結論
MWCCは、マイクロ波で化学反応や金属の加熱工程を変える技術会社である。筆者の結論は「割高」だ。工場の省エネルギー化や重要鉱物の製錬という需要は本物だが、研究成果を繰り返し売れる商用設備へ変える力は、まだ十分に証明されていない。10年後の技術の可能性と、現在の株主が受け取る経済的価値を分けて見る必要がある。
2026年6月期は決算期変更による15か月決算だった。それでも売上高は約10.6億円にとどまり、営業損失は約9.3億円となった。大型案件の受注遅延が響き、自己資本は約1.2億円、自己資本比率は8.6%まで下がった。2027年6月期は営業黒字への回復を計画するものの、達成には案件の進捗と大幅な粗利益率の改善が必要になる。
成長の道筋は二つある。第一は研究・実証案件を商用装置の販売、設計収入、継続的な技術支援へ育てることだ。第二は、新たに取得したDualPore技術を使い、工場の排液からパラジウムなどの貴金属を回収して継続収入を得ることである。後者は事業の性格を変えうるが、2026年6月期末の導入は5ラインで、売上は約0.07億円にすぎない。
筆者がもっとも重視するのは、将来の設備採用が増える前に資金が尽きないか、そして増資を経た後に既存株主へどれだけ価値が残るかだ。研究開発の成功、工場での再現性、顧客の投資判断、資金調達という複数の条件がそろわなければ、現在の株主の取り分は増えない。10年後の中立では売上高約46億円、純利益約4.8億円を見込むが、その時点の会社全体の時価総額は約51億円となる。希薄化と時間価値を考慮した確率加重の現在価値は約41億円であり、基準時価総額約100億円を約59%下回る。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の立場では、研究に成功する会社より、顧客が繰り返しお金を払い、増やした利益を高い利回りで再投資できる会社を所有したい。MWCCには前者の実績があり、後者を実現する機会もある。しかし、その二つの間にはまだ大きな隔たりがある。優れた物理現象を見つけることと、設備の顧客から長期間にわたり高い利益を取り続けることは別の能力だからだ。
最も魅力的なのは、マイクロ波反応器を一台売ることではなく、採用した顧客が次の工場でも同じ技術を選び、保守や設計変更に継続して料金を払う状態である。設備導入による停止リスクや検証負担が高いほど、一度採用された技術は守られやすい。ただし、今のMWCCには、そのような継続契約が大きな利益源になった実績がまだ乏しい。実証経験の蓄積を評価しつつも、将来の独占的な値決め力まで先払いするのは危険だ。
DualPoreは、オーナー利益という点でより直接的な魅力を持つ。排液処理の工程に定着すれば、顧客の生産量と貴金属の回収価値に応じた現金収入が得られるからだ。一方、回収材の製造、交換、精製、回収対象の拡大には再投資が必要であり、売上の全額が自由に使える現金になるわけではない。増設したライン一つ当たりの税後利益が、増設に使った資本に対して十分な利回りを生むことを確かめたい。
資金面には安全域がほとんどない。自己資本が薄く、借入金が現金を上回り、過去には合弁事業の清算で大きな損失を出した。将来の成功が会社全体の価値を大きくすることはありうるが、そこへ到達するまでの増資が既存株主の取り分を小さくする。筆者は技術の夢を否定しない。それでも、現在の約100億円という時価総額に対しては、商用化の成否を保守的に見積もり、株主に帰属する利益から価値を判断する。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、顧客の製造工程をマイクロ波で改善するマイクロ波ソリューション事業である。化学会社や金属・資源会社が抱える反応時間、消費エネルギー、収率、設備の大型化といった問題を調べ、実験室から工場まで段階を踏んで技術を導入する。マイクロ波は対象物に直接エネルギーを与えるため、従来の外部加熱が不得意な物質や工程で経済的な利点を生む可能性がある。ただし、すべての加熱工程で優れるわけではない。
収益は四つの段階に分かれる。Phase1は小規模な研究開発で、2026年6月期には26件から約1.00億円を得た。Phase2はパイロット実証や商用化に向けた設計で、32件から約8.88億円を得ており、足元の主力だ。Phase3は商用設備への導入で、実績は1件、売上は約0.10億円にとどまる。Phase4は稼働後の技術支援やライセンスなどで、1件から約0.52億円を得た。この件数は15か月決算の実績である。
研究開発の件数が増えても、そのまま商用設備の数が増えるわけではない。顧客は実験で良い結果を得た後も、長時間連続運転、安全性、設備費、電力単価、保守費、品質保証を確かめなければならない。量産ラインの変更は顧客にとって大きな資本配分の決定であり、採用までに時間がかかる。したがって、Phase2の売上が好調でも、Phase3への移行率が低ければ高い企業価値は生まれにくい。
もう一つの柱はDualPoreソリューション事業である。2025年9月に取得した技術を使い、めっき工程などの排液へ吸着カートリッジを設置する。低濃度のパラジウムを回収し、その経済価値を顧客と分け合う仕組みだ。顧客の排液ラインに定着すれば、単発の研究受託と異なり、稼働ライン数、回収量、貴金属価格に応じて収入が続く。
この二事業は同じ会社に属するが、収益の性格は異なる。マイクロ波は高額の装置採用が利益を左右する案件型で、DualPoreは稼働ラインを積み上げる継続型である。2026年10月にはコーベックスが共同開発したマイクロ波溶剤蒸留回収装置の販売も始めたが、販売実績はまだ企業価値に大きく織り込まない。いずれも現物の反応、装置、工場運転に価値があり、AIエージェント代替の指定類型である人月型SI、業務SaaS、事務BPOなどには直接当たらない。
優良さと弱いところ
この会社の強みは、マイクロ波を使えるという一般論ではなく、それを産業規模で安定して働かせる経験にある。物質ごとの電磁波の吸収特性を測り、電磁界と熱流体を組み合わせて反応器を設計する。大阪の実証設備には、小さな実験から大型の試験までをつなぐ役割がある。創業以来の測定データ、実証経験、特許、技術者の組み合わせには、後発企業が簡単には得られない蓄積がある。
しかし、技術の蓄積と経済的な堀は同じではない。顧客が採用後も追加料金を払い続けるか、値上げを受け入れるか、競合への乗り換えに大きな損失が伴うかは、商用実績で確かめる必要がある。研究開発案件の受注だけでは、値決め力はまだ分からない。現時点で確認できる商用設備の件数は少なく、10年先まで高い超過利益率を維持できると断定する根拠は足りない。
DualPoreには異なる堀の芽がある。既存の排液ラインに組み込まれ、安定した回収率を示すなら、顧客が取り外す理由は乏しくなる。貴金属の回収データが蓄積し、対象となる元素や排液の種類が増えれば、顧客を増やすほど技術が磨かれる可能性もある。一方、吸着材の交換、精製、回収歩留まり、貴金属相場が採算を左右し、従来の回収会社にも対抗策がある。
資本効率については評価を留保する。2025年3月期には黒字だったが、2026年6月期は大幅な赤字へ転落した。研究開発費と実証設備への投資が将来の利益に結び付くかどうかを示す、安定した増分ROICの実績がない。投下資本に対して10%を超える税後利益を継続して生み出せるかが、長期株主の判断基準になる。現時点での堀は、強固な独占ではなく、実証を通じて育てている途中の競争力だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
産業用マイクロ波加熱は、電化、省エネルギー化、脱炭素、資源循環によって需要を増やす可能性がある。調査会社Global Market Insightsによると、食品加工なども含む広い産業用マイクロ波・高周波加熱市場は2025年に約18億ドル、2035年には約39億ドルと見込まれている。為替150円なら、それぞれ約2700億円と約5850億円に相当する。ただし、この市場全体がMWCCの得意とする化学反応や金属製錬の設備市場ではない。
同調査では、Stalamの2025年シェアが約5.5%、Stalam、SAIREM、MUEGGE、Advanced Energy Industries、Thermex-Thermatronの上位5社合計が約20.5%とされる。MWCCの2026年6月期のマイクロ波関連売上を12か月換算し、広い市場で単純に割ると約0.3%になるが、事業範囲も時点も一致しないため、正確な市場シェアではない。化学反応器という狭い領域の各社シェアは公表資料から確認できない。装置を加熱する方法そのものは他社も扱い、競争の中心は個別工程での費用対効果になる。
金属製錬では、既存の炉メーカーやプラントエンジニアリング会社が競争相手になる。Metso、FLSmidth、Tenovaなどの企業群に加え、従来のガス加熱、抵抗加熱、誘導加熱、水素を用いる工程も比較対象だ。MWCCは中外炉工業とマイクロ波加熱を使う炉の開発を進めているが、設備販売の世界シェアを論じるにはまだ早い。会社が示す2030年の炉関連市場約1.4兆円は対象設備全体の推計であり、同社がその一定割合を獲得できるという証拠ではない。
顧客側の需要には確かな背景がある。リチウム、ニッケルなどの重要鉱物は供給網の多様化が課題であり、省エネルギーで処理できる技術には商機がある。一方、鉱石の性質、原料価格、電力価格、設備の稼働率は案件ごとに異なる。三井物産などとの検証や中外炉工業との協業は前進だが、大型プラントの採用を決めるのは顧客側の経済性と投資予算である。
貴金属回収には別の市場がある。会社は国内電子材料などでのパラジウム回収を対象に、市場規模約350億円以上、うち当面の対象となる回収領域を約118億円と試算している。しかし、その数字には貴金属そのものの価値が含まれ、すべてがMWCCの売上になるわけではない。田中貴金属、DOWA、アサヒホールディングス系などの既存回収網に加え、イオン交換樹脂や既存の吸着技術との競争がある。対象となる工場数だけでなく、一ラインの回収量と顧客との分配率が市場シェアの実体になる。
資本政策と M&A
資本配分の評価は厳しい。過去に太陽化学と設立したティエムティの清算では、2024年3月期に約10.3億円の関係会社整理損を計上した。技術を商業生産へ移す試みが、株主資本を大きく傷つけた事例である。2025年9月には低濃度貴金属回収事業を取得したが、取得後の期間が短く、投資額に見合う収益を生むかは判断できない。
2026年6月期末の現金及び預金は約4.0億円、有利子借入金は約8.2億円で、差引き約4.2億円の純負債だった。これとは別にリース負債もある。営業キャッシュフローは約4.6億円の流出となり、事業の継続には顧客入金、借入枠、増資による資金調達への依存が残る。有価証券報告書には継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる事象が記載されている。ただし会社は重要な不確実性を認めておらず、継続企業の前提に関する注記が付された会社とは区別する。
2026年には第8回新株予約権を発行し、潜在株式数は164.2万株となった。2026年6月末の株数に対して約10.3%に相当する。発行時の条件による調達見込額は約16.0億円で、DualPore事業に約3億円、新規事業に約5億円、運転資金などに約8億円を充てる計画だ。資金を確保できる利点は大きいが、既存株主の持分は薄まる。既存のストックオプションも含めた株主の取り分を、将来価値から明示的に控除する。
2026年9月の事業計画には、2030年6月期の売上高約100億円という成長構想、2026年6月期から2030年6月期までの累積売上高130〜140億円という参考値、商用設備5件の導入構想がある。これは達成を保証する数値目標ではない。会社が示す継続収入比率50%という姿も、実際の契約と設備稼働で確認する必要がある。配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い額には具体的な数字の約束がなく、足元は無配である。還元より先に、事業の黒字化と希薄化の抑制が優先される。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
会社の技術には、従来の化学・金属設備の設計を変える力がある。マイクロ波は特定の物質を直接加熱でき、工程によっては熱損失を減らし、反応時間を短縮し、設備を小さくできる。化学会社や鉱山会社が省エネルギー化と資源確保を同時に求める時代には、顧客が設備変更に投資する経済的な動機がある。大阪の実証設備、反応器設計、蓄積した吸収特性データは、単なる装置販売会社にはない競争力だ。
商用化への道筋も具体性を増している。中外炉工業との製錬炉開発、三井物産などとの重要鉱物の実証、発振器の内製化、コーベックスとの溶剤回収装置の製品化は、それぞれ用途の違う顧客へ技術を広げる動きである。Phase3の商用導入が標準化されれば、案件ごとに一から研究する費用が減り、装置販売と継続的なライセンス収入が同時に育つ。顧客が設備を導入した後は、停止リスクと安全性の検証負担が乗り換えを難しくする。
DualPoreも大きな転換点になりうる。既存の排液ラインに小さな装置を設置するため、大規模プラントに比べて導入判断が軽く、顧客はこれまで取り逃していた貴金属の価値を得られる。対象をパラジウムから他の白金族金属へ広げ、アジアの電子材料工場へ横展開できれば、稼働ラインの積み上がりが安定した収入を生む。2036年までに商用装置の年間導入とDualPoreの稼働ラインがともに大きく伸びれば、年間利益は現在の時価総額を十分に支えられる水準へ到達する。今の赤字は、商用化前の開発費を先に負担している期間と解釈できる。
慎重な見方
実験が成功しても、顧客の量産設備に採用されるとは限らない。設備を変えるには長時間運転での歩留まり、部品寿命、製品品質、電力料金、故障時の保守体制を証明する必要がある。顧客には既存設備を使い続ける選択肢があり、競合の炉メーカーも従来技術の効率を上げている。研究・実証案件を多数こなしても、毎年高い利益を生む商用設備へつながらなければ、事業の性格は研究開発の受託から変わらない。
財務状況は、その試行錯誤に十分な時間を与えてくれるほど強くない。2026年6月期には営業損失が約9.3億円まで拡大し、自己資本比率は8.6%になった。有利子借入金が現金を上回り、営業活動による現金流出も続く。新株予約権による資金調達は必要な手段だが、既存株主の取り分を減らす。将来の事業規模が増えても、そこまでに株数が大きく増えれば、現在の株主が受け取る価値の伸びは小さくなる。
過去のティエムティの清算は、技術開発の成果が投下資本の回収を保証しないことを示した。今後も鉱山や大型炉の案件には長い実証期間と顧客の投資判断が必要であり、途中で止まる案件は避けられない。DualPoreには継続収入の魅力があるものの、足元の売上は小さく、回収する貴金属の量や価格、顧客との分配条件が変われば採算も動く。海外展開には装置の信頼性だけでなく、回収物流、精製、法規制への対応が要る。商用化の遅れが重なれば、会社の存続には新たな資金調達が必要となり、技術の価値があっても既存株主にはほとんど残らない可能性がある。
どちらに重みを置いたか
技術の独自性と市場の大きさでは強気の見方に根拠がある。しかし、株主に帰属する利益を予測するという点では、慎重な見方のほうが強い。2026年6月期の大幅赤字、薄い自己資本、商用設備の少なさ、新株予約権による希薄化は、いずれも確認済みの事実だからだ。
上側の確率を30%、下側を42%とし、中立を28%とした。下側が12ポイント多いのは一般的な新興企業への警戒ではなく、この会社固有の資金制約と商用化の遅れによる。中立でも将来の商用導入を認めているため、悲観確率だけで過度に減額していない。成功した場合の価値は大きいが、現在の約100億円には、その成功が相当程度先取りされている。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/06 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 663 円105 億円(+ 還元の換算額還元の合計 6 円1 億円)。 今の値に割り戻すと 259 円41 億円、今との差 −57.8%、 期待の年率 +0.8%(資本コスト 10.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 3,175 円505 億円 | 43 円7 億円 | +423.2% | +18.2% | 322 円51 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,295 円206 億円 | 11 円2 億円 | +112.4% | +7.9% | 261 円42 億円 |
| 中立 | 28% | 276 円44 億円 | 0 円0 億円 | −55.0% | −7.7% | 77 円12 億円 |
| やや悲観 | 26% | 33 円5 億円 | 0 円0 億円 | −94.7% | −25.5% | 8 円1 億円 |
| 悲観 | 16% | 1 円0 億円 | 0 円0 億円 | −99.8% | −47.4% | 0 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 663 円105 億円 | 6 円1 億円 | +8.8% | +0.8% | 669 円106 億円 |
今の株価時価総額 615 円98 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% 商用設備が標準化され、資源・金属分野で採用が広がる 利益 51 億円 · PER 11.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3,175 円505 億円
鉱山会社や製錬会社での大型試験が成果を上げ、マイクロ波設備は特定の鉱石や化学反応で標準的な選択肢になる。中外炉工業との炉開発は量産装置へ進み、複数の設備メーカーがMWCCの設計技術やライセンスを採用する。初期の案件ごとに必要だった設計を再利用できるようになり、製作費と開発費の増加を売上の伸びが上回る。
2036年には商用導入案件が年間24件、継続支援契約が20件となる。Phase3では大型設備の製作・導入を含む年間認識売上が120億円に達し、Phase4も18億円へ伸びる。マイクロ波関連の競争は残るが、工場での稼働データが十分に蓄積し、重要工程で顧客が容易には他社へ替えられなくなる。技術者の増員に対して売上が大きく伸び、固定費の負担率が低下する。
DualPoreはパラジウムだけでなく他の白金族金属にも用途を広げ、日本、台湾、東南アジアの計95ラインに定着する。貴金属の回収効率と顧客への分配条件が安定し、年間売上は38億円になる。配当と自社株買いも一部で始まるが、資金調達時の希薄化は残る。この筋書きでは研究開発型の会社が、継続的な利益を持つ産業技術会社へ変わる。
- マイクロ波・Phase1研究開発:数量 50.0(当該決算期間に売上計上したPhase1契約件数)× 価格 0.06(Phase1契約1件当たりの平均売上高(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 2 億円。年間50件。研究案件の増加と標準化で1件600万円。共通費控除前の貢献利益率67%。
- マイクロ波・Phase2実証開発:数量 50.0(当該決算期間に売上計上したPhase2契約件数)× 価格 0.43(Phase2契約1件当たりの平均売上高(億円))→ 売上 22 億円・営業利益 15 億円。年間50件、平均4300万円。設計の再利用と顧客負担の増加で貢献利益率70%。
- マイクロ波・Phase3商用導入:数量 24.0(当該決算期間の商用導入・製作契約件数)× 価格 5.00(契約1件当たり売上高(億円、進捗に応じた計上額))→ 売上 120 億円・営業利益 50 億円。年間24件の大型商用設備・導入契約から、1件平均5億円を認識。売上は契約進捗の年間計上額。
- マイクロ波・Phase4継続支援:数量 20.0(当該決算期間に収益を認識したPhase4契約数)× 価格 0.90(Phase4契約1件当たり年間認識売上高(億円))→ 売上 18 億円・営業利益 12 億円。20件の継続支援・ライセンス案件、平均0.9億円。設計データの再利用が進む。
- DualPore低濃度貴金属回収:数量 95.0(期末にカートリッジを導入済みの顧客生産ライン数)× 価格 0.40(稼働ライン1本当たりの年間換算売上高(億円))→ 売上 38 億円・営業利益 18 億円。95ラインに対象地域・回収元素を拡大。年間40百万円の売上は顧客との分配後の額。
倍率:k10%、2036年以降のg2%、堀はnormalで超過収益の残存割合を1/2とする。余剰現金25億円を除く事業純利益50.15億円、事業自己資本137億円、ROE約36.6%、RONIC約23.3%。正当化PER=(1−0.02÷RONIC)÷(0.10−0.02)=11.427倍。会社全体の時価総額は50.15×11.427+25×0.75=591.823億円。成熟後の倍率を過去の市場PERから決めていない。
確率:顧客の大型設備への採用、量産での再現性、設計の標準化、DualPoreの海外展開、資金調達のすべてが連続して成功する必要がある。市場は大きいが、2026年時点の商用化実績が少ないため、10%の可能性にとどめる。
やや楽観 20% 商用化が進み、DualPoreも継続収益の柱になる 利益 21 億円 · PER 11.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,295 円206 億円
重要鉱物の製錬や化学材料の分野で、マイクロ波設備の費用対効果が確認される。設備導入は顧客の投資計画に左右されるものの、実証から商用化へ進む案件が毎年生まれる。中外炉工業などの設備メーカーとの関係が深まり、MWCCは装置全体を自社で作るより、反応器設計や技術提供に力を集中できるようになる。
2036年のPhase3は年間12件となり、商用設備の売上が50億円を超える。大型工場への設計適用が増えるほど過去のデータを再利用できるため、研究開発費の売上に対する比率が下がる。Phase4も11件まで増え、個々の研究契約だけに業績を頼らない構造ができる。一方、設備価格を自由に上げられるほどの市場支配力はなく、既存炉メーカーとの競争は続く。
DualPoreは国内外58ラインで稼働し、対象となる排液の種類が増える。貴金属価格の変動はあるが、顧客の回収量と収益分配が安定し、年間売上約22億円の事業へ育つ。合計売上は約100億円、営業利益は約30億円に達する。将来の価値は高まるが、初期の資金調達と新株予約権の希薄化を経ているため、その全額が現在の株主に帰属するわけではない。
- マイクロ波・Phase1研究開発:数量 44.0(当該決算期間に売上計上したPhase1契約件数)× 価格 0.05(Phase1契約1件当たりの平均売上高(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 2 億円。年間44件、平均540万円。物価上昇と案件構成の高度化を含む。
- マイクロ波・Phase2実証開発:数量 42.0(当該決算期間に売上計上したPhase2契約件数)× 価格 0.39(Phase2契約1件当たりの平均売上高(億円))→ 売上 16 億円・営業利益 11 億円。年間42件、平均3900万円。設計の標準化で貢献利益率が高まる。
- マイクロ波・Phase3商用導入:数量 12.0(当該決算期間の商用導入・製作契約件数)× 価格 4.20(契約1件当たり売上高(億円、進捗に応じた計上額))→ 売上 50 億円・営業利益 23 億円。年間12件の商用導入契約。設備の規模と収益認識の進捗を含む平均4.2億円。
- マイクロ波・Phase4継続支援:数量 11.0(当該決算期間に収益を認識したPhase4契約数)× 価格 0.79(Phase4契約1件当たり年間認識売上高(億円))→ 売上 9 億円・営業利益 5 億円。継続支援11件、平均7900万円。
- DualPore低濃度貴金属回収:数量 58.0(期末にカートリッジを導入済みの顧客生産ライン数)× 価格 0.38(稼働ライン1本当たりの年間換算売上高(億円))→ 売上 22 億円・営業利益 10 億円。稼働58ライン、1ライン年間3800万円。国内外の高回収量ラインが中心。
倍率:余剰現金8億円を除く事業純利益20.788億円、事業自己資本73億円、ROE約28.5%。k10%、g2%、normalの残存割合1/2よりRONIC約19.2%、正当化PER11.2005倍。時価総額は20.788×11.2005+8×0.75=238.836億円となる。事業の成功は2036年の利益に反映し、倍率に高成長の期待を重ねない。
確率:中外炉工業などの協業先を通じた工場導入が一定数進み、DualPoreの市場拡大も成功する筋書き。初期の商用化案件と5ラインの導入実績があるため十分に考えられるが、複数業界での同時成功はまだ実証されていない。
中立 28% 商用化は部分的に進むが、業界標準には至らない 利益 5 億円 · PER 10.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 276 円44 億円
研究開発と実証の受注は維持されるが、顧客が大型設備を採用するまでには時間がかかる。マイクロ波の経済性は一部の素材や工程で認められ、製錬や化学材料向けに商用導入が進む。しかし、炉メーカーの既存設備を広く置き換える標準技術にはならず、案件ごとに検証と設計変更が必要な状態が続く。
2036年にはPhase1が年間38件、Phase2が36件となり、研究・実証の収入は安定する。Phase3は年間6件まで育ち、商用設備の認識売上は18億円となる。Phase4は5件で、顧客の工場に定着した技術から継続収入を得る。ただし、これらの受注が毎年同じ規模で続く保証はなく、研究者と実証設備を維持する固定費も残る。
DualPoreは30ラインまで増えるが、貴金属回収に最適な排液を持つ顧客が限られ、海外展開は慎重に進む。年間売上は9億円となり、事業全体の利益を支える第二の柱になる。会社全体の売上は約46億円、営業利益は約7.2億円、純利益は約4.8億円となる。商用化の部分的な成功は認めるものの、現在の時価総額を支えるには力不足である。
- マイクロ波・Phase1研究開発:数量 38.0(当該決算期間に売上計上したPhase1契約件数)× 価格 0.05(Phase1契約1件当たりの平均売上高(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。年間38件、平均520万円。現在の15か月実績を年率換算してから顧客数と価格の変化を考える。
- マイクロ波・Phase2実証開発:数量 36.0(当該決算期間に売上計上したPhase2契約件数)× 価格 0.37(Phase2契約1件当たりの平均売上高(億円))→ 売上 13 億円・営業利益 9 億円。年間36件、平均3720万円。2026年実績単価から物価約1.34倍を基本とし、標準化による採算改善を見込む。
- マイクロ波・Phase3商用導入:数量 6.0(当該決算期間の商用導入・製作契約件数)× 価格 3.00(契約1件当たり売上高(億円、進捗に応じた計上額))→ 売上 18 億円・営業利益 7 億円。年間6件の商用導入。1件平均3億円は大型設備の製作・導入進捗に対する収益であり、2026年の部分計上0.1億円との単純な価格比較ではない。
- マイクロ波・Phase4継続支援:数量 5.0(当該決算期間に収益を認識したPhase4契約数)× 価格 0.72(Phase4契約1件当たり年間認識売上高(億円))→ 売上 4 億円・営業利益 2 億円。5件の稼働後支援、平均7200万円。顧客の追加導入が限定的で、継続収入はまだ小さい。
- DualPore低濃度貴金属回収:数量 30.0(期末にカートリッジを導入済みの顧客生産ライン数)× 価格 0.30(稼働ライン1本当たりの年間換算売上高(億円))→ 売上 9 億円・営業利益 4 億円。30ライン、年間3000万円。足元の導入途中の認識単価ではなく、通年稼働時の回収量、分配率、貴金属価格から推定。
倍率:余剰現金1億円を除く事業純利益4.786億円、事業自己資本32億円、ROE約15.0%。k10%、g2%、残存割合1/2でRONIC約12.5%。正当化PER=(1−0.02÷RONIC)÷(0.10−0.02)=10.4965倍。会社全体の時価総額は4.786×10.4965+1×0.75=50.986億円。営業利益率約15.7%は過去の最高期を上回るが、商用設備への移行とDualPoreの増収、2027年度計画にある粗利益率改善が部分的に定着する場合に限る。
確率:中立の根拠は、Phase2の実証案件が一定数あることと、Phase3への移行がまだ少ないことの両方にある。DualPoreは現実に5ラインへ導入済みだが、継続収入を大きく生む実績は短い。2030年の会社構想には届かなくても、2036年までに一定の商用設備を持つ会社になると見る。
やや悲観 26% 実証案件は続くが、商用化が伸び悩む 利益 1 億円 · PER 9.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 33 円5 億円
顧客の試験依頼は続くが、実証段階から商用設備へ進む案件は少ない。燃料費や電力料金の変化によってマイクロ波の優位性が縮む用途があり、既存炉メーカーも省エネルギー化を進める。大型工場の導入判断には時間がかかり、採用が決まっても装置の製作と安全性の確認で費用が膨らむ。会社は収益性の低い研究テーマを絞るが、技術者と設備を維持する費用は残る。
2036年のPhase1は年間26件、Phase2は24件で、研究・実証の受託は一定の規模を保つ。Phase3は年間3件、Phase4も3件にとどまり、量産設備の普及は限定的である。商用化への移行に時間がかかるため、ライセンスの継続収入は研究開発費を十分に賄えない。
DualPoreは14ラインに増えるものの、対象となる排液が限定され、貴金属価格と回収量の変動で収入は安定しない。会社全体の営業利益は約1.3億円、純利益は約0.6億円にとどまる。資金繰りのために既存のストックオプションの行使や借入継続が必要になり、余剰現金を配当へ回す余力はない。事業は存続するが、資本コストに届く利益を生めない会社になる。
- マイクロ波・Phase1研究開発:数量 26.0(当該決算期間に売上計上したPhase1契約件数)× 価格 0.05(Phase1契約1件当たりの平均売上高(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 1 億円。年間26件、平均500万円。顧客開拓は伸びず、名目単価上昇のみ。
- マイクロ波・Phase2実証開発:数量 24.0(当該決算期間に売上計上したPhase2契約件数)× 価格 0.37(Phase2契約1件当たりの平均売上高(億円))→ 売上 9 億円・営業利益 6 億円。年間24件、平均3700万円。物価を転嫁するが数量は減る。
- マイクロ波・Phase3商用導入:数量 3.0(当該決算期間の商用導入・製作契約件数)× 価格 2.00(契約1件当たり売上高(億円、進捗に応じた計上額))→ 売上 6 億円・営業利益 2 億円。商用導入は年間3件、1件平均2億円。小型・低収益案件が中心。
- マイクロ波・Phase4継続支援:数量 3.0(当該決算期間に収益を認識したPhase4契約数)× 価格 0.67(Phase4契約1件当たり年間認識売上高(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。継続支援は3件、平均6700万円。
- DualPore低濃度貴金属回収:数量 14.0(期末にカートリッジを導入済みの顧客生産ライン数)× 価格 0.25(稼働ライン1本当たりの年間換算売上高(億円))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。14ライン、年間2500万円。回収量と顧客分配条件が伸びを制約。
倍率:純利益0.6億円、自己資本14億円でROE約4.3%となり、k10%を下回る。超過収益を生まない事業には長期成長の価値を付けず、稼ぐ力の上限1÷k=10倍以内とする。少数の商用設備に依存し、維持投資が必要なため、純利益の9倍で時価総額5.4億円。これは市場の過去のPERやPBRの底を用いた数字ではない。
確率:下に寄せる理由:2026年6月期の営業損失約9.3億円、自己資本比率8.6%、商用段階の売上の小ささを考えると、実証研究の需要が残っても黒字が小さい可能性が高い。事業が完全に消えるより、投資回収に長い時間がかかる展開を重く見る。
悲観 16% 商用化に失敗し、資本再構成で既存株主の価値が失われる 利益 −7 億円 · PBR 0.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1 円0 億円
大型炉や金属製錬の実証で、当初の計算ほど電力費を削減できず、長時間運転での保守費も高くなる。顧客は新しい設備への投資を見送り、既存の炉や他社の加熱技術を選ぶ。研究開発の受託は細々と続くが、商用導入は止まる。保有する設計データや特許には技術的価値が残っても、顧客がそれに十分なお金を払わなければ株主利益にならない。
Phase1とPhase2の研究案件は大きく減り、Phase3の売上はなくなる。かつて採用した設備の一部に支援契約が残るものの、更新される保証はない。DualPoreも競合する回収技術や物流費の影響で採算が悪化し、稼働ラインは3本まで減る。年間売上は約3.5億円、営業損失は約5.9億円に達する。
会社は研究開発と設備を縮小し、工場・実証資産を減損する。債務返済と事業継続のため追加増資や第三者との資本提携を迫られ、現在の株主は一段と希薄化する。TOBによる救済が成立する保証はなく、技術資産の売却代金が債権者に優先して配分される可能性もある。残る会社の持分価値はほぼゼロに近づき、既存株主に戻る配当もない。
- マイクロ波・Phase1研究開発:数量 12.0(当該決算期間に売上計上したPhase1契約件数)× 価格 0.04(Phase1契約1件当たりの平均売上高(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。研究の縮小で年間12件。単価も上げられない。
- マイクロ波・Phase2実証開発:数量 8.0(当該決算期間に売上計上したPhase2契約件数)× 価格 0.25(Phase2契約1件当たりの平均売上高(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。年間8件、平均2500万円。安価な小規模試験が残る。
- マイクロ波・Phase3商用導入:数量 0.0(当該決算期間の商用導入・製作契約件数)× 価格 1.00(契約1件当たり売上高(億円、進捗に応じた計上額))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。新規の商用設備採用が停止する。価格は参考値であり、販売数量ゼロのため売上はない。
- マイクロ波・Phase4継続支援:数量 1.0(当該決算期間に収益を認識したPhase4契約数)× 価格 0.50(Phase4契約1件当たり年間認識売上高(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。既存顧客1件の支援のみが残る。
- DualPore低濃度貴金属回収:数量 3.0(期末にカートリッジを導入済みの顧客生産ライン数)× 価格 0.15(稼働ライン1本当たりの年間換算売上高(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。稼働3ライン。回収量と顧客分配率の悪化により年間1500万円。
倍率:純利益がマイナス6.5億円であるため、PERによる継続利益価値は認めない。現在の自己資本約1.2億円から減損と累積損失、資本再構成を経て、2036年の残存自己資本を0.4億円とする。0.4億円の0.5倍で時価総額0.2億円。過去の市場PBRではなく、追加資金なしに存続する力が乏しい残存資産の価値である。
確率:下に寄せる理由:自己資本の薄さ、営業赤字、過去の合弁事業清算、商用導入への移行率の低さが同時に確認される。研究テーマが消える可能性よりも、技術が残っても既存株主が大幅に希薄化する可能性を重視して16%とする。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
マイクロ波・Phase1研究開発
顧客の素材や化学反応にマイクロ波が有効かを、小規模な試験と設計によって確かめる初期段階。
| 数量当該決算期間に売上計上したPhase1契約件数 | 価格Phase1契約1件当たりの平均売上高(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 26.0 | 0.04 | 1 | 1 |
| 10 年後 中立 | 38.0 | 0.05 | 2 | 1 |
取り方:2026年9月17日の事業計画に記載されたPhase1の26件、売上約100百万円を採用。単価は売上を契約件数で割った約386万円である。2026年6月期は15か月決算。営業利益相当の0.60億円は公開されたセグメント営業利益ではなく、本社共通費・研究開発費を配賦する前の推定貢献利益である。
マイクロ波・Phase2実証開発
顧客の生産工程に近い条件でパイロット試験、スケールアップ、設備導入の設計を進める主力段階。
| 数量当該決算期間に売上計上したPhase2契約件数 | 価格Phase2契約1件当たりの平均売上高(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 32.0 | 0.28 | 9 | 3 |
| 10 年後 中立 | 36.0 | 0.37 | 13 | 9 |
取り方:会社のPhase2の32件、売上約888百万円から、1件平均約2774万円を算出した。顧客の工程や装置規模によって単価は大きく異なるため、これは価格表ではなく売上実績を件数で割った平均である。推定貢献利益2.70億円は本社費用控除前で、会社の開示した段階別営業利益ではない。
マイクロ波・Phase3商用導入
顧客の商業生産ラインに導入する反応器、加熱設備、技術ライセンス、立上げ支援など。
| 数量当該決算期間の商用導入・製作契約件数 | 価格契約1件当たり売上高(億円、進捗に応じた計上額) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 1.0 | 0.10 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 6.0 | 3.00 | 18 | 7 |
取り方:2026年6月期はPhase3が1件、売上約10百万円である。これは商用設備一基の完成品販売価格を示さず、当期に収益認識された契約進捗額である。2036年の価格には大型設備の製作・導入まで含む年間認識売上を使用するため、当期の0.10億円と単純な値上がり率で比較できない。推定貢献利益は0.02億円。
マイクロ波・Phase4継続支援
商用化後のライセンス、設計変更、追加導入、技術サポートなどの継続的な収益。
| 数量当該決算期間に収益を認識したPhase4契約数 | 価格Phase4契約1件当たり年間認識売上高(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 1.0 | 0.52 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 5.0 | 0.72 | 4 | 2 |
取り方:2026年6月期はPhase4が1件、売上約52百万円である。各年の支援内容と設備数で金額が変わるため、永続的な定額課金を保証する数字ではない。推定貢献利益0.21億円には、共通研究費や本社固定費を含めない。
DualPore低濃度貴金属回収
顧客の排液ラインにカートリッジを設置し、パラジウムなどの回収価値を顧客と分配する継続型事業。
| 数量期末にカートリッジを導入済みの顧客生産ライン数 | 価格稼働ライン1本当たりの年間換算売上高(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 5.0 | 0.01 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 30.0 | 0.30 | 9 | 4 |
取り方:有価証券報告書による2026年6月末の導入済み5ライン、当期売上728.9万円を基に1ライン当たり145.8万円とした。事業取得は2025年9月で、各ラインの設置月もそろわないため、この値は厳密な通年単価ではなく実績の割り算である。2036年は年間の回収量と顧客分配後の収入が定着したラインを想定する。貢献利益0.018億円は推定である。
リスクと懸念
商用化の進捗と大型案件の受注遅延
2026年6月期は大型案件の受注遅延が売上の減少と大幅な営業赤字につながった。研究開発と実証が積み上がっても、顧客が量産設備を採用しなければ利益は増えない。大型プラントでは顧客の投資予算、安全基準、品質保証、連続運転試験が必要であり、発注が数年遅れるだけでも会社の資金繰りに大きな影響が出る。
財務の脆さと継続企業の前提に関する重要事象
2026年6月期末の自己資本比率は8.6%で、現金約4.0億円に対して借入金は約8.2億円ある。営業キャッシュフローも大きな赤字で、会社は金融機関からの調達や事業計画の達成を前提に資金計画を立てている。継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる事象は認められるが、重要な不確実性はないとの会社判断を、投資家が無条件の安全性と読み替えてはいけない。
新株予約権と将来の希薄化
2026年に発行した第8回新株予約権の潜在株式は164.2万株で、2026年6月末の発行済株式に対して約10.3%に相当する。既存のストックオプションもあり、商用化が進む前の追加資金調達によって現在の株主の持分はさらに小さくなりうる。企業全体の利益が増えても、一株当たりの経済的利益が同じ割合で増えるとは限らない。
技術の代替と装置メーカーとの競争
マイクロ波は有望な加熱手法だが、すべての素材と工程に適しているわけではない。従来の炉、抵抗加熱、誘導加熱、その他の省エネルギー技術も進歩する。顧客は既存設備の償却が終わるまで新設備を採用しない場合があり、電気料金や原材料の性質によって優位性が逆転することもある。SAIREMなどマイクロ波装置を扱う企業や既存炉メーカーの技術改良にも注意が必要だ。
DualPoreの回収量と貴金属価格
DualPoreは2026年6月期末に5ラインへ導入されているが、継続的な収益力を証明するには実績期間が短い。回収するパラジウムの濃度、排液量、吸着材の寿命、精製・輸送コスト、顧客との収益分配率によって一ライン当たり利益が変わる。対象金属を広げるには新たな研究開発と顧客検証も必要で、導入ライン数だけが増えても利益が伴わない可能性がある。
研究開発投資と資本配分の失敗
過去のティエムティの清算で約10.3億円の関係会社整理損を計上した経験は、商用生産への投資が必ずしも回収できないことを示す。現在も複数の鉱物・化学・回収技術に研究資金を振り向けており、技術的に魅力的なテーマが資本コストを超える収益を生むとは限らない。経営者が損失の大きい案件から撤退し、成功確率の高い用途へ資本を集中できるかが長期利益を左右する。
顧客集中と投資判断への依存
2026年6月期にはレゾナックなど一部の大口顧客への売上依存が高かった。技術評価が進むほど大型顧客の契約規模も大きくなるため、一件の延期や中止が全社業績を左右しやすい。研究・実証から商用設備へ移る段階では、顧客の設備投資予算、経営判断、規制への対応が障壁になる。大口顧客の試験実施を、商用設備の継続受注と同一視しないことが重要だ。
今後の分かれ目
- Phase3の商用設備の受注件数が2年以上連続して増え、設備納入後の安定稼働も確認されたら
- 中立の商用設備件数とPhase4の継続契約を引き上げる。特に顧客が二つ目の工場へ横展開した実績があれば、再投資利回りと技術の堀を評価し直す。
- 2030年までの商用設備5件という会社の構想が達成されず、大型案件の延期が続いたら
- 中立からやや悲観へ重みを移す。実証費用が続く一方で設備収益が得られず、増資と固定費削減の必要性が高まる。
- DualPoreの導入ライン数が増えると同時に、一ライン当たりの回収収入と継続率が改善したら
- 研究開発型の一時収益から継続収益への転換が進んでいると判断する。ライン数だけでなく、回収した貴金属の価値から顧客と分配した後の粗利益を確認して評価を上げる。
- 営業キャッシュフローが継続して黒字になり、借入金の返済と自己資本の回復が進んだら
- 資金繰りに対する悲観確率と資本コストの悪化要因を再検討する。追加希薄化なしに研究開発を賄えることが、既存株主にとっての価値改善につながる。
- 第8回新株予約権の行使が進まず、別の大規模な第三者割当や救済増資が必要になったら
- 新たな発行条件に応じて既存株主の取り分を減額する。企業全体の売上計画を引き上げるより先に、株主の持分比率と払込金の使途を確認する。
- 中外炉工業との設備開発や重要鉱物の実証で、従来方式より優れた運転費・設備費の定量データが公表されたら
- 技術上の競争優位の裏付けとして採用率を引き上げる。大型炉市場全体の数字ではなく、実際に置き換えられる工程の範囲とMWCCが得る対価を評価する。
- 過去の合弁事業と同様に、新規技術への投資で大きな減損や事業撤退が生じたら
- 経営者の資本配分への信頼を下げ、長期の研究開発投資を利益へ変える能力を慎重に見直す。次の事業への投資額より、残存資本と累積損失を優先して確認する。
見ておくもの
- Phase1・Phase2・Phase3・Phase4それぞれの契約件数と売上計上額
- Phase2からPhase3へ進んだ顧客・用途の数と商用設備の実際の稼働状況
- 中外炉工業との商用設備開発、三井物産などとの鉱物関連実証の進捗
- DualPoreの導入ライン数、年間回収量、一ライン当たり収入と継続率
- 2027年6月期計画の売上高15.12億円・営業利益0.50億円の達成状況
- 営業キャッシュフロー、借入金、手元資金、コミットメントラインの更新状況
- 第8回新株予約権とストックオプションの行使株数・実際の調達金額
- 研究開発費と販管費の推移、商用設備の利益率、増分投下資本利益率
- 商用設備を同一顧客の複数工場へ導入した実績
- 配当・自社株買いの開始条件と、経営者の資本配分方針
倍率と資本コストの決め方
売上の起点は2026年6月期のPhase別契約件数とDualPore導入ライン数である。2026年は15か月決算のため、研究・実証の件数を2036年の12か月の数量と機械的には比較していない。物価上昇は原則として契約単価に入れ、数量に重ねていない。Phase3の2036年単価が大きいのは、2026年の0.10億円が契約の一部進捗であるのに対し、将来は設備の製作・導入を含むためであり、同一サービスの単純な値上がりを意味しない。
中立の総売上約46億円は、Phase3年間6件とDualPore30ラインなど、会社の公表した研究・実証実績から部分的な商用化が進む場合の数字である。2030年に約100億円という会社の成長構想をそのまま採用していない。倍率は市場のPERやPBRではなく、資本コスト10%、長期成長率2%、2036年のROE、超過収益の残存割合から決めた。やや悲観は稼ぐ力、悲観は減損後の残存資産で評価した。純現金を架空の床にはしていない。
2026年6月末の株数を基準に、新株予約権の行使で既存株主の取り分が減る点を別途反映した。新株予約権の払込金を会社の自己資本へ含める一方、その調達資金を事業価値へ二重には足していない。リース会計の変更によって負債の表示方法が変わっても、事業の利益の経済性は変わらない。現在の株価や直近の時価総額に結果を寄せる調整はしていない。
資本コスト 10.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5% + 上乗せ 0.5%。基本7.5%に事業品質の上乗せ2.0ポイントと、財務・業績の悪化に対する0.5ポイントを加え、資本コストを10.0%とする。株価の変動率や時価総額の小ささによる機械的な上乗せはしない。