結論
フォースタートアップスは、成長企業の経営幹部採用を仲介し、起業家と投資家の人脈を事業化してきた会社だ。筆者の結論は「割高」である。足元の成約増と利益率回復は事実だが、10年間その勢いが続くと考えるには、採用という仕事の仕組み自体が変わりつつある。確率を加味した現在価値は約58億円となり、基準時価総額約91億円を約36%下回る。
2026年3月期は人材紹介989件を成約し、平均紹介手数料は前期から上昇した。2027年3月期の第1四半期も取引数は伸びたが、高年収層に偏った単価上昇には一過性の要因があると会社は説明する。これは長期の価格決定力と、景気や採用予算の追い風とを見分ける必要があることを示す。官公庁支援、スタートアップ情報データベース、新設のM&A仲介も育てているが、収益の中心は依然として人による採用仲介である。
最大の不確実性は、AIエージェントが候補者探索、経歴の評価、面談の手配、採用企業への提案を一体で代行することだ。経営幹部の信用形成と難しい交渉は残っても、成約までに必要な仲介人数と手数料が縮めば、売上を守り切れない。株主への配当はなく、経営が留保利益をどのような収益に変えるかも厳しく見るべきだ。優良な顧客接点と純現金は評価するが、期待できる事業の価値と払う価格を混同してはならない。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主にとって、最初の問いは「顧客が10年後も誰かに幹部採用を任せたいか」である。その答えは、おそらく肯定だろう。起業家の能力や相性を評価し、候補者が大きなリスクを取る決断を後押しする仕事は、経歴の検索だけでは完結しない。しかし、その顧客が同じ人数のエージェントに同じ成功報酬を払い続けるかは、全く別の問題である。
顧客との信頼は確かな資産だが、契約更新の強制力も、法制度が守る独占権もない。紹介件数が落ちると人材の変動費だけではなく、起業家との接点を保つための固定的な営業人員や都心オフィスの費用が利益に響く。労働集約的なサービスで現在のROEが高いことは、未来の追加投資が同じ利回りで増える保証ではない。買収や未上場投資に積んだ利益の増分収益率も、回収実績がまだ足りない。
資産面には救いがある。借金を差し引いても現金が残り、買い戻しの実行履歴がある。ただし一部の現金は人件費、税金、移転先オフィスの賃借、投資先支援に必要であり、手元資金の全額を余りと見てはいけない。事業から生まれる将来利益と、株主に戻り得る現金を別々に吟味することが肝要だ。
筆者が払う価格には、事業を取り巻く技術変化のわからなさに耐えられる余白が欲しい。会社の使命に賛同しても、新しい仲介事業の成約ゼロを確定利益のように扱うわけにはいかない。楽観的な業績の先には大きな価値がある一方、悪い筋書きの回収額も小さいため、今の価格には十分な安全域がないと判断する。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ頭はヒューマンキャピタル事業である。スタートアップや成長企業が経営幹部、事業責任者、専門人材を採用したとき、理論年収に応じた成功報酬を受け取る。2026年3月期の部門売上は44.76億円で全社の約85%を占めた。人材紹介と採用課題へのコンサルティングが含まれ、前年より増えた成約件数と高手数料率の案件が利益を押し上げた。
実際の稼ぎ方は、採用者の人数と1件当たり紹介手数料の掛け算で見える。2026年3月期の正社員紹介は989人、会社が示す管理上の平均単価は416.9万円であった。ただし、この単価は早期退職に伴う返金を控除していない。決算説明の四半期別に示された純売上に近い数値とは少し異なり、当分析では返金などを考慮して数量と単価を結び直した。
オープンイノベーション事業は、約2万6千社を収録するSTARTUP DBの法人向け利用料、自治体などから受けるアクセラレーション業務、カンファレンスのスポンサー収入からなる。2026年3月期は売上7.93億円だったが、2027年3月期にはカンファレンス開催を当面見送る方針で、年間売上を固定収入と見てはいけない。さらにスタートアップM&A仲介を育成中だが、2026年6月末には受託15件、成約ゼロであった。
ベンチャーキャピタル事業は人材支援先への投資を行う。2026年3月期は評価損を含めて部門損失を計上したが、翌期第2四半期に初の株式売却益が見込まれる。出口の時期と価額は大きくぶれるため、通常の人材紹介利益のように毎年繰り返す収益とは区別する。
優良さと弱いところ
同社の強みは、創業者、ベンチャーキャピタル、採用候補者の三者との接点を長く蓄積したことにある。まだ組織が小さく、公開求人だけでは経営幹部を採れない企業にとって、候補者の価値観まで見た紹介は高くつくが有用だ。人材紹介で年収帯の高い案件を増やし、会社が契約上の高手数料率を得た実績もあり、単なる低価格競争だけの仲介会社ではない。
ただし堀、つまり他社に容易に奪われない利益源としては、中程度の評価にとどめる。採用契約は案件ごとで、利用者が何年も移行作業を負担する仕組みではない。会社が得た経営者との信頼は強みだが、優秀な担当者が独立すれば関係も移り得る。ビズリーチ、JAC Recruitment、LinkedInを含む競合と企業内採用部門は、AIで候補者探索の費用を下げられる。
STARTUP DBは独自のデータ蓄積を持ち、実際に契約社数の増加と料金改定が確認できる。しかし解約率5%未満、法対応による移行障壁、共同利用の業務基盤といった複数の証拠までは確認できない。したがって「記録の正本」に当たる強い堀ではなく、情報サービスとして代替リスクを負う。2026年3月期の高いROEも立派だが、成果報酬が好調な年の利幅であり、それだけで増分投資の利回りが10年間保たれるとは言えない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のホワイトカラー人材紹介市場は、矢野経済研究所によれば2024年度に4,490億円で、専門職や管理職の採用単価上昇を背景に拡大した。同社の人材紹介売上約40億円は、この広い市場との単純比較では1%弱である。特化する未上場スタートアップの幹部採用だけを切り出した市場規模や競合シェアは公表が乏しく、同社が掲げる「圧倒的No.1」は定量的に立証された市場シェアとは区別したい。
競争相手は専業のエージェントだけではない。JAC Recruitmentの国内人材紹介売上は2025年に約417億円と同社より一桁大きく、ビズリーチは企業と候補者の直接接点を提供する。AIエージェントは応募者の探索、履歴の照合、求人票の作成、面談日程の調整を連続処理できるようになり、これらの費用を企業自身が負担する理由を減らす。最終的な口説きと役員級の選考は残っても、仲介を通す件数が減る危険がある。
追い風も存在する。STARTUP DBの調べでは2025年の国内スタートアップの株式による資金調達は約8,280億円、買収による出口は207件で、IPOの49件を大きく上回った。これが人材、事業提携、M&A支援の需要を生む。他方で資金を調達できた企業は2026年上半期に減っており、調達額の大きさが採用する企業数の拡大を保証しない。10年先は人口減少よりも、調達できる企業の選別とAIによる採用工程の内製化の方が成約件数を左右する。
資本政策と M&A
中期経営計画は、2028年3月期の売上高を76.8〜80億円、営業利益を15.36〜20億円とする修正目標を掲げる。2027年3月期の会社予想は売上64億円、営業利益14億円である。早期の売上100億円超と2031年3月期までのプライム市場基準への成長も目指すが、ROE、配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い額について、中計上の定量的な恒常目標は数字の約束なしである。
会社設立以来、普通配当は実施していない。他方で2026年2月には16万100株を約2億円で買い戻した。分割調整後の数年間の株数も減っており、全く還元していない会社とは異なる。経営は既存事業への投資、自己勘定のベンチャー投資、M&Aや新規事業、株主還元の順に資金を配る方針である。
2024年にウィルグループとの親子関係を解消し、2025年にはGOジョブへ出資、スパークス・グループとは資本業務提携した。自社の未上場投資は将来の大きな利益を生む可能性があるが、2026年3月期に評価損も出た。さらに2026年には取締役3人が合計上限1.5億円の株式を買う際、会社が融資を行う仕組みを導入した。経営陣の利害を一致させる意図は理解できるが、少数株主には貸付条件と回収可能性を追跡する必要がある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
同社が扱うのは、大量採用する事務職ではなく、会社の行方を左右する経営者や事業責任者だ。創業者は採用を間違えたときの損失が大きく、安い検索サービスより、自分の課題を理解する紹介者を重視する。既存顧客との継続関係を通じて、まだ公になっていない採用意欲を先に知れることも強い。2026年3月期の成約数の増加と高手数料率案件の獲得は、実際に顧客がその価値へ支払った証拠と読める。
AIが候補者整理などの事務工程を減らせば、優秀なヒューマンキャピタリストはより多くの経営者と接する時間を作れる。顧客の採用を代理する価値が維持できれば、一件当たりの人的費用は下がり、営業利益率を高められる余地がある。2027年3月期第1四半期に生産性の向上と高いセグメント利益率が続いたことも、その実例の入口である。ただし、これは自社のAI製品売上が既に立ったという意味ではない。
加えて、未上場株の出口はIPOだけではない。2025年には買収件数がIPO件数を上回り、スタートアップM&Aの受託先と買い手に同社のネットワークが使える。起業家の採用と企業売却を同じ相手から長期支援できれば、顧客生涯価値は増える。投資先株式の売却も成功すれば、通常の紹介料と別の還元原資になる。成長計画の達成だけでなく、複数の収益の柱と機動的な自社株買いがそろう10年間には、現在より相当に大きい企業価値も想定できる。
慎重な見方
過去の高い増収率を延ばすだけでは、10年先の価値を誤る。AIエージェントは企業の求人要件を理解し、候補者の選定から面談までを自動で動かせる。経営陣の最後の意思決定には人が残っても、採用企業が仲介を使う場面は減り、人材紹介会社の成功報酬は競争にさらされる。新規顧客との接点を増やすほど社員が必要だった収益モデルそのものが変われば、過去の人員生産性の改善も長期の優位性を保証しない。
足元の売上と利益は、創業期スタートアップの資金調達、エンジニア・経営幹部の採用意欲、紹介手数料の上昇が同じ方向に働いた結果でもある。2027年3月期第1四半期の紹介平均単価は高年収層の偏りが要因と会社が述べており、毎年同じ改善が続く証拠ではない。資金調達できるスタートアップが選別されれば、件数も単価も同時に落ちる。競合の大手紹介会社だけでなく、直接採用の媒体や採用業務の自動化会社も手数料を押し下げる。
多角化も確定利益ではない。STARTUP DBの独自情報は貴重だが、企業データの検索・要約はAIで代替されやすく、低解約率や高い移行障壁は公表されていない。自治体向け案件は予算と入札に左右され、カンファレンスは実際に開催見送りとなった。M&A仲介も15件の受託に対して初成約がなく、複雑な案件ほど工数が重い。ベンチャー投資では評価損が発生し、現金が投資に向かうほど、少数株主が自由に使える現金は減る。
どちらに重みを置いたか
幹部採用の信頼関係と現金の厚さは明確な長所だが、将来の紹介件数を昔の成長率で延ばす根拠は薄い。中立段階でAIエージェント代替による数量の縮みを織り込んだため、悲観確率に同じ理由を重ねていない。それでも下側を42%、上側を25%にしたのは、採用予算が未上場企業の資金調達に偏り、新規M&A仲介はまだ成約実績がなく、投資回収も不安定という固有の弱さがあるからだ。利益を正しく測るほど、現値には安全域が乏しい。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 1,580 円102 億円(+ 還元の換算額還元の合計 165 円11 億円)。 今の値に割り戻すと 901 円58 億円、今との差 −34.2%、 期待の年率 +2.6%(資本コスト 7.2%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 4,515 円291 億円 | 464 円30 億円 | +263.7% | +14.8% | 349 円22 億円 |
| やや楽観 | 18% | 3,043 円196 億円 | 340 円22 億円 | +147.1% | +10.1% | 609 円39 億円 |
| 中立 | 33% | 1,602 円103 億円 | 155 円10 億円 | +28.3% | +2.7% | 580 円37 億円 |
| やや悲観 | 27% | 455 円29 億円 | 62 円4 億円 | −62.3% | −9.7% | 139 円9 億円 |
| 悲観 | 15% | 433 円28 億円 | 23 円1 億円 | −66.7% | −10.6% | 68 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,580 円102 億円 | 165 円11 億円 | +27.5% | +2.6% | 1,745 円113 億円 |
今の株価時価総額 1,369 円88 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 7% 経営幹部の信頼を守り、複数の出口支援が収益化 利益 17 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 4,515 円291 億円
経営幹部の採用では、起業家の課題を理解する担当者と紹介後の信頼がブランドとして残る。2027〜2028年の収益回復後も、優良スタートアップの人材獲得に関して他社より早く相談が集まり、正社員紹介の年間件数をほぼ現在の水準で守る。単価は高年収帯の採用により物価並みまで上がるが、AIが生む数量拡大を仮定しない。JACや直接採用サービスとの競争に勝ち続ける、既存の人材仲介として最善に近い展開である。
STARTUP DBは独自情報の鮮度と法人顧客の拡大を保ち、自治体支援も案件の質を上げる。新規M&A仲介は年間10件の成約に育ち、IPO以外の出口を望む企業と大企業の買い手を結び付ける。投資先の株式売却も複数実現して現金が戻る。経営は買収よりも得意領域への再投資を優先し、余剰資金を買戻しと手元流動性に配分する。人的サービスであっても幹部採用の実効性を高められれば、10年先も高いオーナー利益を生む。
- ヒューマンキャピタル:人材紹介:数量 989(正社員の年間入社成約件数(人))× 価格 0.05(1人当たりの返金控除後に近い実現紹介手数料(億円/人、名目))→ 売上 54 億円・営業利益 27 億円。紹介件数は現在を上回らず、名目単価は物価並み
- ヒューマンキャピタル:採用コンサル:数量 40.0(年間の採用コンサル契約相当件数(件、推定))× 価格 0.14(1契約相当の平均受託料(億円/件、名目、推定))→ 売上 6 億円・営業利益 3 億円。AI代替の工数縮小を単価では補う
- オープンイノベーション:STARTUP DB:数量 150(法人有料利用契約の年間契約相当数(社、推定))× 価格 0.02(1契約相当の年間利用料(億円/社、名目、推定))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。有料DBの顧客維持、UI依存は残る
- オープンイノベーション:行政受託・イベント:数量 25.0(自治体委託・イベントを通算した案件相当件数(件、推定))× 価格 0.29(案件1件当たり平均売上(億円/件、名目、推定))→ 売上 7 億円・営業利益 2 億円。行政・イベントの主要案件を維持
- 新規:スタートアップM&A仲介:数量 10.0(年間に成立した仲介案件(件))× 価格 0.50(成約1件当たりの両手・片手を含む実現手数料(億円/件、推定))→ 売上 5 億円・営業利益 3 億円。未実現のM&A仲介が年間10件に成長
- ベンチャーキャピタル・自己勘定投資:数量 2.0(年間の投資先株式売却成功件数(件))× 価格 0.48(株式売却1件当たりの連結売上(億円/件、推定))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。初期の売却成功が2件発生
倍率:AIエージェント代替を受ける人月・情報型の10年後より先の名目成長率g_longは0%。資本コストkは7.25%、堀は普通でRONIC=k+0.5×(事業ROE−k)。g=0のため正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)=1/k=13.793倍。余剰現金75億円は税後受取利息1.4%を事業純利益から外し、現金の戻り方1.0で一回だけ加える。
確率:経営人材の高付加価値紹介を維持し、未成立のM&A仲介を年間10件まで育て、投資回収も重なる必要がある。AI自社製品の実販売は未確認なので既存の人月・情報型の数量は現在以上に増やさない。
やや楽観 18% 幹部紹介は小幅縮小するがM&Aが第二の柱に 利益 11 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3,043 円196 億円
人材紹介は、会社が2026年に示した生産性改善を一定程度維持する。AIで検索・書類作成が簡単になるため紹介件数は現在を下回るが、経営幹部を説得する部分には有料の第三者が引き続き必要とされる。成功報酬は名目で増え、求人企業の経営課題を深く知ることで高付加価値の案件を選べる。採用コンサルは作業量の縮小により人数と売上を減らすものの、全社の収益性は保たれる。
STARTUP DBの契約は一部減っても、企業の投資・提携候補を探す業務に使われる。オープンイノベーションの受託案件はむやみに広げず、入札採算を重視する。M&A仲介は年間6件の成約を獲得し、既存人材紹介先とのクロスセルが形になる。投資先の売却益は年に1件程度の変動収益にとどめ、利益の中心にはしない。利益の一部を自社株買いとして戻すため、株主に残る現金と事業の稼ぐ力が両立する。
- ヒューマンキャピタル:人材紹介:数量 900(正社員の年間入社成約件数(人))× 価格 0.05(1人当たりの返金控除後に近い実現紹介手数料(億円/人、名目))→ 売上 48 億円・営業利益 23 億円。件数9割、単価は物価弱
- ヒューマンキャピタル:採用コンサル:数量 34.0(年間の採用コンサル契約相当件数(件、推定))× 価格 0.14(1契約相当の平均受託料(億円/件、名目、推定))→ 売上 5 億円・営業利益 2 億円。人月契約数は85%に縮小
- オープンイノベーション:STARTUP DB:数量 135(法人有料利用契約の年間契約相当数(社、推定))× 価格 0.02(1契約相当の年間利用料(億円/社、名目、推定))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。ID契約数9割、単価は1.12倍
- オープンイノベーション:行政受託・イベント:数量 22.0(自治体委託・イベントを通算した案件相当件数(件、推定))× 価格 0.29(案件1件当たり平均売上(億円/件、名目、推定))→ 売上 6 億円・営業利益 2 億円。受託22件で価格は1.31倍
- 新規:スタートアップM&A仲介:数量 6.0(年間に成立した仲介案件(件))× 価格 0.48(成約1件当たりの両手・片手を含む実現手数料(億円/件、推定))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。年間6件の成約
- ベンチャーキャピタル・自己勘定投資:数量 1.0(年間の投資先株式売却成功件数(件))× 価格 0.48(株式売却1件当たりの連結売上(億円/件、推定))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。年1件の投資回収
倍率:AIエージェント代替を受ける人月・情報型の10年後より先の名目成長率g_longは0%。資本コストkは7.25%、堀は普通でRONIC=k+0.5×(事業ROE−k)。g=0のため正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)=1/k=13.793倍。余剰現金55億円は税後受取利息1.4%を事業純利益から外し、現金の戻り方1.0で一回だけ加える。
確率:紹介顧客の信用を守りながら採用仲介の一部は内製化され、M&A仲介の初成約から継続成約へ進む。長期には採用単価の伸びも物価の範囲とするため楽観ほどの広がりはない。
中立 33% AIによる仲介の内製化が進み、信用のある案件だけ残る 利益 5 億円 · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,602 円103 億円
2027年から2028年にかけては高水準の採用需要が続き、会社の中期計画にも一定の進展がある。その後、AIエージェントが候補者の探索や企業の採用工程を担い、直接採用への移行が進む。経営幹部との信用を保つ案件は残るものの、10年後の紹介件数は今の約7割となる。採用単価は物価に近く上昇するが、数量減を完全には打ち消せない。コンサル契約も工数削減と内製化で減り、高いセグメント利益率は部分的に残る。
STARTUP DBは情報検索型の契約が細り、自治体の育成案件も選別される。M&A仲介は新規事業として年間4件ほどの成約まで育つが、規模は紹介事業の減少を補う程度である。投資先のExitは不定期で、平年の利益には算入しない。本部人件費やオフィス費用はインフレで増えるため、会社は現在ほどの連結利益率を維持できない。内部留保が厚くなってROEは低下するが、純現金の蓄積と小規模な買い戻しが下値を支える。
- ヒューマンキャピタル:人材紹介:数量 710(正社員の年間入社成約件数(人))× 価格 0.05(1人当たりの返金控除後に近い実現紹介手数料(億円/人、名目))→ 売上 38 億円・営業利益 17 億円。AIエージェント代替で件数0.72倍、価格1.30倍
- ヒューマンキャピタル:採用コンサル:数量 26.0(年間の採用コンサル契約相当件数(件、推定))× 価格 0.14(1契約相当の平均受託料(億円/件、名目、推定))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。工数型の数量0.65倍、価格1.30倍
- オープンイノベーション:STARTUP DB:数量 120(法人有料利用契約の年間契約相当数(社、推定))× 価格 0.02(1契約相当の年間利用料(億円/社、名目、推定))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。画面・情報型の数量0.80倍、価格1.10倍
- オープンイノベーション:行政受託・イベント:数量 16.0(自治体委託・イベントを通算した案件相当件数(件、推定))× 価格 0.29(案件1件当たり平均売上(億円/件、名目、推定))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。自治体委託の数量0.64倍、価格1.30倍
- 新規:スタートアップM&A仲介:数量 4.0(年間に成立した仲介案件(件))× 価格 0.40(成約1件当たりの両手・片手を含む実現手数料(億円/件、推定))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。新設サービスが年4件のみ成約
- ベンチャーキャピタル・自己勘定投資:数量 0.0(年間の投資先株式売却成功件数(件))× 価格 0.48(株式売却1件当たりの連結売上(億円/件、推定))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。評価損・管理費が小さく残る
倍率:AIエージェント代替を受ける人月・情報型の10年後より先の名目成長率g_longは0%。資本コストkは7.25%、堀は普通でRONIC=k+0.5×(事業ROE−k)。g=0のため正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)=1/k=13.793倍。余剰現金40億円は税後受取利息1.4%を事業純利益から外し、現金の戻り方1.0で一回だけ加える。
確率:正社員紹介は2026年989件から2036年710件へ約28%減る。役員級への対面サービスは残るが、AIが候補者探索と企業の直接採用を普及させる中心的な展開と判断する。確率は単に現値へ合わせるためではない。
やや悲観 27% 採用の直接化と資金調達不振が重なり赤字化 利益 −2 億円 · PBR 1.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 455 円29 億円
スタートアップへの資金流入は一部の大型企業に集中し、多数の若い企業が幹部採用を先延ばしする。人材紹介会社の競争は激しくなり、企業はAIを使って候補者を直接探すため、紹介の年間件数は500件台に下がる。紹介単価は名目で増えるものの物価に遅れ、担当者の採算は悪くなる。会社は採用人員を減らしオフィス費用も見直すが、案件数が少ない時期には販管費を十分には吸収できず、10年後の営業利益は赤字となる。
STARTUP DBはAIによる情報抽出の競争で一部契約を失い、自治体の受託は補助金の選別に伴って細る。スタートアップM&A仲介は年間1件ほどの成約にとどまり、規模の経済が出ない。投資先の評価損が続き、現金の一部を消費する。最初の数年に稼いだ利益と現在の純現金は残るため、清算に近い評価まで一気に落ちるとまでは見ないが、成長企業としての堀は薄くなる。
- ヒューマンキャピタル:人材紹介:数量 560(正社員の年間入社成約件数(人))× 価格 0.05(1人当たりの返金控除後に近い実現紹介手数料(億円/人、名目))→ 売上 27 億円・営業利益 9 億円。成約件数560件と顧客の採用予算が低迷
- ヒューマンキャピタル:採用コンサル:数量 22.0(年間の採用コンサル契約相当件数(件、推定))× 価格 0.13(1契約相当の平均受託料(億円/件、名目、推定))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。受託22件まで縮小
- オープンイノベーション:STARTUP DB:数量 105(法人有料利用契約の年間契約相当数(社、推定))× 価格 0.02(1契約相当の年間利用料(億円/社、名目、推定))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。情報検索の代替が進む
- オープンイノベーション:行政受託・イベント:数量 14.0(自治体委託・イベントを通算した案件相当件数(件、推定))× 価格 0.26(案件1件当たり平均売上(億円/件、名目、推定))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。補助金縮小と開催停止が響く
- 新規:スタートアップM&A仲介:数量 1.0(年間に成立した仲介案件(件))× 価格 0.32(成約1件当たりの両手・片手を含む実現手数料(億円/件、推定))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。年間1件にとどまる
- ベンチャーキャピタル・自己勘定投資:数量 0.0(年間の投資先株式売却成功件数(件))× 価格 0.48(株式売却1件当たりの連結売上(億円/件、推定))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。投資の管理損失が残る
倍率:営業赤字であり、2036年の自己資本52億円に倍率を掛けると、事業の損失を反映できず資産価値を過大評価する。したがって現在の自己資本約27.5億円と純現金・売れる資産の税後回収価値28億円を比較し、後者を評価の基準とする。回収価値28億円に1.05倍を掛け、2036年の時価総額は29.40億円とした。床をわずかに上回る部分は、事業縮小後にも顧客関係と採用仲介の残存価値があると見込むためであり、将来積み上がった自己資本には倍率を掛けていない。過去の市場PBRも参照していない。
確率:下に寄せる理由:調達企業数の減少と未上場顧客への採用予算集中により紹介件数が下振れする固有リスクがある。AI縮小は中立にも含め、ここでは調達冷却と事業転換の遅れを追加する。
悲観 15% 仲介が構造的に敗れ、損失と事業縮小が定着 利益 −4 億円 · PBR 1.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 433 円28 億円
AIによる採用内製化と未上場企業の採用予算の落ち込みが同時に進む。紹介件数は450件まで減り、高単価の採用でも手数料の一部を値引くようになる。信用を売っていた人材仲介は、取引が減るほど候補者の鮮度も落ち、さらに競争力を失う悪循環に入る。担当者を削減しても本社の固定費と専門人材の維持費が残り、連結売上は2026年の約半分、最終利益は赤字が定着する。
データベースは利用社数と価格がともに低下する。行政受託は小規模案件だけになり、カンファレンスは再開できない。M&A仲介はまとまった成約を生めず、未上場投資も評価損が続く。経営は自己株買いを止め、投資事業を整理して現金の流出を抑える。残る価値は高成長の事業倍率ではなく、現在の純現金と回収可能な売掛金・金融資産を合わせた清算寄りの資産価値で測る。
- ヒューマンキャピタル:人材紹介:数量 450(正社員の年間入社成約件数(人))× 価格 0.04(1人当たりの返金控除後に近い実現紹介手数料(億円/人、名目))→ 売上 20 億円・営業利益 5 億円。人材紹介は450件まで縮小
- ヒューマンキャピタル:採用コンサル:数量 20.0(年間の採用コンサル契約相当件数(件、推定))× 価格 0.12(1契約相当の平均受託料(億円/件、名目、推定))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。工数契約が半減
- オープンイノベーション:STARTUP DB:数量 95.0(法人有料利用契約の年間契約相当数(社、推定))× 価格 0.02(1契約相当の年間利用料(億円/社、名目、推定))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。顧客・単価とも侵食
- オープンイノベーション:行政受託・イベント:数量 11.0(自治体委託・イベントを通算した案件相当件数(件、推定))× 価格 0.22(案件1件当たり平均売上(億円/件、名目、推定))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。受託11件で採算悪化
- 新規:スタートアップM&A仲介:数量 0.0(年間に成立した仲介案件(件))× 価格 0.40(成約1件当たりの両手・片手を含む実現手数料(億円/件、推定))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。新規仲介は成約しない
- ベンチャーキャピタル・自己勘定投資:数量 0.0(年間の投資先株式売却成功件数(件))× 価格 0.48(株式売却1件当たりの連結売上(億円/件、推定))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。有望な投資回収がない
倍率:AIによる採用仲介の構造的敗戦と投資評価損で恒常赤字となるため、利益を永続させるPER評価は用いない。現在の自己資本約27.5億円と純現金・売れる資産の税後回収価値28億円を比較し、後者を床とする。回収価値28億円に1.00倍を掛けて時価総額28億円とし、事業の超過収益は計上しない。2036年の自己資本31.2億円は将来の資本推移を表すだけで、PBRの分母には使わない。過去の市場PBRにも依存しない。
確率:下に寄せる理由:スタートアップ特化の顧客基盤が資金調達不況で同時に萎み、M&A仲介の組織づくりも失敗する複合的な敗戦。現在の黒字と純現金があるため倒産確率そのものとは区別する。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ヒューマンキャピタル:人材紹介
経営幹部・事業責任者などを紹介し、入社時の成功報酬を企業から得る。採用仲介という人の探索工数はAIエージェントによる代替対象。
| 数量正社員の年間入社成約件数(人) | 価格1人当たりの返金控除後に近い実現紹介手数料(億円/人、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 989 | 0.04 | 40 | 18 |
| 10 年後 中立 | 710 | 0.05 | 38 | 17 |
取り方:会社有報の正社員紹介989件×管理上の単価416.9万円は約41.23億円だが、早期退職返金を含まない集計である。決算説明資料の4四半期の紹介純売上(8.93+9.13+10.21+12.21億円)に対応する40.48億円を実現売上の近似とし、989で割った409.3万円を単価とした。2027/03期1Qは287件・460.8万円だが、会社が一時的な高年収案件と述べるため持続的値上げとは見なさない。AIエージェント代替型:中立数量は710/989=0.72倍、単価は1.30倍。出典:2026/03有報、2027/03期1Q決算説明資料。
ヒューマンキャピタル:採用コンサル
採用戦略・選考改善などを顧客企業へ役務提供する。人月・工数で売るコンサル型であり、AIによる業務代替を直接受ける。
| 数量年間の採用コンサル契約相当件数(件、推定) | 価格1契約相当の平均受託料(億円/件、名目、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 40.0 | 0.11 | 4 | 2 |
| 10 年後 中立 | 26.0 | 0.14 | 4 | 1 |
取り方:ヒューマンキャピタル売上44.76億円から決算説明資料で示された紹介売上の約40.48億円を引いた差4.28億円をコンサル関連の近似とした。契約社数と個別単価は非開示で、40件×約1,070万円は企業の継続採用支援を想定した逆算の推定であり開示KPIではない。AIエージェント代替の人月・工数型として中立数量0.65倍、名目単価1.30倍で評価。
オープンイノベーション:STARTUP DB
スタートアップの独自調査情報と企業マッチング支援を法人契約で提供する。独自データはあるが解約率などの堀の数値が不足し、情報・操作画面型として扱う。
| 数量法人有料利用契約の年間契約相当数(社、推定) | 価格1契約相当の年間利用料(億円/社、名目、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 150 | 0.02 | 2 | 1 |
| 10 年後 中立 | 120 | 0.02 | 2 | 0 |
取り方:全社開示のオープンイノベーション売上7.93億円にはSTARTUP DB・アクセラレーション・GRICが合算され、商品別の売上・契約数・単価は非開示。データベースには約2万6千社を収録。7.93億円のうち2.43億円を有料法人利用と仮置きし、年間150契約×約162万円に分解した推定である。値上げ・契約数増は開示されたが低解約率などの証拠が2つないため、AIエージェント代替の席課金・情報サービス型として中立数量0.80倍、価格1.10倍。
オープンイノベーション:行政受託・イベント
自治体のスタートアップ育成・連携事業とカンファレンスの運営・スポンサー獲得。行政予算と人的工数に依存し、GRICは開催見送りとなった。
| 数量自治体委託・イベントを通算した案件相当件数(件、推定) | 価格案件1件当たり平均売上(億円/件、名目、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 25.0 | 0.22 | 6 | 2 |
| 10 年後 中立 | 16.0 | 0.29 | 5 | 1 |
取り方:2026/03期のオープンイノベーション部門7.93億円からSTARTUP DBへの推定2.43億円を除いた5.50億円を、25案件×平均2,200万円に仮分解した。案件数・内訳は会社非開示で、この25件は数量実績ではない。2027/03期にはGRICを開催見送りとするため中立で16件とした。AIエージェント代替の人月・工数型で中立数量0.64倍、価格1.30倍。
新規:スタートアップM&A仲介
成長企業の買収・売却を人脈と企業分析で支え、成立時の成功報酬を得る。2026年6月末の受託15件に対し成約ゼロで、収益は未実証。
| 数量年間に成立した仲介案件(件) | 価格成約1件当たりの両手・片手を含む実現手数料(億円/件、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.0 | 0.40 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 4.0 | 0.40 | 2 | 1 |
取り方:2027/03期1Q資料では2026年6月末に仲介受託累計15件、成約ゼロ。基準年度2026/03の売上はゼロとした。1件当たり手数料0.40億円は、買収価格8〜12億円程度に対し数%の手数料を得る仮定で会社開示単価ではない。2025年国内スタートアップ買収207件のうち中立年間4件は約1.9%で、10年で成功報酬事業へ成長する可能性だけを計上。AIによる資料作成・探索代替の人月型リスクがあるが、数量増の理由は既に確認できる売却需要と新規参入でありAI製品販売ではない。
ベンチャーキャピタル・自己勘定投資
スタートアップへの未上場出資と回収。恒常的な成長サービスとは異なり、投資先のExit時だけ収益が発生する。
| 数量年間の投資先株式売却成功件数(件) | 価格株式売却1件当たりの連結売上(億円/件、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.0 | 0.48 | 0 | −1 |
| 10 年後 中立 | 0.0 | 0.48 | 0 | 0 |
取り方:2026/03はベンチャーキャピタルの売上計上0・セグメント評価損を含む損失1.01億円。2026年6月売却済みの保有株式は2027/03期2Qに売上約0.48億円、売上総利益約0.43億円を見込むので、1案件の金額の例として0.48億円を参照した。継続的な年金収入ではないため中立売却件数0、楽観にだけ売却成功を加える。投資保有資産は余剰現金と二重に足さない。
リスクと懸念
AIエージェント代替
主力の人材紹介は候補者探索から面談設定、企業への提案までを人手に依存している。AIエージェントが採用企業と候補者を直接つなぐほど、仲介する件数や手数料率が下がる。採用コンサル、自治体受託、STARTUP DBの画面閲覧も置き換えが進み得る。中立の数量減と長期成長率0%に織り込み、資本コストの寿命に同じ理由を重ねていない。
未上場企業の資金調達に偏る
スタートアップの資金調達総額が一定でも、調達できる企業数が減れば幹部採用の案件は細る。取引企業が採用凍結を同時に行い、決定年収の低下と成約件数の減少が重なると、紹介社員の固定費を吸収できない。VCや大企業向け開拓による顧客分散が実際の売上比率に現れるか確認が要る。
成功報酬単価と顧客の交渉力
2027年3月期第1四半期には紹介単価が上がったが、会社は高年収案件が偏った一時的な要因だと説明する。顧客が採用費用を抑制し、大手紹介会社や自社のAI採用業務と比較するようになれば、手数料率には下押し圧力がかかる。短期間の値上がりを恒久的な価格決定力と見誤る危険がある。
M&A仲介の立ち上がり遅延
新規事業のスタートアップM&A仲介は2026年6月末時点で累計受託15件ながら成約ゼロだった。複数株主との交渉や優先株式の調整は工数が重く、受託件数の多さがすぐ売上に変わらない。年間4件の中立仮説さえ達成しない場合、第二の収益の柱という期待を下げる必要がある。
自己勘定投資と資本配分
2026年3月期のベンチャーキャピタル事業には評価損が発生した。未上場株式は売却時期が読みにくく、会社の現金が投資先に拘束されると普通株主へ返る資金が減る。GOジョブ関連の持分法損失や取締役への株式取得資金融資についても、損益だけでなく現金回収まで追跡すべきである。
都心オフィス賃借と人的費用
人材サービスは大きな製造設備を持たないが、担当者の給与と麻布台のオフィス賃借は固定費として残る。成約件数が急減した局面でこれらを削減するには時間がかかる。新リース会計で賃借料が使用権資産と負債として計上されても、事業から出ていく現金そのものは減らない。
人脈・個人情報の管理
同社の競争力は担当者が持つ創業者との信頼と、企業・候補者の情報にかかっている。人材の退職や独立による関係流出、データ漏洩、誤った採用判断が評判を損ねると、価格より先に顧客が離れる。利用者情報をAIの外部サービスに渡す場合の同意と管理にも継続投資を要する。
今後の分かれ目
- 人材紹介の入社決定件数が今後3年で1,200件を超え、その後も高い求人企業維持率が確認できたら
- 経営幹部の人脈がAI代替から守られる証拠と見る。中立の紹介件数と人材部門利益率を上げ、上側の筋書きの重みも増やす。
- 紹介単価が会社自身のいう一時要因を除いても上昇し、高手数料率契約の継続率が開示されたら
- 値付け力を再評価する。単なる採用者年収の上昇と、取引先が離れない実質的な料金引上げを分けて検証する。
- 新設のスタートアップM&A仲介が複数年度で年間5件以上成約し、案件別の粗利益と工数が開示されたら
- 新規収益の再現性が確認できるため、中立で想定した年間4件を修正する。収益の質が確認できるまでは発表された受託件数を売上とみなさない。
- STARTUP DBの解約率が年5%未満で、規制対応や移行負担の実例も示されたら
- データ事業のうち条件が満たされた部分だけ「記録の正本」に近い堀と評価する。情報サービス全体のAI代替リスクを一律に軽くすることはしない。
- 資金調達したスタートアップの社数が大幅に減り、人材紹介件数も前年割れが続いたら
- 採用仲介の数量前提を引き下げ、固定費の吸収不足を営業利益に反映する。会社が大型M&Aで穴を埋める場合は買収価格と増分ROICを別途調べる。
- 毎年の利益に対する買戻し・配当の比率が増え、投資先株式も現金で回収されたら
- 余剰現金の株主への戻り方を維持し、留保資金のうち実際に自由に使える割合を増やす。配当性向などの数字の約束が新設されたかも確認する。
- 取締役への株式取得資金融資が損失化したり、ベンチャー投資で大規模評価損が出たら
- 余剰現金と悲観の回収価値を削り、資本配分が株主のために機能しているかを改めて評価する。
見ておくもの
- 人材紹介の四半期入社決定件数・平均手数料・高手数料率案件の比率
- 1人当たり決定件数、新規面談から面接設定UUへの転換率
- 2028年3月期の中計修正目標(売上76.8〜80億円、営業利益15.36〜20億円)の進捗
- STARTUP DBの有料契約数・解約率・料金改定とアクセラレーションの受託額
- スタートアップM&A仲介の受託15件からの初成約・年間成約件数・案件粗利
- 国内スタートアップの資金調達社数とM&AによるExit件数
- 営業投資有価証券とGOジョブ持分の評価・実際の投資回収額
- 自社株買い実施額、株数の減少、配当方針と2026年の取締役融資の回収
倍率と資本コストの決め方
事業ごとの実質数量と名目単価から2036年の売上を出し、現在の時価総額や過去・同業のPERを前提に使っていない。人月・情報サービスの10年より先の名目成長率は0%、資本コストは7.25%で、楽観〜中立の正当化PERは約13.79倍である。現金利息の税後1.4%を事業純利益から除き、余剰現金を一度だけ加えた。
悲観側は営業・純利益が赤字となるためPERではなく、今ある資産の回収可能額を基準にした。現在の自己資本約27.5億円と純現金・売れる資産の税後回収価値28億円を比較し、後者をPBRの基準額に採用した。やや悲観は28億円×1.05倍=29.40億円、悲観は28億円×1.00倍=28.00億円である。2036年の自己資本52億円および31.2億円には倍率を掛けていない。両方とも28億円の床を下回らず、上側より価値が低い。
今後10年の利益と還元から自己資本を積み上げ、保有現金の株主への戻り方は自己株買いの実績に基づき1.0とした。現金が10年間無条件で増えると見ず、採用費と投資先支援に必要な資金を区別している。2028年3月期以降の新リース会計による負債表示の変化は、家賃費用と二重計上しない。修正後の5筋書きの確率加重現在価値は約58.1億円、基準時価総額約91.37億円との差は約−36.4%となり、判定は「割高」である。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。国債3%、株式リスクプレミアム4.5%の基本7.5%に、循環0%、価格0%、純現金−0.25%、寿命0%を加えた。βや規模による割増しは採らない。