結論
グロービングは、企業の経営陣と一体になって戦略を実行するコンサルティング会社である。筆者の結論は「割高」だ。顧客との深い関係と高い収益性は評価できるが、AIによる仕事の代替を考えると、現在の時価総額596億円には十分な安全域がない。
同社の特徴はJoint Initiative(JI)という方式にある。顧客の内部に入り、経営者の右腕として改革を動かす。2026年5月期の売上高は115億円、営業利益は40億円に達した。売上の約60%をJI案件が占め、大企業との取引が大きくなっている。これは単純な資料作成の請負より顧客が切り替えにくい仕事だ。
しかし、AI関連売上が約半分あることと、AIエージェント製品で半分の売上を稼いでいることは違う。実際のAI事業の外部売上は4億円ほどで、全社の3.5%にすぎない。残りの大部分は人が顧客に入り込んで提供する役務である。AIによって調査、分析、資料作成、業務設計が自動化されれば、顧客が買う人月は減る。JIの価値は残っても、従来と同じ売上の伸びが続くとは限らない。
会社は2031年5月期に売上高1200億円を目指す大胆な計画を掲げる。AI製品の普及と連続買収が実現すれば、今とは違う企業になり得る。ただし、現段階では構想の大きさに比べ、独立した製品収益と買収実績の裏付けが薄い。確率を考慮した10年後の価値を現在に割り戻すと約191億円となり、現在の時価総額を約68%下回る。計画を否定するのではなく、実現を先払いしない判断である。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まずこの会社が10年後にも必要とされるかを考える。企業には経営改革を実行し、利害の異なる部門を動かす責任者が必要である。AIが資料を作れても、経営者に代わって最終責任を負うことは容易ではない。JI型のサービスには残る価値があり、同社が有力な人材を集め続けられれば、優良な顧客関係を維持できるだろう。
しかし、人材の優秀さと事業の堀は同じではない。優秀な人材は退職し、競合へ移れる。顧客も契約を見直せる。2026年5月期の高い利益率は魅力的だが、その利益を生むために必要な人材報酬、採用費、パートナーとの関係維持費を差し引いた後の利益が、長く株主のものになるかを問うべきである。
AI製品が成功すれば評価は変わる。調達業務の中心に入り込み、企業固有のデータと業務手順を蓄積し、利用企業が簡単には移れない仕組みを築ければ、追加資本から高い利益を生む可能性がある。だが、今は有料の共同開発収益が生じた段階に近い。解約率、顧客ごとの継続課金額、製品単体の収益力が確認できないうちから、成熟したソフトウェア企業と同じ価値を認めるのは早い。
資本配分では、買収を通じて成長しようとする経営陣の構想を厳しく見る必要がある。良い企業を買うことと、良い値段で買うことは違う。現在の高いROEを大型買収後も守れる保証はない。筆者が長く保有する立場なら、AI製品の反復収益と買収後の増分利益が確認できるまでは、事業の可能性に高い代金を払わない。現時点の本質価値と株価の間には、必要な安全域がない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心はコンサルティング事業である。経営戦略、新規事業、M&A、組織改革、DX、AI導入を扱う。2026年5月期の外部売上は111.08億円、セグメント利益は49.38億円だった。顧客には製造業や商社などの大企業が多い。とりわけJI案件では、同社の人材が顧客の意思決定や予算づくりに深く関与し、改革の実行まで引き受ける。
2026年5月期のJI売上は68.98億円で、連結売上の59.9%を占める。年間売上10億円以上の顧客が2社あり、5億円以上10億円未満が4社、1億円以上5億円未満が16社という構成である。大型顧客が増えれば営業効率は改善するが、少数の経営陣との関係が売上を左右する性格も強くなる。契約の継続率や成果報酬の割合は十分に開示されていない。
もう一つのAI事業では、調達改革を支援するAI-Spend Intelligence、企画支援のグロービングくん、会議支援のAI議事コンなどを開発する。2026年5月期の外部売上は4.05億円、セグメント利益は2.33億円だった。現時点の収益は顧客との共同開発や個別対応を含む。多数の企業が毎年利用料を払い続ける製品事業として成立したかは、まだ判断できない。
2027年5月期第1四半期には、調整後コンサルタントが219人となり、JI売上比率は70.7%、AI関連売上比率は56.1%に上がった。ただし、AI事業の外部売上は前年同期比で減少した。AI関連売上という経営指標は、AIをテーマにしたコンサルティング案件も含む。製品の継続課金売上や解約率とは区別する必要がある。
優良さと弱いところ
同社の最大の強みは、顧客の内部に入って経営課題を実行に移す能力である。経営者と長期の信頼関係を築き、社内政治や組織文化を理解した人材は簡単には代えられない。JI比率が2025年5月期の43.6%から2026年5月期の59.9%へ上がったことは、こうした関係を広げる力を示している。大企業の予算編成に関与できる点も、案件を継続しやすくする。
収益性も際立つ。2026年5月期の連結営業利益率は34.8%で、コンサルティング事業単独では44%を超える。大規模な工場や在庫を必要とせず、優秀な人材と顧客関係を使って利益を生む。過去のROEも高く、人的資本に対する収益力は強い。ただし、会計上のROEが高いことと、追加で採用した人材や買収先から同じ利回りを得られることは別問題である。
堀、つまり競争相手が簡単に奪えない強みは、まだ広いとは言い切れない。顧客への深い関与は差別化になるが、顧客データの排他的な所有権、年単位の移行が必要な共通基盤、低い解約率、継続的な値上げ実績は確認できない。JIは案件の分類であり、必ずしも成果報酬型の収益ではない。経営幹部との信頼関係を保てなくなれば、売上が急に失われる可能性もある。
経営陣がAIを自社の業務にも導入し、若手の調査や資料作成を減らそうとしている点は評価する。ただし、その効率化は競合にも利用できる。2027年5月期第1四半期は採用費用が前年同期比352%増え、増収ながら営業減益となった。長期で問われるのは、採用人数ではなく、AI導入後にも顧客が支払う独自の価値を増やせるかである。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のビジネスコンサルティング市場は拡大している。IDCは2025年の市場規模を約8822億円、2030年を約1兆4064億円と予測した。企業のAI導入、業務改革、ERP更新、組織変革が需要を押し上げる。短中期には、AIを使って業務を作り直すためのコンサルティング需要が増える可能性は高い。
競合はアクセンチュア、ベイカレント、ボストンコンサルティンググループ、マッキンゼー、シグマクシスなどである。ベイカレントの2026年2月期売上は約1483億円で、グロービングより大幅に規模が大きい。グロービングのコンサルティング売上111億円をIDCの国内ビジネスコンサルティング市場に単純比較すると約1.3%となる。ベイカレントの売上を同じ市場に割ると約16.8%だが、両社のサービス範囲は完全には一致しない。したがって、これらは公式な市場シェアではなく規模比較の目安である。
10年先には市場の成長と人月需要の成長を分けて考える必要がある。AIエージェントは資料作成だけでなく、分析、調達、業務設計、実行管理へ進む。企業が多くのコンサルタントを雇わずに同じ仕事を進められるなら、市場支出が増えている間も、従来型の稼働時間に対する需要は減り得る。グロービングもこの変化を認識し、少人数の上級人材とAIを組み合わせる構造を目指している。
AI事業の機会は大きい。調達領域にはSAP Ariba、Coupa、Ivaluaなどの既存基盤があり、データ統合やAI実装ではPalantirなどとも競争する。AI-Spend Intelligenceが調達の中核に入り、顧客の業務データと結び付けば切り替えにくい製品になり得る。ただし、現在の導入社数、独立した継続利用料、競合別シェアは確認できない。日系製造業の直接材支出200兆〜250兆円の一部を処理するという会社構想は、プラットフォームを通過する購買額の目標であって、その金額が同社の売上になるわけではない。
資本政策と M&A
資本配分は転換期にある。2026年5月期に初めて配当を開始し、年間配当性向30%程度を基本方針とした。初年度の配当総額は約4.59億円である。2027年5月期も配当性向30%を維持する予定だが、DOEや総還元性向、自社株買い金額について明確な数値目標は確認できない。過去5年間に大規模な自己株買いで株数を減らした実績も乏しい。
中長期構想GoFor2031/Vision2040では、2031年5月期の連結売上高1200億円、年平均成長率約60%、AI関連売上比率70%以上を目指す。基盤事業JI×AI-Xは年平均35%成長と営業利益率35%、AIプラットフォームは売上高40億円と営業利益率50%、投資・M&A領域は売上高600億円という構想である。ROEの具体的な長期数値目標は確認できない。
最も注意すべきなのは買収である。2026年10月の説明では、検討案件30社に対して意向表明書の提出は2社だった。目標の大きさに比べ、買収実績はまだ初期段階である。高い値段で人材会社やAI企業を買えば、これまでの高い資本効率が下がる可能性がある。逆に、買収先の顧客へAI製品を広げ、資本コストを上回る収益を得られれば価値は大きく上がる。
2026年12月に予定するWAO!ホールディングスへの移行は、既存上場会社の商号変更と事業子会社への会社分割であり、現時点で上場廃止を伴うものではない。現金の扱いでは、初配当と増配方針を評価する一方、還元実績の期間が短いため、将来の余剰現金が株主に戻る割合を75%と評価した。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
グロービングは従来のコンサルティングを単純に続ける会社ではない。経営者の内部パートナーになるJI型の比率が高まり、顧客の改革予算そのものに関与している。こうした関係は、大手コンサルティング会社が簡単に置き換えられるものではない。企業内の意思決定と実務の間をつなぐ力は、AIによって資料作成が自動化された後も必要とされる。
実際、2026年5月期のJI売上は約69億円まで拡大した。2027年5月期第1四半期にはJI比率が70%を超え、調整後コンサルタントも219人に増えた。AI関連案件も増え、経営戦略から技術実装までを一体で提供する姿に近づいている。採用費の増加は短期の利益を押し下げたが、有力なパートナーを獲得するための先行投資と解釈できる。
さらに、AI-Spend Intelligenceは大手製造業との共同開発を経て、実際の業務で試す段階へ進んでいる。調達のデータ構造と意思決定を取り込めれば、単なる操作画面ではなく、企業が継続利用する基盤になる可能性がある。2026年5月期にはAI事業に4億円を超える実際の売上が生じており、全く収益のない研究開発会社ではない。買収した企業の顧客に製品を展開する仕組みができれば、人員増加に依存せず売上を伸ばせる。
現金も厚く、2026年5月期には配当を始めた。買収を慎重に実行し、AI製品の顧客数が増えれば、利益と株主還元を同時に伸ばせる。会社が掲げる2031年の大きな構想は容易ではないものの、製品と顧客関係が結び付くことで、現在の事業規模からは想像しにくい収益基盤を作れる余地がある。
慎重な見方
現在の利益の大部分は、依然としてコンサルタントの仕事から生まれている。AI関連売上が56%という数字は印象的だが、AIを議題に含むコンサルティング案件が広く計上されている。製品の継続課金が売上の半分を占めるわけではない。報告セグメントとしてのAI事業は小さく、2027年5月期第1四半期には前年同期から売上が減っている。
AIエージェントが本格的に普及すれば、企業が発注する調査、分析、企画書、会議運営、業務設計の工数は減る。顧客が改革そのものを必要としても、多数のコンサルタントを長期間雇う必要はなくなる。上級人材が残るとしても、その人数だけで現在の利益を維持できるとは限らない。競合のアクセンチュアやベイカレントもAIを導入するため、効率化の利益を一社だけが独占することは難しい。
JI型が高い解約障壁を備えるとの証拠も限定的である。顧客経営者との関係に依存する仕事は、担当役員の交代や企業の投資抑制によって突然縮小し得る。契約更新率も、価格を継続的に引き上げた実績も十分に確認できない。AIによって社内人材が同じ仕事をこなせるようになれば、外部コンサルティング会社の交渉力はむしろ下がる。
会社が掲げる2031年の売上高1200億円も、現在の売上の10倍を超える。AI製品の大規模販売と複数の買収が不可欠だが、検討中の企業を買収できるとは限らない。高値で買収してのれんを積み上げ、統合に失敗すれば、手元の現金も失われる。2026年5月期の高いROEと営業利益率を、そのまま10年後の企業価値へ延ばすことは危険である。
どちらに重みを置いたか
JI型の顧客関係と高い収益性には実績がある。一方、AI製品の継続収益と買収後の増分利益は、まだ十分に実証されていない。したがって現段階では慎重な見方がやや優勢である。確率は楽観側30%、中立32%、悲観側38%とした。AIによる人月の縮小は中立の数量と長期成長率に織り込んでおり、確率で同じ理由を重ねて引いてはいない。下振れ側に厚みを持たせたのは、AI製品の商用展開と大型買収の実行がともに初期段階で、計画の達成に複数の未確認条件が残るためである。現在の時価総額に対して、本質価値は明確に下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/05 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 1,081 円308 億円(+ 還元の換算額還元の合計 226 円65 億円)。 今の値に割り戻すと 668 円191 億円、今との差 −68.5%、 期待の年率 −5.1%(資本コスト 7.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 11% | 2,491 円710 億円 | 393 円112 億円 | +36.1% | +3.4% | 317 円90 億円 |
| やや楽観 | 19% | 1,760 円502 億円 | 309 円88 億円 | −2.4% | −0.3% | 393 円112 億円 |
| 中立 | 32% | 1,081 円308 億円 | 231 円66 億円 | −38.1% | −5.1% | 420 円120 億円 |
| やや悲観 | 23% | 406 円116 億円 | 158 円45 億円 | −73.4% | −13.8% | 130 円37 億円 |
| 悲観 | 15% | 225 円64 億円 | 95 円27 億円 | −84.9% | −19.0% | 48 円14 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,081 円308 億円 | 226 円65 億円 | −38.3% | −5.1% | 1,308 円373 億円 |
今の株価時価総額 2,119 円604 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 11% 調達AIが製品として定着しJIの強みも残る 利益 46 億円 · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,491 円710 億円
AI-Spend Intelligenceが2026年11月の試験運用を経て、複数の大手製造業に広がる。調達データの整理、品目分類、見積もり比較、サプライヤー選定が継続的に利用され、製品収益は2036年に40億円規模へ育つ。業務に深く入り込むことで、単なる画面操作や汎用AIとは違う価値が生まれる。共同開発に対する支払いを継続利用料へ転換でき、顧客との関係が長期化する。
コンサルティングでもJI型が主軸として残る。AIが調査や資料作成を担うため、必要な若手人員は減るが、経営者の右腕となる上級人材への需要は維持される。既存の大口顧客との関係を守りながら新たな製造業や商社へ広がり、高い実現単価を保つ。売上の多くを占めるコンサルティングは、人月の大幅な拡大ではなく、現在に近い実質需要を維持する。
M&Aは小規模なAI企業や周辺企業を中心に慎重に実行される。買収先の顧客に製品を販売し、のれん負担を超える収益を得る。2031年の全社売上1200億円という構想を全面的には先取りしないが、AIプラットフォームの商用化では大きな前進が起きる。株主還元も継続され、10年後には現在より事業の質が改善している。
- コンサルティング事業:数量 203(顧客に販売するコンサルタント稼働需要の人年換算(人年、2026年は調整後コンサルタント数で近似))× 価格 0.73(人年換算1単位当たり年間売上(億円、稼働率と案件構成を含む実現単価))→ 売上 149 億円・営業利益 67 億円。人年換算需要は2026年の1.00倍を維持。実現単価は1.34倍弱。JI中心の顧客構成と高稼働率が継続。
- AI事業:数量 60.0(有償AI共同開発・提供の年間契約換算件数(件、開示がないため推定))× 価格 0.67(1契約換算当たり年間売上(億円、共同開発と製品提供を含む))→ 売上 40 億円・営業利益 16 億円。既存の有償共同開発を製品利用へ転換し、年間60件換算まで拡大する条件付きの楽観。売上は会社の2031年AI-PF目標を2036年に達成する規模。
倍率:k=7.75%、AI代替を踏まえた10年後以降の名目g_long=0%。ROE約13.6%はkを上回るが、g=0%なので正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)=1/k=12.9032倍となる。楽観でも倍率に未証明の永続成長を加えず、事業純利益46.0−余剰現金205×税後金利1.4%=43.13億円にPERを適用し、余剰現金205×戻り方0.75=153.75億円を別に加える。
確率:有償AI共同開発という実績は存在するが、製品の広域商用化、継続課金、買収先への横展開を10年間で実現する必要がある。AIプラットフォームの売上40億円規模への到達を認める上位の筋書きであり、現時点の商用化実績から高確率とはしない。
やや楽観 19% JIの高収益を守りAI製品が徐々に普及 利益 30 億円 · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,760 円502 億円
JI型コンサルティングの契約関係が維持され、大企業への提供領域は広がる。AIの導入によって従来型の調査・分析工数は減るが、経営改革を実行する上級人材は引き続き求められる。顧客の内側で意思決定に関与する仕事を中心に、コンサルティングは高い収益性を保つ。
AI事業では、調達AIや企画支援AIが一定数の大企業で使われる。共同開発した機能の一部は他社にも販売できるようになり、売上は現在から拡大する。ただし、個別の設定やデータ整備に人手が必要で、汎用的なソフトウェアと同じ規模の経済には届かない。競合のSAP AribaやCoupaなどの既存顧客基盤が普及速度を制約する。
買収は数件実行するものの、2031年の大規模な売上目標には届かない。資本効率を意識して無理な大型案件を避けるため、現金の多くが残る。配当は利益に応じて増減する。事業の優良さは概ね保たれるが、AIによる人月需要の縮小をすべて相殺するほどの製品収益は得られない10年間となる。
- コンサルティング事業:数量 183(顧客に販売するコンサルタント稼働需要の人年換算(人年、2026年は調整後コンサルタント数で近似))× 価格 0.70(人年換算1単位当たり年間売上(億円、稼働率と案件構成を含む実現単価))→ 売上 128 億円・営業利益 54 億円。2026年の人年換算需要の約0.90倍、単価約1.28倍。JI案件の残存価値を高く評価。
- AI事業:数量 20.0(有償AI共同開発・提供の年間契約換算件数(件、開示がないため推定))× 価格 0.66(1契約換算当たり年間売上(億円、共同開発と製品提供を含む))→ 売上 13 億円・営業利益 4 億円。共同開発と一部継続契約が増え、年間20件換算。導入・運用費用も残るため利益率30%。
倍率:2036年のROE約10.7%、k7.75%。AI代替型としてg_long=0%を適用し、正当化PERの上限12.9032倍をそのまま使う。事業純利益は30.3−195×0.014=27.57億円。これにPERを適用し、余剰現金195億円の75%を加える。
確率:顧客の経営に入り込むJI型の実績と有償AI共同開発を評価する。ただし製品の普及は大企業の導入審査と既存システムとの競争で時間がかかるため、AI事業の拡大は楽観より小さく見込む。
中立 32% AIで人月が縮小し、JIと製品収益が一部を補う 利益 16 億円 · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,081 円308 億円
企業のDXとAI導入は続くが、従来型のコンサルティング工数に対する需要は減る。顧客はAIを利用して調査、分析、資料作成、業務設計の多くを内製化する。グロービングは経営者の内部パートナーとしてのJI案件を維持するものの、必要な人月は現在より小さくなる。上級人材への報酬と物価上昇を反映して単価は上がるが、数量の減少を完全には補えない。
AI事業では既存顧客向けの共同開発が続く。調達AIは一部の企業で実用化されるが、製品ごとの導入作業が重く、広範囲に同じ製品を販売できる段階には届かない。顧客が汎用AIや既存の調達システムで代替できる部分も増える。全社のAI関連案件は残るが、独立したAI事業の売上は現在と大きく変わらない。
会社は小規模な買収を検討し続けるが、大型案件は成立しないか、合理的な価格で買えないため見送る。過剰な買収を避ける結果、現金が積み上がる。配当性向30%程度は維持される。利益が自己資本ほどには増えず、ROEは現在の高い水準から低下する。経営改革の仕事は残るが、現在とは稼ぐ仕組みが変わる10年間である。
- コンサルティング事業:数量 132(顧客に販売するコンサルタント稼働需要の人年換算(人年、2026年は調整後コンサルタント数で近似))× 価格 0.71(人年換算1単位当たり年間売上(億円、稼働率と案件構成を含む実現単価))→ 売上 94 億円・営業利益 35 億円。AIエージェント代替の人月型基準を適用。実質需要は203人年の約0.65倍、単価は約1.30倍。現在の高い利益率からは低下。
- AI事業:数量 6.0(有償AI共同開発・提供の年間契約換算件数(件、開示がないため推定))× 価格 0.62(1契約換算当たり年間売上(億円、共同開発と製品提供を含む))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。共同開発契約換算は現在の8件から6件へ。単価は約1.22倍。顧客個別対応が残り、製品の大規模展開には至らない。
倍率:10年後の全社ROEは15.5÷231=約6.7%でk7.75%を下回る。低ROE企業のPER上限は1÷kであり、g_long=0%のため正当化PERも12.9032倍となる。事業純利益は15.5−190×0.014=12.84億円。正当化PERを事業純利益に適用し、余剰現金190億円の75%を加える。利益率や過去の市場PERを倍率の根拠にはしていない。
確率:現時点の収益構成ではコンサルティングが96%以上を占める。JIの強みを残しながらも、AIエージェント代替で販売可能な実質工数が縮小する中心的な見通し。製品の大規模商用化と大型買収を確実な利益としては算入しない。
やや悲観 23% 顧客の内製化が進み高収益構造が崩れる 利益 5 億円 · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 406 円116 億円
顧客企業がAIエージェントを自社業務へ本格的に取り込み、グロービングへのコンサルティング発注を減らす。経営層の判断を支える一部の上級人材は残るが、調査、分析、業務設計、実行管理の作業が自動化され、従来の人員配置を維持できなくなる。高い報酬を受け取るパートナー層の費用は急には減らず、営業利益率が大きく低下する。
JI案件も完全な防波堤にはならない。大企業の経営陣が交代したり、改革予算を内製チームへ移したりすることで、大口顧客との契約が縮小する。AIを活用する新興の小規模コンサルティング会社との競争も激しくなる。価格の上昇は物価を大きく下回り、顧客の発注量減少を補えない。
AI事業では共同開発した製品の普及が限定的となり、調達AIは既存ソフトウェアとの競争に苦戦する。中小規模の買収先でも統合費用が発生し、資本の一部が十分な収益を生まない。初期数年間に獲得した利益と現金が財務を支えるものの、2036年には収益力が大幅に弱まった会社となる。配当は利益に応じて縮小する。
- コンサルティング事業:数量 112(顧客に販売するコンサルタント稼働需要の人年換算(人年、2026年は調整後コンサルタント数で近似))× 価格 0.62(人年換算1単位当たり年間売上(億円、稼働率と案件構成を含む実現単価))→ 売上 69 億円・営業利益 22 億円。人年換算需要は約0.55倍。実現単価は約1.13倍にとどまり、固定的な上級人材費用で利益率が低下。
- AI事業:数量 4.0(有償AI共同開発・提供の年間契約換算件数(件、開示がないため推定))× 価格 0.58(1契約換算当たり年間売上(億円、共同開発と製品提供を含む))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。共同開発案件が半減し、製品収益は小規模にとどまる。
倍率:2036年のROE約2.8%はk7.75%以下。将来の成長に追加価値を認めず、稼ぐ力の上限1÷k=12.9032倍を採用する。現金90億円の税後利息1.26億円を純利益から外した事業利益3.74億円にPERを適用し、明示した余剰現金90億円の75%を加える。稼ぐ力と現金の価値を超える市場倍率は使わない。
確率:JI型の関係は一部残るものの、AI導入後の契約更新で工数が削減される。製品開発や人材採用の費用を十分に減らせず、連結利益率が低下するケース。大口顧客への依存と買収投資の収益化遅延も考慮する。
悲観 15% AI代替と買収失敗で主力事業が構造的に負ける 利益 −6 億円 · PBR 0.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 225 円64 億円
企業の業務変革がAIエージェントを中心とした内製方式へ移り、外部コンサルティングへの依存が急速に下がる。グロービングのJI型も大口顧客の契約更新を機に縮小し、経営者との関係に支えられていた高単価案件が失われる。パートナーの離脱が新規案件の獲得をさらに難しくする。売上は現在の半分以下へ落ち込み、人材報酬や本社費の削減が追い付かず、営業赤字となる。
AI事業も期待した成果を生まない。顧客の調達データや業務手順を広く取り込めず、既存の調達システムや汎用AIとの競争に敗れる。個別開発の受注が減り、製品の継続利用料も積み上がらない。大規模な顧客基盤を作る前に技術更新費が重くなり、独自の事業としての競争力を失う。
成長を取り戻すために実行した買収でも、買収先の人材流出と業績悪化が発生する。初期数年間は利益を出して配当を続けるが、後半には赤字が定着する。投資に使った現金の一部は戻らない。残る価値は高い利益倍率ではなく、現預金と回収できる債権などの資産に近づく。収益力を失った後に、高いROEが再現するとは考えない。
- コンサルティング事業:数量 83.0(顧客に販売するコンサルタント稼働需要の人年換算(人年、2026年は調整後コンサルタント数で近似))× 価格 0.56(人年換算1単位当たり年間売上(億円、稼働率と案件構成を含む実現単価))→ 売上 46 億円・営業利益 7 億円。2026年に対して人年換算需要が約0.41倍。AI内製化と大口顧客の喪失で売上が大幅減少。
- AI事業:数量 2.0(有償AI共同開発・提供の年間契約換算件数(件、開示がないため推定))× 価格 0.51(1契約換算当たり年間売上(億円、共同開発と製品提供を含む))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。製品の商用化が失敗し、個別開発だけが細々と残る。
倍率:2036年は営業赤字で、利益に永続倍率を掛けられない。現時点の自己資本76.3億円に床のPBR0.84を適用し、64.09億円とする。2036年に留保利益で積み上がった自己資本114億円へPBRを掛けていない。床は現預金・定期預金からリース負債を差し引いた現在の流動性と、悲観時に回収できる資産を基礎にする。
確率:主要顧客でのAI内製化、パートナーの離脱、AI製品の商用化失敗、買収の減損が重なる複合的な構造悪化。現在の現金が厚いため事業継続の余地はあるが、収益力を回復できない会社となる危険を無視しない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
コンサルティング事業
経営戦略、新規事業、M&A、DX、AI活用の実行支援。顧客内部で改革を担うJI型と通常のコンサルティングを含む。
| 数量顧客に販売するコンサルタント稼働需要の人年換算(人年、2026年は調整後コンサルタント数で近似) | 価格人年換算1単位当たり年間売上(億円、稼働率と案件構成を含む実現単価) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 203 | 0.55 | 111 | 49 |
| 10 年後 中立 | 132 | 0.71 | 94 | 35 |
取り方:2026年5月期有報のコンサルティング事業外部売上111.07797億円と調整後コンサルタント203人を使用。1人当たり実現売上は約0.54718億円。前年は178人、コンサルティング外部売上約82.14億円で、1人当たり約0.461億円だった。伸びにはJIへの案件構成変化と稼働率が含まれ、同一契約の値上げ実績とはみなさない。JI売上は68.9835億円で連結売上の59.9%、残るコンサルティング売上は約42.09億円。物理的な期末人数は年度平均稼働人年と一致しないため数量は近似である。AIエージェント代替の分類は人月・工数型。中立の実質数量を2026年の0.55〜0.75倍とする基準から0.65倍を採り、名目価格は物価10年分1.34倍を超えない。市場規模の目安はIDCの2025年国内ビジネスコンサルティング支出8822億円で、当社売上との単純比率は約1.3%だが市場定義の違いに注意する。
AI事業
AI-Spend Intelligence、企画支援AIエージェント、会議支援AIなどの共同開発・提供。現状は個別顧客向け開発収益が中心で、継続課金の独立した規模は未開示。
| 数量有償AI共同開発・提供の年間契約換算件数(件、開示がないため推定) | 価格1契約換算当たり年間売上(億円、共同開発と製品提供を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 8.0 | 0.51 | 4 | 2 |
| 10 年後 中立 | 6.0 | 0.62 | 4 | 1 |
取り方:2026年5月期有報のAI事業外部売上4.05047億円、AI事業従業員12人、共同開発を進める主要製品3系列を起点とする。契約数と製品別単価は開示されていないため、年間契約約8件、平均売上約5063万円という案件換算を仮定した。実際の契約件数や有料利用社数を表すものではなく、4件×約1億円から10件×約4050万円程度までの幅があり得る。2027年5月期第1四半期のAI事業外部売上は0.783億円で前年同期比約7.9%減。AI関連売上比率56.1%はコンサルティング案件も含み、AI製品売上と同一視しない。現段階では顧客別の共同開発が中心で人月・工数型の代替リスクを持ち、記録の正本型と認定できる証拠は不足する。楽観側の数量拡大は既に開示された有償AI事業売上と、調達AIの実運用・拡販が成功する条件を根拠にする。
リスクと懸念
AIエージェント代替
最大の構造リスクである。売上の大部分は人材と工数を通じたコンサルティング収益で、AI関連案件でも人が調査、分析、企画、実行を担っている。顧客がAIエージェントで同じ作業を内製化すれば、必要な人月と実現単価に圧力がかかる。中立の人年換算数量を現在の約65%とし、2036年以降の名目成長率を0%とした。
AI関連売上と独立した製品売上の混同
2027年5月期第1四半期のAI関連売上比率56.1%は、AIをテーマとするコンサルティングも含む。実際のAI事業セグメント売上は小さく、継続課金の売上額や解約率も明らかでない。製品の商用化が進まなければ、AI企業として期待される収益構造にはならず、顧客ごとの共同開発に人手を使い続ける。
大口顧客と経営者との関係への依存
年間売上10億円以上の大口顧客が複数存在する。JI型は顧客経営者と深く結び付くため、高い取引額を得られる反面、顧客の方針転換や担当経営者の交代が案件に直接響く。取引が縮小した場合、採用済みの高報酬人材をすぐには削減できず、連結利益率が急低下する可能性がある。
M&Aでの資本配分失敗
2031年の連結売上1200億円という目標には大型の買収寄与が必要である。検討先30社に対して意向表明書提出が2社という段階では、投下資本、買収倍率、買収後の増分利益率を十分に評価できない。人材会社やAI企業を高値で買い、主要人材が離脱すれば、のれんの減損と現金流出によって少数株主の価値が損なわれる。
採用費と固定的な人材報酬
同社は高い報酬によって優秀なコンサルタントを確保している。2027年5月期第1四半期には採用費が大幅に増え、増収ながら営業減益となった。AIによる効率化が売上単価の引き下げとして顧客に移転される一方、上級人材の報酬が高止まりすれば、これまでの高い利益率を保てなくなる。
AIプラットフォームの競争と技術更新
AI-Spend Intelligenceは調達領域で既存のSAP AribaやCoupa、データ統合でPalantirなどと競合する。自社の共同開発案件から得られる知見が、他社への販売可能な製品へ転換できなければ規模の経済は働かない。技術の更新速度が速いため、特許申請や一部顧客の試用だけでは長期の参入障壁を保証しない。
現金と株主還元の不確実性
2026年5月期末の現預金と定期預金は厚いが、2031年に向けた買収方針が強く、将来の資金が配当ではなく企業買収に回る可能性がある。初配当は評価できるものの、長期間にわたる増配や大規模な自己株買いの実績はまだない。余剰現金を帳簿額の100%で株主価値に算入せず、75%を採用した。
今後の分かれ目
- AI-Spend Intelligenceが2027年の商用展開後に、独立した有料導入社数と継続利用料を継続的に開示し、売上が複数年増加したら
- AI事業を個別開発型から反復収益型へ一部変更し、AI契約換算件数と収益率を上方修正する。解約率、データ移行の難しさ、値上げ実績という堀の証拠が複数確認されれば、該当部分だけ長期成長率も引き上げる。
- 調整後コンサルタント数の増加を上回ってコンサルティング売上が伸び、JI契約の継続率も高水準と確認できたら
- AIを使うことで少ない人員から多くのオーナー利益を得ている可能性が高まる。売上の伸びを人数増加と単価・稼働率に分解し、価格決定力が実証できた範囲で中立の実現単価を見直す。
- AI関連売上比率だけが上昇し、AI事業セグメントの外部売上や営業キャッシュフローが増えなかったら
- AIの収益化がコンサルティング案件のテーマ変更にとどまると判断する。AI事業の楽観的な契約件数を下げ、全社の価値を人月型事業の収益力に近づける。
- 2031年に向けた買収が進み、買収価格、取得資金、のれん、買収後の営業利益とROICが継続的に開示されたら
- 買収した企業を独立した事業として数量と価格から積み上げる。買収後の増分ROICが資本コストを明確に上回る場合のみ、買収による上振れを中立側に織り込む。
- 売上10億円以上の大口顧客が減少し、JI比率の低下と営業利益率の悪化が同時に起きたら
- 顧客との関係が想定したほど強い堀ではなかったと判断する。コンサルティング数量と利益率を引き下げ、やや悲観・悲観の実現可能性を高める。
- 配当性向30%が継続され、増配や自己株買いによって株主還元の実績が積み上がったら
- 余剰現金の戻り方を75%から100%へ引き上げる余地がある。ただし、配当の原資が恒常的な利益なのか、買収に必要な現金を一時的に取り崩しているのかを区別する。
見ておくもの
- 四半期の調整後コンサルタント数、稼働率、コンサルタント1人当たりの実現売上
- JI売上高と連結売上に対するJI比率、大口顧客の社数と顧客別売上階層
- AI関連売上比率ではなくAI事業セグメントの外部売上高、営業利益、継続課金額
- AI-Spend Intelligenceの商用開始時期、有料利用社数、継続利用率、利用企業で扱う購買額
- M&Aの成立件数、投下資本、買収倍率、のれん残高、買収後の増分ROIC
- 営業利益率、営業キャッシュフロー、配当性向、自己株式数の変化
- AI導入後に顧客が発注するコンサルティング人月の推移と、競合との価格競争
倍率と資本コストの決め方
現在の株価や市場PERから10年後の倍率を決めていない。2026年5月期の実際のコンサルタント数とセグメント売上、AI事業の有償共同開発売上を数量と単価の起点にした。中立ではAIエージェント代替により人月換算数量を65%へ減らし、物価上昇は単価側に反映した。2026年5月期のセグメント営業利益49.38億円と2.33億円、全社調整約−11.68億円を起点として、将来も本社費が増えることを考慮した。倍率はk7.75%、g_long0%から正当化PER12.9032倍とし、今の市場評価を参照していない。明示した将来余剰現金には税後金利1.4%の利益控除と戻り方75%を適用し、二重に加算しない。悲観のPBRは将来に積み上げた自己資本でなく現在の自己資本76.3億円に適用した。確率加重した現在価値は約190.6億円、現在の時価総額約596億円との差は約−68.0%となり、結論は割高である。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本の株式資本コスト7.5%に、利益の変動+0.5%、値決め力0%、厚い純現金−0.25%、寿命0%を加えた7.75%。AI代替や買収失敗は個別の確率・数量・利益率に織り込み、追加の資本コストには重ねない。