結論
アサンテは、既存の木造住宅の床下で、白蟻の防除と湿気対策、地震対策を行う会社だ。農協(JA)の指定業者として訪問販売するのが営業の基盤である。筆者の結論は「現金の厚みは本物だが、稼ぐ力が戻る確証が薄く、値段は割高に寄る」である。
まず稼ぐ力。営業利益は 2015 年 3 月期の 23 億円から 2026 年 3 月期の 8 億円まで落ち、2027 年 3 月期の会社予想は 2 億円だ。広告費と人件費が増える一方で、売上は 11 年でほぼ横ばいだった。
次に強み。白蟻防除の市場で約 12% のシェアを持つ首位級で、純現金は時価総額の 4 割近い。自己資本比率は 68.6%。
最後に株主還元。配当は 1 株 六十二円で据え置いてきたが、これは純利益を上回る。筆者は、利益率が計画の途中までしか戻らない前提を中立に置いた。売上が名目で横ばいを続けた実績を、計画より重く見る。株価の根拠の半分は現金で、事業の回復は残りの半分だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の目で見ると、悩ましい会社だ。現金は厚く、財務は堅い。ただ、稼ぐ力が落ちている。
良い点は、純現金が時価総額の 4 割近くあること。借金はほぼ無く、事業が傾いても会社が倒れる心配は小さい。白蟻防除の首位級で、住宅が古くなるほど需要は残る。
悪い点は、利益率が 11 年で 18% から 6% へ下がり、会社の計画では 2027 年 3 月期にさらに 1.5% まで落ちること。売上は伸びず、広告と人件費をかけても件数が伸びない。配当は純利益を上回り、現金から払っている。
筆者は、利益率が計画の途中までしか戻らない形を中立に置いた。それでも今の値段は、現金の厚みを考えても割高に寄る。買うなら、営業利益が 8 億円を超えて戻る証拠を待ちたい。持つなら、現金が配当で減る速さを確かめたい。配当の六十二円が守られる間は現金が目減りするだけだが、守れなくなれば合図になる。
何で稼ぐ会社か
事業は単一で、白蟻防除、湿気対策、地震対策の施工が柱だ。2026 年 3 月期の売上 143.6 億円のうち、白蟻防除が 62 億円(43%)、地震対策が 33 億円(23%)、湿気対策が 28 億円(19%)、その他が 18 億円(13%)。その他には個人向けの害虫・害獣防除や高断熱施工が入る。
営業の基盤は農協との提携だ。農協の指定業者として、組合員の住宅を訪問して床下の点検を提案する。農協が代金の回収を担うので、会社は回収のリスクを負いにくい。提携先は企業・団体を含め約 1,100 社。
従業員は連結で約 1,000 人。営業系が 350 人、技術系が 220 人。2026 年 3 月期の営業利益率は 5.8% で、2015 年 3 月期の 18% から大きく下がった。
受注は 4 月から 7 月の羽アリの時期に集中し、上期に利益が偏る。年間休日を原則 120 日に増やした 2027 年 3 月期は、営業日が約 1 割減る。猪苗代の研修センターは運用を止め、2.8 億円の特別損失を出した。
優良さと弱いところ
強みは、全国の農協との提携と、床下の施工の実績だ。白蟻防除の市場は約 490 億円、アサンテは 57 億円で約 12% を持つ。上位 10 社で 3 割という、細かく分かれた市場の中では首位級にあたる。
ただし堀は深くない。白蟻防除は、中小の業者が約 3,000 社あり、ダスキンやサニックスのような競合も多い。顧客は価格の違いが分かりにくく、訪問販売の信頼で成約が決まる。特定商取引法の規制を受ける。
ここ 11 年で売上は名目でほぼ横ばい(127 億円から 144 億円)だった。物価を考えると実質の施工量は減っている。利益率の悪化は、広告宣伝費の増加(2026 年 3 月期に 6.1 億円)と人件費の上昇による。
資本効率は ROE が 2.9% まで落ちた。弱点は農協提携への依存と、人を増やさないと売れない構造だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
白蟻防除は、築年数の進んだ木造住宅が続く限り、需要が消えない市場だ。ただし新築の木造住宅は防蟻処理が標準で、新しい需要は既存住宅の点検に頼る。国内の住宅ストックは増えず、市場は 490 億円ほどで横ばいが続く。空き家の増加も、防除を頼む持ち主を減らす。
顧客は、問題が目に見えないために防除を後回しにする。訪問販売で床下を見せて危険を伝える手法が主だが、特定商取引法の規制が強まれば、この経路が細る。農協が顧客の信頼を担保している点が、アサンテの強みであり弱みでもある。
競合は、サニックスのような専業、ダスキンのような生活サービス、各地の工務店や中小の業者になる。価格競争になりやすく、広告費をかけて問い合わせを集める競争が続く。ネットでの比較や口コミで、訪問販売の効きは落ちつつある。
人手の確保も課題だ。技術系の職人と営業系の社員がともに必要で、賃金の引き上げが避けられない。数量は横ばい、単価は人件費の上昇を転嫁できるかで決まる市場だ。アサンテの伸びしろは、市場の拡大ではなく、中小業者からシェアを奪えるかにかかっている。
資本政策と M&A
配当は 1 株 六十二円で、2022 年 3 月期から据え置いている。配当総額は年 6 億円ほどで、2026 年 3 月期の純利益 2.7 億円を上回る。自己株買いは 2021 年 3 月期に約 20 億円、2025 年 3 月期に約 19 億円。2026 年 3 月期はほぼ無かった。会社の方針は、安定配当を保ち、自己株取得は検討する、とある。
現金等は 67.5 億円、有利子負債は 3.6 億円と小さい。自己資本比率は 68.6%。営業キャッシュフローは 2026 年 3 月期に 3.8 億円まで落ち、配当と合わせると現金は毎年減っている。車両のリース料が年 2 億円強あり、固定の支払いとして残る。
株主優待は、100 株以上にギフトカード千円分(年 2 回)。2027 年 3 月末から継続保有の要件と、自社サービスの割引が加わる。費用は年 1 億円未満と筆者は見る。
中期計画は 3 年固定で、2029 年 3 月期に営業利益 14.4 億円(利益率 8.5%)を目指す。大株主の詳細は開示から確かめられなかった。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
落ち込みは一時的だ。2027 年 3 月期の利益の減少は、給与の引き上げと人員の増加、営業日の減少という、自ら選んだ先行投資によるもの。中期計画では 2029 年 3 月期に売上 169 億円、営業利益 14.4 億円(8.5%)を目指し、その先は 10% 超を掲げる。
基盤は強い。白蟻防除で 12% のシェアを持ち、提携先は 1,100 社から 2,400 社へ増える計画だ。第 1 四半期は売上が減ったが、新営業所の開設と広告の強化で申込調査件数は増えている。
財務は厚い。現金等は 67.5 億円、有利子負債は 3.6 億円。時価総額の 4 割近くが現金で、利益が戻れば、現金と事業の両方が株主に残る。
還元は手厚い。総還元性向は 5 年で 78〜372% と高く、配当は 六十二円を守る。株主資本コストを 4〜5% と見て、ROE 10% 以上を目標に掲げる。人員の増加は、賃金の引き上げと合わせて、長い目で定着率と技術の質を上げる狙いもある。
慎重な見方
利益率は 11 年で 18% から 6% へ落ちた。売上は名目で横ばい(127 億円から 144 億円)、実質では縮んでいる。広告費を 17% 増やしても売上は 2.4% しか伸びず、投資の効きが落ちている。
会社の予想は 2027 年 3 月期に営業利益 2 億円、76% の減益だ。第 1 四半期は売上が 10.5% 減り、営業利益は 54.9% 減った。2026 年 3 月には今期予想を下方修正した直後でもあり、計画の達成実績が弱い。
営業日の減少は永続的だ。年間休日の増加は元に戻せず、1 人あたり売上は構造的に下がる。訪問販売は規制と口コミの変化で効きが落ちる。農協提携への依存も大きい。
配当は純利益を上回り、現金から払っている。営業キャッシュフローは 3.8 億円まで落ち、現金は毎年減る。一部の売上が戻っても、利益率が 8.5% に戻る確証は薄い。計画は人員を 177 人増やして売上を 2 割近く伸ばす前提で、増員が売上に結びつく保証はない。
どちらに重みを置いたか
筆者は、利益率が 6.5% まで部分的に戻る形を中立と置き、確率は中立 36%、やや悲観 28%、悲観 12%、やや楽観 18%、楽観 6% とした。強気の言い分の「落ち込みは先行投資」は半分認め、慎重な言い分の「効きの低下と実績の弱さ」は、やや悲観の厚みに反映した。現金の厚みは、悲観の床と余った現金に反映している。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,257 円123 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 543 円53 億円)。 今の値に割り戻すと 952 円93 億円、今との差 −22.4%、 期待の年率 +3.9%(資本コスト 8.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 3,117 円305 億円 | 870 円85 億円 | +225.2% | +12.5% | 239 円23 億円 |
| やや楽観 | 18% | 2,110 円206 億円 | 737 円72 億円 | +132.2% | +8.8% | 512 円50 億円 |
| 中立 | 36% | 1,493 円146 億円 | 624 円61 億円 | +72.7% | +5.6% | 762 円74 億円 |
| やや悲観 | 28% | 395 円39 億円 | 389 円38 億円 | −36.1% | −4.4% | 219 円21 億円 |
| 悲観 | 12% | 354 円35 億円 | 205 円20 億円 | −54.4% | −7.6% | 67 円7 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,257 円123 億円 | 543 円53 億円 | +46.8% | +3.9% | 1,800 円176 億円 |
今の株価時価総額 1,226 円120 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 6% 中期計画が達成され、利益率は 10% に戻る 利益 17 億円 · PER 16.4 倍 · 株価時価総額 3,117 円305 億円
申込調査件数が 18,000 件まで増え、提携先は 2,400 社に広がる。人員は 1,200 人。1 人あたり売上は物価を上回る 1.46 倍(2,100 万円)まで上がる。広告と人件費の先行投資が実り、新しい個人向けの害虫・害獣防除(PCO)も育つ。
営業利益率は 10%。2015 年 3 月期の 18% には届かないが、広告費が重い今の構造としては高い。営業利益は 25 億円、純利益は 17 億円。
配当は 1 株 六十二円から段階的に上がり、自己株買いも加わる。自己資本は 110 億円ほどで、余った現金も積み上がる。ROE は 15% に戻る。
- 白蟻防除・床下の湿気対策・地震対策:数量 1,200(期中平均人員(人))× 価格 2,103(1 人あたり年間売上(万円))→ 売上 252 億円・営業利益 25 億円。人員 1.20 倍 × 1 人あたり売上 1.46 倍、営業利益率 10.0%
倍率:事業の純利益 17 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 25.1% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 16.6%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)33 億円。全体の PER 16.38 倍、時価総額 305 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2029 年 3 月期に営業利益 14.4 億円(利益率 8.5%)を達成し、その後に 10% 超へ進む筋書き。会社は 2026 年 3 月に今期予想を下方修正しており、計画の達成実績は弱い。休日増による営業日の減少も重なる中で、全部がうまく運ぶ条件が要る。確率は低い。
やや楽観 18% 提携先が増え、利益率は 8% まで戻る 利益 12 億円 · PER 15.3 倍 · 株価時価総額 2,110 円206 億円
提携先が増え、申込調査件数が伸びる。人員は 1,175 人。1 人あたり売上は物価どおり 1.34 倍。休日増の影響は、増員と価格で打ち消される。
営業利益率は 8%。2029 年 3 月期の計画(8.5%)にやや届かない水準だ。営業利益は 18 億円、純利益は 12 億円。
配当は 六十二円を保ち、時折自己株買いも行う。自己資本は 100 億円ほどで、余った現金は今の水準を保つ。申込調査から成約までの歩留まりも改善し、広告費の効きが戻る形だ。個人向けの害虫・害獣防除(PCO)も、会社の目標の一部が実現する。
- 白蟻防除・床下の湿気対策・地震対策:数量 1,175(期中平均人員(人))× 価格 1,930(1 人あたり年間売上(万円))→ 売上 227 億円・営業利益 18 億円。人員 1.18 倍 × 1 人あたり売上 1.34 倍、営業利益率 8.0%
倍率:事業の純利益 12 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.7% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.8%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)25 億円。全体の PER 15.33 倍、時価総額 206 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:提携先の拡大と人員の増加で売上が伸び、利益率が中期計画の途中の水準(8%)まで戻る筋書き。ただし計画の達成実績が弱く、営業日の減少も残るため、中立より低い確率とする。
中立 36% 営業日の減少が重く、利益率は 6.5% で止まる 利益 9 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 1,493 円146 億円
人員は 1,150 人(今の 1.15 倍)。年間休日を 120 日にして営業日が約 10% 減ったぶん、1 人あたり売上は物価に届かず 1.25 倍(約 1,800 万円)にとどまる。売上は 206 億円で、実質では今の 1.07 倍だ。
営業利益率は 6.5%。足元の 5.8% より良いが、計画の 8.5% には届かない。給与の引き上げと広告費が重く、2020 年 3 月期の 15.5% には戻らない。営業利益は 13 億円、純利益は 9 億円。
配当は 六十二円を据え置く(年 6 億円)。純利益とほぼ同じで、自己資本と余った現金は今の水準を保つ。
- 白蟻防除・床下の湿気対策・地震対策:数量 1,150(期中平均人員(人))× 価格 1,795(1 人あたり年間売上(万円))→ 売上 206 億円・営業利益 13 億円。人員 1.15 倍 × 1 人あたり売上 1.25 倍(物価 1.34 倍に営業日の減少で実質 0.93 倍)、営業利益率 6.5%
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.2% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.6%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)21 億円。全体の PER 14.34 倍、時価総額 146 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の計画(2029 年 3 月期に 8.5%)は、人員を増やし営業日が減る中で売上を伸ばす筋書き。直近の実績(5.8%)より少し良い 6.5% を置き、計画と実績の中間に落とした。過去 11 年で売上が名目でほぼ横ばいだった実績を踏まえ、数量は小さく伸ばす。
やや悲観 28% 訪問販売の効きが落ち、利益率は 2.5% に薄まる 利益 3 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 395 円39 億円
人員は 1,030 人まで増えるが、1 人あたり売上は物価に大きく届かず 1.14 倍にとどまる。営業日が減り、飛び込みの訪問販売の効きが落ちる。広告費をかけても申込調査が伸びない。
営業利益率は 2.5%。2027 年 3 月期の会社予想 1.5% と、翌期のアナリスト予想 4.3% の間に近い。営業利益は 4 億円、純利益は 3 億円。
配当は減らして 年 4 億円ほど、10 年で 38 億円。純利益を上回る年が続き、余った現金が 20 億円まで減る。人員の増加で固定費が重くなる一方、売上は伸びず、採用した人員の生産性が下がる。会社が人員の増加を止める判断をしても、費用の削減は遅れて効く。
- 白蟻防除・床下の湿気対策・地震対策:数量 1,030(期中平均人員(人))× 価格 1,642(1 人あたり年間売上(万円))→ 売上 169 億円・営業利益 4 億円。人員 1.03 倍 × 1 人あたり売上 1.14 倍、営業利益率 2.5%
倍率:事業の純利益 3 億円、自己資本 約 86 億円で ROE は約 3% と k 8% を下回る。ROE が k 以下の水準の PER は 1÷k(11.8 倍)が上限で、利益が細る途中のため上限の 76%(9.0 倍)に置く。
確率:2027 年 3 月期の会社予想(利益率 1.5%)がそのまま定着する形に近い。第 1 四半期は売上が 10.5% 減り、営業日の減少の影響が出ている。訪問販売の規制や提携先の見直しがあれば、さらに押し下げられる。起きやすい形として厚めの確率にした。
悲観 12% 訪問販売の規制と提携の解消で、赤字の事業が残る 利益 −2 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 354 円35 億円
訪問販売の規制が強まり、農協などの提携先が縮む。人員は 800 人に減るが、1 人あたり売上も落ち、売上は 104 億円。名目でも今の 7 割強まで縮む。
営業利益率は −2%。営業利益は −2 億円、純利益は現金の利息を含めて −1.6 億円。赤字の事業を抱えて整理費用も出る。
配当は縮み、10 年で 20 億円ほど。自己資本は 82 億円まで減る。残る価値は現金と施工の顧客基盤で、事業そのものはほぼ値がつかない。保証期間中の顧客への施工の義務は残り、撤退しても費用がかかる。配当の維持は難しくなり、減配の判断が迫られる。
- 白蟻防除・床下の湿気対策・地震対策:数量 800(期中平均人員(人))× 価格 1,300(1 人あたり年間売上(万円))→ 売上 104 億円・営業利益 −2 億円。人員 0.80 倍 × 1 人あたり売上 0.90 倍、営業利益率 −2.0%
倍率:稼ぐ力はなく、売れる資産の換金価値で置く。今の純現金 約 44 億円は、10 年の赤字と配当で目減りする。そのうえで残る価値を税引き後で約 35 億円と置き、今の自己資本 96 億円に 0.36 を掛けた値にした。
確率:構造的な負けの筋書き。特定商取引法の規制強化や農協提携の見直しで、訪問販売の経路が細る。固定費の重い人員を抱えたまま売上が落ち、赤字になる。起きれば価値の中心は現金に移る。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
白蟻防除・床下の湿気対策・地震対策
既存の木造住宅の床下で、白蟻の防除、湿気対策、制震の補強を施工する。農協(JA)などとの提携で訪問販売する。単一セグメントで、商品別の人員は開示されない。
| 数量期中平均人員(人) | 価格1 人あたり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 997 | 1,440 | 144 | 8 |
| 10 年後 中立 | 1,150 | 1,795 | 206 | 13 |
取り方:売上 143.6 億円は開示の実額。数量は期中平均人員 997 名(実績)、価格は売上をその人員で割った 1 人あたり約 1,440 万円とした。商品別(白蟻 62 億円、湿気 28 億円、地震 33 億円、その他 18 億円)は開示だが人員の内訳は無く、単一で置く。営業利益 8.3 億円(8.35 億円)は開示の実額。
リスクと懸念
利益率が戻らない
営業利益率は 11 年で 18% から 6% へ落ち、2027 年 3 月期の会社予想は 1.5%。広告費と人件費の増加が売上に結びつかなければ、中期計画の 8.5% は届かない。
営業日の減少
年間休日を原則 120 日に増やし、営業日が約 1 割減る。1 人あたり売上は構造的に下がる。
訪問販売の規制
特定商取引法の規制の強化や、悪質業者の問題による業界の信用低下で、訪問販売の経路が細りうる。
農協提携への依存
営業の基盤は農協との提携。提携の終了や不利な条件への改定があれば、受注が直接減る。
配当が純利益を上回る
配当は年 6 億円ほどで純利益より大きい。現金から払っており、利益が戻らなければ減配か、現金の目減りになる。
人材の確保
営業系・技術系ともに人手が要る。採用競争で賃金の引き上げが続き、費用が増える。
今後の分かれ目
- 2027 年 3 月期の営業利益が会社予想の 2 億円を上回り、2028 年 3 月期に 6 億円を超える
- 利益率の底打ちの合図で、やや楽観の確率を上げる。
- 申込調査件数が 18,000 件に向けて増え、提携先が 2,400 社に近づく
- 売上の回復が見え、やや楽観・楽観の確率を上げる。
- 2027 年 3 月期の通期予想が下方修正される
- 計画の達成実績がさらに弱まる。やや悲観の確率を上げる。
- 配当を減らす、または自己株買いが再開される
- 減配は現金の目減りを止める一方、悪化の合図。自己株買いは戻り方を 1.0 に近づける。
- 農協提携の見直しや特定商取引法の改正が示される
- 受注の経路が細り、悲観の筋書きに近づく。
見ておくもの
- 営業利益率(四半期)と広告宣伝費
- 申込調査件数と提携先の数
- 期中平均人員と 1 人あたり売上
- 現金等と営業キャッシュフロー
- 配当と自己株買い
倍率と資本コストの決め方
倍率は正当化 PER の式(g 3%、k 8%、残る割合 1/2)から出した。中立の ROE は k を超えるので 1÷k の 11.8 倍を下回らせなかった。今の PER や同業の倍率は使っていない。営業利益率 6.5% は、足元の 5.8% と中期計画の 8.5% の間で、過去 12 年の山 19.9% を大きく下回る。純利益÷営業利益は、過去の中央値 0.65 に近い 0.68 を使った。余った現金は 30 億円で、配当 六十二円の据え置きで純利益と釣り合うので、中立では 28 億円に保たれる。単一セグメントのため、数量は期中平均人員で置いた。中立の 1 人あたり売上は物価 1.34 倍に営業日の減少(実質 0.93 倍)を掛けた約 1.25 倍で、物価の 1.34 倍に届かない理由は年間休日の増加。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.5→16.38 倍・やや楽観 PER 11.8→15.33 倍・中立 PER 11.8→14.34 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。