結論
CaSyは、家庭の掃除や料理を引き受ける人と利用者をアプリで結ぶ家事代行会社である。十年後も家事を他人に任せる需要は残るが、現在の時価総額はその成長から株主が得られる利益を先取りしすぎており、筆者は割高と考える。需要の大きさより、働き手を採用し、値上げ後も利用を続けてもらい、薄い利益率を広げられるかが決め手になる。
2025年11月期の売上高は約19億円で、営業利益は約0.5億円にとどまった。2026年10月に公表した最新の通期見通しは増収ながら営業赤字0.5億円である。海外家事支援人材の受入が予定より遅れた一方、自治体との連携は広がり、事業の需要と供給の差が表面化した。2026年12月からの料金改定は必要な一歩だが、キャストへの報酬も上がるため、値上げがそのまま株主利益になるわけではない。
定期利用者の継続と自治体からの仕事は強みだが、利用者は他社や個人へ乗り換えられ、技術も追随される。2035年に売上高100億円を目指す経営構想は大きいものの、強い利益率を伴う証拠はまだない。確率を踏まえて十年後の価値を割り引くと約10億円となり、今の約18億円を約45%下回る。成長の夢に高い値段を払わないという判断である。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主がまず問うのは、十年後も同じ家庭がこの会社に安心して鍵を預けられるか、そしてその信頼が利益になっているかだ。家事代行の需要そのものは消えない。世帯の状況に応じた掃除、料理、整理収納には人の手が必要であり、AIが予約を取れるようになっても訪問は省けない。売上の多くを占める定期利用は収入を読みやすくするが、月次解約が続く以上、顧客を維持する費用は無視できない。
優良企業かを決めるのは売上成長率ではなく、賃金と広告費を払った後にいくら残るかである。現状の利益率は薄く、値上げを発表しただけでは値決め力の証拠にならない。中立では将来の顧客密度が上がり、投じた資本への追加利益が資本コストを超える展開を認める。それでも予約技術と周辺サービスは競合にまねされうるため、超過利益が永続するとは考えない。
経営には需要の獲得だけでなく、採用と教育、買収後の統合を利益に変える腕が求められる。2035年の売上100億円という大きな構想を評価するとしても、達成のための増資や借金、のれんの積み上がりを無視してはならない。大株主が強く、現金還元に明確な約束がない点も少数株主の安全域を狭める。
もし十年後に目標が実現し、利益率が大きく改善すれば価値は今をはるかに上回る。しかしその成功を確実なものとして先払いする理由は、今の開示からは見つからない。現時点では将来の利益と帰属する現金を割り引いて、買う値段に余裕があるかを見極めたい。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの基本は、家庭を訪れるキャストが掃除と料理を請け負うたびに生じる利用料金である。利用者はウェブやアプリで依頼し、CaSyが日時と人を組み合わせ、決済と本人確認、保険や相談窓口を担う。キャストへの委託報酬を引いた残りから、広告費、品質管理、システムと本社費を払う。顧客を増やすだけでは利益は増えず、移動時間と空き時間を減らして同じ地域で仕事を密にする必要がある。
会社の会計上は家事支援の単一セグメントだが、経済性は三つに分けられる。2025年の定期利用は売上の約84%を占め、平均して約7,400世帯が年間約22万円ずつ利用したと推定する。単発の掃除・料理は約10%で、交通費込み一訪問約9,600円なら年間約2万件に相当する。専門洗浄と整理収納は約6%で、エアコン洗浄などを中心に約7,600件と見積もる。件数は未開示で、実績の売上構成と公表料金から組み立てた推定値である。
2025年11月末の定期利用者は約7,900人、顧客登録者は約21万人、キャスト登録者は約1万9,000人だった。定期契約に由来する年間売上の見込みは約17.7億円で、利用を習慣にできれば来期の売上が読みやすい。ただし登録数は実際に働ける人の数ではなく、時間帯と地域が合わなければ注文は取りこぼす。
サンジュの買収で家事代行の地域を広げ、すっきりマイスターの買収で専門洗浄を強めた。家事代行クラウドMoNiCaも開発したが、人材確保を優先して拡販は後回しになっている。収益源の中心はソフトの利用料ではなく、実際に人が家庭へ出向く仕事である。
優良さと弱いところ
堀、つまり競合が容易にまねできない強みは、安心して家に入ってもらえる仕組みと、近所に訪問できるキャストがいることにある。本人確認、犯罪情報の照合、保険、品質評価、最短三時間でのマッチングは参入初期の業者には負担になる。会社が示す利用者評価は五点満点で平均4.9点であり、利用の継続を支える信頼は無形の資産である。
一方、2025年の月次定期解約率は2.7%で、年を通せば多くの顧客を補充しなければならない。キャストの年間登録者増加も実稼働の増加と同義ではない。顧客と担当者の関係が深くなっても、家庭とキャストが他の仲介サービスや直接の契約を選ぶ障壁は高くない。ベアーズやダスキンにも採用、教育、保険の仕組みがあり、技術だけで永続的な価格決定力を持つとは言い難い。
2026年12月予定の週一回プランの値上げは、時間当たり2,790円から2,950円への約6%である。これは値上げの方針を示すが、定着率と利益率への効果は改定後でなければ分からない。キャスト報酬も上がるため、粗利益の取り分を維持できるかが本当の試験になる。2025年の営業利益率は2.6%にすぎず、需要が伸びた時に増分投資の利回りが資本コストを超えるかはまだ検証途中だ。
キャストの現場作業はAIエージェントには直接置き換えられない。予約画面や顧客対応は自動化しやすいが、同様の道具を競合も使えるため、その効果を広い堀とは見ない。判断は弱い堀であり、将来の成長と利益の確率に慎重さを残す。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の家事代行はまだ生活必需品ではなく、普及初期のサービスである。矢野経済研究所の2026年調査では利用率が2.3%となり、2024年の1.9%から上昇した。共働き、育児、高齢化が需要を支え、世帯総数が減っても利用率の上昇で訪問回数を増やす余地がある。ただし家計が苦しい時には回数を減らされやすく、景気と人件費の影響を受ける。
会社は家事支援サービス市場を約1,400億円と示しているが、元になった資料には古い推計が含まれ、2026年の確定市場規模ではない。その数字で2025年の家事支援売上約18億円を割ると参考シェアは約1.3%で、支配的な地位とは遠い。ダスキンのメリーメイドは2025年度に年間98万件を提供し、2026年時点で約800店舗を持つ。ベアーズは2025年時点の登録スタッフを6万6,000人と公表する。異なるサービスの混ざった指標なので、そのまま各社シェアにはできないが、採用網にははっきりと規模の差がある。
十年の需要の伸びは、全国の人口増ではなく、利用したい家庭が実際のサービスに踏み出すことで生じる。定期契約の取り合いでは、価格だけでなく、近隣で働く人の数、経験、キャンセル時の補充が決め手になる。タスカジのようなマッチング型や個人契約とも競うため、ソフトウエアの利便性は差別化になっても恒久的な独占力にはならない。
行政による家事・育児支援の予算と、国家戦略特区の外国人家事支援人材の制度が供給側の追い風になりうる。反対に受入審査の厳格化、最低賃金の上昇、補助制度の縮小で売上と利益は別々の方向へ動く。新しい清掃機器や家庭用ロボットが一部の作業時間を減らす可能性はあるが、十年では個別家庭に合わせた現場作業の全置換を中立にはしない。
資本政策と M&A
資本配分は成長投資が先で、株主への現金還元は控えめである。2025年にはすっきりマイスターを0.15億円、サンジュを0.90億円で買収し、既存顧客とサービス領域を広げた。合わせて約1億円の買収額は2025年末の自己資本約2.7億円に比べ小さくない。のれんとソフトウエアの投資を積み増しても、採用と管理の効率が改善しなければ、名目の売上拡大が株主価値を壊す。
2025年には自社株2万株を取得したが、当時の発行済株式の約1%である。配当は行っておらず、2035年の売上高100億円という宣言以外に、中期計画での営業利益、ROE、配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い額について数字の約束はない。2026年10月に会社は通期の営業損失見込みを1.33億円から0.50億円に縮小したが、黒字化の時期まで約束したわけではない。
上位十株主の持分は2025年末で約71.4%に達し、経営陣と大株主の影響力が強い。過去五年に2%以上の株数減少や増配の実績はなく、将来の余剰現金が少数株主へ戻る割合は半分と慎重に考える。買収で発行株式が増えるリスクと既存の新株予約権による希薄化も点検が必要だ。TOBや上場廃止が決まったという確認はできず、買収の可能性は価値に上乗せしない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
家事代行の普及率はまだ低く、2026年の調査でも利用している人は2.3%にとどまる。共働きと高齢化を考えると、家庭での家事を外部に頼む習慣が広がる余地は大きい。CaSyには定期顧客と自治体との接点があり、単発利用から継続利用へ誘導できる。2025年には定期契約が売上の八割超を占め、今後もその積み上がりが事業の土台になる。
同社はマッチングと日程調整を自動化しており、地域で注文が密になれば訪問一件当たりの手配コストは下がる。本人確認、保険、顧客レビューも、家庭に他人を入れる不安を軽減する。キャストの確保が成功すれば、注文を取りこぼさず、広告費を増やす前に既存顧客の利用回数を増やせる。2026年末の値上げが受け入れられれば賃金の上昇も顧客価格に転嫁できる。
サンジュの顧客基盤とすっきりマイスターの専門洗浄を横につなげ、自治体との仕事を広げれば、同じ家庭から複数のサービス料金を得られる。会社は2035年売上100億円を掲げており、外国人材の受入と追加M&Aが軌道に乗れば、目標超過も想像できる。効率の高い運営に変わった場合、過去の薄利だけを理由に価値を低く固定しては、将来の増分利益を見落とす。
慎重な見方
家事代行は潜在需要の大きさより、指定時間に訪問できる人材の不足が問題だ。2026年には外国人材受入の手続きが遅れ、会社が当初期待した新規事業の売上が計画を下回った。利益見通しの改善は費用が発生しなかった面もあり、生産性改善が証明されたわけではない。都市部の需要が強いほど賃金も競り上がり、売上高を伸ばすだけでは利益が残らない。
月次解約率2.7%の定期契約は顧客の補充を常に要する。家に来る担当者への信頼が強いほど、顧客が信頼しているのは会社より担当者本人という面が出てくる。個人契約や競合への乗り換えに、大企業向けソフトのような切り替え費用はない。ダスキンやベアーズには多数の拠点と働き手があり、地域での供給力では容易に先行される。
AIエージェントは掃除をしないが、予約、マッチング、顧客対応という会社のソフト上の差別化は模倣されやすい。MoNiCaを独立した高収益ソフト事業と評価するだけの売上実績も確認できない。加えて株主への明確な還元目標はなく、買収先ののれんや新規事業投資の回収が遅れれば、帳簿上の現金も実際には少数株主に戻らない。売上100億円を追って薄利を増やすだけなら、投資価値は大きくならない。
どちらに重みを置いたか
需要の拡大と定期顧客の蓄積には確かな材料があるが、それを高い利益率に変える供給力と価格転嫁の実績は弱い。2026年の外国人家事支援人材の受入遅延と通期赤字見通しを重く見て、楽観側28%に対し悲観側40%と下に寄せる。強い需要があっても働き手が足りなければ販売数量を伸ばせず、賃金上昇を料金へ転嫁できなければ利益が残らない。家事の現場作業そのものをAIが直接奪うことは想定せず、予約・仲介の競争激化を長期成長率にだけ反映する。買収の回収と少数株主への現金還元も見通しにくく、現時点の時価総額には十分な安全域がない。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/11 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 1,137 円21 億円(+ 還元の換算額還元の合計 30 円1 億円)。 今の値に割り戻すと 560 円10 億円、今との差 −43.2%、 期待の年率 +1.7%(資本コスト 7.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 4,648 円87 億円 | 132 円2 億円 | +384.8% | +17.5% | 382 円7 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,279 円43 億円 | 64 円1 億円 | +137.6% | +9.2% | 468 円9 億円 |
| 中立 | 32% | 778 円15 億円 | 16 円0 億円 | −19.5% | −2.2% | 254 円5 億円 |
| やや悲観 | 25% | 192 円4 億円 | 5 円0 億円 | −80.0% | −15.0% | 49 円1 億円 |
| 悲観 | 15% | 86 円2 億円 | 0 円0 億円 | −91.3% | −21.7% | 13 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,137 円21 億円 | 30 円1 億円 | +18.4% | +1.7% | 1,167 円22 億円 |
今の株価時価総額 986 円18 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 8% 海外人材と買収が同時に成功 利益 6 億円 · PER 14.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 4,648 円87 億円
供給力の壁を越え、家事代行が都市部の日常の支出として根付く。国家戦略特区の外国人材受入が制度運用と現場教育の両面で整い、自治体からの紹介で定期利用世帯が増える。ベアーズやダスキンと競う地域でもサービス密度を高め、価格を上げながら空き時間と移動の無駄を減らす。
すっきりマイスターとサンジュの統合が奏功し、追加買収した地場事業者にもマッチング技術と研修を展開する。ハウスクリーニング全国展開が反復利用の入口になり、目標の売上100億円を超す。現場サービスを伴うためAIによる家事そのものの代替は起きず、予約・配車・問い合わせの自動化が経費率を下げる。
上位株主の支配は維持されるが、稼いだ利益の一部は機動的な自社株買いで返される。新規投資の利回りが資本コストを大幅に上回り、薄かった利益率が改善する。
- 定期の家事代行:数量 32,000(通年換算の平均定期利用世帯数(世帯年、期末定期UUとは異なる推計))× 価格 32(定期世帯1件の年間計上売上(万円、消費税抜き相当、物価効果は価格側))→ 売上 101 億円・営業利益 7 億円。2035年の実質数量と名目単価から計算した売上101.12億円。営業利益率7%は現場報酬・採用・運営費を反映し、本社費は別途調整。
- 単発の掃除・料理代行:数量 55,000(年間訪問件数(件、推計))× 価格 1.55(一訪問当たり売上計上額(万円、消費税抜き相当、交通費収入込み))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。2035年の実質数量と名目単価から計算した売上8.525億円。営業利益率5.5%は現場報酬・採用・運営費を反映し、本社費は別途調整。
- ハウスクリーニング・整理収納:数量 60,000(年間サービス完了件数(件、推計))× 価格 2.15(一件当たり売上計上額(万円、税抜き相当の混合単価))→ 売上 13 億円・営業利益 1 億円。2035年の実質数量と名目単価から計算した売上12.9億円。営業利益率8%は現場報酬・採用・運営費を反映し、本社費は別途調整。
倍率:k=7.75%、10年先ROE=5.80/22.59=25.7%。堀が弱いため超過収益の残存割合1/3を用い、RONIC=13.7%、名目g_long=2.0%。PER上限=(1−2.0%÷13.7%)÷(7.75%−2.0%)=約14.86。現時点の市場倍率から決めない。
確率:2035年売上100億円の公表目標を上回るには、人材受入・自治体連携・買収統合・値上げをすべて連続して成功させる必要がある。現時点では外国人受入遅延が確認され、確率は一桁台とする。
やや楽観 20% 定期客の厚みと周辺サービス拡大 利益 3 億円 · PER 14.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,279 円43 億円
自治体による家事・育児支援の補助が定着し、既存都市で定期利用する世帯が着実に増える。海外人材は予定より時間をかけて戦力化するが、国内キャストの育成や新しい拠点の整備が補う。2026年末の料金改定後も顧客の離脱が大きく増えず、単価は物価とサービスの高度化を反映する。
すっきりマイスターの技術者とサンジュの顧客基盤を生かし、専門洗浄・整理収納の回数を伸ばす。M&Aは小型案件に抑え、買収後の統合費用が想定内に収まる。ダスキンの全国網やベアーズの採用力には及ばないが、オンライン予約と既存キャストの効率運用で都市部の持ち分を増やす。
営業利益率は過去の水準を越える。値上げをキャスト報酬の増加だけで使い切らず、サービス密度と本社費の効率化を株主の利益に変えられた場合の筋書きである。
- 定期の家事代行:数量 24,000(通年換算の平均定期利用世帯数(世帯年、期末定期UUとは異なる推計))× 価格 31(定期世帯1件の年間計上売上(万円、消費税抜き相当、物価効果は価格側))→ 売上 73 億円・営業利益 4 億円。2035年の実質数量と名目単価から計算した売上73.2億円。営業利益率5.2%は現場報酬・採用・運営費を反映し、本社費は別途調整。
- 単発の掃除・料理代行:数量 40,000(年間訪問件数(件、推計))× 価格 1.40(一訪問当たり売上計上額(万円、消費税抜き相当、交通費収入込み))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。2035年の実質数量と名目単価から計算した売上5.6億円。営業利益率3.5%は現場報酬・採用・運営費を反映し、本社費は別途調整。
- ハウスクリーニング・整理収納:数量 32,000(年間サービス完了件数(件、推計))× 価格 2.10(一件当たり売上計上額(万円、税抜き相当の混合単価))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。2035年の実質数量と名目単価から計算した売上6.72億円。営業利益率5.5%は現場報酬・採用・運営費を反映し、本社費は別途調整。
倍率:2025年末の自己資本2.7億円に10年間の純利益累計約17.1億円を加え、株主還元1.2億円を差し引いて2035年の自己資本18.6億円とする。純利益2.92億円によるROEは15.7%、kは7.75%。弱い堀に対応する超過収益の残存割合1/3からRONICは約10.4%、10年より先の名目g_longは2.0%であり、正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=約14.05倍を採る。今や過去の市場PERは使わない。
確率:国内キャストの増員と自治体との取引実績は確認できるが、2026年の外国人材受入遅延が成長率の制約を示した。良好な実行を要するため二割。
中立 32% 需要は伸びるが利益率は薄い 利益 1 億円 · PER 13.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 778 円15 億円
家事を外部に任せる習慣は少しずつ広がり、共働き・高齢世帯の利用が定着する。定期利用の通年平均世帯数は今より増えるが、人口全体の伸びではなく、供給できるキャストと自治体経由の顧客獲得が成長の源となる。単価はおおむね物価に沿って上がり、2026年の改定がその出発点になる。
ダスキンの地域拠点とベアーズの大きな採用網は手強く、CaSyが市場を独占する展開にはならない。地方での展開と周辺サービスの増加は進むものの、新しい地域ごとに採用・品質管理の費用がかかる。MoNiCaは現場確保を優先する間は大きな独立収益源にならず、AIは配車や事務を安くする道具にとどまる。
薄利の構造は残るが、成熟した定期契約が本社固定費を吸収して収益は徐々に回復する。2035年の売上100億円という経営目標には届かず、企業が普通に成長することと高い投資利回りが得られることは別だと分かる十年となる。
- 定期の家事代行:数量 16,000(通年換算の平均定期利用世帯数(世帯年、期末定期UUとは異なる推計))× 価格 29(定期世帯1件の年間計上売上(万円、消費税抜き相当、物価効果は価格側))→ 売上 47 億円・営業利益 1 億円。2035年の実質数量と名目単価から計算した売上46.72億円。営業利益率3.2%は現場報酬・採用・運営費を反映し、本社費は別途調整。
- 単発の掃除・料理代行:数量 28,000(年間訪問件数(件、推計))× 価格 1.30(一訪問当たり売上計上額(万円、消費税抜き相当、交通費収入込み))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。2035年の実質数量と名目単価から計算した売上3.64億円。営業利益率2.5%は現場報酬・採用・運営費を反映し、本社費は別途調整。
- ハウスクリーニング・整理収納:数量 17,000(年間サービス完了件数(件、推計))× 価格 1.95(一件当たり売上計上額(万円、税抜き相当の混合単価))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。2035年の実質数量と名目単価から計算した売上3.315億円。営業利益率4%は現場報酬・採用・運営費を反映し、本社費は別途調整。
倍率:2025年末の自己資本2.7億円に10年間の純利益累計約7.7億円を加え、株主還元0.3億円を差し引いて2035年の自己資本10.1億円とする。純利益1.04億円によるROEは約10.3%、kは7.75%。弱い堀で超過収益の残存割合を1/3とするとRONICは約8.6%、名目g_longは2.0%。正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=約13.35倍を上限どおり採る。純利益には正常化した税負担を反映し、現在の市場倍率から割り引いて決めない。
確率:2026年の定期UUは前年同期比6.7%増と顧客基盤は伸びるが、外国人材供給の遅れと2026年通期赤字予想が利益の読みづらさを示す。下に寄せる理由:採用が成長率を縛り、価格改定分がキャスト報酬へ流れるため、下振れ二筋の合計を上振れ二筋より12ポイント多くした。
やや悲観 25% 採用と価格転嫁の遅れが続く 利益 0 億円 · PER 11.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 192 円4 億円
家事代行への需要は増えても、近隣に動けるキャストを必要な時間帯に確保できない。人手を確保するため報酬を上げると、家計の節約志向と競合の低価格攻勢にぶつかり、客への転嫁が遅れる。自治体の入札や支援予算の見直しで紹介の伸びも緩み、定期利用世帯は期待ほど増えない。
外国人材の受入手続きは厳しさが続く。小規模なM&Aで得た顧客を統合できず、管理者と品質管理の費用が重い。予約・配車のAI化は競合にも普及し、かつての低コストシステムは独占的な利点を失う。
赤字企業にはならないが、本社費の大きさが利益を圧迫する。大きな配当を出す余力はなく、稼ぐ利益と売れる資産に見合う小さな価値へ落ち着く。地域ごとの採用の失敗が続き、顧客の紹介だけでは稼働率を押し上げられない。
- 定期の家事代行:数量 10,500(通年換算の平均定期利用世帯数(世帯年、期末定期UUとは異なる推計))× 価格 26(定期世帯1件の年間計上売上(万円、消費税抜き相当、物価効果は価格側))→ 売上 28 億円・営業利益 1 億円。2035年の実質数量と名目単価から計算した売上27.72億円。営業利益率2.7%は現場報酬・採用・運営費を反映し、本社費は別途調整。
- 単発の掃除・料理代行:数量 18,000(年間訪問件数(件、推計))× 価格 1.16(一訪問当たり売上計上額(万円、消費税抜き相当、交通費収入込み))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。2035年の実質数量と名目単価から計算した売上2.088億円。営業利益率2%は現場報酬・採用・運営費を反映し、本社費は別途調整。
- ハウスクリーニング・整理収納:数量 9,000(年間サービス完了件数(件、推計))× 価格 1.75(一件当たり売上計上額(万円、税抜き相当の混合単価))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。2035年の実質数量と名目単価から計算した売上1.575億円。営業利益率3%は現場報酬・採用・運営費を反映し、本社費は別途調整。
倍率:ROE=0.33/3.02=10.9%、k=7.75%。弱い堀でRONIC約8.8%となるが、やや悲観では定期契約の維持と再投資機会の悪化を想定し、楽観〜中立の正当化上限(約13.5)を採用せず、利益の持続性からPER11とする。
確率:2026年の赤字見込みと家事労働者の確保難が、顧客の潜在需要を売上に変換できない危険を示す。料金改定で解約が増える一方で賃金は上がる場合を十分に見る。
悲観 15% プラットフォームの競争優位喪失 利益 0 億円 · PBR 0.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 86 円2 億円
人手不足が解消せず、地域の既存業者と直接契約する顧客が増える。顧客とキャストの信頼関係がプラットフォームを介さず続くようになると、アプリに残る理由が薄れる。競合のマッチング技術にもAIが入って差別化が失われ、定期利用世帯は大幅に減少する。
最低賃金と顧客獲得費が上がる半面、単価は物価ほど上げられない。買収した子会社の顧客移管も進まず、経営は不採算地域を閉じて小規模な事業に縮退する。初期数年の損失で自己資本を削り、のれん・自社開発ソフトの一部を減損するが、資金調達を要する破綻までは進まない。
利益に永続成長の価値をほぼ認めず、純現金と換金できる投資有価証券を中心に売れる資産の床で考える。過去の株価の底を床にしない。
- 定期の家事代行:数量 6,500(通年換算の平均定期利用世帯数(世帯年、期末定期UUとは異なる推計))× 価格 22(定期世帯1件の年間計上売上(万円、消費税抜き相当、物価効果は価格側))→ 売上 15 億円・営業利益 0 億円。2035年の実質数量と名目単価から計算した売上14.56億円。営業利益率1.3%は現場報酬・採用・運営費を反映し、本社費は別途調整。
- 単発の掃除・料理代行:数量 10,000(年間訪問件数(件、推計))× 価格 1.00(一訪問当たり売上計上額(万円、消費税抜き相当、交通費収入込み))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。2035年の実質数量と名目単価から計算した売上1億円。営業利益率1.2%は現場報酬・採用・運営費を反映し、本社費は別途調整。
- ハウスクリーニング・整理収納:数量 6,000(年間サービス完了件数(件、推計))× 価格 1.60(一件当たり売上計上額(万円、税抜き相当の混合単価))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。2035年の実質数量と名目単価から計算した売上0.96億円。営業利益率2%は現場報酬・採用・運営費を反映し、本社費は別途調整。
倍率:10年後の純利益0.02億円のROEは資本コストを大きく下回り、成長利益のPERは不適切。2025/11現在の自己資本約2.70億円を分母とするPBR0.60=時価総額1.62億円。これは2025/11の純現金約1.4億円と換金性を半減評価した投資有価証券約0.2億円の資産価値約1.6億円をわずかに上回る。ソフトウエア・のれんを床に含めない。
確率:定期利用者が減り、外国人材受入の遅延や価格競争が恒常化する複合的な失敗を想定する。売上が名目でも現状以下に縮むため、頻度は中立より低いが無視できない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
定期の家事代行
掃除・料理を定期訪問で提供する中核。継続世帯数と世帯当たり年間利用額で売上が決まる。
| 数量通年換算の平均定期利用世帯数(世帯年、期末定期UUとは異なる推計) | 価格定期世帯1件の年間計上売上(万円、消費税抜き相当、物価効果は価格側) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/11 | 7,400 | 22 | 16 | 1 |
| 10 年後 中立 | 16,000 | 29 | 47 | 1 |
取り方:2025/11の連結売上19.22億円に、会社資料の定期売上構成約84%を適用して16.145億円。期末定期UU約7,900人・ARR17.7億円から、年間平均利用世帯を約7,400と逆算し、1世帯の年間売上を約21.82万円とした。実訪問数は未開示。週1回2,790円/時、2週に1回2,890円/時、交通費880円/訪問という税込の公表料金を参照し、消費税と利用頻度を調整した帳簿上の年額として妥当性を点検。2026年12月改定の週1回2,950円/時はまだ2025年実績には含めない。推定営業利益0.55億円には本社共通費を含めず、全社調整額で整合させる。
単発の掃除・料理代行
必要な時だけ家事を請け負う訪問。定期利用の入口にもなるが、集客費と稼働の振れが大きい。
| 数量年間訪問件数(件、推計) | 価格一訪問当たり売上計上額(万円、消費税抜き相当、交通費収入込み) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/11 | 20,000 | 0.96 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 28,000 | 1.30 | 4 | 0 |
取り方:会社資料の家事支援約94%と定期約84%との差約10%をスポット売上とみなした推計。掃除スポットの公表税込料金3,490円/時と交通費880円から訪問ごとの料金を点検し、平均作業時間・税抜処理を含む混合の帳簿売上を一訪問0.961万円と仮定して約20,000件を逆算。料理は3時間以上のため実際の混合単価・件数には幅があり、会社開示の実績値ではない。営業利益は分析上の仮置き。
ハウスクリーニング・整理収納
エアコン・レンジフード等の専門洗浄と整理収納の訪問を、専門パートナーや子会社が提供する。
| 数量年間サービス完了件数(件、推計) | 価格一件当たり売上計上額(万円、税抜き相当の混合単価) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/11 | 7,600 | 1.52 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 17,000 | 1.95 | 3 | 0 |
取り方:2026年2月の成長可能性資料でその他サービスの売上構成6%。2025/11連結19.22億円×6%=1.153億円。単価は公表メニューの一般エアコン洗浄13,200円、整理収納2時間26,400円などの税込料金を参照し、売上計上時の消費税を調整して通常洗浄中心の混合単価1.52万円と推定し、約7,600件を逆算した。実件数・内訳は非開示で、子会社サンジュ・すっきりマイスターの連結効果を含む。
リスクと懸念
供給制約と人件費の高騰
働けるキャストが需要の時間帯と地域に足りなければ、注文は入っても実績売上にならない。2026年の海外家事支援人材受入は制度運用の厳格化で遅れた。採用・教育費や最低賃金に合わせた報酬の増加が価格改定に先行すると、売上が増えても利益率は下がる。
値上げ後の顧客解約と低い参入障壁
2026年12月に家事代行を約5〜6%値上げする計画だが、家計の節約や競合の価格設定次第では解約や利用回数の削減が起こる。月次定期解約率は2025年に2.7%あり、入会の手間は他社へ乗り換える障壁にならない。価格改定後の定期UUと粗利益を合わせて見る必要がある。
AIエージェント代替は仲介業務に限られる
主力の掃除・料理・整理収納は人が現場で行うため、人月型事務BPOや席課金SaaSの機械的な縮小率は適用しない。一方、予約調整・問い合わせ対応・マッチングはAIエージェントで低価格化し、競合や顧客が同機能を直接利用することで、CaSyの手数料と顧客接点が弱まる恐れがある。MoNiCaの有料販売額は確認できない。
買収と先行投資が利益にならない
2025年の二件の買収額は計1億円超で、自己資本に対して大きい。子会社の人材と顧客を統合できなければ、管理者の重複・開発費・のれん償却が本業の薄い利益を圧迫する。2035年売上100億円を急いで追うほど、利益より成長のための現金支出が先行する危険がある。
自治体制度・外国人材制度の変更
自治体の家事・育児補助は一般家庭の負担を下げて顧客を増やすが、年度ごとの予算や委託条件に依存する。外国人家事支援人材の受入地域・審査・雇用条件が変われば、人員計画と固定費の回収は大きく狂う。補助対象の増加を恒久的な契約数とは同一視しない。
事故・個人情報と株主への現金還元
家庭内での事故や個人情報漏えいは信頼を急速に壊し、顧客とキャストの両方の離反を招く。上位十株主が約71%を保有するため、配当や大きな自己株買いがないまま買収に資金を使えば、純現金の帳簿価値を少数株主が実現しにくい。既存の新株予約権の希薄化も株主の取り分を減らす。
今後の分かれ目
- 2026年末の値上げ後も月次定期解約率が2.7%前後以下で推移し、キャスト報酬控除後の粗利益率が改善するなら
- 単価と稼ぎの両立を確認できるため、中立の利益率とやや楽観の確率を上げる。売上の増加だけで上方修正しない。
- 外国人材の実受入人数と国内キャストの稼働人数が増え、定期UU成長率が二桁で持続するなら
- 供給制約が解けたと判断し、定期顧客の数量を引き上げる。制度認定だけでなく実際の訪問完了件数を確かめる。
- 自治体連携の契約数が増えても、一件当たり利益や入札継続率が下がるなら
- 低採算の拡大とみて中立の利益率を下げ、やや悲観を厚くする。補助金付き利用者数を継続率と混同しない。
- 2035年売上100億円の目標へ向けた買収でのれんと有利子負債が急増し、営業利益が改善しないなら
- 増分投資の利回りが資本コスト以下と判断し、企業価値と上振れ確率を下げる。新株発行があれば既存株主の取り分も見直す。
- MoNiCaに独立した有料顧客・売上・低解約率の継続的な開示が現れたら
- 現場サービスとは分けて席課金型のAIエージェント代替リスクを評価する。独自データ等の堀の証拠二つがなければSaaS部分の長期成長を慎重に置く。
- 取締役会が配当性向や自社株買い額を数値で約束し実行したなら
- 留保現金が少数株主へ戻る割合を0.5から再検証し、利益を増やさなくても株主価値が改善する余地を計算する。
見ておくもの
- 2026年12月の値上げ後の単価、定期UU、月次解約率と継続売上総利益
- 国内・外国人キャストの登録数だけでなく実稼働数、週当たり訪問完了件数
- 自治体連携の実施自治体数、補助金依存度、顧客一人当たり粗利益
- 営業利益率と広告宣伝費率、キャスト報酬控除後の粗利益率
- サンジュ・すっきりマイスターの統合効果、のれん、無形資産、追加M&A対価
- 自己株買い・配当の実施、主要株主持分、ストックオプション行使
- MoNiCaの有料売上と顧客基盤の開示有無
倍率と資本コストの決め方
現在の株価980円、純株数1,872,900株、時価総額18.35億円は最後にだけ比較した。事業の積算は2025/11実績の定期84%、スポット約10%、専門サービス約6%に沿って、利用世帯年・訪問件数・案件数と名目単価を別々に見積もった。中立の価格はおおむね物価年3%の十年累計1.34倍で、数量へは物価を入れていない。営業利益はサービスの利益と本社費の合計で、純利益は2026年からの正常化した税負担を見込む。弱い堀によるRONICと長期名目成長2%、資本コスト7.75%から中立PER約13.35を求め、今や過去の市場PERを利用していない。悲観は過去のPBRの底でなく、現在の純現金と回収可能資産の床で価値を置いた。2027年4月以後開始事業年度からの新リース会計基準により報告BSの形が変わっても、訪問サービスの経済性は家賃費用控除ベースで比較する。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に過去の損益変動と純現金の調整+0.25%を加える。企業規模や株価βは使わず、供給・買収の固有リスクは筋書きと確率で扱う。