結論
サクシードは、学校・学習塾・保育施設への人材支援と、個別指導塾・家庭教師事業を営む教育・福祉専門企業である。筆者の結論は「割安」だ。教室と児童発達支援施設の拡大が一定程度成功し、蓄積する現金が株主価値として残るなら、10年先の本質価値は現在の時価総額を上回る。
同社の特徴は、教育サービスと人材サービスを同時に営むことである。自社の教室でも使う講師をまとめて募集でき、学校や自治体に人材を届ける営業網も持つ。2026年3月期の売上は43億円弱、営業利益は3.5億円で、2020年3月期から増収を続けた。ただし営業利益率は以前の13〜16%から8%台へ下がっており、売上の成長がそのまま利益の成長につながっているわけではない。
2025年には教育AIの「みんがく」と児童発達支援の「unico」を子会社化した。みんがくのスクールAIは実際の売上と利用実績を持つが、大手AI基盤の機能拡張によって価格競争に巻き込まれる可能性がある。一方、子どもと対面する塾や療育施設には、AIが直ちに置き換えられない仕事が残る。この二つを区別して考える必要がある。
価値の支えは約20億円の純現金と、既存の教育事業が赤字を出さずに利益を積み上げてきた実績だ。とはいえ現金のすべてが余剰資金ではなく、学校・施設の運営資金や買収への支出を考慮する必要がある。経営者の持株比率が高いことも、少数株主への還元を慎重に評価する理由になる。
10年の中立では、旧来の人材仲介や家庭教師の数量がAIエージェント代替で縮む一方、個別指導教室とunicoが収益を補う姿を見込む。上側の成長余地と下側の損失可能性を両方織り込んだ適正な企業価値は約39.5億円と試算され、現在の約30.2億円を約31%上回る。ただし差の大部分は、既存事業の持続と現金の保全を前提にしている。強い独占力による割安ではなく、資産と実行可能な成長余地による割安と捉えるべき会社である。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の立場で最初に確かめたいのは、10年後にも必要な仕事かどうかである。サクシードの事業のうち、学校で子どもに接する教員や指導員、保育・療育の現場、地域の教室運営は残る可能性が高い。子どもの数が減っても、保護者からの信頼や実際の対人支援には価値がある。これらはAIが補助できても、完全に代替するには社会制度と現場運営の壁がある。
逆に、人材を募集して条件を照合する仕事や、学習内容を説明するだけの家庭教師には慎重になる。AIエージェントは求人票の作成、応募者の評価、面接の日程調整、学習計画の作成まで担える。従来は人手の多さが売上につながったが、将来は同じ仕事を少人数で行うことが普通になるかもしれない。過去の成長率をそのまま延長することはできない。
経営者の資本配分にも条件を付けたい。既存教室の生徒を増やし、高い利益率を保てるなら追加投資の利回りは魅力的である。しかし新しい地域で賃料を負担し、教室長と講師を雇い、入会者を集める事業は初期損失を伴う。unicoも公的な報酬制度に依存し、拠点拡大が成功して初めて買収代金を回収できる。売上の成長より、増分投下資本から得られる現金利益を優先して評価すべきである。
スクールAIは会社の将来像を広げる魅力的な製品だ。すでに収益を上げている点は評価できるものの、独自の利用基盤がどの程度の値上げ力を持つかは証明されていない。大手AI基盤の機能を組み合わせた製品であれば、画面や機能の優位が数年で失われる可能性もある。新しい技術を持っているという理由だけで、長期間の高い成長倍率を認めるべきではない。
この会社を高く評価できる理由は、莫大な市場シェアでも独占的な知的財産でもない。小さな地域市場で需要を拾える機動性、教育現場へのアクセス、赤字を出さずに現金を蓄えてきた規律、そして現場型事業へ移る選択肢である。反面、経営者への持株集中と買収実行の不確実性があるため、帳簿の現金を一円残らず株主の利益とみなすことはできない。現在の評価には安全域があるが、それを守るには、新規投資が資本コストを超える利益を生み続ける必要がある。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は六つある。教育人材支援は、学校教員、塾講師、ICT支援員、部活動指導員、日本語教師などを学校法人や自治体、民間学習塾へ紹介・派遣する。2026年3月期の売上は14.1億円で、全体の約33%を占めた。福祉人材支援は保育士、学童指導員、学校介助員などを扱い、売上は5.6億円だった。両事業には人材派遣、紹介、受託が混在し、会社が示す人材サービス全体の売上構成は派遣43%、紹介15%、受託42%である。
公民連携事業は重要な成長源になっている。自治体から学習支援、ICT支援、部活動指導などを受託し、2026年3月期には56案件、売上11.6億円に達した。民間学習塾への紹介とは違い、現場に人を配置する仕事が多い。この部分はAIによる事務作業の削減圧力を受けても、実際に子どもに接する人員が必要とされる限り残る。ただし自治体予算と入札価格に左右されるため、顧客の継続性と値決め力は同じではない。
個別指導教室は、神奈川・千葉を中心に「個別指導学院サクシード」などを展開する事業で、売上は14.6億円。講師1人に生徒3人という低料金のモデルを採り、人材事業との共同募集で採用費を抑える。2025年には名古屋へ進出し、中京圏にも教室網を広げ始めた。家庭教師事業は対面とオンラインを組み合わせ、全国47都道府県に対応する。2026年3月期の延べ生徒月数は15,172人、売上は4.8億円であった。
新たな現場型事業であるunicoは、児童発達支援と放課後等デイサービスを運営する。2026年3月末の拠点は直営15教室、フランチャイズ12教室。専門家が開発した療育プログラムを強みに、子どもの発達支援を提供する。2025年10月の連結開始から半年間で約3億円を売り上げた。これは学習塾とは異なり、公的な障害児通所支援の報酬制度に収益が大きく左右される事業である。
教育AIは子会社みんがくの「スクールAI」が担う。2026年3月期の売上は0.9億円で、先行投資により赤字だった。利用ID数は期末12万超、2026年5月末には16万超に増えた。学校向けの生成AI利用環境を提供するが、利用IDと有料契約IDは必ずしも一致しない。GoogleやMicrosoftなどの基盤サービスが教育機能を標準搭載すると、単なる操作画面やAIへの接続には価格を付けにくくなる。現場の教育サービスとAIサービスでは、10年先の収益の残り方を分けて考える必要がある。
優良さと弱いところ
最大の強みは、教育と人材の両方の顧客を持つことだ。自社教室の講師採用と外部学校向けの紹介・派遣を合わせることで募集の効率が上がる。学校との関係は公民連携事業の入札にも役立ち、過去の受託経験が次の案件への信用につながる。求人サイト「教えるシゴト」や福祉分野の複数の集客サイトも、採用コストを抑える助けになっている。
ただし、これを広い経済的な堀と呼ぶのは難しい。募集サイトの制作、広告運用、応募者とのマッチングはAIによる自動化が進みやすい。50を超えるランディングページを持つこと自体は模倣困難な資産ではなくなる可能性がある。また自治体案件は入札・提案競争であるため、受注経験があっても恒久的な高価格を保証しない。連続した値上げ成功や、競合を排除する独占的な顧客基盤も確認できない。
資本効率には評価できる歴史がある。2022年3月期以降のROEは概ね9〜16%で、2020年3月期から営業赤字の年がない。設備が比較的軽い人材事業が中心だったため、成長投資をしながら現金を積み上げられた。一方、直近の営業利益率は8.3%まで低下した。個別指導教室の出店、採用広告費、みんがくの開発、買収先の統合費用が増え、増分の売上に対する利益の伸びは弱くなっている。
今後の増分投資利回りは事業によって違う。既存校の生徒が増える投資なら、高い追加利益が期待できる。ところが新しい教室やunico施設を一から開くと、賃料、人員、設備、立ち上げ赤字が先に発生する。投下資本が小さいうちはROEが高く見えても、買収資金や出店費用を含めた増分ROICが資本コストを上回るかは、今後数年の実績で判断しなければならない。
同社の堀は「普通」と判断する。学校との関係、教育現場での運営経験、講師調達の効率には一定の価値があるが、価格支配力も乗り換え障壁も強くない。教育AIについても、低解約率、規制対応に伴う値上げ実績、移行に長期間を要する独自データ基盤という複数の証拠が揃っていないため、記録の正本としての強い堀は認めない。10年後の事業は存続していても、現在と同じ収益構成であるとは限らない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
教育市場は総額では大きいが、成長は簡単ではない。矢野経済研究所が2026年10月22日に公表した調査では、2025年度の主要15分野の教育産業市場は約2兆8,705億円で、前年比0.5%の増加だった。学習塾・予備校市場は約1兆円規模で停滞傾向にある。サクシードの個別指導教室売上14.6億円は、この広い市場の約0.15%にすぎない。明光義塾、スクールIE、ITTO個別指導学院などの大規模な競合に比べ、全国でのシェアは小さい。そのぶん特定の地域で教室数を増やす余地はあるが、既存市場そのものの成長を期待することはできない。
家庭教師市場は、トライグループなどの大手と個人契約、オンライン教材が競合する。中小企業基盤整備機構の過去の業界資料に挙げられた事業者売上を合算すると数百億円から1,000億円弱の市場が示唆されるが、現在の正確な市場規模やシェアは公開情報だけでは確定できない。サクシードは約4.8億円の小規模事業者であり、全国展開の余地と、AI家庭教師に需要を奪われる危険が同時にある。学習内容の説明や練習問題の生成はAIに移りやすく、人が付き添う動機付けや保護者との相談が残る価値になる。
人材市場では、教員不足と自治体の業務外部化が追い風である。会社資料によれば学校の外部人材等の予算人員は2015年の約3.5万人から2023年には約7.4万人に増えた。この人数に年300万〜400万円の委託費を仮に掛けると、対象領域は2,200億〜3,000億円程度となる。会社の公民連携売上11.6億円は、その約0.4〜0.5%に相当する。ただしこれは公的支出からの概算であり、対象人員の定義や委託形態が一致した厳密なシェアではない。パソナ、パーソルなどの大手や地域の教育事業者、自治体による直接雇用が競争相手になる。
福祉人材支援は保育士や学童指導員の不足を背景に需要が続くが、施設が直接採用できるようになると紹介手数料は縮む。職業紹介の成果報酬と、派遣・受託による現場配置を分けて見るべきである。福祉人材紹介だけの最新の市場規模と同社シェアについては比較可能な開示がなく、正確な比率は未確認である。
unicoが属する児童発達支援・放課後等デイサービス市場では、障害児支援の公的費用が2024年度に約0.9兆円へ拡大した。サクシードの半期売上約3億円は全国市場の0.04%未満であり、年換算でも非常に小さい。LITALICOジュニア、コペルプラス、地域の療育事業者などが競合する。需要の拡大余地はあるものの、報酬改定、配置基準、サービス品質の規制が事業の採算を決める。
教育AI市場の見通しは強い。矢野経済研究所の2026年10月調査では、教育・研修分野の生成AIサービス市場は2025年度963億円から2030年度2,125億円への拡大が予測されている。しかし企業研修なども含む数字であり、学校向けの有料サービス市場はその一部にとどまる。スクールAIの売上0.9億円は広義の市場の0.1%未満だ。学校は無償の生成AIやOS標準機能も利用できるため、市場全体が拡大しても独立した教育AIサービスの席単価は下がりうる。10年先の勝者を現時点で確定することは難しい。
資本政策と M&A
資本配分は、蓄積した現金をどれだけ高い利回りで使えるかという段階に入った。2026年3月期の純現金は約20.3億円で、自己資本26.1億円に対して厚い。だが、営業キャッシュフローは約1.2億円にとどまり、買収を含む投資活動では約3.3億円の資金が流出した。利益の全額が自由に使える現金として残っているわけではない。2025年にみんがくとunicoを連結子会社にしたことは、既存事業から新事業へ資本を移す重要な決断だった。
2026年6月24日の「事業計画および成長可能性に関する事項」では、2027年3月期に売上54.87億円、営業利益3.94億円、純利益2.60億円を計画している。個別指導教室44、家庭教師の延べ生徒月数17,823、公民連携60件・売上12.5億円も具体的な目標だ。みんがくは売上2億円・利益0.2億円、unicoは売上6.73億円・利益0.16億円を目指す。一方、3〜5年先のROEや営業利益の定量的な中期目標、配当性向・DOE・総還元性向・自社株買い額については、数字の約束なしである。
配当は2024年3月期に開始され、2025年3月期に増額された。2026年3月期の配当総額は約0.57億円、配当性向は23.2%、純資産配当率は2.2%だった。2027年3月期も安定配当を予定するが、利益に対して還元はまだ控えめである。新教室と買収への投資を優先しており、大規模な自社株買いが継続している実績もない。
ガバナンス面では、2026年3月末時点で代表取締役が約58.7%を保有し、上位10株主の持分合計は約85.4%である。経営判断を長期で進めやすい反面、少数株主が余剰現金の使途を変えさせる力は弱い。ただし過去5年には配当開始と増配があるため、余剰現金が半分しか株主に帰属しないという極端な評価は避けた。現金の株主価値への反映率は75%とする。2026年10月24日時点で確認した開示には、成立・実施中のTOB、MBO、上場廃止予定、継続企業の前提に関する注記は見当たらない。将来の非公開化はあり得るが、確定していない買収プレミアムを本質価値に加えない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
サクシードの強みは、市場が巨大なのに会社の占有率がまだ非常に小さいことだ。学習塾市場は約1兆円規模で、同社の売上はそのごく一部にすぎない。少子化が続いても、競争力の弱い塾から生徒を取り、人口が維持される地域へ新規出店すれば、会社自身の数量を伸ばせる。神奈川・千葉で培った教室運営を中京圏へ移植することで、地域ごとの密度を高めながら拡大する余地がある。
人材事業も単なる求人仲介ではない。ICT支援員や部活動指導員を学校へ配置し、自治体から学習支援を受託する仕事は、子どもの安全と教育の質に責任を負う。AIが書類作成を自動化すれば、現場配置の必要人数は減っても、管理費を節約できる可能性がある。公民連携事業が56案件まで増えた実績は、自治体からの信用を得始めた証拠として評価できる。
unicoの児童発達支援市場は学習塾より制度的な参入障壁があり、適切な資格を持つ人材と安全な運営が必要である。専門性の高い療育を提供する拠点が増えれば、サクシードの採用網との相乗効果が表れやすい。教育AIのスクールAIも、すでに16万超の利用IDを持つ。学校・教育機関への販売網と組み合わせれば、独立した販路を一から築く競合より効率的に契約を増やせる。
純現金20億円超は、学校や施設の開設費を賄うとともに、競争が厳しい時にも資金繰りを支える。買収先の統合が成功し、既存校の収益性を維持したまま教育と児童福祉の現場を広げられれば、10年後の利益は現在より大きくなる。今の時価総額は、これらの選択肢を十分に評価していない可能性がある。
慎重な見方
同社の売上構成には、人の時間を売る事業が大きな割合を占める。人材派遣・紹介・業務受託を合わせた売上が全体の約46%、家庭教師が約11%だ。求人情報の整理、応募者とのマッチング、受託事務、教材作成は、AIエージェントに代替される可能性がある。募集サイトを数多く作り、広告を運用する内製マーケティングの強みも、AIによって他社が低コストで再現できるようになる。
教育サービスでは少子化を避けられない。会社は人口が増える地域への出店を目指すが、そのような地域には大手の個別指導塾も進出する。低料金を売りにする教室は人件費や賃料の上昇を価格へ転嫁しにくく、教室数を増やしても利益率が下がる危険がある。家庭教師は直近の延べ生徒月数が会社計画を下回り、対面・オンライン双方で新しい学習技術との競争が始まっている。
unicoには公的な報酬制度という別の危険がある。2024年度の報酬改定のように、制度が変われば必要な職員配置と受け取れる報酬が変化する。拠点を増やした後に報酬単価が据え置かれれば、物価や賃金の上昇によって利益が圧迫される。療育の品質を維持するには有資格者を採用し続ける必要があり、人材不足が成長そのものの制約になる。
スクールAIは魅力的だが、席課金の業務ソフトに近い。大手AIサービスが学校向けの安全管理や学習機能を標準搭載すれば、独立した画面への支払いは減るだろう。2026年3月期には先行投資で赤字となり、まだ強い継続課金の利益基盤はできていない。加えて、経営者の持株集中が大きいため、買収で現金を使い続けても少数株主は資本配分を変えにくい。現金が多いことだけを安全域と呼ぶのは危険である。
どちらに重みを置いたか
現在の評価では、強気の見方にやや分がある。現場で行う教育・療育にはAI代替への抵抗力があり、純現金も大きい。半面、現場事業に強い独占力はなく、買収先の投資回収も未確認である。確率は楽観側31%に対して悲観側39%と、わずかに下へ寄せた。下に寄せる理由は、unicoの新規連結と中京圏への出店がまだ立ち上げ段階にあり、2027年3月期第1四半期も増収減益だったためである。AI代替による縮みは主に中立の数量と長期成長率へ反映し、確率でも重ねて大きく引かない。厚い現金が価値の下支えになり、試算の本質価値は現在の評価を約31%上回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 1,839 円66 億円(+ 還元の換算額還元の合計 270 円10 億円)。 今の値に割り戻すと 1,103 円40 億円、今との差 +29.2%、 期待の年率 +10.3%(資本コスト 7.2%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 11% | 4,623 円166 億円 | 635 円23 億円 | +515.8% | +22.2% | 578 円21 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,100 円111 億円 | 442 円16 億円 | +314.8% | +16.9% | 708 円25 億円 |
| 中立 | 30% | 1,794 円64 億円 | 221 円8 億円 | +135.9% | +9.6% | 605 円22 億円 |
| やや悲観 | 26% | 507 円18 億円 | 138 円5 億円 | −24.5% | −3.1% | 168 円6 億円 |
| 悲観 | 13% | 307 円11 億円 | 70 円3 億円 | −55.9% | −8.5% | 49 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,839 円66 億円 | 270 円10 億円 | +146.8% | +10.3% | 2,108 円75 億円 |
今の株価時価総額 854 円31 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 11% 教室と療育が全国展開し、教育AIも定着 利益 10 億円 · PER 14.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 4,623 円166 億円
サクシードは地域密着型の個別指導教室を80拠点へ拡大し、神奈川・千葉で培った採用と運営の仕組みを中京圏にも定着させる。教室数の増加だけでなく、生徒数が増えてから追加講師を配置できる運営効率が生き、講師1人に生徒3人のモデルが利益率を支える。人口減少で学習塾市場全体は成熟しても、明光義塾やスクールIEなどとの局地的な競争で選ばれる地域を広げる。
学校・自治体向けの人材支援では、公民連携の受託実績が積み上がり、ICT支援や部活動指導、外国籍児童への日本語教育の一部で継続案件を確保する。事務や教材作成はAIで効率化しつつ、対面指導と安全管理が必要な仕事に人材を移す。紹介・派遣の数量は大きく伸ばさずとも、提供する現場業務の質によって単価を維持する。
unicoは直営とFCを合わせた売上寄与が60教室相当へ拡大する。専門性のある療育人材を安定して採用でき、LITALICOジュニアなどの競合と地域で共存しながら拠点密度を高める。スクールAIも学校への導入が広がり、すでに実績のある教育向けAI製品として収益を生む。ただし独占的な基盤ではないため、価格の伸びは限定的である。買収した事業の利益が本業を上回る新しい成長源になり、収益と資本効率が改善する。
- 教育人材支援事業:数量 630(教育人材支援に属する臨時雇用者の年間平均人数を基にした人員換算)× 価格 0.03(人員換算1人あたり年間売上高(億円、紹介手数料・受託売上を含む))→ 売上 19 億円・営業利益 3 億円。現場型の公民連携が拡大し、事務自動化で利益率改善
- 福祉人材支援事業:数量 145(福祉人材支援に属する臨時雇用者の年間平均人数を基にした人員換算)× 価格 0.07(人員換算1人あたり年間売上高(億円、紹介手数料を含む))→ 売上 11 億円・営業利益 2 億円。保育・学童の現場需要を取り込み、採用力が向上
- 個別指導教室事業:数量 80.0(教室数(計画資料に示された塾・関連教室の合計))× 価格 0.56(1教室あたり年間売上高(億円))→ 売上 45 億円・営業利益 10 億円。80教室、地域集中出店と既存校の稼働率改善
- 家庭教師事業:数量 14,500(年間延べ生徒月数(人月))× 価格 0.00(生徒1人月あたり平均売上高(億円))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。AI代替を受けても対面伴走サービスが残る
- unico事業:数量 60.0(年間売上寄与の直営教室換算数(FC収入を単価に含む))× 価格 0.51(年間寄与の直営教室換算1拠点あたり売上高(億円))→ 売上 31 億円・営業利益 4 億円。直営・FCの地域展開が成功し、療育の運営効率が改善
- みんがく・スクールAI事業:数量 480,000(利用ID数(期末利用IDを基準にした代理数量))× 価格 0.00(利用IDあたり年間売上高(億円))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。実売上のある教育AIの普及が継続し、開発費を吸収
倍率:資本コストk7.25%、長期名目成長率g1%、余剰現金26億円を事業の純利益と自己資本から除く。事業純利益9.895億円、事業自己資本43億円でROEは約23.0%。普通の堀として超過収益の残る割合を1/2とし、RONIC=約15.13%。正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=14.94倍。現金26億円には戻り方0.75を掛け、事業の純利益から現金の税後利息0.364億円を除く。上限を手で割り引かない。
確率:個別指導教室の中京圏への展開、unicoの直営・FC拡大、学校向けAIの有料化が同時に成功する筋書き。既存市場でのシェア拡大と新規事業の収益化が重なる必要があり、可能性はあるが高い確度とはいえない。
やや楽観 20% 現場型事業の拡大が軌道に乗る 利益 7 億円 · PER 14.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3,100 円111 億円
個別指導教室は65拠点へ増え、関東に加えて中京圏で地域ブランドを築く。出店した教室の一部では立ち上げが遅れるが、既存校の生徒数が増え、全体の営業利益を押し上げる。学習塾市場は大きくならなくても、地域でのシェア拡大によって増収できる。
教育人材支援は学校・自治体との継続関係を生かし、公民連携の受託と現場派遣を維持する。AIによって紹介・募集事務の仕事量は減るが、教員不足と福祉人材不足が続き、人を配置する業務は残る。人材紹介の手数料競争で利益率は現在より少し低くなるものの、顧客との長期関係が急激な縮小を防ぐ。
unicoは直営とFCを合わせた売上寄与が43教室相当まで増え、買収先の利益が安定する。公定報酬の伸びは物価を下回るが、地域での知名度と採用効率が改善する。スクールAIは学校向けに一定の顧客基盤を築き、売上が増える。ただしGoogleやMicrosoftの標準機能との競争で価格支配力は限定的である。現場型事業の成長が旧来の人月業務の縮小を補う10年になる。
- 教育人材支援事業:数量 570(教育人材支援に属する臨時雇用者の年間平均人数を基にした人員換算)× 価格 0.03(人員換算1人あたり年間売上高(億円、紹介手数料・受託売上を含む))→ 売上 17 億円・営業利益 2 億円。自治体案件の継続と現場配置を中心に売上を維持
- 福祉人材支援事業:数量 125(福祉人材支援に属する臨時雇用者の年間平均人数を基にした人員換算)× 価格 0.07(人員換算1人あたり年間売上高(億円、紹介手数料を含む))→ 売上 9 億円・営業利益 1 億円。保育・学童への派遣人数が増加
- 個別指導教室事業:数量 65.0(教室数(計画資料に示された塾・関連教室の合計))× 価格 0.54(1教室あたり年間売上高(億円))→ 売上 35 億円・営業利益 7 億円。65教室、成熟校の利益率を維持
- 家庭教師事業:数量 12,500(年間延べ生徒月数(人月))× 価格 0.00(生徒1人月あたり平均売上高(億円))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。AI競争で生徒月数は減るが対面型が残る
- unico事業:数量 43.0(年間売上寄与の直営教室換算数(FC収入を単価に含む))× 価格 0.47(年間寄与の直営教室換算1拠点あたり売上高(億円))→ 売上 20 億円・営業利益 2 億円。直営・FCの拡大と稼働率改善
- みんがく・スクールAI事業:数量 240,000(利用ID数(期末利用IDを基準にした代理数量))× 価格 0.00(利用IDあたり年間売上高(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。教育AIの既存販路を生かし黒字化が続く
倍率:k7.25%、g1%。余剰現金24億円を除いた事業純利益6.348億円、事業自己資本31億円から事業ROE約20.48%。普通の堀による超過収益の残存割合1/2でRONIC約13.86%。正当化PERの上限は14.85倍となる。現金24億円は税後利息0.336億円を事業利益から除き、75%を株主価値へ加える。
確率:既存の個別指導教室と公民連携に実績があり、unicoの拡大余地も大きい。ただし新規拠点の採算が安定するまで時間がかかり、AI事業の競争も続くため、全面的な成功より実現しやすい上振れと考える。
中立 30% 人月業務は縮むが教室と療育が補う 利益 4 億円 · PER 14.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,794 円64 億円
個別指導教室は52拠点となり、既存の関東地域と新しい中京圏で緩やかに成長する。学齢人口は減り続けるが、学校ごとの教育需要の違いと、対面で学習習慣を支える役割は残る。教室の賃料や講師給与が上がり、低料金の個別指導事業は現在ほど高い利益率を維持できない。それでも拠点数の増加が売上と営業利益を押し上げる。
教育人材支援では、ICT支援の事務作業や人材紹介業務をAIが代替し、現在と同じ規模の人員を必要としなくなる。自治体の学習支援や部活動指導は残るものの、派遣・受託の数量は全体として減少する。福祉人材支援は対面業務の比率が高く、数量をほぼ維持する。家庭教師はオンラインの標準的な学習説明がAIに置き換わり、延べ生徒月数は減る。
unicoは直営とFCを合わせた売上寄与が30教室相当へ拡大する。施設の新設と採用の負担は続くが、運営ノウハウが定着することで利益は増える。スクールAIは学校向け生成AI市場の拡大から恩恵を受ける一方、汎用AIの無料機能と競争する。利用ID数が伸び続けることを前提にせず、独立製品としての収益は小さくなる。
会社全体では売上が名目で増えても、過去の高い営業利益率には戻らない。追加の利益の多くは教室・療育という現場事業から生まれる。増資に頼らず、内部留保の一部を新しい拠点へ投じ、残りを現金として積み上げる。旧来の人材業から現場サービスへの重心移動が、会社の10年を特徴づける。
- 教育人材支援事業:数量 501(教育人材支援に属する臨時雇用者の年間平均人数を基にした人員換算)× 価格 0.03(人員換算1人あたり年間売上高(億円、紹介手数料・受託売上を含む))→ 売上 14 億円・営業利益 2 億円。AIエージェント代替で数量0.75倍、価格約1.34倍
- 福祉人材支援事業:数量 108(福祉人材支援に属する臨時雇用者の年間平均人数を基にした人員換算)× 価格 0.07(人員換算1人あたり年間売上高(億円、紹介手数料を含む))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。対面福祉人材の数量はほぼ維持、物価転嫁
- 個別指導教室事業:数量 52.0(教室数(計画資料に示された塾・関連教室の合計))× 価格 0.51(1教室あたり年間売上高(億円))→ 売上 27 億円・営業利益 5 億円。52教室、価格は約1.34倍、賃料と人件費で利益率低下
- 家庭教師事業:数量 10,600(年間延べ生徒月数(人月))× 価格 0.00(生徒1人月あたり平均売上高(億円))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。AI代替で生徒月数0.70倍、価格は物価以下の伸び
- unico事業:数量 30.0(年間売上寄与の直営教室換算数(FC収入を単価に含む))× 価格 0.48(年間寄与の直営教室換算1拠点あたり売上高(億円))→ 売上 14 億円・営業利益 1 億円。30教室相当まで拡大するが公定報酬が単価を制約
- みんがく・スクールAI事業:数量 102,000(利用ID数(期末利用IDを基準にした代理数量))× 価格 0.00(利用IDあたり年間売上高(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。席数0.85倍、価格1.10倍。汎用AIとの競争で利益は薄い
倍率:k7.25%、g_long1%。10年後の余剰現金22億円の税後利息0.308億円を純利益から除き、事業純利益3.361億円、事業自己資本26億円から事業ROE約12.93%。普通の堀として残存割合1/2を用いるとRONICは約10.09%。正当化PER=(1−1%÷10.09%)÷(7.25%−1%)=約14.41倍で、楽観〜中立の上限そのもの。時価総額には事業利益の価値と余剰現金22億円の75%を含める。
確率:学校・福祉の現場需要は残り、教室の地域出店とunicoの成長も一定程度進む。一方、募集・紹介・オンライン学習の業務量はAIエージェント代替によって減少する。過去の増収率を継続させず、現場型事業と代替される事業を分けた中心シナリオ。
やや悲観 26% 採用費と固定費が重く、利益が細る 利益 1 億円 · PER 12.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 507 円18 億円
個別指導教室は新地域への出店が計画ほど進まず、既存校の一部では少子化と競争によって生徒が減る。教室数は39にとどまり、講師の採用費と賃料の上昇が利益を圧迫する。低料金を特徴とするため、明光義塾などの競合に対抗しながら物価のすべてを授業料に転嫁することはできない。
教育人材支援では自治体の委託業務の一部が縮小し、AIが募集・紹介・事務受託の作業を代替する。現場へ指導員を派遣する仕事は残るが、入札価格の競争により利益率が低下する。福祉人材も施設が直接採用する比率を増やし、派遣人数と紹介手数料が伸び悩む。家庭教師事業はオンライン学習の代替が進み、ほぼ利益を出せなくなる。
unicoは施設数を増やしたものの、報酬改定と採用難が重なり、利益が薄い。スクールAIも汎用AIの学校向け機能との競争で価格を維持できず、開発・運営費を十分に回収できない。営業利益は低下するが、既存の現場型事業は残り、会社は直ちに存続困難になるわけではない。配当を抑えて現金を維持し、採算の悪い拠点の整理を進める10年になる。
- 教育人材支援事業:数量 420(教育人材支援に属する臨時雇用者の年間平均人数を基にした人員換算)× 価格 0.03(人員換算1人あたり年間売上高(億円、紹介手数料・受託売上を含む))→ 売上 11 億円・営業利益 1 億円。公民連携の受注減とAIによる仲介作業の削減
- 福祉人材支援事業:数量 90.0(福祉人材支援に属する臨時雇用者の年間平均人数を基にした人員換算)× 価格 0.06(人員換算1人あたり年間売上高(億円、紹介手数料を含む))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。施設による直接採用と派遣競争
- 個別指導教室事業:数量 39.0(教室数(計画資料に示された塾・関連教室の合計))× 価格 0.47(1教室あたり年間売上高(億円))→ 売上 18 億円・営業利益 3 億円。39教室、賃料と講師給与の上昇を転嫁し切れない
- 家庭教師事業:数量 9,000(年間延べ生徒月数(人月))× 価格 0.00(生徒1人月あたり平均売上高(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。AI家庭教師の普及で仲介利益が消える
- unico事業:数量 20.0(年間売上寄与の直営教室換算数(FC収入を単価に含む))× 価格 0.43(年間寄与の直営教室換算1拠点あたり売上高(億円))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。拠点展開は限定的、報酬据え置きで薄利
- みんがく・スクールAI事業:数量 72,000(利用ID数(期末利用IDを基準にした代理数量))× 価格 0.00(利用IDあたり年間売上高(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。大手AIの標準機能化で独立サービスの採算悪化
倍率:事業ROEは約3.1%で資本コスト7.25%を下回るため、再投資による超過価値を認めない。利益の稼ぐ力の上限は1÷kの約13.79倍。現金利息を除いた事業純利益0.778億円に12倍を掛け、余剰現金12億円の75%を加えて約18.34億円とする。資産売却を考慮した床14億円を上回り、中立の評価より低い。
確率:教室の出店採算が悪化し、自治体受託の競争も厳しくなる筋書き。2027年3月期第1四半期は増収減益であり、今後も売上拡大と利益成長が一致しない危険を無視できない。
悲観 13% 仲介の縮小と買収失敗で構造的に負ける 利益 −3 億円 · PBR 0.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 307 円11 億円
学校の人材募集と紹介業務の多くがAIによって自動化され、自治体の委託予算も縮小する。教育人材支援の仕事は現場派遣の一部だけになり、紹介手数料を中心とする収益が失われる。保育・学童施設でも直接採用や低コストのマッチング手段が一般化し、派遣・紹介会社を通す必要が小さくなる。
個別指導教室は少子化と低料金競争のなかで閉鎖が増え、25教室に縮小する。賃料や人件費の固定費が残り、撤退費用も発生する。家庭教師事業ではAIによる個別学習が普及し、標準的な説明を人へ依頼する需要が大きく減る。営業拠点や広告の費用を減らしても、かつての利益率には戻れない。
unicoは公的報酬の抑制と有資格者不足のため拡大に失敗する。買収に伴うのれんの価値も損なわれ、減損を行う。スクールAIは大手の教育向け汎用AIに機能で追いつかれ、課金IDと単価が低下する。教育と人材の相乗効果が薄れ、経営者は赤字事業の整理に追われる。
会社は純現金の一部を買収損失、退店費、営業赤字の補填に使う。配当は段階的に縮小し、10年を通じた還元は少ない。継続事業には残存価値があるものの、収益から高い時価総額を正当化することはできない。残った現金と換金可能資産を価値の中心として評価する。これは単なる景気後退ではなく、事業の優良さそのものを失った10年である。
- 教育人材支援事業:数量 250(教育人材支援に属する臨時雇用者の年間平均人数を基にした人員換算)× 価格 0.02(人員換算1人あたり年間売上高(億円、紹介手数料・受託売上を含む))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。仲介・受託が大幅縮小し、固定費を吸収できない
- 福祉人材支援事業:数量 60.0(福祉人材支援に属する臨時雇用者の年間平均人数を基にした人員換算)× 価格 0.05(人員換算1人あたり年間売上高(億円、紹介手数料を含む))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。直接採用の普及と競争で利益が消失
- 個別指導教室事業:数量 25.0(教室数(計画資料に示された塾・関連教室の合計))× 価格 0.36(1教室あたり年間売上高(億円))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。25教室に縮小、固定費負担で営業赤字
- 家庭教師事業:数量 4,800(年間延べ生徒月数(人月))× 価格 0.00(生徒1人月あたり平均売上高(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替によって従来の家庭教師需要が激減
- unico事業:数量 10.0(年間売上寄与の直営教室換算数(FC収入を単価に含む))× 価格 0.35(年間寄与の直営教室換算1拠点あたり売上高(億円))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。不採算施設の撤退と公定報酬の抑制
- みんがく・スクールAI事業:数量 30,000(利用ID数(期末利用IDを基準にした代理数量))× 価格 0.00(利用IDあたり年間売上高(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。独立課金サービスとしての競争力が失われる
倍率:事業は赤字で、継続利益に正のPERを掛ける根拠がない。現在の自己資本26.1億円を基準にすると、換金可能な資産の床11億円はPBR約0.4215倍に相当する。2036年の自己資本18億円を積み上げて床のPBRを掛ける方法は採らない。過去のPBRの谷も参照しない。時価総額は回収可能な純資産の評価であり、赤字事業に成長価値を認めない。
確率:人材仲介と家庭教師の収益縮小に加え、教室の撤退、unicoの採算悪化、スクールAIの競争力喪失が同時に起こる複合シナリオ。財務の余裕があるため直ちに破綻する確率は高くないが、買収先の減損と現金流出が重なる危険は残る。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
教育人材支援事業
学校、自治体、民間学習塾への教員・講師・ICT支援員・部活動指導員の紹介、派遣、業務受託。
| 数量教育人材支援に属する臨時雇用者の年間平均人数を基にした人員換算 | 価格人員換算1人あたり年間売上高(億円、紹介手数料・受託売上を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 669 | 0.02 | 14 | 2 |
| 10 年後 中立 | 501 | 0.03 | 14 | 2 |
取り方:2026年3月期有価証券報告書の教育人材支援売上14.06257億円、セグメント利益2.13601億円、臨時雇用者年間平均669人を使用。売上を人数で割った年間約210万円は、実際の派遣単価ではなく紹介・受託を含む混合単価である。会社は職種別の稼働時間と採用決定件数を開示していないため、人数を数量の代理指標とした。教育・福祉人材事業全体では派遣43%、紹介15%、受託42%。公民連携事業の56件・11.6億円は両人材事業をまたぐため、このセグメントへ全額を割り当てていない。AIエージェント代替の対象は紹介、事務受託、ICTの操作支援部分で、教育現場へ人を配置する部分は現場の体の型に当たる。中立の人数501人は今の0.75倍とし、価格は物価3%の10年分に近い1.34倍とする。
福祉人材支援事業
保育士、学童指導員、学校介助員などの紹介・派遣と、福祉関連施設・自治体への受託サービス。
| 数量福祉人材支援に属する臨時雇用者の年間平均人数を基にした人員換算 | 価格人員換算1人あたり年間売上高(億円、紹介手数料を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 109 | 0.05 | 6 | 1 |
| 10 年後 中立 | 108 | 0.07 | 7 | 1 |
取り方:2026年3月期の福祉人材支援売上5.56261億円、セグメント利益0.94255億円、臨時雇用者年間平均109人を使用。年間約510万円の単価は派遣、紹介、受託を混ぜた代理値であり、実際の請求単価そのものではない。保育・学童・介助の対人現場は現場の体の型であり、ICT支援や仲介事務と異なりAIが直接置き換えにくい。中立数量108人はほぼ維持し、価格は10年で1.34倍とする。実際の紹介成約件数が公表されていないことによる推計の不確実性がある。
個別指導教室事業
神奈川・千葉などの地域密着型個別指導塾と学童サービスの運営。講師1人に対して生徒3人の低料金モデル。
| 数量教室数(計画資料に示された塾・関連教室の合計) | 価格1教室あたり年間売上高(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 38.0 | 0.38 | 15 | 3 |
| 10 年後 中立 | 52.0 | 0.51 | 27 | 5 |
取り方:2026年6月24日の事業計画資料が示す2026年3月期末教室数38を用い、セグメント売上14.58719億円を除して1教室あたり約0.384億円と推定。教室数には塾と関連する教育サービスが含まれ得るため、純粋な塾1校の売上とは区別する。市場規模は学習塾・予備校約9,850億円を参考にし、同社の広義シェアは約0.15%。競合は明光義塾、スクールIE、ITTO個別指導学院など。中立では教室数52までの地域拡大を見込むが、少子化とAI学習サービスへの流出を考え、既存校の強い数量成長は前提にしない。単価は物価3%の10年分に相当する1.34倍程度とした。
家庭教師事業
対面・オンライン家庭教師の紹介と学習指導。首都圏・関西圏・東海圏を中心に、オンラインでは全国対応。
| 数量年間延べ生徒月数(人月) | 価格生徒1人月あたり平均売上高(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 15,172 | 0.00 | 5 | 0 |
| 10 年後 中立 | 10,600 | 0.00 | 4 | 0 |
取り方:2026年6月24日の事業計画資料に記載された年間延べ生徒月数15,172人と家庭教師売上4.78483億円を使用。1生徒月あたり約3.15万円となる。これは月延べ人数を用いた値であり、年間の固有人数ではない。オンライン指導や標準的な学習説明はAIエージェント代替・人月型に当たる。中立数量10,600人月は現在の0.70倍で、価格は競争のため物価1.34倍を下回る1.26倍とした。教師が対面で伴走する部分は残るが、オンライン学習の代替は避けにくい。
unico事業
児童発達支援・放課後等デイサービスを直営とフランチャイズで提供する療育事業。
| 数量年間売上寄与の直営教室換算数(FC収入を単価に含む) | 価格年間寄与の直営教室換算1拠点あたり売上高(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 7.5 | 0.40 | 3 | 0 |
| 10 年後 中立 | 30.0 | 0.48 | 14 | 1 |
取り方:2025年10月に連結化したため、2026年3月期は概ね半年の業績寄与となる。期末直営15教室を半年分の売上寄与に換算して7.5教室とし、売上3.00859億円を除した年間換算単価約0.401億円を使用。実際にはFC12教室のロイヤルティなどを含むため、単価は純粋な直営施設売上ではない。直営・FC別の年間売上の詳細がないことを踏まえた代理指標である。2027年3月期の会社計画は売上6.73億円。中立の30教室相当は2036年までの直営拡大とFC収入の寄与を含む。児童福祉は対面現場の型に分類し、価格は公定報酬の制約から物価を下回る約1.20倍とする。
みんがく・スクールAI事業
学校・自治体・学習塾向けの教育特化型生成AIプラットフォーム。2025年4月に連結子会社化。
| 数量利用ID数(期末利用IDを基準にした代理数量) | 価格利用IDあたり年間売上高(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 120,000 | 0.00 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 102,000 | 0.00 | 1 | 0 |
取り方:2026年3月期売上0.88533億円、セグメント損失0.36882億円、期末利用ID12万超を基準にする。年間売上を12万IDで割った約738円は請求単価ではない。期中平均ID数や無償利用比率が不明であるため、実際の年額課金価格とは異なる。2026年5月末の16万超というID数と、2027年3月期の売上2億円・利益0.2億円の計画は成長の事実と会社目標として別に評価した。事業の型は席課金・操作画面中心の業務ソフトで、解約率5%未満や独自データの不可欠性など二つ以上の強い堀の証拠は未確認。中立は数量を0.85倍、価格を1.10倍とする。AI製品として実売上があるため強気では数量増加を認めるが、AI基盤との競争を重く見る。
リスクと懸念
AIエージェント代替による人月・仲介業務の縮小
人材派遣・紹介・受託、家庭教師、広告運用・募集事務がAIによる代替の対象となる。人材事業だけで売上の約46%、家庭教師が約11%を占める。現場で子どもに接する仕事は残っても、応募者とのマッチング、教材作成、学習説明、報告業務は省人化される可能性がある。従来の人員数と工数を売上の成長源として延長するのは危険である。
少子化と個別指導教室の固定費
学齢人口の減少によって、出店可能な地域は限定される。人口の維持される地域には明光義塾、スクールIEなども進出するため、競争のない商圏を確保することは難しい。講師給与と教室賃料が上がるなか、低料金の授業料を維持すると利益率が下がる。撤退時には内装投資の未回収や解約費用も発生する。
児童発達支援の報酬制度と採用難
unicoは対面支援のためAIに代替されにくいが、児童福祉法に基づく報酬・配置基準の影響を強く受ける。公定報酬が据え置かれたまま人件費が上がれば、利用児童が増えても利益が伸びない。児童発達支援管理責任者などの資格者を確保できなければ、出店そのものが進まない。品質事故や不適切な請求が起きた場合の影響も大きい。
教育AIの独立課金とデータの堀の不足
スクールAIは利用ID数を伸ばした実績を持つが、低解約率、規制対応に伴う値上げ、学校データの不可欠な記録基盤など、独立した価格支配力を示す証拠は十分ではない。Google、Microsoft、教育大手の生成AI機能が無償または既存契約に組み込まれると、席ごとの追加料金に圧力がかかる。利用ID数が増えても、収益と利益が伴うかを分けて監視する必要がある。
M&Aと支配株主の資本配分
みんがくとunicoの買収は事業の幅を広げたが、2026年3月期は教育AIが赤字で、unicoも連結後の短い実績しかない。買収資金やのれんの価値が回収できなければ、現金の厚さが薄れる。代表取締役が約59%を保有するため、少数株主が資本配分の変更を促す力は弱い。新しい事業への再投資が資本コストを上回るかを継続的に確かめる必要がある。
公民連携事業の入札と予算の変動
公民連携事業は2026年3月期に56件・11.6億円まで拡大したが、契約更新は自治体予算と競争入札に依存する。受注経験が積み上がっても、競合や自治体の内製化によって契約を失う可能性がある。学校のICT利用が成熟すれば、操作支援の必要人数も減る。売上の継続性と利益率を過大評価しないことが重要である。
今後の分かれ目
- 個別指導教室が50校を超え、既存校の生徒数と利益率も維持されたら
- 地域出店の再現性が証明されるため、中立からやや楽観の確率を増やす。教室数だけでなく、新校の投資回収期間と既存校の実質成長を確認する。
- 公民連携事業の受注件数と売上が数年連続で増え、利益率も維持されたら
- 教育現場型の受託がAI代替に耐えている証拠となる。教育人材支援の数量前提を上げ、旧来の仲介業務から現場業務への移行が進んだと判断する。
- スクールAIの有料契約ID、解約率、契約単価が開示され、複数年で安定成長したら
- 席課金型の単純な画面サービス以上の堀があるかを再評価する。単なる利用ID数の増加ではなく、純粋な有料契約の継続と値上げの実績を重視する。
- unicoの直営・FC店舗数が増えても、施設利益率が低下したら
- 児童福祉事業の成長率と増分ROICを引き下げる。公定報酬、人件費、専門資格者の確保に問題がある可能性を調べ、やや悲観側の比重を増やす。
- 営業キャッシュフローが純利益を継続的に下回り、純現金が減り続けたら
- 運転資金と新規事業の投資負担が大きいと判断し、余剰現金の評価を減らす。買収に使った現金が将来の利益を生むまで、現金と利益を二重に評価しない。
- 経営陣が明確な配当性向・DOE・総還元方針を定め、実際に還元を増やしたら
- 余剰現金の株主価値への反映率を0.75から1.0へ見直す余地がある。ただし現金を還元に回した分、将来の拠点投資へ使える資金は減るため、両方の価値を同時には加えない。
見ておくもの
- 個別指導教室数、既存校の生徒数、1教室あたり売上高と営業利益率
- 公民連携事業の年間受注件数、受注売上高、更新率、1案件あたりの採算
- 教育人材支援・福祉人材支援の派遣稼働人数、紹介成約件数、平均単価
- 家庭教師事業の延べ生徒月数、オンライン比率、入会率と退会率
- unicoの直営・FC教室数、施設稼働率、専門資格者の採用、報酬改定
- スクールAIの有料契約ID、課金単価、解約率、開発費、部門利益
- 営業キャッシュフロー、買収支出、のれん残高、純現金、配当総額
- 2027年3月期計画の売上54.87億円・営業利益3.94億円の達成状況
倍率と資本コストの決め方
現在の株価や過去・同業のPER、PBRを使って10年後の倍率を決めていない。六つの事業について、人数・教室数・延べ生徒月数・利用IDを数量とし、物価や制度上の制約を価格に分けた。教育人材の中立数量は0.75倍、家庭教師は0.70倍、席課金のスクールAIは0.85倍としてAIエージェント代替を反映し、g_longは全社で名目1%に制限した。AI代替をkの寿命にも重ねていない。中立のPERは事業ROE、RONIC、k7.25%、g1%から導く約14.41倍の上限そのもの。現金22億円は税後利息を事業利益から除き、株主への戻り方0.75で加えた。悲観は期末自己資本に過去の底のPBRを掛けず、換金可能な資産約11億円を床とした。2027年4月以降に始まる年度からの新リース会計基準によって賃借教室のBS表示は変わるが、10年の営業利益は現在と同じ家賃費用を含む形で統一した。潜在株式による希薄化約1.07%を反映した確率加重価値は約39.5億円、現在時価総額30.15億円との差は約+31.0%。結論は割安であり、株価から逆算していない。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%と株式リスクプレミアム4.5%の合計7.5%に、事業の値決め力、過去の利益変動、純現金を反映したquality−0.25%を加える。買収の成否やAI競争の個別リスクはシナリオと利益に入れ、追加の資本コストにはしない。