結論
学究社は、東京の都立中高一貫校と都立トップ高の受験で強い進学塾「ena(エナ)」を運営する会社だ。売上は131億円、営業利益は29億円で、営業利益率は22%と過去最高になった。塾業界では突出した水準である。
筆者の結論は、今の値段はやや割高というものだ。ブランドも利益率も立派だが、需要の土台が揺らいでいる。少子化で受験生は減り、私立高校の授業料の実質無償化は、都立を狙う生徒の数を減らし始めた。時価総額274億円は、高い利益率が10年続くことを織り込みすぎている。
強みは、適性検査(都立中の入試)に特化した教材と合格実績だ。都立中の合格者は前期1,097人で、都立トップ校では10年連続でNo.1をうたう。会社は私立の受験にも踏み込み、千葉・埼玉へも出る。ただ、私立は大手の塾が強く、勝ち筋はまだ見えない。
中立の10年では、生徒数は1割ほど減る。授業料の値上げで売上は名目で160億円近くになり、営業利益は30億円ほどを保つ。利益率は19%台に下がる。ROEは10%台前半まで落ち、価値は今の値段をやや下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資家の目で見れば、学究社は「ブランドの強い、小さな教育会社」である。営業利益率22%、無借金、ROE20%超(直近)と、数字は優れている。受験という、親が惜しまない支出に根を張る。
ただし、需要の土台が崩れている。出生数は減り、私立高校の無償化は、会社の強みである都立志望の生徒を減らした。10年後の中立でも、利益率は19%台、ROEは10%台前半まで落ちる。利益を残せば残すほど、自己資本が積み上がり、資本の効率が下がるからだ。
資本の使い方は妥当だ。借金をせず、配当性向は6割ほどで、校舎の投資も小さい。経営は堅実で、不採算の校舎を閉じる決断も早い。
払う値段はどうか。時価総額274億円は、今の純利益の15倍にあたる。利益が高止まりしている今は妥当に見えるが、10年後の本質価値はそれをやや下回る。安全域は薄い。筆者は、制度の変化に会社がどう対応するかが分かれ目とみる。
何で稼ぐ会社か
学究社の稼ぎのほぼすべては、教育事業である。売上131億円のうち、教育事業が124億円、不動産と広告・人材などが残りだ。
中心は、小中学生向けの進学塾「ena」だ。東京の都立中高一貫校の周辺に校舎を置き、都立中の入試(適性検査)に特化したオリジナルの教材で教える。中学部は、都立トップ高をめざす選抜の「ena最高水準」が25校ある。最難関の私立・国立中向けに「極」、個別指導の「ena個別」、高校部、看護・美術などの大学受験部もある。
夏の合宿は10泊11日、長い人は22泊23日にして、季節講習の売上を伸ばしている。海外は、北米でGAKKYUSHA USAが生徒を増やしている。
教室は、多くを借りて運営する。年間の賃借料は16億円で、固定の約束になる。講師は多くが時間講師で、臨時雇用者は年平均1,500人を超える。
そのほか、受験情報サイト「インターエデュ」と、賃貸不動産(簿価23億円)を持つ。連結の従業員は約460人の少数精鋭で、授業の多くは時間講師が担う。その他の関係会社のケイエスケイケイが38%の株を持つ。
優良さと弱いところ
優良さは、ブランドと利益率にある。都立中の合格者は1,097人で、小石川中では合格者の6割以上がenaの生徒だったと公表している。都立トップ高の実績は、10年連続でNo.1をうたう。実績は、都立狙いの親にとって選ぶ理由になり、口コミで広がる。
営業利益率は2015年3月期の14%から、2026年3月期の22%へ上がった。値上げと、合宿などの高単価の講習、不採算校舎の閉鎖が効いた。借金はなく、純現金は23億円、自己資本比率は65%、赤字の期は20年以上ない。
弱みは4つある。第1に、塾は参入の壁が低く、講師の引き抜きや教材のまねを受ける。第2に、実績は「10時間以上教えた生徒」で数えるため、他塾より甘いという指摘がある。第3に、都立という一つの制度に依存している。私立高校の授業料の実質無償化は、都立志望の生徒を減らした。第4に、校舎の多くが賃借で、家賃は固定費である。
堀、つまり他社がまねできない強みは、実績と教材の組み合わせだが、制度が変われば崩れる。筆者は、残る割合を普通の水準でみる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
需要は少子化で縮む。東京は流入で他地域より減り方が緩いが、受験の中心になる世代の人数は、10年で2割ほど減る。この縮みを、受験の参加率の上昇と1人あたりの支出の増加が、どこまで補うかが、業界の勝負になる。
東京の受験は、2つの市場に分かれる。1つは私立中で、SAPIX、早稲田アカデミー、四谷大塚、日能研が強い。もう1つが都立中高一貫校で、enaが最も強い。都立中の募集定員は約1,700人で、市場は小さい。倍率は下がり気味ながら高水準だ。
制度の変化が大きい。私立高校の授業料は、実質無償化の拡充が進んだ。都立を狙う動機が弱まり、会社は生徒の減少を認めている。会社は私立も狙う戦略へ転じ、2024年度から本格参入した。
費用も上がる。講師の時給と家賃は物価で上がるので、授業料に移せなければ利益率が削られる。生成AIによる学習支援も、長期には個別指導の価格を押し下げる。
競合は、栄光ゼミナール、SAPIX、早稲田アカデミー、四谷大塚、日能研のほか、個別指導の大手や通信教育だ。市場は大きいが、強い塾が地域と学年で分かれて棲み分けている。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。前期の配当は中間と期末の2回で、合計約11億円、配当性向は6割ほどである。自社株買いと株主優待は、確認できなかった。配当は業績に応じて決め、明確な性向の約束はない。
投資は小さい。前期の設備投資は3億円で、校舎の新設と移転・改修が中心だ。東京都国立市では、校舎と賃貸マンションを建てる(約8億円、2027年12月完成予定)。千葉・埼玉への出店も続けるが、物件の確保は不確実だと会社自身が書く。
会社は、利益率20%超を3か年の目標に掲げた。前期は22%で超えた。一方、閉鎖・移転する校舎で3億円の減損損失も出した。不採算の整理が続いている。
その他の関係会社のケイエスケイケイが38%の株を持つ。大株主の影響力が強く、時価総額が小さいため、再編や非上場化の可能性は否定できない。純現金は23億円あるが、家賃16億円という固定の約束があり、見かけほど余裕はない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
enaの強みは、都立中の入試に特化した教材と合格実績で、ほかの塾にはまねしにくい。2026年の都立中の合格者は1,097人で、都立トップ高の合格者では全塾中No.1だった。小石川中では合格者の6割以上がenaの生徒だ。この実績が、都立を狙う親にとっての第一選択になっている。
会社は動いている。私立中・私立高にも、2024年度から本格的に参入した。最難関向けの「極」、新しいテキスト「EXE」、中学部の新校舎(2026年度に5校増の25校)など、手は打っている。千葉・埼玉にも出る。海外では、北米のGAKKYUSHA USAが生徒を増やしている。
利益は強い。営業利益は10.8%増の29億円で、利益率は22%と過去最高だった。合宿の拡充と費用の削減が効き、会社の目標(20%超)を超えた。無借金で、純現金は23億円、赤字の期は20年以上ない。
少子化は逆風だが、受験の参加率が上がり、値上げが通れば、補えない縮みではない。10年後に、生徒数が横ばいに近く、利益率が21%台を保つ筋書きは、十分にありうる。
慎重な見方
需要の土台が崩れている。出生数は減り続け、私立高校の授業料の実質無償化は、都立を狙う生徒を減らした。会社自身が、減益や生徒数の減少の要因として認めている。強みである都立志望の層が薄くなれば、実績が良くても、入塾者は増えない。
私立の受験は、大手の塾が固めている。SAPIX、早稲田アカデミー、四谷大塚、日能研には、実績も教材も校舎網もある。会社が私立で成功する保証はない。成功しなければ、強みの都立で縮む分を埋められない。
利益率22%は、過去最高だ。2015年から2020年は12〜15%だった。前期の利益は、校舎の閉鎖や費用の削減で上積みされた面もあり、再現性は疑わしい。純利益は前期に減っている。
構造的な弱みもある。教室の多くは賃借で、家賃は年16億円の固定費だ。生徒が減れば利益率が一気に悪化する。講師は時間講師が中心で、引き抜きに弱い。生成AIによる学習支援は、個別指導の価格を押し下げる。時価総額は、この高い利益率が続くことに賭けた値段だ。
どちらに重みを置いたか
ブランドと利益率は本物だが、都立という一つの制度に頼る需要の縮みのほうが重いと判断した。強気の言い分である私立への参入と合宿の拡充は、中立の利益率に織り込んだ。確率は中立を厚くし、会社の実行力と過去の実績を見て、楽観とやや楽観を、他の教育会社と同じ程度に置いた。悲観は、都立の需要の縮みと私立への参入の失敗が重なる筋書きに絞った。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,311 円360 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,235 円134 億円)。 今の値に割り戻すと 2,515 円273 億円、今との差 +0.9%、 期待の年率 +6.2%(資本コスト 7.2%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 5,360 円583 億円 | 1,491 円162 億円 | +174.8% | +10.6% | 548 円60 億円 |
| やや楽観 | 22% | 4,601 円500 億円 | 1,371 円149 億円 | +139.5% | +9.1% | 1,314 円143 億円 |
| 中立 | 38% | 3,882 円422 億円 | 1,242 円135 億円 | +105.5% | +7.5% | 1,947 円212 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,601 円174 億円 | 1,113 円121 億円 | +8.9% | +0.9% | 597 円65 億円 |
| 悲観 | 10% | 425 円46 億円 | 975 円106 億円 | −43.8% | −5.6% | 140 円15 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,311 円360 億円 | 1,235 円134 億円 | +82.4% | +6.2% | 4,546 円494 億円 |
今の株価時価総額 2,493 円271 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 8% 私立への参入が成功し、都立の強さも保つ 利益 29 億円 · PER 20.0 倍 · 株価時価総額 5,360 円583 億円
都立中の入試で強さを保つうえ、私立中・私立高の受験でも合格実績を積み、生徒数は少子化の中でも今の水準を超える。千葉・埼玉への出店が軌道に乗り、「極」などの高単価コースが広がる。海外もGAKKYUSHA USAが伸びる。
授業料は物価並みかそれ以上に上げられ、合宿などの講習で単価も上がる。営業利益率は22%台と、今の水準を保つ。講師の時給と家賃の上昇は、値上げで吸収できる。
営業利益は42億円に届き、ROEは17%に近づく。配当性向は6割台を保つ。ブランドが東京の受験の定番になり、評価が一段高くなる10年である。
- 教育事業:数量 33,600(平均在籍生徒数(人))× 価格 54(1人あたり年間売上(万円))→ 売上 180 億円・営業利益 41 億円。生徒数5%増
- 不動産・その他:数量 780(契約・取引の件数(件))× 価格 139(1件あたり売上(万円))→ 売上 11 億円・営業利益 3 億円。広告・不動産が増える
倍率:事業の純利益 29 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.8% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.5%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.0 倍。全体の PER 20.02 倍、時価総額 577 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:都立の強みを保ったまま、私立への参入と千葉・埼玉への出店がともに成功する必要がある。条件が重なるので8%にとどめた。
やや楽観 22% 縮みを値上げと新エリアで補う 利益 25 億円 · PER 19.7 倍 · 株価時価総額 4,601 円500 億円
少子化で受験世代は減るが、参加率の上昇と千葉・埼玉への出店で、生徒数は今のほぼ水準を保つ(2%減)。私立への参入は一部の校舎で実績が出て、「極」のような選抜コースの評判が広がる。授業料は物価並みに上がり、合宿の単価も伸びる。
営業利益率は21%台で、今の水準よりやや下がる。家賃と講師の時給の上昇は、値上げで大半を吸収する。
営業利益は36億円ほどで、ROEは15%台になる。配当性向は6割台を保つ。成長は緩やかだが、強みを守る堅実な10年である。大きな失敗がなく、会社が掲げる目標に近い姿といえる。
- 教育事業:数量 31,360(平均在籍生徒数(人))× 価格 53(1人あたり年間売上(万円))→ 売上 166 億円・営業利益 35 億円。生徒数2%減
- 不動産・その他:数量 715(契約・取引の件数(件))× 価格 137(1件あたり売上(万円))→ 売上 10 億円・営業利益 3 億円。件数1割増
倍率:事業の純利益 25 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.0% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.1%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.7 倍。全体の PER 19.72 倍、時価総額 487 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:受験の参加率の上昇と新エリアが、少子化の縮みをほぼ相殺する想定。会社の実績の延長線上にある。
中立 38% 都立の縮みを値上げで補い、利益率は19%台へ 利益 21 億円 · PER 19.4 倍 · 株価時価総額 3,882 円422 億円
都立志望の生徒が減り、私立への参入も限定的な成果にとどまる。千葉・埼玉への出店は進むが、東京の縮みは補いきれず、生徒数は今の9割になる。授業料は物価並みに上がり、売上は名目で160億円近くになる。
営業利益率は19%台に下がる。講師の時給と家賃の上昇を、値上げで吸収しきれないためだ。家賃は年16億円が物価で増え、固定費の重さは変わらない。
営業利益は30億円ほどで、物価の分を除くと今より少し小さい。配当性向は6割台を保つが、利益を残すぶん自己資本が積み上がり、ROEは13%台まで下がる。「質は高いが、市場が縮む」10年になる。
- 教育事業:数量 28,800(平均在籍生徒数(人))× 価格 52(1人あたり年間売上(万円))→ 売上 150 億円・営業利益 29 億円。生徒数1割減
- 不動産・その他:数量 650(契約・取引の件数(件))× 価格 135(1件あたり売上(万円))→ 売上 9 億円・営業利益 2 億円。件数は横ばい
倍率:事業の純利益 21 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.2% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.4 倍。全体の PER 19.42 倍、時価総額 400 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:少子化と私立無償化による生徒数の縮みを、値上げと新エリアで補う、会社の実力どおりの10年。会社が掲げる利益率20%超の目標とも矛盾しない。
やや悲観 22% 制度変更で都立志望が減り、私立でも勝てない 利益 14 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 1,601 円174 億円
私立高校の無償化が定着し、都立を狙う生徒が想定より早く減る。私立中・私立高への参入は、大手の塾に阻まれて成果が出ない。生徒数は今の8割弱に減り、値上げは物価に届かない。
講師の時給と家賃は上がり続け、利益率は15%台に下がる。校舎の閉鎖が相次ぎ、減損損失も出る。
営業利益は20億円まで落ち、配当性向は7割に上がる。それでも配当の金額は減らさず、自己資本は積み上がるので、ROEは10%台に下がる。強みを失いかけた、縮む10年である。人気の校舎に生徒が集まる一方で、周辺の校舎は人が足りず、統合が進む。
- 教育事業:数量 24,960(平均在籍生徒数(人))× 価格 50(1人あたり年間売上(万円))→ 売上 126 億円・営業利益 20 億円。生徒数22%減
- 不動産・その他:数量 585(契約・取引の件数(件))× 価格 131(1件あたり売上(万円))→ 売上 8 億円・営業利益 2 億円。件数1割減
倍率:事業の純利益14億円・事業ROE10.2%。RONICは9.0%、g 4% から正当化PERの上限は14.8倍。減る需要で新しい投資の稼ぎが薄れるため、上限の約75%の11.1倍に置いた。
確率:私立無償化が都立志望を想定より早く減らし、私立への参入が成果を出せない想定。利益率が16%近くまで下がる範囲。
悲観 10% 制度変更と競争で、ブランドの優位を失う 利益 6 億円 · PER 8.4 倍 · 株価時価総額 425 円46 億円
都立を狙う生徒が大きく減り、enaの実績は魅力を失う。私立の大手塾に阻まれて参入に失敗し、生徒数は今の6割に減る。授業料は競争で物価に届かず、AIを使った学習が個別指導の価格を押し下げる。
教室の家賃は年16億円が物価で増え、固定費の重さが利益を削る。校舎の閉鎖が続くが、契約の解除に時間がかかる。講師の引き抜きも進む。
営業利益は6億円まで落ち、利益率は7%まで下がる。配当は利益の8割に絞られ、ROEは5%程度になる。東京の受験で、最大手を追う一塾に戻る10年である。過去の合格実績の評価は残るが、新しく入る生徒の数は戻らない。
- 教育事業:数量 18,560(平均在籍生徒数(人))× 価格 47(1人あたり年間売上(万円))→ 売上 86 億円・営業利益 7 億円。生徒数42%減
- 不動産・その他:数量 455(契約・取引の件数(件))× 価格 121(1件あたり売上(万円))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。件数3割減
倍率:事業の純利益6億円・事業ROE5.1% は k 7.25% を下回り、上限は1÷k=12.9倍。ブランドの優位を失う構造的な負けで、上限の約65%の8.4倍に置いた。稼ぐ力は6億円÷k=約71億円で、時価総額はこれ以下。
確率:私立無償化と少子化で都立志望が大きく減り、私立参入の失敗、AI学習の普及が重なる構造的な負け筋。確率は小さいが、10年では無視できない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
教育事業
進学塾ena(小中学部・高校部・個別・「極」・大学受験・海外)の授業と季節講習・合宿。
| 数量平均在籍生徒数(人) | 価格1人あたり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 32,000 | 39 | 124 | 28 |
| 10 年後 中立 | 28,800 | 52 | 150 | 29 |
取り方:外部顧客への売上は124.1億円・セグメント利益27.5億円(利益率22%)。生徒数と授業料は開示がなく、校舎数と合宿・講習の水準から、平均在籍約3.2万人・年間約39万円と推定した(集団・個別・合宿の平均)。
不動産・その他
賃貸用の住居・事務所、受験情報サイト・広告、人材派遣紹介。
| 数量契約・取引の件数(件) | 価格1件あたり売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 650 | 101 | 7 | 2 |
| 10 年後 中立 | 650 | 135 | 9 | 2 |
取り方:外部売上は不動産0.74億円とその他5.8億円の計約6.5億円。営業利益は全社29.04億円から教育事業の27.47億円を除いた1.57億円(調整額を含む)。件数は推定で年約650件・1件約101万円。
リスクと懸念
私立高校の無償化と都立志望の減少
私立高校の授業料の実質無償化が広がり、都立中・都立高を狙う生徒が減っている。会社自身が減益と生徒数の減少の要因に挙げる。都立という一つの制度に強みが集中するため、制度の変化が直接、数量に響く。
少子化
受験の中心になる世代は、10年で2割ほど減る。東京は他地域より緩やかだが、市場は縮む。千葉・埼玉への出店で補えるかは、物件の確保にも左右される。
私立への参入の失敗
会社は2024年度から私立中・私立高の受験に本格参入した。SAPIX、早稲田アカデミー、四谷大塚、日能研には、実績も教材も校舎網もある。参入が成果を出せなければ、都立の縮みを埋める手が尽きる。
家賃の固定費
年間の賃借料は16億円で、校舎の閉鎖までは払い続ける約束だ。生徒が減っても家賃は減らない。2028年3月期から新しいリース会計の基準が入り、貸借対照表の数字の形も変わる。
講師と教材の流出
塾は参入の壁が低く、講師の引き抜きや教材のまねを受けやすい。講師の多くは時間講師で、定着の難しさが続く。品質が落ちれば、実績にも響く。
利益率の高止まりと生成AI
営業利益率22%は過去最高で、費用の削減や不採算校舎の閉鎖が押し上げた面がある。同じ水準が続く保証はない。生成AIによる学習支援は、長期に個別指導の価格を押し下げる。
今後の分かれ目
- 都立中・都立高の合格者数が2年続けて減り、入塾者も減ったら
- 教育事業の数量を下げ、やや悲観側に確率を寄せる。
- 私立中・私立高の合格実績が、2年続けて大きく伸びたら
- 数量の前提を上げ、楽観・やや楽観の確率を増やす。
- 営業利益率が19%を割ったら
- 利益率の前提を下げ、中立をやや悲観寄りに見直す。
- 千葉・埼玉への出店が軌道に乗り、1校あたりの生徒数が既存校に近づいたら
- 新エリアの効果を中立に織り込み、数量を引き上げる。
- ケイエスケイケイなど大株主によるTOB(株式公開買付け)が提示されたら
- 提示額を10年の価値(中立)と比べ、上回るかを考える。
- 授業料の値上げが生徒数の減少を招き、売上が前年を下回ったら
- 価格の前提を下げ、やや悲観に重みを移す。
見ておくもの
- 都立中・都立トップ高の合格者数と入塾者数
- 私立中・私立高の合格実績
- 営業利益率(19%を割るか)
- 千葉・埼玉の新設校の生徒数
- 校舎の閉鎖・移転と減損
- 配当性向と大株主の動き
倍率と資本コストの決め方
倍率は正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)から置き、ROEが資本コスト k 7.25% を超える中立以上は上限の約85〜90%、やや悲観・悲観は6〜7割台とした。今の時価総額274億円に合わせて逆算してはいない。生徒数と授業料は開示がなく推定で、利益率は過去最高の22%を超えない。新リース会計基準(2028年3月期)で営業利益と純有利子負債の形が変わるが、10年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)にそろえた。同じ領域の早稲田アカデミー(k 7.5%)より都立依存が強く、k を少し高めた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 16.2→20.02 倍・やや楽観 PER 15.1→19.72 倍・中立 PER 14.1→19.42 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に quality を足した(決まり v2)。大株主の影響や制度変更のリスクは k に足さず、筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.75% → 7.25%。