術契約1件のみ。商用工場からの継続収益は見込まない。
倍率:事業利益が赤字となるため、利益に正当化PERを掛けない。2025年9月期の自己資本21.1億円にPBR0.91倍を適用し、純現金約19.2億円に相当する時価総額を求める。2036年に計上される自己資本を増幅していない。新規投資を早期に止めた場合の現金保全を条件とするため、設備撤退費用や公的資金の精算次第では、実際の回収額がこの価値を下回り得る。
確率:多くの生産製品で採算が取れず、燃料技術も商用設備へ採用されない複合的な失敗である。単一の研究失敗ではなく、収益の三本柱が同時に弱る厳しい想定だが、実際の量産収益がほぼ未確立な段階では無視できない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
開発型バイオファウンドリ
菌体開発、発酵工程の最適化、試作、実証を企業や研究機関から請け負う。収益は有償の開発契約と実証サービスの対価である。
| 数量年間売上に寄与する主要有償開発・実証案件数(件) | 価格1案件当たり年間計上収入(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 3.0 | 1.00 | 3 | 1 |
| 10 年後 中立 | 5.0 | 1.32 | 7 | 2 |
取り方:会社が2026年6月末時点で開示した開発型の主要3案件を数量の代理変数とする。NEDOは累積17件の生産実証を公表しているが、これは単年度の有料案件数ではない。2026年9月期第3四半期の開発型売上91百万円と2025年9月期全社売上10.8億円を参照し、2025年の当事業相当売上を3.0億円と推定した。実際の2025年事業別売上や案件単価は非開示であり、1件1.0億円は推計上の年間平均収入である。営業利益1.2億円は本社研究費や共通人件費の配賦前の貢献利益であり、公表されたセグメント利益ではない。研究工程は現物実験が中心で、AIエージェントが直接代替するSI・BPO・席課金ソフトには該当しない。ただし菌体設計とデータ解析の工数はAIによる価格圧力を受ける。
生産型バイオファウンドリ
高付加価値の化粧品原料、食品添加物、飼料添加物などを製造受託または自社販売し、量産技術のライセンス収入も得る。
| 数量年間売上が発生する商用化製品数(製品) | 価格1製品当たり年間計上収入(億円、名目、販売と技術対価の混合平均) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 1.0 | 0.15 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 8.0 | 1.65 | 13 | 5 |
取り方:2026年6月末時点の生産型パイプラインは化粧品原料等4、食品添加物3、飼料添加物3の計10製品。ただし検討中の製品を商用売上の数量に数えない。2026年9月期第3四半期の生産型売上は6百万円と小さく、2025年の年間売上は開示された独立区分がないため、商用収益相当1製品、年間0.15億円と仮定した。会社が提示する高付加価値品の最終製品価格は1kg当たり1000~10000円超、想定生産規模は数十トンである。この価格はGEIの取り分とは異なる。将来の平均収入には製品販売と技術使用料の構成変化が含まれるため、現在の単価と将来単価は同一製品の単純値上げではない。貢献利益0.09億円は推計値。
テクノロジーパッケージ
木質バイオマス、製紙産業素材、パーム廃木を利用する燃料・化学品技術を、設備を建設する提携先へ提供する。開発費、一時金、権利収入が対象となる。
| 数量年間売上に寄与する主要技術供与・共同開発案件数(件) | 価格1案件当たり年間計上収入(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 3.0 | 2.55 | 8 | 5 |
| 10 年後 中立 | 6.0 | 3.10 | 19 | 9 |
取り方:2026年6月末に会社が明示した主要3案件は、森空プロジェクト、電源開発とのパーム残渣利用、大王製紙との製紙産業素材利用である。2026年9月期第3四半期のテクノロジーパッケージ売上は177百万円で、検収が第4四半期に偏るため単純年率換算をしない。全社の2025年売上10.8億円から他の2事業の推定額を除き、この領域を7.65億円とした。主要案件数による平均2.55億円は国策関連の研究収入や一時金を含む仮定で、継続ライセンスの実績単価ではない。大規模プラントの燃料売上をGEIの売上へそのまま算入していない。貢献利益5.135億円から共通研究費などを別途控除する。
リスクと懸念
公的資金依存と利益の見かけ
2025年9月期にはNEDO向け売上が約4.11億円あり、全社売上の約38%を占めた。営業外の補助金収益も最終黒字を支えた。2026年6月末の仮受金約14.90億円は、検収前の受託額や助成金の受け取りを含む。国策予算が縮小するか、検収が遅れれば、損益と資金繰りが同時に悪化し得る。国から受け取る現金と、繰り返し得られる民間顧客の利益を区別する必要がある。
実験室から量産への壁
発酵技術は小さな容器で良い結果が出ても、大型設備に移すと収率や品質が悪化することがある。木質原料の糖化、菌体の安定性、精製と廃液処理まで含めた費用が量産の採算を決める。34日間の連続運転は前進だが、年間を通じた商用稼働と同じではない。予定した工場が動かなくても、研究開発費と設備関連費用は先に発生する。
燃料市場の競争と政策変更
SAFの需要が増えても、同社の技術が必ず選ばれるわけではない。廃食油由来のHEFA法、他のバイオエタノール原料、合成燃料などとの費用競争がある。木質バイオマスの収集費が上がれば、非可食原料という環境面の強みだけでは価格差を埋められない。政府の支援制度、炭素削減の算定方法、燃料混合目標が変更されると、顧客の投資計画が変わる。
顧客・共同事業者の交渉力
同社は日本製紙、住友商事、電源開発、大王製紙など資本力を持つ企業と組むが、量産工場の資金や販路を握るのは相手側である場合が多い。技術を使った工場の売上が拡大しても、ライセンス料率が低ければGEIの利益は小さい。顧客が一度工程を習得した後に内製化へ移る可能性もある。案件数だけでなく、契約期間、権利の帰属、最低保証料と追加ロイヤリティを確認したい。
設備投資と希薄化
2026年6月末には建設仮勘定が約4.29億円に増え、実証設備の建設が進んでいる。2027年以降は設備の減価償却と維持費が増える。会社の2031年目標では営業利益とEBITDAの差が約3.16億円に達する。更新投資に追加資金が必要になれば、純現金を使うか増資で既存株主の持ち分を薄める可能性がある。新株予約権による潜在的な希薄化も無視できない。
AI エージェント代替と技術の一般化
AIエージェントは菌体設計の候補探索、文献調査、実験計画、測定データの解析を効率化する。この部分を作業時間に応じて請求するなら、単価と必要工数には下げ圧力がかかる。ただし同社の主な価値は発酵槽での実験、試作、培養工程の調整という物理的な作業にある。SI受託や席課金SaaSのような全面代替の型を機械的には適用しない。問題はAIそのものより、設計知識が一般化して顧客の内製化が進むことである。
純現金を下値保証と誤解する危険
2025年9月末の純現金約19.2億円は、時価総額と比較して非常に大きい。しかし国策案件の仮受金、工場建設、今後の設備取得費用があり、現金預金の全額が余剰とは言えない。経営が事業を継続して赤字を重ねれば、現在の純現金は失われる。清算を求める権利のない少数株主は、資本配分の判断を経営陣に委ねる。資産の額と、実際に株主の手元へ戻る価値を混同してはならない。
今後の分かれ目
- 2027年度以降、茂原のバイオファウンドリが民間企業から継続的に有料の実証案件を獲得し、国策事業終了後も稼働率を維持できたら
- 開発型の数量と利益率を引き上げる。公的受託研究から民間の反復需要へ収益源が移る事実は、中立以上の筋書きの確率を高める。
- 2030年までに化粧品原料や食品添加物の商用製品が5件以上となり、販売数量と製造原価が開示されたら
- 生産型の売上と増分投下資本利益率を実績で再評価する。商用化済みの製品数だけでなく、製品ごとに設備償却を払った後の利益が残ることを確認する。
- 森空プロジェクトが年1000キロリットル級の実証から数万キロリットル級の商用設備へ進み、GEIへの技術使用料が明らかになったら
- テクノロジーパッケージの継続収入を上方修正する。プラント全体の売上ではなく、同社に帰属する一時金、最低保証料、数量連動ロイヤリティを確認して価値を見直す。
- 2028年以降も営業赤字が続き、補助金を除いた営業キャッシュフローが継続してマイナスだったら
- 商業化が遅れるやや悲観と悲観の確率を引き上げる。同時に、現金を投資へ使い続けるため、悲観の資産価値の床を引き下げる必要がある。
- NEDO関連売上の比率が20%未満へ下がる一方、民間企業からの継続契約売上と営業利益が増加したら
- 国策予算への依存度が低下し、収益の質が改善したと判断する。中立の利益率、長期の顧客継続性、資本効率の前提を見直す。
- 設備取得費用や研究費の追加負担により大型増資が発表されたら
- 会社全体の事業価値とは別に、既存株主の取り分を下方修正する。調達額だけでなく、発行株数、資金使途、投資後の収益力を確認し、希薄化を反映する。
- 顧客企業が菌体開発と量産工程を内製化し、GEIの受託単価や技術使用料が低下し始めたら
- 競争上の堀が弱まった証拠として扱う。開発型の単価と技術パッケージの継続収入を下げ、2036年以降の長期成長率も再検討する。
見ておくもの
- 2026年9月期通期決算での売上計上、営業赤字、助成金収益、現金預金と仮受金の着地
- 2027年度からの茂原バイオファウンドリの民間有償案件数、継続顧客数、稼働率
- 16パイプラインのうち商用売上を計上する製品数と、製品当たりの収入および貢献利益
- 森空プロジェクトの年1000キロリットル級実証の稼働状況と、2030年前後の商用設備の投資判断
- 木質バイオマス由来エタノールの発酵収率、原料調達費、商用設備の製造原価
- NEDO関連売上と営業外助成金への依存度、補助金を除いた営業利益と営業キャッシュフロー
- 建設仮勘定の設備への振替、減価償却費、設備更新費用と追加資金調達
- 2029年までに行使可能な既存新株予約権の残数と、今後の株式発行による希薄化
- 2031年9月期目標である売上高25.61億円、営業利益3.34億円、EBITDA6.50億円への進捗
倍率と資本コストの決め方
現在の株価253円と時価総額約28.74億円は、三事業の2036年売上と利益を試算する前提には使用していない。数量は有償開発案件数、商用製品数、技術供与案件数とし、現在値に開示のない部分は明確に推計とした。価格は名目で、物価3%による10年の上昇1.34倍を基本にしつつ、生産型の収入構成が試験的ロイヤリティから製造売上へ変わる効果を分けて説明した。営業利益から共通研究費と設備費を引き、補助金で純利益を膨らませていない。倍率はk8.75%、堀の弱さ、ROE、2036年以降の成長率2%による正当化PERで決め、現在や同業の市場倍率を根拠としていない。2025年の純現金は事業用資金と国策案件の負担を伴うため余剰現金として二重計上しない。悲観の床は早期縮小を前提とする条件付きの値で、無条件の清算保証ではない。新リース会計基準による貸借対照表の表示変更と経済価値の変化を混同しない。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5% + 上乗せ 1.0%。無リスク金利3%と株式リスクプレミアム4.5%の合計7.5%に、品質評価0.25%および営業赤字継続に対する上乗せ1.0%を加える。企業規模と株価βからの上乗せは使わない。