結論
トランスジェニックグループは、遺伝子を改変したマウスを使う薬の試験の受託と、雑貨や化学品の卸・商社の子会社を束ねる持株会社だ。筆者の結論は「割高」で、一番の理由は、帳簿より安く見える値段でも、資本コストの半分ほどしか稼げない事業にはまだ高いことにある。
売上 132 億円の 8 割強は、卸・商社・小売をまとめた投資・コンサルティング事業だ。ここが年 4〜5 億円の利益を生み、赤字の多い創薬支援を支えてきた。2026 年 3 月期は、子会社の試験データの不正に絡む補償で最終赤字になった。
強みは、マウスを作る技術から病理の検査まで、薬の試験の前の段階を一つのグループで請けられることだ。弱みは、その創薬支援が 10 年近く黒字を定着させられず、データの信頼にも傷がついたことだ。
10 年の中立では、卸が稼ぎ、創薬支援は小さな黒字にとどまる。ROE は 4% 前後で、ためた利益は帳簿ほどの値打ちを持たない。PBR が 1 倍を割っていることは、割安の根拠にならない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、トランスジェニックグループは「技術を持つが、資本を稼ぎに変えられない会社」だ。
オーナーとして見ると、卸と商社の部分は地味だが堅い。年 4〜5 億円の利益を生み、大きな設備は要らない。しかし、その稼ぎは創薬支援の赤字と本社の費用に食われ、株主の手にはほとんど残らない。配当も自社株買いも無い。
創薬支援の技術は面白い。人の免疫を持つマウスのような道具は、薬の開発に欠かせない。ただ、10 年近く黒字を定着させられず、試験データの不正も起きた。わからない事業、つまり先の稼ぎを確かに読めない事業には、高い値段を払えない。
PBR が 0.8 倍を下回る値段は、一見安い。しかし ROE が資本コストの半分なら、帳簿の価値はそのままの値打ちを持たない。筆者は、今の値段に安全域は無いと見る。
何で稼ぐ会社か
事業は 2 つのセグメントに分かれる。売上 132 億円(2026 年 3 月期)のうち 8 割強が投資・コンサルティング、残りが創薬支援だ。
投資・コンサルティングという名前だが、中身は買い集めた卸・商社・小売の会社だ。ギャラックス貿易は輸入の雑貨や日用品をディスカウント店などに卸し、アウトレットプラザは小売を担う。東名商会や東北新和化学は化学品などを扱う。2026 年 3 月期の売上は 109 億円、営業利益は 4.8 億円で、利益率は 4% 台だ。
創薬支援は、子会社のトランスジェニックが遺伝子を改変したマウスを作り、ルナパス毒性病理研究所が薬の安全性を調べる病理の検査を請ける。人の免疫を持つマウスを使う試験など、技術の強みはある。売上は 23 億円に伸びたが、営業損失は 1.6 億円だった。2025 年には子会社の職員による試験データの不正が見つかり、補償金 2.7 億円を払った。
本社の費用は年 1.8 億円ほどで、持株会社としての管理の重さが利益を削る。現金と借入はほぼ同じ額で、差し引きの借金はゼロに近い。
優良さと弱いところ
優良さは「技術はあるが、稼ぎにつながらない」と見る。遺伝子を改変したマウスを作る技術は、熊本大学発の研究から始まった本物の強みだ。マウスの作製から病理の検査までを一つのグループで請けられる会社は、国内では多くない。
しかし、その強みは 10 年近く利益にならなかった。薬の試験の受託は、新日本科学や海外の大手の受託会社が規模で勝る。値段の主導権は大手にあり、小さな会社は件数を取るために値段で譲る。試験データの不正は、信頼が命の商売に深い傷を残した。
稼ぎの柱の卸・商社も、堀、つまり他社がまねできない強みは薄い。輸入の雑貨はディスカウント店の値下げの圧力を受け、利益率は 4% 台にとどまる。
資本の効率は低い。過去 10 年の ROE の中央値は 0.3% で、資本コストに遠く届かない。持株会社として会社を買い集めてきたが、買った会社の稼ぎで資本コストを超えた年はほとんど無い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
創薬支援の市場は、世界では伸びている。製薬会社は薬の試験を外の受託会社に任せる流れを強め、受託の市場は年 7〜8% で伸びるとされる。人の免疫を持つマウスや、病気を再現したマウスの需要も、がんや免疫の薬の開発とともに増える。
ただ、日本の中小の受託会社には厳しい市場だ。大手の製薬会社は世界の大手の受託会社にまとめて頼み、国内の小さな会社に回るのはバイオの新興企業や大学の仕事が中心になる。新興企業は資金の波が大きく、受注は年ごとに振れる。筆者は、この会社の受託の件数は 10 年で 3 割ほど増えると見る。
卸と商社の市場は成熟している。輸入の雑貨や日用品は、ディスカウント店とネット通販の値下げの競争にさらされ、量は人口とともに細る。化学品は国内の工場の生産に左右される。量は 10 年で横ばい、値段は物価並みと筆者は見る。
2 つの市場には共通点が無い。持株会社が別々の事業を束ねても、互いの稼ぎを押し上げる力は生まれにくい。
再編の波は両方に来ている。受託の業界では大手が中小を買い、卸の業界では後継者のいない会社が売りに出る。この会社は買う側に回ってきたが、規模が小さいので、いずれ売る側になる道もある。
資本政策と M&A
還元はしていない。配当は無く、自社株買いも無い。利益は会社の買収と創薬支援の赤字の穴埋めに回ってきた。
資本の使い方の実績は乏しい。卸・商社・小売の会社を次々に買い、売上は 10 年で 6 倍以上になったが、ROE はほとんど上がっていない。2022 年 3 月期の大きな利益は一度きりで、その後は赤字の期が続いた。
大株主は個人が分散し、筆頭でも 2% 弱だ。親会社はいない。PBR が 1 倍を割っているので、事業を切り分けて売る提案や、買収の対象になる余地はある。TOB や MBO の動きは調べた範囲では無かった。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
最悪の時期は過ぎた。創薬支援の赤字は 4.9 億円から 1.6 億円まで縮み、売上は 19% 伸びた。試験データの不正の補償も 2026 年 3 月期に済ませた。2027 年 3 月期は営業利益が 9 割近く増える見込みで、全社は黒字に戻る。
技術は本物だ。遺伝子を改変したマウスや、人の免疫を持つマウスは、がんや免疫の薬の開発に欠かせない。薬の試験を外に任せる流れは世界で強まり、日本のバイオの新興企業も増えている。マウスの作製から病理の検査までを一つのグループで請けられる強みは、件数が増えれば利益率に効く。
卸と商社は年 4〜5 億円を堅く稼ぐ。帳簿の自己資本は 48 億円あり、今の値段はその 8 割に満たない。創薬支援が黒字に定着すれば、ROE は上がり、PBR 1 倍割れは解消される。
持株会社の形にも利点がある。卸の安定した稼ぎで、創薬支援の投資の期間を支えられる。受託の会社だけなら資金が尽きる赤字の年も、グループとしては耐えられた。その間に技術と顧客を守ってきたことが、これから実を結ぶ。
慎重な見方
この会社は 10 年以上、資本を稼ぎに変えられていない。過去 10 年の ROE の中央値は 0.3% だ。会社を買い集めて売上を 6 倍以上にしたが、利益はほとんど増えていない。2022 年 3 月期の大きな利益は一度きりだった。
創薬支援は信頼が命の商売だ。試験データの不正は、製薬会社が受託先を選ぶ時の決定的な減点になる。国内の大手や海外の受託会社は規模で勝り、値段の主導権を握る。小さな会社が黒字を定着させる道は細い。
卸と商社にも堀は無い。輸入の雑貨はディスカウント店とネット通販の値下げの競争にさらされ、化学品は工場の生産に左右される。無配で利益をためても、その利益は次の買収と赤字の穴埋めに消える。PBR 1 倍割れは、稼げない資本の正しい値段だ。
持株会社の形も重荷だ。卸の稼ぎは創薬支援の赤字と本社の費用に吸われ、どちらの事業も単独なら持てるはずの強さを出せない。別々の事業を束ねる理由は、株主の側からは見えない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。赤字の縮みは本物だが、創薬支援が黒字を定着させた実績は無く、試験データの不正の傷も残る。確率は中立を軸に、やや悲観と悲観で 36% を置き、楽観は 8% にとどめた。帳簿の厚さは悲観の床を支えるが、無配で戻り方が弱く、割安の根拠にはならない。中立の時価総額でも今の値段に届かず、確率を楽観側へ多少寄せても割高の判断は変わらない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 213 円36 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 11 円2 億円)。 今の値に割り戻すと 100 円17 億円、今との差 −51.9%、 期待の年率 +0.8%(資本コスト 8.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 471 円79 億円 | 37 円6 億円 | +145.5% | +9.4% | 41 円7 億円 |
| やや楽観 | 20% | 322 円54 億円 | 18 円3 億円 | +64.1% | +5.1% | 68 円11 億円 |
| 中立 | 36% | 205 円34 億円 | 13 円2 億円 | +5.4% | +0.5% | 79 円13 億円 |
| やや悲観 | 22% | 117 円19 億円 | 0 円0 億円 | −43.6% | −5.6% | 26 円4 億円 |
| 悲観 | 14% | 84 円14 億円 | 0 円0 億円 | −59.5% | −8.6% | 12 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 213 円36 億円 | 11 円2 億円 | +8.5% | +0.8% | 225 円37 億円 |
今の株価時価総額 207 円35 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 8% マウスの受託が育ち、卸の利益も厚くなる 利益 7 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 471 円79 億円
遺伝子を改変したマウスや、人の免疫を持つマウスを使った薬の試験の受託が、国内外の製薬会社とバイオの新興企業から増える。試験データの不正の後に整えた品質の管理が評価され、受託の件数は 1.8 倍になる。値段は物価並みに上がり、創薬支援の利益率は 10% に届く。
卸と商社は、輸入の雑貨や化学品の取引を買収で広げ、利益率は 4.8% に上がる。配当を始め、ROE は資本コストに近づく。持株会社として買った会社を育てる力が、数字で示される 10 年になる。アジアの製薬会社からの受託も増え、マウスの技術が国の外でも評価される。
- 投資・コンサルティング(卸・商社・小売):数量 1,256(取扱数量(万個・年、推定))× 価格 0.14(1 万個あたり売上(億円・名目))→ 売上 171 億円・営業利益 8 億円。取扱 1.15 倍 × 単価 1.36 倍、利益率 4.8%
- 創薬支援(マウスの作製・薬の試験・病理の検査):数量 1,355(受託の件数(件・年、推定))× 価格 0.04(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 55 億円・営業利益 6 億円。受託 1.8 倍 × 単価 1.36 倍、利益率 10%
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.3% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 78 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:創薬支援は過去 10 年のほとんどで赤字で、2026 年 3 月期も 1.6 億円の赤字だった。受託が黒字の柱に育った実績が無いので 1 割に届かない 8% にとどめた。
やや楽観 20% 創薬支援が黒字に戻り、卸は堅く稼ぐ 利益 5 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 322 円54 億円
創薬支援は受託の件数が 1.5 倍になり、値段の改定も通って利益率 7% の黒字に戻る。マウスを作る技術と病理の検査を一つの会社グループで請けられるのは、小さな製薬会社には便利だ。
卸と商社は、ディスカウント店向けの雑貨や化学品の取引が少しずつ増え、利益率は 4.4% を保つ。本社の費用は物価で増えるが、両方の事業の伸びがそれを上回る。配当を少し始め、ROE は 5% 台に上がる。それでも資本コストには届かない。試験データの品質の管理を強めた費用は残るが、顧客の信頼は少しずつ戻る。持株会社の形は変わらず、卸の稼ぎが全社の土台であり続ける。
- 投資・コンサルティング(卸・商社・小売):数量 1,179(取扱数量(万個・年、推定))× 価格 0.13(1 万個あたり売上(億円・名目))→ 売上 158 億円・営業利益 7 億円。取扱 1.08 倍 × 単価 1.34 倍、利益率 4.4%
- 創薬支援(マウスの作製・薬の試験・病理の検査):数量 1,130(受託の件数(件・年、推定))× 価格 0.04(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 45 億円・営業利益 3 億円。受託 1.5 倍 × 単価 1.34 倍、利益率 7%
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.2% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 52 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:創薬支援の赤字は 4.9 億円から 1.6 億円まで縮み、2027 年 3 月期は全社で増益を見込む。赤字の縮みが続く筋に 2 割を置いた。
中立 36% 卸が稼ぎ、創薬支援は小さな黒字 利益 3 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 205 円34 億円
卸と商社の取引の量は横ばいで、値段は物価並みに上がる。利益率は 4% と今より少し下がる。輸入の雑貨はディスカウント店の値下げの圧力を受け、化学品は取引先の工場の生産に左右される。
創薬支援は受託の件数が 3 割増えるが、値段は大手の受託会社との競争で物価ほど上がらない。利益率は 4% の小さな黒字にとどまる。本社の費用は物価で増え、全社の営業利益率は 3% 前後になる。無配に近い形が続き、ROE は資本コストの半分ほどだ。新しい買収は控えめになり、持株会社として何を伸ばすのかが見えないまま時間が過ぎる。少数株主の手に戻るものは小さい。
- 投資・コンサルティング(卸・商社・小売):数量 1,092(取扱数量(万個・年、推定))× 価格 0.13(1 万個あたり売上(億円・名目))→ 売上 146 億円・営業利益 6 億円。取扱 1.0 倍 × 単価 1.34 倍、利益率 4%
- 創薬支援(マウスの作製・薬の試験・病理の検査):数量 979(受託の件数(件・年、推定))× 価格 0.04(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 38 億円・営業利益 2 億円。受託 1.3 倍 × 単価 1.30 倍、利益率 4%
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.4% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 34 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:卸と商社は年 4〜5 億円の利益を続けているが、創薬支援は赤字の年が多く、試験データの不正の傷も残る。卸が全社を支える今の形の延長を中心に 4 割弱を置いた。
やや悲観 22% 創薬支援の赤字が続き、卸の利益も細る 利益 1 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 117 円19 億円
試験データの不正の後、製薬会社の一部は受託先を大手に移し、創薬支援の受託は増えない。値段も上げられず、利益はほぼゼロのまま続く。
卸と商社は、ディスカウント店の値下げと輸入の費用の上昇に挟まれ、取引の量は 1 割近く減る。利益率は 3.2% に下がる。全社の営業利益は 2 億円前後にとどまり、無配が続く。価値は事業の稼ぎより、手元に残る正味の資産で測るしかない 10 年になる。買った会社の一部ではのれんの減損が出て、自己資本も少しずつ削られる。株主に戻る道は細いままだ。会社は残るが、持ち続ける理由は薄れていく。
- 投資・コンサルティング(卸・商社・小売):数量 1,005(取扱数量(万個・年、推定))× 価格 0.13(1 万個あたり売上(億円・名目))→ 売上 129 億円・営業利益 4 億円。取扱 0.92 倍 × 単価 1.28 倍、利益率 3.2%
- 創薬支援(マウスの作製・薬の試験・病理の検査):数量 753(受託の件数(件・年、推定))× 価格 0.04(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 28 億円・営業利益 0 億円。受託 1.0 倍 × 単価 1.25 倍、利益率 0%
倍率:稼ぐ力(純利益÷k)は床にならない。のれんを外し在庫と売掛金を値引きした正味の資産に戻り方 0.5 を掛けた床を、今の自己資本 47.8 億円に対する PBR 0.36 倍で書いた。
確率:過去 12 年で赤字の期が 5 度あり、全社の利益は買った会社の出来で大きく振れてきた。創薬支援が黒字にならない筋は十分にありうるので 2 割強を置いた。
悲観 14% 創薬支援を畳み、卸も縮む 利益 −2 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 84 円14 億円
創薬支援は顧客を失って赤字が広がり、最後は事業を売るか畳む。卸と商社は、輸入の雑貨がネット通販と中国の業者に押され、取引の量は 2 割減る。利益率は 2% まで落ち、本社の費用を賄えずに全社は営業赤字になる。
無配のまま、のれんの減損で自己資本は削られる。価値は残った正味の資産で測る 10 年になる。少数株主には、その資産の使い道を決める力も無い。卸の会社を同業に売って本社を畳む道もあるが、値段は買い手の言い値になる。帳簿の厚さは、その時になって初めて目減りが見える。技術は残っても、会社の値打ちにはならない。
- 投資・コンサルティング(卸・商社・小売):数量 874(取扱数量(万個・年、推定))× 価格 0.12(1 万個あたり売上(億円・名目))→ 売上 105 億円・営業利益 2 億円。取扱 0.8 倍 × 単価 1.20 倍、利益率 2%
- 創薬支援(マウスの作製・薬の試験・病理の検査):数量 602(受託の件数(件・年、推定))× 価格 0.04(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 22 億円・営業利益 −2 億円。受託 0.8 倍 × 単価 1.20 倍、利益率 −8%
倍率:稼ぐ力(純利益÷k)は床にならない。のれんを外し在庫と売掛金を値引きした正味の資産に戻り方 0.5 を掛けた床を、今の自己資本 47.8 億円に対する PBR 0.29 倍で書いた。
確率:受託の試験はデータの信頼が命で、不正が再び見つかれば顧客は一気に離れる。持株会社として買い集めた会社の出来にも当たり外れがある。構造的に負ける筋として 1 割強を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
投資・コンサルティング(卸・商社・小売)
ギャラックス貿易・アウトレットプラザ・東名商会・東北新和化学などが、輸入の雑貨・日用品・化学品を卸し、小売もする。
| 数量取扱数量(万個・年、推定) | 価格1 万個あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,092 | 0.10 | 109 | 5 |
| 10 年後 中立 | 1,092 | 0.13 | 146 | 6 |
取り方:数量の開示は無いので推定。セグメント売上 109.2 億円を 1 万個あたり約 0.1 億円の品で割り、年約 1,092 万個と置いた。利益はセグメント利益 4.79 億円(全社費の配賦前)。
創薬支援(マウスの作製・薬の試験・病理の検査)
トランスジェニック・ルナパス毒性病理研究所などが、遺伝子を改変したマウスの作製と薬の安全性の試験を受託する。
| 数量受託の件数(件・年、推定) | 価格1 件あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 753 | 0.03 | 23 | −2 |
| 10 年後 中立 | 979 | 0.04 | 38 | 2 |
取り方:件数の開示は無いので推定。セグメント売上 22.6 億円を 1 件約 300 万円で割り、年約 753 件と置いた。2026/03 期は 1.64 億円の赤字。値段は大手の受託会社との競争で、中立でも物価よりやや低い 1.30 倍に置いた。AI エージェント代替は、実験と検査という現場の作業が中心なので数量に入れていない。
リスクと懸念
試験データの不正の再発と信頼の傷
2025 年に子会社の職員による試験データの不正が見つかり、補償金 2.7 億円を払った。薬の試験の受託は信頼が命で、再び不正が見つかれば製薬会社は一気に離れる。品質の管理の費用も重くなる。
創薬支援が黒字にならない
創薬支援は 10 年近く赤字の年が多い。大手の受託会社は規模で勝り、値段の主導権を握る。件数が伸びても値段で譲れば、黒字は定着しない。
卸の値下げの圧力
稼ぎの 8 割を生む卸・商社は、輸入の雑貨をディスカウント店に卸す商売が中心だ。ネット通販と中国の業者との値下げの競争にさらされ、利益率 4% 台を保てる保証は無い。
買収の失敗とのれんの減損
持株会社として卸・商社・小売の会社を買い集めてきた。買った会社の稼ぎが落ちれば、のれんの減損で自己資本が削られる。過去にも赤字の期が繰り返し出ている。
還元の無さ
配当も自社株買いも無い。利益は次の買収と赤字の穴埋めに回り、株主の手に戻らない。帳簿の価値が厚くても、少数株主にはその使い道を決める力が無い。
今後の分かれ目
- 創薬支援のセグメントが 2 期続けて黒字になったら
- 受託が稼ぎの柱に育ち始めたとみて、やや楽観に重みを移す。
- 2027 年 3 月期に会社予想の営業利益 2.6 億円を超えたら
- 赤字の縮みが続く筋とみて、中立の利益率を見直す。
- 試験データの不正が再び見つかったら
- 創薬支援の信頼が崩れる筋とみて、悲観に重みを移す。
- 配当を始めるか、自社株買いを打ち出したら
- ためた利益を株主に戻す姿勢とみて、溜まる現金の戻り方を見直す。
- 大きな買収や、のれんの減損が出たら
- 資本の使い方の失敗の繰り返しとみて、やや悲観に重みを移す。
見ておくもの
- 創薬支援のセグメント損益
- 卸・商社のセグメント利益率(4% 台を保てるか)
- 試験データの品質の管理と顧客の動き
- 買収とのれん
- 配当の開始
倍率と資本コストの決め方
倍率は k 8.75% と各筋書きの ROE から正当化 PER の式で出し、ROE が k を下回るので 1÷k の 11.8 倍を上限にした。今の PBR 0.8 倍弱や同業の倍率は使っていない。2026/03 期の純損失は試験データの不正の補償という一時の費用なので、自己資本の流れの起点は会社予想の純利益 1.5 億円にした。悲観側は、のれんを外し在庫と売掛金を値引きした正味の資産に、無配の戻り方 0.5 を掛けた床で測った。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.6→11.43 倍・やや楽観 PER 10.6→11.43 倍・中立 PER 10→11.43 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% + quality 1.0%。同じ領域に済んだ会社は無い。医療・ヘルスケアの受託の大手より規模と信頼で劣る分を値決めと寿命で重く見た。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.75%。