結論
ラバブルマーケティンググループは、企業のSNS運用を支援するコムニコを中心に、制作、広告運用、分析ツール、インフルエンサー施策、海外マーケティングを手掛ける会社である。筆者の結論は割高だ。理由は、売上を支える仕事の多くがAIエージェントによって内製化・自動化されやすく、現在の時価総額を正当化するほど長く残る利益を確認できないからである。
同社に実体がないわけではない。年間取引額が1,000万円以上のロイヤルクライアントは2026年3月末の42社から6月末には47社へ増え、主力ツールの年間経常収益も約3.4億円ある。大手企業の複数アカウントを扱う運用経験、顧客との関係、国内外の発信者とのネットワークは、競争の出発点として評価できる。しかし、顧客がSNS運用のために人手と管理画面を買い続けるかは、10年先には別の問題となる。
2026年3月期は決算期変更により5か月間しかない。売上13.0億円を単純に前年の12か月決算と比較すると、事業の勢いを誤って判断する。会社が開示した直近12か月の売上実績は28.33億円、営業利益は1.54億円であり、これを長期の事業規模の起点とした。2027年3月期第1四半期には売上が増えた一方、営業赤字と最終赤字が発生している。
財務面では買収によるのれんが約7.86億円あり、自己資本約9.4億円の大半を占める。現金預金と定期預金を二重計上しなければ、純有利子負債は約5億円で、厚い純現金を持つ会社ではない。2024年の大規模な自社株買いの後、2025年には第三者割当増資を実施した。事業規模が大きくなっても既存株主の取り分が増えるとは限らない。
10年後の中立では、顧客の広告予算そのものが消えるとは考えない。ただし、制作と日常運用の工数が減り、ツールにも値下げ圧力がかかると見る。悲観側には買収事業の減損と資金調達の制約を含めた。この結果、確率を加味した現在価値は時価総額約14.6億円を大きく下回る。中期計画の成長目標を達成できる可能性は認めるが、その目標を本質価値として先取りして支払うだけの安全域は見いだせない。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の見方では、まず10年後も顧客が同じ理由で同社に料金を払うかを問う。企業がSNSで顧客と接点を持つ必要は残るだろう。しかし、投稿や画像を作り、配信し、数字を集めるために現在と同じ人数の外注担当者が必要とは限らない。需要の存在と、現在の商売の形が残ることを区別したい。
同社には、企業の発信方針を理解し、炎上を避けながら運用し、複数媒体にまたがる業務を遂行してきた実績がある。大手顧客を47社まで増やしたことも成果だ。それでも、値上げが継続的に通った記録や、顧客が簡単に乗り換えられない証拠は薄い。AIを使う競合が同じ品質を低価格で提供すれば、ブランドの認知だけでは利益率を守り切れない。
株主のものになる利益は、会計上の純利益から事業を維持するための再投資を考えたものである。同社では大きな設備投資よりも、人材採用、営業、製品開発、買収した組織の統合が重要になる。これらは必要な費用であり、調整後EBITDAから簡単に消してよいものではない。営業利益率が十分に高まらなければ、売上を伸ばしてもオーナー利益はわずかにとどまる。
資本の使い方も慎重に見る。過去の自社株買いと、その後の第三者割当増資は、経営陣が資金需要に応じて判断していることを示す一方、既存株主の持分を安定して増やす方針の証明にはならない。のれんを積み上げて売上を買うのであれば、買収先が稼ぐ利益だけでなく、支払った価格を含めた増分の投下資本利益率を測る必要がある。
本物の堀であれば、短期の利益が多少落ちても、10年先の価格決定力を信じられる。同社については、その確信を持つにはまだ早い。運用支援の仕事は残るが、工数の減少に合わせて手数料が下がり、管理ツールの価値も変わる。予測の難しい事業を所有するには、失敗した筋書きでも損失が限られる買値が必要である。現在の時価総額には、その安全域が十分に見えない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、企業に代わってSNSを運用する仕事である。子会社コムニコは、投稿計画、文章と画像・動画の制作、顧客との確認、コメント対応、効果測定などを引き受ける。顧客は運用するアカウント数、投稿頻度、制作物、キャンペーンの複雑さに応じて費用を支払う。実質的には担当者の専門性と工数を販売する事業であり、広告媒体そのものを保有しているわけではない。
高単価の顧客には、単純な投稿代行を超える包括支援を提供する。会社は年間取引額1,000万円以上をロイヤルクライアントと呼び、2026年3月時点の平均年間取引額を約2,959万円と開示している。これらの顧客は営業基盤の中核だが、その取引額が独占契約で保証されているわけではない。大手顧客ほど複数の代理店を比較し、自社のマーケティング部門にも専門家を抱えている。
もう一つの柱が、comnico Marketing SuiteなどのSNS運用支援ツールである。複数のSNSアカウントについて、投稿予約、承認、分析を一つの画面で扱える。2026年3月の主力製品の年間経常収益は3.47億円、契約数は479件である。ATELUなどを含む運用支援ツール全体の契約件数は630件だが、全製品の売上が同じ単価であるとは仮定しない。
海外ではタイのDTK AD、訪日客向け媒体Talon Japan、インフルエンサー関連の事業がある。国内でもエルマーケとライスカレーLSを買収し、LINE施策や発信者を使った販促を補強した。これらは顧客の集客を支援する点では本業に近い。ただし、媒体・顧客データを自社で独占保有する部分と、外部媒体上で作業を代行する部分では、将来の経済性が違う。
法定開示上はマーケティング事業という単一の報告セグメントである。本分析では、収益の性質を見分けるために高単価の包括運用、その他の運用・制作・海外支援、運用支援SaaSの三つに分けた。以下の各売上・利益は開示された法定セグメント実績ではなく、顧客KPI、年間経常収益、連結売上から作った分析上の推計である。原価の部門別内訳がないため、推計利益には相応の不確実性が残る。
優良さと弱いところ
同社の強みは、SNSの仕様が変わるたびに運用方法を更新してきた経験と、大企業の複数アカウントをまとめて扱う実務能力にある。主力ツールでは一社が多数のアカウントを管理する利用例も開示されている。顧客が社内の承認手順やブランドごとの運用ルールを作り込むほど、担当会社を変える際の調整負担は増える。しかし、これは価格を自由に上げられるほど強い堀、つまり競争相手が容易に越えられない優位性とは言い切れない。
堀を判定するには、解約率と値上げの実績が重要である。会社が示す主力ツールの2027年3月期第1四半期の平均月次解約率は1.13%である。これを年間解約率1.13%と読み替えてはいけない。同じ月次水準が続くと仮定すれば年間の解約は約13%に達する。年5%未満の解約率、法対応に伴う長期の移行作業、値上げ後も顧客が残った実績といった、強い堀を証明する材料は確認できない。
利益率にも課題がある。2022年3月期には高い営業利益率を記録したが、その後は案件構成と投資負担によって利益が大きく変動した。2025年10月期の営業利益率は約6%であり、直近12か月換算でも約5%である。2027年3月期第1四半期は営業赤字だった。顧客数が増えることと、増分の売上から十分な現金が残ることは別問題だ。
さらに、買収によって得た利益の増分が投下資本に見合うかを検証する必要がある。2026年3月期ののれん約7.86億円は、同社の親会社株主に帰属する自己資本約9.4億円に対して大きい。のれんは買収先が将来稼ぐという期待の帳簿価額であり、清算すれば現金として戻る資産ではない。買収後の利益率、営業キャッシュフロー、のれん償却後の利益を継続して確認しなければならない。
筆者は同社の堀を弱いと評価する。運用担当者の熟練と顧客との信頼は実在するが、顧客の乗り換えを禁止する制度も、自社しか持たない不可欠な記録の正本もない。AIが作業コストを大きく下げれば、その便益の一部は顧客と競合代理店に移る。AIを自社で活用できることと、AIから生じる利益を長期にわたり独占できることは同じではない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
市場そのものは大きい。サイバー・バズとデジタルインファクトの調査によると、2024年の国内ソーシャルメディアマーケティング市場は約1兆2,038億円だった。しかし、その約9割に当たる1兆727億円はソーシャルメディア広告であり、媒体への広告支出が中心である。運用代行会社の手数料やツール売上を、この総額と直接比べて市場シェアを求めることはできない。
同調査で同社と直接関係する領域は、SNSアカウント運用支援283億円、キャンペーン企画・コンサルティング102億円、分析ツール66億円である。インフルエンサーマーケティング860億円も一部で競合する。SNS運用支援など三領域を合計すると451億円となる。市場全体は2029年に約2兆1,313億円へ拡大すると予測されるが、広告費の増加をそのまま運用代行の工数増加とみるのは危険である。
同社のロイヤルクライアント年間取引額は、42社に平均2,959万円を掛けると約12.43億円になる。これを2024年の運用支援市場283億円と比べれば約4.4%に相当する。ただし、包括支援には制作や企画も含まれるため、これは正式な市場シェアではなく、対象領域における規模感を測る参考値にすぎない。主力ツールの年間経常収益3.47億円も、分析ツール市場66億円に対して約5.3%となるが、製品範囲が一致しないため確定シェアとは呼べない。
競争相手にはサイバー・バズ、ホットリンク、テテマーチ、ガイアックスがあり、大型案件では電通グループや博報堂DYグループとも競合する。分析ツールでは国内外のSNS管理製品も選択肢となる。媒体を保有するMetaやTikTokなどが運用・分析機能を標準搭載すれば、独立したツールに支払う理由が弱まる。逆に、複数媒体を横断した承認管理や企業固有の規則に対応できれば、一定の需要は残る。
筆者が最も重く見る変化はAIエージェント代替である。文章、画像、投稿案、広告配信設定、報告書、分析の初稿をAIが自動で作れるようになれば、広告予算が増えても代理店へ発注する作業量は減りうる。企業が複数の代理店を競わせ、成果で契約を更新する構造はむしろ強まる。物価が年3%上がる環境でも、広告の制作・運用手数料を一律に1.34倍へ値上げできるとは考えない。
景品表示法によるステルスマーケティング規制や個人情報保護への対応は、人による確認と説明責任を残す。タイなど海外での商習慣、言語、発信者との関係も簡単には自動化できない。ただし、これらは全社の工数を守るより、高度な企画と最終判断を担う少人数の仕事を残す方向に働くとみる。10年後には市場の金額が拡大しても、同社が獲得できる作業量と手数料率は現在より小さくなりうる。
資本政策と M&A
会社が掲げる中期経営計画の数値目標は、2029年までに売上高50億円以上、営業利益4億円以上、時価総額100億円以上である。既存事業の増収、海外展開、インバウンド需要、買収の積み重ねで到達を目指す。一方、時価総額は経営者が事業活動だけで確約できる成果ではない。配当性向、DOE、総還元性向、毎年の自社株買い額について、同じ水準の定量的な約束は確認できない。
2027年3月期の会社予想は売上高35.37億円、調整後EBITDA4.00億円である。営業利益、経常利益、純利益については、買収費用の発生時期と金額を合理的に見積もれないとして会社予想を公表していない。添付の将来予想にある営業利益と純利益の値を、経営陣による確約と混同してはいけない。調整後EBITDAは、のれん償却費や買収関連費用などを加え戻す指標であり、最終的に株主へ帰属する利益より大きくなりやすい。
過去の資本配分には疑問が残る。2024年10月期には約3.58億円を投じて自社株を取得した。その後、2025年11月にはAIフュージョンキャピタルグループを割当先として36万株の第三者割当増資を実行した。買収資金と財務基盤の強化という事情は理解できるが、自己株式の取得と新株発行が短期間に交錯し、継続保有株主にとって資本効率の改善が積み上がったとは言い難い。
AIフュージョンキャピタルグループは2026年3月時点で約45.9%の議決権を保有し、実質支配力基準により親会社とされる。資本業務提携には新株発行に対する事前同意などの条項がある。親会社の支援による事業機会と、少数株主の利益が常に一致するとは限らない問題を分けて考える必要がある。
買収対象をEBITDA倍率で比較するだけでは不十分だ。エルマーケ、ライスカレーLSなどを取り込んだ後、追加したのれんを上回る営業キャッシュフローが生まれるかを検証したい。株主優待はあるが、現時点で大幅な配当成長を見込む根拠にはならない。10年間の還元は既存の優待に相当する少額を基礎とし、良好な筋書きに限って追加還元を認めた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
同社は単なる投稿代行会社ではない。2008年から蓄積したSNS運用の経験があり、顧客の社内承認やブランド管理に深く関与している。ロイヤルクライアントは42社から47社に増え、主力ツールも年間3億円超の継続収益を持つ。大手企業が多数のSNSアカウントを統一管理する場合、別の会社へすべてを移す手間は大きい。SNS媒体が増え、発信頻度が高まるほど、複数媒体を横断して管理できるサービスの需要は残る。
AIは脅威だけではない。制作と報告の工数が減れば、同じ人数で担当できる顧客が増え、利益率が上がる可能性がある。会社は自社でAI機能を実装し、運用の省力化に取り組んでいる。顧客が支払う料金をすぐに下げず、削減した作業時間を営業と高度な企画へ振り向けられれば、労働集約的な会社から、専門家とソフトウェアを組み合わせる会社へ変われる。
国内外の買収にも意味がある。エルマーケによるLINE関連施策、ライスカレーLSの発信者ネットワーク、タイでの運用経験、Talon Japanの訪日客向け媒体を組み合わせれば、顧客の販促予算を幅広く受け取れる。単独のSNS代理店では取り切れなかった案件に入ることで、大口顧客との取引額を増やせるだろう。
業績面では2026年3月までの直近12か月営業利益が1.54億円あり、2029年までの営業利益4億円目標も不可能な水準ではない。会社が掲げるAIの省力化を利益率改善に結び付け、買収先の顧客へ相互販売できれば、成熟した後でも現在より強い収益力を持つ可能性がある。多額の設備投資を必要としない点も、成功時の現金創出には有利に働く。
慎重な見方
SNSの市場が成長することと、SNS運用会社が成長することは同じではない。市場規模の大半は媒体費であり、同社が得るのは広告主が外部へ委託する作業と企画の対価である。AIエージェントは、投稿案、画像、分析、配信設定、顧客への報告をまとめて処理できる方向へ進んでいる。広告主の社内担当者が一人で扱える仕事の量が増えれば、代理店に払う人月と制作費は減る。
主力のcomnico Marketing Suiteも無傷ではない。利用者が画面を開いて投稿を管理する業務は、AIが外部ツールの操作を直接引き受ければ簡素化される。既存のSNS媒体が無料または低価格で分析機能を拡充する可能性もある。月次解約率1.13%は極端に高いわけではないが、年5%未満の離脱率を持つ不可欠な基幹システムと同列には扱えない。
買収による売上拡大にも注意が必要である。2026年3月時点ののれんは約7.86億円に達し、親会社株主に帰属する自己資本の大半を占める。買収先の期待利益が減れば、のれんの減損と利益の低下が同時に起こりうる。2027年3月期第1四半期には、買収後の統合費用や案件終了も影響して営業赤字となった。計画上の調整後EBITDAだけを見て財務が改善したと判断するのは危険だ。
借入金も小さくない。定期預金を現金預金に重複して足さなければ、純有利子負債は約5億円ある。金利が上がる世界では、新しい資金調達と借り換えの負担が増す。2024年の自社株買いの後に36万株の第三者割当増資を行った経緯を見ても、利益をためて自然に一株当たり価値を高める会社とはまだ言えない。事業の失速と買収の失敗が重なれば、少数株主には厳しい結果になりうる。
どちらに重みを置いたか
強みとして評価できるのは、顧客との継続取引、複数媒体の運用経験、海外事業の足場である。しかし、10年先の堀と資本効率を決める証拠としては、制作・運用工数の縮小、SaaSの価格競争、買収のれん、純有利子負債の重さが勝る。AIによる縮小は既に中立の数量と単価に織り込み、確率で同じ損失を機械的に二重計上しない。それでも、2027年3月期第1四半期の赤字や過去の希薄化という会社固有の事実を踏まえ、上側28%に対して下側41%と慎重側へ寄せた。本質価値は現在の評価を大きく下回るという判断である。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 476 円8 億円(+ 還元の換算額還元の合計 12 円0 億円)。 今の値に割り戻すと 209 円3 億円、今との差 −77.4%、 期待の年率 −6.3%(資本コスト 9.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 1,609 円26 億円 | 39 円1 億円 | +78.5% | +6.1% | 148 円2 億円 |
| やや楽観 | 19% | 1,037 円17 億円 | 24 円0 億円 | +15.0% | +1.4% | 202 円3 億円 |
| 中立 | 31% | 371 円6 億円 | 6 円0 億円 | −59.1% | −8.6% | 117 円2 億円 |
| やや悲観 | 26% | 68 円1 億円 | 5 円0 億円 | −92.1% | −22.8% | 19 円0 億円 |
| 悲観 | 15% | 6 円0 億円 | 3 円0 億円 | −99.0% | −39.1% | 1 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 476 円8 億円 | 12 円0 億円 | −47.2% | −6.3% | 487 円8 億円 |
今の株価時価総額 923 円15 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 9% 高度な企画とAI省力化が両立 利益 3 億円 · PER 11.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,609 円26 億円
コムニコの大手顧客との関係が維持され、AIが削減した制作時間を高度な戦略立案、広告表現の審査、複数媒体の統合管理へ振り向ける。大企業は投稿そのものを自動化する一方、ブランドごとの判断と最終責任は引き続き専門家に任せる。これにより、既存顧客からの取引額を大きく失わずに済む。
エルマーケとライスカレーLSの顧客基盤は、コムニコの大手取引先との相互販売につながる。タイの事業や訪日客向け媒体も、単なる広告枠の販売ではなく、現地の発信者との関係や企画力が評価される。大規模な追加買収を繰り返さず、買収済み事業の統合利益を回収できる。
主力ツールでは複数アカウント管理、承認、監査の機能が残り、AIを組み込んだ効率化が顧客離れを抑える。ただし、操作画面そのものの価値が上がるとは考えず、契約数量は直近の年換算起点から横ばい、単価も物価ほどには伸びない。広告制作・運用の数量も横ばいを限界とする。
連結営業利益率は改善し、2036年には営業利益約4.6億円を確保する。高い行使価格の新株予約権を含む行使が進み、既存株主の取り分は減る。中期計画に近い利益水準が定着することは評価するが、10年先に現在の代理店業務が大幅成長するとまでは見込まない。
- 高単価SNS運用・包括支援:数量 504(年間の大口顧客契約月数(社・月))× 価格 0.03(大口顧客1社・1か月当たりの平均売上(億円))→ 売上 17 億円・営業利益 3 億円。年換算504社・月を維持。単価は現在比1.34倍で物価並み。高度な企画への移行で利益率を改善。
- その他のSNS制作・広告運用・海外マーケティング:数量 1,560(月額換算した一般案件の延べ受託月数(案件・月、推計))× 価格 0.01(一般案件1件・1か月当たりの平均売上(億円))→ 売上 16 億円・営業利益 1 億円。一般案件の数量を維持し、単価は1.32倍。AI省力化で同じ売上から残る利益を増やす。
- SNS運用支援SaaS:数量 5,748(comnico Marketing Suiteの延べ契約月数(契約・月))× 価格 0.00(主力ツール1契約・1か月当たりの平均売上(億円))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。479契約の年間延べ契約数を維持。単価は1.15倍にとどめ、管理機能の利用を維持。
倍率:資本コストk=9.0%、AIエージェント代替を反映した10年より先の名目成長g_long=0%とする。弱い堀の残存割合1/3を用いても、g=0%では正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=1÷0.09=11.1111倍となる。10年後の純利益2.60億円にこの倍率を掛ける。自己資本の道筋は期首9.4億円+10年間の純利益合計約16.95億円+新株予約権の払込約2.63億円−累計還元0.70億円=約28.28億円。高い行使価格の権利がすべて行使される強い株価経路を仮定した。
確率:AIで生産性を上げながら、顧客への請求額を大きく下げずに済む場合である。大口顧客の維持、買収先の統合、管理ツールの継続利用が同時に成功する必要がある。AIサービス自体の有償売上額は確認できないため、楽観でも既存業務の実質数量を年間比較起点の1倍より増やさない。
やや楽観 19% 大口顧客を維持し、運用の効率化が進む 利益 2 億円 · PER 11.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,037 円17 億円
大手顧客のSNS運用では、企業ごとの承認手順や炎上対応を含む仕事が残る。顧客は広告制作と定例報告をAIで内製化するが、外部の専門家に依頼する企画や管理の部分を維持する。ロイヤルクライアントの数が大きく減ることはなく、案件単価も緩やかに上がる。
一般案件では、投稿制作、分析資料、広告配信設定の自動化が進む。AIを活用した安価な競合が増えるため、外注される案件月数は減る。コムニコは自社の業務を効率化し、取引規模の減少をある程度補う。高単価顧客とその他の案件では、事業の持ち方が違う。
エルマーケ、ライスカレーLSなど既存の買収事業は維持され、LINE施策やインフルエンサー施策の提案範囲が広がる。追加買収による大幅成長は見込まないが、統合に失敗して大きな減損を出すこともない。主力SaaSでは企業の複数アカウント管理という必要性が残るものの、契約数は緩やかに減り、実質的な単価は低下する。
2036年には連結売上約30.6億円、営業利益約2.9億円となる。売上は中期計画の目標に届かないが、運用の省力化が進んで利益は残る。新株予約権は低い行使価格のものを中心に行使されるとみる。株主にとっては良好な展開だが、確実な永続成長を示すほどではない。
- 高単価SNS運用・包括支援:数量 454(年間の大口顧客契約月数(社・月))× 価格 0.03(大口顧客1社・1か月当たりの平均売上(億円))→ 売上 15 億円・営業利益 2 億円。大口顧客の延べ契約月数は年換算起点の0.90倍、単価は1.30倍。
- その他のSNS制作・広告運用・海外マーケティング:数量 1,279(月額換算した一般案件の延べ受託月数(案件・月、推計))× 価格 0.01(一般案件1件・1か月当たりの平均売上(億円))→ 売上 13 億円・営業利益 1 億円。工数削減で数量0.82倍。価格は1.23倍で物価を下回る。
- SNS運用支援SaaS:数量 5,231(comnico Marketing Suiteの延べ契約月数(契約・月))× 価格 0.00(主力ツール1契約・1か月当たりの平均売上(億円))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。契約月数0.91倍、単価1.12倍。複数アカウント管理が継続利用を支える。
倍率:AIエージェント代替により長期名目成長g=0%、資本コストk=9.0%を採用する。正当化PERは1÷k=11.1111倍である。純利益1.55億円に適用し、余剰現金の別加算は行わない。自己資本は起点9.4億円+10年間の純利益合計約9.30億円+主として低行使価格の新株予約権払込約0.40億円−累計還元0.40億円=約18.70億円とする。
確率:高単価顧客の維持と一定の値上げは実現する一方、一般制作・運用の案件数はAIエージェント代替で減る筋書きである。既存顧客との関係とSaaSの継続収益が緩衝材になるため、極端な上振れよりは現実味がある。
中立 31% 運用工数が減り、SaaSにも価格圧力 利益 1 億円 · PER 11.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 371 円6 億円
企業がSNSを活用する需要は10年後も残る。ただし、投稿制作、日常の広告運用、定例分析といった仕事はAIエージェントに移る。企業は運用に必要な人数を減らし、自社のマーケティング担当者が複数媒体を管理できるようになる。コムニコへの発注は、高度な企画、対外的な判断、複雑な顧客対応へ絞られる。
ロイヤルクライアントとの関係は完全には失われない。しかし、現在の年間取引額に含まれる制作や管理の工数が減るため、一社から受け取る業務量が縮む。一般案件はさらに影響が大きい。物価が上昇しても、生成AIを使った安価な競合との価格競争によって、運用手数料は物価と同じ速度では上がらない。
comnico Marketing Suiteは一定数の企業に残る。複数アカウントの承認管理や投稿履歴の共有は必要だからだ。それでも、SNS媒体が標準機能を増やし、AIが画面操作を代行するため、契約月数は減り、実質単価も低下する。独自データや規制に基づく切替障壁を証明できない以上、会計や決済のような不可欠な業務基盤とは評価しない。
エルマーケとライスカレーLSの買収事業は、既存のサービスを補うものの、大きな新しい堀を作らない。2036年の売上は約23.3億円、営業利益は約1.16億円となる。利益は黒字を保つが、留保された自己資本に対する稼ぎは弱く、株主資本コストに届かない。現在の売上規模だけから将来を楽観することができない筋書きである。
- 高単価SNS運用・包括支援:数量 368(年間の大口顧客契約月数(社・月))× 価格 0.03(大口顧客1社・1か月当たりの平均売上(億円))→ 売上 12 億円・営業利益 1 億円。高単価顧客の実質数量は0.73倍、単価1.28倍。物価上昇を価格へ十分に転嫁できない。
- その他のSNS制作・広告運用・海外マーケティング:数量 936(月額換算した一般案件の延べ受託月数(案件・月、推計))× 価格 0.01(一般案件1件・1か月当たりの平均売上(億円))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。工数型・広告制作運用の実質数量0.60倍、単価1.16倍。内製化で売上と利益率が低下。
- SNS運用支援SaaS:数量 4,598(comnico Marketing Suiteの延べ契約月数(契約・月))× 価格 0.00(主力ツール1契約・1か月当たりの平均売上(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。管理画面型SaaSの契約月数0.80倍、単価1.08倍。価格は物価に大きく劣後。
倍率:10年中立のROEは0.54÷13.11=約4.1%で、資本コスト9.0%を下回る。したがって成長への再投資から超過価値を見込まず、正当化PERの上限1÷k=11.1111倍を使用する。AIエージェント代替を織り込んだ長期名目成長率は0%であり、同じ理由を倍率からさらに割り引かない。10年間の純利益合計約3.81億円から優待等の還元0.10億円を控除し、期首自己資本9.4億円を13.11億円へ流す。
確率:大口顧客との関係は一定程度残るが、制作・運用の自動化が外注工数を減らす。一般案件と操作画面型SaaSへの代替圧力が同時に進み、買収による売上の積み増しを永続成長と見なさない中心シナリオである。
やや悲観 26% 顧客の内製化が想定以上に進む 利益 0 億円 · PBR 0.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 68 円1 億円
大企業がSNS運用担当者の数を減らすだけでなく、投稿計画から効果測定までの一連の業務を社内AIに移す。複数媒体の運用規則も企業の社内システムに組み込まれ、代理店が関与する範囲は縮む。コムニコのブランドと実績は残るが、競合との差がつきにくくなる。
高単価顧客は減り、一社当たりの業務量も小さくなる。一般案件では価格競争が厳しくなり、外部に出される案件月数は現在の年換算起点の半分近くになる。海外案件についても現地代理店との競争が続き、タイや訪日客向け媒体の存在だけでは国内の縮小を補えない。
主力SaaSは承認管理などの用途で残るものの、顧客がAIで投稿・分析業務を自動化するにつれて契約が減る。契約先の業務に組み込まれているという利点は一定の解約防止効果を持つが、強い値上げ力は生まれない。運用会社の人員を急に減らすことは難しく、本社費用と顧客対応の固定費が利益を圧迫する。
連結営業利益は約0.38億円まで低下し、金融費用などを差し引くと純利益は約0.14億円にとどまる。自己資本には稼げない資産が残り、ROEは極めて低い。過去の市場評価ではなく、縮小した事業の稼ぐ力と回収可能資産の両方から評価すべき状態となる。
- 高単価SNS運用・包括支援:数量 302(年間の大口顧客契約月数(社・月))× 価格 0.03(大口顧客1社・1か月当たりの平均売上(億円))→ 売上 9 億円・営業利益 1 億円。高単価顧客の数量0.60倍、価格1.15倍。顧客の内製化が深まる。
- その他のSNS制作・広告運用・海外マーケティング:数量 811(月額換算した一般案件の延べ受託月数(案件・月、推計))× 価格 0.01(一般案件1件・1か月当たりの平均売上(億円))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。一般案件の数量0.52倍、価格1.08倍。固定人件費が利益を圧迫する。
- SNS運用支援SaaS:数量 4,024(comnico Marketing Suiteの延べ契約月数(契約・月))× 価格 0.00(主力ツール1契約・1か月当たりの平均売上(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。SaaSの契約月数0.70倍、価格1.02倍。値上げはほぼできない。
倍率:ROEは約1.5%で資本コスト9.0%を大幅に下回る。稼ぐ力の上限は純利益0.14億円÷0.09=約1.56億円であり、その範囲内で1.10億円とする。低いPBRを10年間積み上げた自己資本に掛けて過大評価しないよう、倍率の分母は現時点の自己資本9.4億円に固定した。将来の資本の道筋は期間中の純利益合計約0.36億円−還元0.08億円−のれん等の減損約0.28億円で起点の9.4億円に戻るとみる。
確率:下に寄せる理由:同社は広告運用・制作というAIに代替されやすい業務に大きく依存し、直近四半期の赤字、買収のれん、約5億円の純有利子負債という固有の弱点を持つ。中立に既に工数の縮小を入れているため、ここでは取引関係の悪化と利益率の低下が重なる場合に限る。
悲観 15% 運用受託の構造的敗北と買収の減損 利益 −1 億円 · PBR 0.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 6 円0 億円
企業のSNS投稿、画像制作、広告配信、レポート作成の大半がAIエージェントへ移る。人による最終確認や高難度の危機対応は残るが、その仕事だけでは従来の社員数と費用を支えられない。広告主は必要なときだけ専門家を起用し、継続的な運用契約を減らす。
ロイヤルクライアントの一部は社内運用に移り、一般案件では値下げ競争が進む。タイの事業、インフルエンサー施策、LINE支援なども、それぞれ独立して強い利益を出すまでには育たない。新たな買収によって見かけの売上を補おうとすれば、追加資金と経営陣の時間を消費する。M&Aを成長の手段から損失の原因へ変えてしまう危険がある。
comnico Marketing Suiteには一部の複数アカウント管理需要が残るが、操作画面の多くは顧客が利用するAIの背後に隠れる。SNS媒体の標準機能と競争し、契約数と単価が下がる。利益率が低い一般案件では、人件費と本社費用を賄えず赤字となる。会社全体でも営業損失が続く構造となる。
収益の悪化に伴い、買収で積み上げたのれんの一部が減損され、資本の厚さが失われる。借入金の借り換えや財務制限条項が経営の自由度を狭め、新たな株式発行が必要になる可能性もある。2036年の売上は約12.6億円で、現在の年換算実績の半分未満になる。株主に残る確実な清算価値を確認できないため、既存株主の将来の持分価値がゼロに近づく厳しい筋書きとした。
- 高単価SNS運用・包括支援:数量 227(年間の大口顧客契約月数(社・月))× 価格 0.03(大口顧客1社・1か月当たりの平均売上(億円))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。高単価顧客の数量0.45倍、価格1.08倍。包括運用の価値が縮小。
- その他のSNS制作・広告運用・海外マーケティング:数量 546(月額換算した一般案件の延べ受託月数(案件・月、推計))× 価格 0.01(一般案件1件・1か月当たりの平均売上(億円))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。一般案件の数量0.35倍、価格1.05倍。人員と固定費が残り赤字化。
- SNS運用支援SaaS:数量 3,334(comnico Marketing Suiteの延べ契約月数(契約・月))× 価格 0.00(主力ツール1契約・1か月当たりの平均売上(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。契約月数0.58倍、単価横ばい。管理画面の独立した価値が薄れる。
倍率:営業損失と金利負担により純利益も赤字となるため、事業の稼ぐ力をPERで評価すると正の株式価値は得られない。一方、売掛金の回収や顧客契約の限定的譲渡で、債務返済後に約0.1億円が残る資産側の筋書きを採用する。現在の自己資本9.4億円に対するPBR約0.01064倍で時価総額0.1億円となり、回収可能資産の床0.1億円を超えない。将来自己資本6.4億円にPBRを掛けていない。自己資本は期首9.4億円に減損前の期間純利益約0.05億円を加え、還元0.05億円とのれん等の減損3.0億円を控除して6.4億円に至る。
確率:AIエージェントによる制作・運用の自動化に加え、買収先の収益悪化、のれんの減損、銀行借入の負担が重なる複合的な悲観である。売上が年換算起点の約45%まで減少し、株主に帰属する事業価値がほぼ失われる。直ちに倒産するという予想ではないが、少数株主の価値が消える経路を無視しない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
高単価SNS運用・包括支援
大企業向けのSNSアカウント運用、ブランド管理、投稿制作、分析、企画などの包括的な支援。AIエージェント代替の型は人月・工数で売る広告制作・運用である。
| 数量年間の大口顧客契約月数(社・月) | 価格大口顧客1社・1か月当たりの平均売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 210 | 0.02 | 5 | 0 |
| 10 年後 中立 | 368 | 0.03 | 12 | 1 |
取り方:会社発表のロイヤルクライアント42社、平均年間取引額2,958.7万円から、1社・月当たり売上を2,958.7万円÷12=約246.6万円とした。2026年3月期は5か月決算なので数量は42社×5か月=210社・月とする。売上5.18億円は年間取引額が期間中均等に発生した場合の推計であり、会社が発表した部門売上ではない。10年の比較起点は42社×12か月=504社・月、年間売上約12.43億円とした。2026年6月末の大口顧客47社という追加開示は成長の確認材料であり、異なる期間の数字を混ぜて足さない。顧客単価には企画・制作・運用の工数対価が含まれると考え、AIエージェント代替により中立の実質数量は504社・月の0.73倍、価格は物価1.34倍を下回る1.28倍とする。売上・営業利益の部門配分は分析上の推定である。
その他のSNS制作・広告運用・海外マーケティング
一般的なSNS運用、インフルエンサー施策、LINEマーケティング、広告制作、海外・インバウンド支援など。自社媒体の小部分を除き、AIエージェント代替の型は人月・広告の制作運用である。
| 数量月額換算した一般案件の延べ受託月数(案件・月、推計) | 価格一般案件1件・1か月当たりの平均売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 800 | 0.01 | 6 | 0 |
| 10 年後 中立 | 936 | 0.01 | 9 | 0 |
取り方:法定の部門別案件数・平均単価は非開示のため推計。2026年3月期連結売上13.03億円から、高単価顧客の期間換算5.18億円と主力SaaSの期間換算1.45億円を差し引いた約6.40億円をその他の事業に配分した。便宜上、5か月で800案件・月、月額約79.7万円とする。会社の新規受注116件は期中新規案件数であり、稼働中の総案件数とは違うため、800件を開示実績と見なさない。12か月比較では会社開示の直近12か月売上28.33億円から高単価顧客約12.43億円、主力SaaSのARR3.47億円を控除し、その他を約12.43億円と推定する。高単価顧客とSaaSの契約に一部重複の可能性があり、内訳には誤差がある。10年の中立は延べ案件月数の0.60倍、価格の1.16倍とし、広告の制作・運用手数料が物価に十分追随しないことを反映する。海外現地業務と自社媒体について独立した売上が開示されないため、全体を強い媒体プラットフォーム扱いにはしない。
SNS運用支援SaaS
comnico Marketing Suiteを中心とするSNS投稿・承認・分析の管理ソフト。AIエージェント代替の型は席課金・操作画面型SaaSである。
| 数量comnico Marketing Suiteの延べ契約月数(契約・月) | 価格主力ツール1契約・1か月当たりの平均売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,395 | 0.00 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 4,598 | 0.00 | 3 | 1 |
取り方:会社開示の2026年3月末comnico Marketing Suite479契約、ARR3.47億円から、1契約・月当たり約6.04万円と推定する。2026年3月期は5か月なので479契約×5か月=2,395契約・月、ARR×5÷12=約1.45億円を期間売上の代理値とする。ARRは期末時点の年換算継続売上であり、正確な当期認識売上とは異なる。ATELU等を含めた全ツール630契約を同じ単価で掛けていない。2026年6月時点の主力ARRは約3.44億円で、全ツール契約は599件。開示された月次解約率1.13%は年間解約率ではない。10年の中立では契約月数を12か月起点の0.80倍、単価を1.08倍とし、AIエージェントが管理画面を代替して価格決定力を弱めると考える。低い年間解約率と規制対応の切替障壁という二つの証拠がないため、記録の正本の型は適用しない。
リスクと懸念
AIエージェント代替による工数と手数料の減少
制作・投稿・広告配信設定・分析報告をAIエージェントがまとめて実行すれば、同社の受託量はSNS市場の拡大とは別に縮む。成果報酬へ移行して高い粗利益を得た具体的な開示は確認できないため、AIによる省力化をそのまま売上成長に読み替えない。人月で売る部分は数量と手数料率の両方に圧力がかかる。
操作画面型SaaSの代替
comnico Marketing Suiteは企業の複数SNSアカウント管理に役立つが、AIが直接SNS媒体と連携すれば、利用者が個別の管理画面を操作する必要が減る。月次解約率を年次解約率と混同せず、年間の顧客維持率を確認する必要がある。値上げの実績と独自データの優位性が示されなければ、基幹業務ソフトのような高い永続価値は認めにくい。
買収のれんと投下資本利益率
2026年3月期末ののれん約7.86億円は自己資本に対して大きい。買収先の売上が連結に加算されても、買収代金に見合う現金が残らなければ価値は増えない。追加のれん償却、統合費用、減損によって、調整後EBITDAと株主に帰属する利益の差が開く可能性がある。買収先ごとの営業キャッシュフローと資本回収期間を重視する。
純有利子負債と金利上昇
2026年3月期末の借入金は約15.3億円で、現金預金約10.0億円を差し引いても約5.2億円の純有利子負債が残る。現金に含まれる定期預金を再び加算してはいけない。借り換え金利が上がると利益が圧迫され、低収益期には銀行との財務制限条項も経営判断を制約する。大型買収の追加資金を借金に依存すれば影響はさらに大きくなる。
親会社支配と既存株主の希薄化
AIフュージョンキャピタルグループは実質支配力基準で親会社となっており、新株発行に対する事前同意を含む資本業務提携契約がある。支援による案件獲得は利点だが、買収と増資が親会社および新規株主に有利となる可能性もある。2024年の自社株買いと2025年の36万株増資という経緯は、一株当たり価値の増加を継続して確認する必要性を示す。
広告規制・SNS媒体への依存・顧客の内製化
景品表示法による広告表示規制、個人情報保護、各SNSの仕様変更は、同社に追加の管理負担を発生させる。一方で、規制対応の必要性がそのまま独占的な利益を保証するわけではない。媒体側の管理・分析機能の拡充や、大口顧客の社内AI運用基盤の導入によって、同社が取引に介在できる範囲が狭まる可能性がある。
短期決算の比較とM&Aによる見かけの成長
2026年3月期は5か月決算であり、12か月の前年実績との単純比較は誤解を招く。会社は直近12か月換算の実績を示しているが、その期間には買収先の連結時期の違いも含まれる。2027年3月期第1四半期は売上が伸びても営業赤字だった。既存事業の数量、買収による上乗せ、利益率の改善を分けて追わなければ、投下資本の効率を判断できない。
今後の分かれ目
- comnico Marketing Suiteの年間解約率が5%未満に下がり、その状態で値上げを継続できたら
- 管理機能が単なる操作画面を超えて顧客業務に定着した証拠となる。長期の契約数量と単価の前提を引き上げ、SaaS部分の堀を再評価する。ただし、記録の正本とみなすには独自データや移行障壁の追加証拠も必要である。
- 有償のAIサービスについて継続収益額と顧客数が開示され、既存運用売上の減少を補い始めたら
- AIを単なる社内の省力化技術から、顧客が対価を払う新商品へ転換できたと評価する。確認された新商品の数量と単価だけを分けて積み上げ、楽観側の比重を増やす。
- 2029年までに営業利益4億円以上を達成し、営業キャッシュフローも同程度に増えたら
- 計画の達成を評価する。ただし、買収代金、のれん償却、借入金返済、追加増資の有無を差し引いて判断する。単年度の調整後EBITDAだけが増えた場合は、長期の評価を変えない。
- ロイヤルクライアントの社数は増えても、一社当たりの年間取引額が減り始めたら
- 契約関係は維持されてもAI内製化によって工数が削られている兆候とみる。高単価支援の実質数量と価格を下げ、やや悲観側の重みを増やす。
- 新しい買収に伴ってのれんと純有利子負債が増え、営業利益率が改善しなかったら
- 買収の増分投下資本利益率が資本コストに届かない可能性を重く見る。売上目標の達成だけでは評価を引き上げず、減損と将来の希薄化を悲観側に追加する。
- 配当または継続的な自社株買いを開始し、純株数を減らしながら借入金も削減できたら
- 稼いだ現金が既存株主へ戻る実績と判断する。余剰資金の戻り方を0.75から1.0へ見直し、企業全体の利益だけでなく既存株主の持分価値も再評価する。
見ておくもの
- ロイヤルクライアント数と一社当たり年間取引額の推移
- comnico Marketing SuiteのARR、契約件数、月次解約率と年間換算維持率
- 連結売上の既存事業成長率と買収による上乗せ額の区分
- 有償AIサービスの売上・契約数と実現済みの人件費削減額
- のれん残高、償却費、減損、買収先の営業キャッシュフロー
- 純有利子負債、借り換え金利、財務制限条項の余裕
- 発行済株式数、自己株式、未行使新株予約権と親会社持分
- 2029年の売上50億円・営業利益4億円目標の進捗と株主還元方針
倍率と資本コストの決め方
評価の起点には添付の2026年10月22日株価と自己株控除後株数を用い、現在の時価総額約14.63億円はすべての事業・倍率の計算後にだけ比較した。2026年3月期が5か月決算のため、販売数量の長期比較では会社開示の直近12か月売上28.33億円を参照し、開示された大口顧客とARRから実際の件数単位を推定した。代理店業務の中立数量は年換算起点に対して0.60~0.73倍、管理画面型SaaSは0.80倍とした。AIエージェント代替はこの数量と価格、および最上位のg_long=0%だけに効かせ、kの寿命項目では二重に引いていない。
資本コストは基本7.5%に事業変動、値決め力、純負債の1.5%を加えた9.0%である。楽観から中立のPERは市場の現在倍率や同業の倍率に合わせず、10年より先のg=0%とk=9.0%から求める正当化PER11.1111倍を使用した。やや悲観のPBRは今の自己資本9.4億円を分母とし、悲観はのれん減損後の自己資本を表示し、借入返済後の限定的な事業資産の換価余剰0.1億円を悲観の床としている。
2026年3月期の現金預金約10億円に定期預金を重複して加えていない。借入金約15.3億円を差し引くと純有利子負債であるため、余剰現金を別加算していない。既存株主の取り分は未行使新株予約権の行使を筋書きごとに分けた。10年間の自己資本は純利益、還元、権利行使の払込、減損の道筋と整合させた。2028年3月期から予定される新リース会計基準によって貸借対照表の表示は変わりうるが、10年後の営業利益は家賃を営業費用とする現在と比較可能な形で見ている。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。10年国債利回り3.0%と株式リスクプレミアム4.5%から基本7.5%とし、事業の変動、値決め力の弱さ、純負債を合わせた1.5%を加え、株主資本コストを9.0%とする。親会社支配と個別M&Aの失敗は資本コストに上乗せせず、筋書きと確率で扱う。