結論
東洋テックは、大阪を地盤に警備とビル管理を営む会社である。筆者の結論は、10 年の価値は今の時価総額を下回り、やや割高というものだ。理由は、利益率が薄く、特需を除くと資本コストを稼げていない点にある。
2026 年 3 月期の営業利益は 29 億円と、前の期の約 3 倍になった。大阪・関西万博の警備の売上が 80 億円を超えたことが効いた。ただし特需は一度きりで、会社も 2027 年 3 月期は減益を見込む。
事業の中身は堅い。警備は人手不足のなかで需要が続き、人件費の上昇も料金に転嫁しやすい。財務も堅く、自己資本比率は 6 割ある。
弱みは、利益率が過去 10 年のほとんどで 3% 台にとどまり、ROE が 3% 前後だったことだ。自己資本が厚いまま、稼ぎが小さい。
現金輸送や ATM 管理は、キャッシュレスで数量が細るおそれもある。
筆者がいちばん気にしているのは、特需が消えたあとの利益率である。ここが 5% を保てるかで、見方は大きく変わる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、これは「安定した事業だが、稼ぎが小さい会社」である。
自己資本は 233 億円と時価総額を上回るが、その多くは事業に使う資産だ。ためた利益は、額面より低い価値しかない。ROE が資本コストを下回り続ける限り、PBR 1 倍割れは割安の根拠にならない。
堀は普通で、契約が続くのは評価できる。だが人件費の上昇を転嫁できるかは、10 年後も見えない。
筆者は、10 年かけた価値は今の値段をやや下回ると見る。万博で膨らんだ利益を、長く続く稼ぐ力と見るのは危うい。
株主として持ち続けたいかと問われれば、価格しだいだと答える。経営の資本の使い方は、保守的である。借金は少なく、買収で価値を壊す心配は小さい。ただ、自己資本に比べて稼ぎが小さい状態を、長く放置してきたとも言える。資本効率の改善が口先で終わらないかが、最大の見どころだ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、顧客の建物や設備を人と機械で守る警備の契約料金である。2025 年 3 月期の売上 349 億円のうち、警備が約 7 割、ビル管理が約 3 割、不動産が 5% である。
警備の中身は、機械警備が 35%、常駐警備が 31%、現金輸送が 10%、ATM 管理が 8% だ。顧客は銀行などの金融機関、商業ビル、公共施設である。契約は毎月の料金で、解約が少ないストック型の収入になる。
ビル管理は、大規模な修繕、設備点検、清掃を請け負う。景気の影響を受けにくいが、利益率は薄い。
不動産は、オフィス・住宅・ホテル・商業の賃貸 7 件が中心だ。売上は小さいが、利益率は警備より高い。
2026 年 3 月期は、大阪・関西万博の警備で 84 億円の売上が加わり、売上は 431 億円に膨らんだ。
東洋テックの設立は 1964 年で、大阪に本社がある。従業員は警備員を中心に数千人規模で、人件費が原価の大半を占める。顧客の契約期間は長く、売上の見通しは立てやすい。一方で、料金の改定は顧客との交渉になり、賃上げを即座に反映できない。
優良さと弱いところ
堀は普通か、やや弱い。警備は顧客の信頼で契約が長く続き、機械警備は設置した機器で顧客を囲い込める。地盤の関西では、金融機関向けの現金輸送や ATM 管理の実績もある。
一方で、人を雇う事業は価格競争に巻き込まれやすい。大手のセコムや綜合警備保障(ALSOK)は規模で上回り、中小の警備会社も多い。営業利益率は、2015 年 3 月期から 2025 年 3 月期まで 3% 前後にとどまった。
財務は堅い。自己資本比率は 59% で、純有利子負債はほぼゼロである。
経営は、2025 年に新しい中期経営計画を出し、PBR 1 倍割れの解消を掲げた。ただ、目標の ROE は 2027 年度で 6〜7% と、資本コストに届かない。資本効率の改善はこれからだ。
配当は、配当性向 50% を目途にする方針で、株主への姿勢は悪くない。ただ、自己資本の厚さに対して稼ぎが小さい点が、最大の弱みである。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
警備は、人手不足と治安への不安で需要が堅い。最低賃金は年 3% ほどで上がり続け、警備会社は料金への転嫁を進めている。転嫁が通る会社は利益率が上がり、通らない会社は苦しくなる。
機械警備への切り替えは、人手を減らして利益率を上げる道だ。設備投資が要り、大手が先行している。
現金輸送と ATM 管理は、キャッシュレスの浸透で長い目では縮む。金融機関が ATM を減らしており、数量の減少が料金で補えるかが分かれ目になる。
ビル管理は、老朽化したビルの修繕需要が追い風になる。ただし利益率は薄く、競争は激しい。
大阪では、万博の後も統合型リゾートなど大型の開発が続く見込みで、警備の需要には追い風になる。景気の影響は小さい業態である。
業界の構造は、セコムと綜合警備保障(ALSOK)の大手 2 社に、地域の警備会社が連なる。東洋テックは関西を地盤とする中堅で、大手が手薄な常駐警備とビル管理で顧客を持つ。
人口減少で警備員の確保が難しくなる。機械化で人手を減らせる会社が、10 年後に利益率で差をつける。
資本政策と M&A
還元の方針は、配当性向 50% を目途とし、株主資本配当率(DOE)3.0% を下限とする。2026 年 3 月期は特需で利益が膨らんだため、配当性向は 38% にとどまった。
中期経営計画(2025 年 4 月から 2028 年 3 月)では、2027 年度に売上 400 億円、EBITDA 25 億円を掲げる。ROE は 6〜7% を経て 8% を目指す。
自社株買いは目立たない。買収の実績も乏しい。
TOB で買われる側になる可能性は、時価総額が 174 億円と小さく、PBR が 1 倍を割っているため、無視できない。ただ、本分析では買収の上乗せは見込まない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
警備は人手不足の時代に、需要が確実に続く。最低賃金が上がっても、契約料金に転嫁できれば利益率は上がる。会社は 2027 年度に売上 400 億円、EBITDA 25 億円を掲げており、2027 年 3 月期の営業利益も 20 億円を見込む。過去 10 年の 3% 台に比べ、5% 台は大きな改善だ。
万博で得た実績は、大型イベントや統合型リゾートの警備で武器になる。機械警備への切り替えが進めば、人手に頼らず利益率を上げられる。
財務は堅く、自己資本比率は 6 割ある。配当は DOE 3% を下限とし、PBR 1 倍割れの解消も掲げた。株主還元の下支えがある。
万博の警備を無事に終えた実績は、次の大型案件の入札で評価される。警備員の高齢化と人手不足は、料金の値上げ交渉で追い風になる。東洋テックは関西に強い地盤があり、顧客の解約は少ない。ストック型の収入が積み上がる点は、景気の波に強い。
価格の面でも、人件費を料金に反映する取引慣行が社会に広がっており、これは警備業界に追い風である。
慎重な見方
2026 年 3 月期の利益は万博の特需であり、続かない。会社自身も、2027 年 3 月期は経常利益が 3 割減ると見ている。
警備は人件費が原価の大半で、利益率の薄い事業だ。賃上げを料金に転嫁できなければ、利益はすぐに削られる。過去 10 年の営業利益率は 3% 前後で、ROE は 3% 台だった。資本コストをほとんどの年で下回っている。
現金輸送と ATM 管理は、キャッシュレスで数量が細る。金融機関の統合も進む。
中期経営計画の ROE 目標も、2027 年度で 6〜7% と資本コストに届かない。PBR 1 倍割れの解消は、掲げただけでは実現しない。
大手との契約料金の競争は続き、地方の警備会社の再編も進む。関西の地盤だけでは、成長の物語は描きにくい。不動産の賃貸収益は小さく、全体の利益を支えきれない。自己資本が厚くても、使い道がなければ資本コストを下げるだけで、価値にはならない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。特需を除いた稼ぐ力は小さく、ROE は資本コストに届いていない。事業の堅さと財務の厚みは評価するが、価値には反映しにくい。
確率は中立を中心に置き、やや悲観を 26%、悲観を 12% と、厚めにした。楽観の確率は 7% にとどめた。
特需を除いた最近の利益で見ると、今の時価総額は既に事業の稼ぐ力を織り込んでいる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,077 円220 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 756 円80 億円)。 今の値に割り戻すと 1,534 円162 億円、今との差 −4.6%、 期待の年率 +5.8%(資本コスト 7.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 3,973 円420 億円 | 1,134 円120 億円 | +217.6% | +12.3% | 357 円38 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,891 円306 億円 | 945 円100 億円 | +138.5% | +9.1% | 767 円81 億円 |
| 中立 | 35% | 2,432 円257 億円 | 756 円80 億円 | +98.2% | +7.1% | 1,116 円118 億円 |
| やや悲観 | 26% | 1,107 円117 億円 | 661 円70 億円 | +10.0% | +1.0% | 460 円49 億円 |
| 悲観 | 12% | 683 円72 億円 | 425 円45 億円 | −31.1% | −3.7% | 133 円14 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,077 円220 億円 | 756 円80 億円 | +76.2% | +5.8% | 2,833 円300 億円 |
今の株価時価総額 1,608 円170 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 人件費の値上げが通り、警備の利益率が上がる 利益 27 億円 · PER 15.0 倍 · 株価時価総額 3,973 円420 億円
最低賃金の上昇を契約料金に転嫁する流れが定着し、警備事業の営業利益率は 7% 台に乗る。人手不足で、機械警備への切り替えと常駐警備の値上げが進む。大阪では統合型リゾートなど、万博に続く大型の警備案件が入る。ビル管理は大規模修繕の受注が伸び、不動産は賃料が物価並みに上がる。営業利益は 39 億円ほどになる。自己資本が積み上がっても利益が伸びるため、ROE は 9% に近づき、中期経営計画の先の目標に届く。会社は大阪の大型案件の実績を足がかりに、関西以外にも顧客を広げる。ストック収入が積み上がる筋書きである。
- 警備事業:数量 270(契約・稼働の規模(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 362 億円・営業利益 27 億円。賃上げ転嫁が定着、特需あり
- ビル管理事業:数量 110(受託の規模(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 147 億円・営業利益 7 億円。修繕の受注増
- 不動産事業:数量 18.0(賃貸・仲介の規模(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 24 億円・営業利益 7 億円。賃料が物価並みに上昇
倍率:事業の純利益 27 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.4% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.0 倍。全体の PER 15.02 倍、時価総額 410 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:賃上げの転嫁が進み、大型の特需も重なる必要がある。万博のような案件は繰り返しにくく、1 割に届かない。
やや楽観 20% 賃上げの転嫁が進み、利益率が中期計画並みに 利益 21 億円 · PER 13.6 倍 · 株価時価総額 2,891 円306 億円
万博の特需は消えるが、料金の改定と機械警備の切り替えで、警備事業の営業利益率は 6% ほどに上がる。ビル管理は修繕の受注が堅調で、不動産は安定する。営業利益は 30 億円ほどで、会社の中期目標の EBITDA 25 億円を上回る。還元は配当性向 50% を目途とし、DOE の下限も守られる。ROE は 7% ほどで、資本コストにはわずかに届かない。万博で得た顧客との関係が、民間の大型施設にも広がる。ビル管理でも大規模修繕の受注が増え、売上の底上げになる。機械警備の比率が上がり、人手に頼らない収益が増える。不動産は賃料が物価並みに上がる。
- 警備事業:数量 255(契約・稼働の規模(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 342 億円・営業利益 21 億円。料金改定と機械警備の切り替え
- ビル管理事業:数量 100(受託の規模(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 134 億円・営業利益 6 億円。修繕が堅調
- 不動産事業:数量 17.0(賃貸・仲介の規模(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 23 億円・営業利益 6 億円。賃料が物価並み
倍率:事業の純利益 21 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.7% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.6 倍。全体の PER 13.57 倍、時価総額 289 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中期経営計画の方向どおり、利益率が緩やかに上がる道。万博の特需が消えても、料金の改定で補える。2 割を置く。
中立 35% 万博の特需が消え、利益率は 5% 台に落ち着く 利益 18 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 2,432 円257 億円
万博の特需が消えると、売上は 2026 年 3 月期の山から下がり、警備は人手不足を背景に堅い需要が続く。人件費の上昇は契約料金へおおむね転嫁できるが、遅れる分が利益を削る。営業利益率は 5% ほどで、会社が出している 2027 年度の水準に近い。ビル管理と不動産は安定する。還元は純利益の 5 割ほどで、自己資本はゆっくり積み上がる。ROE は 6% 前後にとどまり、資本コストを下回り続ける。自己資本は厚いまま積み上がり、PBR は 1 倍を割る水準が続く。利益は物価並みに増えるだけで、成長の物語は描きにくい。
- 警備事業:数量 245(契約・稼働の規模(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 328 億円・営業利益 16 億円。賃上げをおおむね転嫁、特需は消える
- ビル管理事業:数量 98.0(受託の規模(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 131 億円・営業利益 5 億円。修繕は堅調
- 不動産事業:数量 16.0(賃貸・仲介の規模(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 21 億円・営業利益 6 億円。賃料が物価並み
倍率:事業の純利益 18 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.5% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 233 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:万博の特需が消えた後は、賃上げの転嫁がおおむね通るが利益率は大きく上がらない。最も起こりやすい道として 35% を置く。
やや悲観 26% 賃上げの転嫁が遅れ、利益率が 3% 台に戻る 利益 12 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 1,107 円117 億円
万博の特需が消えたあと、賃上げの転嫁が遅れる。顧客の金融機関や商業ビルが料金の据え置きを求め、競合が値引きで入る。警備事業の営業利益率は 3.5% に戻り、営業利益は 17 億円ほど。ATM の保守・現金輸送は、キャッシュレスの進展で数量が細る。ROE は 4% 台で、資本コストを大きく下回る。配当は DOE の下限 3% を目途に守るが、利益の増えない会社に市場は高い値を付けない。それでも、契約の解約は少なく、事業は黒字を保つ。配当は DOE の下限 3% で、株主への最低限の還元は守られる。
- 警備事業:数量 225(契約・稼働の規模(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 302 億円・営業利益 11 億円。賃上げの転嫁が遅れる
- ビル管理事業:数量 92.0(受託の規模(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 123 億円・営業利益 4 億円。修繕の競争が厳しい
- 不動産事業:数量 15.0(賃貸・仲介の規模(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 20 億円・営業利益 5 億円。賃料は横ばい圏
倍率:事業の純利益 約 12 億円・事業 ROE 約 4.2% は k 7.5% 以下なので、上限は 1÷k=12.9 倍。利益率が薄く、増えない事業なので上限の約 6 割の 8.0 倍に置いた。
確率:人件費の上昇を料金に転嫁しきれず、特需の剥落で利益率が元の 3% 台に戻る。過去 10 年の実績に近く、26% を置く。
悲観 12% キャッシュレスと価格競争で、警備の取り分が減る 利益 6 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 683 円72 億円
キャッシュレスの定着で金融機関の現金輸送とATM 管理の数量が大きく減る。警備では大手や新しい機械警備のサービスに契約を奪われ、人件費の上昇も転嫁できない。営業利益率は 2% を割り、営業利益は 9 億円ほどになる。不動産の賃貸収益が下支えになるが、全体の利益は小さい。配当は下限を維持できず、株主に戻る額も減る。ROE は 2% 台に低下する。賃上げの負担が重く、人材の確保にも苦しむため、利益は赤字すれすれまで下がる。警備の契約は残るが、数量が減る。大手との競争で価格が下がり、従業員の確保にも苦しむ。不動産の売却益で一部の利益を補う。
- 警備事業:数量 195(契約・稼働の規模(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 261 億円・営業利益 5 億円。契約の流出、転嫁できない
- ビル管理事業:数量 85.0(受託の規模(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 114 億円・営業利益 2 億円。修繕の価格競争
- 不動産事業:数量 14.0(賃貸・仲介の規模(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 19 億円・営業利益 4 億円。賃貸の一部を売却
倍率:構造的な負けで稼ぐ力は小さい。事業の純利益 約 6 億円では価値が立たないので、純現金・賃貸不動産・回収できる運転資金で支える床として、今の自己資本 233 億円の 3 割に置いた。内訳の金額は開示を確認できず推定。
確率:現金輸送・ATM 管理の需要が構造的に縮み、警備の価格競争が厳しくなる。人手の確保でも負ける、構造的な負けとして 12% を置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
警備事業
機械警備、常駐警備、現金輸送、ATM 管理、工事・機器販売。
| 数量契約・稼働の規模(億円・今の値段の実質) | 価格値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 315 | 100.0% | 315 | 22 |
| 10 年後 中立 | 245 | 134.0% | 328 | 16 |
取り方:推定。開示は金額だけで、数量は無いため、実質の取扱高で置いた。2026 年 3 月期の内訳は未確認で、万博の売上 84 億円を含む。
ビル管理事業
ビル総合管理、大規模修繕、設備点検、清掃。
| 数量受託の規模(億円・今の値段の実質) | 価格値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 100.0% | 100 | 4 |
| 10 年後 中立 | 98.0 | 134.0% | 131 | 5 |
取り方:推定。2025 年 3 月期の 95 億円から微増とみた。利益は推定。
不動産事業
収益不動産の賃貸(7 件)、仲介、販売。
| 数量賃貸・仲介の規模(億円・今の値段の実質) | 価格値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 16.0 | 100.0% | 16 | 4 |
| 10 年後 中立 | 16.0 | 134.0% | 21 | 6 |
取り方:推定。減収減益と開示されている。2025 年 3 月期は 17 億円。利益は推定。
リスクと懸念
万博特需の剥落
2026 年 3 月期の営業利益 29 億円には、万博の警備売上 84 億円が含まれる。特需が消えれば、利益は 2025 年 3 月期の 10 億円前後に戻りかねない。会社も次の期は減益を見込む。
人件費の転嫁の遅れ
警備は人件費が原価の大半を占める。最低賃金の上昇を料金に転嫁できなければ、利益率はすぐに下がる。顧客の金融機関や公共施設は、料金の据え置きを求めることがある。
キャッシュレスによる数量の縮み
現金輸送と ATM 管理は、売上の約 2 割を占める。ATM の削減や金融機関の統合で数量が減る。他の警備で補えるかが課題である。
資本効率の低さ
自己資本が 233 億円と厚い一方、ROE は 3% 前後が長く続いた。中期計画の目標も 6〜7% にとどまり、資本コストに届かない。
大手との競争
セコムや ALSOK は規模で上回り、機械警備の技術でも先行する。関西の地盤が崩れると、契約を奪われる。
今後の分かれ目
- 2027 年 3 月期の営業利益が会社予想の 20 億円を上回ったら
- 特需を除いた稼ぐ力が上がっている証拠で、中立から楽観へ確率を寄せる材料になる。
- 営業利益率が 4% を割ったら
- 賃上げの転嫁が遅れた証拠で、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 統合型リゾートなど、万博に続く大型案件の受注を発表したら
- 特需が繰り返される可能性が出て、楽観の確率を少し上げる。
- 配当性向や DOE の下限を引き上げ、自社株買いを始めたら
- 資本効率の改善が本気とわかり、還元の積み上がりを重く見てよい。
- TOB など非公開化の提案が出たら
- 株価が上がる可能性はある。ただ、本質価値は提示価格でなく、稼ぐ力で決める。
見ておくもの
- 警備事業の営業利益率
- 万博後の売上の水準
- 現金輸送・ATM 管理の売上
- ROE と配当性向
倍率と資本コストの決め方
倍率は事業 ROE・資本コスト 7.5%・長期の成長 4% から式で置き、ROE が k 以下の筋書きでは上限 1÷k のうち 6〜7.5 割に置いた。今の PER・PBR や同業の倍率には寄せていない。現金輸送・警備の領域のノートは無く、サービス業の警備の節を参考にしたが、事業の実態(ビル管理・不動産を含む)で書いた。純現金は時価総額の 4% で、余った現金は分けていない。リースは小さく、新リース会計基準の後も今と同じ形で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13→15.02 倍・やや楽観 PER 11→13.57 倍・中立 PER 9.5→13.33 倍・悲観 PBR 0.3→0.31 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality を足した。個別のリスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.75% → 7.50%。