結論
ギミックは、患者が医師を選ぶための情報を集め、医療機関から継続掲載料を得る会社である。筆者の結論は「やや割高」だ。独自取材を重ねた医療情報サイトには小さくない価値があるが、10年後に同じだけの患者が検索サイトを訪れる保証はない。さらに、上場で得た現金が厚い一方、株主への還元はまだ始まっていない。
「ドクターズ・ファイル」は収入の7割を占め、期末契約先は7,594件に達した。全国約17万の診療所・歯科診療所に対する契約浸透率は約4.4%であり、従来の看板広告から移る余地はある。取材済み医療機関が累計3万件を超えることも、机上の情報を集めた競合にはない強みだ。ただし、医師を探す入口が検索エンジンのAI回答や予約サービスに移れば、記事の価値と有料契約の更新率は別問題になる。
2026年3月期は売上と利益が伸びたが、2027年3月期には販促・採用への追加投資で減益を見込む。経営は2030年3月期に営業利益9億円を目指すが、その達成を中立の前提にはしない。取材制作はAIで効率化できても、患者の来訪が減れば顧客の支払意思も弱まる。10年間に利益を留保しても事業価値が帳簿どおり増すとは限らないため、現金の株主への戻り方を慎重に評価した。
五つの筋書きを資本コストで現在に戻すと、株主の取り分を考慮した本質価値は約25.6億円となり、基準時価総額の約30.5億円を約16%下回る。競争を生き残れば大きく伸びる余地もあるが、現段階では、伸びしろに対して払う値段とその実現の確かさを分けて考えたい。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の見方では、まず「10年後も医師の顔と考え方を知りたい人がいるか」と問う。答えは肯定的だろう。医療行為の質を一覧表で完全に比べることは難しく、医師への丁寧な取材には今後も意味がある。ただし、その情報を患者が見つける道は大きく変わり得る。情報の価値が残ることと、その掲載会社が高い収益を得続けることは同義ではない。
主力の月額課金がもたらす継続収入、取材先との長い付き合い、医療広告の適法性を保つ編集体制は評価できる。取材制作のAI化で同じ顧客数でも人件費を節約できることも実証された。だが、年々値上げしても離れないという証拠は弱く、掲載を止めた医院の情報も患者が別の場所で探せる。大手検索・予約事業者に情報の入口を握られた時、医院が月額費用を払う理由が残るかは判断が難しい。
オーナー利益は会計利益から必要な再投資を引いた現金である。直近期の現金創出は良いが、広告宣伝、営業採用、医師の再取材をやめれば媒体は弱る。さらに上場資金の多くは現金のままで、誰のためにどう使うかは経営に委ねられている。高い過去ROEではなく、新しい資金を投じた後の顧客獲得費と更新率を見たい。
仮に2030年の利益目標を達成しても、2036年以降まで同じ速度で伸びるとは見ない。営業の拡張が失敗した場合も株主が耐えられる値段が安全域の基準になる。独自データと純現金は下支えだが、それだけでは現在の時価総額に十分な余裕があるとは言えない。
何で稼ぐ会社か
収益の中心は、2006年に始まった医師取材メディア「ドクターズ・ファイル」である。営業担当と取材者が医師の診療方針や人柄、医院の特色を記事にし、患者へ公開する。医療機関は月額利用料を払う。契約料金は定価で月額3.5万円からだが、実現した平均収入は月額約3.04万円である。2026年3月期のこの事業の収入は約27.2億円で、期末の契約数は7,594件だった。記事の閲覧は患者側に無料である。
次の柱が、年1回発行する地域別の冊子「頼れるドクター」だ。書店での販売と医療機関などへの配布を通じて地域の医師を紹介し、医院から掲載料を受け取る。36地域版で約8.1億円を売り上げ、前年掲載先からの収入継続率は75.7%だった。ウェブ記事と冊子は同じ医院に併売できるが、出版物には制作・印刷・配布の固定費が残る。紙の部数や掲載件数は開示されていないため、評価には発行版数を事業量の単位とした。
残りの約3.2億円には、病院向け「ホスピタルズ・ファイル」、医療職紹介の「ドクターズ・ファイル エージェント」、予約システム「アポ レジタス」、人事評価の「クリニコ」、院内情報共有アプリ「メディパシー」などが入る。メディパシーの導入先は2,275施設あるが、一定範囲まで無料なので、それを有料契約数と読み替えてはいけない。会社の会計上は単一セグメントであり、3つの収益区分は分析のための切り分けである。
取材・編集・営業に人を使うため、純粋なソフトウェア会社ではない。2026年3月末の従業員は323人で、人件費が費用の大きな部分を占める。一方、2025年に専用AIを使い始め、記事制作に必要な日数を平均7日から2日に短縮したと開示している。制作効率の改善には実績があるが、AIそのものを外販して大きな売上を得たという証拠はまだない。
優良さと弱いところ
堀、すなわち模倣しにくい強みは、医師から直接聞いた話を整理する取材網と地域営業の蓄積にある。累計取材先は約3.1万院に上り、患者目線の記事を医療広告の規則に沿って監修する仕組みを備える。医師と継続的につながっていることは新しい冊子や院内サービスを売る際に役立つ。取材記事という独自データは本物だが、医療機関の診療記録や請求の正本を預かる事業ではない。
顧客が簡単に離れないのも事実だ。主力サイトの解約指標は月次0.81%であり、長期間にわたり契約更新が続く。ただし、これは純売上ベースの月次指標で、年5%未満の解約率を意味しない。平均単価は前期から約2%しか上がっておらず、3%の物価上昇が続く環境で十分な値上げ力を立証したとは言い難い。無料の医院検索やAI検索が近くにある以上、強い独占的な堀とは評価しない。
利益の質も二面性がある。2026年3月期は粗利率が8割を超え、営業キャッシュフローは純利益を上回った。記事を繰り返し使えるため、追加契約の粗利は高い。他方、ウェブ集客を守る広告投資と営業人員の確保は絶えず必要になる。上場で自己資本が急増したため、過去の高いROEを今後の増分投資利回りと混同できない。新たな資金が顧客増加につながるかが試金石である。
メディパシーなどの院内ソフトは導入実績こそあるものの、無料枠が広く、規制対応や長年の乗り換え負担が利益として証明された段階ではない。ネットワーク効果を過大評価せず、堀は普通とする。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
市場の母数は大きいが、すべてが有料で獲得できる顧客ではない。会社は全国約17万のクリニック・歯科医院を対象とし、契約先7,594件から浸透率4.4%を示している。さらに、約53.7%の医院が屋外広告を利用し、月額平均10万円を払うという会社推計を基に、屋外広告予算を年約1,100億円と見積もる。これは既存予算の移行余地を示す数字で、ギミックが独占できる市場規模ではない。
競争相手は、病院なび、Caloo、QLife、EPARKクリニック・病院などの医療情報・予約サービスだけではない。無料のGoogleビジネスプロフィール、医院の自社サイト、看板広告も同じ予算と患者の関心を奪い合う。競合各社の有料掲載契約数と実際の広告売上の比較可能な開示がないため、金額ベースの正確なシェアは求められない。主力サイトの4.4%は診療所数ベースの浸透率であり、医療広告市場の売上シェアではない。
需要は高齢化で医療情報の重要性が増す一方、国内の医院数が10年間増え続けるとは限らない。診療報酬の抑制や人手不足は、医院が広告費を減らす動機にもなる。印刷冊子は高齢者や地域密着型の医院に残るが、配布費用の上昇と電子化で成長は難しい。医療人材紹介は人手不足の恩恵がある反面、AIによる求人マッチングや医院の直接採用と競争する。予約・院内アプリは電子カルテや大手業務基盤との機能統合が進むだろう。
より大きな構造変化は、患者が検索結果の一覧をたどらず、AIエージェントに自分向きの診療先を探してもらう可能性である。医師の本人取材データがAI時代にも一次情報として選ばれれば広告価値は残るが、情報だけが要約されてサイトへの訪問が減れば掲載料金は下がる。自社媒体の利用者数に関する連続開示が乏しいことを踏まえ、中立では契約先と単価の伸びをかなり抑えた。
資本政策と M&A
経営の近い目標は明瞭だ。2027年3月期は売上41.2億円、営業利益3億円、純利益2.32億円を計画し、販促費1.4億円と採用・人材関連1.8億円の追加投資を予定する。2026年3月期の営業利益4.65億円より一度減らしてでも、顧客数を伸ばす判断である。正式な中期経営計画の公表予定はないが、2030年3月期に営業利益9億円を目指す目標を掲げている。売上・ROEの中期数値目標や、配当性向・DOE・総還元性向・自社株買い額の数字の約束はない。
2025年12月の上場による新株発行の資金流入は約13.9億円で、期末の純現金は約19.6億円に膨らんだ。従来は無配で、2027年3月期も無配予想である。過去の大規模な買収実績や、自社株買いで株数を減らした実績は確認できず、会社は自前の媒体・営業・人材に再投資してきた。営業CFの黒字と少額の設備投資は評価できるが、今回の大きな資金調達が株主の資本効率を改善するかは未証明だ。
2026年3月末の上位10株主の合計は約69.5%で、社長本人と資産管理会社だけでも約46.5%を持つ。株主還元の実績もないため、事業を続ける間に積もる余剰現金の返還価値は半分と慎重にみるが、悲観の資産床では現有純現金そのものを半額にしない。現在の新株予約権は潜在的に約27万株あり、強い筋書きでは行使による希薄化も考慮する。現時点で確認できるTOB・MBOや上場廃止の公表はないが、支配株主の判断が将来の資本配分を左右する。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
取材に基づく医師紹介は、一般的なSEO記事や口コミの寄せ集めと違う。約3.1万院の累計取材、全国の編集・営業接点、月次の低い解約指標は、後発の媒体がすぐには買えない資産である。全国の契約浸透率が約4.4%ということは、看板や電柱広告に投じられる予算の一部を移すだけでも、顧客を獲得する余地が大きい。患者と医師の双方に知られた地域で接点が増えれば、新規契約の営業効率が上がり、冊子や人材支援の併売も進む。
AIは脅威であると同時に、編集・校閲・取材準備のコストを下げる技術でもある。実際に会社は制作日数の短縮を示している。今後、医療広告の規制に合う確かな一次情報が希少になれば、AIが参照する元データとして独自の医師取材記事が残りやすい。患者に届く経路が変わっても契約医院に利用実績を示せれば、月額掲載料は守れる。
先行投資で2027年3月期の営業利益が減っても、会社は2030年の増益目標を掲げている。純現金の厚さは失敗を許す余力であり、借金に頼らず広告投資と技術開発を続けられる。潜在株式の増加はあるが、収益が伸びた後に配当が始まれば株主は報われる。新しい医療情報の入口を築ければ、10年先も全国展開の余地は十分にある。
慎重な見方
事業の売上の7割は、患者が「ドクターズ・ファイル」に価値を感じ、医院が更新費用を払い続けることを前提としている。しかし患者がGoogleの要約回答や予約アプリだけで医院を選べるようになれば、元の記事が良質でもサイトの集客力は落ちる。媒体の利用者が減っても契約はしばらく残るため、解約率が上がり始めた時には事業価値の毀損が進んでいる恐れがある。
さらに、現在の解約率は月次0.81%で、年率に直せば無視できない入れ替わりを含む。平均収入の伸びは物価より小さく、大手検索サービスや無料掲載との競争で値上げしにくい。新規営業に人件費を使うにも、生成AIが医師紹介の原稿を安く作れるなら、医院の自社発信も容易になる。紙の「頼れるドクター」は印刷費と配本費が上がる一方、読者を長く保つのは難しい。その他の業務アプリと採用支援は規模が小さく、主力の穴を埋める実力は未確認だ。
2027年には成長投資で利益が縮み、2030年の営業利益9億円という目標には大きな飛躍が必要となる。上場で自己資本が増えたため、見かけの高ROEを将来へ延長してはいけない。社長側の保有割合が大きく、配当も自社株買いも約束されていない。現金を全額株主の取り分と見なすなら、支配と還元の問題を軽視することになる。
どちらに重みを置いたか
独自取材と顧客基盤には確かな積み重ねがあり、広告予算の取り込みによる上振れは残る。しかし、売上の中心が患者の検索行動に依存し、しかも上場後の資本配分と還元実績がまだ検証できない。下に寄せる理由は、AIが媒体への流入を減らす可能性と、印刷・業務ソフトにも別々の代替圧力があることだ。強気側27%に対して慎重側41%とし、10年間の縮みをすでに中立の数量と価格に含めているため、資本コストや悲観確率で同じ理由を重複計上しない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 985 円52 億円(+ 還元の換算額還元の合計 32 円2 億円)。 今の値に割り戻すと 489 円26 億円、今との差 −11.9%、 期待の年率 +6.4%(資本コスト 7.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 2,254 円118 億円 | 145 円8 億円 | +332.2% | +16.5% | 216 円11 億円 |
| やや楽観 | 18% | 1,549 円81 億円 | 73 円4 億円 | +192.2% | +11.7% | 292 円15 億円 |
| 中立 | 32% | 1,092 円57 億円 | 18 円1 億円 | +100.1% | +7.3% | 355 円19 億円 |
| やや悲観 | 27% | 374 円20 億円 | 0 円0 億円 | −32.5% | −3.9% | 101 円5 億円 |
| 悲観 | 14% | 374 円20 億円 | 0 円0 億円 | −32.5% | −3.9% | 52 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 985 円52 億円 | 32 円2 億円 | +83.2% | +6.4% | 1,017 円53 億円 |
今の株価時価総額 555 円29 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 9% 取材の一次情報が選ばれ、看板予算を獲得 利益 8 億円 · PER 13.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,254 円118 億円
患者の医師選びには、人柄や診療方針を確かめる一次情報が必要だと広く認められる。会社は地域ごとに積み上げた取材網を生かし、看板広告からの予算移行で有料掲載医院を増やす。競合の病院なびやCalooが無料検索で存在感を保っても、直接の取材記事は差別化される。患者の来訪や医院からの反響が測定できるため、契約の継続も揺らがない。
会社が掲げる2030年の営業利益目標を通過し、取材制作AIの省力化と営業の生産性向上が定着する。掲載医院は約1万件となり、全国約17万施設に対する浸透率は6%程度まで上昇する。これはAIを売る新規事業の成功ではなく、従来の屋外広告から予算を移す積み重ねである。紙の冊子も地域を絞って採算を保ち、院内サービスは赤字を脱する。
余った現金の一部は自社の成長へ使われるが、利益が増えた後には遅れて還元が始まる。新株予約権の行使で既存株主の持分は薄まる一方、払込資金は社内に入る。独占とまでは言えないものの、独自取材の価値を顧客が継続して買う理想的な10年だ。
- ドクターズ・ファイル(月額掲載):数量 10,400(年間平均の有料掲載契約医院数(件、期末7,594件とは別))× 価格 0.00(1契約医院当たり年間平均掲載料(億円/院、現状の月額ARPA約3万400円×12))→ 売上 47 億円・営業利益 12 億円。有料医院約10,400件。媒体の認知拡大で数量1.40倍、単価1.23倍、営業25%。
- 頼れるドクター(医療情報マガジン):数量 42.0(年刊の地域版発行数(版))× 価格 0.26(1地域版当たり掲載料など年間収入(億円/版))→ 売上 11 億円・営業利益 1 億円。42地域版。1版収入を0.255億円に増やし、販路選別で営業10.5%。
- 院内DX・医療人材紹介・その他媒体:数量 319(採用成約・有料アプリ契約・病院掲載等の年間有料取引換算件数(推定))× 価格 0.01(有料取引換算1件当たり年間収入(億円/件、分析上の代表値))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。AI外販売上の金額証拠がないので件数319件(現状比1倍)、単価1.20倍、営業2%。
倍率:余剰現金50億円の税後利息0.70億円を除いた事業利益7.29億円、事業用自己資本20.3億円、事業ROE35.9%。k7.75%、普通の堀で残存超過利回り1/2のRONIC21.83%、長期名目g0.6%より正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=13.60倍。余剰現金は戻り方0.5で25億円を別に足す。
確率:医療情報の一次取材がAI時代も媒体への訪問につながり、集客投資の採算も改善するという複数条件の同時実現が必要なため1割未満。AI外販売上を成長の理由にはしない。
やや楽観 18% 有料掲載の浸透がゆっくり進む 利益 5 億円 · PER 13.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,549 円81 億円
「ドクターズ・ファイル」は看板や紙の地域広告から一部の医院予算を取り込む。患者がAIから情報を得る場面は増えるものの、医師本人の取材記事を見る習慣が残り、有料掲載医院は緩やかに増える。医院側も、Googleの無料情報だけでは伝わりにくい診療方針や人柄を説明する媒体として継続利用する。値上げは物価ほど強くないが、顧客数と編集効率で補える。
地域冊子は採算の良い都市圏を残し、版数が少し増える。採用支援と医療DXは大きな柱には育たないが、既存取引先への併売で赤字が小さくなる。2027年の追加投資は何年かを経て収益に戻るが、2030年の利益目標に無条件で到達するほどの伸びは見込まない。
上場で得た現金は大きく傷まず、還元も遅れて小さく始まる。新株予約権の行使で既存持分には一定の希薄化があるが、稼ぐ力がそれを吸収する筋書きとなる。
- ドクターズ・ファイル(月額掲載):数量 8,700(年間平均の有料掲載契約医院数(件、期末7,594件とは別))× 価格 0.00(1契約医院当たり年間平均掲載料(億円/院、現状の月額ARPA約3万400円×12))→ 売上 36 億円・営業利益 8 億円。有料医院約8,700件。数量1.17倍、単価1.14倍、営業22.5%。
- 頼れるドクター(医療情報マガジン):数量 39.0(年刊の地域版発行数(版))× 価格 0.25(1地域版当たり掲載料など年間収入(億円/版))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。39地域版、1版収入0.245億円、営業9%。
- 院内DX・医療人材紹介・その他媒体:数量 290(採用成約・有料アプリ契約・病院掲載等の年間有料取引換算件数(推定))× 価格 0.01(有料取引換算1件当たり年間収入(億円/件、分析上の代表値))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。有料取引換算290件で現状0.91倍、単価1.10倍、営業−3%。
倍率:余剰現金43億円の利息0.602億円を除く事業利益4.728億円、事業用自己資本17.8億円、ROE26.56%。k7.75%、通常の堀でRONIC17.16%、長期g0.6%の式から正当化PER13.50倍。余剰現金21.5億円を別評価する。
確率:広告のデジタル移行を取り込む余地は確かだが、競合の無料検索と顧客の広告費抑制を考えると全面的な成功には置けない。
中立 32% 主力の掲載収入が横ばいで定着 利益 4 億円 · PER 13.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,092 円57 億円
医師の診療方針を第三者が聞き出す価値は残るが、患者がAI検索や予約画面の中で医院を決める割合が増す。ギミックは長い取材関係を背景に有料医院の更新を維持するものの、新規獲得は解約の穴埋めに近くなる。全国の潜在市場は広くても、医院数の減少や広告費抑制が重なり、契約数は2026年とほぼ同じ水準にとどまる。掲載単価の上昇も物価には及ばない。
紙の地域冊子は発行数が減り、1版当たりの収入の改善だけで補う。予約・人事ソフトと医療職紹介は大手基盤やAIエージェントと競い、その他収入は伸びない。記事の制作工程の省力化で人件費を抑えるが、患者への認知広告や顧客サポートは減らせず、利益率の上昇には限界がある。
経営が掲げる2030年営業利益9億円には届かない。会社は利益を主に留保し、少額の還元にとどまる。上場資金と稼いだ利益が現金で残っても、既存株主がそのすべてを回収できるとは評価しない。
- ドクターズ・ファイル(月額掲載):数量 7,450(年間平均の有料掲載契約医院数(件、期末7,594件とは別))× 価格 0.00(1契約医院当たり年間平均掲載料(億円/院、現状の月額ARPA約3万400円×12))→ 売上 29 億円・営業利益 6 億円。有料医院7,450件で数量ほぼ1倍、単価は1.07倍に抑制、営業20.75%。
- 頼れるドクター(医療情報マガジン):数量 33.0(年刊の地域版発行数(版))× 価格 0.24(1地域版当たり掲載料など年間収入(億円/版))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。33地域版へ縮小、1版収入0.235億円、営業7%。
- 院内DX・医療人材紹介・その他媒体:数量 265(採用成約・有料アプリ契約・病院掲載等の年間有料取引換算件数(推定))× 価格 0.01(有料取引換算1件当たり年間収入(億円/件、分析上の代表値))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替により有料取引換算件数0.83倍、価格1.05倍、営業−4.5%。
倍率:累計利益と少額還元、権利行使払込を反映した自己資本54億円から余剰現金36億円を控除し、事業用自己資本は18億円。利息0.504億円を除く事業利益3.166億円、事業ROE17.59%。k7.75%、通常の堀のRONIC12.67%、AIエージェント代替を反映した長期g0.6%より正当化PER13.32倍。現金36億円は還元率0.5で18億円を別に足す。
確率:足元の低い市場浸透率と月額継続収入を認めつつ、AI検索の普及、広告費の圧縮、紙の成熟が同時に進む中心ケース。下に寄せる理由:会社の7割収益が外部の検索導線と少額の医院広告予算に依存するため。
やや悲観 27% 検索のAI化で契約減少が続く 利益 1 億円 · PBR 0.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 374 円20 億円
検索AIが医院の基本情報や評判、予約先をまとめて示すようになり、「ドクターズ・ファイル」を経由した患者流入が細る。医師へのインタビュー記事は残るものの、医院にとってはその掲載料を払う理由が弱まる。契約数は約5,600件へ落ち、顧客単価もほぼ据え置きとなる。営業担当が獲得にかける時間が増え、低い解約率を維持できなくなる。
冊子は発行地域を絞って固定費を削るが、印刷費と配布費を十分に転嫁できない。人材紹介は病院の直接採用と求人AIに押され、予約・院内アプリも大手ソフトに取り込まれて赤字が続く。記事制作AIの費用節減は効いても、収入減を完全には補えない。
新しい資金調達や大きな買収で反転させることは見込まない。既存の現金は採用とサービス維持に使われ、将来の還元は始まらない。会社は存続するが、以前の利益率と成長の評判を取り戻せない。
- ドクターズ・ファイル(月額掲載):数量 5,600(年間平均の有料掲載契約医院数(件、期末7,594件とは別))× 価格 0.00(1契約医院当たり年間平均掲載料(億円/院、現状の月額ARPA約3万400円×12))→ 売上 20 億円・営業利益 3 億円。契約医院5,600件で数量0.75倍、単価ほぼ横ばい、営業14%。
- 頼れるドクター(医療情報マガジン):数量 26.0(年刊の地域版発行数(版))× 価格 0.23(1地域版当たり掲載料など年間収入(億円/版))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。26地域版へ縮小し、営業2%まで低下。
- 院内DX・医療人材紹介・その他媒体:数量 225(採用成約・有料アプリ契約・病院掲載等の年間有料取引換算件数(推定))× 価格 0.01(有料取引換算1件当たり年間収入(億円/件、分析上の代表値))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。有料換算225件、価格0.98倍、営業−14%。
倍率:やや悲観では全社純利益0.92億円から余剰現金18億円の税後利息0.252億円を除くと事業純利益は0.668億円。ROEがk7.75%以下なので利益の正当化PER上限は1÷k=約12.90倍となり、事業の稼ぐ力は約8.62億円、余剰現金の株主への戻り方0.5を適用した価値は9億円、合計約17.62億円にとどまる。したがって大きい方である現有純現金の換価床19.6億円を採る。表示用PBRは今の自己資本24.2億円に対し約0.81倍であり、将来の自己資本41.7億円を分母に使わず、現金を別途二重計上しない。
確率:AI検索がサイト流入を奪い、広告主の効果測定が厳しくなる場合の現実的な下振れ。紙・人材サービスにも代替圧力がかかるため十分な重みを持たせる。
悲観 14% 情報サイトの収益基盤が崩れる 利益 −1 億円 · PBR 0.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 374 円20 億円
AIエージェントが患者の症状、診療科、立地、予約空き枠から受診先を直接決める。記事制作自体は安くなっても、医師紹介メディアとしての流入は消え、医院は有料掲載を更新しなくなる。主力契約数は約4,300件へ減少し、値引きをしても解約を止められない。情報は無料の検索・予約基盤に埋め込まれ、取材会社が患者への接点を握るという強みが失われる。
紙の冊子は地域を大幅に縮小し、印刷・配布費が残って赤字となる。採用紹介や院内ソフトも競争で収益を失い、全社で営業赤字に陥る。経営が過去の規模に固執すれば現金が減り、拠点整理と人員削減の負担も発生する。取材履歴は残るが、それを高い利益率で売れるとは評価しない。
大規模な増資や救済的な高値のTOBは前提とせず、現在の純現金を下回らない換価可能資産の価値を床とする。現金は配当を約束するものではなく、赤字による流出が現実になれば床も下がるため、事業の価値が自動的に守られるわけではない。構造的な負けを認める、厳しい10年だ。
- ドクターズ・ファイル(月額掲載):数量 4,300(年間平均の有料掲載契約医院数(件、期末7,594件とは別))× 価格 0.00(1契約医院当たり年間平均掲載料(億円/院、現状の月額ARPA約3万400円×12))→ 売上 14 億円・営業利益 0 億円。契約医院4,300件で数量0.58倍、価格0.92倍、営業3%。
- 頼れるドクター(医療情報マガジン):数量 19.0(年刊の地域版発行数(版))× 価格 0.20(1地域版当たり掲載料など年間収入(億円/版))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。19地域版、掲載収入が低下し印刷費固定で営業−10%。
- 院内DX・医療人材紹介・その他媒体:数量 175(採用成約・有料アプリ契約・病院掲載等の年間有料取引換算件数(推定))× 価格 0.01(有料取引換算1件当たり年間収入(億円/件、分析上の代表値))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。有料換算件数0.55倍、価格0.85倍、営業−20%。
倍率:営業赤字のためPER評価を用いず、現有純現金の換価可能価値19.6億円を採る。現在の自己資本24.2億円に対する表示用PBRは約0.81倍であり、構造的に収益を失う事業や回収額の確認できない無形資産に上乗せ価値を認めない。2036年時点の累積自己資本30億円には倍率を掛けない。やや悲観も悲観も稼ぐ力が同じ純現金の床を下回るため時価総額は一致するが、赤字と契約減少の深刻さは異なる。
確率:検索AIへの入口移行に加え、無料掲載と業務アプリ競争、医院の広告費削減が重なる構造敗北。直近の現金があるため即時倒産ではないが、主力の再成長は見込めない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ドクターズ・ファイル(月額掲載)
医師への独自取材記事を公開する自社媒体。患者への閲覧提供は無料で、医院から毎月の掲載利用料を受け取る。
| 数量年間平均の有料掲載契約医院数(件、期末7,594件とは別) | 価格1契約医院当たり年間平均掲載料(億円/院、現状の月額ARPA約3万400円×12) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 7,450 | 0.00 | 27 | 5 |
| 10 年後 中立 | 7,450 | 0.00 | 29 | 6 |
取り方:有価証券報告書の収入27.174億円、期末契約医院7,594件、ARPA月3.04万円、ARR27.47億円を使用。期中の収入27.174億円÷(3万400円×12)から年間平均約7,450件と推定した。診療所約17万件に対し期末の有料契約浸透率は約4.4%。営業利益は単一セグメントのため推定配賦し、取材・営業人件費を控除した約5.35億円とする。AI代替の型は自社媒体・プラットフォーム型で、AI要約により訪問が減り契約数と実質単価が抑えられる。独自DBは強みだが、年5%未満の解約や業界共同基盤は証明されず「記録の正本」型にはしない。
頼れるドクター(医療情報マガジン)
地域別の年刊医療情報誌を販売・無料配布し、掲載医院から毎年の出稿料を受け取る。
| 数量年刊の地域版発行数(版) | 価格1地域版当たり掲載料など年間収入(億円/版) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 36.0 | 0.22 | 8 | 1 |
| 10 年後 中立 | 33.0 | 0.24 | 8 | 1 |
取り方:有報のリピート収入8.064億円と発行36版から、1版当たり約0.224億円を逆算した。実際の掲載医院数・1院当たり出稿単価は非開示であり、版数×1版の平均収入を使用する。収入ベースの継続率は75.7%、市場は既存医院の印刷広告・地域情報誌予算の一部。制作工程はAIで自動化が進むが、本業は自社の印刷媒体の掲載枠で、10年後は紙離れと物価以下の値上げを反映する。営業利益は約0.75億円の分析上配賦で、印刷・流通費を含む。
院内DX・医療人材紹介・その他媒体
予約・人事・情報共有の業務ソフト、人材紹介、病院・動物病院向け媒体、医療連携イベントなどの混合収入。
| 数量採用成約・有料アプリ契約・病院掲載等の年間有料取引換算件数(推定) | 価格有料取引換算1件当たり年間収入(億円/件、分析上の代表値) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 319 | 0.01 | 3 | 0 |
| 10 年後 中立 | 265 | 0.01 | 3 | 0 |
取り方:会社のその他収入3.191億円は確認できるが、サービス別の有料契約・成約件数と単価は非開示。医療人材の成功報酬と複数の年額・月額ソフトを平均した仮の単価100万円/収益換算件を置き、約319件とした推計であり実在の有料契約数ではない。メディパシー導入2,275施設の多くは無料枠の可能性があり計算に使わない。AI代替の型は席・画面中心のSaaSと情報・紹介業務で、10年中立は有料換算件数0.83倍、単価1.05倍、10年後の先は名目0%以下と判断。営業利益−0.25億円は新商材育成費を含めた分析上配賦。
リスクと懸念
AIエージェント代替と検索流入の減少
患者が検索結果から媒体を訪れる代わりに、検索AIが医院を直接推薦するようになると、医師取材の一次情報が利用されても、媒体への閲覧と契約医院が受け取る効果は減り得る。記事制作をAIで効率化する利益より、主力7割の掲載料金が失われる損失のほうが大きくなる可能性がある。来訪データが開示されていないため、契約更新率の急変に先立つ悪化を把握しにくい。
価格決定力と有料契約の解約
月次の純売上解約指標は0.81%だが、これは年5%未満の離脱保証ではない。平均掲載単価の伸びは物価より小さく、無料の医院情報や競合媒体が顧客の交渉力を高める。広告予算に敏感な小規模クリニックが退会すれば、営業人員を増やしても純増が止まり、維持費だけが残る。
2027年の先行投資と2030年の目標未達
2027年3月期は3.2億円の追加投資で減益を見込む一方、2030年3月期の営業利益9億円を目指す。患者向け認知拡大が実際の有料契約増へつながらなければ、広告宣伝費と採用費が固定化し収益性が戻らない。計画期間の目標以外に還元の数値約束がないため、失敗した際の資本回収策も読みづらい。
紙媒体の構造的な縮小
「頼れるドクター」は36地域で展開し前年顧客からの収入継続率が75.7%あるものの、発行物の制作・印刷・配本費用は物価と人件費に左右される。広告主がデジタルへ予算を移し、増刷や新版を出しても採算を保てなくなれば、利益率だけでなく既存の取材営業網の固定費負担も悪化する。
現金滞留・大株主・希薄化
上場資金により純現金が厚いが、配当も自社株買いも行われておらず、経営と資産管理会社で約46.5%を保有する。上位10株主への集中も大きく、余剰資金がいつ株主に返るかは不確かである。新株予約権が行使されれば現金は増えるが、既存株主の持分比率は下がる。投資や買収に資金を使っても増分の資本利益率が資本コストを超えなければ価値は減る。
医療広告規制・編集への信頼
医師への取材記事は医療広告ガイドラインを意識して制作される。記事内容の不適切表示や患者データの漏えいがあれば、媒体全体への信用が損なわれる。逆に厳格な法令対応は参入障壁にもなるが、診療報酬の抑制や医院の広告費削減まで相殺するものではない。院内アプリの安全管理コストも続く。
今後の分かれ目
- 「ドクターズ・ファイル」の有料契約医院が2年連続で増え、ARPAも物価並みに上昇したら
- 検索環境の変化後も顧客が値上げを受け入れている証拠となる。中立の医院数と単価、増分利益率を引き上げ、AI代替による長期成長率の制約を見直す。
- 月次純売上解約率が1%を継続的に超え、契約医院数も前年割れしたら
- 更新負担が高まり始めたと判断し、媒体の契約数量を悲観寄りに変更する。月次の数字は年率と混同せず、広告・採用投資の採算も再評価する。
- 2030年3月期に営業利益9億円へ到達し、追加投資後も営業キャッシュフローが増えたら
- 成長投資の回収が実証される。収益性の上振れと資本効率改善を反映し、やや楽観の重みを増やす。ただし10年より先の成長率を無条件に高めない。
- 検索AIの普及後に媒体の閲覧や医院への送客指標が大きく下落したら
- 自社媒体の強みが収益に転化しない可能性が高まり、ドクターズ・ファイルの契約数量と実質単価を下方修正する。制作AIの費用削減だけでは相殺しない。
- 配当性向や自社株買い額が具体的に定められ、継続して実行されたら
- 余剰現金が実際に少数株主へ戻る証拠となる。現金の戻り方0.5を再評価し、配当・買い戻しによる10年還元を引き上げる。
- 医療DXの有料契約数と単価が開示され、無料メディパシーの有料転換が進んだら
- その他事業の仮置き件数を実契約ベースに置き直す。独自の医療連携データが継続課金の堀になった証拠が複数そろった場合だけ、当該部分の寿命と長期成長を上方に見直す。
見ておくもの
- 有料掲載医院数7,594件からの純増数と解約率(月次・純売上ベース)の推移
- ARPA(月額約3.04万円)の物価対比とARR、取材記事経由の集客成果
- 頼れるドクターの発行版数・1版当たり収入・前年顧客収入継続率75.7%
- 2027年3月期追加投資3.2億円の効果と2030年営業利益9億円への進捗
- 自社メディアの訪問数・AI検索からの引用と医療機関の更新理由の開示
- メディパシー2,275施設のうち有料利用数とその他事業の実際の単価・粗利
- 現預金・余剰現金の使途、配当・自社株買いの実績、潜在株式273,700株の行使
倍率と資本コストの決め方
足元の株価・同業のPER・過去のPBRは10年の数量、単価、倍率の根拠にしない。3つの収益区分を実際の有料医院数と単価、地域版数と掲載収入、その他の取引換算件数から評価した。楽観から中立は資本コスト7.75%、長期名目成長0.6%、増分利益率が薄れる正当化PERを使い、余剰現金の税後利息を除いた。事業継続時の余剰現金には返還率0.5を適用する。やや悲観・悲観は稼ぐ力の評価が現有純現金19.6億円を下回るため、今の自己資本24.2億円を基準とした保守的な資産価値に切り替えた。将来に積み上がる自己資本にPBRを掛けず、現金と換価資産も二重計上しない。新リース会計による表示変更後も家賃は営業費用に含めて比較した。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%+株式リスクプレミアム4.5%+事業の質0.25%。個別の広告投資失敗は確率と利益率に含め、上乗せしない。