結論
HANATOUR JAPANは、訪日外国人向けの旅行手配を軸に、貸切バスとホテルまで自社グループで提供する会社である。筆者の結論は「割安」だ。2025年の連結売上高は約72億円、営業利益は約20億円であり、現在の時価総額約100億円に対し、10年先の稼ぐ力と株主還元を割り引いた本質価値は約149億円と見積もる。ただし、事業の振れ幅が大きく、安心して放置できる種類の割安株ではない。
価値の中心は旅行会社としての看板だけではない。韓国を中心とする送客網から旅行客を集め、宿泊施設や観光サービスを予約し、必要に応じて自社のバスとホテルへつなぐ仕組みにある。旅行手配では予約ごとの手数料が積み上がり、バスとホテルでは需要の集中する日に設備を効率よく稼働させることで利益が膨らむ。2025年にはホテルの客室稼働率が88.3%となり、旅行・運輸・宿泊を組み合わせる利点が表れた。
一方、2025年の高収益を永久に続く利益と考えるのは危険だ。2026年3月には札幌のホテルが営業を終了し、2026年上期の連結営業利益は前年同期を下回った。さらに同年9月の旅行取扱高、バス売上、ホテル客室売上はいずれも前年同月を下回っている。インバウンド市場が拡大しても、この会社の取り分まで自動的に増えるわけではない。
10年後の中立では、旅行の個人予約を増やし、失ったホテル客室の一部を補いながら、連結売上高を約107億円、営業利益を約27億円と見込む。反対に、海外オンライン旅行会社との競争や新たな渡航制限が重なれば、設備を抱える事業構造が損失を拡大させる。上振れの魅力は大きいが、株主として価値を受け取るには、親会社との関係、ホテルの契約負担、現金の還元姿勢を継続して確かめる必要がある。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の見方では、まず旅行需要そのものと、この会社が受け取る手数料を分けて考えたい。外国人旅行者が増えるのは追い風だが、予約先は変わりやすい。顧客が会社の名前にこだわらず、より安いサービスへ簡単に移るのであれば、その取扱高は独占的な利益を約束しない。旅行者が増えるだけで株主の利益も同じ割合で増えるという考え方は避けるべきだ。
所有者として本当に評価したいのは、旅行者の動きに合わせてバスとホテルを使い切る能力である。すでに保有する車両や客室の稼働が高まれば、新たな設備をほとんど増やさずに利益を伸ばせる。しかし、稼働率が下がる局面では反対のことが起きる。固定費と契約上の支払義務が残るため、会計上の純利益をすべて自由な現金として受け取れるわけではない。
資本を再投資した時の利回りにも条件を付けたい。既存のホテルやバスの稼働を改善する投資は、設備を増やすより高い利回りを実現しやすい。だが、新しいホテルの取得や長期賃借は、景気の良い時に高い条件で契約すると、その後10年以上の負担になる。経営者には売上高の拡大より、投下資本をどれだけ回収できたかを求めたい。
この会社の事業は理解できるが、10年後の利益を狭い範囲で予測できる事業ではない。2019年から2022年の損失と、その後の急回復が同じ会社で起きたことが証明している。だからこそ、将来の上振れを大きく見込むだけでは投資価値を認めない。現在の時価総額が、控えめな成長、ホテル契約の更新費用、旅行手数料の低下を織り込んでも十分安いかという問いに立ち戻る。
今回の試算では、10年後の中立の利益が現在より増えることを期待しつつ、悲観側にも厚く確率を配した。それでも本質価値は今の時価総額を上回る。ただし、安全域の一部は、今後の利益が実際に配当として株主へ戻るという条件に依存している。親会社との関係と、現金をホテル拡張に再投資する判断を継続して監視したい。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの出発点は、韓国を中心とする訪日客の旅行手配である。団体旅行では航空便や旅行日程に合わせて宿泊、移動、観光施設を組み合わせ、個人旅行では宿泊予約や観光券を扱う。2025年の韓国向けパッケージ取扱人数は約10.1万人で、その他の訪日客向けが約0.6万人だった。個人旅行向けにはホテル予約約40.7万室泊と観光券約41.7万件を扱い、予約手数料と自社サービスへの送客が利益の源になっている。
旅行事業の取扱高と会計上の売上高は異なる。顧客がホテルに支払う宿泊代金全額が同社の収益になるわけではなく、会社が計上するのは主として手配による取り分である。2025年の旅行事業売上高約29.35億円は、団体・パッケージ旅行と個人旅行予約から生じた手数料収入を合わせたものと捉える。旅行者の人数だけでなく、予約一件当たりの手数料が長期の利益を左右する。
貸切バス事業は、旅行部門からの送客と外部の貸切需要を受ける。2025年の保有台数は約120台、稼働率は52.4%であり、車両を増やすより先に稼働日数を引き上げる余地がある。ただし、運転手の採用や人件費、車両更新費用、燃料費は避けられない。旅行部門からの内部取引もあるため、グループ全体を評価する際には売上の二重計上を除く必要がある。
ホテル事業は、立地の良い宿泊施設を運営し、客室稼働率と平均客室単価の掛け算で稼ぐ。2025年は計794室を抱え、客室平均単価は約1万1900円だった。ところが2026年3月に246室を持つ札幌のホテルが営業を終了したため、既存施設だけで考えれば供給客室数は548室へ減る。将来のホテル売上の拡大には、新たな運営契約や施設取得が必要だ。
2026年には旅行手配を効率化する新サービス「HANAMADE」の展開も始まった。予約を横断して扱える仕組みは手配コストを下げる可能性があるが、その操作画面自体が恒久的な競争優位になるとは限らない。AIを使う顧客や旅行代理店が既存の予約画面を経由しなくなれば、同社が受け取る手数料にも下押しが生じる。サービス開発と予約件数の増加を、収益化の実績と区別して見る必要がある。
優良さと弱いところ
同社の強みは、訪日旅行の手配と現地での移動・宿泊を一体で提供できる点にある。韓国の旅行会社や販売網とのつながりがあり、旅行者が到着した後の移動や宿泊にも対応できる。予約を受けるだけの旅行会社と比べ、繁忙期に自社バスやホテルの稼働を高められれば、グループ全体の利益を大きくできる。2025年の高いホテル稼働率と旅行事業の利益率は、この仕組みが機能した証拠だ。
ただし、強みと堀は同じではない。顧客が毎年必ず同じ会社で予約する仕組みはなく、海外オンライン旅行会社、他の旅行代理店、ホテルの直接予約と競争する。自社の予約網から離れにくい顧客の割合や、競争相手より高い手数料を継続して受け取れる実績は十分に開示されていない。値上げの力が比較的見えるのはホテルの宿泊単価であり、旅行手配全体に強い価格決定力があるとは判断しない。
資本効率も慎重に読むべきだ。2025年のROEは約31%と高いが、2019年から2022年には赤字が続き、とりわけ2020年には大きな損失を計上した。旅行需要が急減すると利益が消えるだけでなく、ホテルやバスの固定費が残り、自己資本まで傷む。過去10年のROE中央値が約16%であることを踏まえると、足元の高ROEを成長率の根拠には使えない。
財務面では、2025年末に約20億円の純現金を持つように見える。しかしこれは主として銀行借入と現金同等物の差であり、ホテルなどに関連する約40億円のリース債務を含めた自由に使える現金ではない。加えてホテルの撤退と出店にはまとまった資金が必要になる。財務が改善したことは評価するが、現金の厚さだけで恒久的な安全性を保証することはできない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
訪日旅行の需要基盤は長期で拡大してきた。2025年の訪日外国人数は約4268万人で、訪日外国人旅行消費額は約9.45兆円に達した。円安、海外からの航空便、地方への周遊需要が旅行手配、宿泊、観光輸送の市場を支えている。同社の韓国向け送客網は、この大きな市場の一部を取り込む窓口になる。
もっとも、日本を訪れる人の増加率と同社の取扱人数の増加率は一致しない。2025年の同社パッケージ取扱人数約10.7万人を訪日客総数で割ると約0.25%だが、これは旅行代理店市場の正確なシェアではない。団体旅行と個人旅行では対象市場が違い、同じ母数で測った競合の取扱人数も十分に公表されていないためだ。JTB、エイチ・アイ・エス、KNT-CTのような既存旅行会社に加え、Booking.com、Agoda、Trip.com、Expediaなども旅行者の予約先を奪い合っている。
市場規模が大きいことは、個々の旅行会社に高い利益率を保証しない。航空券、宿泊施設、観光券の手配はネット上で比較しやすく、価格の透明化が進むほど手数料には下落圧力がかかる。反対に、自社で提供できる移動やホテルの価値は比較的残りやすい。特に繁忙期のホテル料金には需給による上昇余地があるが、それを維持するには立地と客室品質への投資が欠かせない。
旅行市場は地域政治や感染症への感応度が非常に高い。2026年9月の訪日客数は前年同月比で約5%減少し、同社の同月指標では旅行取扱高が約11%減、バス売上が約20%減、ホテル客室売上が約17%減となった。これは市場全体の成長が鈍ると同社の取り分がそれ以上に落ちることもあるという警告である。
10年後も訪日旅行は必要とされるだろう。ただし、手配を人間の旅行会社へ任せる割合は下がり、AIによる日程作成や直接予約が一般化する可能性がある。旅行手配の数量が増えても、予約一件当たりの収益は物価上昇ほど増えないと見る。一方、ホテルの室泊数とバスの運行日数には物理的な制約があり、適切に稼働させれば長期的な収益源になりうる。
資本政策と M&A
経営の資本配分は、旅行事業で生じた利益をバスとホテルに再投資してきた歴史である。現地移動と宿泊を自前で提供する戦略は、旅行需要が強い時には利益を大きくする。しかし、2019年以降の業績悪化とコロナ禍は、固定資産や契約負担を抱えて成長する危険も示した。2021年には株式数が増え、既存株主の持分が薄まった。
2026年2月に示された2026~2028年の中期計画では、最終年度の売上高約81.8億円、営業利益約22.9億円、自己資本約70億円を目標としている。ROICの目標は約13.2%で、配当性向は40%前後を掲げた。2028年の配当計画を現在の株数に換算すると、年間約5.8億円以上に相当する具体的な還元目標もある。一方、自社株買いの金額について明確な約束は確認できない。
2024年には配当を再開し、2025年に増配した。こうした行動は評価するが、過去の資金配分全体が常に株主価値を増やしたとは言えない。新型感染症の流行時には資金繰りの維持が優先され、ホテルの拡大と撤退に伴う損失も生じた。2026年3月に終了した札幌ホテルの運営は、設備投資額だけでなく撤退費用も含めて判断すべき事例である。
主要株主である韓国のHANATOUR SERVICEは議決権の過半を保有し、個人の大株主を含めると持分が集中している。親会社との送客関係には事業上の利点がある半面、少数株主が資本政策を左右しにくいという弱点がある。現時点で公表済みのTOBやMBO、上場廃止予定は確認されていないが、親会社による再編は将来の選択肢として残る。評価額には未発表の買収プレミアムを含めない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
同社の旅行、バス、ホテルの組み合わせは、普通の旅行代理店より収益機会が多い。韓国のHANATOURグループにつながる送客網があり、旅行者の日本滞在中の移動や宿泊まで取り込める。訪日客が増えるたびに、手配手数料だけでなくバスの稼働とホテル宿泊も増やせるのは、実際の運営設備を持つ会社ならではの強みである。
2025年の旅行事業の利益率は高く、ホテルの客室稼働率も88%を超えた。稼働率の改善が収益に大きく効くことは、すでに実証されている。2026年の札幌ホテル閉鎖も、低採算施設を整理して経営資源を別の施設へ移す契機になる。閉鎖した客室を新たな運営契約で補えば、次の10年では固定費負担を抑えながら収益を増やせる可能性がある。
成長余地はまだある。2025年の訪日客総数と比べれば、同社のパッケージ取扱人数はごく小さい。既存の韓国向けだけでなく、他国の個人旅行客へ販売先を広げるだけでも数量は増やせる。新しい予約サービスがグループ内の手配事務を効率化できれば、取扱件数が増えても人員や費用を同じ割合で増やさずに済む。
中期計画は配当性向約40%という株主還元を明確にした。利益成長と還元が両立すれば、株主は10年後の企業価値だけでなく、期間中にも相当額の現金を受け取れる。現在の時価総額は、旅行業の構造的な弱さを織り込み過ぎている可能性がある。
慎重な見方
2025年の利益は、訪日旅行の回復とホテルの高稼働が同時に起きた時の数字である。2019年から2022年には大きな赤字が続き、旅行需要が途絶えるだけで事業の形が急速に傷むことが分かった。次の10年に同様の感染症、航空便の制約、日韓関係の悪化が起きれば、旅行者数とホテル稼働率は再び急減しかねない。こうした危険を単なる一時的な景気循環として軽視できない。
旅行手配そのものには強い顧客の囲い込みがない。Booking.com、Agoda、Trip.comなどの予約サービスが販売網を持ち、さらにAIエージェントが日程作成から宿泊・移動の予約まで直接行うようになれば、人間の旅行代理店を経由する必要は小さくなる。自社の予約システムを整備しても、旅行者がその画面を使い続ける保証はない。予約件数が増えても、受け取る手数料率が下がれば利益は伸びない。
ホテルとバスも安全な資産とは限らない。ホテルのリース債務は2025年末時点で約40億円に達し、現金同等物から銀行借入を差し引いた純現金より大きい。札幌ホテルの営業終了は、需要の見通しを誤った時に撤退費用が発生することを示している。運転手不足による賃金上昇や車両更新費用の増大も、見かけの高い営業利益率を下げうる。
最大株主は過半の持分を握り、少数株主には資本配分を決める力が乏しい。利益が生まれても、配当よりホテル拡張を優先すれば株主が現金を受け取る時期は遅れる。現在の利益だけを見ると安く感じるが、その利益が10年続くことを前提にすれば危険だ。
どちらに重みを置いたか
事業の存在意義と足元の収益力については前向きに評価する。ただし、旅行予約の競争、AIによる仲介機能の縮小、ホテルのリース負担により、利益の持続性では慎重な見方を重視する。確率は楽観側28%に対し悲観側40%とし、下側に12ポイント寄せた。それでも、現在の約100億円という時価総額に対し、株主還元を含む本質価値は約149億円となる。結論は割安だが、資産を長期間保有するだけで安心できる銘柄ではなく、送客単価と設備契約の管理が価値を左右する。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 2,254 円283 億円(+ 還元の換算額還元の合計 461 円58 億円)。 今の値に割り戻すと 1,331 円167 億円、今との差 +72.8%、 期待の年率 +15.3%(資本コスト 8.3%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 11% | 5,328 円669 億円 | 876 円110 億円 | +705.8% | +26.7% | 682 円86 億円 |
| やや楽観 | 17% | 3,822 円480 億円 | 733 円92 億円 | +491.5% | +22.5% | 774 円97 億円 |
| 中立 | 32% | 2,379 円299 億円 | 534 円67 億円 | +278.3% | +16.4% | 932 円117 億円 |
| やや悲観 | 27% | 802 円101 億円 | 239 円30 億円 | +35.2% | +3.5% | 281 円35 億円 |
| 悲観 | 13% | 311 円39 億円 | 40 円5 億円 | −54.4% | −7.9% | 46 円6 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,254 円283 億円 | 461 円58 億円 | +252.7% | +15.3% | 2,715 円341 億円 |
今の株価時価総額 770 円97 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 11% 送客網を広げ、ホテルとバスの高稼働を実現 利益 46 億円 · PER 13.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 5,328 円669 億円
訪日旅行の需要が長期的に増え、同社は韓国からの団体送客だけでなく、他国の個人旅行者にも販売網を広げる。旅行者のホテル予約は年間112万室泊へ増え、パッケージ旅行の取扱人数も16万人に達する。HANAMADEは顧客向けの独占的な画面ではなく、予約や現地手配を効率化する社内基盤として機能し、人手を大きく増やさず予約件数を伸ばす。
バスは約170台に増え、年間の稼働は約4.2万台日となる。ホテルでは2026年に失った札幌の客室を新たな運営契約で十分に補い、約1160室を高い稼働率で運営する。ホテル単価も立地とサービスの改善によって物価を上回る水準で上昇する。設備投資と契約負担は増えるが、運営効率の向上が先行するため投下資本利益率は高い水準に保たれる。
親会社との取引が維持され、外部株主への配当も拡大する。新規ホテルの取得条件を慎重に選ぶことで、大型減損や再度の希薄化を避ける。旅行、バス、ホテルそれぞれの利益率が高く、連結営業利益は約63億円に到達する。
- 旅行事業・団体/パッケージ:数量 160,000(年間パッケージ取扱旅行者数(人))× 価格 21,000(旅行者1人当たりの会計上の手配収益(円))→ 売上 34 億円・営業利益 13 億円。韓国以外も含めて取扱人数が約1.50倍。手数料単価は約1.61倍となり、付加価値の高い周遊商品が増える。
- 旅行事業・個人旅行(FIT)の宿泊・体験手配:数量 1,120,000(年間FITホテル予約取扱室泊数(室泊))× 価格 5,300(FIT予約室泊1件当たりの会計上の手配収益(円、観光券収益を含む))→ 売上 59 億円・営業利益 24 億円。FIT予約数量が約2.75倍。予約の自動化で取扱件数増加を利益へ結び付ける。
- 運輸事業・貸切観光バス:数量 42,000(年間の車両稼働日数(台日))× 価格 74,000(稼働台日当たりの外部売上換算額(円))→ 売上 31 億円・営業利益 13 億円。約170台、稼働率約68%に相当。外販の比率と長距離・高付加価値運行を増やす。
- ホテル等事業:数量 360,000(年間販売客室数(室泊))× 価格 21,000(販売1室泊当たりの連結認識売上(円、客室以外の収益を含む))→ 売上 76 億円・営業利益 17 億円。高稼働の運営客室を約1160室まで拡大。設備更新費用を負担した後も高採算を維持する。
倍率:2035年のROEは45.65÷234=19.51%。弱い堀として超過収益の残存割合を3分の1とし、RONIC=8.25%+(19.51%−8.25%)÷3=約12.00%。g_longの名目2.0%を使うと正当化PER=(1−2.0%÷12.00%)÷(8.25%−2.0%)=13.33倍となる。楽観シナリオのため計算上の上限をそのまま用い、追加の余剰現金を二重計上しない。
確率:韓国以外への販路拡大、FIT予約の大幅増加、新しいホテル運営契約の獲得、バス稼働率の改善が同時に必要になる。成功すれば高収益だが、複数の事業で継続して競合に勝つ必要があるため確率は11%とする。
やや楽観 17% FITの伸びと既存設備の効率化が両立 利益 33 億円 · PER 13.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3,822 円480 億円
訪日客の増加が続くなか、同社は旅行手配をデジタル化し、FITホテル予約を90万室泊まで伸ばす。パッケージ旅行は韓国向けを維持しながら他国への販売を広げ、年間13万人を扱う。AIによって予約の事務作業は減るものの、顧客獲得競争は残るため、旅行手数料の伸びは物価と商品構成の改善におおむね見合う水準にとどまる。
バスは稼働率を改善し、追加車両の購入を限定しながら運行日数を増やす。ホテルは札幌の閉鎖後に失った客室のかなりの部分を補い、約970室を平均85%前後の稼働で運営する。過度に高い賃料の物件は避け、必要な改装費を支払った後にも十分な利益を残す。
親会社の送客網は維持され、経営は規模の拡大と株主還元を両立させる。大型の買収は行わず、既存施設の改善と小型の運営受託を中心に投資する。連結営業利益は約45億円まで伸び、株主は10年間を通じてまとまった配当を受け取る。
- 旅行事業・団体/パッケージ:数量 130,000(年間パッケージ取扱旅行者数(人))× 価格 19,000(旅行者1人当たりの会計上の手配収益(円))→ 売上 25 億円・営業利益 9 億円。取扱人数約1.22倍、手数料単価約1.46倍。団体と小規模周遊商品の構成改善を見込む。
- 旅行事業・個人旅行(FIT)の宿泊・体験手配:数量 900,000(年間FITホテル予約取扱室泊数(室泊))× 価格 5,000(FIT予約室泊1件当たりの会計上の手配収益(円、観光券収益を含む))→ 売上 45 億円・営業利益 18 億円。FIT予約数量約2.21倍。予約の効率化が手数料競争を上回る。
- 運輸事業・貸切観光バス:数量 34,000(年間の車両稼働日数(台日))× 価格 69,000(稼働台日当たりの外部売上換算額(円))→ 売上 23 億円・営業利益 9 億円。稼働日数約1.48倍。外販と高単価運行の構成が改善する。
- ホテル等事業:数量 300,000(年間販売客室数(室泊))× 価格 19,000(販売1室泊当たりの連結認識売上(円、客室以外の収益を含む))→ 売上 57 億円・営業利益 12 億円。約970室を高稼働で運営し、失った札幌ホテルの収益を上回る。
倍率:2035年ROEは32.52÷185=17.58%。弱い堀の残存割合3分の1を使うRONICは約11.36%。k8.25%、g_long2.0%から正当化PER=(1−2.0%÷11.36%)÷(8.25%−2.0%)=13.18倍。長期に投じる資本の超過収益は徐々に薄れると考え、足元の高いROEをそのまま永続させない。
確率:FIT予約拡大とホテル再出店が進めば達成可能だが、OTAとの競争による単価下落を避け、ホテルの新規運営契約を有利な条件で獲得する必要がある。確率は17%とする。
中立 32% 旅行手配は伸びるが、競争と設備更新が利益を抑える 利益 20 億円 · PER 12.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,379 円299 億円
日本への旅行需要は長期的に増えるが、旅行予約をめぐる競争も強まる。パッケージ旅行の取扱人数は年間11.5万人と小幅に増え、個人旅行のホテル予約は65万室泊となる。予約一件当たりの手数料は名目では上がるものの、物価上昇には十分追いつかない。AIエージェントや海外OTAを通じた直接予約が広がるため、取扱人数の増加ほど収益は伸びない。
貸切バスは約125台を約64%の稼働率で運営する。ホテルは札幌の閉鎖で減った客室の一部を補い、約760室を平均84%程度の稼働で維持する。運営施設の入れ替えに費用はかかるが、需要のある地域に絞ることで採算を守る。ホテルの宿泊単価は物価に沿って上昇しても、賃料と人件費の上昇が利益を圧迫する。
親会社との送客関係は続き、買収による大幅な規模拡大は想定しない。利益の約4割を中心に株主へ還元し、残りを設備更新と運転資金に回す。連結売上高は約107億円、営業利益は約27億円となる。2025年より利益は増えるが、高い収益性がさらに改善し続けるとは見込まない。
- 旅行事業・団体/パッケージ:数量 115,000(年間パッケージ取扱旅行者数(人))× 価格 18,000(旅行者1人当たりの会計上の手配収益(円))→ 売上 21 億円・営業利益 7 億円。人数は約1.08倍。商品構成改善を含む名目単価上昇で売上が増える。
- 旅行事業・個人旅行(FIT)の宿泊・体験手配:数量 650,000(年間FITホテル予約取扱室泊数(室泊))× 価格 4,500(FIT予約室泊1件当たりの会計上の手配収益(円、観光券収益を含む))→ 売上 29 億円・営業利益 10 億円。予約数量約1.60倍だが、実現手数料単価は約1.19倍にとどまる。物価3%の10年上昇率約1.34倍より低く、AIエージェントとOTAの競争を反映。
- 運輸事業・貸切観光バス:数量 29,300(年間の車両稼働日数(台日))× 価格 60,000(稼働台日当たりの外部売上換算額(円))→ 売上 18 億円・営業利益 6 億円。125台を約64%稼働させる。乗務員賃金、燃料、車両更新費の上昇を利益率に含む。
- ホテル等事業:数量 233,000(年間販売客室数(室泊))× 価格 17,000(販売1室泊当たりの連結認識売上(円、客室以外の収益を含む))→ 売上 40 億円・営業利益 7 億円。約760室を平均84%程度で運営。2026年の246室閉鎖後に約210室相当の新規運営客室を獲得する必要がある。
倍率:2035年ROEは19.83÷145=13.68%。k8.25%、弱い堀の残存割合3分の1なので、RONIC=8.25%+(13.68%−8.25%)÷3=約10.06%。g_long2.0%から正当化PER=(1−2.0%÷10.06%)÷(8.25%−2.0%)=12.82倍。楽観から中立までのPERは計算上の上限をそのまま用いる。
確率:訪日需要の増加とFIT予約の拡大を見込む一方、AI・OTA競争による手数料単価の弱さ、札幌ホテル撤退後の再構築、更新投資を織り込んだ中心シナリオ。設備拡大と利益率改善が同時に大成功するとは考えず、確率32%を配する。
やや悲観 27% 予約手数料が細り、ホテルの再建も進まない 利益 7 億円 · PER 9.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 802 円101 億円
訪日市場は存在し続けるが、同社の販売網は競争相手に押される。韓国の団体旅行では自社手配を使わない旅行会社が増え、パッケージ旅行の取扱人数は約7.8万人に減る。FITのホテル予約も49万室泊にとどまり、AIによる直接手配と海外OTAの販売力に押されて手数料率が下がる。予約システムへの投資は増えるものの、独立した高収益商品としての売上を生み出せない。
貸切バスでは運転手不足が続き、保有車両を十分に動かせない。車両維持費と人件費が上昇する一方、稼働日数は約2万台日に減る。ホテルは札幌で失った客室を補えず、残る施設の一部も競争の激しい地域で値下げを迫られる。客室単価は名目では上がるが、物価と契約賃料の上昇を十分には転嫁できない。
大きな買収や新規出店は見送り、手元資金を維持するため配当も縮小する。親会社との取引は続くものの、外部の送客拡大につながらず、経営の再建は緩慢となる。連結営業利益は10億円を下回り、資本に対する利益率も資本コストを下回る。
- 旅行事業・団体/パッケージ:数量 78,000(年間パッケージ取扱旅行者数(人))× 価格 15,800(旅行者1人当たりの会計上の手配収益(円))→ 売上 12 億円・営業利益 3 億円。人数約0.73倍。商品単価上昇を手数料率の低下が打ち消す。
- 旅行事業・個人旅行(FIT)の宿泊・体験手配:数量 490,000(年間FITホテル予約取扱室泊数(室泊))× 価格 3,950(FIT予約室泊1件当たりの会計上の手配収益(円、観光券収益を含む))→ 売上 19 億円・営業利益 5 億円。予約数量は2025年を上回るが、手数料単価は物価に大きく劣後する。
- 運輸事業・貸切観光バス:数量 20,000(年間の車両稼働日数(台日))× 価格 53,000(稼働台日当たりの外部売上換算額(円))→ 売上 11 億円・営業利益 2 億円。稼働日数が2025年を下回り、固定費負担と更新費用が重くなる。
- ホテル等事業:数量 178,000(年間販売客室数(室泊))× 価格 15,500(販売1室泊当たりの連結認識売上(円、客室以外の収益を含む))→ 売上 28 億円・営業利益 3 億円。残存客室を中心に約570室相当を運営するが、低稼働と賃料負担が利益を圧迫する。
倍率:ROEは7.10÷120=5.92%でk8.25%を下回る。超過収益を生まないためPERの上限は1÷k=12.12倍となる。やや悲観では予約手数料の低下とホテル更新負担により既存の稼ぐ力も傷むと考え、上限を下回る9.3倍で評価する。純現金を別に加算せず、現金の必要額は負債と契約を踏まえて考える。
確率:2026年の旅行・バス・ホテルの月次指標が前年割れし、ホテルの大型閉鎖がすでに起きている。需要減速だけでなく、予約仲介の競争によって中期的な利益率低下が続く可能性があるため27%とする。
悲観 13% 旅行手配の優位を失い、固定費が収益を食う 利益 −2 億円 · PBR 0.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 311 円39 億円
感染症の再拡大、国際的な渡航制限、主要な送客国との関係悪化のいずれかが長期化する。訪日客の回復後も、旅行者は海外OTAとAIエージェントによる直接予約へ移り、同社の団体送客網はかつての規模を取り戻せない。パッケージ旅行は年間4万人、FITホテル予約は24.5万室泊へ減少し、手数料の取り分も小さくなる。
貸切バスは稼働日数が大きく減る。運転手、車両、保険、整備費を削っても売上減少を吸収できず、運輸事業は赤字になる。ホテルも長期契約の賃料を払いながら一部施設を閉鎖し、残る施設では客室単価を引き上げられない。数年間の累積赤字と施設撤退・減損によって、好況期に積み上げた資本のかなりの部分を失う。
経営は新規投資を止め、銀行借入とリース契約の整理を優先する。親会社との関係があっても少数株主に高い買収価格が保証されることはない。2035年時点では連結営業赤字が残り、将来の利益に高い価値を付けられないため、換金可能な純資産を慎重に調整した額を評価の床とする。
- 旅行事業・団体/パッケージ:数量 40,000(年間パッケージ取扱旅行者数(人))× 価格 13,500(旅行者1人当たりの会計上の手配収益(円))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。送客網の優位が崩れ、取扱人数は2025年の約37%まで減る。
- 旅行事業・個人旅行(FIT)の宿泊・体験手配:数量 245,000(年間FITホテル予約取扱室泊数(室泊))× 価格 3,400(FIT予約室泊1件当たりの会計上の手配収益(円、観光券収益を含む))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。予約数量と実現手数料単価がともに低下し、仲介の収益性を失う。
- 運輸事業・貸切観光バス:数量 12,000(年間の車両稼働日数(台日))× 価格 42,000(稼働台日当たりの外部売上換算額(円))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。稼働台日が大幅に縮み、車両と乗務員の固定費を賄えない。
- ホテル等事業:数量 135,000(年間販売客室数(室泊))× 価格 13,900(販売1室泊当たりの連結認識売上(円、客室以外の収益を含む))→ 売上 19 億円・営業利益 −1 億円。営業施設の閉鎖や低稼働で、賃料・維持費が売上を上回る。
倍率:営業損失が残るためPERでは測らず、2025年末の自己資本約44.9億円を起点に、換金力の弱い繰延税金資産約4.35億円と無形固定資産約1.55億円を控除した約39.0億円を悲観の床とする。現在の自己資本に対するPBRは39.06÷44.9=約0.87倍。リース負債約40.3億円と対応する使用権・リース資産はすでに貸借対照表に含まれるため、負債を床から再度全額差し引く二重計上はしない。2035年の自己資本40億円に0.87倍を掛ける計算ではない。
確率:再び大きな渡航制限や国際関係の悪化が起きると、旅行手配・バス・ホテルが同時に傷む。2020~2022年の損失が実例であり、事業の大部分が構造的に縮む可能性も排除できないため13%を配する。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
旅行事業・団体/パッケージ
韓国を中心とする訪日パッケージ旅行の手配。数量は取扱旅行者数、単価は旅行代金総額ではなく同社が認識する手配収益で測る。
| 数量年間パッケージ取扱旅行者数(人) | 価格旅行者1人当たりの会計上の手配収益(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 106,955 | 13,036 | 14 | 5 |
| 10 年後 中立 | 115,000 | 18,000 | 21 | 7 |
取り方:会社の2025年実績にある韓国向け100582人×取扱単価68798円、その他6373人×170269円から総取扱高を約80.05億円と算出。FITのホテル予約407458室泊×19855円と観光券417097件×1817円の総取扱高約88.48億円を合わせ、旅行セグメントの外部売上29.35億円を取扱高比例で配分した。推定の会計上手数料率は約17.42%で、同社の開示する旅行代金の総額と手数料収益を混同しない。パッケージ配分売上は約13.94億円、営業利益は旅行事業の営業利益約11.41億円を配分売上に比例させた約5.42億円。
旅行事業・個人旅行(FIT)の宿泊・体験手配
個人旅行向けのホテル予約と観光券などの手配。数量はホテル予約の室泊数を軸とし、観光券の収益も一室泊当たりの手配収益に含める。
| 数量年間FITホテル予約取扱室泊数(室泊) | 価格FIT予約室泊1件当たりの会計上の手配収益(円、観光券収益を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 407,458 | 3,782 | 15 | 6 |
| 10 年後 中立 | 650,000 | 4,500 | 29 | 10 |
取り方:会社開示のFITホテル予約407458室泊×取扱単価19855円で総取扱高約80.90億円、観光券417097件×1817円で約7.58億円を算出。観光券の数量をホテル室泊へ二重計上せず、二つの総取扱高の合計約88.48億円に旅行事業の推定会計上手数料率約17.42%を適用し、売上を約15.41億円と推定した。ホテル予約1室泊当たりの会社収益は観光券の手数料も含め約3782円。営業利益約5.99億円は旅行セグメントの利益を売上比で配分した推定値であり、会社がFIT単独の利益を公表したものではない。HANAMADEなどの予約システムに独立した席課金・人月課金の開示はない。
運輸事業・貸切観光バス
旅行者の団体輸送と外部からの貸切輸送を行う。車両稼働日数と、内部取引消去後の実質的な外部売上を対応させる。
| 数量年間の車両稼働日数(台日) | 価格稼働台日当たりの外部売上換算額(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 22,951 | 43,092 | 10 | 5 |
| 10 年後 中立 | 29,300 | 60,000 | 18 | 6 |
取り方:会社の保有バス約120台と2025年稼働率52.4%から120×365×0.524=約22951台日を推定した。連結外部売上に対応する運輸売上約9.89億円をこの稼働日数で割ると約43092円になる。これは外部売上への換算単価で、貸切バス1台を顧客へ販売する実際の運賃とは異なる。旅行事業との内部取引があるため、運輸セグメント営業利益約4.79億円と外部売上の組み合わせから得る利益率は、単独の外販利益率ではない。連結への内部取引消去はadjust_okuでまとめて扱う。
ホテル等事業
自社グループで運営するホテルの宿泊収益。販売室泊数と客室以外の収入を含む認識売上単価で測る。
| 数量年間販売客室数(室泊) | 価格販売1室泊当たりの連結認識売上(円、客室以外の収益を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 255,902 | 12,730 | 33 | 6 |
| 10 年後 中立 | 233,000 | 17,000 | 40 | 7 |
取り方:会社開示の客室数794室、客室稼働率88.3%から794×365×0.883=約255902販売室泊と推定。ホテル等事業の売上約32.58億円を割った認識収益は1室泊約12730円で、会社開示の客室平均単価約11900円との差は客室以外の収入などである。2026年3月には札幌ホテル246室が閉鎖されたため、将来シナリオでは残る約548室を起点に新規運営施設の獲得を明示的に考える。営業利益はホテル等事業の2025年実績約5.69億円を採用した。
リスクと懸念
訪日客の減少と送客国の集中
国際的な感染症、外交関係の悪化、航空便の削減が起きると、韓国を中心とする訪日旅行の取扱人数が短期間で減少しうる。2020年の業績悪化は、この事業が単なる景気減速ではなく需要そのものの消滅に直面しうることを示した。ホテルとバスの固定費が同時に残るため、売上の減少率より営業利益の減少率が大きくなりやすい。
AI エージェント代替と手数料率の低下
AIエージェントが旅行日程作成、宿泊比較、移動予約、観光券購入を一括して行えば、旅行会社の人手による手配と既存の操作画面の価値は低下する。旅行事業は公表されている範囲では人月請負や席課金のSaaSではなく、旅行者・室泊・観光券の出来高で稼ぐため、人月型の数量減少率を一律に適用しない。ただしFITの手数料単価は下がりやすく、中立の価格と長期成長率に代替圧力を反映した。HANAMADEに独立した高収益の席課金売上が生じたという開示は確認できない。
ホテルのリース債務と撤退費用
2025年末には約40億円のリース債務があり、銀行借入だけで計算した純現金を超える契約負担を抱える。2026年3月の札幌ホテル営業終了により、約246室が稼働基盤から外れた。新しいホテル契約を増やせても、賃料が高い時期に長期契約を結ぶと需要低下時に利益を圧迫する。更新投資、原状回復、撤退費用まで含めた投下資本回収が必要だ。
バス運転手の確保と車両更新
バスの需要があっても、運転手を確保できなければ運行日数を増やせない。賃金と整備費、車両取得費は物価や労働需給に応じて上昇する。既存車両の減価償却は取得時の簿価に基づくため、物価上昇が続けば会計利益と更新時の実際の現金支出に差が生まれる。中立でも運行単価の上昇をすべて利益率改善には結び付けていない。
親会社支配と少数株主の資本配分
HANATOUR SERVICEが過半の株式を保有し、その他の大株主を含めた持分集中が強い。送客面の協力には利点があるが、親会社との取引条件、配当、買収、上場維持について少数株主が主導権を持たない。親会社による将来の完全子会社化の可能性はあるものの、未発表のTOB価格や買収プレミアムを現在の価値に含めない。
業績回復期の利益率と資本効率の過大評価
2025年の連結営業利益率は約28%と高いが、過去には旅行需要の減少で赤字が続いた時期がある。2026年上期の減益と9月の月次指標の弱さは、高い利益率が固定されたものではないことを示す。ホテルを補充する設備投資が必要になる一方、資産の帳簿上の償却費は過去の取得価額で計算されるため、将来の更新投資が会計利益を上回る可能性に注意する。
今後の分かれ目
- FITホテル予約の数量が数年連続で二桁成長し、予約1件当たりの実現手数料も維持されたら
- 旅行手配の競争力が想定より高いと判断し、やや楽観の確率を引き上げる。HANAMADEの売上への寄与が金額で開示されれば、予約システムの価値を改めて評価する。
- 札幌ホテル閉鎖後、運営客室数が増えないままホテル売上と稼働率が低下し続けたら
- 中立のホテル販売室泊数を引き下げる。運営契約の解約費用とリース債務の残高も確認し、やや悲観の可能性を高める。
- 貸切バスの稼働率が60%台半ばへ改善し、車両数を大きく増やさず営業利益を伸ばせたら
- 既存設備から生じる増分利益が資本コストを上回る証拠になる。設備を増やさずに利益が増えるため、中立の営業利益と株主還元余力を引き上げる。
- 旅行手配の数量が増えても、認識売上を予約数量で割った単価が数年連続で低下したら
- 海外OTAやAIエージェントによる手数料圧縮が進んだと判断する。FITの単価と利益率を下げ、やや悲観・悲観の重みを増やす。
- 配当性向40%前後の方針が維持され、利益の増加に合わせて年間配当総額が増えたら
- 少数株主が利益を受け取れるという前提の確かさが増す。将来の余剰現金の戻り方を0.75から1.0へ見直す余地が生まれる。
- 親会社が株式公開買付けや株式交換による完全子会社化を正式発表したら
- 継続保有企業の10年価値ではなく、正式な買付価格、対価、成立条件、少数株主保護の手続きを優先して評価し直す。未発表段階の噂では価値を変更しない。
見ておくもの
- 毎月の旅行取扱高、バス売上、ホテル客室売上の前年同月比
- パッケージ旅行取扱人数とFITホテル予約室泊数
- FITの取扱総額に対する会計上の旅行売上高の割合
- 貸切バスの保有台数、稼働率、運転手の採用状況
- ホテル運営客室数、客室稼働率、客室平均単価、撤退・新規契約
- 銀行借入とリース債務を合わせた契約負担、設備更新投資
- ROICと資本コストの差、配当性向、年間配当総額
- 親会社との取引額と主要株主の持株比率
- JNTOの訪日外客数と主要送客国の構成
倍率と資本コストの決め方
数量はパッケージ旅行者数、FITの予約室泊数、貸切バスの稼働台日、ホテルの販売室泊数から考えた。旅行の取扱高をそのまま売上とせず、会計上の手数料収益へ換算し、物価上昇は実現単価の側に反映した。2026年のホテル閉鎖を踏まえ、中立のホテル室泊数を満たすには新しい運営契約が必要であることを明示した。連結本社費と内部取引消去も各シナリオで差し引いた。
倍率は現在のPER、過去のPBR、競合株価を根拠にしていない。k8.25%、弱い堀による増分超過収益の残存割合3分の1、2035年以降のg2.0%から利益ベースの正当化PERを計算した。楽観から中立まではその上限を用い、利益が傷む悲観側は低い稼ぐ力と資産の床で評価した。2028年以降に適用が進む新リース会計基準による貸借対照表の表示変化と、経済的な賃料負担そのものは区別した。
現在の時価総額は約99.94億円である。10年後の各シナリオの時価総額を10年間、期間中の還元を平均5年間、いずれも年8.25%で割り引くと本質価値は約149.43億円となり、差は約+49.5%で「割安」と判定する。現在の株価を2倍や半分にしても、数量、単価、資本コスト、倍率の前提は変えない。価値の大きな差は楽観の高い利益にも影響されるため、実際の安全域は悲観側の発生確率に敏感である。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3.0%と株式リスクプレミアム4.5%の基本7.5%に、業績循環0.5%、価格決定力0.5%、銀行借入に対する純現金の強さ−0.25%、寿命0%を加えた8.25%。親会社支配やホテル撤退は個別の筋書きと確率で評価し、資本コストへの追加上乗せは行わない。