結論
応用地質は、地震や豪雨に備える地質調査と、地盤や地震を測る機器を持つ国内最大手の調査会社である。筆者の結論は、10 年後の本質価値は今の時価総額 638 億円をやや下回る、というものだ。
稼ぎの中心は、国の防災・インフラ予算と洋上風力の調査である。2025 年 12 月期の売上は 763 億円、営業利益は 41 億円で、利益率は 5% 台にとどまる。過去 10 年の営業利益は 9 億〜44 億円の間を動いており、稼ぐ力は伸びていない。
この会社は、人月だけで売る型ではない。地盤を掘り測る現場の体が中心で、AI エージェントが効くのは解析・報告書づくりの事務部分だけだ。そのため決まりに従い今の置き方を基本とし、AI の影響は小さく入れた。
弱みは 2 つある。洋上風力の調査は 2025 年の三菱商事連合の撤退で一服し、国際事業は赤字が続く。財務は厚く、純現金は 143 億円。ただ ROE は 5.6% と、資本コストに届いていない。AI エージェントを売り物にして出た売上の金額は、開示されていない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社を「持ち続けたい事業」とは言いにくい。堀は浅く、利益率は低く、稼いだお金の使い道も十分に磨かれていない。国の防災予算という安定した土台は評価できるが、そこから生まれる利益は 10 年間ほぼ横ばいだった。
オーナー利益、つまり株主のものになる利益を考える。事業を保つための再投資は少ない。人が主役の事業なので設備投資は軽い。つまり利益のほとんどは配れる。ところが利益そのものが 40 億円前後で、資本コストを払うには足りない。ためた 780 億円の自己資本が、この小さな利益しか生んでいない点が問題だ。
経営の資本配分は、変わり始めたところだ。配当と自社株買いを増やし、ためた現金を戻す方向は正しい。ただ、国際事業でのれんの減損を出した過去があり、買う側としては信頼を置ききれない。
安全域は、悲観でも純現金と調査の稼ぐ力が残る点にある。純現金 143 億円は、時価総額の 2 割強だ。国の予算がある限り、事業が消えることはない。一方で、楽観でも会社が資本コストを大きく上回る姿には至らない。上値の余地が小さく、下値も限られる。筆者はこの会社を、安全だが退屈な持ち物と位置づける。安さが十分でない限り、積極的に持ちたい銘柄ではない。
見直し(AI エージェント代替):「上値の余地が小さく下値も限られる」という上の見方は、筆者は上値のほうをさらに低く見る。安全域は純現金と売れる資産にあるが、稼ぎは人の工数と発注者の単価に縛られ、AI エージェントの工数削減が値下げに転じる局面を守れる保証はない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ方は、地面と海の下を調べて、その結果を売ることである。顧客の中心は国や自治体で、国土交通省だけで売上の約 1 割を占める。道路・河川・ダムの点検、地震や土砂災害のあとの調査と復旧設計、民間の開発前の地盤調査が仕事だ。連結の従業員は 2,718 人で、うち 1,000 人超ずつが国内の 2 つの事業にいる。
防災・インフラ事業は、売上が 303 億円(2025 年 12 月期)、営業利益が 15 億円だ。災害調査、橋やトンネルの維持管理、地震計や火山監視の機器、非破壊検査の製品を扱う。受注は前年より 12% 伸び、受注残は 136 億円ある。国土強靭化の予算が追い風になっている。
環境・エネルギー事業は、売上が 298 億円、営業利益が 31 億円で、全社の利益の大半を稼ぐ。土壌・地下水の汚染対策、アスベスト、地熱・地中熱の調査に加え、ここ数年は洋上風力の海底調査が膨らんだ。2024 年 2 月に三洋テクノマリンを買い、エヌエス環境やオーシャンエンジニアリングと並べて、海の調査会社をめざしている。
国際事業は、売上が 167 億円で、営業損失が 5 億円だ。米国の地中レーダー(GSSI)など、測る機器とその販売が中心で、米国・シンガポール・欧州の子会社が担う。欧米の洋上風力の縮小と政府予算の削減で、売上は前年より 11% 減った。
つまり会社は、国内の堅い公共需要の上に、市況で振れる海と海外を載せた形をしている。2026 年 12 月期の会社予想は、売上 750 億円、営業利益 42 億円。上半期は営業利益が 27% 減った。環境・エネルギーと国際が重く、防災・インフラだけが増益だった。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、あるにはあるが浅い。応用地質は 1964 年の新潟地震のあと、国の依頼を待たずに独自に災害を調べる姿勢を築いた。以来の地盤データは約 35 万地点、ボーリングの長さは延べ約 7,900 キロにのぼる。災害の直後に国から真っ先に声がかかる関係も、簡単には作れない。
ただし、この強みは値段に結びつきにくい。地質調査は公共の入札が多く、単価は発注者の積算が決める。受注 1 位でも、市場は分散していて、ある集計では上位 20 社を合わせても 3 割にとどまる。腕のよさが利益率に出る場面は限られる。
資本効率は低い。ROE は過去 10 年の中央値が 2.9%、直近でも 5.6% だ。外部の試算では、投下した資本の稼ぎは資本コストを下回る。営業利益率は 2014 年の 8.7% が近年の最高で、会社が掲げる 2026 年の 8% 目標も届きそうにない。
財務は強い。自己資本比率は 72% で、純現金が 143 億円ある。借金で追い詰められる心配はなく、不況でも調査員を抱えて持ちこたえられる。ただ、これは稼ぐ力が弱いのでためたお金でもあり、筆者は強みとは数えない。
経営の姿勢は変わりつつある。監査等委員会設置会社へ移り、配当性向 50% 以上と配当の下限(純資産の 2%)を定めた。自社株買いも続けている。背景には、財団と物言う株主が合わせて 2 割超を持つという株主の事情がある。資本の使い方で、この会社を見る目は厳しくなっている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の防災・インフラ調査は、当面は堅い。老朽化した橋・トンネル・堤防の点検は待ったなしで、国土強靭化の予算が続く限り、調査と診断の仕事は減らない。災害も年々増えており、災害後の調査はなくならない。
ただ、市場は伸びない。地質調査は専門技術者の数が限られ、公共工事の発注は人口とともに細る。業者は登録だけで千社を超え、川崎地質や基礎地盤コンサルタンツといった同業のほか、建設技術研究所のような総合コンサルタントも似た仕事を取りにくる。数が増えるのは仕事ではなく、1 人当たりの単価と、デジタル化で広がる診断の幅だ。
洋上風力は、波が大きい。2025 年に三菱商事連合が 3 海域から撤退し、詳細調査の発注が止まった。再公募は 2026 年以降に動くが、調査が再び増えるのは 2028 年前後と筆者は見る。長い目で見れば、日本は洋上風力を増やす方針で、海底ケーブルの経路調査や不発弾の確認といった仕事は残る。
国際は、機器の競争が厳しい。地中レーダーは中国勢を含めて競争が激しく、米国の政府予算の削減も響く。中東やシンガポールで製品の販売を広げる狙いはあるが、成果はまだ見えていない。
10 年後の姿を分けるのは 3 点だ。国内の公共予算が続くか。洋上風力の調査が再び立ち上がるか。海外の機器が採算に乗るか。国内の予算が堅い以上、悲観でも会社は残る。だが、利益が 2 倍になる道筋は、洋上風力と海外が両方うまくいく筋書きしかない。
見直し(AI エージェント代替):上の議論に、AI エージェントが解析・報告書づくりを減らし、発注側が成果払いに寄るリスクを加える。ただし地盤を掘り測る現場の体は残るため、数量の減りは事務部分だけに入れた。
資本政策と M&A
資本政策は、この会社の見どころの 1 つだ。2024 年 2 月に上限 20 億円、2025 年 2 月に上限 15 億円の自社株買いを実施し、配当性向 50% 以上と純資産の 2% の配当を目標に掲げた。ここ数年の総還元性向は 9 割近い。2026 年 5 月には株主優待も新設した。
背景にはアクティビストがいる。シンフォニー系のファンドが 2025 年 10 月に約 12.6% まで買い増し、2026 年 4 月は 11.6% に下げた。保有目的には「重要提案行為を行うこともあり得る」とある。正式な株主提案は確かめられていない。第 2 位株主の深田地質研究所(財団)が約 10%、自己株が約 4〜6% で、市場で動く株は多くない。
政策保有株は上場 19 銘柄、時価総額比で 3.3% と小さく、売却の余地は限られる。賃貸不動産の含み益も 1 億円に満たない。資産の売却で ROE を上げる余地は小さく、利益そのものを増やすしかない。
M&A は、2024 年に三洋テクノマリンを取り込み、海洋事業の厚みを増した。国際事業でのれんの減損が出た年もあり、買う側としての実績は評価が分かれる。買われる側になる可能性も無視できない。時価総額は 638 億円と小さく、純現金は 143 億円(定期預金など約 54 億円を足すと約 197 億円)と厚い。筆者は、10 年以内の TOB(株式公開買い付け)を 4 分の 1 程度の確率で見込んでおくのが自然だと考える。
10 年の還元は、配当性向 50% 以上と純資産の 2% の下限、近年の総還元性向 9 割弱より薄い、純利益の合計の 77%。余った現金 114 億円には手を付けない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
防災・インフラの需要は景気にほぼ左右されない。国土強靱化の予算は続き、八潮市の陥没事故を受けて上下水道の老朽化対策にも予算が付いた。1964 年の新潟地震以来積んできた災害調査の経験と、地盤データの蓄積は、他社がすぐにまねできない。
地盤を掘り測る現場の体は、AI エージェントでは代わりにくい。解析と報告書づくりが速くなれば、浮いた工数を新しい案件に回せる。洋上風力が再公募で動き出し、国際事業が黒字になれば、利益は大きく伸びる。
純現金は 143 億円で、自己資本比率は 72%。物言う株主が 11% 台を持ち、会社は配当性向 50% 以上と自社株買いで資本効率を上げる構えだ。ためた現金が戻れば、ROE は上がる。悲観でも純現金と売れる資産が残り、下値は限られる。公共の発注元は価格だけでなく技術の確かさも見る。長年の実績が入札の評価点に効くため、新規の参入者は簡単に割り込めない。災害のたびに現場へ入れる体制を持つ会社は限られる。
慎重な見方
稼ぐ力が伸びていない。過去 10 年の営業利益は 9 億〜44 億円の間を動き、利益率は 5% 台にとどまる。調査の単価を決めるのは発注者で、会社の腕がよくても利益率は上がりにくい。
AI エージェントが解析・調査設計・報告書づくりの工数を減らせば、発注側は成果払いへ寄り、予定価格の引き下げを求める。公共の防災予算が名目で横ばいなら、物価が 3% で上がる世界では実質の事業量が減る。
洋上風力は 2025 年の三菱商事連合の撤退で一服し、国際事業は赤字が続く。のれんの減損を出した過去があり、買う側としての信頼は置ききれない。ためた 780 億円の自己資本が、小さな利益しか生んでいない。
AI エージェントを売り物にして出た売上の金額は、開示されていない。物言う株主の動きも、利益そのものを増やす力とは見ない。海外の赤字を止められないまま、国内の単価だけが下がる形が最も怖い。人手不足で人件費だけが先に上がる点も重い。
どちらに重みを置いたか
防災の堅さと厚い財務は、強気の見方が正しい。ただ筆者は、利益率が 10 年間動かなかった事実を、会社の計画より重く見る。AI エージェントの影響は、現場の体の型なので解析・報告書づくりの事務部分に限って入れた。
やや悲観と悲観を合わせて 38% を置いた。置き換えの影響は中立の数量と価格に入れたので、確率では重ねて引かない。悲観でも純現金と売れる資産が残る。期待は今の値段をやや下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 2,847 円663 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,438 円335 億円)。 今の値に割り戻すと 2,340 円545 億円、今との差 −13.6%、 期待の年率 +4.7%(資本コスト 7.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 5,761 円1,342 億円 | 2,300 円536 億円 | +197.7% | +11.5% | 484 円113 億円 |
| やや楽観 | 18% | 4,543 円1,058 億円 | 1,937 円451 億円 | +139.3% | +9.1% | 1,166 円272 億円 |
| 中立 | 38% | 3,170 円738 億円 | 1,527 円356 億円 | +73.4% | +5.7% | 1,785 円416 億円 |
| やや悲観 | 26% | 1,475 円344 億円 | 1,129 円263 億円 | −3.8% | −0.4% | 677 円158 億円 |
| 悲観 | 12% | 793 円185 億円 | 647 円151 億円 | −46.8% | −6.1% | 173 円40 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,847 円663 億円 | 1,438 円335 億円 | +58.2% | +4.7% | 4,285 円998 億円 |
今の株価時価総額 2,708 円631 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 6% 防災の予算が続き、洋上風力が戻り、海外が黒字になる 利益 96 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 5,761 円1,342 億円
国土強靱化の予算が続き、防災・インフラの受注残が積み上がる。洋上風力は再公募が動き出し、環境事業が山を取り戻す。国際事業は人員の絞り込みと新製品で黒字化する。AI エージェントが解析と報告書づくりを引き受けても、地盤を掘り測る現場の体は残り、浮いた工数は新しい案件に回る。単価は物価並みの 1.30〜1.34 倍まで上がる。全社の売上は約 1,110 億円と今の 1.45 倍、営業利益は約 107 億円になる。会社の目標の営業利益率 8% を超える、最も恵まれた筋書きである。配当性向 50% 以上と自社株買いで、ためた現金を戻す。
- 防災・インフラ事業:数量 1,104(防災・インフラ事業の従業員数(人、連結))× 価格 3,970(1 人当たり年間売上(万円))→ 売上 438 億円・営業利益 39 億円。数量 1.08 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 9%
- 環境・エネルギー事業:数量 1,196(環境・エネルギー事業の従業員数(人、連結))× 価格 3,679(1 人当たり年間売上(万円))→ 売上 440 億円・営業利益 46 億円。数量 1.10 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 10%
- 国際事業:数量 512(国際事業の従業員数(人、連結))× 価格 4,567(1 人当たり年間売上(万円))→ 売上 234 億円・営業利益 21 億円。数量 1.08 倍・価格 1.30 倍・営業利益率 9%
倍率:事業の純利益 94 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.4% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.6%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)114 億円。全体の PER 12.9 倍、時価総額 1,330 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国土強靱化・洋上風力・海外の黒字化が同時に起きる必要があり、AI は追い風にならない。AI エージェントを売り物にした売上の金額開示もなく、6% に絞った。
やや楽観 18% 防災が堅く、洋上風力も海外も少しずつ戻る 利益 74 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 4,543 円1,058 億円
防災・インフラの受注残が積み上がり、国内の人員は 2〜3% ほど増える。洋上風力は一部が再開し、環境事業は山の半分ほどを取り戻す。国際事業は赤字が縮み、ほぼ収支がとんとんになる。AI エージェントは解析と報告書づくりの工数を減らすが、現場の体の仕事は残る。単価は 1.28〜1.32 倍に上がる。全社の売上は約 1,030 億円と今の 1.34 倍、営業利益は約 82 億円になる。会社は配当性向 50% 以上を守り、自己資本が積み上がるのを抑える。物言う株主の圧力も、資本効率の改善を後押しする。洋上風力の再開は一部にとどまり、環境事業の利益率は山の年に届かない。返せる額は方針の範囲に収まる。
- 防災・インフラ事業:数量 1,053(防災・インフラ事業の従業員数(人、連結))× 価格 3,911(1 人当たり年間売上(万円))→ 売上 412 億円・営業利益 33 億円。数量 1.03 倍・価格 1.32 倍・営業利益率 8%
- 環境・エネルギー事業:数量 1,109(環境・エネルギー事業の従業員数(人、連結))× 価格 3,624(1 人当たり年間売上(万円))→ 売上 402 億円・営業利益 36 億円。数量 1.02 倍・価格 1.32 倍・営業利益率 9%
- 国際事業:数量 483(国際事業の従業員数(人、連結))× 価格 4,497(1 人当たり年間売上(万円))→ 売上 217 億円・営業利益 13 億円。数量 1.02 倍・価格 1.28 倍・営業利益率 6%
倍率:事業の純利益 72 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.0% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.4%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)114 億円。全体の PER 12.9 倍、時価総額 1,047 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:防災が堅く、洋上風力と海外が部分的に戻る筋書き。AI エージェントの影響が事務部分に収まる前提で、18% を置いた。
中立 38% 防災は堅いが利益率は上がり切らず、事務部分が縮む 利益 49 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 3,170 円738 億円
国土強靱化の予算は続くが、人員は専門技術者の不足で増やせず、数量は今より 3〜7% 減る。AI エージェントが解析と報告書づくりの工数を減らし、発注側が成果払いに寄ることで、単価は物価に届かない 1.25〜1.30 倍にとどまる。洋上風力は一服したまま、環境事業は山を取り戻せない。国際事業は赤字が縮んでも、利益は薄い。全社の売上は約 935 億円と今の 1.2 倍、営業利益は約 55 億円で、利益率は 6% 弱にとどまる。会社の目標の 8% には届かない。ROE は 5〜6% と、資本コストに届かない。配当と自社株買いで資本効率を上げるが、利益そのものは増えない。
- 防災・インフラ事業:数量 991(防災・インフラ事業の従業員数(人、連結))× 価格 3,852(1 人当たり年間売上(万円))→ 売上 382 億円・営業利益 25 億円。数量 0.97 倍・価格 1.30 倍・営業利益率 6%
- 環境・エネルギー事業:数量 1,011(環境・エネルギー事業の従業員数(人、連結))× 価格 3,514(1 人当たり年間売上(万円))→ 売上 355 億円・営業利益 25 億円。数量 0.93 倍・価格 1.28 倍・営業利益率 7%
- 国際事業:数量 450(国際事業の従業員数(人、連結))× 価格 4,392(1 人当たり年間売上(万円))→ 売上 198 億円・営業利益 5 億円。数量 0.95 倍・価格 1.25 倍・営業利益率 2%
倍率:事業の純利益 48 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.2% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)114 億円。全体の PER 12.9 倍、時価総額 727 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:公共の防災需要は堅く、AI エージェントの影響が解析・報告書づくりに収まる流れの中心の筋書き。決まりの「今の置き方を基本」に事務部分の縮み(数量 0.93〜0.97 倍)を足し、価格は物価に届かない 1.25〜1.30 倍とした。数量と価格に入れた分を、確率と g で重ねて引いていない。
やや悲観 26% 公共予算が頭打ちになり、洋上風力も海外も戻らない 利益 25 億円 · PER 7.9 倍 · 株価時価総額 1,475 円344 億円
公共の防災予算が物価に追いつかず、AI エージェントの工数削減が発注側の値下げ要求になる。国内の人員は 1〜2 割減り、単価は 1.15〜1.18 倍にとどまる。洋上風力は戻らず、環境事業の利益率は 5% に落ちる。国際事業は赤字が続き、のれんの減損や撤退が決まる。全社の売上は約 760 億円と今とほぼ同じ水準、営業利益は約 28 億円まで下がる。物言う株主が提案を強め、会社は資産の売却や事業の整理を進める。堀が浅く、調査の単価を決めるのは発注者だという構造が、そのまま利益に出る。会社は海外の拠点を縮小し、国内の事務部分の人員を現場の技術者に移す。配当は守るが、自社株買いは細る。
- 防災・インフラ事業:数量 889(防災・インフラ事業の従業員数(人、連結))× 価格 3,496(1 人当たり年間売上(万円))→ 売上 311 億円・営業利益 14 億円。数量 0.87 倍・価格 1.18 倍・営業利益率 4%
- 環境・エネルギー事業:数量 924(環境・エネルギー事業の従業員数(人、連結))× 価格 3,157(1 人当たり年間売上(万円))→ 売上 292 億円・営業利益 15 億円。数量 0.85 倍・価格 1.15 倍・営業利益率 5%
- 国際事業:数量 403(国際事業の従業員数(人、連結))× 価格 3,865(1 人当たり年間売上(万円))→ 売上 156 億円・営業利益 −1 億円。数量 0.85 倍・価格 1.10 倍・営業利益率 0%
倍率:ROE 3.1% が k 7.75% 以下。ためた利益は額面未満の価値で、PER は 1÷k = 12.1 倍を上限に ROE÷k の割合で下げて 7.88 倍。g は名目 0.0%。人月・席の型で寿命は短く、g は名目 0%(横ばい)まで。堀は普通。 余った現金は戻り方を掛けて足す。
確率:公共予算が物価に追いつかず、AI エージェントの工数削減が値下げ要求につながる筋書き。26% を置いた。
悲観 12% 価格競争と調査の自動化で、売上が半分前後に縮む 利益 0 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 793 円185 億円
AI エージェントが解析・調査設計・報告書づくりを自動化し、発注側は人月ではなく成果に応じた安い単価でしか払わなくなる。ボーリングの現場は残るが、数量は 4 割減り、単価は 0.90〜0.95 倍と、値下げを受け入れる。国際事業は撤退で規模が半分に縮む。全社の売上は約 395 億円と今の半分前後、営業利益はほぼゼロになる。堀が薄れ、調査会社としての稼ぎが崩れる。残るのは純現金と売れる資産で、稼ぐ力は床に使わない。物言う株主の圧力で、現金を株主に返す形になる。会社は拠点を閉じ、人員を大きく減らして固定費を縮める。10 年後の会社は、地盤調査の専門家が少数残る小さな調査会社になっている。
- 防災・インフラ事業:数量 613(防災・インフラ事業の従業員数(人、連結))× 価格 2,815(1 人当たり年間売上(万円))→ 売上 173 億円・営業利益 4 億円。数量 0.60 倍・価格 0.95 倍・営業利益率 2%
- 環境・エネルギー事業:数量 598(環境・エネルギー事業の従業員数(人、連結))× 価格 2,471(1 人当たり年間売上(万円))→ 売上 148 億円・営業利益 0 億円。数量 0.55 倍・価格 0.90 倍・営業利益率 0%
- 国際事業:数量 237(国際事業の従業員数(人、連結))× 価格 3,162(1 人当たり年間売上(万円))→ 売上 75 億円・営業利益 −4 億円。数量 0.50 倍・価格 0.90 倍・営業利益率 -5%
倍率:稼ぐ力が崩れた姿。事業の稼ぎは床に使わず、純現金と売れる資産の税後(約 185 億円)を今の自己資本 779 億円に対する PBR で表す。
確率:AI エージェントが解析と調査設計を自動化し、公共予算も実質で縮む筋書き。現場の体の型で起こりにくいため、12% と低く置き、やや悲観と合わせて 38%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
防災・インフラ事業
災害調査、橋・トンネル・堤防の維持管理、地震計・火山監視の機器、非破壊検査の製品。国と自治体が主な顧客。
| 数量防災・インフラ事業の従業員数(人、連結) | 価格1 人当たり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,022 | 2,963 | 303 | 15 |
| 10 年後 中立 | 991 | 3,852 | 382 | 25 |
取り方:開示は売上・営業利益だけなので、従業員数(人)× 1 人当たり年間売上(万円)で分けた。2025 年 12 月期の売上 302.9 億円を、同事業の従業員 1,022 人で割ると約 2,963 万円になる(機器の売上も含む)。人は専門技術者が足りず、10 年で数%しか増やせないとみる。1 人当たり売上は物価並み(10 年 1.34 倍)で上がるとして中立に置いた。 AI エージェント代替の型:売上の約 40%。ボーリング・計測・機器と、解析・報告書づくり。現場の体の型が中心で、決まりに従い今の置き方を基本にした。AI エージェントが効く解析・報告書づくりの事務部分(作業の約 2 割と仮定)だけ縮め、数量は中立 0.97 倍(前の版は 1.04 倍)、価格は予定価格の物価連動を踏まえ 1.30 倍とした。AI エージェントを売り物にした売上の金額開示は確認できない。
環境・エネルギー事業
土壌・地下水の汚染対策、アスベスト、地熱・地中熱の調査、洋上風力の海底調査、海洋調査(三洋テクノマリンなど)。
| 数量環境・エネルギー事業の従業員数(人、連結) | 価格1 人当たり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,087 | 2,746 | 298 | 31 |
| 10 年後 中立 | 1,011 | 3,514 | 355 | 25 |
取り方:従業員数(人)× 1 人当たり年間売上(万円)。売上 298.4 億円を従業員 1,087 人で割ると約 2,746 万円。洋上風力の調査が山だった年の数字で、営業利益率 10.3% も山の値である。1 人当たり売上は物価並み(10 年 1.34 倍)で中立。 AI エージェント代替の型:売上の約 39%。環境調査と洋上風力の調査。現場の体の型が中心。洋上風力は 2025 年の三菱商事連合の撤退で一服し、数量は中立 0.93 倍(前の版は 1.01 倍)、価格は 1.28 倍とした。
国際事業
米国・シンガポール・欧州の子会社による、地中レーダーなど測る機器とその販売、現地の調査サービス。
| 数量国際事業の従業員数(人、連結) | 価格1 人当たり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 474 | 3,513 | 167 | −5 |
| 10 年後 中立 | 450 | 4,392 | 198 | 5 |
取り方:従業員数(人)× 1 人当たり年間売上(万円)。売上 166.5 億円を従業員 474 人で割ると約 3,513 万円。機器の販売が多く、人数のわりに売上が大きい。1 人当たり売上は現地の物価が乗るとして中立で 10 年 1.34 倍(ドル円は 150 円で固定)。営業損失 5.1 億円。 AI エージェント代替の型:売上の約 22%。国際事業は機器の販売と現地の調査。現場の体の型に機器の競争が重なる。営業損失が続いており、数量は中立 0.95 倍、価格は 1.25 倍とした。
リスクと懸念
AI エージェントによる解析・報告書づくりの工数削減(AI エージェント代替)
稼ぎの源は技術者の工数と現場の体だ。AI エージェントが解析・調査設計・報告書づくりを肩代わりすれば、発注側は成果払いへの移行や予定価格の引き下げを求める。現場の体の型なので、数量の減りは事務部分だけに入れ、中立は数量 3〜7% 減、単価は物価に届かない。悲観では売上が半分前後に縮む。
国土強靭化の予算が頭打ちになる
売上の約 1 割を国土交通省が占め、防災・インフラの仕事は国と自治体の予算に左右される。災害対応や老朽化対策の予算が減れば、調査員を抱えた固定費が重くなる。入札が中心なので、単価の交渉力も限られる。
洋上風力の調査が戻らない
2025 年に三菱商事連合が撤退し、詳細調査の受注が減った。再公募の遅れや政策の転換で、調査が戻る時期がさらに延びれば、利益の柱の環境・エネルギーが弱る。調査船と人員の固定費も残る。
国際事業の赤字が続く
2025 年は 5 億円の営業損失で、上半期はさらに赤字が広がった。米国の政府予算の削減、中国勢との機器の価格競争が続けば、黒字化は遠のく。買収した海外会社で、減損が出る可能性も残る。
利益率が上がらない
会社は 2026 年に営業利益率 8% を掲げたが、予想は 5.6% で上半期は営業利益が 27% 減った。単価を決めるのが発注者で、人件費が上がるほど利益が圧迫される。中期計画が当たらない状態が続く恐れがある。
専門技術者の不足
地質調査は専門技術者がいないと仕事を受けられず、人数が売上の上限を決める。採用が進まなければ受注残を消化できない。人件費の上昇を単価に転嫁できないと、利益が削られる。
物言う株主と自社株買いの行方
11% 台を持つ株主の圧力が資本の使い方を変える可能性はあるが、利益を増やす力にはならない。自社株買いで自己資本を減らしすぎれば、不況期の備えが薄くなる。保有を減らして離れる可能性もある。
今後の分かれ目
- AI エージェントを売り物にした調査サービスの売上・受注が決算で開示される
- 開示が工数の減りを補う規模なら、楽観側の数量を引き上げる。開示が無い間は、AI による増収は置かない。
- 2026 年末までに営業利益率が 7% を超える
- 防災・インフラの単価転嫁と国際の改善が確かめられ、10 年のやや楽観・楽観の確度が上がる。
- 洋上風力の再公募が 2027 年までに決まり、詳細調査が動き出す
- 環境・エネルギーの利益率が回復する。中立より上の筋書きが現実味を帯びる。
- 国際事業が通期で黒字になる
- 赤字の重荷が消え、全社の営業利益が 10 億円ほど上乗せされる。中立の利益率が見直される。
- 国土強靭化の予算が削られる
- 防災・インフラの受注残が減り、固定費が重くなる。やや悲観・悲観の筋書きに近づく。
- 海外子会社ののれんの減損や撤退が決まる
- 自己資本が削られ、国際事業の立て直しが遅れる。悲観の確度が上がる。
- 物言う株主が正式な株主提案や TOB を仕掛ける
- 資本の使い方が変わる可能性が高まる。ただし利益が増えなければ、企業価値は動きにくい。
見ておくもの
- 防災・インフラの受注高と受注残(国土強靭化の予算の動き)
- 環境・エネルギーの営業利益率と洋上風力の再公募の時期
- 国際事業の営業損益と地中レーダー製品の売れ行き
- 全社の営業利益率が 2026 年の目標 8% にどこまで近づくか
- 配当・自社株買いの規模と、シンフォニー系ファンドの保有比率
倍率と資本コストの決め方
倍率は式だけで置いた。現場の体の型だが g(10 年より先の名目の伸び)は 0% とし、ROE が k を下回る筋書きでは、ためた利益は額面未満として PER を 1÷k より下げた。k は AI エージェント代替の寿命で +0.25% を上乗せして 8.25%(現場の体の幅の下寄り)。AI エージェント代替の理由は、主に中立の数量と価格(事務部分のみ)に入れ、k は下寄り、確率は 38%、g は 0% と、重ねすぎないようにした。今の PER や同業・過去の倍率は使っていない。悲観は稼ぐ力でなく純現金と売れる資産の床で置いた。余った現金 114 億円は戻り方 1.0 で足した。自己資本は「今の 779 億円+期間の純利益−還元」で積んだ。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.12→12.9 倍・やや楽観 PER 12.12→12.9 倍・中立 PER 9.05→12.9 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。