結論
テノ.ホールディングスは、福岡を地盤に保育所を運営する会社だ。認可保育所と、病院や企業の中に置く受託の保育所、学童保育を合わせて314の施設を持つ。介護の施設と料理教室も営み、売上は181億円ある。
筆者の結論は、稼ぐ力で測ると今の値段は割高だ、というものだ。売上の伸びは確かだが、利益として残る分が薄い。前期の営業利益は6億円で、借金の利払いと家賃の固定費を考えると、株主に残る利益は小さい。
保育の売上は、国が決める公定価格で守られている。保育士の待遇の改善に合わせて単価は上がり、前期は保育の利益が5割近く増えた。一方で、生まれる子どもの数は毎年減っている。待機児童はほぼ解消し、新しい保育所を作れば売上が伸びる時代は終わりつつある。
財務は軽くない。借入は約56億円で、自己資本比率は17%だ。施設の多くは借りていて、家賃は年19億円近い。創業家が株の半分近くを持ち、還元は配当が中心だ。10年で見ると、利益は物価並みに少し伸びるが、それ以上を期待する根拠は薄いと筆者は見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「社会に必要な仕事だが、株主に残る利益が薄い会社」と見る。
保育所は地域になくてはならない。公定価格で収入が守られ、景気が悪くても子どもは預けられる。この安定は本物だ。
ただ、オーナーとして見たいのは、その安定が利益として残るかどうかだ。収入の大半は保育士の人件費に消え、施設の多くは借り物で家賃が固定でかかる。値段を決めるのは国で、会社ではない。営業利益率は良い年でも6%に届かない。
財務の重さも気になる。借金と家賃の約束は、子どもの数が減っても減らない。創業家が半分近くを持ち、還元は配当が中心だ。
筆者は、10年後も施設の数を少しずつ増やし、利益を物価並みに伸ばす姿を中心に見る。それでも今の値段には、安全域と呼べる余裕は乏しい。見方が変わるのは、借金を減らし、利益率が5%を超えて定着した時だ。
何で稼ぐ会社か
事業は3つある。保育が売上の75%の136億円、介護が20億円、料理教室を中心とする生活関連支援が23億円だ。
保育の中身は幅広い。認可保育所が47、小規模の認可保育所が19、病院や企業、大学の中で働く人の子どもを預かる受託の保育所が129、学童保育が79ある。認可の保育所は、国と自治体が子ども1人あたりの公定価格を払う。受託の保育所は、病院や企業と契約して運営の費用を受け取る。どちらも保育士の人件費が費用の大半を占める。
稼ぎの源は、施設の数と1施設あたりの収入だ。1施設の売上は平均で4,300万円ほどになる。公定価格は保育士の待遇の改善に合わせて上がるので、単価は物価並みかそれ以上に伸びてきた。前期の保育の利益は12億円と、5割近く増えた。
介護は、有料老人ホームやサービス付きの高齢者向け住宅、障がい福祉の施設を27持つ。2024年にウェルファを買って島根県に広げ、売上は7割増えた。料理教室のホームメイドクッキングは55校あるが、赤字が続き、前期はのれんの減損を出した。
施設の多くは借りている。家賃は年19億円近くあり、売上が落ちても減らない固定の約束だ。
優良さと弱いところ
事業の質は、売上は守られているが、利益は薄く、財務が重い、という形だ。
強みは公定価格だ。認可の保育所の収入は国が決めた単価で入り、景気に左右されない。保育士の待遇の改善が続くかぎり、単価は物価並みに上がる。病院や企業の中の受託の保育所は129と多く、長く続く契約で顧客を抱える。
弱みは3つある。1つ目は、値段を自分で決められないことだ。公定価格は国が決め、受託の保育所は入札や契約の更新で値下げを求められる。
2つ目は、利益の薄さだ。営業利益率は過去10年で1〜6%の間を動き、2022年からの3年は1%台だった。料理教室の赤字と本社の費用が、保育の稼ぎを削ってきた。
3つ目は財務の重さだ。借入は約56億円、家賃は年19億円近く、自己資本比率は17%にとどまる。保育の需要が落ちても、家賃と利払いは残る。
ROE(自己資本利益率)は過去10年の中央値で9%台だが、薄い自己資本で膨らんで見える面がある。2024年には5億円の赤字も出した。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
保育の需要は、子どもの数とともに細っていく。国内の出生数は2024年に70万人を割り、毎年数%ずつ減っている。待機児童はほぼ解消し、地方では定員の空きが目立つ保育所も増えてきた。業界の見方は、子どもの数が年1%前後減るのを、単価の上昇と対象の広がりで補う、というものだ。
単価は名目で物価並みに上がる。国は保育士の待遇を改善するため、公定価格を毎年のように引き上げている。人件費が費用の大半なので、単価と人件費が同じように上がれば利益率は保たれる。ただ、保育士の採用は難しく、人手が足りなければ定員まで子どもを受け入れられない。
伸びる分野もある。共働きが当たり前になり、学童保育と病院・企業の中の受託の保育は需要が増える。国が進める「こども誰でも通園制度」のように、働いていない親の子どもも預かる仕組みも広がる。
競争は分散している。JPホールディングスのような大手から、地域の社会福祉法人まで多くの運営者がいる。子どもが減る中で、規模の小さい運営者は撤退し、施設は大手に集まっていく。筆者は、テノはその中で施設を少しずつ増やせる側にいると見る。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。方針は安定配当の継続で、前期の配当総額は0.45億円だった。自社株買いの実績はほとんどない。
資本の使い方の中心は、施設の開設と買収だ。2024年に島根県のウェルファを買って介護を広げた。中期経営計画では2028年12月期に売上232億円、営業利益9.5億円を掲げ、長期の目標では2030年に売上300億円、営業利益率5%以上を目指す。
大株主は、創業者の池内比呂子社長の資産管理会社の夢源が約32%、社長個人が約15%で、合わせて半分近くを持つ。経営の方針は創業家が決める。
M&Aでは、子どもが減る中で小さな保育の運営者の撤退が続き、買う側に回る機会は多い。逆に、借金の重さと創業家の持ち分を考えると、この会社が買われる筋は細いと筆者は見る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
テノ.ホールディングスは、利益が戻り始めたところにいる。前期の営業利益は6億円と3倍に増え、保育の利益は5割近く伸びた。公定価格の引き上げと運営の効率化が効いている。中期経営計画では2028年に営業利益9.5億円を掲げ、届く範囲にある。
保育の売上は景気に左右されない。認可の保育所は国が単価を決め、保育士の待遇の改善が続くかぎり、単価は上がり続ける。病院や企業の中の受託の保育所は129もあり、働く人の子どもを預かる需要は共働きの広がりで増える。学童保育も同じだ。
子どもの数が減ることは、むしろ追い風になりうる。小さな運営者が撤退し、施設は運営の力のある会社に集まっていく。テノは九州から全国に施設を広げてきた実績があり、引き継ぐ側に立てる。
介護も買収で伸びている。料理教室の重荷を整理すれば、利益率はさらに上がる。
財務の重さも、利益が戻れば和らぐ。営業利益が中計どおり増えれば、借金は数年で今の半分に減らせる。今の値段は、この回復をまだ織り込んでいない。
慎重な見方
子どもの数が減る中で、保育所を増やして伸びる時代は終わった。出生数は毎年数%ずつ減り、待機児童はほぼ消えた。地方では定員の空きが広がり、公定価格が上がっても収入は伸びない。
利益は薄い。営業利益率は過去10年で1〜6%の間で、2022年からの3年は1%台だった。前期の回復も、公定価格の引き上げという国の政策に頼ったものだ。国の財政が厳しくなれば、その追い風は止まる。
財務は重い。借入は約56億円、家賃は年19億円近く、自己資本比率は17%だ。金利が上がれば利払いが増え、子どもが減っても家賃は減らない。2024年には5億円の赤字を出した。
本業の外の広げ方にも不安がある。料理教室は赤字が続き、のれんの減損を出した。創業家が半分近くを持ち、還元は配当だけだ。稼ぐ力で測れば、今の値段は高い。
家賃の約束も見かけ以上に重い。新しいリースの会計基準が入れば、年19億円近い家賃が負債として表に出る。自己資本比率は1割を割る水準まで下がって見えるはずだ。
どちらに重みを置いたか
公定価格に守られた売上の安定については、強気の言い分に理がある。ただ、その安定は国の政策に頼り、子どもの減少と借金・家賃の固定費が利益を薄くする。確率は中立を中心に置き、出生数の減少の速さを見て慎重な側をやや厚くした。中期経営計画の利益の目標を達成すれば、強気の側に寄せる。借金が減り、家賃の重さを利益が上回る形が見えれば、見方を変える。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 1,092 円50 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 118 円5 億円)。 今の値に割り戻すと 516 円24 億円、今との差 −35.5%、 期待の年率 +4.2%(資本コスト 9.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 2,432 円111 億円 | 219 円10 億円 | +231.4% | +12.7% | 186 円8 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,719 円79 億円 | 175 円8 億円 | +136.8% | +9.0% | 379 円17 億円 |
| 中立 | 38% | 1,361 円62 億円 | 131 円6 億円 | +86.5% | +6.4% | 567 円26 億円 |
| やや悲観 | 23% | 235 円11 億円 | 66 円3 億円 | −62.5% | −9.3% | 69 円3 億円 |
| 悲観 | 12% | 59 円3 億円 | 22 円1 億円 | −89.9% | −20.5% | 10 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,092 円50 億円 | 118 円5 億円 | +51.3% | +4.2% | 1,210 円55 億円 |
今の株価時価総額 800 円37 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 長期の目標に近づき、受託と学童で施設を大きく増やす 利益 8 億円 · PER 12.4 倍 · 株価時価総額 2,432 円111 億円
上振れの姿は、共働きの広がりに乗って施設を大きく増やすことだ。病院や企業の中の受託の保育と学童保育の需要が伸び、保育の施設は380まで増える。小さな運営者の撤退で、地域の認可保育所も引き継ぐ。
公定価格は保育士の待遇の改善に合わせて上がり、1施設あたりの売上は物価を少し上回って伸びる。介護は買収で55施設に広がり、料理教室も立て直して黒字に戻る。
営業利益は16億円になり、長期の目標の利益率5%を超える。借金の利払いは増えるが、純利益は8億円近くまで伸びる。ROEは13%台に上がり、資本コストをはっきり上回る。
- 保育事業:数量 380(保育の施設数(施設))× 価格 5,900(1施設あたりの年の売上(万円))→ 売上 224 億円・営業利益 20 億円。受託と学童で施設が増える
- 介護事業:数量 55.0(介護・障がい福祉の施設数(施設))× 価格 9,600(1施設あたりの年の売上(万円))→ 売上 53 億円・営業利益 3 億円。買収で広がる
- 生活関連支援事業・その他:数量 50.0(料理教室の校数(校))× 価格 5,800(1校あたりの年の売上(万円))→ 売上 29 億円・営業利益 1 億円。料理教室が黒字に戻る
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 21.0% が k 9.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 15.2%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.4 倍。全体の PER 12.36 倍、時価総額 98 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2030年に売上300億円・営業利益率5%の目標は、過去の最高の利益率に近い。施設の増加と利益率の改善が同時にそろう姿は1割に届かない確率とした。
やや楽観 20% 中期経営計画をほぼ達成し、利益率4%台を保つ 利益 6 億円 · PER 11.9 倍 · 株価時価総額 1,719 円79 億円
中期経営計画をほぼ達成する姿だ。保育の施設は360まで増え、受託と学童が伸びる。子どもの数は減るが、病院や企業の中の保育と学童の需要がそれを補う。
公定価格は物価並みに上がり、保育士の待遇の改善も単価に乗る。介護は45施設に広がり、料理教室は小さな黒字に戻る。本社の費用は物価並みに増える。
営業利益は12億円になり、純利益は5.7億円になる。借金の利払いは年2.6億円に増えるが、利益の伸びがそれを吸収する。ROEは11%台で資本コストを上回る。安定配当を少しずつ増やしても、自己資本は着実に厚くなる。
- 保育事業:数量 360(保育の施設数(施設))× 価格 5,850(1施設あたりの年の売上(万円))→ 売上 211 億円・営業利益 18 億円。受託と学童が伸びる
- 介護事業:数量 45.0(介護・障がい福祉の施設数(施設))× 価格 9,500(1施設あたりの年の売上(万円))→ 売上 43 億円・営業利益 2 億円。施設が増える
- 生活関連支援事業・その他:数量 45.0(料理教室の校数(校))× 価格 5,600(1校あたりの年の売上(万円))→ 売上 25 億円・営業利益 0 億円。小さな黒字
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.0% が k 9.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.2%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.9 倍。全体の PER 11.9 倍、時価総額 68 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:前期は保育の利益が5割近く増え、中計の2028年の営業利益9.5億円は届く範囲にある。計画をほぼ達成する姿として2割。
中立 38% 施設は少し増え、利益は物価並みに伸びる 利益 5 億円 · PER 11.5 倍 · 株価時価総額 1,361 円62 億円
筆者が最も起こりやすいと見るのは、施設を少しずつ増やし、利益が物価並みに伸びる姿だ。子どもの数は減り、地方の認可保育所では定員の空きが増える。それでも受託と学童で施設は340まで増える。
公定価格は物価並みに上がり、人件費も同じように上がる。保育の利益率は8.5%と前期並みを保つ。介護は40施設に広がるが、利益は薄い。料理教室は値上げが通りにくく、とんとんで止まる。
営業利益は10億円になる。借り換えで利払いは年2.5億円に増え、純利益は4.5億円になる。家賃の固定費は残るが、売上の伸びで重さは少し薄れる。ROEは10%前後で、資本コストをわずかに上回る。
- 保育事業:数量 340(保育の施設数(施設))× 価格 5,814(1施設あたりの年の売上(万円))→ 売上 198 億円・営業利益 17 億円。施設は少し増え単価は物価並み
- 介護事業:数量 40.0(介護・障がい福祉の施設数(施設))× 価格 9,450(1施設あたりの年の売上(万円))→ 売上 38 億円・営業利益 2 億円。利益は薄い
- 生活関連支援事業・その他:数量 40.0(料理教室の校数(校))× 価格 5,544(1校あたりの年の売上(万円))→ 売上 22 億円・営業利益 0 億円。料理教室は値上げが通りにくく単価は物価を下回る
倍率:ROEは約9.7%、k 9.5%、残る割合1/2でRONICは約9.1%。g 3%の正当化PERは(1-0.03÷0.091)÷0.055=約12.2倍。ROEがkを上回るので下限の1÷k=11.53倍を下回らせず、出生数の減少を見て11.53倍。EV÷営業利益は約8倍。
確率:子どもの減少と単価の上昇が打ち消し合う姿は業界の見方の中心で、会社も施設を少しずつ増やしてきた。最も自然な筋書きとして4割弱。
やや悲観 23% 子どもの減少が速まり、定員の空きと家賃が利益を削る 利益 0 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 235 円11 億円
出生数の減少が予想より速く進み、地方の認可保育所で定員の空きが広がる。受託の保育所も、病院や企業の契約の更新で値下げを求められ、施設は300に減る。
公定価格は上がるが、子どもが定員に満たない施設では収入が伸びない。家賃は施設を閉じるまで払い続ける。保育の利益率は6.5%に下がり、料理教室は赤字のままだ。
営業利益は3億円を割り、利払いを引くと純利益はほぼ残らない。配当はわずかになる。価値を支えるのは、保育の事業そのものを同業に譲れば付く値段だが、借金を返すと手元に残る分は少ない。会社は残るが、株主にとっては長い足踏みになる。
- 保育事業:数量 300(保育の施設数(施設))× 価格 5,500(1施設あたりの年の売上(万円))→ 売上 165 億円・営業利益 11 億円。定員の空き・契約の値下げ
- 介護事業:数量 30.0(介護・障がい福祉の施設数(施設))× 価格 9,000(1施設あたりの年の売上(万円))→ 売上 27 億円・営業利益 1 億円。伸びない
- 生活関連支援事業・その他:数量 35.0(料理教室の校数(校))× 価格 5,300(1校あたりの年の売上(万円))→ 売上 19 億円・営業利益 −1 億円。赤字が残る
倍率:稼ぐ力は0.3億円÷k=約3.5億円しかない。価値は保育の事業を同業に譲った時の値段から借金を引いた床で測り、今の自己資本18億円に0.4倍を掛けた約7億円とする。EV÷営業利益は約14倍。
確率:出生数は予想より速く減り続け、地方では定員の空きが目立ち始めた。家賃と借金の固定費が利益を削る筋は十分ありうるので2割強。
悲観 12% 公定価格が据え置かれ、人手不足と固定費で赤字に沈む 利益 −4 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 59 円3 億円
国の財政が厳しくなり、公定価格の引き上げが止まる。一方で保育士の採用は難しく、賃金は上がり続ける。単価と人件費の差が開き、保育の利益率は4%に落ちる。子どもの減少で施設は280に減る。
家賃は施設を閉じるまで払い続け、借金の利払いも残る。会社は赤字に沈み、10年の間に自己資本の半分を失う。増資で株が薄まる恐れもある。
保育の事業は地域に必要なので、会社がなくなることはない。ただ、少数株主に残る値打ちは小さい。床は、事業を譲った値段から借金を返した残りのさらに一部だ。借金と家賃で回す形の怖さが、最も強く出る姿だ。
- 保育事業:数量 280(保育の施設数(施設))× 価格 5,000(1施設あたりの年の売上(万円))→ 売上 140 億円・営業利益 6 億円。単価が据え置かれ人件費が上がる
- 介護事業:数量 25.0(介護・障がい福祉の施設数(施設))× 価格 8,500(1施設あたりの年の売上(万円))→ 売上 21 億円・営業利益 0 億円。とんとん
- 生活関連支援事業・その他:数量 25.0(料理教室の校数(校))× 価格 5,000(1校あたりの年の売上(万円))→ 売上 13 億円・営業利益 −1 億円。縮む
倍率:赤字で稼ぐ力は消える。価値は事業を譲った値段から借金を返した残りで測り、今の自己資本18億円に0.15倍を掛けた約2.7億円とする。
確率:国の財政が厳しくなれば公定価格の引き上げが止まる恐れがあり、保育士の人手不足も続く。借金と家賃の重さが効く姿として1割強。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
保育事業
認可保育所・小規模保育・病院や企業の中の受託保育所・学童保育の運営。
| 数量保育の施設数(施設) | 価格1施設あたりの年の売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 314 | 4,339 | 136 | 12 |
| 10 年後 中立 | 340 | 5,814 | 198 | 17 |
取り方:2025年12月期の保育事業の売上136.24億円・セグメント利益12.36億円、施設数314(有報)。1施設あたりは売上÷施設数。
介護事業
住宅型有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅・デイサービス・障がい福祉の施設。
| 数量介護・障がい福祉の施設数(施設) | 価格1施設あたりの年の売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 27.0 | 7,270 | 20 | 1 |
| 10 年後 中立 | 40.0 | 9,450 | 38 | 2 |
取り方:2025年12月期の介護事業の売上19.63億円・セグメント利益0.51億円、施設数27(有報)。1施設あたりは売上÷施設数。
生活関連支援事業・その他
料理教室ホームメイドクッキングの運営ほか。
| 数量料理教室の校数(校) | 価格1校あたりの年の売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 55.0 | 4,620 | 25 | 0 |
| 10 年後 中立 | 40.0 | 5,544 | 22 | 0 |
取り方:2025年12月期の生活関連支援23.41億円とその他2.0億円の合計、損益は-0.46億円と0.07億円の合計(有報)。校数55で割った値。
リスクと懸念
出生数の減少
国内の出生数は2024年に70万人を割り、毎年数%ずつ減っている。待機児童はほぼ解消し、地方では定員の空きが目立つ。子どもが定員に満たない施設は、公定価格が上がっても収入が伸びない。
公定価格と国の財政
認可の保育所の収入は国が決める公定価格で決まる。保育士の待遇の改善で単価は上がってきたが、国の財政が厳しくなれば引き上げが止まる。人件費だけが上がれば、利益はすぐに削られる。
借金と家賃の固定費
借入は約56億円、施設の家賃は年19億円近い。どちらも売上が落ちても減らない約束だ。金利の上昇で利払いは増え、新しいリースの会計基準では家賃の分が負債として表に出る。
保育士の人手不足
保育士の採用は難しく、人が足りなければ定員まで子どもを受け入れられない。賃金の上昇が公定価格の上昇を上回れば、利益率は下がる。
料理教室と買収の失敗
料理教室のホームメイドクッキングは赤字が続き、前期はのれんの減損を出した。介護の買収も含め、本業の外に広げた事業が利益を削り続ける恐れがある。
今後の分かれ目
- 中期経営計画の2028年の営業利益9.5億円を達成する
- 利益率の改善が本物になった。中立の利益率を引き上げ、強気の側に確率を寄せる。
- 公定価格の引き上げが止まる
- 単価と人件費の差が開く。保育の利益率の中立を下げ、慎重な側に確率を寄せる。
- 料理教室を売却するか撤退する
- 赤字の事業が消え、本業に集中できる。調整の費用と生活関連の損失を見直す。
- 借入を大きく減らす
- 財務の重さが和らぐ。k の借金の分を下げ、悲観の深さを浅くする。
- 受託の保育所の契約の打ち切りが続く
- 顧客の病院や企業が保育を内製化している。施設数の中立を下げる。
見ておくもの
- 保育の施設数と1施設あたりの売上
- 公定価格の改定と保育士の処遇の改善
- 出生数と定員の充足率
- 借入の残高と平均の金利
- 料理教室の損益
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から置いた。中立のROEは約9.7%でk 9.5%をわずかに上回るので、正当化PER約12.2倍と下限1÷k=11.8倍の間で11.8倍とした。今のPER・PBRは見ていない。家賃は営業費用に入れた今の形のまま10年後もそろえた(2028年12月期から新しいリースの会計基準で形が変わる)。起点の純利益はのれんの減損を除いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.9→12.36 倍・やや楽観 PER 12→11.9 倍・中立 PER 11.8→11.53 倍)。
資本コスト 9.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。