結論
オリエンタルコンサルタンツホールディングスは、道路・橋・水・防災の計画と設計を請け負う建設コンサルタントの持株会社だ。国内に加え、途上国のインフラ支援(ODA)では、グループの海外会社が売上で首位に立つ。
結論から言う。筆者は、10年後の本質価値は今の時価総額362億円とほぼ同じ水準と見る。受注残は売上の1.5年分あり、成長は続く。ただ営業利益率は6%弱と薄く、稼ぎは技術者の工数に縛られる。AIが設計の手間を減らせば、単価の伸びは物価に届かない。
財務は厚くない。純有利子負債は89億円で、運転資金を借りて回している。自己資本比率は36%と、同業の水インフラ系より低い。その分、利益が出れば配当と自社株買いで株主に戻す姿勢は明確だ。
割安とも割高とも言い切れない。需要の堅さと海外の受注残は評価できるが、払う値段に余裕を見込める事業ではない。筆者は、数字の伸びより、利益率と財務の脆さを先に見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、持ち続けたい事業かと問う。答えは「悪くないが、安全域は狭い」だ。公共の設計は止まらない仕事で、10年先も残る。海外ODAで首位級の実績は、簡単にはまねできない。受注残が売上の1.5年分あり、数年は見通しが立つ。
気になるのは利益率の薄さだ。営業利益率は6%弱で、売上が少し崩れるだけで利益が大きく減る。稼ぎの元手は人だけで、人件費は物価で上がる。ROEが10%前後で資本コストをわずかに上回る程度なのは、この構造の表れだ。
資本の配分は評価できる。配当性向40%と自社株買いを両立させ、買収は小粒に抑えている。一方で運転資金の借入が増えやすく、金利の上昇が重い。
安全域は狭い。中立の筋書きの10年後の価値の現在価値は、今の時価総額と同じ程度だ。悲観に当たれば、純現金はなく、床は低い。大きく報われる値段でもなく、大きく傷つく値段でもない。
何で稼ぐ会社か
事業の柱は国内の建設コンサルと、海外のインフラ・コンサルの2つだ。国内は連結の中核会社オリエンタルコンサルタンツが、道路、橋、河川、上下水道、防災、都市計画の調査と設計を、国と自治体から受ける。日経コンストラクションの2025年の部門別ランキングでは、同社は4位、海外のオリエンタルコンサルタンツグローバルは5位だった。
海外は2025年9月期で売上の約4割(見込みは36%)を占める。インドネシアのジャカルタLRT、トルコのマルマライ海峡横断地下鉄、ホンジュラスの橋の架け替えなど、アジア・中南米・中東で設計と施工監理を担う。ODA売上のランキングでは、グループの海外会社が約278億円で首位だった。
周辺の会社も持つ。アサノ大成基礎エンジニアリングは地質・土壌の調査と工事、リサーチアンドソリューションは積算や工事管理のITを担当する。2025年にはチリのコンサルを子会社にした。
報酬は技術者の稼働に比例する受託型で、売上は人数と1人当たりの単価で決まる。受注残高は2025年3月末で1,452億円に達し、うち約8割が海外の長期案件だ。会社は2030年9月期に売上1,100億円以上、営業利益70億円以上、営業利益率6%以上を掲げる。社員は3,600人前後から5,000人以上へ増やす計画だ。
優良さと弱いところ
強みは、海外ODAの実績と受注残の厚さだ。途上国の鉄道・道路・電力の案件は、設計から施工監理まで通すため、一度受けると数年の売上が見える。海外の受注残は売上の約4年分ある。国内も防災・減災の国土強靱化と維持管理が追い風で、公共の需要は堅い。
ただ、堀は普通と見る。受注は入札とプロポーザルで決まり、値段は自分で決めにくい。ODAは日本政府の予算に左右され、案件ごとに利益率もぶれる。技術者が動けば知見も動く。
資本効率は悪くない。ROEは直近で13%、過去10年の中央値は12%だ。営業利益率は2014年の2%台から、2025年は5.9%まで改善した。ただ利益率の水準そのものは低く、人の工数が売上の源である点は、他の建設コンサルと変わらない。
経営は還元に前向きだ。配当性向40%を目安とし、自社株買いも毎期続ける。弱みは、運転資金の借入が膨らみやすいことと、海外の大型案件の採算が読みにくいことの2つである。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
建設コンサルは、公共事業の上流を担う人材業だ。国内の公共事業は名目で横ばいに近いが、第1次国土強靱化実施中期計画が2026年度から5年間で20兆円強を見込み、道路や上下水道の老朽化対策にも予算が付く。2025年に埼玉県八潮市で起きた下水管の陥没が、更新の優先度を押し上げた。
海外は途上国のインフラ需要が旺盛だ。日本のODAは円借款を軸に、鉄道・橋・電力の案件を出し続けている。ただし円借款の案件は、現地の政情や資金繰りで工期が延びやすい。
競合は日本工営(現ID&Eホールディングス)、パシフィックコンサルタンツ、建設技術研究所、八千代エンジニヤリング、いであなどだ。国内は上位が割拠し、海外のODAでは日本工営が次点にいる。
10年で見ると、新設工事は減り、更新と維持が国内の仕事の中心になる。人口が減る中で、技術者の確保が成長の天井になる。AIは図面や数量計算を肩代わりし、工数を減らす。減った工数を新しい案件に回せるのか、単価の引き下げにつながるのかが分かれ目になる。筆者は、中立で国内の数量を小さく伸ばし、単価の伸びは物価に届かないと置く。
資本政策と M&A
還元の方針ははっきりしている。配当性向は40%程度を目安とし、2025年9月期から数字で示した。2025年9月期の期末配当は、分割前の株数で前の期から大きく増えた。2026年9月期は、分割後の株数で実質の増配を予定する。自社株買いは毎期続け、近年は年に3〜4億円ほどだ。
株主優待は、毎年6月末の株主にQUOカードを贈る。200株で少額のカードと小さく、年間の費用は1億円に届かない。
成長のための買収は小粒だ。2018年に大成基礎設計(現アサノ大成基礎エンジニアリング)を子会社にし、2025年にチリのコンサルを加えた。のれんは4億円で、大型買収で価値を壊す心配は小さい。
資金は運転資金の借入が中心で、短期借入金は185億円ある。借り換えのたびに金利が上がると、利益が圧迫される。TOBやMBOの発表は確認できなかった。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
需要は堅く、受注は積み上がっている。国土強靱化の予算は2026年度から5年で20兆円強、道路や上下水道の老朽化対策も続く。受注残は1,452億円で、売上の1.5年分に当たる。海外の受注残は約4年分あり、数年の売上が見えている。
グループの海外会社はODA売上で首位に立つ。ジャカルタのLRT、トルコの海峡横断地下鉄のような国家プロジェクトの実績は、新規の参入者には作れない。会社は2030年に売上1,100億円、営業利益70億円を掲げるが、2026年9月期の予想がすでに売上1,000億円、営業利益60億円で、計画は前倒しで進んでいる。
配当性向40%と毎期の自社株買いで、利益の成長がそのまま株主に届く。技術士の署名と許認可は、AIが図面を描いても残る。浮いた工数は新しい案件に回せる。営業利益率が7%に乗れば、純利益は70億円に届く。実績が計画を追い越してきた会社であり、目標を低く置く癖があると見ることもできる。
慎重な見方
利益率が薄い。営業利益率は6%弱で、1ポイントの低下が営業利益の2割近くを消す。売上は人の工数で決まり、AIが設計と積算の手間を減らせば、発注側は成果払いと単価の引き下げを求める。公共の予定価格が労務単価に連動しても、省力化の分は発注側が取る。
海外は大型案件の採算が読みにくい。円借款の案件は政情や資金繰りで工期が延び、為替も動く。ODA予算が縮めば、受注残の約8割を占める海外が一気に細る。
財務も厚くない。純有利子負債は89億円で、短期借入金が185億円ある。借り換えで金利が3%台に上がると、利益が削られる。自己資本比率は36%と、同業の水インフラ系の8割台より大きく低い。国内の公共工事は入札で競争が激しく、利益率を上げにくい。技術者の採用も難しく、会社の5,000人計画は買収を前提にしている。人件費だけが先に上がる局面が最も怖い。会社の目標の営業利益率6%以上は、すでに実績に並んでおり、先の伸びしろを語っていない。
どちらに重みを置いたか
需要の堅さと受注残は、強気の見方が正しい。ただ筆者は、利益率の薄さと、AIによる工数の削減が単価の伸びを物価に届かせない点を重く見る。許認可の型なので、数量の減りはやや悲観と悲観に入れた。
確率は、悲観とやや悲観を合わせて30%に置いた。期待は今の値段とほぼ同じ水準で、割安とも割高とも言い切れない。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/09 期)
確率で加重した株価時価総額 5,454 円652 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,749 円209 億円)。 今の値に割り戻すと 3,941 円471 億円、今との差 +29.4%、 期待の年率 +9.0%(資本コスト 7.2%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 9,074 円1,085 億円 | 2,285 円273 億円 | +273.0% | +14.1% | 795 円95 億円 |
| やや楽観 | 23% | 7,517 円899 億円 | 2,042 円244 億円 | +213.9% | +12.1% | 2,199 円263 億円 |
| 中立 | 40% | 6,400 円765 億円 | 1,844 円221 億円 | +170.8% | +10.5% | 3,298 円394 億円 |
| やや悲観 | 20% | 2,313 円277 億円 | 1,493 円179 億円 | +25.0% | +2.3% | 761 円91 億円 |
| 悲観 | 10% | 669 円80 億円 | 836 円100 億円 | −50.6% | −6.8% | 151 円18 億円 |
| 加重平均 | 100% | 5,454 円652 億円 | 1,749 円209 億円 | +136.6% | +9.0% | 7,203 円861 億円 |
今の株価時価総額 3,045 円364 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 7% 海外が伸び続け、利益率が7%台に乗る 利益 71 億円 · PER 15.3 倍 · 株価時価総額 9,074 円1,085 億円
国土強靱化の予算と途上国のインフラ需要が重なり、国内の人員は25%、海外は35%増える。会社の2030年の人員計画に近づく。AIは図面と数量計算を引き受けるが、浮いた工数は新しい案件に回る。国内の単価は物価並みの1.34倍まで上がり、営業利益率は7.5%に届く。海外は大型案件の採算が改善し、6.5%になる。全社の売上は約1,650億円と今の1.7倍、営業利益は約117億円になる。会社が掲げる2030年の営業利益70億円を、10年後には大きく上回る。配当性向40%と自社株買いで、利益の伸びが株主に届く。
- 国内(建設コンサルティング):数量 2,875(国内の技術者・従業員(人、推定))× 価格 3,554(1人当たりの年間売上(万円))→ 売上 1,022 億円・営業利益 77 億円。数量 1.25 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 7.5%
- 海外(インフラ・コンサルティング):数量 1,755(海外の技術者・従業員(人、推定))× 価格 3,546(1人当たりの年間売上(万円))→ 売上 622 億円・営業利益 40 億円。数量 1.35 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 6.5%
倍率:事業の純利益 71 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.7% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 9.1%、10 年より先の名目の伸び g 2.5% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.3 倍。全体の PER 15.26 倍、時価総額 1,085 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の更新需要と海外ODAの受注残が全部生き、営業利益率が7%台に乗る筋書き。AIで伸びる前提は置かないため、7%に絞った。
やや楽観 23% 受注残を消化し、人員が2割ほど増える 利益 60 億円 · PER 15.0 倍 · 株価時価総額 7,517 円899 億円
国内は防災・減災と維持管理で人員が17%増え、海外は受注残を消化しながら25%増える。AIは作図と報告書づくりを減らすが、技術士が署名する設計の価値は残る。国内の単価は1.32倍で、営業利益率は7%になる。海外は5.8%に改善する。全社の売上は約1,500億円と今の1.6倍、営業利益は約98億円になる。会社の計画する2030年の営業利益70億円を、数年遅れで超える形だ。採用が成長の天井になり、人件費の先行が利益率の頭を押さえる。運転資金の借入は増えるが、利益で十分に払える。海外は大型案件をこなす力が評価され、受注の質が上がる。
- 国内(建設コンサルティング):数量 2,691(国内の技術者・従業員(人、推定))× 価格 3,501(1人当たりの年間売上(万円))→ 売上 942 億円・営業利益 66 億円。数量 1.17 倍・価格 1.32 倍・営業利益率 7.0%
- 海外(インフラ・コンサルティング):数量 1,625(海外の技術者・従業員(人、推定))× 価格 3,440(1人当たりの年間売上(万円))→ 売上 559 億円・営業利益 32 億円。数量 1.25 倍・価格 1.30 倍・営業利益率 5.8%
倍率:事業の純利益 60 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.5% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 8.7%、10 年より先の名目の伸び g 2.5% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.0 倍。全体の PER 14.98 倍、時価総額 891 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の更新需要と海外の受注残が続き、営業利益率が7%台に近づく筋書き。AIの影響は事務部分に収まる。公共の需要の堅さを踏まえ、23%を置いた。
中立 40% 人員は小さく伸びる。予算は堅いが工数の削減が単価に響く 利益 50 億円 · PER 14.8 倍 · 株価時価総額 6,400 円765 億円
国土強靱化と上下水道の更新で国内の予算は続き、人員は1割増える。海外は受注残を消化しつつ、新規の案件を足して15%増える。AIが数量計算と図面づくりを減らし、発注側は単価の上昇を抑える。国内の単価は1.30倍、海外は1.25倍にとどまる。営業利益率は国内6.5%、海外5.3%で、全社で6.0%強になる。売上は約1,370億円と今の1.4倍、営業利益は約83億円になる。会社が掲げる2030年の営業利益70億円に、数年遅れで届く。運転資金の借入は膨らみやすいが、金利の負担は利益で吸収できる。堅いが平凡な10年である。
- 国内(建設コンサルティング):数量 2,530(国内の技術者・従業員(人、推定))× 価格 3,448(1人当たりの年間売上(万円))→ 売上 872 億円・営業利益 57 億円。数量 1.10 倍・価格 1.30 倍・営業利益率 6.5%
- 海外(インフラ・コンサルティング):数量 1,495(海外の技術者・従業員(人、推定))× 価格 3,308(1人当たりの年間売上(万円))→ 売上 495 億円・営業利益 26 億円。数量 1.15 倍・価格 1.25 倍・営業利益率 5.3%
倍率:事業の純利益 50 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.8% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 8.4%、10 年より先の名目の伸び g 2.5% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.8 倍。全体の PER 14.8 倍、時価総額 740 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:公共の需要は堅く、AIの影響が事務部分に収まる中心の筋書き。国内の数量1.10倍・価格1.30倍、海外の数量1.15倍・価格1.25倍と、決まりの「今の置き方を基本」に単価の伸びの鈍りを足して置いた。数量と価格に入れた分を、確率とgで重ねて引いていない。
やや悲観 20% 工数の削減が値下げに転じ、海外の採算が崩れる 利益 27 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 2,313 円277 億円
AIが設計と積算の工数を大きく減らし、発注側は成果払いと予定価格の見直しを進める。国内の人員は5%減り、単価は1.20倍にとどまる。営業利益率は4.8%に下がる。海外は円借款の案件が延び、一部で採算が崩れる。人員は1割減り、利益率は3.5%に落ちる。全社の売上は約1,050億円と今より1割強増えるだけで、営業利益は約46億円と今を下回る。技術者の確保は難しく、5,000人計画は届かない。配当性向は守るが、自社株買いは細る。事業の存続は揺らがない。ただ、利益の伸びが止まる年が続き、株主の目は厳しくなる。
- 国内(建設コンサルティング):数量 2,185(国内の技術者・従業員(人、推定))× 価格 3,183(1人当たりの年間売上(万円))→ 売上 695 億円・営業利益 33 億円。数量 0.95 倍・価格 1.20 倍・営業利益率 4.8%
- 海外(インフラ・コンサルティング):数量 1,170(海外の技術者・従業員(人、推定))× 価格 3,043(1人当たりの年間売上(万円))→ 売上 356 億円・営業利益 13 億円。数量 0.90 倍・価格 1.15 倍・営業利益率 3.5%
倍率:事業の ROE 6.2%。RONIC = k 7.25% + 残る割合 1/2 ×(ROE − k)、g は名目 2.5%(更新需要は続くが人の工数が天井)、正当化 PER は約 12.1 倍。ROE が k 以下なので、ためた利益は額面未満の価値で、PER は 1÷k = 12.1 倍を ROE÷k の割合で下げた。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 8.5 倍・時価総額 227 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:AIの工数削減が成果払いと予定価格の引き下げにつながり、海外も大型案件の採算が崩れる筋書き。公共の需要の堅さと許認可の型を踏まえ、20%を置いた。
悲観 10% 設計の自動化とODAの縮みで、利益がほぼ消える 利益 4 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 669 円80 億円
AIが設計・積算・報告書づくりの大半を引き受け、発注側は成果に応じた安い単価でしか払わなくなる。国内の人員は3割減り、単価は1.05倍と、物価に大きく届かない。営業利益率は2%まで落ちる。ODA予算が縮み、海外の受注は途切れて、受注残の消化が終わるとともに売上が細る。海外は赤字で、人員を4割減らす。全社の売上は約650億円と今の3分の2、営業利益は約9億円になる。運転資金の借入は、売上が縮むことで返せる。残る価値は小さく、事業の稼ぐ力と持っている有価証券が中心になる。配当は細り、自社株買いは止まる。
- 国内(建設コンサルティング):数量 1,610(国内の技術者・従業員(人、推定))× 価格 2,785(1人当たりの年間売上(万円))→ 売上 448 億円・営業利益 9 億円。数量 0.70 倍・価格 1.05 倍・営業利益率 2.0%
- 海外(インフラ・コンサルティング):数量 780(海外の技術者・従業員(人、推定))× 価格 2,646(1人当たりの年間売上(万円))→ 売上 206 億円・営業利益 0 億円。数量 0.60 倍・価格 1.00 倍・営業利益率 0.0%
倍率:稼ぐ力が崩れた姿。事業の稼ぎは小さく、持っている有価証券の税後分と合わせた約80億円を、今の自己資本285億円に対する PBR で表す。
確率:AIが設計の大半を自動化し、ODA予算も縮んで海外の受注が細る筋書き。公共の設計という性質上、起こりにくいと見て10%にとどめた。やや悲観と合わせて30%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内(建設コンサルティング)
道路・橋・河川・上下水道・防災の調査と設計、地質・土壌調査、積算ITを国と自治体に提供する。
| 数量国内の技術者・従業員(人、推定) | 価格1人当たりの年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 2,300 | 2,652 | 610 | 39 |
| 10 年後 中立 | 2,530 | 3,448 | 872 | 57 |
取り方:連結売上954億円のうち、国内が約64%(2025年9月期の見込みを示した説明資料の「国内64%・海外36%」)の610億円と置いた。社員数は説明資料の図から約3,600人と読み、国内を約2,300人、海外を約1,300人と推定した。人員の分け方と利益率の分け方(国内6.4%・海外5.0%)は推定で、開示はセグメント別でない。先の価格は人件費の物価3%を転嫁して1.34倍が目安だが、AI エージェント代替の型(建設コンサルの許認可業務。設計と積算の工数が減り、成果払いの圧力が出る)で、中立は1.30倍とした。
海外(インフラ・コンサルティング)
途上国の鉄道・道路・橋・電力のODA案件の設計と施工監理。インドネシア、トルコ、中米、ネパールなど。
| 数量海外の技術者・従業員(人、推定) | 価格1人当たりの年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 1,300 | 2,646 | 344 | 17 |
| 10 年後 中立 | 1,495 | 3,308 | 495 | 26 |
取り方:連結売上954億円から国内の610億円を引いた344億円を海外とし、現地法人の技術者を含む約1,300人(推定)で割って1人当たり約2,650万円とした。為替は150円で固定。海外の受注残は売上の約4年分で、数量は国内より伸びやすいと置いたが、ODA予算の縮小と大型案件の工期延びを悪い側に入れた。先の価格は現地の人件費と円借款の単価で、中立は1.25倍とした。
リスクと懸念
AIによる設計工数の削減(AI エージェント代替)
稼ぎの源は技術者の工数だ。AIが数量計算・図面・報告書づくりを減らせば、発注側は成果払いや予定価格の引き下げを求める。技術士の署名と許認可は残るため、中立では国内の単価を物価の1.34倍から1.30倍に抑え、数量の減りはやや悲観と悲観に入れた。
薄い営業利益率
営業利益率は6%弱で、1ポイント下がると営業利益が2割近く減る。人件費が物価で先に上がり、公共の単価が遅れて上がると、増収でも利益が増えない。
海外案件の工期延びと採算
円借款の案件は政情や資金繰りで工期が延びやすい。受注残の約8割が海外で、一部の大型案件の採算が崩れれば、全社の利益に響く。為替も動く。
運転資金の借入と金利
短期借入金は185億円、純有利子負債は89億円。借り換えのたびに金利が上がり、利益を圧迫する。自己資本比率は36%と、同業の水インフラ系より低い。
ODA予算の縮小
海外は日本政府のODA予算に左右される。円借款の枠が細れば、新規の受注が減り、受注残が消化されたあとの売上が落ちる。
技術者の確保と買収の統合
2030年に社員を5,000人以上に増やす計画は、採用だけでは届きにくく、買収を前提にする。統合に失敗すれば人材が抜け、のれんの減損が出る。
今後の分かれ目
- 海外の受注残が消化されたあとも、新規の大型案件が続く
- 海外の数量が伸びる確認になり、10年の楽観・やや楽観の確率が上がる。
- 営業利益率が7%を超えて安定する
- 中立の6.1%が低すぎた確認になり、価値が一段上がる。
- AIを使った設計サービスの売上が決算で開示される
- 工数の削減を新しい売上に変えている確認になり、単価の伸びが物価並みに近づく。
- ODA予算や円借款の枠が縮む
- 海外の受注が細る確認になり、やや悲観・悲観の確率が上がる。
- 短期借入金が増え、金利の上昇で支払利息が膨らむ
- 純利益の伸びが営業利益に追いつかなくなり、価値が下がる。
見ておくもの
- 受注残高と新規受注(国内・海外別)
- 営業利益率(目標:6%以上、実績5.9%)
- 短期借入金と支払利息
- ODA予算と円借款の動向
- 配当性向40%と自社株買いの継続
倍率と資本コストの決め方
倍率は式で置いた。中立はROE 9.9%、RONICはk 7.25%と残る割合1/2で9.1%、gは名目2.5%として正当化PERは約12.6倍。上限の範囲内で、利益の質を見て12倍にした。kはAI エージェント代替を寿命の+0.5%に入れ、確率は30%、gは2.5%と重ねないようにした。今のPERや同業の倍率は使っていない。純現金は無く、余った現金は立てない。10年の数字は家賃などの形を今と同じにそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.8→15.26 倍・やや楽観 PER 12.4→14.98 倍・中立 PER 12→14.8 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。