結論
ブティックスは、介護・IT分野の展示会と、中小企業の事業承継を扱うM&A仲介を組み合わせたマッチング企業である。筆者は現在の評価を「やや割高」と見る。対面で実物を確かめ、意思決定者と直接商談できる展示会には長く残る価値がある。しかし、収益の大きな柱であるM&A仲介には、AIエージェントが人の調査や候補先探索を代替する構造的な脅威がある。
2026年3月期の売上高は約55億円、営業利益は約16億円だった。CareTEXとDXPOを合わせた出展小間数は6,773小間に達し、M&Aの成約組数も219組となった。展示会の集客力を使って経営者と接点を持ち、事業承継の相談につなぐ仕組みには独自性がある。純現金も約40億円あり、財務危機を心配する段階ではない。
一方、会社の新中期計画は2029年3月期に売上高約102億円、営業利益約40億円という意欲的な数字を掲げる。過去の計画では売上目標に到達したものの、利益の達成が遅れ、人材事業の買収では大きな損失を計上した。経営陣が示す成長曲線を、そのまま10年先まで延ばすことはできない。
中立の2036年3月期は、IT展示会の拡大を認めながらも、M&A仲介の成約数と人材紹介の数量が減る世界を想定する。10年後の中立時価総額は約246億円だが、そこに至る時間、下振れ、株式の希薄化を考慮した確率加重の現在価値は約131億円である。現在の約153億円を約14%下回る。強い成長力と安い株価は別の話であり、長く持つ株主にはもう少し厚い安全域が欲しい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず展示会の収益構造に目が向く。出展企業を集めるための営業費と会場費は必要だが、来場者と出展企業が一定規模に達すると、小間数の増加が利益に結びつきやすい。物理的な設備を大量に所有する事業でもないため、過去に高い資本利益率を実現できた理由は理解できる。介護という明確な業界に足場を築いたことにも価値がある。
それでも、10年先の利益を確信できるかという問いには慎重にならざるを得ない。展示会の出展契約には長期の解約不能条項があるわけではなく、出展者が成果を実感しなければ離れる。M&A仲介は成約した時に報酬を得るので、案件の調査・交渉・契約の手間がどれだけ自動化されるかによって単価の根拠が変わる。実績のある買い手データベースを持つことと、今後も人手の仲介に高い報酬を払ってもらえることは同義ではない。
株主に帰属する利益を見る際には、現金残高をそのまま余剰資産と扱えない。展示会では前受金を受領しており、開催前にはその役務を提供する義務が残っている。経営者は資金を新しい展示会の立ち上げ、仲介人材の採用、買収に振り向けることができる。リアライブの損失を経験した以上、再投資で資本コストを超える利益を生み続けるかは厳しく確かめたい。
本業の魅力は認めるが、強い堀を持つ企業だけに認められる高い永続成長を与える段階ではない。将来の配当と買い戻しが増え、展示会の値上げ実績が積み上がり、M&Aの人手を使わずに成約を維持できれば、価値の見方は変わる。今は、その改善を先払いするよりも、計画未達や技術変化に耐えられる価格差を重視する。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、業界を絞って売り手と買い手を引き合わせることにある。展示会では出展企業から小間料や商談設定料を受け取り、来場者は原則として買い手候補となる。介護分野のCareTEXは全国の介護用品メーカー、設備会社、介護事業者を結び、IT分野のDXPOは業務ソフトや営業支援サービスの供給企業と導入企業を結ぶ。物理的な会場にオンライン商談の機能を重ねるのが特徴だ。
2026年3月期の介護分野は2,359小間で約12.63億円を売り上げた。小間当たりの実現売上は約53.5万円となる。IT分野は4,414小間、売上約17.18億円で、同じ物差しでは約38.9万円である。単純な小間料金だけでなく付随サービスも含む平均値だが、実際の数量と価格を確認できる点は投資家にとって貴重である。
M&A仲介では、介護、医療、障害福祉、保育、建設、ITなどの小規模案件を扱う。2026年3月期は219組の成約で約22.59億円を計上したため、成約1組当たりの平均売上は約1,031万円となる。売り手向けの低価格を入口にしつつ、買い手との成約による成功報酬を得る。展示会で接点を持つ経営者や、約1万9,000社の買い手候補データベースが案件獲得の土台になっている。
残る人材採用支援は、2026年3月期に採用イベントと人材紹介で約2.29億円を計上した。ただし旧リアライブ事業の上半期分が決算に含まれないため、通年の単純比較には向かない。2027年3月期からは大規模なGrowth就活DXPOへ軸足を移し、従来の小規模イベントと紹介業務を再編する。新しい展示会には成長の余地があるが、旧事業の売上と新事業の売上を無条件に足し合わせるべきではない。
優良さと弱いところ
最大の強みは、特定業界の経営者を集める場所を自社で持っていることだ。介護施設の経営者、介護用品の供給企業、事業承継を考える売り手が同じ商流の中にいる。展示会が大きくなれば商談機会が増え、接点の蓄積がM&Aの案件開拓にも役立つ。展示会と仲介を別々に運営する企業には、簡単に模倣できない組み合わせである。
ただし、これは盤石な独占ではない。出展企業は商談成果が悪ければ翌年の出展をやめられ、主催者の乗り換えにも大規模なシステム移行は要らない。会社はシェアブース方式による低価格を競争力としているが、継続的な値上げ率や解約率を十分には開示していない。したがって価格決定力が強いとは断定できない。M&Aの顧客データも独自の蓄積だが、法令対応を伴う業界共通の記録基盤ではなく、AIから守られた資産とまでは言えない。
過去のROEの中央値は約25%で、資本効率の実績は良好である。2021年3月期から2026年3月期に営業利益は約3億円から約16億円に伸び、自己資本の増加に比べても利益の伸びは大きかった。しかし、買収したリアライブの評価損・減損を経験した今、過去の増分利益率を将来の再投資利回りと同一視するのは危険だ。人材の採用・教育で生まれた成長が、同じ費用構造のまま再現できる保証もない。
経営者の業界経験は厚い。展示会事業の主要幹部には大手展示会主催会社での経験があり、開催地の選定や会場運営に専門性を持つ。一方、創業者を中心とする株式保有の集中度は高く、配当を受け取れない少数株主にとって現金の使途を決める力は限られる。良い事業運営能力と良い資本配分能力は、区別して評価すべきである。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
介護業界は高齢化によってサービス需要が増えても、個々の事業者が必ず豊かになるわけではない。人手不足、介護報酬の制約、後継者難が小規模事業所の統合を促す。会社資料が示す約23万事業所と年間約4.4%という廃業等の目安からは、年1万件前後の事業継続上の問題を抱える母集団が浮かぶ。ただし廃業とM&A成立は異なるため、この数字をそのまま仲介可能な成約市場として扱わない。
国内M&A市場について、ストライクグループは2025年の年間成立件数を約1万2,000組と推計している。この分母に対するブティックスの219組は約1.8%に相当する。日本M&Aセンターの約1,061件、ストライクの275組という開示実績と比べると規模は小さいが、取り扱う案件の大きさは大きく異なる。ストライクの平均収益は大型案件の影響で高く、ブティックスの小規模案件と同一市場のシェアとして単純比較するのも適切ではない。介護特化型の競合別成約シェアは十分に公表されていない。
展示会市場はさらに境界が難しい。会社が引用する国内BtoB展示会主催者市場の約1,600億円は古い推計であり、2026年の確定市場規模ではない。その古い市場額に現在の展示会売上約30億円を当てると2%弱の規模感になるが、厳密な現在シェアではない。介護分野ではCareTEXの地域展開が進み、IT分野ではRX JapanのJapan IT Weekをはじめ、複数の主催者が出展企業の予算を争う。主催者別の同条件のシェア資料は見当たらない。
10年後も介護用品の実物確認や経営者同士の面談は残るだろう。しかし、AIエージェントが製品比較、候補企業の探索、提案資料の作成を代行するほど、展示会に出展するだけで得られる見込み客の価値は薄れる。M&Aでも、候補先探索や資料整理の自動化が進み、仲介報酬の一部は顧客に移る。2024年改訂の中小M&Aガイドライン第3版が手数料説明や利益相反管理を厳しくしたことも、費用の透明化を促す。数量が伸びても、成約1件当たりの利益まで同じ割合で伸びる業界ではなくなる。
資本政策と M&A
2026年5月に公表した第二次中期経営計画「Vision2029」は、2029年3月期の売上高101.75億円、営業利益40.01億円、当期純利益25.68億円を目標とする。営業利益率は約39%という高水準だ。途中の2027年3月期には売上高70.21億円、営業利益22.11億円、2028年3月期には売上高85.23億円、営業利益29.17億円を見込む。2028年3月期を基準期とする東証プライム市場への移行も目標だが、配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い額について中期計画に数字の約束はない。
前中期計画では売上目標を達成した一方、営業利益目標への到達は1年遅れで、2026年3月期でも当初目標の約96%にとどまった。2023年に取得したリアライブは、期待どおりの収益を生まず、2026年3月期に減損損失約3.77億円と吸収合併に伴う損失約2.37億円が発生した。現在の純利益が営業利益に比べて低いのは、この一過性損失によるところが大きい。今後の買収も成功を前提に評価しない。
配当は2026年3月期まで実施しておらず、2027年3月期の予想も無配である。一方、2026年には上限60万株・6億円の自社株買い枠を設け、9月末までに約3.19億円を取得した。これは前進だが、長期間の安定した総還元実績とはまだ言えない。主要株主への持ち分の集中度も高いため、今後積み上がる現金の株主への戻り方は帳簿価額の75%で評価する。プライム上場や増配が実現すれば、この判断は見直せる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
CareTEXとDXPOは、単に人を集める広告媒体ではない。介護用品の実物に触れ、業務ソフトを導入する担当者が直接説明を聞き、その場で商談を始められる。意思決定に必要な信頼関係を短期間で築けることは、ネット上の製品検索では容易に置き換えられない。介護分野に加えてIT・DX、採用という複数のテーマに展開できる主催能力は、本物の事業資産である。
小間数も着実に増えている。介護分野とIT分野を合わせた出展小間は2024年3月期の3,768小間から2026年3月期の6,773小間へ増えた。会社が得意とするシェアブース方式は、装飾や設備を再利用して会場費用を抑えられるため、比較的安い出展料でも十分な利益を得られる。地方都市への横展開が進み、展示会の開催面積と知名度が増えれば、出展企業が集まりやすくなる好循環も期待できる。
M&A仲介には低価格という明確な差別化がある。大手が扱いにくい小規模な事業承継を集約しており、介護施設の経営者との接点は長年かけて築かれたものだ。人手による資料作成がAIで効率化すれば、コンサルタントが顧客の信頼形成や最終交渉に集中できる可能性もある。ただし、この効率改善を売上成長として数えるには実績の確認が必要である。
財務には余裕がある。過去の買収で損失が出ても、純現金を維持しながら展示会への投資を続けている。今後、買収に頼らず展示会を増やし、余剰現金を自社株買いや配当に使う規律が定着すれば、10年先には事業の規模だけでなく一株当たりの取り分も改善する。
慎重な見方
展示会は一度成功すると安定して見えるが、出展企業にとっては販促予算の一項目にすぎない。AIエージェントが商品比較、候補先の選定、初回商談を代行するほど、企業は高い費用をかけて会場に出向く必要を問い直す。会場の集客力が弱まれば、新規出展の獲得だけでなく継続出展の価格交渉も難しくなる。低価格を特徴とするDXPOは、とりわけ値上げによって費用上昇を吸収しにくい。
M&A仲介の手数料は、現在の利益をそのまま10年後に延ばせない最大の理由である。候補先探索、資料収集、初期評価、契約書の準備の多くが自動化されれば、顧客が仲介会社に求めるサービスは変わる。買い手候補のデータベースは有用でも、他社が安価な自動探索を提供できるようになれば、その独自性だけで今の報酬水準を守れるとは限らない。透明性を求める規制も、手数料の比較を容易にする。
経営陣の資本配分には既に警告が出ている。リアライブの取得は人材領域への成長投資として説明されたが、結果として収益悪化と損失計上に至った。今後のGrowth就活DXPOへの転換が成功する保証もない。会社は高い中期目標を示しているものの、仲介人材を増やせば成約が比例して増えると考えるのは危険だ。
さらに、現金はすべて株主が自由に引き出せるものではない。展示会の前受金、未払税金、翌年以降の開催費用を確保する必要がある。創業者を中心とする株式保有の集中に加え、新株予約権による希薄化もある。少数株主の安全域を考えるなら、業績が伸びた時の利益だけでなく、失敗した投資の費用と還元されない現金を数える必要がある。
どちらに重みを置いたか
展示会の物理的な価値とニッチな顧客基盤では、強い見方に分がある。ただし、M&A仲介の成長を過去の延長線上で扱うことはできず、リアライブの買収失敗も軽視できない。中立の成約件数と人材紹介件数には既にAI代替による縮小を反映しており、確率で同じ損失を再度加算していない。下側の確率を44%、上側を26%としたのは、会社固有の計画未達、買収損失、新採用イベントの立ち上げリスクがあるためだ。中立では10年後に会社の規模は今より大きいが、現在の時価総額には長期保有に必要な安全域が十分にはない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 2,250 円217 億円(+ 還元の換算額還元の合計 264 円25 億円)。 今の値に割り戻すと 1,361 円131 億円、今との差 −10.2%、 期待の年率 +5.5%(資本コスト 6.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 6,591 円636 億円 | 884 円85 億円 | +393.4% | +19.1% | 747 円72 億円 |
| やや楽観 | 16% | 4,411 円425 億円 | 540 円52 億円 | +226.8% | +13.6% | 792 円76 億円 |
| 中立 | 30% | 2,418 円233 億円 | 245 円24 億円 | +75.8% | +6.1% | 799 円77 億円 |
| やや悲観 | 25% | 430 円42 億円 | 62 円6 億円 | −67.5% | −11.1% | 123 円12 億円 |
| 悲観 | 19% | 273 円26 億円 | 0 円0 億円 | −82.0% | −15.8% | 52 円5 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,250 円217 億円 | 264 円25 億円 | +65.9% | +5.5% | 2,514 円242 億円 |
今の株価時価総額 1,515 円146 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% 展示会の全国展開が成功し、M&Aの専門性も残る 利益 36 億円 · PER 17.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 6,591 円636 億円
IT分野のDXPOは各都市での開催が定着し、出展小間数が1万5,500小間に達する。開催テーマの追加と会場設備の再利用によって、営業利益率も高水準を保つ。介護分野は既存の地域開催を深め、CareTEXの小間数が3,500小間まで伸びる。展示会そのものが売上の主役となり、M&A仲介に過度に依存しなくなる。
Growth就活DXPOも成長企業向けの採用商談会として成功し、年間1,500小間の規模を確立する。リアライブ買収で得た学生の集客ノウハウが、この新事業ではようやく生かされる。過去の買収損失を踏まえ、経営陣は大型買収を控え、既存展示会の拡張と還元を優先する。
M&A仲介では、AIが資料整理を効率化しても、介護施設の買い手審査と最終交渉には人の経験が残る。成約組数は現在の219組を維持し、手数料は物価の範囲で上昇する。2036年の本業は利益率を維持しながら拡大し、蓄積現金の一部は自社株買いなどで株主に戻る。新株予約権の行使による希薄化はあるが、それを上回る事業利益が生まれる。
- 介護分野の展示会:数量 3,500(年間出展小間数(小間、実質数量))× 価格 0.01(出展小間当たり実現売上(億円/小間、名目、付随サービス込み))→ 売上 25 億円・営業利益 11 億円。介護分野の出展小間数は現在の1.48倍。実現単価は約72万円で、物価上昇にほぼ沿う。
- IT・DX分野の展示会:数量 15,500(年間出展小間数(小間、実質数量))× 価格 0.01(出展小間当たり実現売上(億円/小間、名目、付随サービス込み))→ 売上 81 億円・営業利益 35 億円。全国展開と新テーマの定着に成功。実現単価52万円、小間数は現在の3.51倍。
- M&A仲介:数量 219(年間M&A成約組数(組、実質数量))× 価格 0.14(成約1組当たりの平均売上(億円/組、名目、成功報酬等込み))→ 売上 30 億円・営業利益 14 億円。AI代替のため成約数量は現在と同じ219組にとどめる。平均報酬は1,380万円。
- 旧型の採用イベント:数量 90.0(有料参加企業の契約件数換算(件、推計))× 価格 0.01(1契約当たり平均売上(億円/件、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。旧型採用イベントは主力から外れ、少数の高採算案件だけが残る。
- 人材紹介・採用マッチング:数量 150(年間採用成立件数(件、実質数量、推計))× 価格 0.01(採用成立1件当たり手数料(億円/件、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。人材紹介の成立数量は現状維持。手数料は物価の範囲で上がる。
- Growth就活DXPO:数量 1,500(年間出展小間数(小間、実質数量))× 価格 0.01(出展小間当たり実現売上(億円/小間、名目))→ 売上 12 億円・営業利益 4 億円。採用分野の新展示会が定着し、物理小間の提供による売上が主力化する。
倍率:資本コストkは6.75%、長期名目成長率gは1%。余剰現金120億円の税後利息相当1.68億円を純利益から除くと、事業純利益34.12億円、事業自己資本37億円、事業ROE約92.2%。普通の堀で超過利益の2分の1が残るRONIC約49.5%を用い、正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=17.04倍。時価総額は34.12億円×17.04倍+余剰現金120億円×株主還元可能割合0.75=671.40億円。大きなROEは余剰現金を事業資本から分離した結果であり、10年後以降のgは1%に抑えている。
確率:IT展示会が全国で現在の3倍以上の小間数を獲得し、採用展示会の再構築も成功するうえ、M&A仲介の手数料がAI代替下でも物価並みに維持されるという複合的な成功を想定する。どれも実現可能性はあるが、同時達成の確率は限定的である。
やや楽観 16% 展示会の新分野が育ち、仲介の縮小は緩やか 利益 25 億円 · PER 16.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 4,411 円425 億円
DXPOは地方都市での継続開催により、出展小間数が1万1,500小間に増える。全国のITベンダーから受け取る出展料が収益基盤となり、CareTEXも3,100小間へ成長する。競合のRX Japanなどによる新規開催や値引きはあるものの、低価格のシェアブース方式が出展企業の獲得に役立つ。
Growth就活DXPOは年間1,200小間に育ち、人材紹介の単独事業よりも物理的な商談会を中心に収益を得る。旧リアライブの買収損失を教訓に、経営陣は収益の確認できない買収を控える。展示会の開催地追加には費用がかかるが、損益分岐点を超えた小間数の増加が利益を押し上げる。
M&A仲介では、AIによる自動探索の進展で成約数量が現在の約9割へ減る。一方、買い手の信用確認や複雑な交渉を必要とする案件は専門家に残り、平均報酬は物価に近いペースで上がる。株主還元は徐々に増え、余剰現金の滞留も部分的に解消される。高い成長と事業の陳腐化が共存する、かなり良好な2036年となる。
- 介護分野の展示会:数量 3,100(年間出展小間数(小間、実質数量))× 価格 0.01(出展小間当たり実現売上(億円/小間、名目、付随サービス込み))→ 売上 21 億円・営業利益 9 億円。小間数は3,100、実現単価は約68万円。
- IT・DX分野の展示会:数量 11,500(年間出展小間数(小間、実質数量))× 価格 0.01(出展小間当たり実現売上(億円/小間、名目、付随サービス込み))→ 売上 58 億円・営業利益 23 億円。出展小間数は現在の2.61倍。単価上昇は10年の物価上昇を下回る。
- M&A仲介:数量 195(年間M&A成約組数(組、実質数量))× 価格 0.13(成約1組当たりの平均売上(億円/組、名目、成功報酬等込み))→ 売上 26 億円・営業利益 11 億円。成約数は現在の0.89倍。平均報酬は1,310万円に上がる。
- 旧型の採用イベント:数量 70.0(有料参加企業の契約件数換算(件、推計))× 価格 0.01(1契約当たり平均売上(億円/件、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。従来型の採用イベントは新展示会へ大半を移管する。
- 人材紹介・採用マッチング:数量 135(年間採用成立件数(件、実質数量、推計))× 価格 0.01(採用成立1件当たり手数料(億円/件、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。AI代替を受け、採用成立件数は現在の0.9倍に減少する。
- Growth就活DXPO:数量 1,200(年間出展小間数(小間、実質数量))× 価格 0.01(出展小間当たり実現売上(億円/小間、名目))→ 売上 9 億円・営業利益 3 億円。年間1,200小間の採用展示会に成長する。
倍率:余剰現金80億円の利息相当1.12億円を除いた事業純利益は23.38億円。余剰現金を除く自己資本58億円に対する事業ROEは約40.3%、通常の堀の残存割合2分の1からRONIC約23.5%となる。k6.75%、g1%を用いた正当化PERは16.65倍。事業純利益23.38億円×16.65倍+余剰現金80億円×0.75=449.28億円。
確率:介護・IT展示会の地域展開と採用展示会の立ち上がりは既存の事業能力の延長にある。ただし、IT展示会が1万小間を超える規模へ伸び続け、同時にM&A成約数を大きく減らさないことには相応の競争上の成功が必要である。
中立 30% 展示会は成長するが、M&A仲介の労働集約的な稼ぎが細る 利益 13 億円 · PER 16.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,418 円233 億円
介護分野ではCareTEXの地方開催が定着し、年間2,800小間の規模を保つ。高齢化と介護人材不足は新しい製品やサービスの需要を生むが、介護施設側の収益力には限界があり、出展企業が払える金額も無制限ではない。IT分野のDXPOは8,000小間まで増えるものの、AIを使った商談先探索との競争により、平均単価は物価上昇を十分には転嫁できない。
M&A仲介では、人の作業で価値を提供してきた工程の自動化が進む。買い手候補の検索、財務資料の整理、初期交渉の準備は安価なAIツールに移り、仲介会社には信頼形成や最終確認が残る。成約数量は219組から160組へ減り、平均報酬の上昇も物価に届かない。買い手候補データベースは残るが、顧客の支払い意欲を維持するには足りない。
Growth就活DXPOは年間800小間に育つが、会社が2029年に掲げる1,000小間という目標は大きく上回らない。旧型イベントはほぼ退出し、人材紹介の件数も減る。展示会の成長で全社売上は約84億円に増えるが、本社費用と仲介の利益率低下によって営業利益は約19億円にとどまる。利益の一部は還元されず、現金として積み上がる。
- 介護分野の展示会:数量 2,800(年間出展小間数(小間、実質数量))× 価格 0.01(出展小間当たり実現売上(億円/小間、名目、付随サービス込み))→ 売上 18 億円・営業利益 7 億円。小間数は2029年の会社目標にほぼ到達するが、その後は成熟する。単価上昇は物価を下回る。
- IT・DX分野の展示会:数量 8,000(年間出展小間数(小間、実質数量))× 価格 0.00(出展小間当たり実現売上(億円/小間、名目、付随サービス込み))→ 売上 39 億円・営業利益 13 億円。小間数は現在の1.81倍。競合とオンライン商談への予算移動で実現単価の伸びは鈍い。
- M&A仲介:数量 160(年間M&A成約組数(組、実質数量))× 価格 0.12(成約1組当たりの平均売上(億円/組、名目、成功報酬等込み))→ 売上 20 億円・営業利益 7 億円。AIエージェント代替で成約数量は現在の0.73倍。平均報酬は約1,240万円で物価上昇率を下回る。
- 旧型の採用イベント:数量 40.0(有料参加企業の契約件数換算(件、推計))× 価格 0.01(1契約当たり平均売上(億円/件、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。従来型イベントの大部分をGrowth就活DXPOへ転換する。
- 人材紹介・採用マッチング:数量 100(年間採用成立件数(件、実質数量、推計))× 価格 0.01(採用成立1件当たり手数料(億円/件、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替で成立数量は現在の0.67倍。平均手数料は105万円。
- Growth就活DXPO:数量 800(年間出展小間数(小間、実質数量))× 価格 0.01(出展小間当たり実現売上(億円/小間、名目))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。2029年に会社が掲げる1,000小間を下回るものの、旧型採用支援より採算は改善する。
倍率:2036年の余剰現金60億円から得られる税後利息相当0.84億円を除く事業純利益は12.41億円。事業自己資本は114億円−60億円=54億円で、事業ROEは約23.0%。通常の堀の残存割合2分の1を用いたRONICは約14.9%。k6.75%、g1%から正当化PERは16.22倍。時価総額は12.41億円×16.22倍+60億円×0.75=246.29億円。会社の2029年利益目標を2036年の当然の利益水準とはしない。
確率:介護・IT展示会の実需を評価し、2029年に会社が掲げる小間数目標に近い規模を長期的に維持すると考える。一方、M&A仲介はAIエージェント代替の人月・工数型として成約数量を0.73倍、人材紹介を約0.67倍に縮小させる。会社の営業利益40億円計画を当然の達成値とは扱わない。
やや悲観 25% AIが仲介報酬を圧迫し、展示会の採算も落ちる 利益 3 億円 · PER 8.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 430 円42 億円
介護業界では事業所の統合が進み、出展対象企業の数も伸び悩む。CareTEXは主要地域で続くが、小間数は2,250に減少する。DXPOは一定の知名度を維持するものの、競合主催者の値引きやAIを利用した営業活動に出展予算を奪われ、5,000小間にとどまる。会場費と集客費の固定部分が残り、売上が落ちるほど利益率も悪化する。
M&A仲介は自動化された候補先探索サービスに中小案件を奪われ、成約数が110組まで減る。顧客は仲介者の存在自体には価値を認めるが、初期調査の作業量が減った分だけ手数料の引き下げを求める。規制上の買い手確認と利益相反管理にかかる費用も収益を圧迫する。成約1組当たり売上は現在を大きく上回らず、仲介部門の営業利益率は低下する。
Growth就活DXPOは会場を埋めきれず、年間350小間にとどまる。旧型イベントをやめても営業人材や会場確保の費用をすぐには削れない。買収で取得したノウハウの一部は使えるが、投じた資金に見合う利益を生まない。自社株買いは細々と続き、現金の大半は収益悪化への備えにとどまる。
- 介護分野の展示会:数量 2,250(年間出展小間数(小間、実質数量))× 価格 0.01(出展小間当たり実現売上(億円/小間、名目、付随サービス込み))→ 売上 14 億円・営業利益 4 億円。出展小間数が現在を下回る。小間価格の実質上昇はなく、会場費を吸収しにくくなる。
- IT・DX分野の展示会:数量 5,000(年間出展小間数(小間、実質数量))× 価格 0.00(出展小間当たり実現売上(億円/小間、名目、付随サービス込み))→ 売上 23 億円・営業利益 6 億円。開催数を維持しても出展企業の予算が細り、利益率が低下する。
- M&A仲介:数量 110(年間M&A成約組数(組、実質数量))× 価格 0.11(成約1組当たりの平均売上(億円/組、名目、成功報酬等込み))→ 売上 12 億円・営業利益 3 億円。成約数量は現在の半分。AIを使う競合との報酬競争と規制対応費用が重なる。
- 旧型の採用イベント:数量 20.0(有料参加企業の契約件数換算(件、推計))× 価格 0.01(1契約当たり平均売上(億円/件、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。旧型イベントは実質的に撤退状態になる。
- 人材紹介・採用マッチング:数量 65.0(年間採用成立件数(件、実質数量、推計))× 価格 0.01(採用成立1件当たり手数料(億円/件、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。人材紹介の件数は現在の0.43倍まで縮小する。
- Growth就活DXPO:数量 350(年間出展小間数(小間、実質数量))× 価格 0.01(出展小間当たり実現売上(億円/小間、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。採用展示会の開催規模が小さく、会場費の固定負担が大きい。
倍率:余剰現金20億円の利息相当0.28億円を除いた事業純利益3.12億円に対し、事業自己資本は55億円、事業ROEは約5.7%で資本コスト6.75%を下回る。将来の新規投資は超過収益を生まず、1÷kの14.81倍が上限となる。構造的な手数料低下と低い再投資収益率のため、やや悲観では稼ぐ力の価値を8.5倍にとどめる。時価総額は3.12億円×8.5倍+20億円×0.75=41.52億円。
確率:下に寄せる理由:買収したリアライブの収益悪化と減損はすでに現実になっており、新たな採用展示会への転換にも立ち上げリスクがある。加えて、展示会で安定的な値上げを実現した証拠が乏しく、M&A仲介では自動化による価格競争が進むため、計画未達が長期化する可能性を相応に重く見る。
悲観 19% 仲介の競争優位を失い、新事業の失敗で自己資本も傷む 利益 −3 億円 · PBR 1.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 273 円26 億円
AIエージェントが中小M&Aの候補先探索と資料分析を安価に提供し、買い手と売り手が仲介会社を経由せずに直接交渉する比率が上がる。ブティックスには難しい案件だけが残り、成約組数は80組まで縮小する。低料金で量をさばく従来の事業モデルは成り立たず、売上だけでなく仲介人材の稼働率も落ちる。契約上の責任や買い手の審査費用は残るため、コストを売上に比例して減らせない。
展示会ではIT関連の出展企業がオンライン商談と自動営業に予算を移し、DXPOの小間数は3,000に落ちる。CareTEXも主要都市では開催されるが、介護施設の経営悪化と出展企業の統合によって1,500小間まで縮む。Growth就活DXPOは十分な出展者を集められず、従来型の採用支援もほぼ消える。会場確保、集客、本社管理の費用が残り、全社では営業赤字となる。
経営陣が事業立て直しのために追加買収や新規開催へ資金を投じても、その一部が減損に終わる。初期の利益蓄積は損失と事業再編費用に相殺され、2036年の自己資本は現在と大きく変わらない水準にとどまる。配当や自社株買いは止まり、現金のうち履行義務や税金を差し引いた部分だけが価値の下支えとなる。倒産を前提にしないが、かつての優良な成長企業という評価は失われる。
- 介護分野の展示会:数量 1,500(年間出展小間数(小間、実質数量))× 価格 0.01(出展小間当たり実現売上(億円/小間、名目、付随サービス込み))→ 売上 9 億円・営業利益 2 億円。介護展示会の出展小間数は現在の0.64倍。会場費の固定負担で利益率が大きく下がる。
- IT・DX分野の展示会:数量 3,000(年間出展小間数(小間、実質数量))× 価格 0.00(出展小間当たり実現売上(億円/小間、名目、付随サービス込み))→ 売上 14 億円・営業利益 2 億円。AI営業と競合展示会への流出により、小間数は現在の0.68倍。
- M&A仲介:数量 80.0(年間M&A成約組数(組、実質数量))× 価格 0.08(成約1組当たりの平均売上(億円/組、名目、成功報酬等込み))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。AIエージェントによる仲介省略が進み、成約数量は現在の0.37倍、平均報酬も低下する。
- 旧型の採用イベント:数量 0.0(有料参加企業の契約件数換算(件、推計))× 価格 0.01(1契約当たり平均売上(億円/件、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。従来型採用イベントから完全撤退する。
- 人材紹介・採用マッチング:数量 20.0(年間採用成立件数(件、実質数量、推計))× 価格 0.01(採用成立1件当たり手数料(億円/件、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。紹介件数は現在の0.13倍。わずかな残存取引にも管理費がかかる。
- Growth就活DXPO:数量 120(年間出展小間数(小間、実質数量))× 価格 0.01(出展小間当たり実現売上(億円/小間、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。新しい採用展示会も集客に失敗し、収益事業にならない。
倍率:2036年は構造的な営業赤字であり、負の純利益にPERを掛けない。初期の利益蓄積は失敗した買収・新規展示会の再編費用と減損で相殺され、シナリオ上の自己資本は26.3億円に低下する。帳簿の自己資本だけを無条件の清算価値とは見ず、現時点の純現金39.9億円から前受金10.68億円、未払税金2.12億円、運転・整理費用約2.1億円を控除した約25億円を実質的な床とする。時価総額26.3億円はこの床をわずかに上回り、PBR1.0倍×悲観シナリオの自己資本26.3億円と一致する。過去の市場PBRを根拠には使わない。
確率:下に寄せる理由:リアライブ買収で損失が発生した事実に加え、仲介事業の人手依存と、採用事業の新方式への全面転換という複数の不確実性がある。M&A仲介の収益性が崩れ、展示会も集客力を失う事態を、極端に小さな確率とはしない。ただし、純現金が厚く直ちに資金繰り破綻する会社ではない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
介護分野の展示会
CareTEX、ケアウィークなど介護用品・設備・サービスを扱う自社主催の商談型展示会。物理的な小間の提供と付随する商談支援で稼ぐ。
| 数量年間出展小間数(小間、実質数量) | 価格出展小間当たり実現売上(億円/小間、名目、付随サービス込み) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,359 | 0.01 | 13 | 5 |
| 10 年後 中立 | 2,800 | 0.01 | 18 | 7 |
取り方:2026年5月13日の事業説明資料で2026年3月期の介護分野出展小間数2,359小間、売上高1,263百万円を確認。売上÷小間数から小間当たり実現売上53.54万円を算出した。展示会セグメント利益11.47億円は介護とITの内訳が開示されていないため、両分野の売上比で介護4.86億円、IT6.61億円に仮配賦した。小間の物理的な需要にはAIエージェント代替の人月型を直接適用しないが、オンライン商談への予算移動は数量と単価に含める。
IT・DX分野の展示会
バックオフィスDXPO、営業・マーケDXPO、IT・情シスDXPOなどを複数地域で開催。会場設備を再利用するシェアブース方式が低価格の源泉。
| 数量年間出展小間数(小間、実質数量) | 価格出展小間当たり実現売上(億円/小間、名目、付随サービス込み) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4,414 | 0.00 | 17 | 7 |
| 10 年後 中立 | 8,000 | 0.00 | 39 | 13 |
取り方:会社の事業説明資料にある2026年3月期のIT分野4,414小間、売上高1,718百万円から平均38.92万円/小間を計算した。営業利益は展示会全体の利益を介護分野と売上按分した推計値である。展示会の出展小間は物理的な提供能力なのでAIの人月・席課金型ではない。AIエージェントが商談候補探索を代替する影響は、出展小間数と実質単価の上昇が鈍る形で反映する。
M&A仲介
介護・医療・福祉・建設・ITなどの小規模事業承継を仲介し、成立時の成功報酬を得る。展示会の経営者接点と買い手候補データベースを利用する。
| 数量年間M&A成約組数(組、実質数量) | 価格成約1組当たりの平均売上(億円/組、名目、成功報酬等込み) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 219 | 0.10 | 23 | 10 |
| 10 年後 中立 | 160 | 0.12 | 20 | 7 |
取り方:2026年3月期の事業説明資料でM&A成約219組を、決算短信で仲介売上2,258,908千円とセグメント利益999,775千円を確認。平均売上は約1,031万円/組で、公開している売り手向け最低手数料そのものではない。AIエージェント代替では、成功報酬であっても候補先探索・資料作成・初期調整をコンサルタントが担う人月・工数型に分類する。強い規制対応基盤や低解約率などの証拠が2つ以上ないため、記録の正本型とはしない。中立の2036年成約数量は現在の0.73倍、単価は1.20倍とし、長期成長率は名目0%。
旧型の採用イベント
旧リアライブが実施してきた小規模な就活・採用イベント。Growth就活DXPOへの転換に伴い、従来形式の売上は縮小する。
| 数量有料参加企業の契約件数換算(件、推計) | 価格1契約当たり平均売上(億円/件、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 160 | 0.01 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 40.0 | 0.01 | 0 | 0 |
取り方:決算短信の人材採用支援事業の収益内訳にある採用イベント売上105,219千円を使用。参加企業契約数は開示されないため、会社が新しい採用展示会で公表する低価格帯の出展料を参考に、160件・平均65.76万円の旧形式契約に相当すると推計した。実数の開示ではない。旧型は契約獲得・商談設定に人手が残るため一部がAI代替の対象だが、主な数量減少理由は会社自身が旧形式を新展示会へ転換する方針にある。営業利益0.22億円は人材採用支援セグメントの利益を仮配賦した。
人材紹介・採用マッチング
求職者の紹介と入社・内定承諾に伴う成功報酬。旧事業から新たな採用展示会の付随サービスへ移行する。
| 数量年間採用成立件数(件、実質数量、推計) | 価格採用成立1件当たり手数料(億円/件、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 150 | 0.01 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 100 | 0.01 | 1 | 0 |
取り方:決算短信の人材紹介収入123,391千円から算定。採用成立件数は開示されないため、若年層紹介の成立1件当たり平均手数料を約82万円と仮定し、年間約150件と逆算した。外部データで確認された実績件数ではない。人材紹介は人月・工数型としてAIエージェント代替の対象に分類し、中立数量100件は現在の約0.67倍、手数料1.28倍とした。採用イベントとのセグメント利益配分は仮定であり、合計は開示された人材採用支援セグメント利益0.519億円に一致させた。
Growth就活DXPO
2027年3月期から本格開催する大規模な採用展示会。旧型の採用イベント・人材紹介を置き換える新しい主力候補。
| 数量年間出展小間数(小間、実質数量) | 価格出展小間当たり実現売上(億円/小間、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.0 | 0.01 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 800 | 0.01 | 6 | 1 |
取り方:会社の2026年5月13日付事業計画では、2026年3月期のGrowth就活DXPOの開催実績・出展小間数・売上はゼロである。将来単価の参考値だけを、2027年3月期予想の400小間・売上2.86億円から0.00715億円/小間と算出した。これは2026年の実現価格ではない。2029年3月期の会社目標は1,000小間・6.18億円で、平均約61.8万円/小間に相当する。物理展示会は人月型ではないが、オンライン採用・AI選考との競争で単価が伸び悩むとみる。
リスクと懸念
AIエージェント代替によるM&A仲介報酬の低下
M&A仲介は成功報酬であっても、候補先探索、企業調査、資料作成、初期交渉など、コンサルタントの工数に依存する部分が大きい。AIがそれらの作業を安価に実行すれば、依頼企業は報酬の引き下げを求める。中立では成約組数を現在の0.73倍とし、名目の長期成長をゼロとした。展示会の物理的な小間には人月型の縮小率をそのまま掛けず、出展需要への間接的な影響を考慮している。
展示会の出展効果と価格決定力
CareTEXとDXPOは対面商談という価値を持つが、出展企業は毎年その効果を比較できる。RX Japanなどの競合展示会やオンライン商談サービスへの予算移動が進めば、会場費を上回る料金改定が難しくなる。開催地を広げるだけでは利益は増えず、既存会場を含めた小間当たり売上と継続出展率が落ちる場合は、数量と利益率の両方を下方修正する必要がある。
中小M&Aの競争・規制・利益相反
中小M&Aガイドライン第3版は手数料の説明と利益相反管理、買い手の信用確認を重視している。小規模案件を低料金で大量に扱うモデルでは、顧客保護に必要な管理費の増加が利益を圧迫しやすい。仲介会社同士の競争だけでなく、買い手と売り手の直接取引や金融機関によるマッチングも競合となる。成約件数が増えても手数料総額が比例して増えるとは限らない。
買収資金の再投資失敗
2023年取得のリアライブでは、2026年3月期に減損損失と吸収合併に伴う損失が生じた。事業の隣接性を理由にした買収が、株主価値の向上を保証しない具体例である。今後も人材、介護、ITの周辺領域への買収を行う場合は、買収対価、取得後の営業利益、追加投資、のれん等の減損を一体で確認すべきだ。買収した事業の売上だけで成長を判断すると再投資利回りを過大評価する。
創業者支配と新株予約権の希薄化
2026年3月末の大株主上位10名の保有比率は約81%で、創業者だけでも半数近くを保有する。少数株主には余剰現金の処分や配当方針を決める力が乏しい。2026年3月期の希薄化後利益計算に含まれた潜在株式と、その後の新株予約権発行を考慮すると、好調な筋書きでは既存株主の持ち分が約5%薄まる可能性がある。自社株買いで相殺されるかは今後の実績で確認する。
前受金と会場費の固定的な約束
2026年3月末には現金が厚い一方、前受金が約10.68億円存在した。これは将来の展示会を開催する義務を伴うため、余剰現金として満額を株主価値に足せない。会場の賃料、設営、警備、集客に必要な費用は、出展企業が減っても直ちにはゼロにならない。2027年4月以後に始まる年度からの新リース会計基準で貸借対照表の表示が変わっても、家賃や開催費の経済的な負担が消えるわけではない。
今後の分かれ目
- CareTEX・DXPOの年間出展小間数が1万小間を超え、同時に小間当たり実現売上も継続的に増加したら
- 展示会の競争優位と価格決定力を上方修正する。IT展示会の数量と利益率を楽観側へ寄せ、長期成長率についても物価上昇に近い伸びを維持できるか検証する。
- M&A成約組数が増えても成約1組当たり平均報酬が連続して下落したら
- AIエージェント代替または仲介競争による価格低下が顕在化したと判断する。成約件数だけでなく仲介売上・営業利益率・コンサルタント数当たりの成約利益を確認し、下側の筋書きを厚くする。
- Growth就活DXPOが会社の2029年目標である1,000小間規模に到達し、単独で十分な営業利益を生むようになったら
- リアライブ取得後の事業再構築が成果を生んだと評価する。旧型採用支援の損失が再発していないことを確かめたうえで、新しい物理展示会の成長を中立に加える。
- 2029年3月期の営業利益40.01億円が達成され、その後も利益率が維持されたら
- 本分析の中立2036年の営業利益約19億円は慎重すぎる可能性が高い。達成時点の事業別小間数、成約組数、価格、会場費、本社費を確認し、数量と利益率の筋書きを作り直す。
- 新たな買収を実行し、取得から3年以内に事業利益や現金収入の計画を下回ったら
- 資本配分の失敗が繰り返されていると判断し、将来の余剰現金と自己資本の見通しを下方修正する。単なる売上拡大ではなく、買収対価に対する増分利益と減損の有無を重視する。
- 配当性向または総還元性向の明確な数値方針が公表され、複数年にわたり配当や自社株買いが実行されたら
- 積み上がった余剰現金が既存株主へ戻る確実性が高まる。還元実績の条件を満たした段階で、現金の戻り方を0.75から1.0へ見直し、希薄化を相殺する自社株買いの効果も確認する。
見ておくもの
- CareTEX・DXPO・Growth就活DXPOの年間出展小間数と小間当たり実現売上
- 介護・IT・採用各展示会の営業利益率と、地域別の新規開催・撤退
- M&A仲介の四半期成約組数、受託案件数、成約率、平均報酬
- M&Aコンサルタント人数と、1人当たり成約組数・営業利益
- AIを利用した仲介工程の省力化実績と、顧客の支払手数料の変化
- Vision2029の2027年・2028年・2029年目標に対する事業別達成率
- 旧リアライブ事業の再編後の利益、減損、追加買収の有無
- 現金、前受金、借入金、定期預金の増減と、自社株買い・配当の実行額
- 新株予約権の行使株数、自己株式控除後の株数、創業者の保有比率
- 中小M&Aガイドラインの改訂と介護事業者の廃業・事業承継動向
倍率と資本コストの決め方
現在の株価1586円、時価総額約153億円から将来の売上や倍率を逆算していない。2026年の出展小間数とM&A成約組数を起点に、実質数量と名目価格を分けて売上を作り、セグメント営業利益を積み上げた。AIエージェント代替はM&A仲介と人材紹介の数量・単価、ならびに長期成長率へ反映し、資本コストの寿命調整には重ねていない。倍率はk6.75%、長期成長率1%、事業ROE、通常の堀に対する超過利益の残存割合から計算し、市場で過去に付いたPER・PBRは根拠にしていない。10年間に積み上がる余剰現金は筋書きごとに明示し、自動の追加計上と二重にならないようにした。新リース会計基準の適用後も、比較上は現在と同じく会場賃料を営業費用に含める経済実態で考える。確率加重した現在価値は約131億円となり、現在の時価総額を約14%下回るため、結論は「やや割高」で一致する。
資本コスト 6.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。国債利回り3%と株式リスクプレミアム4.5%の合計7.5%に、事業の質による調整−0.75%を加えた6.75%。個別の買収失敗やガバナンス上の懸念は資本コストへ上乗せせず、筋書きと確率で扱う。