結論
丹青社は、商業施設・ホテル・博物館・飲食チェーンの店づくりを、企画から設計、施工まで請け負う空間づくりの会社である。筆者の結論は、やや割高だ。2026年1月期は大阪・関西万博の案件が重なり、営業利益率が7.8%と過去最高になった。この山が続くかどうかが、価値のほとんどを決める。
万博の売上は一度きりの上乗せだった。今期の会社予想は、売上も利益もほぼ横ばいに見えるが、受注残は前の期末から1割あまり減っている。これを景気の良さと読むのは危うい。
強みはある。純現金が時価総額の4分の1あり、自己資本比率は7割に近い。配当性向は5割以上を守り、次の中期計画では配当の下限を自己資本配当率8%に引き上げる方針だ。株主に厚い会社だとわかる。
弱みは、仕事が一件ずつの競争入札に近いことだ。値段を自分で決められず、景気が悪くなると店づくりの投資が真っ先に先送りされる。利益率は2023年1月期に1%まで落ちた。
10年を数量と価格で積むと、中立の営業利益は81億円、利益率は6%台に落ちる。万博の特需が抜けた後の、ならした姿である。施工の現場は残るが、企画・設計はAIエージェントに置き換わる。この利益に、資本コスト7.75%から導いた倍率を掛けると、今の時価総額を下回る。
株価が安いから買える会社ではない。山の利益を谷の値段で買う会社でもない。筆者は、10年の利益率が6〜7%に落ち着くかどうかを、いちばん気にしている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は立派な普通の会社である。10年後も事業は残る。人が集まる場所は、これからもつくり続けられるからだ。ただし、10年先の姿が今より強くなるとは言い切れない。
いちばん見るべきは、ならした稼ぐ力である。直近の営業利益率7.8%は、万博という一度きりの上乗せを含む。10年の中立は6〜7%と見る。株主のものになる利益、つまり稼いだ利益から再投資を引いた額は、ほぼ純利益に等しい。設備投資が小さく、利益の大半を配当に回せるからだ。この点は評価できる。
堀は広くない。顧客が値段で選ぶ限り、超過利益は先で薄れる。だから倍率は、資本コストを少し上回る程度の会社に付ける値で止めた。
安全域は、純現金と財務の厚さにある。借金がなく、谷の利益率が1%まで落ちても、会社は続いた。悪い局面でも、現金の相当部分は残るだろう。ただし、現金のうち前受金と未払金で消える部分は割り引いて見る。
経営の資本の使い方は、配当に偏り、再投資の機会を広げる動きは弱い。空間運営や事業主体側への参画で、稼ぎの形を変えられるかが見どころだ。
今の値段は、万博の山の利益が続くことを織り込み過ぎている。筆者は、安全域は足りないと見る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、顧客の店・施設を丹青社が一件ごとに請け負ってつくることだ。顧客は、商業施設の運営会社、ホテル、飲食・小売のチェーン、自治体や博物館である。完成した時に売上が立つ工事型の商売で、受注から完成まで半年から1年以上かかる。
区分は4つある。最大は商業その他施設で、売上のおよそ3分の2を占める。ホテル、エンターテインメント施設、スタジアム、そして万博の展示が入る。2026年1月期の売上は722億円、セグメント利益は68億円だった。
チェーンストアは売上256億円、利益20億円。飲食店や専門店の新店・改装を、1件ずつは小さいが数多くこなす。旗艦店の大型案件が減って売上は落ちたが、利益は増えた。
文化施設は売上89億円で、約6億円の赤字になった。博物館や公共施設の展示は1件が大きく工期も長い。受注が減り、工事の進みが遅れた。赤字の区分を抱えていることは、利益の質を考える時の弱点になる。
受注高は2026年1月期で1,002億円、期末の受注残は479億円だった。受注残が約半年分の売上に当たり、先の売上が見えるのは強みだ。ただし、万博が一巡して受注は前の期より1割ほど減った。
コストの大半は、協力会社への工事費と、設計・営業・現場監督の人件費である。人手不足で職人の費用も人件費も毎年上がる。上がった分を顧客に転嫁できるかが、利益率を決める。
優良さと弱いところ
優良さは、普通である。堀、つまり他社がまねできない強みは、あるにはあるが深くない。
強みの一つは、店づくりの総合力だ。設計から施工、什器、運営支援まで一社で受けられる会社は少ない。顧客の担当者と長く付き合うことで、指名で仕事が来る場面もある。国内の同業では、乃村工藝社に次ぐ大手の一角にいる。
ただし、堀は広くない。矢野経済研究所は、この業界を構造的に低収益と指摘している。顧客は一件ごとに複数社の見積もりを比べ、ゼネコンや内装専門会社、船場も競う。ブランドの力で値段を上げられる場面は限られる。
資本の効率は、直近は良い。ROEは16%ほどで、過去10年の中央値の12%近くを上回る。ただし2023年1月期は2%を割った。山で稼いで谷で削られる会社だと、数字が語っている。
経営の資本配分は堅実だ。借金はなく、設備投資は小さくて済む。稼いだ利益の5割以上を配当に回し、次の中期計画では下限をDOE(自己資本に対する配当の比率)8%に高める。株主資本コストを8%と置き、ROE10%以上を目標に掲げる点も、方向は正しい。
弱い点は三つある。一つ目は、文化施設の赤字。二つ目は、2026年1月期の第4四半期に一部の案件で採算が悪化し、想定を下回ったこと。三つ目は、後継者計画が具体化していないとガバナンス報告書で自ら開示していることだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の空間づくりの市場は、矢野経済研究所の推計で2023年度に約1.6兆円。コロナ禍で縮んだ2021年度の1.27兆円から回復した。電通の調査でも、展示・イベントなどのプロモーションメディア広告費は2025年に1.7兆円を超え、3年連続で伸びた。人の動きが戻り、訪日客を見込んだホテルや商業施設への投資が増えたことが背景だ。
この追い風は、10年続くとは限らない。国内の人口は減る。新しい店舗の数は、ネット通販の広がりで頭打ちになりやすい。筆者は、新設の件数は10年でほぼ横ばいか少し減ると見る。改装や更新の需要が、それを支える。
競合は、売上1,600億円超の乃村工藝社がいちばん大きい。丹青社は市場の約7%で、その次の位置にいる。船場は店舗の内装に強い。ゼネコンや建築設計事務所が、大型の複合施設を丸ごと取りにくることもある。
人手が最大の制約だ。職人の不足で、受けたくても受けられない案件が出る。賃金は毎年上がるので、費用の上昇を発注者に転嫁できる会社と、できない会社の差が開く。今期は万博の反動があり、売上は横ばいの予想でも中身は減っている。上期の売上は前の年の同じ時期より1割あまり減り、経常利益は4割ほど減った。
景気の波は大きい。店づくりの投資は、企業の財布がきつくなると真っ先に止まる。コロナ禍では、2020年1月期から2年で売上が約2割減り、営業利益は57億円から20億円に縮んだ。その翌年は6億円だった。
10年の分かれ目は、ホテル・エンタメ・スタジアムといった大型の仕事で、設計から運営までを任される会社になれるかどうかだ。ここに入れれば、値段は競りで決まる世界から抜けられる。
資本政策と M&A
還元は株主に厚い。配当性向50%以上を方針とし、2026年1月期の配当性向は5割台後半、今期は記念配当を含めて6割台になる計画だ。次の中期計画では、配当性向50%とDOE8%の高い方を下限にする。自己資本が積み上がれば、下限も上がる。
自社株買いは多くない。発行済みの株の約4%を自己株として持つが、近年の積極的な買い増しは確認できなかった。大型の買収もない。M&Aで価値を壊すタイプの会社ではない。
現金は余り気味だ。純現金は172億円、時価総額の約4分の1ある。ただし、工事型の会社は、顧客から先に受け取る前受金と、協力会社に後で払う未払金が運転資金を支える。純現金のすべてが株主のものではない。
株主構成に親会社や支配株主はいない。信託銀行や取引先の持ち株会、生命保険会社が上位に並び、みずほ証券グループが約7%を持つ。政策保有株は毎年見直し、意義が薄いものは減らす方針だ。
買収される可能性は、ゼロではない。時価総額は700億円に満たず、現金も厚く、事業は他社の空間づくりと相性がよい。kabufuの試算では、10年以内に買われる確率は2割ほどだ。ただし価値の計算には、買収のプレミアムを入れていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
万博の反動は一時的だ。人流の回復とインバウンドの定着で、ホテル、エンターテインメント、スタジアムの投資は10年続く。丹青社は、この大型の仕事で実績をつくった。万博の展示で積んだ運営の知識は、次の仕事の指名につながる。
価格の主導権も取りつつある。人手が足りない業界では、職人を確保できる会社が仕事を選べる。丹青社は協力会社との関係が厚く、受注の質を上げられる。2026年1月期のチェーンストアは、売上が減っても利益が増えた。これは、採算の悪い仕事を断り始めた証拠だ。
文化施設の赤字は、一時の工事の遅れが原因で、公共の改装需要が戻れば黒字化する。ここが普通の利益率に戻るだけで、全社の利益は5億円以上増える。
資本の使い方も変わる。配当の下限を自己資本配当率8%に引き上げ、ROE10%以上を掲げた。純現金は172億円あり、無理なく還元を増やせる。営業利益率が8%台に乗れば、10年後の純利益は100億円近くになる。買収で現金を使わずに、株主に返し続ける会社には、安心がある。
さらに、国内の空間づくり市場は約1.6兆円。丹青社のシェアは約7%で、乃村工藝社との差は大きいが、8%台に届けば、売上は1,500億円を超えて利益も伸びる。
慎重な見方
今の利益は山だ。2026年1月期の営業利益率7.8%は、過去10年の中央値を大きく上回る。その差の大半は、万博という一度きりの特需だ。万博の売上は、通常の年には戻らない。
その兆しは、すでに出ている。受注高は前の期より約1割減り、期末の受注残も約13%減った。上期の売上は前の年の同じ時期より1割あまり減り、経常利益は4割ほど減った。会社予想の通期の営業利益80億円は、下期に挽回する前提で置かれている。
利益率が上がりにくい構造もある。顧客は見積もりを比べて発注する。人件費と職人の費用は毎年上がる。転嫁できなければ、利益率は下がる。2023年1月期の営業利益率は1.0%だった。景気が悪くなれば、店づくりの投資は真っ先に止まる。
10年では、構造の変化も重い。ネット通販の広がりで、新しい店舗の数は減る。生成AIは、設計の一部を効率化するが、同時に設計の単価を押し下げる。大型の仕事は、ゼネコンや大手の同業に取られやすい。
文化施設は赤字で、チェーンストアも小さな案件が多い。純現金の相当部分は、前受金と未払金に支えられた運転資金だ。現金の見かけの厚さは、そのまま安全域とは呼べない。
配当の下限を高める方針も、利益が落ちれば重荷になる。配当性向が6割を超えると、自己資本が積み上がらず、ROEは上がらない。
どちらに重みを置いたか
強気の言い分は、方向としては正しい。大型の仕事への移行と配当の厚さは本物だ。ただし、10年の利益率を8%台に置くには、万博の特需が抜けた後の実績が足りない。
慎重な言い分のほうが強い。受注と上期の数字が、すでに山の後退を示している。そこで確率を、中立(36%)と、やや悲観(26%)に厚く置いた。楽観は7%、悲観は10%に抑えた。悲観でも、純現金が残る会社で、倒れる筋書きではない。
企画・設計がAIエージェントに置き換わる分は数量と価格に入れ、確率では重ねていない。結果として、確率で重ねた本質価値は今の時価総額を25%ほど下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/01 期)
確率で加重した株価時価総額 1,782 円827 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 779 円362 億円)。 今の値に割り戻すと 1,382 円641 億円、今との差 −6.4%、 期待の年率 +5.7%(資本コスト 7.8%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 3,350 円1,555 億円 | 1,055 円490 億円 | +198.5% | +11.6% | 308 円143 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,557 円1,187 億円 | 912 円423 億円 | +135.0% | +8.9% | 694 円322 億円 |
| 中立 | 36% | 2,094 円972 億円 | 826 円383 億円 | +97.8% | +7.1% | 1,051 円488 億円 |
| やや悲観 | 27% | 966 円448 億円 | 672 円312 億円 | +11.0% | +1.0% | 442 円205 億円 |
| 悲観 | 10% | 221 円103 億円 | 441 円205 億円 | −55.1% | −7.7% | 66 円31 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,782 円827 億円 | 779 円362 億円 | +73.6% | +5.7% | 2,562 円1,189 億円 |
今の株価時価総額 1,476 円685 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 7% 大型案件で値段を決める側に回り、利益率が8%台に乗る 利益 91 億円 · PER 16.2 倍 · 株価時価総額 3,350 円1,555 億円
万博で積んだ運営の知識が次の指名につながり、ホテルやスタジアム、体験型施設の大型案件で値段の主導権を取る。施工管理と協力会社の束ねという現場の体の仕事は、AIでは置き換わらず、職人を確保できる会社として受注を選べる。企画・設計はAIエージェントが肩代わりして人手が減るが、それを設計の効率に変えて利益率を押し上げる。それでも設計の部分の数量は今を超えず、AIで伸びた受注の金額が開示で出るまでは、これ以上は置かない。 内訳は商業その他施設=数量1.03倍・価格1.36倍・利益率8.3%、チェーンストア=数量1.03倍・価格1.35倍・利益率8.3%、文化施設=数量1.13倍・価格1.39倍・利益率5.8%、その他=数量1.13倍・価格1.44倍・利益率29.8%。この筋書きの確率は7%。結果は、売上が今の1.41倍の1,517億円、営業利益124億円、純利益91億円、自己資本641億円、10年の還元490億円、時価総額1,472億円(PER16.23倍)。
- 商業その他施設:数量 616(年間の完工件数(件換算))× 価格 1.64(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 1,010 億円・営業利益 84 億円。数量1.03倍・価格1.36倍・営業利益率8.3%(施工・現場管理が中心+企画・設計は人月型)
- チェーンストア:数量 672(年間の完工件数(件換算))× 価格 0.53(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 359 億円・営業利益 30 億円。数量1.03倍・価格1.35倍・営業利益率8.3%(施工・現場管理が中心+企画・設計は人月型)
- 文化施設:数量 67.8(年間の完工件数(件換算))× 価格 2.06(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 140 億円・営業利益 8 億円。数量1.13倍・価格1.39倍・営業利益率5.8%(施工・現場管理が中心+企画・設計は人月型)
- その他:数量 11.3(年間の件数(件換算))× 価格 0.75(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 9 億円・営業利益 3 億円。数量1.13倍・価格1.44倍・営業利益率29.8%(施工・現場管理が中心+企画・設計は人月型)
倍率:事業の純利益 91 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.7% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.2%、10 年より先の名目の伸び g 3.2% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.2 倍。全体の PER 16.23 倍、時価総額 1,472 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:万博後も大型の仕事の実績が続き、運営参画で主導権を取る筋。利益率8%台は万博の特需なしでは実績がなく、慎重な見方が強いので7%。AIを売り物にした受注の開示も無い。
やや楽観 20% 特需が抜けても需要が底堅く、利益率7%台を保つ 利益 70 億円 · PER 15.6 倍 · 株価時価総額 2,557 円1,187 億円
万博が抜けた後も、インバウンドとホテル・エンタメの投資が続き、現場の仕事は人手不足の中で値段を通しやすい。企画・設計の一部はAIに移って数量が減るが、全体への影響は小さく、利益率は7%台を保つ。文化施設は黒字に戻り、配当の下限の引き上げで還元も厚い。 内訳は商業その他施設=数量0.95倍・価格1.34倍・利益率7.2%、チェーンストア=数量0.97倍・価格1.33倍・利益率7.7%、文化施設=数量0.99倍・価格1.35倍・利益率3.7%、その他=数量0.71倍・価格1.43倍・利益率29.7%。この筋書きの確率は20%。結果は、売上が今の1.28倍の1,369億円、営業利益97億円、純利益70億円、自己資本605億円、10年の還元423億円、時価総額1,091億円(PER15.56倍)。
- 商業その他施設:数量 570(年間の完工件数(件換算))× 価格 1.61(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 916 億円・営業利益 66 億円。数量0.95倍・価格1.34倍・営業利益率7.2%(施工・現場管理が中心+企画・設計は人月型)
- チェーンストア:数量 628(年間の完工件数(件換算))× 価格 0.52(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 328 億円・営業利益 25 億円。数量0.97倍・価格1.33倍・営業利益率7.7%(施工・現場管理が中心+企画・設計は人月型)
- 文化施設:数量 59.4(年間の完工件数(件換算))× 価格 2.01(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 119 億円・営業利益 4 億円。数量0.99倍・価格1.35倍・営業利益率3.7%(施工・現場管理が中心+企画・設計は人月型)
- その他:数量 7.1(年間の件数(件換算))× 価格 0.75(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 2 億円。数量0.71倍・価格1.43倍・営業利益率29.7%(施工・現場管理が中心+企画・設計は人月型)
倍率:事業の純利益 70 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.2% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.2% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.6 倍。全体の PER 15.56 倍、時価総額 1,091 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:万博が抜けた後も、インバウンドとホテル・エンタメの投資が続く筋。受注の質が上がる兆しはあるが、反動も出ているので中立より低い。
中立 36% 特需が抜け、施工は横ばい、設計は縮み、利益率が6%台に落ち着く 利益 58 億円 · PER 15.0 倍 · 株価時価総額 2,094 円972 億円
万博の特需が抜けて、施工の数量は横ばいから小さく減る。施工管理や職人の束ねは現場の体の仕事で、AIエージェントでは置き換わりにくい。企画・設計は売上の2割ほどで、ここは人月型としてAIに置き換わり、数量が0.66倍、価格も物価に届かない。全体では数量が0.9倍前後、利益率は6%台に落ち着く。純現金と配当の厚さは保たれる。 内訳は商業その他施設=数量0.90倍・価格1.32倍・利益率6.4%、チェーンストア=数量0.93倍・価格1.32倍・利益率7.1%、文化施設=数量0.97倍・価格1.32倍・利益率1.6%、その他=数量0.93倍・価格1.32倍・利益率29.6%。この筋書きの確率は36%。結果は、売上が今の1.20倍の1,289億円、営業利益81億円、純利益58億円、自己資本584億円、10年の還元383億円、時価総額869億円(PER14.95倍)。
- 商業その他施設:数量 540(年間の完工件数(件換算))× 価格 1.58(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 855 億円・営業利益 55 億円。数量0.90倍・価格1.32倍・営業利益率6.4%(施工・現場管理が中心+企画・設計は人月型)
- チェーンストア:数量 606(年間の完工件数(件換算))× 価格 0.52(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 314 億円・営業利益 22 億円。数量0.93倍・価格1.32倍・営業利益率7.1%(施工・現場管理が中心+企画・設計は人月型)
- 文化施設:数量 58.3(年間の完工件数(件換算))× 価格 1.96(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 114 億円・営業利益 2 億円。数量0.97倍・価格1.32倍・営業利益率1.6%(施工・現場管理が中心+企画・設計は人月型)
- その他:数量 9.3(年間の件数(件換算))× 価格 0.68(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 6 億円・営業利益 2 億円。数量0.93倍・価格1.32倍・営業利益率29.6%(施工・現場管理が中心+企画・設計は人月型)
倍率:10年より先の名目の伸びg3.2%(現場の施工は名目で4%伸び、企画・設計の人月の部分は0%なので、売上の割合で混ぜた)で、正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)。事業のROE9.9%、RONIC=k7.75%+残る割合0.50×(ROE−k)=9.3%、PER14.95倍。AIエージェント代替はgと別に数量・価格・k・確率へ入れ済みで、PERの上に割引は重ねない。
確率:万博の特需が抜けた後のならした姿。施工は現場の体の仕事で置き換わりにくく、企画・設計の2割だけ縮む。受注と上期の数字が山の後退を示すので最大の確率を割り当てた。
やや悲観 27% 景気後退と人手不足で、利益率が4%台まで戻る 利益 29 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 966 円448 億円
10年の間に景気後退が来て、店づくりの投資が先送りされる。人手不足で職人の費用が上がり、転嫁が遅れる。施工の数量は一割ほど減り、企画・設計はAIに置き換わって半分近くに縮む。利益率は4%台まで戻り、文化施設の赤字も続く。純現金が下値を支える。 内訳は商業その他施設=数量0.81倍・価格1.27倍・利益率4.0%、チェーンストア=数量0.85倍・価格1.27倍・利益率5.0%、文化施設=数量0.84倍・価格1.27倍・利益率-2.5%、その他=数量0.59倍・価格1.27倍・利益率14.5%。この筋書きの確率は27%。結果は、売上が今の1.04倍の1,113億円、営業利益42億円、純利益29億円、自己資本511億円、10年の還元312億円、時価総額375億円(PER12.9倍)。
- 商業その他施設:数量 484(年間の完工件数(件換算))× 価格 1.53(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 738 億円・営業利益 30 億円。数量0.81倍・価格1.27倍・営業利益率4.0%(施工・現場管理が中心+企画・設計は人月型)
- チェーンストア:数量 550(年間の完工件数(件換算))× 価格 0.50(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 275 億円・営業利益 14 億円。数量0.85倍・価格1.27倍・営業利益率5.0%(施工・現場管理が中心+企画・設計は人月型)
- 文化施設:数量 50.6(年間の完工件数(件換算))× 価格 1.89(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 96 億円・営業利益 −2 億円。数量0.84倍・価格1.27倍・営業利益率-2.5%(施工・現場管理が中心+企画・設計は人月型)
- その他:数量 5.9(年間の件数(件換算))× 価格 0.66(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。数量0.59倍・価格1.27倍・営業利益率14.5%(施工・現場管理が中心+企画・設計は人月型)
倍率:10年より先の名目の伸びg3.2%(現場の施工は名目で4%伸び、企画・設計の人月の部分は0%なので、売上の割合で混ぜた)で、正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)。事業のROE5.7%、RONIC=k7.75%+残る割合0.50×(ROE−k)=8.8%、PER12.9倍。AIエージェント代替はgと別に数量・価格・k・確率へ入れ済みで、PERの上に割引は重ねない。
確率:店づくりの投資は景気に敏感で、10年に一度は後退がある。人手不足で費用の転嫁が遅れる筋も重ねた。設計の置き換えは数量に入れ済みで、確率には重ねていない。
悲観 10% 店づくりの投資が縮み、請負の薄利に戻る 利益 8 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 221 円103 億円
ネット通販の広がりで新設の店舗が構造的に減り、大型の仕事はゼネコンや大手の同業に取られる。企画・設計はAIエージェントに大きく置き換わり、現場の仕事も受注の減少で薄利になる。利益率は2%台に落ち、文化施設は赤字のまま。純現金と売れる資産が床になるので、会社は消えない。 内訳は商業その他施設=数量0.67倍・価格1.13倍・利益率1.9%、チェーンストア=数量0.72倍・価格1.12倍・利益率2.4%、文化施設=数量0.68倍・価格1.12倍・利益率-4.6%、その他=数量0.40倍・価格1.12倍・利益率-0.6%。この筋書きの確率は10%。結果は、売上が今の0.77倍の824億円、営業利益12億円、純利益8億円、自己資本396億円、10年の還元205億円、時価総額102億円(PER12.5倍)。
- 商業その他施設:数量 401(年間の完工件数(件換算))× 価格 1.36(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 545 億円・営業利益 10 億円。数量0.67倍・価格1.13倍・営業利益率1.9%(施工・現場管理が中心+企画・設計は人月型)
- チェーンストア:数量 471(年間の完工件数(件換算))× 価格 0.44(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 208 億円・営業利益 5 億円。数量0.72倍・価格1.12倍・営業利益率2.4%(施工・現場管理が中心+企画・設計は人月型)
- 文化施設:数量 41.0(年間の完工件数(件換算))× 価格 1.67(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 69 億円・営業利益 −3 億円。数量0.68倍・価格1.12倍・営業利益率-4.6%(施工・現場管理が中心+企画・設計は人月型)
- その他:数量 4.0(年間の件数(件換算))× 価格 0.58(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。数量0.40倍・価格1.12倍・営業利益率-0.6%(施工・現場管理が中心+企画・設計は人月型)
倍率:10年より先の名目の伸びg3.2%(現場の施工は名目で4%伸び、企画・設計の人月の部分は0%なので、売上の割合で混ぜた)で、正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)。事業のROE2.1%、RONIC=k7.75%+残る割合0.50×(ROE−k)=8.8%、PER12.5倍。AIエージェント代替はgと別に数量・価格・k・確率へ入れ済みで、PERの上に割引は重ねない。
確率:新設の件数が構造的に減り、価格競争が強まる筋。純現金が残る会社で倒れる筋ではないので、やや悲観と合わせて37%にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
商業その他施設
ホテル・エンターテインメント施設・商業施設・万博パビリオンなどの企画・設計・施工
| 数量年間の完工件数(件換算) | 価格1 件あたりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/01 | 600 | 1.20 | 722 | 68 |
| 10 年後 中立 | 540 | 1.58 | 855 | 55 |
取り方:国内の空間づくり市場(矢野経済の推計で約 1.6 兆円)のうち、複合商業・ホテル・エンタメ・イベントなど大型の案件に当たる部分を丹青社が約 720 億円取っているとみて、平均 1 件 1.2 億円と仮置きして約 600 件に直した(開示は無く推定)。数量は実質の件数、価格は物価を含む名目。利益は決算説明のセグメント利益 68 億円。万博関連の売上を含む。 【AIエージェント代替の見直し】事業の中心は商業施設・ホテル・イベントの店づくりの請負で、施工管理や職人・協力会社の束ねという現場の体の仕事なので、今の置き方を基本にした。決算資料に企画・設計の売上は分けて開示されていないため、売上の2割(20%)が企画・設計と推定し、この部分だけ人月型(数量0.66倍・価格1.22倍)で置いた。現場の部分は今の置き方のまま。中立は全体で数量約0.90倍・価格約1.31倍。AIを自社の売り物にして出ている受注の金額は開示されていないので、楽観も数量は1.0倍以下。
チェーンストア
飲食・専門店・小売チェーンの新店と改装の企画・施工
| 数量年間の完工件数(件換算) | 価格1 件あたりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/01 | 650 | 0.39 | 256 | 20 |
| 10 年後 中立 | 606 | 0.52 | 314 | 22 |
取り方:チェーン店の新改装は 1 件が小さい。売上 256 億円を平均 1 件約 0.4 億円と仮置きして約 650 件。数量は実質の件数、価格は物価を含む名目。利益は決算説明のセグメント利益 20 億円。 【AIエージェント代替の見直し】チェーンストアの店づくりも同じ型で、企画・設計の2割だけ人月型に置いた。1件が小さく、設計の置き換えは数量の縮みとして効く。
文化施設
博物館・美術館・科学館・公共施設の展示の企画・施工
| 数量年間の完工件数(件換算) | 価格1 件あたりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/01 | 60.0 | 1.49 | 89 | −6 |
| 10 年後 中立 | 58.3 | 1.96 | 114 | 2 |
取り方:公共の展示は 1 件が大きく工期が長い。売上 89 億円を平均 1 件約 1.5 億円と仮置きして約 60 件。数量は実質、価格は名目。2026/01 期は受注減と工事の遅れでセグメント利益が約 6 億円の赤字。 【AIエージェント代替の見直し】文化施設も同じ型で、企画・設計の2割だけ人月型に置いた。赤字からの戻りは従来の置き方のまま。
その他
付随する事業(設備・保守など)
| 数量年間の件数(件換算) | 価格1 件あたりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/01 | 10.0 | 0.52 | 5 | 2 |
| 10 年後 中立 | 9.3 | 0.68 | 6 | 2 |
取り方:売上 5 億円ほどの小さな区分。1 件 0.5 億円と仮置きして約 10 件。セグメント利益は約 2 億円。 【AIエージェント代替の見直し】売上5億円ほどの小さな区分で、同じ型の2割だけ人月型に置いた。
リスクと懸念
AIエージェント代替(企画・設計の部分)
丹青社の主力は施工管理と職人・協力会社の束ねという現場の体の仕事で、AIエージェントでは置き換わりにくい。ただし企画・設計は売上の2割と推定され、ここは人の時間で売る仕事なので、AIに肩代わりされて数量と単価が縮む。中立の売上は今の1.20倍(名目)、悲観では0.77倍と置いた。施工の現場の型を基本にしているので、影響は一部にとどまる。
万博の反動が想定より深い
2026年1月期の売上には万博の案件が大きく乗った。受注高は約1割減り、期末の受注残は約13%減った。反動が会社予想より深ければ、今期の営業利益80億円は下振れる。10年の出発点そのものが低くなる。
人手不足と職人の費用上昇
職人が足りず、協力会社の単価は毎年上がる。上がった分を発注者に転嫁できなければ、利益率は下がる。職人を確保できず、受けたい案件を断る事態も起こりうる。供給の制約が、売上の伸びを抑える。
景気の波と投資の先送り
店づくりの投資は、企業の財布が締まると真っ先に止まる。2020年1月期から2年で売上は約2割減り、営業利益は57億円から20億円に縮んだ。固定費が残る形で利益が消える構造は、今も変わらない。
文化施設の赤字
博物館や公共施設の展示は1件が大きく、工期が長い。2026年1月期は受注減と工事の遅れで約6億円の赤字になった。大型の案件が1つ採算割れになるだけで、区分の利益は大きく振れる。
新規出店の頭打ちと通販の広がり
国内の人口は減り、ネット通販は広がる。新しい店舗や施設の数は、10年でほぼ横ばいか少し減る。改装の需要が下支えするが、新設ほど単価は大きくない。数量は物価のようには増えない。
後継者計画と経営の層
ガバナンス報告書で、後継者計画は具体的な計画なしと自ら開示している。特定の経営者に頼る会社ではないが、将来の舵取りが見えにくい。資本配分の方針が変われば、配当の厚さも変わりうる。
純現金の見かけの厚さ
純現金は172億円あるが、工事型の会社は前受金と未払金で運転資金を回す。受注が減ると先に現金が出ていく。現金のすべてを株主の取り分と数えると、価値を過大に見る。
今後の分かれ目
- 2027年1月期の営業利益が会社予想の80億円を下回り、受注残の減少が続く
- 中立の出発点が下がり、やや悲観の確率を上げる必要が出る。特に受注残が半年分の売上を割り込むと、翌期の減益が確実になる。
- 商業その他施設で、運営や事業主体側に参画する案件が増え、利益率が8%を超えて定着する
- 値段を競りで決められる範囲が広がり、やや楽観から楽観の筋書きに近づく。堀を強いと言える材料になる。
- 文化施設が黒字化し、利益率が4%以上に戻る
- 全社の利益が5億円以上増え、採算の悪い案件を選別できている証拠になる。やや楽観の筋書きが現実味を帯びる。
- 協力会社や職人の費用が物価を超えて上がり、転嫁が遅れる
- 営業利益率は6%を割り、やや悲観の筋書きに近づく。値上げの交渉力が弱いことが確認される。
- 次の中期計画(2028年1月期から)で、DOE8%の下限に加え自社株買いなどの還元が明確に示される
- 自己資本が膨らまず、ROEが上がる形になる。倍率を決める上限の高い側に近づくが、利益そのものは増えない。
- 他社が買収を提案する、または大株主が動く
- 買収のプレミアムが乗る可能性がある。ただし本質価値の計算には買収を入れていないので、上振れとして別に見る。
見ておくもの
- 四半期ごとの受注高と受注残(半年分の売上を保てるか)
- 商業その他施設・チェーンストア・文化施設の区分ごとの利益率
- 協力会社・職人の費用の動きと、価格への転嫁(セグメント利益率)
- 次の中期経営計画(2028年1月期から)の目標利益率と還元方針
- 純現金と前受金・未払金の動き(運転資金の厚さ)
- 後継者計画の具体化と大株主の動き
倍率と資本コストの決め方
今の株価やPER・PBRからは出発せず、商業その他施設・チェーンストア・文化施設の件数と1件あたりの売上から各筋書きの売上と営業利益を積んだ。主力は施工管理という現場の体の仕事なので、今の置き方を基本にし、企画・設計(売上の2割と推定。決算資料に分離開示は無い)だけ人月型の縮みを混ぜた。倍率は、現場の部分(g4%)と設計の部分(g0%)を割合で混ぜたg3.2%の正当化PERで、普通の堀(残る割合1/2)から求めた。kの寿命の上乗せは現場の型の範囲で+0.25%、確率は上のとおりで、同じ理由を重ねて引いていない。今の株価との差を狙って置いたのではない。純現金は運転資金に使われるとみて分けていない。リースは今と同じ形。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.98→16.23 倍・やや楽観 PER 12.35→15.56 倍・中立 PER 11.85→14.95 倍・やや悲観 PER 11.43→12.9 倍・悲観 PER 11.43→12.5 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.0% を足した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.75% → 8.00%。