結論
早稲田アカデミーは、首都圏で小学生に中学受験を、中学生に高校受験を集団で教える進学塾だ。直営の校舎を軸に、個別指導と大学受験の東進衛星予備校をフランチャイズで広げている。2026年3月期は売上377億円、営業利益40億円で、5期続けて最高益になった。
筆者の結論は「やや割高」だ。事業の質は高い。塾生は毎年4%前後増え、ROEは15%と資本コストの倍に近い。問題は値段にある。今の時価総額は、この成長が先もしばらく続くことを前提に近い水準だ。ただ10年先の塾は、少子化が進み、講師の賃上げが利益率を押さえ、家賃が固定費として残る。
10年の中立では、塾生は小学部で1割強増え、授業料は物価並みに上がり、営業利益は57億円、純利益は37億円。ROEは14%前後に落ち着く。それでも式から出る倍率は14倍台で、今の18倍からは下がる。
悲観は、少子化の加速と生成AIによる個別学習で集団授業の価値が下がり、固定費の重さが利益を削る展開だ。確率で重みづけした価値は、今の時価総額を2割強下回る。現金は厚いが、同業の大株主が多く、使い道は少数株主が決められない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の目で見て、早稲田アカデミーは「良い会社だが、高い値段は払えない会社」だ。
事業の本質は、首都圏の親の不安を、合格実績で引き受ける商売にある。授業料は先に入り、設備投資は軽い。資本の稼ぎ方は、ROE15%と上等だ。筆者がいちばん評価するのは、稼いだお金を使わずに溜め込まず、配当を5割まで上げてきた姿勢だ。
気になる点は三つある。一つ目は、堀の浅さだ。合格実績は毎年試され、生徒は塾を替えられる。二つ目は、人に頼る事業だということだ。講師の質と数が、成長の上限を決める。三つ目は、少子化と賃上げが、10年かけて静かに利益率を押さえることだ。
経営の資本配分は誠実に見える。株主優待は残しつつ、配当と自社株買いを増やしている。ただ、同業の大株主が多く、会社の将来を決めるのは少数株主ではない。
安全域は薄い。今の時価総額は、成長の続きをかなり織り込んでいる。悲観の筋書きは現金と稼ぐ力で受けられるが、それでも今の値段の4割台だ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎは大きく三つに分かれる。
小学部は中学受験の集団指導で、塾生の約6割を占める。2026年3月期の期中平均は30,666人で、前期より4.9%増えた。難関校への合格実績で生徒を集め、授業料は小6の通常コースで月4.5〜5.5万円ほどだ。会社の利益の柱はここにある。
中学部は高校受験の集団指導で、17,136人。伸びは1%にとどまる。高校部は2,879人と13%増えた。
個別指導の「個別進学館」は直営とフランチャイズで76校、大学受験の「東進衛星予備校」はフランチャイズで9校ある。東進の看板を持つナガセは、早稲田アカデミーの筆頭株主でもある。グループの校舎数は東進を除いて219校で、首都圏に集中する。
2026年5月に発表した中期経営計画(2027〜2029年度)は、2029年3月期に売上460億円、経常利益47億円、ROE15.6%を掲げる。標準校舎を1割強増やし、個別指導を100校、東進衛星予備校を20校にする。出店先は湾岸エリアなど需要の伸びる地域を探しており、2026年度の候補は確定していない。
お金の流れは単純だ。授業料は先に入り、講師の給料と校舎の家賃が毎月出ていく。生徒が増えるほど1人当たりの固定費は薄まる。
優良さと弱いところ
一番の強みは、首都圏の中学受験で積み上げた合格実績だ。親は我が子の志望校に受かるかで塾を選ぶ。難関校の合格者が多い塾に人が集まり、その集まりがさらに講師と教材の質を支える。同じ構造のSAPIX、日能研、四谷大塚と並んで、首都圏の中学受験の上位を分け合っている。
強みは、この循環が続くあいだだけ強い。合格実績は毎年の入試で試され、学年が一つ崩れると翌年の入塾が細る。値段を市場に決められる部分もあり、授業料の上げ幅は競合の水準と親の許容に縛られる。堀、つまり他社がまねできない強みは普通と見る。
資本の稼ぎは良い。ROEは過去10年の中央値で11%、直近は15%。営業利益率は10.5%で、20年前の山の11%台に近い。自己資本比率は63%、現金が借金を96億円上回る。ただ、授業料は先に入るため、現金には預かり分が含まれている。校舎も賃借が基本とみられ、家賃は毎年払う固定の約束だ。見かけほど余裕のある現金ではない。
経営は利益の伸びに合わせて、配当を段階的に増やしてきた。次の弱みは講師の確保と賃上げで、利益率を押さえる力が長く続く。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
塾の需要は子どもの数と、受験に使うお金の二つで決まる。首都圏では中学受験をする子の割合が長く上がってきた。出生数が減る一方で、1人の子にかける教育費が増えているためだ。早稲田アカデミーの塾生が毎年伸びているのは、この追い風とシェアの上昇が重なったからだ。
10年の目で見ると、追い風は弱まる。子どもの数は年に1%前後のペースで減る。首都圏は地方より減り方が緩いが、減ることに変わりはない。受験する子の割合の上昇は、いつまでも続かない。中立は、新しい校舎の分だけ塾生が増え、全体では小学部が1割強の増加という姿だ。
価格は物価並みに上がる。ただ講師の賃上げが続くので、値上げは利益の増加につながらず、人件費の上昇を埋めるだけに近い。
競合は厚い。SAPIX、日能研、四谷大塚は中学受験の大手で、個別指導では栄光ゼミナールなどが並ぶ。個別指導は参入が多く、価格競争が起きやすい。
新しい逆風はAIと動画の学習だ。基礎の学習はオンラインで足りる子が増え、集団授業で教える価値が絞られる。ただ、受験の志望校選びと親への安心感は人が担う部分が大きく、置き換わる速さは分からない。
資本政策と M&A
還元は手厚くなってきた。配当は2026年3月期に増やし、2027年3月期はさらに大きく増やす予定で、配当性向は約5割になる。会社はもともと連結配当性向35%以上を目標としていたが、実績はそれを上回る。2026年夏にはToSTNeT-3で自己株式を買い、約51万株を減らした(金額は約13億円と推定。開示は確かめられなかった)。この買い付けの分は、株数と自己資本にすでに反映している。
現金の使い道は課題だ。純現金は96億円で時価総額の2割を占めるが、そのまま株主のものとは言えない。授業料の前受けと校舎の家賃、教材の仕入れに備える運転資金を除くと、余るのは50億円ほどと見る。しかも筆頭株主のナガセが約18%、個人の大株主が約10%、福岡の塾の英進館が約10%を持つ。同業の大株主が多く、使い道は少数株主が決められない。戻り方は半分と見る。
株主優待は残る。100株以上で、3月末に電子マネー、9月末に授業料へ使える優待券が出る。費用は年に0.3億円前後と推定され(保有者数の開示を確かめられず、額面と使われ方から見積もった)、年1億円を超えないので、数えない。
M&Aは、東進衛星予備校の20校化や個別進学館のフランチャイズ拡大が中心で、大型の買収は予定されていない。同業の大株主が多く、再編の話が出る余地は残る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
早稲田アカデミーの成長はまだ終わっていない。塾生数は年4%のペースで増え、小学部は5%近く伸びた。合格実績は最高を更新し、2027年3月期の塾生も好調な滑り出しだ。中期計画は売上460億円、経常利益47億円、ROE15.6%を掲げるが、前の計画の目標はすべて達成しており、実現の確度は高い。標準校舎を増やし、個別指導を100校、東進衛星予備校を20校に広げる土台は、すでにある。
首都圏は人口が減りにくく、教育にお金をかける親の割合も高い。授業料は小6の通常で月5万円前後だが、志望校に受かる価値に比べれば高くない。利益は増え続け、配当性向は5割に上がる。現金が96億円あり、借金はなく、さらに自社株買いを増やせる。営業利益率は10.5%で、まだ20年前の山の11%台に届いていない。ここから利益率が上がる余地がある。
今の時価総額はPER18倍で、成長株としては高くない。10年後に純利益が倍近くになる筋書きなら、価値は今の倍近くになる。
慎重な見方
成長は事実だが、10年の価値で見ると高すぎる。今のPER18倍は、塾生が毎年4%増え、利益が毎年1割伸びる前提を、10年近く先まで織り込んでいる。少子化は首都圏でも確実に進み、受験する子の割合の上昇にも限りがある。2029年以降の伸びは、中計のペースからは鈍る。
また、授業料の値上げは講師の賃上げにほとんど吸われる。営業利益率は過去12年で10.5%が最高で、これ以上は上がりにくい。校舎の家賃は固定費で、塾生が減れば利益が一気に細る。合格実績は毎年試される。学年が一つ崩れると、翌年の入塾が落ちる。競合のSAPIX、日能研、四谷大塚は上位校の枠を押さえており、シェアを取り続けるのは簡単ではない。
現金は厚いが、授業料の前受けが含まれ、使い道は同業の大株主の意向に縛られる。式で測ると、ROEが14%の事業でも倍率は14倍台で、今の18倍にはならない。成長の続きを、すでに値段が先に払ってしまっているというのが、慎重な見方の核心だ。
どちらに重みを置いたか
事業の質は強気が正しい。値段は慎重な見方が正しい。確率は中立を厚くしたうえで、少子化と賃上げの逆風が効く側にやや寄せた。10年の塾は、成長が緩み、利益率が横ばいの姿がいちばんありそうだからだ。その中立の姿でも、倍率は式から14倍台に落ちる。確率で重みづけした価値は、今の時価総額を2割強下回る。ただし事業の強さそのものは否定しない。下値は純現金と稼ぐ力が受ける。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,950 円709 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 921 円165 億円)。 今の値に割り戻すと 2,558 円459 億円、今との差 +0.3%、 期待の年率 +6.7%(資本コスト 7.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 6,418 円1,153 億円 | 1,125 円202 億円 | +195.8% | +11.5% | 603 円108 億円 |
| やや楽観 | 22% | 5,483 円985 億円 | 1,024 円184 億円 | +155.2% | +9.8% | 1,432 円257 億円 |
| 中立 | 38% | 4,651 円835 億円 | 935 円168 億円 | +119.1% | +8.2% | 2,123 円381 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,880 円338 億円 | 813 円146 億円 | +5.6% | +0.5% | 592 円106 億円 |
| 悲観 | 10% | 490 円88 億円 | 713 円128 億円 | −52.8% | −7.2% | 120 円22 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,950 円709 億円 | 921 円165 億円 | +91.0% | +6.7% | 4,870 円875 億円 |
今の株価時価総額 2,550 円458 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 合格実績で首都圏のシェアを取り続ける 利益 50 億円 · PER 21.6 倍 · 株価時価総額 6,418 円1,153 億円
首都圏の中学受験熱が続き、早稲田アカデミーは合格実績と校舎網の厚みでシェアを取り続ける。小学部の塾生は10年で2割強増え、標準校舎の増設が計画を超えて進む。個別進学館は100校を超え、東進衛星予備校は20校を上回る。授業料は講師の賃上げを映して物価より少し上に動き、利益率は12%まで上がる。営業利益は10年で78億円。純利益は50億円で、配当性向5割の還元を続けても自己資本の効率は14%台に乗る。大株主のナガセ、英進館、明光ネットワークジャパンなど同業の安定株主が、提携を深める方向にも働く。講師の賃上げは授業料の値上げで吸収でき、校舎の増設で1人当たりの固定費も薄まる。合格実績の最高更新が続くことが、この筋書きの前提になる。
- 小学部(中学受験の集団指導が中心):数量 38.0(塾生数(千人・期中平均))× 価格 87(塾生1人当たり年間売上(万円・推定))→ 売上 330 億円・営業利益 48 億円。塾生+24%・単価+40%
- 中高部・個別指導・大学受験部(高校受験、個別進学館、東進衛星予備校):数量 24.5(塾生数(千人・期中平均、中学部・高校部・その他))× 価格 129(塾生1人当たり年間売上(万円・推定))→ 売上 317 億円・営業利益 30 億円。塾生+21%・単価+40%
倍率:事業の純利益 50 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 25.4% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 16.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 21.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 21.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)38 億円。全体の PER 21.63 倍、時価総額 1,108 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:合格実績の伸びとシェア拡大が重なり、中計を大きく超える展開は起こりうるが、少子化の中で続くとは限らないので確率は抑える。
やや楽観 22% 中計の線を超えて緩やかに伸びる 利益 43 億円 · PER 21.2 倍 · 株価時価総額 5,483 円985 億円
中期計画の売上460億円、経常利益47億円は達成され、その先も緩やかに伸びる。小学部の塾生は10年で2割弱増え、個別進学館は100校に届く。授業料は物価にほぼ追いつき、講師の賃上げを価格に転嫁できる。利益率は11%前後まで上がる。営業利益は10年で67億円、純利益は43億円。配当性向は5割を維持し、機動的な自社株買いが加わる。ROEは中計目標の15.6%に近い水準を保つ。中学受験の参加率は少子化の分を補う。講師の賃上げは授業料に転嫁でき、東進衛星予備校も計画どおり20校へ広がる。個別進学館は直営が増え、利益率の低い教材収入の比率が下がる。
- 小学部(中学受験の集団指導が中心):数量 36.0(塾生数(千人・期中平均))× 価格 85(塾生1人当たり年間売上(万円・推定))→ 売上 306 億円・営業利益 41 億円。塾生+17%・単価+37%
- 中高部・個別指導・大学受験部(高校受験、個別進学館、東進衛星予備校):数量 23.0(塾生数(千人・期中平均、中学部・高校部・その他))× 価格 127(塾生1人当たり年間売上(万円・推定))→ 売上 291 億円・営業利益 26 億円。塾生+14%・単価+37%
倍率:事業の純利益 43 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 23.6% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 15.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 21.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 21.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)38 億円。全体の PER 21.21 倍、時価総額 941 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:5期連続の最高益と中計の達成実績から、計画の線を超えて伸びる姿には相応の根拠があり、やや楽観に厚みを置く。
中立 38% 新校舎の分だけ増え、授業料は物価並み 利益 37 億円 · PER 20.8 倍 · 株価時価総額 4,651 円835 億円
小学部の塾生は新しい校舎の分だけ増えて10年で1割強、中高部は微増にとどまる。少子化で首都圏の子どもは緩やかに減るが、受験する層の割合の上昇と合格実績によるシェアの伸びで補う。授業料は物価並みに上がるが、講師の賃上げと校舎の家賃も同じペースで上がる。利益率は10.5%で横ばい。営業利益は10年で57億円、純利益は37億円。配当性向は5割程度を守り、現金の積み上がりは自社株買いで緩やかに抑える。ROEは14%前後に落ち着く。2029年3月期の中計(売上460億円)の達成後は、少子化の逆風で伸びが年2%台に鈍り、利益率は10.5%の最高水準で止まる。大型の買収は想定せず、出店は需要の伸びる湾岸エリアなどを中心にする。
- 小学部(中学受験の集団指導が中心):数量 34.0(塾生数(千人・期中平均))× 価格 83(塾生1人当たり年間売上(万円・推定))→ 売上 283 億円・営業利益 36 億円。塾生+11%・単価+34%
- 中高部・個別指導・大学受験部(高校受験、個別進学館、東進衛星予備校):数量 21.0(塾生数(千人・期中平均、中学部・高校部・その他))× 価格 124(塾生1人当たり年間売上(万円・推定))→ 売上 260 億円・営業利益 21 億円。塾生+4%・単価+34%
倍率:事業の純利益 36 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 21.7% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)38 億円。全体の PER 20.76 倍、時価総額 791 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:塾生は緩やかに増え、授業料は物価並みで利益率が横ばいという姿をいちばん厚くする。
やや悲観 22% 少子化の加速と賃上げの重さで利益率が下がる 利益 26 億円 · PER 10.7 倍 · 株価時価総額 1,880 円338 億円
少子化の加速と受験熱の一服が重なり、小学部の塾生は4%減る。SAPIX、日能研、四谷大塚が上位校の枠を押さえ、早稲田アカデミーは価格を上げて生徒を取り戻す余地が小さくなる。授業料の上げ幅は物価に届かず、講師の賃上げと家賃は物価並みに上がる。利益率は9%に下がり、営業利益は10年で39億円。純利益は26億円。会社は還元を守るが、成長投資に回す現金も減る。新設校舎の採算が悪化し、東進衛星予備校の拡大も思うように進まない。それでも合格実績のブランドは残り、固定費の重さが利益率を押し下げる展開になる。配当性向は5割を超えて維持され、成長投資に回す現金は減る。
- 小学部(中学受験の集団指導が中心):数量 29.5(塾生数(千人・期中平均))× 価格 78(塾生1人当たり年間売上(万円・推定))→ 売上 229 億円・営業利益 25 億円。塾生-4%・単価+25%
- 中高部・個別指導・大学受験部(高校受験、個別進学館、東進衛星予備校):数量 18.5(塾生数(千人・期中平均、中学部・高校部・その他))× 価格 116(塾生1人当たり年間売上(万円・推定))→ 売上 214 億円・営業利益 14 億円。塾生-8%・単価+25%
倍率:事業のROE 10.7%はなお資本コストを上回るが、利益が細る筋書きで残る稼ぎも薄い。RONIC=k+1/2×(ROE−k)から正当化PERは16.0倍。構造的な負けで生徒が減り、家賃と講師の賃金が固定費として残るので、上限の7割へ引き上げず、10.7倍に置く。
確率:少子化と講師の人件費の上昇は10年で確実に効く逆風で、受験熱の一服も重なる展開をやや厚めに置く。
悲観 10% 生徒の流出と固定費で稼ぐ力が細る 利益 9 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 490 円88 億円
少子化が想定より速く進み、中学受験の参加者も減って、小学部の塾生は2割減る。オンラインの学習サービスや生成AIによる個別学習が中堅層の需要を削り、集団授業の価値が下がる。講師の確保が難しくなり、賃上げで人件費率が上がる。校舎の家賃は固定費として残るため、営業利益は10年で13億円まで落ちる。減益のなかで配当は守ろうとするが、現金は取り崩される。大株主の同業が再編や統合を持ち出す余地は出るが、少数株主には条件を決める力がない。それでも純現金と首都圏の校舎網は残り、会社は赤字にはならない。授業料の値上げは競合との価格競争と親の負担感に押さえられ、物価に届かない。個別指導も参入が多く、採算が崩れる。
- 小学部(中学受験の集団指導が中心):数量 24.0(塾生数(千人・期中平均))× 価格 68(塾生1人当たり年間売上(万円・推定))→ 売上 164 億円・営業利益 10 億円。塾生-22%・単価+10%
- 中高部・個別指導・大学受験部(高校受験、個別進学館、東進衛星予備校):数量 14.5(塾生数(千人・期中平均、中学部・高校部・その他))× 価格 102(塾生1人当たり年間売上(万円・推定))→ 売上 148 億円・営業利益 3 億円。塾生-28%・単価+10%
倍率:事業のROE 4.7%は資本コスト7.5%以下。新しく投じるお金が価値を増やさないので、PERの上限は1÷k=13.3倍。生徒の流出と家賃の固定費で稼ぐ力が細る筋書きで、上限の6割、8.0倍に置く。EV÷営業利益の注意は、現金が厚く有利子負債が無いので当てはまらない。
確率:生徒の流出と固定費の重さが同時に来る構造的な負けは、合格実績のブランドが厚いので起こりにくいが、起これば深い。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
小学部(中学受験の集団指導が中心)
首都圏の小学生に中学受験の授業を集団で教える。会社の主力で、塾生数の約6割を占める。
| 数量塾生数(千人・期中平均) | 価格塾生1人当たり年間売上(万円・推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 30.7 | 62 | 190 | 25 |
| 10 年後 中立 | 34.0 | 83 | 283 | 36 |
取り方:塾生数は2026年3月期の期中平均30,666人(会社開示)。学部別の売上と利益は開示が無く、全社売上376.6億円と営業利益39.6億円を、授業料の水準(小6の通常で月4.5〜5.5万円、季節講習や教材を含む)から小学部190億円・中高部以降187億円に分けた推定で、利益率は小学部が高い(12.9%)と見た。塾生数は実質、1人当たり売上は名目。
中高部・個別指導・大学受験部(高校受験、個別進学館、東進衛星予備校)
中学生・高校生の集団指導、個別指導「個別進学館」(直営とフランチャイズ)、大学受験の「東進衛星予備校」(フランチャイズ)をまとめた。
| 数量塾生数(千人・期中平均、中学部・高校部・その他) | 価格塾生1人当たり年間売上(万円・推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 20.2 | 92 | 187 | 15 |
| 10 年後 中立 | 21.0 | 124 | 260 | 21 |
取り方:塾生数は中学部17,136人・高校部2,879人・その他156人の合計20,171人(2026年3月期の期中平均)。個別進学館76校と東進衛星予備校9校のロイヤルティ・直営売上、教材収入もここに入れ、1人当たり売上が小学部より高く出る。全社の営業利益を小学部と分けた推定で、利益率は8.1%。数量は実質、価格は名目。
リスクと懸念
少子化と受験熱の変化
首都圏の子どもの数は年に1%前後で減る。中学受験をする子の割合が長く上がってきたことが成長を支えたが、これは永遠には続かない。景気や入試制度の変更、私立中学の定員変更で参加率が下がれば、塾生数が一気に細る。
合格実績の揺れ
早稲田アカデミーの集客は難関校の合格実績に頼る。学年ごとの結果で翌年の入塾が変わるため、一つの年の不調が数年の売上に響く。競合のSAPIX、日能研、四谷大塚が上位校の枠を押さえる中でシェアを保つ必要がある。
講師の確保と賃上げ
事業は人で成り立つ。優秀な講師を集めるには賃上げが続き、授業料の値上げがそれを埋めきれなければ利益率が下がる。講師の不祥事や大量の離職があれば、ブランドが傷つく。
校舎の家賃の固定費
校舎は賃借が基本とみられる(開示では確かめられなかった)。生徒が減っても家賃は減らず、利益を削る。新設校舎は採算が出るまでに時間がかかり、出店が外れると負担になる。新リース会計基準の導入(2028年3月期以降)で、借金の形は変わる。
大株主の同業の意向
ナガセが約18%、英進館が約10%、明光ネットワークジャパンも上位株主に並ぶ。同業の大株主が多いため、再編や提携の判断は少数株主の意向から離れる可能性がある。現金の使い道もその影響を受ける。
AIやオンライン学習の浸透
基礎の学習や個別の演習がAIや動画で済む子が増えれば、集団授業と個別指導の需要が細る。置き換わる速さは分からないが、10年のうちに価格と数量の両方に圧力がかかる。ただし志望校選びや親の安心感は人が担う部分が大きい。
今後の分かれ目
- 標準校舎の増設と個別指導100校化が計画より速く進む
- 中計の線を超えて利益が伸び、中立からやや楽観の筋書きに近づく。
- 首都圏の中学受験者数が減少に転じ、参加率が下がる
- 小学部の塾生が細り、固定費の重さで利益率が急に落ちる。やや悲観から悲観の確率を上げる。
- 難関校の合格実績が競合に逆転される
- 翌年以降の入塾が細り、ブランドの堀が崩れる。悲観の確率を引き上げる。
- ナガセなど同業の大株主が提携や統合に動く
- 買い取りの条件は大株主が決める。少数株主に有利とは限らず、実現できる価値は低く見る。
- 追加の自社株買いや配当性向の引き上げが続く
- 株主の取り分が増え、余った現金の戻り方が上がるので、現金の見方を1.0に近づける。
- 講師の賃上げが授業料の値上げを上回る
- 営業利益率が10%を割り、倍率の質の評価が下がる。
見ておくもの
- 首都圏の中学受験者数と、難関校の合格者数の推移
- 塾生数の増加率(月次)と小学部の入塾状況
- 営業利益率10.5%の維持と講師の人件費率
- 標準校舎・個別進学館・東進衛星予備校の出店ペース
- 配当性向と追加の自社株買い
倍率と資本コストの決め方
今の株価(PER18倍)や同業の倍率からは筋書きを作っていない。小学部と中高部・個別指導・大学受験部の塾生数(実質)に、1人当たり売上(物価の分を名目で上乗せ)を掛けて積み、講師の賃上げと家賃の固定費は営業利益率に入れた。純利益は営業利益に純現金の利息の増加を足し、税を37%として出した。倍率は資本コスト7.5%と、普通の堀(残る割合1/2)の正当化PERの8割に置き、悲観は稼ぐ力を6割に引いた。現金は余った50億円だけを0.5の戻り方で足した。結論は計算が決めた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 16.4→21.63 倍・やや楽観 PER 15→21.21 倍・中立 PER 14.4→20.76 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%、quality は0。