結論
LOIVEは、女性向けホットヨガの「loIve」とマシンピラティスの「pilates K」を全国で直営展開する会社だ。筆者の結論は「やや割安」である。ただし、それは足元の利益が安定しているからではない。ピラティスKの店舗網が今後10年で広がり、出店費用が一巡した店舗から利益を回収できるという、条件付きの評価である。
2026年3月期の売上高は114億円まで増えたが、営業利益は前年の10億円から7億円に減った。2027年3月期も大規模出店を優先するため、会社は営業利益2.7億円、純利益0.4億円を見込む。2026年4〜6月期には営業赤字も拡大した。店舗数の成長と株主の利益の成長が、今は逆方向に動いている。
10年後には、既存ブランドの認知と会員の習慣化が残り、ピラティスKが現在より広い商圏を押さえている可能性がある。中立では、同ブランドの年間平均有料会員を約11万人と見込み、会社全体の売上高が約327億円、純利益が14億円になる姿を考える。一方、競合の大量出店と家賃負担が重なれば、店舗を増やしても稼ぎが残らない。
5つの筋書きから得られる現在の株主に帰属する価値は約89億円で、基準時価総額の約72億円を約24%上回る。見かけの差はあるものの、上振れのかなりの部分はピラティスKの長期的な成功に依存する。堅い資産の床や継続的な株主還元に支えられた割安さではなく、出店投資の回収が実現して初めて報われる価格だと理解したい。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の立場では、まず「10年後も顧客が自ら料金を払い続ける理由」を確かめたい。健康のために運動する需要は長く残るし、家の近くの決まったスタジオに通う習慣には価値がある。LOIVEは、その習慣をブランド、立地、育成された講師、レッスン運営という形にして全国へ広げようとしている。事業の中身は分かりやすく、画面だけのサービスよりも身体の体験に価値が残りやすい。
ただし、店舗を増やせることと、良い投資先であることは同じではない。新店を出すたびに内装、マシン、広告、採用に資金が要り、開店後も家賃と人件費を払う。会社の会計利益が伸びても、改装と出店にその多くを使うなら、株主が自由に受け取れる利益は小さくなる。特に新たな設備は物価高の価格で取得するため、既存設備の償却費だけを眺めて投資効率を判断してはならない。
最も評価したいのは、早期に多店舗展開のノウハウを整えたことである。未経験の社員を短期間で育成できれば、講師の採用が競争の制約になる市場で出店機会を逃しにくい。一方、顧客の移動を妨げる契約上の障壁も、他社を排除する特許もない。値上げへの耐性が証明されるまでは、永久に高収益が続く強い堀として扱うべきではない。
安全域を考えると、今の時価総額は一見低くても、自己資本の大半が現金同等の守りではない。店舗内装は閉店後に価値を失いやすく、借入と賃借契約の約束は残る。したがって、適正価値が市場価格を上回るとの結果だけで安心はできない。保守的な株主なら、2028年3月期の利益回復だけでなく、その後も借入を膨らませずに出店を続けられるかを、何年も確かめたいはずだ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、月額会費を払う会員に対して、インストラクターがスタジオで集団レッスンを提供する事業である。物販や入会金も収入になるが、売上の基礎は有料会員数と会員1人当たりの年間支払額にある。会社の会計上の報告セグメントは「ブティックスタジオ事業」の1つだけだが、成長率と投資負担が異なるため、ブランド別に見る必要がある。
2026年3月末の店舗数は200で、ホットヨガのloIveが68、マシンピラティスのpilates Kが125、その他が7だった。期末会員数は全体で約8.3万人、うちloIveが約3.4万人、pilates Kが約4.6万人である。売上構成ではloIveが39.5%、pilates Kが57.8%を占める。新規出店の主役がピラティスKであるため、同ブランドでは期末会員数と年間平均会員数に大きな差が生じる。
loIveは既に成熟した地域密着型のホットヨガブランドであり、店舗数を急増させるより既存会員の継続と単価の維持が大切になる。pilates Kは、音楽に合わせたマシンピラティスのグループレッスンを提供する。個別指導より多数の会員を同時に受け入れられるため、稼働が上がれば講師1人当たりの収益性は改善する。ただし、専用マシン、内装、賃借物件、正社員講師が必要で、開店前から資金が出ていく。
Surf Fit、REDY’S GYM、シニア向けストレッチなどは、次の顧客層を探す小規模な実験に近い。企業向け人材育成研修「Mission’S」も始めており、2026年3月期の実績は32社、85人、売上約0.18億円だった。こちらは店舗の身体サービスと異なり、人が教える工数自体を売るため、AIエージェントによる代替の影響を別に考える。会社全体ではまだ売上のごく小さな部分である。
優良さと弱いところ
この会社の競争力は、単にヨガやピラティスを教えられることではない。商圏を見極めて女性が通いやすい店舗を作り、未経験者を短期間で育成し、一定品質のレッスンを繰り返し提供する運営能力にある。会社はインストラクターを原則として正社員で雇用し、約4週間で現場に出せる育成体系を整えている。個人講師に依存する小規模店にはまねしにくい仕組みだ。
顧客の体験価値にも一定の証拠がある。会社が示す月間継続率は95.9%、体験者の入会率は71.9%、顧客推奨度を表すNPSはプラス36.9である。ただし、月間継続率95.9%は年間解約率5%未満という意味ではない。同じ月間継続率が続けば、12か月残る会員は計算上約6割になる。通う習慣と店舗の近さは強みだが、解約できないほどの乗り換え障壁ではない。
さらに、値上げを繰り返しても会員が減らないという長期の実績は確認できない。Rintosullをはじめとする競合が近隣に開業すれば、無料体験、入会特典、広告費で対抗しなければならない。実際に2026年3月期は増収でも減益となり、広告宣伝費と新店費用の重さが表れた。ブランド認知は高まりつつあるが、強固な独占的地位と呼ぶには早い。
資本効率にも注意がいる。2025年3月期には高いROEを示したものの、翌期は17.2%に下がった。自己資本23.4億円に対して純有利子負債は24.1億円あり、自己資本比率は25.6%にとどまる。会員数を増やす能力と、追加出店で資本コストを上回る利益を生む能力は別物だ。今後は開業後2〜3年を経た店舗の利益と投資回収年数で、堀の広さを測るべきである。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
フィットネスは今後も必要とされるサービスだ。日本の人口が減っても、健康寿命を延ばしたい需要や、運動を生活に取り入れる女性の需要は残る。自宅で動画を見るだけでは得られない設備、運動の習慣、講師との接点、同じ目的を持つ人との一体感がある。AIがレッスン内容を生成できても、実際に体を動かす場所と時間までは代替しにくい。
市場の大きさには、調査対象の違いを踏まえる必要がある。帝国データバンクは2024年度の日本のフィットネス市場を約7,100億円と見込んだが、そこには総合スポーツクラブや低価格ジムも含まれる。2026年3月期のLOIVEの売上高は、その広い市場に対して約1.6%に相当する。しかし、これをそのまま女性向けピラティス市場のシェアと呼ぶことはできない。マシンピラティスだけの信頼できる全国売上総額と各社シェアは確認できず、店舗網と会員数を補助的な物差しにする。
競争は既に厳しい。2026年10月時点の店舗数比較では、LAVA系のRintosullが270店以上、pilates Kが175店、STUDIO IVYが149店、zen placeが135店、URBAN CLASSIC PILATESが104店とされる。ただし、RintosullにはLAVA店内の併設拠点が含まれ、個別指導中心の店舗と集団指導中心の店舗も混ざるため、単純な店舗数比は厳密な市場占有率ではない。それでも、競合が同じ生活圏へ急速に広がっていることは明白である。
中立では、国内の健康需要そのものが10年で何倍にも増えるとは考えない。LOIVEの数量増加は、市場全体の成長よりも、競合に対抗しながら新商圏の会員を獲得することによる。pilates Kの年間平均有料会員は現在推定約3.6万人から約11万人へ伸びるが、月会費と物販を合わせた実質単価は競争のため物価上昇を完全には転嫁できないとみる。国内の普及が進むほど市場は寡占化する可能性がある反面、立地の重複で既存店の会員が食い合う危険も増す。
10年後のシェアを決めるのは、店舗数の発表ではなく、地域ごとの会員定着と店舗採算だ。競合が撤退する商圏で会員を引き受けられればLOIVEの地位は強くなる。逆に、低価格化が進んでグループレッスンの平均売上が下がるなら、業界の利用者が増えても株主に残る利益は乏しくなる。
資本政策と M&A
資本配分の最優先事項はpilates Kの出店である。2026年3月期には約17.5億円を設備投資に使い、営業キャッシュフロー約8.5億円を上回った。差額は主に借入や資本調達で賄われた。2027年3月期には71店舗の新設に約25.8億円を投じる計画で、1店舗当たりの予定投資額は約0.36億円となる。店舗の設備は担保として売却しやすい資産ではなく、閉店時に多くの資金を回収できるとも限らない。
会社が2026年6月に公表した成長戦略では、2027年3月期の売上高145.7億円、営業利益2.7億円、純利益0.4億円を予想している。さらに、2028年3月期には新店コストを含む営業利益10億円以上、既存店ベースで20億円以上を目指す。一方、ROE、配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い額についての数値目標はない。2027年3月期の配当予想もゼロであり、株主還元の数字の約束なしと判断する。
上場は2025年4月で、上場時の調達資金約3.28億円は予定どおりpilates Kの新店に投じた。公開資料からは、過去10年間を通じて大型買収と自社株買いを継続的に比較評価できる実績は確認できない。現段階では、買収に支払った対価より、自社で新店を開いて回収する投資判断の巧拙が大きな論点である。未発表の海外展開や将来のM&A利益は価値に含めない。
ガバナンスでは、創業者とその資産管理会社が合わせて約6割を保有し、上位10株主の合計は約87%である。大株主にとって事業を長く育てる誘因がある一方、少数株主が資本配分を変えさせる力は弱い。過去5年の増配と自社株買いの実績が確認できないため、今後たまる余剰現金を全額株主に帰属する価値とはみなさない。新株予約権の行使による持分希薄化も別に織り込む。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
pilates Kは、国内で急速に認知が高まるマシンピラティスの有力ブランドになった。2023年3月末に13店舗だった同ブランドは、2026年3月末には125店舗、同年9月末には175店舗まで増えた。この出店速度は、商圏調査、社員採用、講師育成、店舗設計をまとめて実行する能力の証拠である。競合も増えているが、個人経営店が乱立する段階から大手ブランドの寡占に移れば、全国で広告を打ち、研修費を分散できるLOIVEに有利に働く。
現段階の減益は、将来の利益を得るための先払いという見方が成り立つ。2027年3月期の会社予想は小幅な利益だが、新店費用を除く既存店ベースの営業利益は16.2億円を見込む。2028年3月期の全社営業利益10億円以上という目標が実現すれば、店舗の成熟に伴って稼ぐ力が戻ることを示せる。既存店の会員が定着し、物販が増えれば、同じ賃料と講師数で売上を伸ばせる。
身体を動かす習慣と対面の一体感は、生成AIが安価になってもなくならない。高齢化によって健康への支出意欲が高まる可能性もある。ブランドが長期に選ばれ、新たな地域への進出と単価維持を両立できれば、現在の利益から想像するより大きな企業になる余地がある。店舗展開の初期費用だけを見て成長投資を止めることこそ、株主価値を逃す判断になりかねない。
慎重な見方
店舗数の伸びは、参入障壁の高さを証明しない。同じ時期にRintosull、zen place、URBAN CLASSIC PILATESなども急速に店舗網を広げている。市場の立ち上がりで最初に出店できた優位は、次の10年には家賃の高い店舗と多数の社員を抱える重荷へ変わりうる。会員は近くの新店に乗り換えることができ、特別な技術的障壁もない。値引きと広告費の競争が続けば、大きな売上でも利益率は低いままだ。
会社の資金繰りにも余裕は大きくない。2026年3月期は増収ながら減益となり、翌期も新規出店費用のため純利益がほぼ消える計画だ。純有利子負債は自己資本を上回り、銀行借入には連続赤字や純資産の悪化に関する財務制限条項が付いている。賃貸店舗の家賃は売上が減っても簡単には減らせない。追加融資の条件が悪化する局面では、閉店費用と利払いが同時に利益を圧迫する。
さらに、会社の月間継続率が高く見えても、年間を通じて多数の新会員獲得が必要な構造は変わらない。2026年3月期の広告宣伝費は前期から大きく増えた。既存店ベースの利益が良くても、出店した店舗の集客費と本社費まで含めて初めて株主の利益になる。2028年の目標はまだ実績でなく、成長期の赤字を将来の利益として先取りするのは危険だ。
どちらに重みを置いたか
身体を使う体験価値と多店舗運営力は残るため、事業そのものが10年で不要になる見方は採らない。ただし、全国ブランドとしての優位が独占的な値上げ力に変わる証拠はまだ弱い。最も重要なのは、競合の増加下でも出店費用を回収できるかである。
確率は上側25%に対し下側38%と、やや慎重に寄せる。理由はAIではなく、2026年の減益、2027年の低利益予想、重い純負債、出店競争と賃貸固定費の組み合わせにある。それでも中立以上で投資回収が進めば価値は今の時価総額を上回る。結果はやや割安だが、確実性の高い割安とは区別したい。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 1,527 円198 億円(+ 還元の換算額還元の合計 18 円2 億円)。 今の値に割り戻すと 719 円93 億円、今との差 +34.2%、 期待の年率 +11.3%(資本コスト 8.0%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 4,957 円642 億円 | 115 円15 億円 | +846.3% | +25.8% | 406 円53 億円 |
| やや楽観 | 17% | 2,897 円375 億円 | 50 円7 億円 | +449.8% | +18.9% | 501 円65 億円 |
| 中立 | 37% | 1,476 円191 億円 | 0 円0 億円 | +175.4% | +10.7% | 546 円71 億円 |
| やや悲観 | 25% | 344 円45 億円 | 0 円0 億円 | −35.9% | −4.3% | 86 円11 億円 |
| 悲観 | 13% | 46 円6 億円 | 0 円0 億円 | −91.4% | −21.7% | 6 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,527 円198 億円 | 18 円2 億円 | +188.2% | +11.3% | 1,545 円200 億円 |
今の株価時価総額 536 円69 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 8% ピラティスKが全国有力ブランドとして定着 利益 44 億円 · PER 15.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 4,957 円642 億円
国内でマシンピラティスが運動習慣の1つとして定着し、利用者が特定の大型ブランドに集まる。LOIVEは講師育成と店舗選定で先行し、競合が採算の合わない商圏から撤退した後にも会員を獲得する。pilates Kの年間平均会員は16.5万人まで増え、全国で相応の店舗網を維持する。loIveも新しいレッスンを取り入れ、ホットヨガの会員を増やす。
新規店舗の開業費用は成熟店舗の稼ぎで十分に賄われ、物販比率も高まる。既存店の料金改定が会員離れを招かず、店舗稼働率が上がった結果、増分投資の利益率は資本コストを大きく超える。LAVA系Rintosullや他の大手との競争は続くが、単純な値引きではなくブランド体験の違いで選ばれる。
大規模な買収や未発表の海外進出は前提としない。財務が改善した後に限定的な株主還元も始まり、10年の純利益累計から還元を差し引いても自己資本が大きく増える。実店舗のサービス価値が持続し、成長投資と株主の利益がようやく同時に増える筋書きである。
- loIve・ホットヨガ:数量 60,000(年間平均有料会員数(人、実質数量))× 価格 19(有料会員1人当たりの年間売上高(万円、月会費・物販など込み、名目))→ 売上 114 億円・営業利益 23 億円。年間平均会員6万人、単価は現状比1.41倍。会員定着と会費改定の成功で利益率20%。
- pilates K・マシンピラティス:数量 165,000(年間平均有料会員数(人、実質数量))× 価格 28(有料会員1人当たりの年間売上高(万円、月会費・物販など込み、名目))→ 売上 462 億円・営業利益 90 億円。全国の有力ブランドとして会員16.5万人。現在比単価1.53倍、成熟店舗の稼働改善でブランド営業利益率約19.5%。
- その他スタジオ・新ブランド:数量 15,000(年間平均有料会員数(人、実質数量))× 価格 14(有料会員1人当たりの年間売上高(万円、名目))→ 売上 21 億円・営業利益 2 億円。シニア向け業態などで年間平均会員1.5万人を獲得。
- Mission’S・企業向け人材育成研修:数量 85.0(年間研修受講者数(人、実質数量))× 価格 25(受講者1人当たり売上高(万円、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替を踏まえ、楽観でも受講者数を現在の85人から増やさない。単価は現状比1.18倍。
倍率:k8%、10年後ROEは44÷197.4=22.3%。堀はnormalで資本コスト超過分の残存割合0.5とし、RONIC=8%+0.5×(22.3%−8%)=15.15%。長期名目g2.5%から、正当化PER=(1−2.5%÷15.15%)÷(8%−2.5%)=約15.18倍。上限そのものを使用し、現在・過去の市場倍率を参照しない。事業の純利益44億円×PER15.18倍で時価総額約667.9億円。全体営業利益率15.2%は現状の最高値を超えるが、大幅な店舗成熟と高稼働がともに実現した上側の例外とする。共通費24億円は本社人員、システム、広告、更新設備の償却を含み、現在の5.3億円から規模に合わせて増額した。10年の純利益累計は190億円、還元16億円で自己資本23.4+190−16=197.4億円とする。
確率:大型ブランドとしての寡占化、競合に勝つ集客力、講師育成、実質的な値上げ、成熟店舗の高収益化が同時に必要となる。実現余地はあるが、現時点で価格支配力は証明されていないため8%とした。企業研修の数量増はAI代替の決まりに従って見込まず、この筋書きの強さは店舗事業だけによる。
やや楽観 17% 出店投資の回収が進み高収益化 利益 26 億円 · PER 14.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,897 円375 億円
ピラティスKが各地方中核都市まで広がり、年間平均会員数は13.5万人に達する。急増期のような出店速度は続かないが、店舗の閉鎖を抑えながら新規商圏を獲得する。loIveは成熟事業として会員を維持し、物販とサービス改善によって緩やかに拡大する。
新規出店の広告費は残るものの、ブランド指名で体験に来る人が増え、会員獲得効率が改善する。店舗当たり売上は物価上昇をおおむね反映し、比較的高い稼働率を保つ。会社が示す2028年3月期の利益回復目標を達成した後、成熟店舗の比率が上昇し、全社の利益率が安定する。
一方、Rintosullなどの大手競合とは同じ商圏を奪い合い、すべての店舗で高い料金を維持できるわけではない。会社の競争力は独占ではなく、立地選定と講師育成の精度に依存する。新規株主還元は限定的だが、配当を始められる程度には現金創出力が回復する。海外進出や大型M&Aの成功を必要としない、健全な拡大の筋書きである。
- loIve・ホットヨガ:数量 45,000(年間平均有料会員数(人、実質数量))× 価格 19(有料会員1人当たりの年間売上高(万円、月会費・物販など込み、名目))→ 売上 83 億円・営業利益 14 億円。成熟ブランドの利用者増と物価を上回る一部の料金改定。
- pilates K・マシンピラティス:数量 135,000(年間平均有料会員数(人、実質数量))× 価格 26(有料会員1人当たりの年間売上高(万円、月会費・物販など込み、名目))→ 売上 348 億円・営業利益 59 億円。年間平均会員13.5万人、現在比単価1.41倍。店舗成熟で利益率約16.8%。
- その他スタジオ・新ブランド:数量 10,000(年間平均有料会員数(人、実質数量))× 価格 14(有料会員1人当たりの年間売上高(万円、名目))→ 売上 14 億円・営業利益 1 億円。シニア事業などを選別して拡大。
- Mission’S・企業向け人材育成研修:数量 75.0(年間研修受講者数(人、実質数量))× 価格 25(受講者1人当たり売上高(万円、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。AI代替による研修需要の縮小を残し、受講者は現在の約0.88倍。
倍率:k8%、ROE=26.3÷141.4=18.6%。通常の堀の残存割合0.5によりRONIC=13.3%、g_long2.5%。正当化PER=(1−2.5%÷13.3%)÷5.5%=約14.76倍。利益の質をkと堀で既に扱ったため上限そのもの。純利益26.3億円×14.76倍=388.19億円。10年累計純利益125億円、累計還元7億円で、期末自己資本は23.4+125−7=141.4億円。既存店の収益改善と新店償却費の増加を双方反映し、共通費18億円を負担する。
確率:ピラティスKの拡大と既存店利益の回復は会社戦略に沿うが、国内市場の競争が緩むとは限らない。高い稼働率と広告費の効率化が持続する可能性を17%と見た。人材研修はAIによる工数代替のため数量を縮小する。
中立 37% 店舗網は拡大するが価格競争で収益性は平常化 利益 14 億円 · PER 13.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,476 円191 億円
マシンピラティスは流行だけで終わらず、運動習慣の一部になる。pilates Kは全国ブランドの地位を保つが、Rintosullをはじめとする競合も多くの商圏で残る。出店の余地は徐々に縮小し、店舗数の拡大は2026年前後の勢いより穏やかになる。年間平均の有料会員は11万人へ増えるが、会員獲得費用を一定程度負担し続ける。
loIveは既存店舗を中心に会員を維持する。料金は名目では上がるものの、競争によって物価上昇を完全には転嫁できない。新店を作るための建築費と人件費も上がるため、売上の増加がそのまま利益率の改善にはならない。成熟した店舗の黒字が新規店舗の立ち上げを支え、全社では適度な利益を確保する。
2028年3月期の営業利益回復目標を実現しても、その後は新たな投資の利回りが徐々に下がる。大型買収や海外進出の利益はなく、株主への現金還元も明確な方針が出ない限り始まらない。身体を使うサービスの必要性は続くが、値上げを自由に決められる企業にはならない。借入と賃借契約を管理しながら、普通の優良な店舗事業に成熟する10年である。
- loIve・ホットヨガ:数量 35,000(年間平均有料会員数(人、実質数量))× 価格 18(有料会員1人当たりの年間売上高(万円、月会費・物販など込み、名目))→ 売上 62 億円・営業利益 10 億円。年間平均会員は現在とほぼ同水準、名目単価1.31倍。人口減少と成熟市場の影響で数量は大きく伸びない。
- pilates K・マシンピラティス:数量 110,000(年間平均有料会員数(人、実質数量))× 価格 23(有料会員1人当たりの年間売上高(万円、月会費・物販など込み、名目))→ 売上 256 億円・営業利益 38 億円。新規商圏への進出で会員は約3.06倍。単価は現在の1.27倍で、CPI想定1.34倍より低い。大手競合の料金施策が物価転嫁を抑える。
- その他スタジオ・新ブランド:数量 7,000(年間平均有料会員数(人、実質数量))× 価格 13(有料会員1人当たりの年間売上高(万円、名目))→ 売上 9 億円・営業利益 1 億円。成長ブランドを選別し、会員数は限定的に増加。
- Mission’S・企業向け人材育成研修:数量 60.0(年間研修受講者数(人、実質数量))× 価格 25(受講者1人当たり売上高(万円、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。人月・工数型の研修はAIエージェント代替により数量60÷85=0.71倍。単価1.18倍、長期名目g0%。
倍率:k8%、ROE=14÷113.4=12.35%、通常の堀の残存割合0.5によりRONIC=10.18%。2036年以降の名目gを2.5%とした正当化PER=(1−2.5%÷10.18%)÷5.5%=約13.71倍。利益の質を倍率から追加で手引きせず、計算上限をそのまま使う。純利益14億円×13.71倍=191.94億円。直近の営業利益率の最高水準11.8%を超えず、全社営業利益率は約9.45%。物価上昇で本社の賃金、広告、システム維持費は増える一方、既存設備の過去取得価額に対する償却は機械的には増やさず、新規出店と改装の設備の償却を上積みして共通費17.7億円を見込む。10年累計純利益90億円、還元0億円で自己資本23.4+90=113.4億円。
確率:身体サービスの需要が残り、店舗運営力も一定程度維持される一方、マシンピラティス市場の普及後には競争が定着する。大規模出店が今後10年ずっと続くとは見ず、既存店利益が回復した後に成長率が落ち着く筋書きを最多の37%とした。下に寄せる理由:2026年の増収減益、2027年の低利益予想、純負債24.1億円、競合の急出店と解約可能な月額会員モデルが同時に存在するため。
やや悲観 25% 新規出店の採算が低下し既存店も伸び悩む 利益 4 億円 · PER 10.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 344 円45 億円
Rintosullなど大手の出店に加え、低価格のマシンピラティス店が各地で残り、会員獲得に必要な広告費が下がらない。pilates Kの店舗網は広がるが、出店した店舗の一部で入会者数が計画に届かず、会員数が減少する店舗も現れる。年間平均会員は6.8万人にとどまり、料金を物価上昇ほど引き上げられない。loIveも人口減少と近隣競合の影響を受け、利用者が細る。
経営は新店を減らし、採算の悪い物件から段階的に撤退する。閉店しても契約終了まで賃料を負担し、内装の残存価額を減損するため、利益の回復には時間がかかる。成熟店舗の利益率は保たれても、全社では広告、講師、本社管理部門の費用が重く残る。
資本効率が低下した結果、配当と自社株買いは行わず、稼いだ資金を借入返済と更新投資に回す。企業研修の受講者数もAIエージェント代替で縮小するが、業績悪化の主因ではない。店舗運営の能力そのものは残る一方、成長のために投じた資本の回収が遅れ、株主に残る利益が小さくなる筋書きである。
- loIve・ホットヨガ:数量 29,000(年間平均有料会員数(人、実質数量))× 価格 16(有料会員1人当たりの年間売上高(万円、月会費・物販など込み、名目))→ 売上 46 億円・営業利益 6 億円。会員数が現在より減少。名目料金の上昇も物価に届かない。
- pilates K・マシンピラティス:数量 68,000(年間平均有料会員数(人、実質数量))× 価格 21(有料会員1人当たりの年間売上高(万円、月会費・物販など込み、名目))→ 売上 139 億円・営業利益 17 億円。既存店の会員獲得費が高止まりし、年間平均会員6.8万人にとどまる。
- その他スタジオ・新ブランド:数量 4,500(年間平均有料会員数(人、実質数量))× 価格 12(有料会員1人当たりの年間売上高(万円、名目))→ 売上 5 億円・営業利益 −1 億円。小規模ブランドの採算が改善せず、整理費用が残る。
- Mission’S・企業向け人材育成研修:数量 50.0(年間研修受講者数(人、実質数量))× 価格 24(受講者1人当たり売上高(万円、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。AI代替と法人の研修内製化で受講者数は現在の0.59倍。
倍率:純利益4.3億円、自己資本54億円でROE約7.96%。k8%をわずかに下回るため、今後の留保・成長が追加価値を生む前提を採らず、利益の稼ぐ力の上限1÷k=12.5倍以下とする。ここでは低収益店舗と借入の残存リスクを踏まえPER10倍、時価総額43億円。床は過去のPBRを根拠にせず、現金・回収債権・保証金の回収可能額から借入・前受会費・原状回復の負担を差し引いてみる。現在の自己資本23.4億円全額を換金できるとは想定しない。10年累計純利益30.6億円、還元ゼロで自己資本54億円。
確率:競合の出店によって店舗ごとの会員数が伸びず、広告費、賃料、採用費の上昇が続く場合を想定する。2026年から既に成長投資の利益負担が表れており、会社の戦略と矛盾しない下振れとして25%を配分した。AI代替リスクは研修の数量・価格だけで処理し、確率には重ねていない。
悲観 13% 過剰出店が固定費負担となり構造的に後退 利益 1 億円 · PER 10.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 46 円6 億円
国内のマシンピラティス市場は普及を続けるが、店舗が過剰になり、ブランド間の料金競争が激しくなる。Rintosullなど集客力のある競合に押され、pilates Kは出店した店舗の相当数を閉じる。loIveも成熟市場の縮小に逆らえず、会員数が減少する。長く運営してきたブランドは残るものの、以前のように全国で出店を増やせる会社ではなくなる。
閉店時には、内装と設備の減損に加えて、解約までの家賃と原状回復費用が発生する。銀行借入の財務制限条項が経営の自由度を下げ、設備の更新と負債返済を優先せざるを得ない。経営は赤字店舗を整理し、採算の合う小さな店舗網を残すが、その途中の損失によって自己資本が減少する。
2036年には営業黒字へ戻っても、それは積極出店が再開したからではなく、事業規模と本社費を大幅に縮めた結果である。余剰現金は残らず、株主還元もない。新株予約権は株価水準から行使されず、既存株主の持分は希薄化しないが、企業そのものの稼ぐ力と資産価値が大きく損なわれる。
- loIve・ホットヨガ:数量 22,000(年間平均有料会員数(人、実質数量))× 価格 15(有料会員1人当たりの年間売上高(万円、月会費・物販など込み、名目))→ 売上 32 億円・営業利益 1 億円。店舗整理と人口減少で有料会員が大幅に減少。単価上昇は限定的。
- pilates K・マシンピラティス:数量 36,000(年間平均有料会員数(人、実質数量))× 価格 18(有料会員1人当たりの年間売上高(万円、月会費・物販など込み、名目))→ 売上 64 億円・営業利益 6 億円。過剰出店から撤退し、現在並みの年間平均会員数へ逆戻り。
- その他スタジオ・新ブランド:数量 2,500(年間平均有料会員数(人、実質数量))× 価格 10(有料会員1人当たりの年間売上高(万円、名目))→ 売上 3 億円・営業利益 −1 億円。新業態が採算に乗らず事業縮小。
- Mission’S・企業向け人材育成研修:数量 40.0(年間研修受講者数(人、実質数量))× 価格 22(受講者1人当たり売上高(万円、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替により研修数量は現在の0.47倍まで縮む厳しい筋書き。
倍率:純利益0.6億円、期末自己資本16.7億円でROE約3.6%とk8%を大きく下回る。利益の成長を価値として加算せず、稼ぐ力の上限1÷k=12.5倍を下回る10倍で時価総額6億円とする。構造的な閉店・減損で期間累計純利益はマイナス6.7億円、還元ゼロ、自己資本23.4−6.7=16.7億円。資産の床は現在の現預金約11.6億円、回収債権約11.1億円、保証金の時価約11.4億円、換金性の低い店舗内装等を出発点に、借入約35.7億円、会費前受等の契約負債約11.8億円、店舗閉鎖時の原状回復・賃借契約負担を差し引く。内装の帳簿価額をそのまま売却価値に使うことはできず、清算時に保証できる正味資産の下限は0億円と評価する。したがって、事業の稼ぐ力6億円が床を上回る。現在の自己資本23.4億円を、閉店時にも残る資産の床としては扱わない。
確率:大量閉店、価格競争、採用・広告費の高止まり、銀行借入の条件悪化が重なる複合事象であり、通常の業績変動より厳しい。ただし、賃借店舗型で純負債が厚く、過去に赤字期もあるため無視できない。構造的に事業の優良さを失う可能性として13%を配分する。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
loIve・ホットヨガ
女性向けホットヨガの直営スタジオ。既存会員の継続、立地、プログラム更新、物販が収益の中心となる。
| 数量年間平均有料会員数(人、実質数量) | 価格有料会員1人当たりの年間売上高(万円、月会費・物販など込み、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 33,500 | 13 | 45 | 8 |
| 10 年後 中立 | 35,000 | 18 | 62 | 10 |
取り方:2026年6月30日公表の会社資料で、2026年3月期の全社売上114.2億円に対するloIveの構成比は39.5%、期末店舗68、期末会員約3.4万人。ブランド売上を約45.1億円とし、年度中の会員数を直接開示していないため年間平均3.35万人と推定した。売上を平均会員数で割って、物販等を含む年間単価13.47万円を逆算。期末会員数と年間平均会員数は区別する。営業利益8.0億円は非開示のブランド別配賦推定で、本社共通費を控除する前の値である。
pilates K・マシンピラティス
専用マシンを使う女性向けグループレッスン。新規出店が売上拡大の中心だが、講師採用と広告、内装投資が先行する。
| 数量年間平均有料会員数(人、実質数量) | 価格有料会員1人当たりの年間売上高(万円、月会費・物販など込み、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 36,000 | 18 | 66 | 5 |
| 10 年後 中立 | 110,000 | 23 | 256 | 38 |
取り方:会社資料の2026年3月期ブランド売上構成比57.8%から約66.0億円と推計。期末125店舗、期末会員約4.6万人だが、期中に大量出店したため年間平均会員は期末の約78%に当たる3.6万人と推定し、年間売上単価18.335万円を算出した。期末店舗125は2025年3月末の80店舗から増加した結果であり、期末人数を年間通期の人数として単価を過小評価しない。営業利益4.7億円はブランド別に開示されないため、立ち上げ負担を考慮した配賦推定である。
その他スタジオ・新ブランド
Surf Fit、REDY’S GYM、シニア向けストレッチなど、少数店舗で運営する身体サービス。
| 数量年間平均有料会員数(人、実質数量) | 価格有料会員1人当たりの年間売上高(万円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,000 | 9.63 | 3 | 0 |
| 10 年後 中立 | 7,000 | 13 | 9 | 1 |
取り方:2026年3月末のその他スタジオは7店舗。全社会員8.3万人からloIve約3.4万人とpilates K約4.6万人を除いた約0.3万人を平均会員数の概算にも使用した。会社開示のその他売上構成比2.7%には企業研修も含むため、その他全体約3.1億円から研修0.18億円を分け、店舗売上2.89億円とした。業態別の会員数、単価、損益は開示されておらず、営業損失0.2億円は立ち上げ期の配賦推定である。
Mission’S・企業向け人材育成研修
女性のキャリアやマネジメントをテーマに企業向け研修を提供する。人の指導工数で売る部分はAIエージェント代替リスクを受ける。
| 数量年間研修受講者数(人、実質数量) | 価格受講者1人当たり売上高(万円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 85.0 | 21 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 60.0 | 25 | 0 | 0 |
取り方:2026年6月30日の会社成長戦略資料26ページに、企業向け研修の実績として32社、受講者85人、売上1,800万円の開示がある。85人を実質数量とし、売上を割った21.18万円を1人当たりの混合単価とした。研修の営業利益は非開示のため0億円と推定。AIエージェント代替の『人月・工数で売る研修』に分類し、中立の10年後受講人数を現在の0.55〜0.75倍、単価を物価上昇1.34倍以下、10年より先の名目成長を0%とする。店舗会員の身体レッスンには、この代替率を掛けない。
リスクと懸念
ピラティスの過剰出店と会員獲得競争
マシンピラティス市場ではRintosull、zen place、URBAN CLASSIC PILATES、地域の小規模事業者も出店している。LOIVEの店舗数が増えても競合が同じ駅前や生活圏に開業すれば、店舗当たりの会員が減り、広告費と入会特典が増える。新店が黒字になるまでの期間が延びると、増収にもかかわらず全社利益が減る構造が続く。
賃料と銀行借入による固定的な資金負担
2026年3月期の地代家賃は約20億円であり、純有利子負債は24.1億円、自己資本比率は25.6%にとどまる。店舗の売上が落ちても賃料と講師の人件費は直ちに消えない。借入契約には経常赤字が2期続く場合や純資産が大幅に減る場合の財務制限条項もあり、金利3%台後半への借り換えが利益と資金繰りを圧迫する危険がある。
出店投資と減価償却の時間差
新店の内装とマシンには開業前に現金を投じるが、会計上の費用は耐用年数に沿って後から計上される。既存設備の償却額は物価上昇だけで増えない一方、改装と新規取得の設備価格は上がる。資金が足りなければ借入と利払いが増える。営業利益の回復だけで投資が回収できたと判断すると、将来の更新費用を過小評価する。
ブランドへの忠誠と値上げ力の見誤り
会社公表の月間継続率95.9%は良好に見えるが、年間に直せば会員の入れ替わりは大きい。近隣に新しいスタジオができれば移ることができ、長期契約や規制による乗り換え障壁もない。現状より高い料金を競争下で長く維持した開示実績も十分ではない。物価上昇を価格へ転嫁できなければ、人件費と家賃の増加で利益率が下がる。
AIエージェント代替と企業研修事業
身体を使うスタジオレッスンの現場そのものはAIエージェントに代えにくい。一方、企業向けの人材育成研修は、教材設計、個別指導、課題の添削、進捗確認をAIが担うほど、人が提供する工数と受講料に下押し圧力がかかる。2026年3月期の研修売上は0.18億円と小さく、会社全体への直接影響は限定的だが、将来の成長事業として過大に価値を足すべきではない。
少数株主への還元と新株予約権の希薄化
創業者と資産管理会社の持分が約6割あり、少数株主が内部留保の配分を変更させる力は弱い。会社は出店を優先しており、配当性向や自社株買い額の数値目標もない。さらに複数回にわたる新株予約権が存在し、業績が成長しても既存株主の1株当たりの取り分は希薄化しうる。企業価値の増加と株主の取り分の増加は分けて考える必要がある。
2028年の利益回復目標の未達
会社は2028年3月期に営業利益10億円以上を目指すが、2027年3月期は営業利益2.7億円、純利益0.4億円という出店費用先行の予想である。2026年4〜6月期にも営業赤字を計上した。既存店利益は順調でも、新店の採用費や広告費が想定を上回れば、全社の利益回復は後ずれする。目標を実績と同じ確度で扱うことはできない。
今後の分かれ目
- 2028年3月期に新店費用込みの営業利益10億円以上を達成し、その後も借入増加を抑えられたら
- 投資回収の確度が高まる。中立からやや楽観へ確率を移し、成熟店舗の利益率と必要投資額を再評価する。
- pilates Kの年間平均会員数が大きく増えても、店舗当たりの会員数と既存店売上が下がり始めたら
- 出店による自己競合や市場飽和を疑う。2036年の数量増加率を下げ、やや悲観側を厚くする。
- 競合が増える中でも会費の改定が定着し、解約率と広告費率が悪化しなかったら
- 価格を決める力の証拠になる。各ブランドの実質単価と長期利益率を見直し、堀を強く評価できるかを検討する。
- 営業キャッシュフローが更新・出店投資を複数年連続で上回り、純有利子負債が減少したら
- 利益が現金として株主に残り始めたと判断する。財務上の下振れリスクを下げ、余剰現金の評価も還元実績に応じて見直す。
- 銀行借入の財務制限条項への抵触、または店舗の大規模減損が発生したら
- 資金調達と自己資本の前提を速やかに引き下げる。閉店費用を利益と資産の双方へ反映し、悲観の確率を引き上げる。
- 新株予約権の大量行使、追加の第三者割当増資、あるいは明確な自社株買い方針が公表されたら
- 企業全体の価値と現在株主の取り分を分けて再計算する。行使による払込資金の増加と株数希薄化を同時に反映し、同じ増資資金を二重に数えない。
見ておくもの
- pilates Kの月次店舗数、既存店売上、会員数の推移。新店開設数だけで判断しない。
- loIveとpilates Kの月間会員継続率、体験からの入会率、無料集客割合。
- pilates Kの平均会員数と会員1人当たり売上。期末会員数との違いに注意する。
- Rintosull、zen place、URBAN CLASSIC PILATESなど主要競合の出店・閉店、料金改定。
- 新店の開業投資額、営業開始から黒字化までの期間、投資回収年数。
- 2028年3月期の全社営業利益10億円以上および既存店ベース20億円以上の達成状況。
- 営業キャッシュフローから設備投資を引いた額、純有利子負債、借入の財務制限条項。
- 累計の新株予約権行使数、発行済株式数、配当・自社株買いに関する具体的な方針。
- 2027年4月以後に始まる年度から強制となる新リース会計基準の適用による使用権資産とリース負債の増加。
倍率と資本コストの決め方
現在の市場PERや上場後の株価の高値・安値から倍率を逆算していない。会社資料で確認したブランド別売上構成比、期末会員数、店舗数から年間平均有料会員と単価を組み立て、各筋書きの数量と名目価格を別々に動かした。中立のピラティスKの会員数増加は実質数量、単価上昇は物価を含む名目額であり、物価を二度掛けしていない。
倍率はk8%、長期名目g2.5%、10年後のROEと通常の堀に基づくRONICで決めた。中立の正当化PERは約13.71倍で、現在の値付けには合わせていない。悲観は過去のPBRではなく、損なわれた稼ぐ力と換金可能な資産の床から決めた。基準時価総額は71.585億円である。
5筋書きの確率8%・17%・37%・25%・13%、企業価値、配当・自社株買いの累計、予約権行使による既存株主の取り分、k8%で10年後の価値を割り引くと、現在価値は約88.7億円、差は約プラス24%となる。家賃は営業費用に含む従来の会計表示にそろえた。2028年3月期以降、新リース会計基準の適用で負債と営業利益の表示が変わっても、賃料の経済的負担を二重に引かない。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。国債利回り3%と株式リスクプレミアム4.5%による基本7.5%に、値決め力の弱さ0.5%を加えた。βと企業規模による上乗せは用いない。出店失敗、財務制限条項、競争の激化は利益率と筋書きの確率で表し、資本コストに重ねていない。
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読んだ資料
- 株式会社LOIVE「事業計画及び成長可能性に関する事項」(2026年6月30日。ブランド別売上、店舗・会員数、成長戦略、2028年の利益目標、研修実績)
- 株式会社LOIVE「2026年3月期 有価証券報告書」(2026年6月23日。財務、賃料、設備投資、銀行借入契約、大株主、新株予約権)
- 株式会社LOIVE「2027年3月期 第1四半期決算短信」(2026年8月7日)
- 帝国データバンク「フィットネスクラブ・スポーツジム業界動向調査(2024年度)」(2025年5月16日。市場規模と競争環境)
- 趣味なび byGMO「2026年度版 ピラティススタジオ店舗数ランキング」(2026年10月23日。競合店舗数の比較)