結論
日本ケアサプライは、介護保険で借りられる介護ベッドや車いすを、地域の貸与事業者に貸し出す「レンタル卸」の草分けだ。筆者の結論は割高である。事業は堅いが、今の値段はその堅さを倍近く先取りしている。
稼ぎの源は、返ってきた用具を洗い、直し、また貸す循環にある。取引先は全国の貸与事業者の約半数で、売上は 10 年連続で過去最高を更新した。需要は高齢化が支える。一方で値段は国が決める介護の公定価格に縛られ、物価ほどは上がらない。
10 年後の中立は、売上が 580 億円ほど、純利益が 39 億円ほどだ。年 5% 台の成長で、会社の長期目標(純利益の年率 5%)とほぼ重なる。営業利益率は 9% 前後と、卸としては標準的な水準にとどまる。
今の時価総額は純利益の約 30 倍に当たる。需要が確実でも、成長が 5% 台で利益率が薄い会社に、30 倍を払う理由は見当たらない。筆者は 14 倍前後が妥当と考える。確率で重ねた 10 年の本質価値は今の値段を 4 割以上下回る。
唯一、見方を変えうるのが株主構成だ。三菱商事とALSOKで議決権の約 7 割を持つ。完全子会社化の話が出れば、市場の値付けとは別の力学が働く。ただし、その確率に頼って払う値段ではない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の目で見て、この会社の本質は「公共の予算に守られた、運び屋の商売」だ。需要は読みやすく、資本は重くない。ただし儲けの上限は公が握っている。
オーナーとして持ち続けたいかを問うなら、答えは「適正な値段なら持つ」だ。需要が 20 年以上伸び、借り入れは要らず、配当は累進という性格は、守りの資産として魅力がある。だが利益率は 9% 前後で、強い堀はない。価格を決める権利を持たない会社に、高い倍率は払えない。
再投資の質は悪くない。用具の買い足しと償却が釣り合い、利益に織り込み済みだ。ただし、ROE は資本コストを数ポイント上回る程度で、成長にお金を入れても大きな上振れは期待できない。経営は M&A を口にするが、実績はまだ乏しい。
最後に安全域だ。今の値段は純利益の約 30 倍で、10 年後の中立を割り引いた価値のほぼ倍に当たる。事業が堅いことは認める。だが、堅さへの評価はすでに値段に入っている。割安な値段に戻らない限り、筆者は手を出さない。
もし買うなら、現在の半分以下の時価総額が目安になる。三菱商事とALSOKが完全子会社化に動くなら、その時点の価格は別に考える。
何で稼ぐ会社か
事業の中心は福祉用具サービスで、売上の 86% を占める。メーカーから介護ベッド・車いす・手すりなどを買い、貸与事業者にレンタルする。使い終わった用具は営業拠点で洗浄・消毒・点検・修理し、再び貸し出す。1 つの用具で何度も稼ぐ循環型の商売だ。
介護保険で借りられる福祉用具は 13 種目で、買う種目が 6 種目ある。貸与事業者は在宅の利用者とケアマネジャーに近いが、在庫を抱える体力は小さい。そこで卸が資産を持ち、事業者は借りて回す。当社は 99 の拠点と電子受発注の仕組み(e-KaigoNet)で、全国の事業者の約半数と取引する。
残りの 14% は高齢者生活支援サービスだ。介護施設向けの冷凍弁当「バランス弁当」、事業者向けの通販サイト、子会社による訪問看護とデイサービスなどからなる。福祉用具で築いた事業者との関係を、別の売り物に広げる役割を持つ。
2026 年 3 月期の売上は 349 億円、営業利益は 31 億円。営業利益率は 8.9% だ。レンタル用具の減価償却が年 70 億円を超え、用具の買い増しも毎年 60 億円台に上る。利益から償却がすでに引かれているため、用具を更新する投資は利益に織り込み済みである。
店舗型ではなく拠点型の商売だが、拠点と倉庫は借りて使う。家賃は売上が落ちても減らない固定の約束だ。自己資本比率 67% の堅さは見かけどおりだが、悲観の局面では固定費が利益率を押し下げる。
優良さと弱いところ
優良さを一言でいえば、「安定しているが、儲けの大きさは公定価格で頭打ちになる会社」だ。
強みは 3 つある。1 つ目は規模で、取引先が全国の約半数に及ぶ。2 つ目はレンタル資産の償却が進んだことだ。新品の用具を買い足す割合が下がり、利益が出やすくなっている。3 つ目は三菱商事とALSOKという安定株主で、借り入れも要らない。
弱みの核心は価格だ。貸与価格は国が全国平均を公表し、平均+1 標準偏差を上限とする。上限は 3 年ごとに見直され、高い値付けは削られる仕組みである。卸は貸与事業者に売るだけに、価格を自分で決められない。
競合の存在も効く。矢野経済研究所の報告では、卸は自社で資産を持つ事業者にも食い込む一方、自前の在庫と卸の在庫を使い分けられる側でもある。事業者が必要な時だけ借りる関係は、当社のスイッチングコストが低いことを意味する。
資本効率は悪くない。ROE は過去 10 年の中央値が 10.9%、直近は 12.1% だ。ただし資本コストを大きく超える水準ではなく、堀、つまり他社がまねできない強みと呼べるほどの差はない。筆者はこの会社を、堅実だが特別ではないと評価する。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
需要の背骨は高齢化だ。65 歳以上の人口は 2043 年ごろの約 3,900 万人でピークを迎える。要介護の認定者は約 700 万人で、福祉用具の貸与を受けている人は約 290 万人にのぼる。福祉用具貸与の費用は、2025 年 8 月の 1 か月で約 390 億円、年に直すと 4,700 億円規模である。
このうち国が負担する部分は介護保険から出る。介護保険の総費用は制度開始の約 3 倍になり、2040 年には 27 兆円台へ増えると見込まれる。福祉用具は 1 人あたりの費用が小さく、在宅を支えるうえで効率が高い。国は費用を抑えたいが、使う人が増える分は止まらない。
制度の動きは強い逆風にもなる。2018 年から価格の上限が導入され、2024 年 4 月にはスロープ・歩行器・歩行補助杖の一部でレンタルと購入の選択制が始まった。対象種目が広がれば、レンタル品の需要が購入へ流れる。2026 年度には介護報酬を 2.03% 引き上げる臨時改定が予定されているが、人件費や物流費の上昇を吸収する水準ではない。
競争は、自前で用具を持つ大手と、卸が混ざる構図だ。ベッドを製造するフランスベッドのように自社で貸す会社もあれば、資産を持たない小規模事業者も多い。後者が当社の主な顧客で、事業者数は少子化で減る。大手の事業者が増えれば、自社で在庫を持つ動きが強まる点は注意が要る。
10 年の構図は「数量は高齢化でゆるやかに増え、価格は公定で物価に届かない」だ。数量は市場全体で 2 割増を見込む。価格は 10 年で 1.25 倍と、物価の 1.34 倍に届かないと置く。
資本政策と M&A
資本政策は堅い。自己資本比率は 67%、借入金は小さく、純有利子負債はほぼゼロである。配当は累進配当を基本とし、株主資本配当率(DOE)6% を下限にする。2026 年 3 月期の配当は、純利益のおよそ半分を戻す計算だ。
長期ビジョン(けあさぷ Vision2040、2025 年 2 月公表)は、2030 年度までオーガニックの売上成長を年 6% 以上、純利益の成長を年 5% とする。M&A にも積極的で、業界の水平統合と高齢者支援サービスの基盤づくりを挙げる。借り入れを使って資本効率を高める方針も示す。
最大の論点は株主構成だ。三菱商事が議決権の約 39%、ALSOKが約 31% を持つ。2020 年 12 月に両社と資本業務提携を結び、ALSOKの拠点網を介護施設向けの販売に使い始めた。流通する株は約 3 割にとどまる。
完全子会社化や、どちらかの持ち株の入れ替えは現実の選択肢だ。ただ、いつ・どんな値段かは分からない。筆者は、その期待を本質価値に織り込まない。買収が起これば上振れ要因だが、それを前提に今の値段を正当化する立場にはならない。
M&A の実績は目立たない。買収で価値を壊した過去もないが、積み上げてきた経験も薄い。借り入れを増やして買収に動くなら、買う値段の規律が最も大事になる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
介護の需要は、景気に関係なく毎年増える。要介護の人は約 700 万人で、福祉用具の利用は 290 万人にのぼる。65 歳以上の人口は 2043 年まで増え、75 歳以上は 2050 年代まで増える。数量の追い風は 15 年以上続く。
当社は、この市場の伸びを上回って成長してきた。取引先は全国の約半数だが、残りの半数は伸びしろだ。電子受発注と全国 99 拠点の物流は、小さな事業者にとって自前で作れない強みになる。ベッドと車いすの償却が進み、新品を買い足す割合が下がるぶん、利益率は上がる余地がある。
ALSOKの拠点網と三菱商事の調達力は、施設向けの販売と M&A の両方で効く。会社は 2030 年度までオーガニック成長を年 6% 以上、さらに M&A を加えると明言する。買収が 1〜2 件でも決まれば、売上は 10 年で 1.9 倍になる。
累進配当と DOE 6% の下限は、株主にとって守りの安心材料だ。借り入れを使った資本効率の改善にも前向きで、ROE は 13% 台まで上がりうる。国が福祉用具の費用を抑えたくても、在宅介護の主力として頼らざるを得ない構造は変わらない。
慎重な見方
需要が確実なことと、利益が増えることは別の話だ。福祉用具の価格は、国が全国平均+1 標準偏差を上限に決める。3 年ごとの見直しで、高い値付けは削られる。2026 年度の報酬引き上げは、人件費や物流費の上昇を吸収するほどではない。
もっと大きな逆風は、レンタルから購入への選択制だ。2024 年 4 月に 3 種目で始まり、対象が広がるほど、用具を長く貸して稼ぐ当社の仕組みは侵食される。購入が増えれば、洗浄・再貸与で積み上げた拠点網の価値も下がる。
競争も強まる。自社で用具を持つ大手の貸与事業者が増えれば、卸に頼らなくなる。小規模な事業者は、人手不足と後継者難で減っていく。当社の顧客基盤そのものが縮む可能性がある。
さらに今の値段が問題だ。純利益の約 30 倍は、年 5% 成長の薄利の卸に払う値段ではない。三菱商事とALSOKが約 7 割を持つ構造は、流通する株が少ないぶん、値段が実力以上に膨らみやすい。会社自身が掲げる純利益の成長目標は年 5% で、30 倍の根拠にはならない。
どちらに重みを置いたか
需要の確実さは本物で、強気の見方の土台は固い。ただ、その確実さは「公の予算が上限を決める」ことと表裏で、利益率と価格の上振れ余地は小さい。慎重な見方は価格と制度の面で強く、強気の見方は数量の面で強い。
確率は中立を 38% に置き、やや悲観を 24% と厚めにした。需要が安定している点は悲観の深さを浅くする一方、価格が物価に届かない点は、やや悲観の確率を引き上げる。楽観は M&A と利益率の上振れが重なる場合に限り、7% にとどめた。最悪の場合でも、拠点と資産の価値が残るため、悲観の確率は 9% にした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,976 円618 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 929 円144 億円)。 今の値に割り戻すと 2,629 円409 億円、今との差 −40.0%、 期待の年率 +1.1%(資本コスト 7.2%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 7,393 円1,149 億円 | 1,223 円190 億円 | +96.7% | +7.0% | 603 円94 億円 |
| やや楽観 | 22% | 5,825 円905 億円 | 1,062 円165 億円 | +57.2% | +4.6% | 1,515 円235 億円 |
| 中立 | 38% | 4,545 円706 億円 | 965 円150 億円 | +25.8% | +2.3% | 2,094 円325 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,628 円253 億円 | 772 円120 億円 | −45.2% | −5.8% | 576 円90 億円 |
| 悲観 | 9% | 658 円102 億円 | 643 円100 億円 | −70.3% | −11.4% | 117 円18 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,976 円618 億円 | 929 円144 億円 | +12.0% | +1.1% | 4,905 円762 億円 |
今の株価時価総額 4,380 円681 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 7% シェアが 17% へ伸び、M&A も加わって利益率が上がる 10 年 利益 61 億円 · PER 19.0 倍 · 株価時価総額 7,393 円1,149 億円
介護の需要は高齢化で着実に増え、福祉用具の市場は実質で 25% 広がる。当社は電子受発注と全国の拠点網で小規模な事業者の取り込みを続け、シェアが 13% から 17% へ上がる。ALSOKの拠点網を使った施設向け販売も軌道に乗る。
用具の償却が進み、新品を買い足す割合が下がるため、利益率は 11% 台まで上がる。公定価格も 2026 年度の引き上げを皮切りに、物価に近い伸びを保つ。生活支援サービスは、買収した事業者を加えて売上が 2 倍以上になる。
配当は DOE 6% の下限を超え、累進配当で増え続ける。筆者から見ても、これが成り立つのは、制度の風向きが穏やかで、買収が 1〜2 件うまくいった場合に限る。
- 福祉用具サービス(レンタル卸・販売卸):数量 61.6(当社経由で用具を使う利用者(万人))× 価格 11(1 人あたり年間の卸売上(万円))→ 売上 659 億円・営業利益 76 億円。利用者 61.6 万人(市場 1.25 倍 × シェア 17%)× 10.7 万円(物価並みに近い 1.34 倍)。
- 高齢者生活支援サービス(食事・EC・訪問看護等):数量 7.0(取引先の事業者・施設(千先))× 価格 168(1 先あたり年間売上(万円))→ 売上 118 億円・営業利益 7 億円。取引先 7 千先 × 168 万円。M&A を加え 2 倍以上に。
倍率:事業の純利益 61 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.0% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.1%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.0 倍。全体の PER 18.96 倍、時価総額 1,149 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利益率の上振れと M&A の成功、シェア拡大が同時に必要で、価格も物価並みに上がらねばならない。重なる確率は低いが、需要の底堅さと拠点網の強さから 5% は超える。
やや楽観 22% シェアが 15.8% まで上がり、利益率が 10% 台後半に近づく 10 年 利益 49 億円 · PER 18.2 倍 · 株価時価総額 5,825 円905 億円
需要は実質で 22% 増える。当社はこれまでどおり市場より速く伸び、シェアは 13% から 15.8% に上がる。貸与価格は公定の上限に縛られながらも、報酬改定のたびに少しずつ上がり、10 年で 1.3 倍に届く。
利益率は償却が進む効果で 10% 台に乗る。生活支援サービスでは、施設向けの弁当と家具の販売が伸びる。M&A は小粒なものが 1〜2 件にとどまる。
配当は累進配当で緩やかに増える。ROE は 13% 前後で、堅実に回る会社のまま 10 年が過ぎる。
会社の見立てどおりに進んだ場合の姿で、特別な幸運は要らない。ただし、貸与価格の見直しが穏やかなことと、選択制の対象が今の範囲にとどまることが前提になる。この 2 つが崩れれば、中立に落ちる。
- 福祉用具サービス(レンタル卸・販売卸):数量 55.7(当社経由で用具を使う利用者(万人))× 価格 10(1 人あたり年間の卸売上(万円))→ 売上 579 億円・営業利益 63 億円。利用者 55.7 万人(市場 1.22 倍 × シェア 15.8%)× 10.4 万円(1.3 倍)。
- 高齢者生活支援サービス(食事・EC・訪問看護等):数量 6.0(取引先の事業者・施設(千先))× 価格 164(1 先あたり年間売上(万円))→ 売上 98 億円・営業利益 5 億円。取引先 6 千先 × 164 万円。
倍率:事業の純利益 49 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.5% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.4%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.2 倍。全体の PER 18.23 倍、時価総額 899 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の長期目標(オーガニック成長 6% 以上、純利益の年率 5%)にほぼ沿う筋書き。直近 10 年の実績が市場の伸びを上回ってきたため、重みを置く。
中立 38% シェアが 14.5% に伸び、年 5% 台で堅実に伸びる 10 年 利益 39 億円 · PER 17.6 倍 · 株価時価総額 4,545 円706 億円
市場は高齢化で実質 2 割広がる。当社のシェアは 13% から 14.5% へ緩やかに上がる。貸与価格は国の上限制度で、10 年で 1.25 倍にとどまる。物価の 1.34 倍に届かない分が、人件費と物流費の上昇を吸収しきれず、利益率は 9% 台のまま動かない。
売上は約 580 億円、営業利益は約 54 億円、純利益は約 39 億円になる。年率 5% 台の成長で、会社の長期目標とほぼ重なる。配当は DOE 6% の下限どおり、純利益の 4〜5 割を戻す。
ALSOKとの協業や M&A は、売上を数%押し上げるが、利益を大きく動かさない。三菱商事とALSOKの持ち分も、10 年後まで変わらない。
- 福祉用具サービス(レンタル卸・販売卸):数量 50.0(当社経由で用具を使う利用者(万人))× 価格 10(1 人あたり年間の卸売上(万円))→ 売上 500 億円・営業利益 50 億円。利用者 50.0 万人(市場 1.2 倍 × シェア 14.5%)× 10.0 万円(1.25 倍)。
- 高齢者生活支援サービス(食事・EC・訪問看護等):数量 5.2(取引先の事業者・施設(千先))× 価格 160(1 先あたり年間売上(万円))→ 売上 83 億円・営業利益 4 億円。取引先 5.2 千先 × 160 万円。
倍率:事業の純利益 39 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.3% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.8%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.6 倍。全体の PER 17.61 倍、時価総額 690 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:高齢化の数量は確実で、会社の過去の成長も市場を上回ってきた。一方で価格は物価に届かず、利益率は上がりにくい。両方の言い分の落としどころとして最も重みを置く。
やや悲観 24% 公定価格に押され、利益が 10 年ほぼ伸びない 10 年 利益 23 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 1,628 円253 億円
介護報酬は、上がっても人件費と物流費の上昇に追いつかない。貸与価格の上限は見直しのたびに引き下げられ、10 年で 1.15 倍にしか上がらない。選択制の対象が広がって購入が増え、シェアは伸びずに 13% で止まる。
利益率は 7% 台に下がる。拠点と倉庫の家賃、用具の物流費は固定的に残るため、売上が伸びても利益には回らない。売上は 440 億円ほどで、営業利益は今とほぼ同じ 32 億円にとどまる。
配当は DOE の下限を保つため、利益の 5 割を超えて戻す。買収も手を出さず、安定した事業が淡々と続くが、成長の物語は消える。
- 福祉用具サービス(レンタル卸・販売卸):数量 43.2(当社経由で用具を使う利用者(万人))× 価格 9.20(1 人あたり年間の卸売上(万円))→ 売上 397 億円・営業利益 30 億円。利用者 43.2 万人(市場 1.15 倍、シェア 13% のまま)× 9.2 万円(1.15 倍)。
- 高齢者生活支援サービス(食事・EC・訪問看護等):数量 4.5(取引先の事業者・施設(千先))× 価格 150(1 先あたり年間売上(万円))→ 売上 68 億円・営業利益 2 億円。取引先 4.5 千先 × 150 万円。利益はほぼ出ない。
倍率:ROE 7.8% は k 7.25% をわずかに上回るだけで、新たな投資の稼ぎ(RONIC)は k とほぼ同じ。正当化 PER は 14 倍を超えるが、価格が公定で押される筋書きの構造的な弱さを見て、引き上げずに 10 倍とした。
確率:貸与価格の上限の見直しは 3 年ごとに必ず来る。選択制の対象が広がる可能性も現実的で、価格が物価を大きく下回る筋書きを軽く見られない。
悲観 9% 公定価格の引き下げと購入への転換で、利益が大きく縮む 10 年 利益 7 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 658 円102 億円
選択制が車いすやベッドの一部にも広がり、レンタルの需要が購入へ流れる。貸与価格の上限は引き下げが続き、10 年で 1.05 倍にとどまる。大手の貸与事業者が自社で在庫を持つようになり、当社のシェアは 11% に下がる。
利益率は 3% まで落ち込む。99 の拠点と倉庫の家賃は固定費として残り、人件費と物流費は物価で上がる。営業利益は 10 億円を割り、純利益は 7 億円ほどになる。配当は減らさざるを得ない。
それでも用具と拠点は資産として残る。値段の底は、レンタル資産と売掛債権を整理して得られる額で支えられる。
- 福祉用具サービス(レンタル卸・販売卸):数量 35.2(当社経由で用具を使う利用者(万人))× 価格 8.40(1 人あたり年間の卸売上(万円))→ 売上 296 億円・営業利益 9 億円。利用者 35.2 万人(市場 1.1 倍 × シェア 11%)× 8.4 万円(1.05 倍)。
- 高齢者生活支援サービス(食事・EC・訪問看護等):数量 3.8(取引先の事業者・施設(千先))× 価格 138(1 先あたり年間売上(万円))→ 売上 52 億円・営業利益 1 億円。取引先 3.8 千先 × 138 万円。
倍率:ROE 3.9% は k 7.25% を大きく下回り、ためた利益は簿価より低い価値。稼ぐ力(純利益 6.6 億円 ÷ k = 91 億円)より、純現金と売れる資産の税後(約 100 億円)が大きいので、今の自己資本 186 億円に 0.55 を掛けた。
確率:選択制の拡大、上限価格の大幅な引き下げ、大手事業者の内製化が同時に起きる構造的な負け筋。可能性は低いが、公の制度に縛られる商売の下振れ幅を表すために 5% は超えて置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
福祉用具サービス(レンタル卸・販売卸)
介護ベッド・車いすなどを貸与事業者にレンタルし、洗浄・修理して再び貸す。購入対象品の販売卸も含む。
| 数量当社経由で用具を使う利用者(万人) | 価格1 人あたり年間の卸売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 37.6 | 8.00 | 301 | 29 |
| 10 年後 中立 | 50.0 | 10 | 500 | 50 |
取り方:全国の福祉用具貸与の利用者は約 290 万人(2025 年 8 月、厚労省データを会社資料が引用)。卸売上 301 億円を 1 人あたり年 8 万円(給付ベースの 16 万円の半分程度と推定)で割り、約 38 万人、全国の約 13% とした。単一セグメントのため営業利益の内訳は非開示で、生活支援の利益率 3% 前後と置き、残りをこちらに割り当てた。
高齢者生活支援サービス(食事・EC・訪問看護等)
介護施設向けの冷凍弁当、事業者向け通販、子会社の訪問看護・通所介護。
| 数量取引先の事業者・施設(千先) | 価格1 先あたり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4.0 | 120 | 48 | 2 |
| 10 年後 中立 | 5.2 | 160 | 83 | 4 |
取り方:開示は売上 48 億円のみ。取引先の数は非開示で、弁当・通販・訪問看護の先を合わせて 4,000 先、1 先あたり 120 万円と推定。営業利益は薄い事業と見て 3% 前後(約 1.5 億円)とした。
リスクと懸念
貸与価格の上限と報酬改定
貸与価格は国が全国平均+1 標準偏差を上限に決め、3 年ごとに見直される。報酬が上がっても人件費や物流費の上昇を吸収する水準ではなく、見直しのたびに卸の取り分が削られる。値決め力を持たない商売の最大の弱みだ。
レンタルから購入への選択制の拡大
2024 年 4 月にスロープ・歩行器・歩行補助杖の一部で、レンタルと購入を選べる制度が始まった。対象種目が広がれば、貸して何度も稼ぐ仕組みが成り立ちにくくなる。当社の主力の車いす・ベッドが対象になる場合は影響が大きい。
貸与事業者の自社在庫化
取引先の約半数は、自社で用具を持たない小規模事業者だ。大手の貸与事業者や自前で在庫を持つ会社は、卸に頼らず自社で回せる。事業者数が少子化で減り、大手へ集約が進めば、当社の顧客基盤が縮む。
人件費と物流費の上昇
営業拠点と倉庫は借りており、家賃は固定の約束だ。配送と洗浄の人手も要り、賃金は物価に連動して上がる。売上の伸びが公定価格で抑えられる中で、費用だけが物価で膨らめば、利益率が下がる。
株主構成と少ない流通株
三菱商事とALSOKで議決権の約 7 割を持つ。流通する株は約 3 割にとどまり、株価は需給で振れやすい。少数株主にとっては、完全子会社化の値段や時期を自分で決められないという不確実さがある。
M&A の実行と資本政策
会社は借り入れによるレバレッジと M&A に前向きだが、大きな買収の経験は乏しい。買う値段が高ければ、自己資本比率 67% の堅さを損なう。高齢者支援サービスの新規事業は、本業ほど利益が出ない。
今後の分かれ目
- 貸与価格の上限の見直しで、車いすやベッドの価格が大きく下げられたら
- 卸の取り分が直接削られ、利益率は 7% 台へ下がる。中立からやや悲観の筋書きに近づく。
- 選択制の対象に、ベッドや車いすなど主力種目が加わったら
- レンタル用具の需要が購入へ流れ、当社の用具回転と拠点網の価値が下がる。悲観の確率を引き上げる。
- 三菱商事やALSOKが完全子会社化の提案をしたら
- 株主の価値は買収価格で決まり、10 年の本質価値の議論とは別になる。公表価格が今の値段より低ければ、少数株主に不利になる。
- シェアが 15% を超え、営業利益率が 10% を超える決算が続いたら
- 強気の筋書きが現実に近づき、楽観の確率を上げる材料になる。
- 10 億円超の M&A が決まったら
- 買う値段と買収先の利益率で評価が分かれる。高値づかみなら資本効率が下がり、買収が安ければ生活支援サービスの成長が加速する。
見ておくもの
- 貸与価格の上限の見直し(3 年ごと)と介護報酬の改定の内容
- レンタルと購入の選択制の対象種目の拡大
- 取引事業所の数と当社レンタル売上の伸びが、全国のレンタル費用の伸びを上回り続けるか
- 営業利益率(9% 前後から 10% 超へ上がるか)
- 三菱商事・ALSOKの持ち株の動き
倍率と資本コストの決め方
倍率は、中立が正当化 PER 約 17 倍の 85% の 14.4 倍、強気側は 9 割前後、慎重側は引き上げずに 10 倍と置いた。過去や同業の倍率から逆算していない。今の値段は純利益の約 30 倍で、10 年の中立の値付けの 2 倍に当たるが、倍率を今の値段に寄せていない。結果として割高が出るが、それは需要の伸びを数量と価格に分けて積んだ結果である。新リース会計基準(2028 年 3 月期から)で営業利益は少し増え、有利子負債はリース負債の分だけ増えるが、10 年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 17.2→18.96 倍・やや楽観 PER 15.4→18.23 倍・中立 PER 14.4→17.61 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。