結論
ロココは、大企業のIT運用やヘルプデスクを引き受ける事業と、ServiceNowなどの業務システムを導入・開発する事業を柱とするITサービス会社だ。筆者の結論は「やや割高」である。顧客との関係は強いが、売上の大部分が技術者の稼働時間や受託作業に結び付いており、AIエージェントの普及によって10年後も同じ量の仕事を請求できるとは考えにくい。
2025年12月期は売上高91.9億円、営業利益5.25億円だった。ITO・BPO事業が売上の約67%、クラウドソリューション事業が約32%を占める。ServiceNow事業は単独で約16億円まで拡大し、累計取引社数も65社に達した。これは確かな営業実績であり、単に技術者を安く派遣する会社とは異なる強みである。しかし、同社が所有しているのは顧客との関係や導入技術であって、企業の業務記録を保存するServiceNowそのものではない。
足元の業績には注意が必要だ。2026年12月期上期は売上高が9.4%増えたのに、営業利益は64.6%減の0.94億円となった。通期営業利益計画6.10億円を達成するには、下期だけで約5.16億円を稼ぐ必要がある。採用、人件費、研究開発、海外拠点への投資が先行していることは理解できるが、売上増が利益増に結び付くかはまだ確認できていない。
2035年の中立像では、顔認証など現場と結び付く製品が伸びても、人手で提供するIT運用や開発の実質数量は縮小する。売上高は約82億円、営業利益は約4.6億円、純利益は約3.0億円と見る。5つの筋書きに確率を掛け、将来の配当と余剰資金を考慮した現在価値は概算28.2億円となり、基準時価総額38.0億円を約26%下回る。悲観一色ではないが、長く持つ株主として必要な安全域は薄い。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の見方では、ロココは「顧客から毎年仕事を任される」点が魅力である。顧客の情報システムを知り尽くした担当者を抱え、困ったときに呼ばれる関係を築いている。新しい顧客を一から開拓するより、既存の大企業から仕事を追加で受ける方が利益を出しやすい。ServiceNowの技術者育成が売上増につながった実績は、再投資の成功例として評価できる。
しかし、将来のオーナー利益は会計上の純利益をそのまま積み重ねた額とは限らない。技術者が辞めれば採用費と教育費が要り、新しい資格を取らなければ既存の認定の価値が薄れる。ITサービス業では設備の減価償却より、人への投資の方が実質的な維持費用になる。営業利益率が低い時期には、わずかな賃金上昇や開発の手戻りが株主の取り分を大きく削る。
最も考えたいのは、2035年に顧客が何のために代金を支払うかである。社内問い合わせをAIが直接解決できれば、ヘルプデスクで働く人数を守ることは企業価値の源泉にならない。他方で、現場で本人を確かめる仕事や、複数システムの責任を引き受ける仕事は残りやすい。ロココが人の稼働を売る会社から、結果と責任を売る会社へ移れれば価値は上がる。ただし、その移行を大きな確実利益として今から支払うことはしない。
会社の規模に対して純現金が厚く、増配の実績があるのは支えだ。それでも、顧客関係という堀がAI時代にも同じ幅で残ると断言する証拠はない。筆者は好調な数年間より、弱い数年間に資本を毀損せず生き残れるかを重く見る。現在の時価総額と本質価値の差には、まだ十分な安全域が認められない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、顧客企業の情報システム部門が抱える仕事を引き受けることである。ITO・BPO事業では、PCの調達・設定・廃棄を一括管理するサービス、社内ヘルプデスク、システム運用、ネットワーク構築、技術者の常駐支援を提供する。顧客は大企業が中心で、いったん運用を任されると日々の業務を知る担当者が蓄積され、取引が続きやすい。2025年の同事業の売上は61.66億円、営業利益は3.38億円だった。
この事業には、顧客からの問い合わせに対応するカスタマーコミュニケーション、興行のチケット受付や抽選・配席、顔認証ソリューションも含まれる。チケット関連では「tike-uke」「tike-loto」を提供し、入場時の本人確認と組み合わせることができる。顔認証製品「AUTH」には、イベント会場への入場、運転者のアルコール検査時の本人確認、現場作業の記録といった用途がある。こうした物理的な現場の確認行為は、事務処理ほど簡単にはAIだけで完結しない。
クラウドソリューション事業は、2025年に売上28.97億円、営業利益1.71億円を上げた。中核はServiceNowの導入・開発・保守で、同事業の売上は約16億円だった。2025年末に123人の専門エンジニアを抱え、累計取引社数は65社に達している。残りは一般の受託システム開発と、自社の勤怠管理ソフト「RocoTime」などで構成される。ServiceNowの販売・導入実績は強みだが、利用料の元になるプラットフォームと顧客データの基盤は米国ServiceNow側にある。
海外では中国、フィリピンを使った開発や保守を行い、2025年にはポーランドに顔認証技術の研究拠点を設けた。2025年末には生成AI関連企業Automagicaの株式70.03%を取得した。受託業務を自動化して利益率を上げる可能性はあるものの、AI製品の独立した売上額や継続課金実績が十分に開示された段階ではないため、将来の大幅増収を既成事実として扱わない。
優良さと弱いところ
ロココの最も確かな強みは、大企業の業務に深く入り込んでいることだ。ヘルプデスクや運用管理は、契約を取り替えるだけでは移管できない。端末構成、問い合わせ履歴、組織ごとの手順を新しい業者が覚え直す必要がある。外部調査では顧客企業との長期継続取引や低い解約率が報告されており、顧客基盤には一定の粘着性がある。
ServiceNow事業にも差別化はある。2022年にEliteパートナーとなり、2026年には人事領域で国内初となるValidated Practice認定を取得した。開示された技術者数、顧客数、売上推移は、採用と育成に投じた資本が受注へ結び付いた証拠である。ただし、同じ市場には富士通、日立グループ、NTTデータ、システムサポートホールディングスなどがいる。認定資格は参入障壁にはなるが、独占を保証するものではない。
値決め力は限定的である。2025年には既存顧客での増員や単価改善が増収要因になったが、2026年上期には売上増と利益減が同時に起きた。人件費や新規開発費を価格へ十分に転嫁できていない可能性がある。過去のROEは概ね10%台で、資本コストを上回ってきた一方、高い収益性を無条件に再現できる事業とは言えない。
堀、つまり競争相手が簡単には奪えない強みは、顧客との運用関係にはあるが、全社で見ると広くはない。ServiceNowは他社の製品であり、RocoTimeは利用画面の操作そのものがAIに代替されうる。低解約率だけでは、規制上の記録の正本や独占的なデータ資産を持つとは判断できない。株主として評価したいのは顧客基盤と純現金であり、高い永久成長率ではない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のBPO市場は足元では拡大している。矢野経済研究所によれば、2024年度の国内BPO市場は5兆786億円、そのうちIT系BPOは3兆1,220億円である。ロココのIT運用・窓口業務を約50億円と仮定すると、IT系BPO市場との単純比較では約0.16%に相当する。ただし、同社の数字にはシステム構築や機器関連の仕事も含まれ、市場統計と範囲は完全には一致しない。国内大手のSCSK、TIS、NTTデータ、富士通、トランスコスモスなどに比べれば、小規模で顧客密着型の事業者である。
最大の構造変化はAIエージェントによる業務の代替だ。利用者が画面を操作し、担当者が問い合わせを処理し、技術者が仕様書に沿ってコードを書くという仕事は、10年かけて必要工数が減りやすい。業界全体のIT支出が名目で増え続けても、人月で請求できる数量が増えるとは限らない。IT系BPO市場の拡大と、個々の受託業者の作業量縮小は両立する。
ServiceNow関連市場は、業務自動化の恩恵と脅威を同時に受ける。米国ServiceNowは企業のワークフロー基盤として存在感を高めているが、同時に自社製品へAI機能を組み込んでいる。顧客企業が必要とする画面開発や手作業の設定が減れば、プラットフォームの成長率ほど導入支援業者の売上は伸びない。国内における導入支援業者別の比較可能な市場シェアは開示されておらず、ロココの累計65社という実績を市場シェアへ読み替えることはできない。
イベント市場には別の需要がある。ぴあ総研によれば2025年の国内ライブ・エンタテインメント市場は8,564億円、公演回数は100,820回で、2035年には市場が1兆円台に達する見通しだ。ただし、これはチケット販売総額であり、ロココが請け負う受付・抽選・入場システムの市場規模とは異なる。顔認証に近い個人認証・アクセス管理市場は2025年度1,474億円という調査があるが、そこにはID管理なども含まれる。競合のNEC、パナソニック、各種クラウド認証サービスに対する同社の正確なシェアは不明であり、成長余地だけを見て高い利益率を保証することはできない。
資本政策と M&A
経営は顧客基盤を広げるために、採用、資格取得、研究開発、買収へ資金を投じてきた。2014年の企業買収でServiceNowやイベント関連事業が加わり、2016年には勤怠管理ソフトの事業基盤を取得した。その後も事業の組み替えを進め、2024年にはファンクラブ関連事業を譲り受け、2025年にはAutomagicaを子会社化した。事業を広げる判断は理解できるが、買収後の増分利益が投資額を上回ったかは、案件ごとの開示が足りない。
2025年末の自己資本は29.6億円、純有利子負債はマイナス9.1億円で、財務には余裕がある。一方、のれんは約3.9億円あり、買収した技術や人材が利益を生まなければ減損の可能性がある。2026年上期には営業キャッシュフローがマイナスとなり、人員増と研究投資の回収が課題になった。現金の厚さだけで資本配分の巧拙を決めるべきではない。
株主還元は増配を通じて強化されている。2023年から2025年にかけて配当を引き上げ、2025年の配当性向は約41%だった。2026年も増配と中間配当を予定し、新たに株主優待制度を設けた。これらは少数株主にとって前向きだが、還元を増やすより高い利回りで再投資できる事業があるなら、資本の使い道を比較してほしい。
確認できた具体的な経営目標は、2026年12月期の売上高103.04億円、営業利益6.10億円、純利益4.09億円という単年度予想である。複数年の中期経営計画について、売上・利益・ROEの達成年次を伴う数値目標や、DOE、総還元性向、自社株買い金額を拘束する数字の約束は確認できなかった。利益の40%前後を還元する実績を今後の目安とするが、正式な固定配当性向の約束とは区別する。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ロココの顧客は、単に安い技術者を求めているわけではない。大企業のシステム運用を長期に引き受け、顧客固有の環境を理解したうえで障害対応まで責任を持つ。こうした仕事は、自動化できる作業が増えても、誰が最終責任を負うかという問題が残る。AIが一次対応を処理すれば、同じ顧客に対して少ない人員でサービスを提供でき、単価を守りながら利益率を高める余地もある。
ServiceNow事業の実績は具体的だ。2022年から2025年にかけて同事業売上は約9.4億円から16億円へ伸び、累計取引社数は26社から65社へ増えた。Eliteパートナーの認定や専門領域の評価は、顧客が外注先を選ぶときの信頼材料になる。運用の実務を知っている会社がシステム導入を提案できることにも価値がある。AIエージェントの運用監督やシステム間の責任分界という新しい仕事を取り込めれば、人月の減少を一部補える。
顔認証はさらに魅力的だ。イベント会場や職場の本人確認には、機器、設置、運用、トラブル対応が必要であり、ソフトウェアだけが安くなっても案件がなくならない。既存のチケット関連顧客に顔認証を追加販売できれば、営業費を抑えながら案件単価を高められる。純現金を維持し、配当を増やし続けられるなら、将来の株主価値は中立像を大きく超えうる。
慎重な見方
最大の懸念は、顧客がロココとの取引を続けながら、発注する工数だけを大幅に減らせることである。ヘルプデスクの問い合わせ、端末設定、定型開発、ServiceNowの設定作業は、AIエージェントによる自動化の直接の対象になる。解約率が低くても、契約数量が減り続ければ売上は守れない。顧客との関係を維持するために単価を引き下げれば、賃金を負担する側の利益率はさらに下がる。
ServiceNowの成長も、ロココの高成長を保証しない。業務記録と開発基盤を所有するのは米国ServiceNowである。プラットフォーム自身が設定や開発を自動化すれば、導入支援業者は価格競争に巻き込まれる。大手の富士通やNTTデータなどが運用契約とセットで受注する場合、独立系の小規模な事業者は採用費や営業費の負担でも不利になる。専門資格は必要条件だが、十分な堀ではない。
実際、2026年上期には売上が伸びても利益が急減した。人件費の上昇や新規開発の費用を回収できない状態で、AI関連買収や海外研究開発を広げれば、現金が利益になる前に失われかねない。のれんの減損と人員整理が同時に起きる可能性もある。チケット関連や顔認証についても、個人情報保護や大手認証ベンダーの参入により、期待どおりの収益性が出るとは限らない。2025年までの増収実績だけで10年後の価値を測るのは危険だ。
どちらに重みを置いたか
顧客基盤とServiceNowの実績は評価するが、2035年の数量を決めるうえでは慎重な見方が優勢である。AIによる工数減少はすでに中立シナリオの数量へ反映し、悲観確率には重ねて加算していない。下側の確率を40%、上側を26%とした追加の理由は、2026年上期に露呈した利益率の弱さと買収・研究開発投資の回収不確実性にある。株主還元と純現金を評価しても、現在の価格は本質価値をやや上回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 1,344 円50 億円(+ 還元の換算額還元の合計 318 円12 億円)。 今の値に割り戻すと 856 円32 億円、今との差 −15.9%、 期待の年率 +5.6%(資本コスト 7.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 3,161 円118 億円 | 617 円23 億円 | +271.5% | +15.9% | 340 円13 億円 |
| やや楽観 | 17% | 2,243 円84 億円 | 469 円18 億円 | +166.7% | +11.6% | 461 円17 億円 |
| 中立 | 34% | 1,338 円50 億円 | 349 円13 億円 | +65.8% | +5.9% | 573 円21 億円 |
| やや悲観 | 25% | 685 円26 億円 | 215 円8 億円 | −11.6% | −1.4% | 225 円8 億円 |
| 悲観 | 15% | 349 円13 億円 | 67 円3 億円 | −59.1% | −9.1% | 62 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,344 円50 億円 | 318 円12 億円 | +63.4% | +5.6% | 1,662 円62 億円 |
今の株価時価総額 1,017 円38 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 9% 現場認証が伸び、運用改革で高収益化 利益 8 億円 · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3,161 円118 億円
顔認証製品の用途が、イベント入場だけでなく工場、事業所、交通関連施設の本人確認へ広がる。チケット事業で培った現場運用能力が導入の障壁となり、AUTHは信頼できる小規模な専門製品として定着する。顧客のデータや認証記録を自社が独占するわけではないが、現場ごとに設置と事故対応を引き受けることで価格を守る。
IT運用とServiceNow導入の作業量はAIエージェントにより減る。それでも大企業との直接契約を失わず、社員を高度な監督・設計業務へ移すことで単価と利益率を改善する。Automagicaの買収やポーランドでの開発は受注の自動化に役立つが、独立したAI新製品の大幅増収は織り込まない。
2035年には売上高が約126億円、営業利益が約12億円へ伸びる。これは人員が無制限に増える筋書きではなく、現場認証の案件増と既存顧客向け業務の採算改善が同時に進む結果である。営業キャッシュフローの回復を通じて配当を増やし、買収後ののれんも十分に回収する。
- IT運用・ヘルプデスク・一般BPO:数量 388(年間の請求対象となる技術者・運用担当者の稼働人年換算)× 価格 0.17(稼働人年当たり年間売上高、億円。機器販売など付随売上を含む推計単価)→ 売上 65 億円・営業利益 5 億円。人月型数量0.97倍、価格1.34倍。運用監督の高度化で利益率7.5%
- チケット受付・抽選・イベント運用:数量 980(年間の受託公演・催事の換算案件数)× 価格 0.01(換算案件当たりのチケットシステム・運用売上高、億円)→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。案件数量0.98倍、価格1.34倍。顔認証連携で案件当たり採算を改善
- 顔認証・現場ソリューション:数量 380(年間の顔認証導入・現場稼働プロジェクト換算数)× 価格 0.04(プロジェクト換算当たりの機器・ソフト・保守売上高、億円)→ 売上 15 億円・営業利益 2 億円。現場案件1.90倍、価格1.34倍。実地認証の用途拡大
- ServiceNow導入・開発・運用支援:数量 121(ServiceNow専門エンジニアの年間稼働人年換算)× 価格 0.17(専門エンジニアの稼働人年当たり年間売上高、億円)→ 売上 21 億円・営業利益 3 億円。専門稼働0.98倍、単価1.34倍。高難度設計と監督で採算改善
- 一般受託システム開発:数量 96.0(年間の受託開発・改修の換算案件数)× 価格 0.14(換算案件当たりの年間売上高、億円)→ 売上 13 億円・営業利益 1 億円。受託案件0.96倍、単価1.34倍。成果物の品質保証で利益率改善
- RocoTimeなど勤怠・業務ソフト:数量 98,000(年間課金対象ID数の換算値)× 価格 0.00(課金ID当たり年間売上高、億円)→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。ID0.98倍、単価1.15倍。法対応・運用品質が残る上位筋書き
- 海外開発・保守の外部顧客向け売上:数量 16.2(年間の外部向け開発・保守契約の換算案件数)× 価格 0.09(外部向け換算案件当たり売上高、億円)→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。外販工数0.90倍、単価1.34倍。海外拠点の固定費は残る
倍率:kは7.75%、10年より先の全社名目成長率g_longはAIエージェント代替を考慮して0%。正当化PER=(1-g÷RONIC)÷(k-g)で、g=0%なら上限は1÷0.0775=12.903倍。ROE約12.5%と通常の堀から算出するRONICが資本コストを超えても、長期成長率を上げないため同じ上限を使う。余剰現金3億円の税後利息0.042億円を純利益から除き、現金評価3億円×戻り方0.75を加える。市場の過去PERは根拠にしない。
確率:顔認証がイベント以外の入退場・現場管理へ広がり、既存大企業との契約を維持しながら人件費に対する採算を改善する場合。ただし、受託工数がAI時代に拡大することは想定せず、ServiceNowの導入支援についても数量を現在以下にした。複数の領域で成果報酬化と採算改善を同時に実現する必要があるため、確率は9%に抑えた。
やや楽観 17% 顧客を維持し、顔認証が収益を補う 利益 5 億円 · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,243 円84 億円
社内問い合わせや定型的な開発は自動化されるが、顧客企業は障害対応やシステム全体の責任を外部へ残す。ロココは長年の取引関係を使い、案件を失うより先に契約内容を更新する。技術者が請求する作業量は減るものの、複雑な運用を引き受ける仕事では物価に近い価格改定が進む。
ServiceNowは国内の導入企業を増やし続けるが、同社が請求する専門エンジニアの稼働量は現在より小さくなる。AIが設定と開発の一部を代替するためである。認定制度と実績を維持できれば、高難度案件を任される専門会社として生き残る。
顔認証は学校、企業施設、スポーツイベントなどに着実に広がる。運用や機器設置を伴うため、事務処理型ソフトほどの数量減少は受けない。売上は約108億円、営業利益は約8.4億円となる。過大な大型買収を避け、稼いだ利益の約4割を配当と小規模な還元に回す10年である。
- IT運用・ヘルプデスク・一般BPO:数量 336(年間の請求対象となる技術者・運用担当者の稼働人年換算)× 価格 0.17(稼働人年当たり年間売上高、億円。機器販売など付随売上を含む推計単価)→ 売上 55 億円・営業利益 3 億円。人月型数量0.84倍、価格1.32倍。例外的に数量減が比較的浅い
- チケット受付・抽選・イベント運用:数量 920(年間の受託公演・催事の換算案件数)× 価格 0.01(換算案件当たりのチケットシステム・運用売上高、億円)→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。受託案件0.92倍、価格1.30倍
- 顔認証・現場ソリューション:数量 300(年間の顔認証導入・現場稼働プロジェクト換算数)× 価格 0.04(プロジェクト換算当たりの機器・ソフト・保守売上高、億円)→ 売上 12 億円・営業利益 1 億円。現場案件1.50倍、価格1.32倍
- ServiceNow導入・開発・運用支援:数量 108(ServiceNow専門エンジニアの年間稼働人年換算)× 価格 0.17(専門エンジニアの稼働人年当たり年間売上高、億円)→ 売上 18 億円・営業利益 2 億円。専門稼働0.88倍、単価1.31倍。専門性を一部価格へ反映
- 一般受託システム開発:数量 84.0(年間の受託開発・改修の換算案件数)× 価格 0.14(換算案件当たりの年間売上高、億円)→ 売上 11 億円・営業利益 1 億円。受託案件0.84倍、単価1.30倍
- RocoTimeなど勤怠・業務ソフト:数量 88,000(年間課金対象ID数の換算値)× 価格 0.00(課金ID当たり年間売上高、億円)→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。ID0.88倍、単価1.12倍
- 海外開発・保守の外部顧客向け売上:数量 14.4(年間の外部向け開発・保守契約の換算案件数)× 価格 0.09(外部向け換算案件当たり売上高、億円)→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。外販工数0.80倍、単価1.30倍
倍率:k7.75%、g_long0%、通常の堀を前提とするRONIC式による正当化PERの上限は12.903倍。中立より収益力は高いが、AI時代の受託業の長期数量成長を別に加えない。余剰現金の税後利息0.042億円を純利益から控除し、3億円×戻り方0.75を加える。
確率:大企業向け運用の顧客関係とServiceNowの専門認定を保ち、AIによる稼働数量の減少を単価改善と顔認証である程度補う筋書き。2025年までのServiceNow増収と顧客の長期継続性に裏付けはあるが、2026年上期の減益を踏まえ、利益率改善を確実とはしない。
中立 34% 人月売上が縮み、顔認証が一部を補完 利益 3 億円 · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,338 円50 億円
顧客企業のIT投資は続くが、ロココが担う定型的な仕事は減る。社内ヘルプデスクへの問い合わせはAIが一次対応し、端末設定や運用報告も自動化される。企業が外注そのものをやめなくても、必要な作業員数は減る。ロココは案件当たりの高度な判断を担当することで単価をある程度維持するが、顧客が得る生産性向上の一部を値下げとして要求する。
ServiceNowは企業の基盤として残る。ロココにも専門人材と顧客との関係があり、導入・運用支援の仕事はなくならない。しかし、仕様作成と画面設定をAIが代替する結果、請求可能な専門稼働は現在の約7割となる。RocoTimeのような画面中心の業務ソフトにもID削減と値下げ圧力がかかる。
顔認証だけは少し違う。イベント入場や運転者確認には本人と現場があり、用途は増える。ただしNECなどの大手技術会社との競争により、利益率が一方的に高くなることはない。2035年の売上は約82億円、営業利益は約4.6億円となる。利益の約4割を還元し、残りを維持投資と運転資金に使う堅実だが高成長ではない会社像である。
- IT運用・ヘルプデスク・一般BPO:数量 260(年間の請求対象となる技術者・運用担当者の稼働人年換算)× 価格 0.16(稼働人年当たり年間売上高、億円。機器販売など付随売上を含む推計単価)→ 売上 42 億円・営業利益 2 億円。人月型数量0.65倍、価格1.30倍。IT系BPOの実質市場一定なら数量シェアは約0.16%から0.10%へ
- チケット受付・抽選・イベント運用:数量 750(年間の受託公演・催事の換算案件数)× 価格 0.01(換算案件当たりのチケットシステム・運用売上高、億円)→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。受託案件0.75倍、価格1.19倍。自動抽選と受付の工数削減
- 顔認証・現場ソリューション:数量 224(年間の顔認証導入・現場稼働プロジェクト換算数)× 価格 0.04(プロジェクト換算当たりの機器・ソフト・保守売上高、億円)→ 売上 9 億円・営業利益 1 億円。現場案件1.12倍、価格1.32倍。実地認証の需要を維持
- ServiceNow導入・開発・運用支援:数量 86.1(ServiceNow専門エンジニアの年間稼働人年換算)× 価格 0.17(専門エンジニアの稼働人年当たり年間売上高、億円)→ 売上 14 億円・営業利益 1 億円。専門稼働0.70倍、単価1.27倍。資格の価値は残るが開発工数は減る
- 一般受託システム開発:数量 65.0(年間の受託開発・改修の換算案件数)× 価格 0.13(換算案件当たりの年間売上高、億円)→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。受託案件0.65倍、価格1.27倍。AI生成コードの普及
- RocoTimeなど勤怠・業務ソフト:数量 80,000(年間課金対象ID数の換算値)× 価格 0.00(課金ID当たり年間売上高、億円)→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。ID0.80倍、単価1.10倍。画面操作の自動化
- 海外開発・保守の外部顧客向け売上:数量 11.7(年間の外部向け開発・保守契約の換算案件数)× 価格 0.09(外部向け換算案件当たり売上高、億円)→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。外販工数0.65倍、単価1.26倍。海外固定費の回収が難しい
倍率:2035年のROEは約6.3%でk7.75%を下回る。資本コストを下回るROEに成長プレミアムを与えず、g_long0%の稼ぐ力の上限1÷k=12.903倍を用いる。事業純利益は2.965-3×1.4%=2.923億円、余剰現金評価は3×0.75=2.25億円。正当化PERの上限は市場の過去倍率から採っていない。
確率:ITO、ServiceNow導入支援、受託開発は、AIエージェントによって請求工数が10年でおおむね0.65~0.70倍へ縮む。価格はインフレをすべては転嫁できず、利益率は歴史的な好調期より低めにとどまる。一方、現場認証は一定の実質増加を認める。AIの影響はこの数量・価格に織り込んでおり、確率でさらに割り引かない。
やや悲観 25% AI代替と価格競争で採算が鈍る 利益 2 億円 · PER 11.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 685 円26 億円
大企業との取引は残るものの、顧客は案件更新のたびに工数削減を要求する。運用報告、問い合わせ、端末設定のかなりの部分が自動化され、ロココに残るのは例外対応と責任の重い障害対応である。必要人員を減らしても、残された人材の給与が下がるわけではないため、利益率は伸びにくい。
ServiceNowは引き続き採用されるが、プラットフォームの標準AI機能が導入作業を減らす。大手パートナーとの競争も激しくなり、顧客数を維持しても一社当たり受注金額が落ちる。自社の勤怠ソフトはID削減にさらされ、一般開発の一部案件は顧客の内製化に移る。
顔認証の需要は残るものの、認証エンジンの汎用化により案件を失う。海外開発拠点は固定費を十分に回収できず、営業利益は約2.6億円に縮む。配当は減益に合わせて抑制されるが、純現金があるため急激な資金繰り危機には至らない。長年維持した顧客関係が、利益の成長より事業の存続を支える10年になる。
- IT運用・ヘルプデスク・一般BPO:数量 224(年間の請求対象となる技術者・運用担当者の稼働人年換算)× 価格 0.15(稼働人年当たり年間売上高、億円。機器販売など付随売上を含む推計単価)→ 売上 32 億円・営業利益 1 億円。人月型数量0.56倍、単価1.16倍。顧客から工数削減を要求される
- チケット受付・抽選・イベント運用:数量 560(年間の受託公演・催事の換算案件数)× 価格 0.01(換算案件当たりのチケットシステム・運用売上高、億円)→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。案件0.56倍、価格1.10倍。運用自動化と価格競争
- 顔認証・現場ソリューション:数量 140(年間の顔認証導入・現場稼働プロジェクト換算数)× 価格 0.03(プロジェクト換算当たりの機器・ソフト・保守売上高、億円)→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。現場案件0.70倍、価格1.19倍。大手認証ベンダーに案件を奪われる
- ServiceNow導入・開発・運用支援:数量 70.1(ServiceNow専門エンジニアの年間稼働人年換算)× 価格 0.15(専門エンジニアの稼働人年当たり年間売上高、億円)→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。専門稼働0.57倍、単価1.13倍。標準AI機能で設定工数が減る
- 一般受託システム開発:数量 55.0(年間の受託開発・改修の換算案件数)× 価格 0.12(換算案件当たりの年間売上高、億円)→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。案件0.55倍、単価1.16倍。内製化が加速
- RocoTimeなど勤怠・業務ソフト:数量 70,000(年間課金対象ID数の換算値)× 価格 0.00(課金ID当たり年間売上高、億円)→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。ID0.70倍、単価1.04倍。画面中心SaaSの値下げ
- 海外開発・保守の外部顧客向け売上:数量 9.9(年間の外部向け開発・保守契約の換算案件数)× 価格 0.08(外部向け換算案件当たり売上高、億円)→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。外販工数0.55倍、単価1.16倍。拠点固定費が利益を圧迫
倍率:k7.75%、g_long0%で稼ぐ力のPER上限は12.903倍だが、この筋書きではさらに低収益の固定費負担と事業再編が残るため、やや悲観として11.5倍を採用する。余剰現金は景気後退と投資負担で帳簿3億円の75%に減らし、戻り方0.75を掛ける。現金税後利息は2.25億円×1.4%=0.0315億円を控除する。
確率:ITO、受託開発、ServiceNow導入支援の複数分野で工数削減が進み、ロココが生産性向上の果実を十分に価格へ残せない場合。2026年上期の減益と人件費負担を踏まえた、利益率回復の遅れに独立した懸念がある。AIによる数量減はシナリオ数値に反映済みで、同じ理由による資本コスト加算はしない。
悲観 15% 受託工数の半減と買収資産の毀損 利益 0 億円 · PBR 0.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 349 円13 億円
大企業のIT運用契約は、AIを内製利用する顧客と大手総合IT会社へ再編される。ロココは顧客との関係の一部を保つものの、請求可能な業務量は大きく減る。人件費を売上と同じ速度では減らせず、拠点統合や事業撤退の費用もかかる。
ServiceNowの標準機能が一般的な設定・開発を自動化し、認定技術者数が受注の優位につながらなくなる。一般受託開発と海外オフショア業務も価格競争にさらされる。認証関連では大手競合が入場管理とクラウド認証を一括提供し、AUTHの案件数が失われる。買収したAI技術は外販製品として十分に立ち上がらず、のれんが減損される。
2035年には売上高が約45億円となり、営業損益は小幅な赤字へ落ち込む。それでも、2025年時点で保有する純現金と換金可能な金融資産の一部は価値を持つ。事業の過去の高い収益力や将来の内部留保を床には使わず、売却可能資産の保守的な回収額を評価する。累計還元は縮小し、既存株主にとって厳しい10年となる。
- IT運用・ヘルプデスク・一般BPO:数量 192(年間の請求対象となる技術者・運用担当者の稼働人年換算)× 価格 0.13(稼働人年当たり年間売上高、億円。機器販売など付随売上を含む推計単価)→ 売上 25 億円・営業利益 0 億円。人月型数量0.48倍、価格1.04倍。受注と値決め力を喪失
- チケット受付・抽選・イベント運用:数量 400(年間の受託公演・催事の換算案件数)× 価格 0.01(換算案件当たりのチケットシステム・運用売上高、億円)→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。案件0.40倍、価格1.02倍。自社システムの競争力が低下
- 顔認証・現場ソリューション:数量 80.0(年間の顔認証導入・現場稼働プロジェクト換算数)× 価格 0.03(プロジェクト換算当たりの機器・ソフト・保守売上高、億円)→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。現場案件0.40倍、価格1.04倍。認証製品の競争負け
- ServiceNow導入・開発・運用支援:数量 61.5(ServiceNow専門エンジニアの年間稼働人年換算)× 価格 0.14(専門エンジニアの稼働人年当たり年間売上高、億円)→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。専門稼働0.50倍、単価1.05倍。業務プラットフォームによる実装工数代替
- 一般受託システム開発:数量 45.0(年間の受託開発・改修の換算案件数)× 価格 0.11(換算案件当たりの年間売上高、億円)→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。案件0.45倍、単価1.06倍。内製化と案件価格の競争
- RocoTimeなど勤怠・業務ソフト:数量 60,000(年間課金対象ID数の換算値)× 価格 0.00(課金ID当たり年間売上高、億円)→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。ID0.60倍、単価1.00倍。画面操作中心の機能が陳腐化
- 海外開発・保守の外部顧客向け売上:数量 5.4(年間の外部向け開発・保守契約の換算案件数)× 価格 0.08(外部向け換算案件当たり売上高、億円)→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。外販工数0.30倍、単価1.08倍。固定費が残り大幅な赤字
倍率:営業赤字となるためPERで事業を評価しない。悲観の床は、現在の自己資本29.6億円をそのまま全額回収できると考えるのではなく、純現金と売却可能資産の税後回収額13.0億円を採用する。PBR0.4392倍は13.0÷29.6に対応する。2035年までの累積留保で積み上がる自己資本30億円を清算価値の分母に使わない。
確率:生成AIによる価格・数量の縮小だけでなく、主要顧客の発注先集約、採用費の回収失敗、顔認証の競争負け、Automagicaなどの買収効果不発が重なる構造的敗北。今の顧客関係と純現金が直ちに消失するとは見ないため、倒産直前の値付けにはしないが、低頻度とも言い切れない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
IT運用・ヘルプデスク・一般BPO
大企業のPCライフサイクル管理、常駐運用、問い合わせ窓口、システム保守、機器関連業務。人月・工数型であり、AIエージェントによる代替を強く受ける。
| 数量年間の請求対象となる技術者・運用担当者の稼働人年換算 | 価格稼働人年当たり年間売上高、億円。機器販売など付随売上を含む推計単価 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 400 | 0.13 | 50 | 2 |
| 10 年後 中立 | 260 | 0.16 | 42 | 2 |
取り方:ITO&BPO事業の正式売上61.6612億円から、イベント関連5.8億円と顔認証・現場ソリューション5.8612億円の推計額を分けた残額50億円。FISCOの2026年3月23日付調査ではITサービスマネジメントが同事業の6割強、カスタマーコミュニケーションが1割強で、機器販売等を含む中心事業の規模感と整合する。2025年のITO&BPO所属従業員462人という開示を起点に、直接請求される稼働を400人年と推計し、単価は売上から逆算した。会社は稼働人年と単価を開示していないため、人数も単価も推計である。市場規模は国内IT系BPO約3兆1,220億円、同社50億円は単純比較0.16%相当。中立数量はAIエージェント代替の人月型範囲0.55~0.75倍に置く。
チケット受付・抽選・イベント運用
tike-uke、tike-lotoなどを利用したチケット受付、配席、抽選、興行運用。システム利用と受託運用が混在し、運用部分をAIエージェント代替の対象とする。
| 数量年間の受託公演・催事の換算案件数 | 価格換算案件当たりのチケットシステム・運用売上高、億円 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,000 | 0.01 | 6 | 1 |
| 10 年後 中立 | 750 | 0.01 | 5 | 0 |
取り方:FISCO資料はイベント事業のITO&BPO内構成比を1割弱、粗利益率が比較的高い事業と説明する。61.6612億円の9.4%に当たる5.8億円を事業売上の仮説とした。ぴあ総研が集計した2025年の国内公演回数100,820回に対し、ロココが直接または換算で約1,000案件を扱うと仮定した場合、約0.99%の数量シェア、1案件58万円となる。ただし受託件数の会社開示はなく、1案件に複数公演を含みうる。市場8,564億円はチケット販売総額であって、この売上の分母とは一致しない。案件数と価格は実績値ではなく推計である。
顔認証・現場ソリューション
AUTHシリーズの入退場確認、アルコール検査時の本人確認、作業現場の記録。ソフトのほか現場設置と実際の本人照合が必要な領域。
| 数量年間の顔認証導入・現場稼働プロジェクト換算数 | 価格プロジェクト換算当たりの機器・ソフト・保守売上高、億円 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 200 | 0.03 | 6 | 0 |
| 10 年後 中立 | 224 | 0.04 | 9 | 1 |
取り方:ITO&BPO事業のソリューション部門が売上の1割弱というFISCO記載と、2025年の大型施設向け案件の反動という会社説明を参照し、5.8612億円を仮定した。公表されているAUTHの用途は入場認証、運転者確認、現場作業記録などであるが、案件数と単価は非開示。年間200件相当という仮説から案件当たり約293万円を組み立てた。2025年度の国内個人認証・アクセス管理市場1,474億円に対する売上の単純比は0.40%だが、当該市場にはIDaaS等を含むため、顔認証用途での実際のシェアではない。実地の本人確認部分はAIによる事務工数削減とは区別する。
ServiceNow導入・開発・運用支援
企業向けServiceNowの導入、ワークフロー設計、開発、保守を行う。認定技術者の稼働に依存する受託型で、記録の正本は米国のプラットフォーム側にある。
| 数量ServiceNow専門エンジニアの年間稼働人年換算 | 価格専門エンジニアの稼働人年当たり年間売上高、億円 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 123 | 0.13 | 16 | 1 |
| 10 年後 中立 | 86.1 | 0.17 | 14 | 1 |
取り方:FISCOの2026年3月23日付レポートに、ServiceNow事業の2025年売上高1,600百万円、同年末の専門エンジニア123人、累計取引社数65社が明記されている。売上高16億円を123人で割り、稼働人年の代理単価約1,301万円を推計した。資格保有者数や累計顧客数は実際の年間稼働率を意味しないため、数量は代理指標である。営業利益はクラウドソリューション事業利益1.71457億円を構成事業へ仮配分した額。顧客継続性は強いが、業務データの正本を自社で保有する事業ではないためAIエージェント代替の人月型に分類する。
一般受託システム開発
企業向けアプリケーション開発とシステム改修。設計・実装・試験などの作業を受託するため、AIエージェント代替の影響が大きい。
| 数量年間の受託開発・改修の換算案件数 | 価格換算案件当たりの年間売上高、億円 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 100 | 0.10 | 10 | 0 |
| 10 年後 中立 | 65.0 | 0.13 | 9 | 0 |
取り方:クラウドソリューションのうちServiceNowが5~6割、一般システムソリューションが3~4割というFISCOの事業構成に基づき、正式なクラウド売上28.97155億円から10.4億円を一般開発に割り当てた。会社から受託件数の公表はないため、100案件換算、1案件1,040万円という作業量の代理指標を仮定した。市場は広義の国内システム開発市場に属し、国内全体のIT投資額とは定義が異なる。競合にTIS、SCSK、独立系SI事業者があり、同じ定義での個別シェアは不明。
RocoTimeなど勤怠・業務ソフト
勤怠管理を中心とする自社業務ソフト。人が操作する画面とID課金の価値がAIエージェントで薄れうる。
| 数量年間課金対象ID数の換算値 | 価格課金ID当たり年間売上高、億円 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 100,000 | 0.00 | 3 | 0 |
| 10 年後 中立 | 80,000 | 0.00 | 2 | 0 |
取り方:正式なクラウド売上28.97155億円からServiceNow16億円、一般開発10.4億円を控除した残額2.57155億円をHRソリューション等に配分した。RocoTimeについて過去に公表された累計利用ID約10万という情報を数量の代理指標に用い、年間ID単価約2,572円とした。10万IDは2025年末の稼働有料ID数を確認したものではなく、売上には勤怠以外のサービスが混在しうる。このため数量・価格とも仮説であり、検証時は有料ID数と解約率の最新開示が必要。中立数量0.80倍、価格1.10倍は業務SaaSのAIエージェント代替レンジに沿う。
海外開発・保守の外部顧客向け売上
中国・フィリピンなど海外拠点の外部顧客向け売上。グループ内取引を除く小規模な事業で、開発工数型のリスクを持つ。
| 数量年間の外部向け開発・保守契約の換算案件数 | 価格外部向け換算案件当たり売上高、億円 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 18.0 | 0.07 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 11.7 | 0.09 | 1 | 0 |
取り方:2025年の正式なその他セグメント外部売上1.26457億円を利用した。会社が契約件数を公表していないため、年18件の換算契約と1件約703万円という仮説で表した。正式なセグメント利益0.15629億円にはグループ内取引の影響があり、外部売上高だけで利益率を計算すると実際の採算を誤りうる。将来は内部取引を増収として数えず、外部契約部分を人月・工数型として扱う。
リスクと懸念
AIエージェント代替による請求工数の減少
IT運用、ヘルプデスク、ServiceNowの設定、一般受託開発は、AIエージェントが一部の仕事を直接実行できる領域だ。顧客が解約しなくても請求する人月が減り、競争が強まれば効率化の利益も顧客側へ移る。中立では主要な人月型事業の実質数量が10年で0.65~0.70倍になると見ている。
ServiceNowという外部プラットフォームへの依存
Eliteパートナー認定と累計65社の取引実績は強みだが、ロココはServiceNowの基盤と製品仕様を所有していない。標準AI機能によって導入開発の作業量が減れば、プラットフォーム自体が伸びても導入支援の売上が減少しうる。競合には大手IT会社と多数の認定パートナーがおり、資格の希少性だけでは価格を守れない。
2026年上期に表れた利益率の脆さ
2026年上期は売上増にもかかわらず営業利益が64.6%減った。採用、賃金、研究開発、海外拠点の費用は売上の変動に合わせてすぐには削れない。通期計画を達成するには下期に前年同期のほぼ2倍の営業利益が必要であり、回復が遅れれば増配や将来の成長投資を支える現金が減る。
買収と海外開発投資の回収不確実性
Automagicaの子会社化とポーランドの研究開発拠点は将来への投資だが、独立したAI製品の継続的な売上金額は十分に確認できない。費用だけが先行すれば、営業利益を圧迫し、のれんの減損も必要になる。買収に使った資本が既存事業より高い利益を生むか、案件別の採算とキャッシュフローで判断する必要がある。
顔認証の競争と個人情報保護
顔認証は物理的な本人確認として需要が残る反面、NECなどの大手認証ベンダー、カメラメーカー、クラウド認証サービスとの競争が厳しい。生体情報の取り扱いや同意取得の運用に問題があれば、顧客の導入判断が遅れたり、追加の管理費用が発生したりする。現場対応力が価格を守れるかが分かれ目となる。
純現金の減少と株主資本の非効率な使用
2025年末には純現金9.1億円があり、財務は比較的堅い。しかし、2026年上期は営業キャッシュフローがマイナスとなった。現金を収益性の低い買収や運転資金に使えば、帳簿上の現金は少数株主の価値として戻らない。増配と株主優待を始めた以上、還元を続けられる収益力と資本配分の規律が問われる。
今後の分かれ目
- IT運用とヘルプデスクの稼働工数が減っても、案件単価と営業利益が3年以上増え続けたら
- AIによる省力化の利益を自社が確保できている証拠となる。人月型事業の中立利益率と数量維持率を引き上げ、やや楽観側を再評価する。
- ServiceNowの累計取引社数が増える一方、専門技術者1人当たり売上が連続して減少したら
- 顧客数の伸びが請求工数減少を補えていないと判断する。導入支援の数量と単価の前提を下げ、外部プラットフォーム依存の重みを増やす。
- 顔認証事業の売上・粗利益と導入案件数が独立して開示され、継続案件の増加を確認できたら
- 現場認証の数量推定を開示実績へ置き換える。認証の継続収益と値上げ実績がそろえば、同事業だけは長期成長と堀を上方修正できる。
- 2026年通期の営業利益が6.10億円の計画を大幅に下回り、その後も人件費率が改善しなければ
- 増収が利益へ転換しない構造と判断する。中立の営業利益率を引き下げ、やや悲観側の蓋然性を検討する。
- AutomagicaのAI製品について継続課金額・受注金額・利益が独立して開示されたら
- AI関連事業を人月受託と切り離して評価する。実際の売上で裏付けられた範囲に限り、AIを活用した新しい収益の数量成長を上側の筋書きに加える。
- 営業キャッシュフローが黒字に戻り、増配を続けながら純現金を維持できたら
- 買収・研究開発を含む資本配分が機能していると評価する。余剰現金の株主への戻り方と中立の累計還元を見直す。ただし現金が増えただけで事業の長期成長率は上げない。
見ておくもの
- ITO&BPO事業の顧客数、稼働人員、請求単価と営業利益率
- ServiceNow事業の売上、専門エンジニア数、1人当たり売上、累計取引社数
- 顔認証AUTHの新規導入案件、継続利用件数、製品別売上と粗利益率
- 2026年下期の営業利益5.16億円という通期計画達成に必要な利益水準
- 営業キャッシュフロー、現金及び預金、純有利子負債、のれん残高
- AutomagicaのAI製品の独立した売上・受注額と買収後の採算
- 配当総額、自社株買いの有無、株主優待費用、株数の変化
- RocoTimeの有料ID数、解約率、価格改定実績
倍率と資本コストの決め方
株価を見て将来利益やPERを逆算していない。2025年の正式な3つの事業区分に、FISCOが開示するServiceNow売上16億円、専門技術者123人、業務別売上比率を組み合わせ、7つの数量・単価へ分解した。受託件数が非開示の事業は推計と明記し、物価による増加は数量ではなく価格にのみ含めた。資本コスト7.75%、AI代替を反映したg_long0%から上側3筋書きの正当化PER上限12.903倍を導き、過去や同業の市場PERは使っていない。評価は事業の純利益から余剰現金の利息を除いたうえで現金を別に加え、配当は10年の累計額を中間時点で割り引く。2028年12月期以降の新リース会計による貸借対照表の表示変更は、事業の稼ぐ力の増減と混同しない。悲観の床はのれんを除いた換金可能資産とし、現在の自己資本全額を無条件の床にしていない。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%、株式リスクプレミアム4.5%を合計した基本7.5%に、事業の値決め力と財務構造から求めたquality+0.25%を加えた。2026年の減益や買収の成否はシナリオで扱い、個別の追加資本コストを課さない。
同じ業種(サービス業)の AI 分析
読んだ資料
- ロココ 2025年12月期有価証券報告書:事業、セグメント、資産、配当政策
- ロココ 2026年12月期第2四半期決算短信補足説明資料(2026年8月14日)
- フィスコ企業調査レポート ロココ(2026年3月23日):事業構成、ServiceNow売上、専門技術者、顧客数
- ロココ 2025年12月期決算短信(2026年2月13日)
- 矢野経済研究所 国内BPO市場調査(2025年11月26日)
- ぴあ総研 2025年ライブ・エンタテインメント市場調査(2026年6月17日)
- デロイト トーマツ ミック経済研究所 個人認証・アクセス管理市場調査(2026年4月20日)
- ServiceNow Japan 2025年年頭所感:国内パートナー・認定技術者の競争環境