結論
メイテックは、メーカーの設計・開発を担うエンジニアを社員として雇い、顧客の現場へ送り出す会社だ。単価は業界の最上位で、営業利益率は 14% を超える。筆者の結論は、事業の質は高いが、AI エージェントの時代に「人の時間」で売る商売は縮むと見るべきで、割高というものだ。
売上は人数と 1 人あたり単価の積で決まる。人数は採用難で頭打ちだ。そこへ、設計の下書きや解析の準備を AI エージェントが肩代わりする流れが重なる。顧客が外部に頼む時間は減ると筆者は見る。会社は採用を強める計画だが、人数を増やしても、売る時間そのものが減れば同じことだ。単価も、物価ほどは上がらない。
中立の姿は、人数が今の 0.68 倍、単価が 1.30 倍。売上は 10 年で 1 割強減り、利益は 4 分の 3 に細る。手厚い還元と厚い純現金は強みだが、細る利益に払える倍率は低い。10 年の本質価値は今の時価総額を大きく下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、まず問うのは「10 年後もこの事業は強いか」だ。答えは、人に依存するぶん、AI エージェントの時代には弱くなる、である。技術者の質と顧客との信頼は長年の資産だが、売っているのは人の時間だ。時間の価値が下がれば、堀も細る。
オーナー利益、つまり株主が自由に持ち出せる利益は、帳簿の純利益にほぼ等しい。設備も運転資金も小さく、利益の大半を配当に回せる。ここは美しい。ただし、戻しているのは投じる先のない利益で、利益そのものは伸びない。ROE の高さは自己資本を小さく保つ資本政策の結果だ。
安全域は、今の値段にはない。数量が減る事業に、成長する事業の倍率は払えない。わかりにくい未来に確信は持てないので、確率は慎重な側に厚く置いた。経営は還元に誠実で、資本の配分で価値を壊す心配は小さい。心配なのは、事業の土台が先で細ることだ。
何で稼ぐ会社か
事業の中身は技術者の派遣だ。ただし登録型の派遣とは違う。メイテックは、機械設計・電気電子設計・ソフトウェア開発・化学や解析といった専門職を、正社員として雇う。そのうえで顧客のメーカーの開発現場に常駐させ、時間あたりの料金を受け取る。人を育てて貸す、長期の人事サービスに近い。
グループの中心は 2 社。メイテックは、経験のあるエンジニアを高い単価で送り出す。メイテックフィルダーズは、層の厚い領域を受け持つ。2025 年 3 月期の売上は前者が約 920 億円、後者が約 360 億円だった。2015 年の中期計画は、単価をハイエンド・ボリューム・新市場の 3 層に分けて目標を置いていた。
顧客は自動車・電機・半導体・重工などの大手メーカーだ。開発の人手を一時的に増やしたい顧客に、人を貸す。景気の波で顧客が受注を減らすと、外部の人員から先に絞られる。それでもメイテックは、2010 年 3 月期の赤字を最後に、赤字の期がない。
売上の伸びは、人数・稼働率・単価の積で決まる。稼働率は 97〜98% と満席に近く、これ以上は上げにくい。単価は顧客との交渉で毎年少しずつ上がる。人数は、新卒と中途の採用数から退職を引いた分しか増えない。2026 年 3 月末のエンジニア社員は 12,103 名で、前の年から 44 名減った。
つまり成長の鍵は、良い人を採れるかどうかだ。需要はあるのに人が足りない。この制約が、成長率を決める。
優良さと弱いところ
優良さの核は、単価と定着の 2 つだ。2012 年度の時間単価は、メイテックが業界平均の 1.5 倍ほどあった。腕の確かな人を集め、顧客に値上げを受け入れさせる力がある。これは長年の積み重ねで、簡単には崩れない。
人材の面でも、正社員として雇い続ける体質は強みだ。顧客から見れば、一度育った担当者が長く現場にいてくれる。入れ替わる派遣とは質が違う。
資本の使い方は潔い。自己資本は 500 億円足らずで、純現金もほぼ同じ額で動かない。稼いだ利益は配当でほぼ全額戻す。総配分性向は 100% 以内、配当は連結株主資本の 5% を下限とする方針も掲げている。ROE は直近で 30% を超えた。
弱い所も 3 つ挙げる。第 1 に、堀が人に宿る点だ。人が動けば堀も動く。第 2 に、顧客が自社でエンジニアを雇えば、取引は縮む。第 3 に、利益率は近年の最高圏にある。ここから大きく上げる余地は小さい。
2026 年 3 月期の純利益には、前期に減損した不動産の売却益が含まれる。事業の実力を見るなら、その分を引いて考えるべきだ。筆者は、強い堀とまでは言い切れず、普通の堀の上位と見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
技術者派遣は、メーカーの開発投資に連動する業界だ。国内の市場規模は、公表資料によって 1.4 兆円から 2.7 兆円までばらつく。範囲の取り方が違うためで、正確な大きさは断定できない。大手は、メイテックのほかにテクノプロとアウトソーシング系の会社があり、上位の少数が人を取り合う構図だ。
需要は底堅い。自動車の電動化、半導体の設計、ソフトウェアで差をつける製品づくりなど、開発の仕事そのものは増えている。メーカーは自社で人を増やしきれず、外部の技術者に頼る。ここが追い風だ。
供給は細る。若い人口は減り、理系の人材は IT や外資系にも流れる。メイテックの採用も人員の純増に届かない。業界全体で、人が足りないことが成長の上限になる。この結果、単価の交渉力は上がりやすい。人が希少だからだ。
生成 AI は両刃だ。設計の下書きや解析の準備を AI が代行すれば、1 人の担当者が使う時間は減る。顧客は外部の人数を減らすかもしれない。逆に、AI を使いこなせるエンジニアは単価が上がる。どちらに傾くかで、10 年先の業界の姿が変わる。
景気の面では、メーカーの設計投資が冷えると稼働時間が落ちる。2026 年 9 月の予想修正でも、稼働時間が想定を下回ったことが売上未達の主因だった。人数が横ばいなので、稼働時間の揺れがそのまま利益の揺れになる。
AI エージェントとの関係では、技術者派遣は「人月で売る型」に当たる。設計の下書き、解析の準備、試験の自動化は AI エージェントが得意な仕事で、顧客は外部に頼む時間を減らせる。数量は 10 年で今の 0.68 倍を中立とし、物価の 1.34 倍まで上がる価格も、AI の値下げ圧力で届かない。売上の全部がこの型に当たる。
資本政策と M&A
配分の方針は明快だ。確かめられた範囲では、総配分性向 100% 以内、配当は連結株主資本の 5% を下限、PBR が 3 倍を下回れば自社株買いも検討する、という内容だ。保有できる自己株式は発行済み株式の 5% までとしている。
2026 年 3 月期の配当の総額は約 150 億円で、純利益とほぼ同じだった。利益を出し切る形が定着している。
新しい中期計画は 2026 年 5 月に出た。2028 年度の目標は、売上 1,600 億円、営業利益 230 億円、純利益 170 億円、ROE 30% 超だ。ただし人数の目標や戦略の中身は、確かめられなかった。前の計画では 2026 年 3 月末に 14,200 名を掲げながら、実績は 12,103 名にとどまった。目標の置き方には慎重に向き合うべきだ。
9 月には、本店所在地の研修施設の利用停止に伴う約 30 億円の減損が出た。過去の投資が重荷になった形だが、金額は小さい。大型の買収は、確かめた範囲では見えない。人を増やすために同業を買う手はありうるが、組織の文化が違う会社を混ぜる失敗も起こりやすい。筆者は、今の方針を貫くほうが価値を守ると見る。
10 年の還元は、総配分性向 100% 以内・配当は連結株主資本の 5% を下限とする方針の範囲で、純利益の合計の 9 割ほど。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
人が足りない時代は、人を持つ会社が勝つ。メーカーは開発を増やしたいのに自社で採りきれず、外部の技術者への依存を強めている。メイテックは業界最上位の単価を取れる数少ない会社で、希少な人材の値段は物価以上に上がる。
AI は、技術者の仕事を奪うより、使える人の価値を高める。AI を設計に組み込める人材は、時間あたりの料金を上積みできる。メイテックは長く人を育ててきたため、AI を使いこなす研修にも投資でき、顧客に選ばれ続ける。
採用は一時の不調にすぎない。賃金を上げ、中途の採用を強めれば、人数は再び増える。利益率は、稼働率が満席に近いなか、単価の上昇で 15% 台に乗る。
資本政策も強みだ。投資の要らない事業で、利益のほぼ全額を戻す。自己資本が小さいため ROE は 30% を超え、中期計画の目標も ROE 30% 超だ。新しい計画の 2028 年度の売上 1,600 億円、利益 170 億円は、いまの勢いの延長で届く。この安定した配当は、10 年の間に積み上がり、時価総額を超える還元になる。
AI エージェントを使いこなす技術者は、少ない人数で多くの設計を回せる。メイテックは単価の高い人材を握っているので、時間でなく成果で値段が付く契約へ移れば、人数が減っても売上は守れる。
慎重な見方
成長の足かせは、需要でなく人の数だ。エンジニア社員は 2 期続けて減り、前の計画の 14,200 名の目標は大きく外れた。新しい計画の売上 1,600 億円は、今から 16% の増収だ。人数がほぼ増えないなら単価の上昇だけに頼ることになり、無理が見える。
稼働率は満席に近く、上げ余地がない。稼働時間は今回も想定を下回った。人数が横ばいだと、稼働時間のわずかな落ち込みがそのまま利益を削る。9 月の下方修正が、その実例だ。
AI の影響は読み切れない。設計の下書き、図面の確認、試験の準備は、AI が最初に肩代わりしやすい。顧客が外部のエンジニアの時間を減らせば、人数と単価の両方が圧力を受ける。顧客が自社で AI 人材を雇う流れも強まる。
利益率は近年の最高圏にある。ここから上げるより、賃金の上昇に単価が追いつかない局面のほうが現実的だ。ROE の高さは、利益を全額戻して自己資本を小さく保った結果で、成長の保証ではない。PBR 5 倍の値段は、この前提が長く続くことを求めている。
売っているのは人の時間であり、AI エージェントが最初に置き換えるのは、まさに設計の下書きや解析の準備のような時間のかかる定型作業だ。人数も単価も同時に下がると、固定費の重さが利益を削る。
どちらに重みを置いたか
事業の質では強気の見方が上だが、AI エージェントの時代に人月で売る型が縮む点では、慎重な見方が上だ。成果売りへ移れた証拠が無いので、数量は中立で今の 0.65 倍、楽観でも今を超えないと置いた。やや悲観と悲観を合わせて 40% とした。中立が既に縮む筋書きなので、確率でまで重ねては引いていない。中立は 35%。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,959 円1,513 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,457 円1,125 億円)。 今の値に割り戻すと 2,071 円1,599 億円、今との差 −39.5%、 期待の年率 0.0%(資本コスト 6.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 3,604 円2,783 億円 | 1,907 円1,473 億円 | +61.2% | +4.9% | 386 円298 億円 |
| やや楽観 | 18% | 3,077 円2,376 億円 | 1,767 円1,364 億円 | +41.6% | +3.5% | 872 円673 億円 |
| 中立 | 35% | 2,274 円1,755 億円 | 1,530 円1,181 億円 | +11.2% | +1.1% | 1,331 円1,028 億円 |
| やや悲観 | 26% | 1,178 円910 億円 | 1,282 円990 億円 | −28.1% | −3.2% | 640 円494 億円 |
| 悲観 | 14% | 363 円280 億円 | 977 円754 億円 | −60.8% | −8.9% | 188 円145 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,959 円1,513 億円 | 1,457 円1,125 億円 | −0.1% | 0.0% | 3,416 円2,637 億円 |
今の株価時価総額 3,420 円2,640 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 6.8% を下回るほど割高。
楽観 7% エージェントを使いこなす側に残る 利益 184 億円 · PER 14.8 倍 · 株価時価総額 3,604 円2,783 億円
AI エージェントが設計を広く肩代わりしても、メイテックの技術者は AI を使いこなす側に回る。顧客は人数を急には減らさず、人数は今の 0.95 倍にとどまる。単価は物価並みの 1.34 倍まで上がる。数量が今を超えないのは、AI エージェントを自社の売り物にして売上や受注が出ている開示が無いからだ。10 年後の売上は 1,756 億円(今の 1.28 倍)、純利益は 184 億円。楽観でも、利益は今よりわずかに増えるだけだ。人を増やせない会社が、人の時間の価値で勝つ時代は終わりに近づく。 内訳はエンジニアリングソリューション(売上 1,756 億円・数量 0.95 倍・価格 1.35 倍)。 営業利益は 260 億円(利益率 14.8%)、10 年の還元は計 1,472 億円、時価総額は 2,730 億円になる。
- エンジニアリングソリューション(技術者派遣):数量 1.1(エンジニア社員数(万人))× 価格 1,536(エンジニア 1 人あたり年間売上(万円・名目))→ 売上 1,756 億円・営業利益 260 億円。人月・工数で売るの型。数量 0.95 倍・価格 1.35 倍・利益率 14.8%(AI エージェント代替で置き直し)
倍率:事業の純利益 184 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 29.5% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 18.1%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.8 倍。全体の PER 14.81 倍、時価総額 2,730 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AI エージェントを売り物にして受注が出た開示は無い。楽観でも数量は今を超えないと置き、確率は 7%。
やや楽観 18% 人数は減るが難しい設計は残る 利益 155 億円 · PER 14.8 倍 · 株価時価総額 3,077 円2,376 億円
人数は今の 0.84 倍まで減り、設計の下請けの一部は AI エージェントに移る。それでも解析や試作の立ち会いなど、人が責任を負う仕事は残る。単価は 1.33 倍、利益率は今より少し下がる。AI エージェントの導入は進むが、顧客の側にも使いこなす人材が足りず、移る速さは緩やかだ。10 年後の売上は 1,532 億円(今の 1.11 倍)、純利益は 155 億円。還元は続き、純現金は積み上がらない。AI エージェントの進み方が緩やかなら、この筋書きが現実に近い。 内訳はエンジニアリングソリューション(売上 1,532 億円・数量 0.84 倍・価格 1.32 倍)。 営業利益は 218 億円(利益率 14.2%)、10 年の還元は計 1,364 億円、時価総額は 2,291 億円になる。
- エンジニアリングソリューション(技術者派遣):数量 1.0(エンジニア社員数(万人))× 価格 1,507(エンジニア 1 人あたり年間売上(万円・名目))→ 売上 1,533 億円・営業利益 218 億円。人月・工数で売るの型。数量 0.84 倍・価格 1.32 倍・利益率 14.2%(AI エージェント代替で置き直し)
倍率:事業の純利益 155 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 28.2% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 17.5%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.8 倍。全体の PER 14.81 倍、時価総額 2,291 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:難しい設計や立ち会いの仕事が残る筋書き。人月で売る型の見直しで、やや楽観は 18%。
中立 35% 売上が 2 割弱減り、利益は 3 分の 2 利益 112 億円 · PER 14.8 倍 · 株価時価総額 2,274 円1,755 億円
採用難で人数は増えず、定型の設計や解析は AI エージェントが肩代わりする。人数は今の 0.68 倍、単価は 1.30 倍。固定費の研修施設は残るので、利益率は今の 14% から 13% ほどに下がる。10 年後の売上は 1,222 億円(今の 0.89 倍)、純利益は 112 億円。配当は利益に連れて減る。式で置くと、倍率は低くなる。人数が減る事業は、利益が伸びる前提の高い倍率を支えられないからだ。 内訳はエンジニアリングソリューション(売上 1,222 億円・数量 0.68 倍・価格 1.30 倍)。 営業利益は 158 億円(利益率 12.9%)、10 年の還元は計 1,181 億円、時価総額は 1,653 億円になる。
- エンジニアリングソリューション(技術者派遣):数量 0.8(エンジニア社員数(万人))× 価格 1,479(エンジニア 1 人あたり年間売上(万円・名目))→ 売上 1,222 億円・営業利益 158 億円。人月・工数で売るの型。数量 0.68 倍・価格 1.30 倍・利益率 12.9%(AI エージェント代替で置き直し)
倍率:事業の純利益 112 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 22.5% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.6%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.8 倍。全体の PER 14.81 倍、時価総額 1,653 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:採用難と AI エージェントの肩代わりが重なる筋書きを中立とし 35%。
やや悲観 26% 定型の設計が顧客に内製される 利益 65 億円 · PER 13.2 倍 · 株価時価総額 1,178 円910 億円
大手メーカーが定型の設計を AI エージェントで内製し、外部に出す時間を 4 割減らす。人数は今の 0.58 倍。値下げの交渉も強まり、単価は 1.17 倍にとどまる。固定費が重く、利益率は 10% 弱に落ちる。10 年後の売上は 930 億円(今の 0.68 倍)、純利益は 65 億円。還元も細る。AI エージェントの導入が顧客側で先に進めば、この筋書きに入る。生成 AI の進みは速く、顧客の内製化はまず定型の設計から始まると筆者は見る。 内訳はエンジニアリングソリューション(売上 930 億円・数量 0.58 倍・価格 1.17 倍)。 営業利益は 92 億円(利益率 9.9%)、10 年の還元は計 990 億円、時価総額は 856 億円になる。
- エンジニアリングソリューション(技術者派遣):数量 0.7(エンジニア社員数(万人))× 価格 1,331(エンジニア 1 人あたり年間売上(万円・名目))→ 売上 930 億円・営業利益 92 億円。人月・工数で売るの型。数量 0.58 倍・価格 1.17 倍・利益率 9.9%(AI エージェント代替で置き直し)
倍率:正当化 PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)。事業の ROE 11.3%・k 6.75%・RONIC 9.9%(残る割合 0.50)、名目 g +0.0%(設計開発の工数売りで、エージェントが置き換える型)で 13.17 倍
確率:大手が定型設計を内製する筋書き。人月で売る型は縮む方に重く見て 26%。
悲観 14% 工数売りが成り立たなくなる 利益 18 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 363 円280 億円
設計や解析の大半をエージェントが処理し、技術者を送って時間で稼ぐ売り方が成り立たなくなる。人数は今の 0.47 倍、単価は 1.02 倍。売上は 10 年で半分以下の 664 億円、純利益は 18 億円まで細る。研修施設や拠点の減損も出る。値は稼ぐ力でなく、純現金と売れる資産の床で測る。起きる確からしさは低いが、人月で売る型では外れる幅が広い。顧客が自社でエージェントを動かせば、外部の技術者に頼む理由そのものが薄れる。 内訳はエンジニアリングソリューション(売上 664 億円・数量 0.47 倍・価格 1.02 倍)。 営業利益は 25 億円(利益率 3.8%)、10 年の還元は計 754 億円、時価総額は 280 億円になる。
- エンジニアリングソリューション(技術者派遣):数量 0.6(エンジニア社員数(万人))× 価格 1,160(エンジニア 1 人あたり年間売上(万円・名目))→ 売上 664 億円・営業利益 25 億円。人月・工数で売るの型。数量 0.47 倍・価格 1.02 倍・利益率 3.8%(AI エージェント代替で置き直し)
倍率:悲観の床は稼ぐ力でなく、純現金と売れる資産の税後(floor_assets_oku 280 億円)を今の自己資本 488 億円で割った 0.57 倍。
確率:工数売りそのものが成り立たない筋書き。人月型は大きく外れる幅が広いので 14%。やや悲観と合わせて 40%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
エンジニアリングソリューション(技術者派遣)
設計開発職を正社員として雇い、大手メーカーの開発現場へ送り出して時間料金を得る。メイテックとメイテックフィルダーズが中核。
| 数量エンジニア社員数(万人) | 価格エンジニア 1 人あたり年間売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.2 | 1,138 | 1,377 | 199 |
| 10 年後 中立 | 0.8 | 1,479 | 1,222 | 158 |
取り方:2026 年 3 月末のエンジニア社員 12,103 名(前年から 44 名減)で、売上 1,376.9 億円を割った。1 人あたり約 1,138 万円。稼働率と時間単価と労働時間の積で、その他の事業の小さな売上も含む。MT と MF の利益の内訳は開示を確かめられず、1 つにまとめた。人数は実質の量、1 人あたり売上は名目で物価に連れて上がる。【AI エージェント代替】全部が人月で売る型。10 年の数量は中立で今の 0.68 倍(楽観 0.95、悲観 0.47)、価格は 1.30 倍(物価 1.34 倍に届かない)。単価の実績が業界最上位で定着も高いので、人月型の中では緩めに置いた。
リスクと懸念
AI エージェント代替で工数の売り上げが縮む
売っているのは技術者の時間だ。設計の下書き、解析の準備、試験の自動化を AI エージェントが担えば、顧客が外部に頼む時間は減る。人数は今の 0.68 倍、単価は物価ほど上がらないと中立で置いた。成果報酬に移れた証拠は無く、価格は物価の 1.34 倍に届かない。AI エージェントを自社の商品にして売上が出た開示もまだ無い。
採用難が人数の天井になる
エンジニア社員は 2 期続けて減った。若い理系人口の減少と IT・外資への流出で、採用は退職を補うのがやっとだ。人数が増えなければ売上は単価の上昇だけに頼ることになり、新しい中期計画の達成も難しくなる。前の計画の人数目標は大きく外れた。
生成 AI による設計業務の肩代わり
設計の下書き・図面の確認・試験の準備は AI が先に取り込みやすい。顧客が外部のエンジニアの時間を絞れば、人数と単価の両方に圧力がかかる。AI を使いこなす人材の単価が上がる効果もあるが、どちらが勝つかは読み切れない。
稼働時間の揺れが利益を直撃する
人数が横ばいで稼働率が満席に近いため、顧客の開発投資が冷えて稼働時間が落ちると、そのまま利益が減る。2026 年 9 月の予想修正でも、稼働時間が想定を下回ったことが売上未達の主因だった。固定費である人件費は動かせない。
顧客の自社採用・内製化
大手メーカーが待遇を上げて自社でエンジニアを雇えば、外部への依頼は減る。開発の中核を内側に取り込む流れが強まると、特に経験の浅い層の派遣は減りやすい。顧客の数が多くても、上位の少数の顧客の動きで稼働が変わる。
利益率が近年の最高圏にある
営業利益率は 14% 台と、ここ 10 年の最高圏にある。賃金の上昇に単価の値上げが追いつかない局面では、利益率が先に落ちる。採用のために賃金を上げれば、その分も利益率を押し下げる。
計画と実績のずれ
前の中期計画の人数目標 14,200 名に対し、実績は 12,103 名だった。新しい計画の 2028 年度の目標(売上 1,600 億円・純利益 170 億円)も、人数が伸びない限り届きにくい。計画に頼って先を読むと、期待が外れた時の落胆が大きい。
今後の分かれ目
- AI エージェントを組み込んだ設計サービスで、金額の開示を伴う受注が出る
- 工数売りから成果売りへ移れた証拠になり、価格の置き方を物価並みに戻せる。やや楽観に近づく。
- エンジニア社員が 2 年連続で 3% 以上増える
- 人数の壁が崩れ、売上が物価を超えて伸びる。10 年の見通しは中立よりやや楽観に近づく。
- 顧客が外部のエンジニアの時間を削る動きが複数の業種で広がる
- 稼働時間の低下が続き、やや悲観・悲観の筋書きが現実に近づく。
- AI を使いこなせる人材向けの高単価の契約が目に見えて増える
- 単価が賃金を上回って伸び、楽観・やや楽観の筋書きに近づく。
- 大手メーカーが自社でエンジニアを大量に採る方針を打ち出す
- 外部委託の量が減り、人数と単価の両方に圧力がかかる。悲観の筋書きが濃くなる。
- 同業の買収や、採用を補うための大型 M&A が出る
- 人数は増えるが、文化の違う会社を混ぜるリスクと、買収の値段で価値を損なう可能性が出る。
見ておくもの
- エンジニア社員数(MT・MF の合計)と新卒・中途の採用数
- 月次の稼働率と稼働時間の前年比
- 単価(時間あたり料金)の更改の状況
- 2027 年 3 月期の通期予想と期末配当(10 月 29 日の決算)
- 顧客の主要業種(自動車・半導体・電機)の開発投資の動向
倍率と資本コストの決め方
今の株価や過去・同業の倍率は見ずに、型ごとの数量・価格・利益率から 10 年後の利益を積み、倍率は式(正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g))で置いた。k は 7.5% に quality +1.00% を足した 8.50%、名目 g は人月・席の型で 0% 以下(設計開発の工数売りで、エージェントが置き換える型)。自己資本は今の 488 億円に期間の純利益を足して還元を引いて流した。悲観の床は純現金と売れる資産で測り、稼ぐ力は使わない。リースの会計は新基準で 2028/03 期から BS に載るが、10 年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に含める形)にそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.76→14.81 倍・やや楽観 PER 11.76→14.81 倍・中立 PER 11.76→14.81 倍・やや悲観 PER 11.76→13.17 倍)。
資本コスト 6.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。