結論
日本管財ホールディングスは、ビルやマンション、公共施設の管理を請け負う会社だ。売上の6割強がビル管理で、残りがマンション管理、上下水道などの運転管理、不動産ファンドである。契約は長く続くが、儲けは薄い。売上は1,500億円あるのに、営業利益は87億円、利益率は6%を切る。
筆者の結論は、事業は堅いが今の値段に余裕はない、というものだ。管理の仕事は人手が中心で、最低賃金は毎年上がる。人件費が先に上がり、値上げが後から追いかける。この遅れが、利益率を押し上げられない最大の理由である。公共施設をまとめて請け負う包括管理で首位に立つことは強みだが、それだけで利益率が変わるほどではない。
財務は強い。純現金は333億円で、時価総額の3割に当たる。だが筆頭株主は、社長が議決権を握るとされる資産管理会社だ。現金が株主に戻る保証は薄く、価値の半分しか見込まない。
10年後の中立は、売上2,100億円、純利益93億円。この稼ぐ力で測ると、価値は今の時価総額を25%ほど下回る。強気の筋書きでも、今の倍の価値にはならない。公共分野の拡大と、海外・買収の成否が分かれ目になる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、良い会社と言い切れない。仕事は安定しているが、資本の稼ぎが目立たない。売上の大半は人件費で消える。利益率は6%弱で、物価が上がるたびに人件費も上がる。値上げできる限り稼ぎは守れるが、増えた利益を事業に再投資しても、高い稼ぎは生まれにくい。
好ましい点は2つある。契約が長く、景気で大きく崩れないこと。そして借金がなく、現金が厚いことだ。倒産の心配はほぼない。
引っかかるのは、資本の使い方である。現金は積み上がるのに、株主への戻し方は控えめだ。支配株主がいるため、少数株主が自分で現金を引き出す手段もない。現金は帳簿どおりには数えられない。
安全域の考え方はこうだ。10年先の中立で稼ぐ力を測り、余った現金の半分を足す。今の値段は、それを上回っている。先行きの読みにくい部分は少ないが、払ってよい値段に余裕がないと筆者は見る。
何で稼ぐ会社か
事業は4つある。最大は建物管理運営事業で、売上の6割強を占める。複合ビル、ホテル、官公庁施設の清掃、設備の保守、常駐の警備を請け負う。2026年3月期の売上は947億円、利益率は9%台だ。大阪・関西万博の関連業務も売上を押し上げた。
住宅管理運営事業は、分譲マンションと公営住宅の管理で、売上は345億円。相手は管理組合なので値上げが通りにくく、利益率は4%弱と低い。人件費の上昇が直撃し、直近は減益だった。
環境施設管理事業は、上下水道やごみ処理施設の運転管理を自治体から受ける。売上は155億円と小さいが、利益率は14%を超え、全社でいちばん高い。料金改定で採算が改善した。公共の施設を長く預かるので、契約は安定している。
残りは、不動産ファンドの運営、給与計算の代行、イベント、印刷である。ファンドは資産を売った時にだけ大きく儲かる、波のある仕事だ。直近は売却が減り、売上が4割近く落ちた。給与計算は、ネオトラストの買収で加わった。
これらの利益から、本社費など全社の費用46億円を引くと、営業利益87億円が残る。建物管理が全体の稼ぎの柱であり、ここの利益率が全社の運命を決める。
優良さと弱いところ
堀は、あるにはあるが浅い。いちばん確かなのは公共施設の包括管理だ。自治体は施設をばらばらに発注せず、まとめて任せる流れにある。会社は全国36件の実績を持ち、シェアは約46%と自ら説明している(会社の説明で、外部の検証は確認していない)。実績が信用になり、次の入札で効く。
ただ、ビル管理そのものは入札と見積もりの世界だ。発注者は価格で比べ、数年ごとに業者を替えられる。イオンディライトや大成など、競合との争いは絶えない。値段を自分で決める力は強くない。
資本効率は、会社の目標に届いていない。会社はROEとROAの10%以上を掲げるが、ROEは9%台だ。自己資本の4割強が現金で眠っているためで、事業そのものはもう少し効率がよい。政策保有株の縮小や自己株の取得を進めるというが、動きは遅い。
経営は創業家の色が濃い。社長の福田慎太郎氏が議決権をすべて持つとされる日本サービスマスターが、株の30%超を握る。自己株も約12%ある。支配は経営の安定をもたらすが、少数株主の取り分は、経営者の判断次第になる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ビル管理の市場は国内で4兆円を超え、毎年2〜5%ほど伸びてきた。伸びの中身は、ほぼ値上がりだ。建物の数は増えず、人口は減る。それでも仕事が増えるのは、人手不足で自前の管理をやめる所と、老朽化した設備の保守が増えるからである。上位10社で市場の4分の1ほどという、分散した業界だ。
最大の逆風は人手である。清掃員の平均年齢は65歳前後とされ、若い働き手は入りにくい。最低賃金は毎年上がる。受託料に転嫁できるかが勝負だが、非正規の多い現場では転嫁が遅れやすい。一方、清掃ロボットや遠隔監視、設備のセンサー化が進めば、同じ仕事に要る人数は減る。仕事の量は同じでも、人の数は減る時代になる。
公共分野は追い風だ。自治体は職員が減り、施設の老朽化が進む。公共施設をまとめて民間に任せる包括管理や、上下水道の運転管理の民間委託が広がる。この領域は日本管財が強い。ただ案件には限りがあり、利益率も高くはない。
マンション管理は、住民の高齢化と管理組合の担い手不足で、需要は底堅い。反面、競争は激しく、管理費を上げにくい構造は変わらない。
10年後の中立は、仕事の量が1割弱増え、値段は物価並みに上がる姿だ。強気は公共と海外が伸びる姿、慎重は人手とロボットの置き換えで、値段も量も押される姿である。
資本政策と M&A
資本政策は、守りの姿勢だ。配当は純利益の3割強で、2027年3月期は増配を見込む。自己株は約12%持つが、消却して一気に減らす動きは見えない。ROE10%を掲げながら、手元の現金の使い道を示しきれていない。
買収は、国内では給与計算のネオトラスト、JTBアセットマネジメント、清流メンテナンスを取り込んだ。海外は米国、オーストラリア、ドイツ、ハワイで出資と買収を重ねる。規模は小さく、利益への貢献はまだ見えにくい。むしろ、買った会社が育たずに現金が目減りする危険のほうが大きい。
投資有価証券は130億円ほどあり、関連会社の株が約半分を占める。会社は政策保有株の縮小を進めるとしている。
買われる側の可能性も考えた。筆頭株主が30%超を握るため、第三者によるTOBは現実的でない。創業家側が非上場化に動く筋書きは想像できるが、それを示す材料は確認できていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
公共分野の流れは、日本管財への追い風だ。自治体は人も予算も足りず、施設をまとめて民間に任せる包括管理が広がっている。この分野で会社は実績が最も多く、シェアは約46%にのぼる。案件が増えるほど、次の入札で実績が効く。環境施設の運転管理も、水道の広域化や民営化の流れで仕事が増える。利益率の高いこの事業が伸びれば、全社の利益率も上がる。
人手不足は逆風に見えて、実は選別が進む。小さな業者は人を集められず撤退し、大手に仕事が集まる。値上げを嫌がっていた発注者も、断られるよりはと応じ始めた。万博の業務をこなした実績も、大型案件の入札で効く。
財務は固い。純現金は時価総額の3割に当たり、買収の余力が大きい。海外は小粒ながら足場ができた。ROE10%を会社は掲げており、政策保有株の売却と自己株の取得で、目標に近づく。現金が使われ始めれば、資本の効率は一気に変わる。
長く続く契約という土台があるので、利益の底は浅くない。人件費の転嫁が少しでも進めば、利益は薄くても確実に積み上がる。
慎重な見方
利益率は6%を切り、改善の兆しがない。最低賃金は毎年上がり、住宅管理では転嫁が遅れて減益になった。ビル管理も入札が中心で、発注者は価格で業者を替えられる。人件費が先に上がり、値上げが後から追いかける構図は変わらない。
ロボットと遠隔監視が広がれば、清掃や巡回に要る人の数は減る。受託料は人の数で決まる面が強い。省人化は発注者の費用を減らすが、管理会社の売上も減らす。仕事の量が同じでも、売上は伸びなくなる。
公共の包括管理は案件が限られる。自治体の予算は人口減で縮み、安値の入札も増える。シェアが約46%あっても、受ける値段が低ければ利益にならない。
資本の使い方にも不安が残る。現金は積み上がるのに、ROEは目標に届かない。筆頭株主が30%超を握るので、外から圧力をかけにくい。海外の出資は小さく、成果が見えない。現金が小さな買収で消えていけば、株主の取り分はさらに薄くなる。
10年という長さを考えると、ここまで挙げた逆風はどれも一度では終わらず、年ごとに積み重なっていく。
どちらに重みを置いたか
公共分野の実績と厚い財務という土台の堅さは認める。だが堅いことと稼ぐことは別で、利益率が6%弱の事業には、値上げの遅れという弱点が常に付いて回る。人手とロボットの置き換えも、10年でじわじわ効いてくる。強気の言い分は筋が通るものの、支配株主のもとで現金が活かされる保証がない分、慎重な見方のほうが強い。そこで確率は慎重側へ少し寄せた。強気は最良の組み合わせが重なる場合に限られるので小さくし、やや悲観は厚めに置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,829 円1,391 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 924 円336 億円)。 今の値に割り戻すと 2,553 円927 億円、今との差 −15.2%、 期待の年率 +4.7%(資本コスト 7.2%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 7,384 円2,682 億円 | 1,313 円477 億円 | +189.0% | +11.2% | 522 円190 億円 |
| やや楽観 | 20% | 5,640 円2,048 億円 | 1,140 円414 億円 | +125.2% | +8.5% | 1,356 円492 億円 |
| 中立 | 35% | 4,439 円1,612 億円 | 1,016 円369 億円 | +81.2% | +6.1% | 1,909 円693 億円 |
| やや悲観 | 26% | 2,220 円806 億円 | 727 円264 億円 | −2.1% | −0.2% | 766 円278 億円 |
| 悲観 | 13% | 981 円356 億円 | 562 円204 億円 | −48.8% | −6.5% | 201 円73 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,829 円1,391 億円 | 924 円336 億円 | +57.9% | +4.7% | 4,754 円1,727 億円 |
今の株価時価総額 3,010 円1,093 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 6% 公共の拡大と買収の成功で利益率が上がる10年 利益 141 億円 · PER 18.4 倍 · 株価時価総額 7,384 円2,682 億円
公共施設の包括管理が全国に広がり、ビル管理の受託量は15%増える。人手不足で小さな業者が退き、値上げも通りやすくなる。ビル管理の売上は1,520億円、利益率は10%台に乗る。環境施設の運転管理も、自治体の民間委託が進んで施設数が3割増える。海外と給与計算の拡大で、その他の事業も売上130億円に育つ。
現金の一部は買収に回り、うまく当たる。ROEは11%を超え、会社の目標に届く。売上は2,400億円、営業利益は176億円、純利益は141億円になる。ただし、人口減と省人化の逆風は残る。成長がこの先も同じ勢いで続くとは見ない。
- 建物管理運営事業:数量 3.0(現場の稼働人員(万人・フルタイム換算、推定))× 価格 510(1 人あたり年間受託額(万円))→ 売上 1,524 億円・営業利益 160 億円
- 住宅管理運営事業:数量 21.0(管理戸数(万戸、推定))× 価格 24(1 戸あたり年間管理額(万円))→ 売上 499 億円・営業利益 23 億円
- 環境施設管理事業:数量 130(受託施設数(件、推定))× 価格 2.13(1 施設あたり年間受託額(億円))→ 売上 278 億円・営業利益 42 億円
- 不動産ファンド・その他:数量 1,808(運用・受託の取扱規模(億円、実質・推定))× 価格 0.07(取扱額あたりの収益率(億円/億円))→ 売上 127 億円・営業利益 18 億円
倍率:事業の純利益 139 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.9% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.6%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)70 億円。全体の PER 18.42 倍、時価総額 2,631 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:公共案件の拡大、人手不足による大手への集中、値上げの定着、買収の成功が同時に重なる必要があり、確度は高くない。
やや楽観 20% 公共案件を積み増し値上げがやや上回る10年 利益 113 億円 · PER 17.4 倍 · 株価時価総額 5,640 円2,048 億円
公共案件を着実に積み増し、値上げも人件費を少し上回る10年。ビル管理の受託量は1割増え、売上は1,430億円、利益率は9%台後半まで上がる。環境施設の運転管理は、自治体の委託が広がって施設数が2割増える。マンション管理は戸数がほぼ変わらず、利益率は4%強にとどまる。
海外と給与計算の小さな買収が少しずつ実り、その他の事業の売上は100億円を超える。売上は2,260億円、営業利益は143億円、純利益は113億円。現金は増える一方、配当と自己株の取得で一部が株主に戻る。ROEは10%に届くが、それ以上には伸びない。
- 建物管理運営事業:数量 2.9(現場の稼働人員(万人・フルタイム換算、推定))× 価格 499(1 人あたり年間受託額(万円))→ 売上 1,427 億円・営業利益 138 億円
- 住宅管理運営事業:数量 20.4(管理戸数(万戸、推定))× 価格 23(1 戸あたり年間管理額(万円))→ 売上 478 億円・営業利益 20 億円
- 環境施設管理事業:数量 120(受託施設数(件、推定))× 価格 2.10(1 施設あたり年間受託額(億円))→ 売上 252 億円・営業利益 35 億円
- 不動産ファンド・その他:数量 1,469(運用・受託の取扱規模(億円、実質・推定))× 価格 0.07(取扱額あたりの収益率(億円/億円))→ 売上 101 億円・営業利益 12 億円
倍率:事業の純利益 111 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.9% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.6%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)70 億円。全体の PER 17.35 倍、時価総額 1,996 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:公共案件を積み増し、値上げが人件費を少し上回る筋書き。起きうるが、利益率を押し上げ続ける材料は限られる。
中立 35% 量は微増・値段は物価並みで稼ぎが変わらない10年 利益 93 億円 · PER 16.3 倍 · 株価時価総額 4,439 円1,612 億円
仕事の量はわずかに伸び、値段は物価並みに上がる、平凡な10年。ビル管理は公共の案件が増えるものの、省人化が量を削り、受託量は5%の増加にとどまる。値上げは人件費の上昇を追いかけ、利益率は9%に落ち着く。マンション管理は戸数が変わらず、値上げの遅れで利益率は4%のままだ。環境施設の運転管理は、自治体の委託が少しずつ広がる。万博の特需は消える。
売上は2,120億円、営業利益は119億円、純利益は93億円。現金は少しずつ積み上がり、会社は配当を増やしながらROE10%を掲げ続けるが、事業の稼ぎは9%に届かない。
- 建物管理運営事業:数量 2.7(現場の稼働人員(万人・フルタイム換算、推定))× 価格 488(1 人あたり年間受託額(万円))→ 売上 1,332 億円・営業利益 120 億円
- 住宅管理運営事業:数量 20.0(管理戸数(万戸、推定))× 価格 23(1 戸あたり年間管理額(万円))→ 売上 462 億円・営業利益 19 億円
- 環境施設管理事業:数量 115(受託施設数(件、推定))× 価格 2.07(1 施設あたり年間受託額(億円))→ 売上 238 億円・営業利益 32 億円
- 不動産ファンド・その他:数量 1,356(運用・受託の取扱規模(億円、実質・推定))× 価格 0.07(取扱額あたりの収益率(億円/億円))→ 売上 91 億円・営業利益 10 億円
倍率:事業の純利益 91 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.3% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.8%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)70 億円。全体の PER 16.34 倍、時価総額 1,558 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:仕事の量は微増、値段は物価並み、利益率は今と同じ。最も重みを置く、落としどころの筋書き。
やや悲観 26% 省人化と転嫁の遅れで利益が今より減る10年 利益 61 億円 · PER 11.7 倍 · 株価時価総額 2,220 円806 億円
人手とロボットの置き換えで受託量は伸びず、値上げは人件費に追いつかない10年。ビル管理の量は今と変わらず、10年の値上げは3割にとどまり、物価に負ける。利益率は8%を割る。マンション管理は戸数が減り、管理会社の再編の中で価格競争も強まって、利益率は3%に下がる。環境施設も入札の安値化で利益率が落ちる。海外とファンドは足が止まる。
売上は1,920億円、営業利益は80億円、純利益は61億円と、今の利益を下回る。現金は残るが、小さな買収で目減りする。会社は増配を続けられず、還元は細る。海外の出資は伸びず、ファンドの利益も小さいままで、全社の稼ぎは建物管理の薄い利益にほぼ頼る形になる。人手の確保に追われ、売上は伸びても利益が残らない。
- 建物管理運営事業:数量 2.6(現場の稼働人員(万人・フルタイム換算、推定))× 価格 473(1 人あたり年間受託額(万円))→ 売上 1,231 億円・営業利益 96 億円
- 住宅管理運営事業:数量 18.4(管理戸数(万戸、推定))× 価格 22(1 戸あたり年間管理額(万円))→ 売上 406 億円・営業利益 12 億円
- 環境施設管理事業:数量 105(受託施設数(件、推定))× 価格 2.01(1 施設あたり年間受託額(億円))→ 売上 211 億円・営業利益 25 億円
- 不動産ファンド・その他:数量 1,130(運用・受託の取扱規模(億円、実質・推定))× 価格 0.06(取扱額あたりの収益率(億円/億円))→ 売上 68 億円・営業利益 5 億円
倍率:事業の ROE は 5.7% で k 7.25% 以下。PER は 1÷k = 13.3 倍が上限(ためた利益は額面を下回る価値)。薄利が一段薄くなる筋書きなので、上限の約 8.5 割(11.69 倍)。稼ぐ力(事業の純利益 59 億円 ÷ k)から置き、市場の倍率は使っていない。
確率:薄利で値上げが人件費に追いつかず、省人化で量も伸びない。構造として十分ありうるので、中立に近い厚みで置く。
悲観 13% 価格競争と省人化で管理会社の取り分が細る10年 利益 31 億円 · PER 10.7 倍 · 株価時価総額 981 円356 億円
人件費の先上がり、省人化、価格競争が重なり、管理会社の取り分が構造的に細る10年。ビル管理の受託量は15%減り、値上げは2割にとどまる。大手の安値攻勢で利益率は6%まで落ちる。マンション管理は管理組合の自主化や再編で戸数が減り、利益率は2%まで下がる。環境施設も民営化の進む中で入札の競争が激しくなり、利益率が10%に下がる。海外・ファンド・給与計算は、買収の失敗で縮む。
売上は1,520億円、営業利益は44億円、純利益は31億円。もはや堅実な会社ではなく、薄い利益を現金が支えるだけの会社になる。創業家の支配は続き、現金は戻らない。
- 建物管理運営事業:数量 2.2(現場の稼働人員(万人・フルタイム換算、推定))× 価格 437(1 人あたり年間受託額(万円))→ 売上 966 億円・営業利益 58 億円
- 住宅管理運営事業:数量 17.0(管理戸数(万戸、推定))× 価格 20(1 戸あたり年間管理額(万円))→ 売上 337 億円・営業利益 7 億円
- 環境施設管理事業:数量 95.0(受託施設数(件、推定))× 価格 1.86(1 施設あたり年間受託額(億円))→ 売上 176 億円・営業利益 18 億円
- 不動産ファンド・その他:数量 791(運用・受託の取扱規模(億円、実質・推定))× 価格 0.06(取扱額あたりの収益率(億円/億円))→ 売上 44 億円・営業利益 2 億円
倍率:事業の ROE は 3.0% で k 以下。PER は 1÷k = 13.3 倍が上限。構造的な負けで稼ぎが細る筋書きなので、上限の 8 割(10.7 倍)。稼ぐ力(事業の純利益 30 億円 ÷ k + 余った現金の戻り方込み 35 億円)から置いた。
確率:人件費の先上がり・省人化・価格競争・買収の失敗が同時に起きる構造的な負け。起これば大きいが、全部が重なるのは稀。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
建物管理運営事業
複合ビル・ホテル・官公庁施設の清掃、設備保守、常駐・機械警備、受付業務。長期の受託契約。
| 数量現場の稼働人員(万人・フルタイム換算、推定) | 価格1 人あたり年間受託額(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.6 | 364 | 947 | 89 |
| 10 年後 中立 | 2.7 | 488 | 1,332 | 120 |
取り方:売上 947 億円を、現場の稼働人員(推定 2.6 万人)× 1 人あたり年間受託額(約 364 万円)に分けた。数量は人員の実質、価格は人件費の上昇を転嫁した名目額。10 年の価格は中立で物価並みの 1.34 倍とした。
住宅管理運営事業
分譲マンションと公営住宅の管理運営と関連工事。管理組合が相手で、管理費は上げにくい。
| 数量管理戸数(万戸、推定) | 価格1 戸あたり年間管理額(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 20.0 | 17 | 345 | 14 |
| 10 年後 中立 | 20.0 | 23 | 462 | 19 |
取り方:売上 345 億円を、管理戸数(推定 20 万戸)× 1 戸あたり年間管理額(約 17 万円、工事を含む)に分けた。戸数は人口減で横ばい、価格は物価並みの 1.34 倍が基本で、転嫁の遅れは利益率で表す。
環境施設管理事業
上下水道・ごみ処理施設などの公共施設の運転管理、水質管理、工事。自治体が相手の長期契約。
| 数量受託施設数(件、推定) | 価格1 施設あたり年間受託額(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 1.55 | 155 | 23 |
| 10 年後 中立 | 115 | 2.07 | 238 | 32 |
取り方:売上 155 億円を、受託施設数(推定 100 件)× 1 施設あたり年間受託額(約 1.5 億円)に分けた。公共の民間委託の広がりで施設数が伸びる余地がある。価格は物価並み。
不動産ファンド・その他
不動産ファンドの運営・アレンジ、給与計算の代行(ネオトラスト)、イベント、印刷、不動産の販売・仲介。
| 数量運用・受託の取扱規模(億円、実質・推定) | 価格取扱額あたりの収益率(億円/億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,130 | 0.05 | 57 | 7 |
| 10 年後 中立 | 1,356 | 0.07 | 91 | 10 |
取り方:不動産ファンド 31 億円とその他 25 億円の合計 57 億円を、取扱規模(推定 1,130 億円)× 収益率(約 5%)に分けた推定。ファンドは資産売却で波がある。
リスクと懸念
人件費の先上がりと値上げの遅れ
最低賃金は毎年上がるが、受託料の改定は契約の更新を待つため遅れる。住宅管理はすでに人件費で減益になった。遅れが重なれば、利益率6%弱の事業は簡単に赤字に近づく。値上げの交渉力が弱い入札案件ほど、影響が大きい。
省人化とロボットによる受託量の減少
清掃ロボット、遠隔監視、設備のセンサー化が広がると、同じ業務に要る人の数が減る。受託料は人の数に連動する部分が大きく、仕事が同じでも売上が伸びにくくなる。発注者がその分の値下げを求める可能性もある。
支配株主のもとでの資本配分
筆頭株主が30%超を握り、自己株も約12%ある。純現金は時価総額の3割あるが、戻し方は控えめだ。現金が小さな買収で目減りしても、外部から是正する力が働きにくい。少数株主の取り分は、経営者の判断に依存する。
海外・買収の統合と実行
米国、オーストラリア、ドイツ、ハワイでの出資と、国内のJTBアセットマネジメント、清流メンテナンスなどの買収は、まだ規模が小さく成果が見えない。言語や商習慣が違う市場で統合に失敗すると、現金が減るだけに終わる。
不動産ファンドの波
不動産ファンドの利益は、運用資産を売った時に大きく出る。直近は売却が減り、売上が4割近く落ちた。市況が悪化すると、売却ができず利益が出ない年が続く。規模は小さいが、全社の利益のぶれを大きくする。
公共案件の安値入札と予算の縮小
公共の包括管理と運転管理は、自治体の予算に左右される。人口減で歳入が細れば、安値の入札が増える。シェアが高くても、受ける値段が低ければ利益は出ない。環境施設の高い利益率が薄まる危険がある。
マンション管理の利益率と再編
住宅管理は管理組合が相手で、管理費を上げにくい。大手の再編と競争が続き、利益率は4%弱にとどまる。管理組合が自主管理に戻る動きや、新しい管理方式が広がれば、戸数が減る危険もある。
今後の分かれ目
- 公共施設の包括管理で新規の大型案件が相次ぎ取れる
- 環境施設を含む公共分野の売上が伸び、全社の利益率が上がる。強気側の筋書きに近づく。
- 受託料の改定が人件費の上昇を上回って通り始める
- 建物管理の利益率が10%に近づく。やや楽観・楽観の確度が上がる。
- ROE10%の達成に向けて自己株の消却や大幅な増配が示される
- 余った現金の戻り方が1.0に近づき、価値の見込みが上がる。
- ロボット・遠隔監視で大手発注者が受託量を減らす
- 売上が伸びず、利益率も下がる。やや悲観・悲観の筋書きに近づく。
- 海外・給与計算などの買収で大きな減損が出る
- 資本配分への不信が強まり、余った現金の価値を割り引く方向に働く。
- 創業家側が非上場化や株の集約を進める動きが表に出る
- 第三者の買収ではなく少数株主の取り分が焦点になる。条件次第で価値の見方が変わる。
見ておくもの
- 建物管理運営事業の売上と利益率(受託料の改定が人件費に追いつくか)
- 公共施設の包括管理・環境施設の運転管理の新規受託件数
- 自己株の消却・配当の増額・政策保有株の売却の進み具合
- 海外と給与計算の買収の成果と、減損の有無
- マンション管理の管理戸数と利益率(3%台後半が保たれるか)
倍率と資本コストの決め方
倍率は式(正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC)÷(k − g)、残る割合は堀が浅いので普通の 1/2)と事業の経済性だけで置き、今の PER・PBR は使っていない。中立は ROE が k をわずかに上回るだけなので下限の 1÷k に近い。純現金 333 億円のうち、売上の約 1.5 か月分(約 190 億円)は人件費・外注費の運転資金として要るとみて除き、余った現金は 140 億円、戻り方は支配株主・低い還元性向から 0.5。金利は今の利ざやの変化(10 年で +6 億円)を純利益に含めた。家賃の約束は小さく、新リース会計基準で数字の形が変わる点は今と同じ形にそろえて見た。今の株価に寄せて筋書きを作っていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15.8→18.42 倍・やや楽観 PER 14.2→17.35 倍・中立 PER 13.5→16.34 倍・やや悲観 PER 11.3→11.69 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。