結論
ブラスは、名古屋に本社を置くゲストハウス型の結婚式場の運営会社だ。貸し切りの一軒家で挙式から披露宴までを手がけ、東海・静岡・関西に加え、東京・千葉・埼玉へ広げている。2026 年 7 月期の売上は 143 億円、営業利益は 5.9 億円だった。
筆者の結論は、今の値段はほぼ適正というものだ。接客の評判は業界で抜きんでていて、新店が育てば利益は倍近くになりうる。ただ、婚姻の減少は止まらず、投資は借入で賄っている。強みと重荷が釣り合っている。
足元は強い。受注残は前期末から 24% 増え、会社は来期の施行を 19% 増の 3,950 組と見る。一方で、期初計画は 2 期続けて下回った。計画どおりに進まないのがこの会社の癖だ。
中立の 10 年では、組数は今の 3 割増、単価は物価に届かず、営業利益率は 6% にとどまる。純利益は 8 億円台で、資本コストにやや届かない ROE が続く。
見るべきは、新店の利益がいつ見えるかだ。大宮の開業を挟む来期が、その答えを出す。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は面白いが、安全域は厚くない。一度の来店で決まる商売で、評判が強い。ここが、同じ式場でも差がつく点だ。結婚式は後から取り戻せない体験なので、客は値段より評判で選ぶ。ただし、市場は縮み、投資は借入頼みで、計画は 2 期連続で未達となった。
筆者がオーナーとして気にするのは、稼ぐ力に対して、投じるお金が多すぎることだ。営業キャッシュ 11 億円の会社が、1 年で 21 億円を投じた。新店が計画どおり育てば報われるが、外れれば借金だけが残る。
払う値段は、純資産の 0.75 倍ほどだ。見た目は安い。ただ、ROE が資本コストに届かない会社の純資産は、ためた利益が額面どおりには評価されない。値段の安さは、安全域の根拠にならない。
そのうえで、受注残の厚みと、評判という資産は本物だ。新店の利益が見えてから評価しても遅くない会社である。経営の腕前は、これから 2 年の出店で試される。
何で稼ぐ会社か
事業は結婚式の運営だけだ。単一の事業で、売上の約 98% は単体が稼ぐ。主力は、一軒を貸し切るゲストハウス型の式場である。挙式、披露宴、料理、衣装、装花をまとめて請け負い、1 組あたり約 430 万円を売る。
2026 年 7 月期の施行は 3,309 組、平均単価は 407 万円だった。受注は 3,954 組と 17% 増え、受注残も 2,977 組に積み上がっている。夏場の撮影会には、全国 25 会場が参加した。式場ごとに内装・料理・演出が異なり、客は見学で気に入った 1 軒を選ぶ。
地盤は東海・静岡・関西で、関東は 2025 年 9 月に東京の「ブラスブルー東京」で入った。2026 年 8 月には千葉・柏の「アコールローリエ」を開き、2027 年春には大宮駅前に開く予定だ。関東に絞って店を増やす方針である。同じ地域に店を集めると、広告費・料理の仕入れ・人員の融通で効率が上がる。
費用の中心は人件費と建物だ。建物の減価償却は年 7.6 億円で、店舗の多くは賃借のため、家賃も固定費として重い。婚礼は 1 年先の予約で決まるので、受注残が売上の先行指標になる。受注から施行まで平均で 1 年ほどあるため、足元の受注の強さは、1 年先の売上にそのまま出る。
優良さと弱いところ
同社の強みは、接客の評判にある。オリコンの顧客満足度調査(ハウスウエディング)で、2026 年に 2 年続けて総合 1 位を取った。結婚式は一生に一度の買い物で、口コミが次の客を呼ぶ。評判が受注の強さにつながる点は、立派な武器だ。
弱みは 3 つある。第 1 に、単価の伸びが物価に届かない。この 4 年、平均単価はほぼ横ばいで、人件費の上昇に値上げが追いつかない。第 2 に、計画との乖離が大きい。営業利益は 2025 年 7 月期に 65% 伸びたが、2026 年 7 月期は 22% 減った。新店の費用が想定を超えたためだ。第 3 に、投資が借入頼みになっている。2026 年 7 月期は営業キャッシュ 11.5 億円に対し、投資は 21 億円を超えた。
堀、つまり他社がまねできない強みは、評判という無形のものにとどまる。立地や許認可の独占はなく、客が結婚式場を選ぶのは一度だけなので、切り替えの費用という堀もない。筆者は、残る割合を普通の水準でみる。
経営は創業家の支配が強く、社長が株式の約 48% を持つ。意思決定は速いが、少数株主の意向が通りにくい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
結婚式は、構造的に縮む市場だ。婚姻件数は 2025 年に約 49 万組で、ピーク時の半分以下の水準にある。人口の減少から、この流れは当面続く。出生数が減っている以上、20 年先まで婚姻の母数は戻らない。矢野経済研究所によれば、ブライダル関連市場は 2025 年に 1.58 兆円と前年並みを保つが、これは単価の上昇が件数の減少を補っているためだ。
挙式の形は、カジュアルに寄っている。少人数の披露宴、写真だけの式、ホテルの宴会場や、身内だけの食事会が増えた。これは、ゲストハウス型の主力である 100 人規模の披露宴の需要を削る。
競合は、ツカダ・グローバルホールディングのように、ゲストハウスとホテルの両方を持つ会社、地場の式場、ホテルの宴会部門だ。婚礼に特化した会社は、需要が縮む中で、店を閉じる会社と、残った客を取る会社に分かれる。式場を閉じた跡地は、残る側の出店先になる。ブラスは後者の側にいる。
将来の数量は、婚姻件数の減少と、同社のシェア拡大の差し引きで決まる。10 年の中立では、婚姻件数は 1〜2 割減り、同社の組数は新店でそれを上回る。ただし伸びるのは、新店の分だけだ。既存店が組数を伸ばせると見るのは難しい。
資本政策と M&A
還元は控えめだ。配当は小さく、配当性向は 2026 年 7 月期に 16%、来期予想は 8% だ。成長のための投資を優先する方針で、株主の取り分は小さい。自社株買いは直近では目立たない。
資本の使い方は、新店の建設が中心だ。2026 年 7 月期は、新店の建設仮勘定が 16.7 億円まで積み上がった。工事の代金は借入で賄い、有利子負債は 51 億円に増えた。借入の利息は、今は約 1% 台と低いが、借り換えで 3.5% 前後まで上がる。
買収や大型の再編の動きはない。社長が株の約半分を握るので、他社による買収は起きにくい。非上場化(MBO)の可能性はあるが、公表された動きはない。余った現金はなく、純有利子負債は約 26 億円。リースの約束も重く、純現金の会社ではない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
受注が強い。2026 年 7 月期の受注は 17% 増、受注残は 24% 増で、来期の施行 3,950 組のうち相当部分が、すでに予約として積み上がっている。会社の言う来期の営業利益 11 億円は、組数が伸びれば、固定費が薄まって届く数字だ。
評判は業界屈指で、オリコンの 1 位が 2 年続いた。この評判が、東京・柏・大宮という関東の新店で通じれば、地方で築いた利益率の水準を首都圏に持ち込める。関東は婚姻件数が最も多く、需要の縮みも緩やかだ。
借入の増加も、建設仮勘定という形で事業に回っている。調達した資金は、使途がはっきりした新店の建物に変わっている。新店が稼働すれば、借入は利益で返せる。2014 年から 2023 年にかけて、売上は 2 倍に伸びた実績がある。拡大の実行力は証明済みだ。受注の質も良く、平均単価は 2026 年 7 月期に 2% 余り上がった。需要が縮む市場でも、評判の高い店には客が集まり、同業が閉じた立地を取れる。婚姻の減少は避けられないが、結婚式を挙げる層は評判の良い店に集まる。居抜きで立地を取れれば、新店の費用も軽くなる。
慎重な見方
計画は信用しにくい。2026 年 7 月期の施行は、期初計画の 3,450 組に対し 3,309 組、営業利益も前年より 22% 減った。2 期続けて期初計画を下回った会社の、来期の営業利益 87% 増という数字を、そのまま受け取るべきではない。
婚姻件数は減り続け、挙式のカジュアル化は、同社の主力である大人数の披露宴を削る。単価はこの 4 年ほぼ横ばいで、人件費は物価で上がるので、利益率は上がりにくい。
投資が借入頼みなのも気になる。営業キャッシュの 2 倍近い投資をし、借入の金利は低いまま続かない。2020 年 7 月期に営業損失 10 億円を出した会社であり、需要が崩れる局面では、固定費の重さが一気に利益を飲み込む。新店の失敗は、そのまま減損と借金になる。人件費は最低賃金の上昇で年 3% 前後ずつ積み上がり、人手に頼る式場の仕事は機械化で吸収しにくい。社長が株の半分近くを持つ会社で、投資の判断を外部の目が止めにくい点も心配だ。
どちらに重みを置いたか
受注の強さと評判は本物だが、10 年を決めるのは婚姻の減少と投資の回収だ。足元の数字は強気の見方を支えるが、計画の未達が続いた実績と借入の重さを重く見て、確率は中立から慎重な側に寄せた。受注の強さは来期の売上を支えるが、その先の 10 年は婚姻の減少に押される。楽観を 27%、悲観側を 35% とした。慎重な見方が強いのは、投資の回収が済むまで、数字で確かめられないからである。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/07 期)
確率で加重した株価時価総額 1,701 円90 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 160 円9 億円)。 今の値に割り戻すと 841 円45 億円、今との差 +38.3%、 期待の年率 +11.8%(資本コスト 8.8%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 3,876 円206 億円 | 288 円15 億円 | +584.8% | +21.2% | 291 円16 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,717 円144 億円 | 226 円12 億円 | +383.9% | +17.1% | 588 円31 億円 |
| 中立 | 38% | 2,011 円107 億円 | 180 円10 億円 | +260.4% | +13.7% | 833 円44 億円 |
| やや悲観 | 25% | 453 円24 億円 | 88 円5 億円 | −10.9% | −1.1% | 135 円7 億円 |
| 悲観 | 10% | 94 円5 億円 | 41 円2 億円 | −77.7% | −13.9% | 14 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,701 円90 億円 | 160 円9 億円 | +206.2% | +11.8% | 1,861 円99 億円 |
今の株価時価総額 608 円32 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 7% 関東で拠点を厚くし、単価も物価並みに上がる 利益 15 億円 · PER 13.2 倍 · 株価時価総額 3,876 円206 億円
大宮・柏に続く関東の新店が次々に立ち上がり、店は 40 会場近くまで増える。オリコンで 2 年続けて 1 位を取った接客の評判が、首都圏でも受注の強さになる。施行組数は今の 1.6 倍の 5,300 組。単価は物価並みに上がり、値上げでも受注が落ちない。
婚姻件数の減少は止まらないが、結婚式を挙げる層が縮むより速く、同社が地方と関東でシェアを取る。利益率は、新店の初期費用が一巡し、既存店の固定費が薄まって 8% に乗る。過去 12 年の最高が 9.9% なので、それを超える水準ではない。
借入は返済が進み、利払いの重さも抜ける。ただし、これは会社の計画どおり、あるいはそれ以上に拡大が進んだ場合の話で、実現の難度は高い。還元も利益に応じて増える。
- ウエディング:数量 5,300(挙式・披露宴の施行組数(組))× 価格 580(1 組あたり売上(万円))→ 売上 307 億円・営業利益 25 億円。組数 1.6 倍・単価 1.34 倍
倍率:事業の純利益 15 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.7% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.2 倍。全体の PER 13.21 倍、時価総額 198 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:関東の新店が軒並み軌道に乗り、婚礼市場の縮みが緩やかで、金利も落ち着くという条件が重なる必要がある。条件が多いので 7% にとどめた。
やや楽観 20% 新店が計画に近い形で育ち、利益が倍増する 利益 11 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 2,717 円144 億円
施行組数は今の約 1.45 倍の 4,800 組まで伸びる。東京・柏・大宮の新店が育ち、さらに関東で数店を足す。既存の東海・関西の店は、婚姻の減少で組数が 1 割ほど減るが、評判の高さで下げ幅を抑える。
単価は物価の伸びにわずかに届かない。ゲストの人数が減るカジュアル化の流れが、値上げを一部食うためだ。利益率は 7% 台まで戻る。
人件費と食材の上昇は避けられないが、受注が潤沢なら値上げで吸収できる。借入は返済と新規投資が釣り合い、利払いは増えるが利益を大きくは削らない。受注残が厚く、翌年の売上を読みやすいため、投資の判断も外れにくい。会社が掲げる関東中心の出店方針が、そのまま実を結ぶ形だ。
- ウエディング:数量 4,800(挙式・披露宴の施行組数(組))× 価格 562(1 組あたり売上(万円))→ 売上 270 億円・営業利益 19 億円。組数 1.45 倍・単価 1.30 倍
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.9% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.48 倍、時価総額 137 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の 2027/07 期計画ほどではないが、新店と既存店の改善でおおむね近い利益が出る想定。受注残が前期比 2 割増えている足元の強さを根拠にした。
中立 38% 新店で件数を増やし、単価は物価に届かず、利益率は 6% 利益 8 億円 · PER 11.9 倍 · 株価時価総額 2,011 円107 億円
施行組数は 4,300 組、今より 3 割ほど増える。新店の効果が 1,500 組ほど加わる一方、婚姻の減少で既存店は 1 割強減る。単価は 10 年で 1.28 倍。物価の 1.34 倍に届かないのは、この 4 年の実績が物価を下回り、ゲスト数の減少が単価を押さえているためだ。
利益率は 6%。計画の 6.4% には届かない。減価償却は新店の分が積み上がり、建築費の上昇で改装の投資も膨らむ。人件費も物価で上がるので、値上げが追いつかなければ利益率は上がらない。
純利益は 8 億円台。借入の金利が上がって利払いが重くなる分は、売上の増加で打ち消す。会社の計画どおりにはいかないが、投資が無駄になるわけでもない、中くらいの結果である。
- ウエディング:数量 4,300(挙式・披露宴の施行組数(組))× 価格 554(1 組あたり売上(万円))→ 売上 238 億円・営業利益 14 億円。組数 1.3 倍・単価 1.28 倍
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.6% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.9 倍。全体の PER 11.89 倍、時価総額 99 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2027/07 期の会社計画を 2 割ほど割り引き、新店の立ち上がりは遅れつつも着実に進むと見る。2026/07 期も期初計画を下回った実績を織り込んだ。
やや悲観 25% 婚礼の縮みが新店の効果を打ち消す 利益 3 億円 · PER 6.2 倍 · 株価時価総額 453 円24 億円
施行組数は 3,500 組と今より少し増えるだけで、新店の投資の割に伸びない。関東は競合が多く、地方で築いた評判が通じにくい。既存店は婚姻の減少で 2 割近く減る。
単価は 10 年で 1.20 倍にとどまる。客を呼ぶために値引きや特典が増え、物価を下回る。人件費は物価並みに上がるので、利益率は 3.5% まで落ちる。
借入は新店の投資で増えたままで、金利の上昇が利益を削る。純利益は 3 億円を切り、配当は今の水準を保つのがやっとになる。新店の一部は赤字が続き、会社が投資の撤退を決めるまでに時間がかかる。新店の一部は赤字のまま減損の対象になり、出店を止める判断も遅れる。
- ウエディング:数量 3,500(挙式・披露宴の施行組数(組))× 価格 519(1 組あたり売上(万円))→ 売上 182 億円・営業利益 6 億円。組数 1.06 倍・単価 1.20 倍
倍率:事業の純利益 2.8 億円・事業 ROE は約 4% で k 8.75% を大きく下回る。上限は 1÷k の約 10.8 倍だが、新たに投じる資本の稼ぎが k を大きく下回るので、7 割に引き上げず約 57% の 6.2 倍に置いた。谷の利益に谷の倍率を重ねてもいない。
確率:関東での知名度づくりが遅れ、新店の投資が回収できないまま既存店の組数が減る。2024/07 期に営業利益が 3 分の 1 に落ちた例もあり、起きやすい筋書きとして 25% を置いた。
悲観 10% 結婚式の需要が縮み、家賃と借金が重く残る 利益 1 億円 · PER 5.5 倍 · 株価時価総額 94 円5 億円
施行組数は 2,600 組まで減る。結婚式を挙げない層が増え、少人数の食事会や写真だけの式が主流になるためだ。単価も 10 年で 1.05 倍にとどまり、物価に大きく負ける。
店の賃料・建物の償却・人件費は売上に連動しないので、利益率は 2.5% まで落ちる。借入の金利上昇と減損が重なり、会計の利益はほぼゼロになる。
会社は出店を止め、一部の店を閉じて借金の返済に回る。自己資本は減損で細り、少数株主に戻る価値は帳簿の 1 割ほどに下がる。手元の現金は、前受金の返還と借入の返済で消える。出店を急いだ代償を、残った株主が払う形になる。
- ウエディング:数量 2,600(挙式・披露宴の施行組数(組))× 価格 454(1 組あたり売上(万円))→ 売上 118 億円・営業利益 3 億円。組数 0.79 倍・単価 1.05 倍
倍率:事業の純利益は 0.9 億円、事業 ROE は約 2% で k 8.75% を大きく下回る。構造的に縮む事業で借金が残るため、上限の 1÷k(約 10.8 倍)の約 5 割の 5.5 倍に置いた。稼ぐ力は純利益 ÷ k の約 10 億円までで、その範囲に収めた。有利子負債 51 億円と前受金の返還を引くと、売れる資産の床はほぼゼロになる。
確率:婚姻の減少が加速し、挙式を省く層が増え、借入と家賃の固定費が残る構造的な負け。2020/07 期の営業損失 10 億円という実績があり、確率 10% を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ウエディング
ゲストハウス型の結婚式場(約 25 会場)を運営し、挙式・披露宴・料理・衣装・装花を一括で請け負う。単一の事業。
| 数量挙式・披露宴の施行組数(組) | 価格1 組あたり売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/07 | 3,309 | 433 | 143 | 6 |
| 10 年後 中立 | 4,300 | 554 | 238 | 14 |
取り方:単一事業。売上 143.2 億円を施行 3,309 組(前期比 2.2% 増)で割ると 1 組あたり約 433 万円(挙式・披露宴の平均単価は約 407 万円で、残りはその他の収入)。営業利益 5.9 億円は営業利益率 4.1%。受注 3,954 組・受注残 2,977 組と先行指標は強い。
リスクと懸念
計画の未達が続く
2026 年 7 月期は期初計画の施行 3,450 組を下回り、営業利益は 22% 減った。来期は 87% 増益の計画だが、新店の立ち上がりが遅れる癖があり、また未達なら利益が細ったまま借入だけが増える。
婚姻の減少と挙式の小型化
婚姻件数は 2025 年に約 49 万組と、ピーク時の半分以下の水準で、まだ減る。少人数の式や写真だけの式が増え、主力の大人数の披露宴を削る。単価が物価に届かず、利益率の上昇を阻む。
投資が借入頼み
2026 年 7 月期は営業キャッシュ 11.5 億円に対し投資は 21 億円で、有利子負債は 51 億円に増えた。借入金利は借り換えで 3.5% 前後まで上がる見込みで、利払いの増加が利益を削る。
固定費の重さ
店舗は賃借が多く、家賃・建物の償却・人件費は売上が落ちても減らない。2020 年 7 月期は営業損失 10 億円を出した。新リース会計基準(2028 年 7 月期から)で負債の見かけも変わる。
関東の競争
東京・千葉・埼玉は競合が多く、地方で築いた評判が通じるとは限らない。新店の費用が計画を超えれば、減損も起きる。2025 年 7 月期は 2.2 億円、2026 年 7 月期は 0.8 億円の減損が出た。
創業家の支配
社長が株の約 48% を持ち、意思決定は速いが、少数株主の意向は通りにくい。支配株主との取引や非上場化の判断は、少数株主の利益と一致するとは限らない。
今後の分かれ目
- 来期の施行が計画の 3,950 組に届く
- 新店の稼ぐ力が確認でき、楽観側の確率が上がる。営業利益 11 億円に届けば、中立を上に見直す。
- 来期も期初計画を下回る
- 3 期連続の未達で、新店の投資の回収に疑いが出る。やや悲観の確率を上げる。
- 受注残が前期末比で減りに転じる
- 先行指標が崩れたので、施行の減少が 1 年先に利益に出る。慎重に見直す。
- 借入の金利が想定以上に上がる
- 純利益が削られ、投資の回収が遅れる。営業利益率が 6% でも純利益は 8 億円を割る。
- 社長が非上場化(MBO)を発表する
- 買付けが行われれば、価格次第で少数株主に区切りがつく。公表された動きは今のところ無い。
見ておくもの
- 四半期ごとの受注残と施行組数
- 新店(東京・柏・大宮)の稼働と費用
- 営業キャッシュに対する設備投資の比率
- 借入金利と有利子負債の水準
- 婚姻件数と挙式披露宴の実施率
倍率と資本コストの決め方
倍率は式(正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)、k 8.75%、g 4%)と事業の経済性だけで置いた。ROE が k 以下の筋書きは 1÷k の約 10.8 倍が上限で、新規投資の稼ぎが k に届かないので 6〜8 割に置き、楽観のみ 9 割とした。今の株価・過去の PER・PBR は使っていない。10 年後の数字は家賃を営業費用に入れた今と同じ形で置いた(新リース会計基準で形が変わる)。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.5→13.21 倍・やや楽観 PER 9.4→12.48 倍・中立 PER 8.4→11.89 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality を足した(決まり v2)。同じ領域のツカダ・グローバル(+2.0%)より借金が軽いので 0.25 低い。創業家支配や計画の未達は k に足さず、筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.25% → 8.75%。