結論
KNT-CTホールディングスは、近畿日本ツーリストとクラブツーリズムを傘下に持つ旅行会社グループだ。主要旅行業者の取扱額で5位に付ける。筆者の結論は「やや割高」である。
稼ぎが薄いことが最大の理由だ。売上は3,000億円近いが、営業利益は61億円で利益率は2%にすぎない。旅行代金の大半は、宿や交通機関への支払いに回る。
決算書の純利益97億円は、そのまま使えない。税金の戻りで膨らんでおり、優先株の配当も引く前の数字だ。優先株とは、コロナ禍で発行した400億円の株で、返済と配当が普通株より先に来る。2026年6月に250億円を返し、残る150億円も返す予定になっている。普通株の持ち分で見た稼ぎは、今は46億円前後にとどまる。
10年後の中立は、営業利益99億円、普通株の純利益77億円だ。国内の団体旅行は人口減で細り、海外旅行と訪日旅行が穴を埋める。2027年4月の一社化がうまくいけば上振れる。直販とAIに仲介の役を奪われれば、下振れる。確率を重ねた本質価値は、今の時価総額を2割ほど下回る。筆者は割安とは見ない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「持ちたい事業」には入らない。理由は3つある。
1つ目は、稼ぎが薄く、振れが大きいことだ。営業利益率は2%で、感染症が来れば赤字に落ちる。10年先も利益が積み上がる確信は持てない。2つ目は、堀が弱いことだ。会員名簿は強いが、仲介の役はネットとAIに削られる側にいる。
3つ目は、数字の見かけだ。純現金が900億円を超えると読むと、時価総額の1.7倍もあり、驚くほど割安に見える。しかし、現預金の大半は、客から先に預かった旅行代金だ。旅行が終われば、宿や交通機関に払う。さらに優先株150億円が控えている。使える現金は、見かけの3分の1以下とみてよい。
筆者が評価するのは、資本の返し方だ。優先株の返済を急ぎ、復配に進む姿勢は、株主に誠実と言える。ただ、値段に安全域があるかと問えば、答えは否だ。普通株の稼ぎ46億円に対し、時価総額は547億円。稼ぎの12倍ほどで、先の成長を一部織り込んでいる。筆者は、もっと安い所で出会いたい。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、旅行の企画と販売だ。客から旅行代金を預かり、宿・交通・現地の手配先に払い、差額が会社に残る。事業は大きく3つに分かれる。
1つ目は個人向けで、クラブツーリズムが担う。会員は約700万人で、60〜70代が中心だ。添乗員が付く団体パックと、1〜2人の個人型を、店舗・ネット・会報誌で売る。2つ目は団体向けで、近畿日本ツーリストが担う。修学旅行などの教育旅行、企業の会議や報奨旅行、スポーツ大会、自治体の事業を、全国の支社と店舗で受ける。3つ目は訪日向けで、近畿日本ツーリスト・ブループラネットが海外の旅行会社から団体を受け、多言語サイトでも個人に売る。
2025年度の取扱額は3,515億円だった。内訳は、国内2,188億円、海外1,067億円、訪日260億円である。売上高は2,971億円で、取扱額の約85%に当たる。営業利益は61億円、販売費・一般管理費は501億円で、人件費とシステム費が中心だ。経常利益76億円のうち15億円ほどは受取利息で、客から先に預かる旅行代金の現預金が約900億円ある。
体制は大きく変わる途中だ。2026年4月に個人旅行をクラブツーリズムへ集約し、団体は支社をやめて3つの事業部に分けた。2027年4月には、持株会社が3つの事業会社を吸収合併し、「KNTCT株式会社」の1社になる。従業員は約2,700人で、売上に直接つながる前線は半分ほどだ。会社は、このうち約300人を顧客の前へ移す考えを示している。
店舗と支社は賃借が中心だ。家賃は売上が落ちても減らない固定費である。新リース会計が2028年3月期から貸借対照表に載るが、未経過のリース料は開示で確かめられなかった。
優良さと弱いところ
堀は弱い。他社がまねしにくい強みは、会員約1,000万人の名簿と、教育旅行・自治体・法人との長い取引にとどまる。名簿は強い資産だが、会員の中心は60〜70代で、年々減っていく。
値決め力も弱い。旅行商品の中身は、宿や航空券といった誰でも買える部品だ。同じ部品はネットで比べられる。取扱額の首位JTBは3割強を握り、HIS・阪急交通社・日本旅行とKNT-CTが1割弱ずつで並ぶ。差がつくのは、添乗員が付くツアーや、教育旅行の学校との関係のような、人の手がかかる部分だ。
資本の効率は、旅行会社としては悪くない。重い設備を持たず、営業利益率は2%で安定してきた。ただ、2021年3月期は営業赤字が271億円に達した。感染症が来れば一度に傾くことは、すでに分かっている。
経営の過去には傷がある。コロナ関連の自治体の受託業務で過大請求が見つかり、2023年9月時点で把握された規模は約7億円に上った。再発防止は進んでいるが、信頼を取り戻す途中だ。中期経営計画は、最終年度の営業利益目標を85億円から62億円へ引き下げた。
一方で、手元の整理は進んでいる。優先株の返済に着手し、20年ぶりに普通株の配当を再開する。筆者は、経営が資本の返し方を正しい順に並べ始めたと見る。ただし、これは事業の強さを示すものではない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の旅行会社の市場は、伸びてはいるが、中身が二極化している。観光庁によると、主要旅行業者44社の2025年度の取扱額は3兆9,750億円で、前年度比5.3%増だった。海外が7.1%増、訪日が12.9%増、国内が3.5%増である。
国内旅行の伸びは、人の数ではなく単価で出ている。旅行会社が売る企画旅行(募集型)を見ると、国内の参加人数は前年度比8.8%減だった。取扱額は1.5%の減にとどまる。人口が減る国で、数は減り単価が上がる形だ。団体旅行や教育旅行は、少子化でさらに細る。
海外は戻りの途中だ。募集型の海外は、人数が11.4%増えた。ただ、日本人の出国者はコロナ前の水準に届いていない。訪日は伸びが速いが、売る相手が海外の旅行会社と個人に広がり、手数料の取り合いになる。
長い目で見た脅威は、仲介の役そのものが薄まることだ。航空会社と宿泊施設は直接販売を強めている。ネット専業の予約サイトは、客が自分で比べて買う習慣を広げた。AIが旅程を組み、予約まで進める日が来れば、旅行会社の存在意義が問われる。会社自身も、説明資料で「総合旅行事業者の存在意義の問い直し」と書いている。
循環にも弱い。感染症、戦争、災害で旅行は止まる。2025年度は、期末に中東情勢で海外ツアーの催行を中止した。大阪・関西万博の特需も終わり、2026年度は反動も出る。
資本政策と M&A
資本政策の中心は、優先株の返済だ。コロナ禍で発行したA種150億円とB種250億円のうち、B種は2026年6月30日に償還した。取得価額251.2億円に配当21.9億円を加え、約273億円を払う。A種は償還期限を1年延ばし、2027年6月を目指す。
返済の後も、自己資本比率は28%に残る見込みで、会社は25%以上を保つ方針だ。普通株の配当は、2006年度以来となる復配を決めた。額は小さく、純利益の1割にも届かない。延ばしたA種の分は、AIなどへの戦略投資に回す。
買収は、事業の再編が中心だ。2024年8月には、子会社の株式を近鉄グループホールディングスへ譲渡した。いま大きな買収の計画はない。
親の近鉄グループホールディングスが53.6%を持ち、近畿日本鉄道の退職給付信託も7%近くを持つ。上場子会社の形が続くが、一社化の後に近鉄が完全子会社にする可能性は否定できない。公表された事実は見つからなかった。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
一社化が効くと、利益は今の水準より大きく伸びる。クラブツーリズムの会員700万人と、近畿日本ツーリストの会員300万人が1つの名簿になる。同じ客に旅行だけでなく、保険・不動産・相続といった暮らしの商品も売れる。製販一体で仕入れを一本化すれば、素材を安く集められる。重なっていた本社と間接部門は集約され、約300人が客の前へ移る。これだけで、営業利益率は2%から2.5%を超える。
訪日は市場が大きい。個人手配は推定3.1兆円で、団体の0.27兆円の10倍を超える。海外の販売拠点(海外リエゾン)を2030年に30都市へ増やし、地方への送客と宿泊・体験の手配で単価を上げる計画だ。高山・伊勢志摩の現地運営は、地域の稼ぎも取り込む。
海外旅行は、60〜70代が元気で、ドル円が150円のまま続けば、添乗員付きの欧州ツアーはまだ伸びる。2025年度は海外の取扱額が15%増え、会社の強みがはっきり出た。
財務も軽い。有利子負債はほぼなく、優先株を返しても自己資本比率は28%ある。復配の後は還元も増やせる。金利が上がれば、預かり金の運用益も増える。
慎重な見方
仲介の役が、10年かけて削られていく。航空会社と宿泊施設は直販を強め、旅行会社を通さない客が増える。ネット予約は、比べて買う習慣を広げた。AIが旅程づくりから予約までこなす世界では、添乗員が付かない商品の価値は落ちる。会社自身が、存在意義の問い直しを認めている。
主力の国内団体は、人口と少子化で細る。2025年度の国内募集型は、人数が8.8%減った。クラブツーリズムの会員は60〜70代が中心で、次の世代がついてくる保証はない。一社化は、旅行業では前例の少ない大きな統合で、システム、人事、文化の3つを同時に変える。失敗すれば、顧客と人材の両方を失う。
利益は、もともと薄い。営業利益率2%では、人件費が3%上がり続け、システム費も膨らむと、増収でも利益は残らない。中期経営計画の営業利益目標は、最終年度に85億円から62億円へ下がった。計画の達成に疑いを持つのが自然だ。
今の純利益97億円は、税金の戻りで膨らんだ数字だ。優先株の配当を引くと、普通株の稼ぎは46億円前後にすぎない。時価総額は547億円で、先の成長をかなり織り込んでいる。感染症や戦争が来れば、2021年のように営業赤字へ落ちる。
どちらに重みを置いたか
事業の質では、慎重な見方が勝る。仲介の役の薄まり、団体の縮小、利益率2%の薄さは、10年を通して効く構造の話だ。強気の材料の一社化と訪日は、実現すれば大きいが、効果が数字に出るまで時間がかかる。そこで確率は、悲観側にやや寄せた。やや悲観を24%、悲観を12%に置き、楽観は8%にとどめた。
優先株の返済は、財務の不安をほぼ取り除く。ただ、それは株価を支える材料であって、利益を増やす材料ではない。中立の10年後は、普通株の純利益77億円に倍率11.4倍を掛けて879億円とし、今に割り戻すと、今の時価総額に届かない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,613 円1,260 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 686 円187 億円)。 今の値に割り戻すと 2,496 円682 億円、今との差 +25.1%、 期待の年率 +10.3%(資本コスト 8.5%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 8,709 円2,379 億円 | 1,234 円337 億円 | +398.4% | +17.4% | 795 円217 億円 |
| やや楽観 | 20% | 6,832 円1,866 億円 | 908 円248 億円 | +288.0% | +14.5% | 1,548 円423 億円 |
| 中立 | 36% | 5,545 円1,515 億円 | 743 円203 億円 | +215.2% | +12.2% | 2,264 円618 億円 |
| やや悲観 | 24% | 2,171 円593 億円 | 421 円115 億円 | +29.9% | +2.7% | 622 円170 億円 |
| 悲観 | 12% | 269 円74 億円 | 311 円85 億円 | −70.9% | −11.6% | 70 円19 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,613 円1,260 億円 | 686 円187 億円 | +165.6% | +10.3% | 5,299 円1,448 億円 |
今の株価時価総額 1,995 円545 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 一社化と訪日が当たり、利益率が 3% に届く 10 年 利益 123 億円 · PER 17.2 倍 · 株価時価総額 8,709 円2,379 億円
2027年4月の一社化が計画どおり進み、会員名簿が1つになる。旅行以外の暮らしの商品も売れ、顧客1人当たりの取扱いが増える。本社と間接部門は集約され、営業利益率は3%に届く。
訪日は個人向けが当たる。海外の販売拠点は30都市へ広がり、地方への送客と現地運営で単価を上げる。取扱額は今の4倍を超える。海外旅行は、欧州などの添乗員付きが高付加価値化で単価を伸ばす。国内は、団体の縮小を会員の高齢化の追い風が受け止め、人数は横ばいを保つ。
ネット予約やAIは、手のかかる旅行の価値をかえって引き上げる。会社は仲介でなく、体験を設計する企業と見られる。営業利益は160億円台に乗り、中期経営計画の長期目標の120億円を超える。普通株の純利益は120億円を超える。
- 国内旅行(団体・教育・個人):数量 650(国内の延べ旅行者数(万人、推定))× 価格 4.90(1 人当たり取扱額(万円、名目))→ 売上 2,691 億円・営業利益 65 億円。会員の高齢化の追い風で団体の縮小を止め、単価も上がる
- 海外旅行:数量 36.0(海外旅行の延べ旅行者数(万人、推定))× 価格 57(1 人当たり取扱額(万円、名目))→ 売上 1,728 億円・営業利益 66 億円。欧州の添乗員付きが続き、高付加価値で単価も上がる
- 訪日旅行:数量 156(訪日客の延べ人数(万人、推定))× 価格 7.25(1 人当たり取扱額(万円、名目))→ 売上 956 億円・営業利益 34 億円。個人向けの拡大と地域の現地運営が当たる
倍率:事業の純利益 123 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 35.7% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 17.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.2 倍。全体の PER 17.17 倍、時価総額 2,107 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:一社化の統合効果、訪日の個人向け、海外の高付加価値化の 3 つが重なる必要がある。どれか 1 つでも外れると届かない。中期経営計画の目標も、最終年度に引き下げられている。
やや楽観 20% 統合の効果が出て、海外と訪日が団体の縮小を補う 10 年 利益 96 億円 · PER 16.7 倍 · 株価時価総額 6,832 円1,866 億円
一社化の効果は出るが、強気の筋書きほど大きくない。会員名簿の統合で、国内のツアーの稼働は保たれる。人数は0.96倍にとどまるが、単価は物価をやや上回って上がる。
海外は堅調で、添乗員付きの欧州ツアーが主力のまま続く。訪日は個人向けが育ち、団体の穴を埋めて取扱額は3.4倍になる。営業利益率は2.7%まで上がる。本社と間接部門の集約で、人件費の上昇を吸収できる。
旅行は今の形のまま残る。直販やAIとの競争は続くが、人の手がかかる企画旅行の需要は崩れない。優先株は予定どおり返し、普通株の還元は純利益の3割台まで上がる。
- 国内旅行(団体・教育・個人):数量 600(国内の延べ旅行者数(万人、推定))× 価格 4.80(1 人当たり取扱額(万円、名目))→ 売上 2,431 億円・営業利益 51 億円。団体の縮小は緩やか、単価は物価を少し上回る
- 海外旅行:数量 33.4(海外旅行の延べ旅行者数(万人、推定))× 価格 54(1 人当たり取扱額(万円、名目))→ 売上 1,535 億円・営業利益 52 億円。海外の取扱いは堅調
- 訪日旅行:数量 125(訪日客の延べ人数(万人、推定))× 価格 7.00(1 人当たり取扱額(万円、名目))→ 売上 738 億円・営業利益 22 億円。個人向けが育ち、団体の穴を埋める
倍率:事業の純利益 96 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 31.4% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 16.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.7 倍。全体の PER 16.71 倍、時価総額 1,596 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:一社化の効果が出て、海外と訪日が国内団体の縮小を補う筋書き。営業利益率は 2.7% と今より半歩上がるだけなので、起きる確度は中立に次いで高いと見る。
中立 36% 国内の縮小を海外と訪日が埋め、薄い利益が少し太る 10 年 利益 77 億円 · PER 16.3 倍 · 株価時価総額 5,545 円1,515 億円
国内の団体旅行は、少子化と人口減で人数が7%減る。単価は物価並みに上がるので、取扱額は2割ほど増える。海外は、60〜70代の需要で人数が15%増える。訪日は個人向けが少しずつ育ち、取扱額は2.4倍になる。
営業利益は99億円、利益率は2.4%になる。一社化で重なる部門が集約され、人件費とシステム費の上昇をほぼ吸収する形だ。利益の伸びは、物価の分にわずかに上乗せされる程度にとどまる。
優先株は2027年に返し終わる。現預金は客から預かる旅行代金で大きく見えるが、使える現金は増えない。普通株の純利益は77億円。配当は3割強に上がるが、残りは事業の手元に残る。直販とAIの影響は、ゆっくり進むが、2036年までに旅行会社が消える形にはならない。
- 国内旅行(団体・教育・個人):数量 581(国内の延べ旅行者数(万人、推定))× 価格 4.69(1 人当たり取扱額(万円、名目))→ 売上 2,303 億円・営業利益 44 億円。人口減で人数は 0.93 倍、価格は物価並み
- 海外旅行:数量 30.7(海外旅行の延べ旅行者数(万人、推定))× 価格 54(1 人当たり取扱額(万円、名目))→ 売上 1,390 億円・営業利益 42 億円。人数 1.15 倍、価格は物価並み
- 訪日旅行:数量 93.6(訪日客の延べ人数(万人、推定))× 価格 6.70(1 人当たり取扱額(万円、名目))→ 売上 530 億円・営業利益 14 億円。人数 1.8 倍、価格は物価並み
倍率:事業の純利益 77 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 28.0% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 15.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.3 倍。全体の PER 16.29 倍、時価総額 1,256 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内団体の縮小と、海外・訪日の伸びが、おおむね打ち消し合う筋書き。会社の足元の計画と、観光庁の統計の動きに最も近い。
やや悲観 24% 団体が直販に流れ、利益率が今より下がる 10 年 利益 46 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 2,171 円593 億円
団体旅行と教育旅行が、直販やネット手配へ流れる。国内の人数は2割近く減り、物価並みの値上げも通りにくくなる。海外は、出国者が戻り切らず、人数は横ばいにとどまる。
営業利益は56億円に落ち、利益率は1.6%まで下がる。人件費とシステム費は上がり続け、統合で期待した節約はその分に消える。店舗と支社の家賃は固定費として残る。
会社はこれ以上の成長を描けず、優先株を返した後は、薄い利益をほぼ配当に回す。訪日は、手数料の取り合いで伸びが鈍る。それでも、会員と教育旅行の取引が支えとなり、赤字には落ちない。
一社化は進むが、システムの統合が遅れ、顧客データの一本化に時間がかかる。ネット予約や直販との競争で、手数料の率は少しずつ削られる。クラブツーリズムの会員は高齢化し、新しい会員の獲得が追いつかない。国内の取扱額は物価の分だけ増えて、実質では減っていく。会社は、固定費を抑えることで利益を守る形に入る。
- 国内旅行(団体・教育・個人):数量 513(国内の延べ旅行者数(万人、推定))× 価格 4.55(1 人当たり取扱額(万円、名目))→ 売上 1,970 億円・営業利益 24 億円。団体が直販に流れ人数 0.82 倍、値上げも通りにくい
- 海外旅行:数量 26.7(海外旅行の延べ旅行者数(万人、推定))× 価格 52(1 人当たり取扱額(万円、名目))→ 売上 1,173 億円・営業利益 26 億円。人数は横ばいで価格は物価に届かない
- 訪日旅行:数量 67.6(訪日客の延べ人数(万人、推定))× 価格 6.70(1 人当たり取扱額(万円、名目))→ 売上 383 億円・営業利益 7 億円。手数料の取り合いで伸びが鈍る
倍率:ROE 8.7% は k 8.5% 以下。ためた利益は額面を下回る価値なので、正当化 PER の上限は 1÷k = 11.1 倍。新しく投じるお金が稼がない筋書きなので、上限の約 7.7 割(8.5 倍)に置いた。
確率:直販とネット予約への流れ、少子化、一社化の費用が重なると、国内の取扱いが細り、利益率が下がる。足元でも国内募集型の人数は 8.8% 減っており、起きる確度は高い。
悲観 12% 仲介の役が薄まり、旅行会社の利益が消える 10 年 利益 11 億円 · PER 7.0 倍 · 株価時価総額 269 円74 億円
直販とAIが旅行の仲介を置き換える。航空会社と宿泊施設は自社の直販で客を囲い込み、AIが旅程づくりから予約まで進める。添乗員が付かない商品の価値は落ち、値上げもできなくなる。
国内の人数は3分の2に減る。会員の高齢化は止まらず、一社化で名簿を統合しても、次の世代の客をつかめない。海外も、出国者の自由な旅へ流れ、人数が2割減る。店舗の家賃と本社の人件費は固定費として残り、営業利益は10億円に届かない。
統合の費用と事業の縮小で、自己資本は減損の分だけ細る。優先株は返し終えたが、普通株の稼ぐ力は小さい。旅行会社は小さな専門会社に変わり、近鉄グループの完全子会社になるなど、別の形に再編される。
- 国内旅行(団体・教育・個人):数量 406(国内の延べ旅行者数(万人、推定))× 価格 4.20(1 人当たり取扱額(万円、名目))→ 売上 1,442 億円・営業利益 4 億円。店舗の家賃など固定費が残り利益がほぼ消える
- 海外旅行:数量 21.4(海外旅行の延べ旅行者数(万人、推定))× 価格 48(1 人当たり取扱額(万円、名目))→ 売上 868 億円・営業利益 9 億円。仲介の役が薄れ人数が 2 割減る
- 訪日旅行:数量 46.8(訪日客の延べ人数(万人、推定))× 価格 6.00(1 人当たり取扱額(万円、名目))→ 売上 237 億円・営業利益 1 億円。個人手配に取って代わられる
倍率:ROE 3.3% は k 8.5% 以下。上限は 1÷k = 11.1 倍だが、仲介の役が薄まる筋書きなので、事業の稼ぐ力(純利益 10.5 億円 ÷ k 8.5% = 約 117 億円)の約 6 割に当たる 7 倍に置いた(やや悲観の 8.5 倍より低く)。床は、前受金が客のものである以上、現預金ではなく稼ぐ力で測る。
確率:直販・ネット・AI が旅行の仲介を置き換え、団体も縮む筋書き。10 年で起きるには大きな構造の変化が要るが、会社自身がその恐れを認めており、重みを置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内旅行(団体・教育・個人)
修学旅行・法人・自治体の団体、クラブツーリズムの国内ツアー、宿泊・交通の手配。取扱額 2,188 億円(観光庁、2025 年度)。
| 数量国内の延べ旅行者数(万人、推定) | 価格1 人当たり取扱額(万円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 625 | 3.50 | 1,849 | 28 |
| 10 年後 中立 | 581 | 4.69 | 2,303 | 44 |
取り方:取扱額 2,188 億円(観光庁)を、団体・教育・宿泊単品を含む 1 人当たり 3.5 万円(推定。募集型の全社平均は約 4.1 万円)で割り、約 625 万人とした。人数は実質で、人口減と団体の縮小で中立は 0.93 倍。価格は物価で 1.34 倍。売上は取扱額の 0.845 倍(連結の売上高 ÷ 取扱額。セグメント別の開示なし)。営業利益 28 億円はセグメント別の開示がなく、3 つの合計が 61 億円になるよう推定した。
海外旅行
クラブツーリズムの添乗員付きツアー(欧州・大エジプト博物館など)と、近畿日本ツーリストの海外の手配。取扱額 1,067 億円。
| 数量海外旅行の延べ旅行者数(万人、推定) | 価格1 人当たり取扱額(万円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 26.7 | 40 | 902 | 28 |
| 10 年後 中立 | 30.7 | 54 | 1,390 | 42 |
取り方:取扱額 1,067 億円(観光庁)を、添乗員付きの欧州などが厚い 1 人当たり 40 万円(推定。募集型の全社平均は約 38 万円)で割り、約 26.7 万人とした。人数は日本人の出国が戻り切っていない分と、60〜70 代の需要で中立は 1.15 倍。価格は為替が 150 円のままなので物価並みの 1.34 倍。営業利益 28 億円は推定。
訪日旅行
海外の旅行会社から受ける団体の地上手配、多言語サイト(YOKOSO JAPAN TOUR)の個人向けツアー、大会運営。取扱額 260 億円。
| 数量訪日客の延べ人数(万人、推定) | 価格1 人当たり取扱額(万円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 52.0 | 5.00 | 220 | 5 |
| 10 年後 中立 | 93.6 | 6.70 | 530 | 14 |
取り方:取扱額 260 億円(観光庁)を、団体の地上手配が中心の 1 人当たり 5 万円(推定)で割り、約 52 万人とした。市場は 2025 年度に 12.9% 伸びたが、会社の取扱額は 2% 減った。個人向けを 2030 年度に売上の半分へ増やす計画があり、中立は人数 1.8 倍。価格は 1.34 倍。営業利益 5 億円は推定。 数量は実物(延べ人数)で、名目の市場の伸びからは置いていない。
リスクと懸念
直販・ネット・AI による仲介の置き換え
航空会社と宿泊施設は直販を強め、ネット予約は比べて買う習慣を広げた。AI が旅程づくりから予約まで進める日が来れば、添乗員が付かない商品の手数料は薄くなる。会社自身も、総合旅行事業者の存在意義の問い直しを認めている。利益率 2% の会社には、小さな手数料の低下でも重い。
国内団体の縮小と会員の高齢化
国内の企画旅行は、2025 年度に人数が前年度比 8.8% 減った。少子化は教育旅行を、人口減は団体を細らせる。クラブツーリズムの会員は 60〜70 代が中心で、次の世代が同じ形で旅行を買ってくれる保証はない。会員名簿は強みだが、年々目減りする資産でもある。
感染症・戦争・災害で旅行が止まる
2021 年 3 月期は営業赤字が 271 億円に達した。2025 年度の期末にも、中東情勢で海外ツアーの催行を中止している。旅行は、止まれば売上が一度に消え、店舗の家賃や人件費は残る。今は財務に余裕があるが、優先株の返済で手元は薄くなる。
4 社一社化の実行
2027 年 4 月に持株会社と 3 社を統合し、基幹システムも 2027 年度から共通にする。システム、人事、文化を同時に変える大きな統合だ。顧客データの統合や会員プログラムの一本化が遅れれば、効果は出ず、費用だけが先に出る。優秀な人材が離れる恐れもある。
人件費とシステム費の上昇
2025 年度の販売費・一般管理費は 6.9% 増の 501 億円で、2026 年度は 543 億円を見込む。3 年連続のベースアップと、システムへの先行投資が理由だ。旅行代金に転嫁しにくい事業なので、増収でも利益が伸びにくい。営業利益の計画は、すでに 85 億円から 62 億円へ下がった。
信頼の回復とコンプライアンス
コロナ関連の自治体の受託業務で過大請求が見つかり、2023 年 9 月時点で把握された規模は約 7 億円だった。再発防止を進めているが、自治体や学校の信頼は商売の基盤だ。同種の問題が再び起きれば、団体向けの取引に響く。
近鉄との関係と優先株の返済
近鉄グループホールディングスが 53.6% を持つ。完全子会社化の公表はないが、一社化の後に再編が進む可能性はある。優先株の A 種 150 億円は、2027 年 6 月の返済予定を再び延ばす場面もありうる。普通株の少数株主は、親の意向に左右される。
今後の分かれ目
- 国内旅行の取扱額が、人数の減少を上回って 3 期続けて伸びる
- 単価と顧客の質が保たれており、中立の上の筋書き(やや楽観・楽観)の確度が上がる。
- 一社化の後、営業利益率が 2.5% を超えて定着する
- 統合の費用削減が出ている。10 年の営業利益が 100 億円を超える筋書きに近づく。
- 訪日の取扱額が前年を上回り、個人向けの比率が 3 割に近づく
- 訪日の個人向けが育っており、楽観側の筋書きに近づく。
- 国内募集型の参加人数の減少が、年 1 割前後で続く
- 団体と会員の縮小が構造として定着し、やや悲観・悲観の筋書きが現実味を帯びる。
- 感染症や戦争で、旅行の催行中止が長引く
- 営業赤字に落ち、優先株の返済が遅れる。悲観の筋書きに近づく。
- 近鉄グループが完全子会社化を公表する
- 少数株主には買収価格が決まる。買収価格が本質価値を下回れば、価値の差は広がる。
見ておくもの
- 国内・海外・訪日の取扱額と、募集型企画旅行の人数(観光庁の月次・年度の統計)
- 営業利益率が 2% から上がるか(販管費の伸びと一社化の費用削減)
- A 種優先株の返済の実行と、普通株の配当の水準
- 訪日の個人向け売上の比率と、海外の販売拠点の数
- 近鉄グループホールディングスの持株比率と、上場子会社についての方針
倍率と資本コストの決め方
決算書の純利益と純資産には、優先株 400 億円と税金の戻りが混ざるので、普通株の持ち分に直した。自己資本は優先株償還後の 182 億円から流し、純利益は優先株の配当を引いた 46 億円を起点にした。ROE が k 8.5% を超える筋書きは、堀が弱い(残る割合 1/3)として正当化 PER を出し、中立は 1÷k の 11.1 倍を下回らせず上限の約 9.3 割に置いた。やや悲観・悲観は ROE が k 以下なので、上限の 1÷k までは上げず、7.7 割と稼ぐ力の約 9 割にとどめた。今の株価は倍率の根拠にしていない。店舗・支社の家賃は営業費用に入った形で 10 年後もそろえた。新リース会計(2028 年 3 月期から)は、営業利益と負債の形を変えるが、利益の価値は変えない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12→17.17 倍・やや楽観 PER 11.5→16.71 倍・中立 PER 11.4→16.29 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。