結論
サイネックスは、大阪に本社を置き、自治体と組んで行政情報誌『わが街事典』を作る会社だ。地元の商店の広告で費用をまかない、住民に無料で配る。50音別の電話帳『テレパル50』、ダイレクトメールの発送代行、ふるさと納税の支援も手がける。筆者の結論は、今の値段は割高だというものだ。
稼ぎの柱は情報メディアで、利益のほぼすべてを生む。だが紙の電話帳は細り続け、2026年3月期はこの事業の利益が4分の1減った。売上の4割を占める発送代行は、量は多いが利益はほとんど残らない。
全社の営業利益は1.7億円で、自己資本81億円に比べてあまりに小さい。本社の費用は年10億円を超え、事業の利益の大半を食う。10年後の中立でも、稼ぎは資本コストに遠く届かないと筆者は見る。帳簿の価値は大きいが、それを生かす稼ぎが無ければ、価値の床にはならない。
上場株や不動産の賃貸など、帳簿の外にも資産はある。ただ、それを株主に戻す方針は示されておらず、少数の株主には引き出す手立てもない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、サイネックスは「資産はあるが、稼ぐ力が細る会社」だ。自治体との付き合いという独自の資産を持ちながら、それを利益に変える仕組みが弱っている。
筆者がいちばん気にしているのは、資本の使い方だ。紙の媒体の利益が細るなか、発送代行や歯科材料の卸に事業を広げたが、どれも利益は薄い。本社の費用は重く、売上を伸ばしても利益が残らない。経営は量を追い、稼ぎの質を後回しにしてきたように見える。
帳簿の自己資本81億円は、今の時価総額の倍近い。だが、資本コストを大きく下回る稼ぎしか生まない資本は、帳簿どおりの値打ちを持たない。少数の株主には、資産を売らせて現金に換えさせる手立てもない。安全域は、帳簿の数字ほど厚くない。
オーナーとして長く持ちたいかと問われれば、稼ぐ力が戻る証拠を見るまでは、答えは否だ。
何で稼ぐ会社か
事業は5つに分かれる。
情報メディアは売上67億円、利益10億円で、会社の稼ぎのほぼすべてだ。自治体と協働で行政情報誌『わが街事典』を作り、地元の会社や商店の広告で費用をまかなう。全国に約50の営業の拠点を置き、営業の人が広告を集める。電話帳の『テレパル50』も同じ形で作るが、スマホの検索に置き換わり、縮んでいる。
DXサポートは売上21億円で、自治体向けのAIの案内係、ふるさと納税の支援、通販のサイト、Web広告やシステムの開発を手がける。利益はわずかだ。
ロジスティクスは売上71億円と最も大きい。子会社のエルネットなどが、企業のダイレクトメールの発送とポスティングを請け負う。2026年3月期は売上を14%伸ばしたが、利益は0.5億円にとどまる。
ほかに、歯科材料の卸のヘルスケアが11億円、不動産の賃貸の投資が1億円ある。不動産の賃貸は小さいが、利益率は高い。
本社の費用は年10億円を超え、5つの事業の利益の合計12億円の大半を食う。全社の営業利益は1.7億円だった。自治体との協働という形は、営業の入り口として今も強い。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、自治体との長い付き合いにあると筆者は見る。行政情報誌を一緒に作った自治体は数百にのぼり、その信頼は新しい会社がすぐには得られない。
ただ、その堀はお金を生みにくい。行政情報誌の費用は地元の商店の広告でまかなう。地方の商店は減り、広告の出し先はスマホの検索や地図に移った。広告の値段を自分で決める力は弱い。
発送代行は入札と値段の競争で、利益率は1%を切る。量を伸ばしても利益はほとんど残らない。ダイレクトメールそのものも、長い目では減る。
資本の効率は低い。自己資本利益率は過去10年の中央値で4%、2026年3月期は1%を下回った。自己資本81億円は、資本コストに届かない稼ぎしか生んでいない。借入28億円に対し手元の現金37億円があり、財務は堅いが、その堅さは稼ぎの弱さの裏返しでもある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
地方の紙の媒体の市場は、長く縮み続けている。電話帳はスマホの検索に置き換わり、地方の商店の数も人口とともに減る。広告の出し先は、検索や地図、交流サイトに移った。日本の広告費の半分は、既にネットの広告だ。
行政情報誌はまだ出番がある。高齢の住民には紙の案内が要り、自治体の予算をかけずに作れる仕組みは便利だ。だが、自治体の発信もサイトやアプリに移りつつある。生成AIの案内係が住民の問い合わせに答える時代には、紙の冊子の役割はさらに小さくなる。
AIエージェントは、この会社の2つの事業に効く。1つは、地元の商店の広告の制作と営業だ。AIが広告を作り、出し先を選ぶようになれば、人が足で集める広告の値打ちは下がる。もう1つは、Web広告とシステムの開発で、人の作業時間で売る仕事はAIに置き換わりやすい。
ダイレクトメールは、紙と郵便の値上がりで量が減る。郵便料金は2024年に大きく上がった。ふるさと納税は、2025年10月に仲介サイトのポイントが禁じられ、寄付の集め方が変わった。どの事業も、追い風より向かい風が強い。
資本政策と M&A
還元は年1回の配当で、1株あたりの額を毎年同じに据え置いてきた。2026年3月期の配当性向は145%で、利益を上回る額を配った。2015年には自己株の公開買付けで株を買い戻し、今も発行済みの株の13%を自己株として持つ。
買収は、発送代行のエルネットや歯科材料の卸のマルヤマ歯科商店など、本業から離れた分野に広げてきた。どれも利益は小さい。
現金は37億円、借入は28億円で、純現金は約9億円だ。上場株と非上場株で約8億円を持ち、不動産の賃貸もある。資産を処分して株主に戻す方針は示されていない。数値目標を伴う中期計画も無い。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
自治体との付き合いは、簡単にまねできない資産だ。数百の自治体と行政情報誌を作ってきた実績があり、自治体の困りごとを最初に聞ける立場にいる。AIの案内係やふるさと納税の支援も、この付き合いから生まれた。人手が足りない自治体は、外に頼む仕事をこれから増やす。
会社は今期、営業利益を4億円に戻す計画だ。利益の出ない仕事を絞り、売上は1割減らしても利益を取りにいく。本社の費用を削れば、利益は大きく戻る。
財務は堅い。純現金と上場株、賃貸の不動産を合わせれば、時価総額の半分近くになる。帳簿の自己資本は時価総額の倍だ。利益が過去の平均の4%台に戻るだけで、値段は大きく見直される。
2015年には自己株の公開買付けをした実績もある。資産を株主に戻す選択肢を、経営は持っている。
紙の冊子は、高齢の住民には今も欠かせない。行政の案内がなくなることはない。自治体の仕事は景気にも強く、急に消えることはない。
ふるさと納税の支援も、返礼品の企画から発送まで受けられる会社は限られる。
慎重な見方
稼ぎの柱の電話帳は、毎年細る。スマホで調べる人が電話帳を開くことはない。行政情報誌の広告主である地方の商店も、人口とともに減る。2026年3月期は情報メディアの利益が4分の1減り、今期の第1四半期は営業赤字だった。
新しい事業はどれも利益が薄い。売上の4割の発送代行は利益率1%を切り、ダイレクトメールそのものも郵便料金の値上がりで減る。Web広告とシステムの開発は、AIが真っ先に置き換える人の作業の仕事だ。
本社の費用は年10億円を超え、物価と人件費で毎年増える。事業の利益が細れば、全社は赤字に沈む。数値目標を伴う中期計画も無く、立て直しの道筋は見えない。
配当は利益を上回る額を払い続けており、いずれ減らすか、資産を食うしかない。帳簿の自己資本は、稼がない資本である。
今期の売上の1割減も、仕事を絞った結果というより、量を保てなくなった表れかもしれない。財務の堅さは、稼ぎの弱さを隠しているだけだ。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方の方が強い。紙の媒体の縮みと、発送代行の薄い利益、重い本社の費用は、どれも10年続く構造の問題だ。強気の見方で確かなのは、自治体との付き合いと堅い財務だけで、どちらも利益を大きく変えるほどではない。確率は悲観の側に4割を置いた。強気の見方の論点は、計画の達成という形で確かめられた時に、確率を上の側へ動かせばよい。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 313 円18 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 122 円7 億円)。 今の値に割り戻すと 219 円12 億円、今との差 −70.9%、 期待の年率 −5.4%(資本コスト 8.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 5% | 1,082 円61 億円 | 178 円10 億円 | +67.0% | +5.3% | 63 円4 億円 |
| やや楽観 | 15% | 653 円37 億円 | 150 円8 億円 | +6.3% | +0.6% | 120 円7 億円 |
| 中立 | 40% | 262 円15 億円 | 150 円8 億円 | −45.4% | −5.9% | 165 円9 億円 |
| やや悲観 | 25% | 160 円9 億円 | 89 円5 億円 | −66.9% | −10.5% | 62 円4 億円 |
| 悲観 | 15% | 107 円6 億円 | 53 円3 億円 | −78.7% | −14.3% | 24 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 313 円18 億円 | 122 円7 億円 | −42.4% | −5.4% | 435 円24 億円 |
今の株価時価総額 755 円42 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 5% 本社を軽くし、自治体の外注を取り込んで利益が戻る 利益 5 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 1,082 円61 億円
10年後、サイネックスは自治体の仕事の外注先として地位を固めている。人手の足りない自治体から、AIの案内係やふるさと納税の運営、広報の仕事をまとめて受ける。行政情報誌は紙とデジタルの両方で続き、広告の量の減りは小さく抑える。
本社の費用は削り、利益の出ない発送代行の仕事は絞る。全社の営業利益は8億円に戻り、利益率は3%台半ばになる。
配当は少し増え、自己株の買い戻しも再び行う。それでも自己資本利益率は5%で、資本コストには届かない。資産の重さは変わらない。
自治体との付き合いが、紙からデジタルへの橋渡しの役を果たした筋書きだ。
- 情報メディア(行政情報誌・電話帳):数量 3.2(推定広告掲載件数(万件))× 価格 27(1件あたり平均単価(万円))→ 売上 85 億円・営業利益 14 億円。紙とデジタルの両方で残る
- DXサポート(ふるさと納税支援・Web・システム):数量 3.2(推定作業量(人月・千))× 価格 1.04(1人月あたり単価(百万円))→ 売上 33 億円・営業利益 3 億円。自治体の外注を取り込む
- ロジスティクス(DM・ポスティング):数量 79.5(推定取扱通数(百万通))× 価格 1.07(1通あたり単価(百円))→ 売上 85 億円・営業利益 2 億円。利益の出る仕事に絞る
- ヘルスケア(歯科材料の卸):数量 100(取扱量の指数(今=100))× 価格 1.34(値段の指数(今=1))→ 売上 14 億円・営業利益 1 億円。横ばい
- 投資(不動産賃貸):数量 100(賃貸面積の指数(今=100))× 価格 1.20(賃料の指数(今=1))→ 売上 1 億円・営業利益 1 億円。横ばい
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.2% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)4 億円。全体の PER 11.76 倍、時価総額 61 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の今期の計画(営業利益4億円)の2倍の水準。過去12年の利益率の上の方に戻る道で、紙の縮みを考えると小さく置いた。
やや楽観 15% 会社の計画どおり利益を4億円台に戻す 利益 3 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 653 円37 億円
10年後、サイネックスは会社が今期に掲げる水準の利益で落ち着いている。紙の媒体の縮みは続くが、行政情報誌は自治体の協働の事業として残る。DXサポートは自治体向けの仕事で少し伸びる。
発送代行は利益の出る仕事に絞り、量は減っても赤字にはしない。全社の営業利益は4億円台で、利益率は2%台にとどまる。
配当は今の額を続ける。自己資本利益率は3%台で、資本コストの3分の1ほどだ。資産は持ったまま、使い道は示されない。
本社の費用は削減の効果で物価ほどは増えず、利益を少し押し上げる。配当は払えるが、それ以上の還元の余力は無い。
- 情報メディア(行政情報誌・電話帳):数量 3.0(推定広告掲載件数(万件))× 価格 26(1件あたり平均単価(万円))→ 売上 78 億円・営業利益 12 億円。縮みが緩やか
- DXサポート(ふるさと納税支援・Web・システム):数量 2.7(推定作業量(人月・千))× 価格 1.02(1人月あたり単価(百万円))→ 売上 27 億円・営業利益 2 億円。自治体向けが少し伸びる
- ロジスティクス(DM・ポスティング):数量 75.1(推定取扱通数(百万通))× 価格 1.07(1通あたり単価(百円))→ 売上 80 億円・営業利益 1 億円。量を絞る
- ヘルスケア(歯科材料の卸):数量 97.0(取扱量の指数(今=100))× 価格 1.32(値段の指数(今=1))→ 売上 14 億円・営業利益 0 億円。横ばい
- 投資(不動産賃貸):数量 100(賃貸面積の指数(今=100))× 価格 1.20(賃料の指数(今=1))→ 売上 1 億円・営業利益 1 億円。横ばい
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.3% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)4 億円。全体の PER 11.76 倍、時価総額 37 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の今期の計画の水準で落ち着く道。計画の数値目標の実績が乏しく、前期も下方修正したので1割半に置いた。
中立 40% 紙の縮みと本社の重さで、利益は今の水準から動かない 利益 1 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 262 円15 億円
10年後、サイネックスは売上をほぼ保つが、利益は今と同じく小さい。電話帳はさらに細り、行政情報誌の広告も地方の商店の減りで2割減る。広告の値段は検索や地図と比べられ、物価ほどは上がらない。
DXサポートは、AIがWeb広告とシステムの開発の仕事を減らす一方、自治体向けの仕事が残り、ほぼ横ばいだ。発送代行は郵便料金の値上がりで量が2割減る。
本社の費用は削っても物価で増え、全社の営業利益は2億円弱にとどまる。配当は今の額を続けるが、利益を上回るので現金が少しずつ減る。自己資本利益率は1%台だ。
資産は持ったまま、株主に戻す動きは無い。
- 情報メディア(行政情報誌・電話帳):数量 2.7(推定広告掲載件数(万件))× 価格 26(1件あたり平均単価(万円))→ 売上 70 億円・営業利益 10 億円。電話帳と広告が細る
- DXサポート(ふるさと納税支援・Web・システム):数量 2.4(推定作業量(人月・千))× 価格 1.00(1人月あたり単価(百万円))→ 売上 24 億円・営業利益 1 億円。AIで人月が減り横ばい
- ロジスティクス(DM・ポスティング):数量 70.6(推定取扱通数(百万通))× 価格 1.07(1通あたり単価(百円))→ 売上 76 億円・営業利益 1 億円。郵便の値上がりで量が減る
- ヘルスケア(歯科材料の卸):数量 95.0(取扱量の指数(今=100))× 価格 1.30(値段の指数(今=1))→ 売上 13 億円・営業利益 0 億円。微減
- 投資(不動産賃貸):数量 100(賃貸面積の指数(今=100))× 価格 1.20(賃料の指数(今=1))→ 売上 1 億円・営業利益 1 億円。横ばい
倍率:事業の純利益 1 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 1.2% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)4 億円。全体の PER 11.76 倍、時価総額 15 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:紙の媒体の縮みと、AIエージェントによる広告と人月の仕事の置き換えが、新しい事業の伸びとほぼ打ち消し合う道。最も厚く置いた。
やや悲観 25% 紙の媒体が崩れ、全社が赤字に沈む 利益 −4 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 160 円9 億円
10年後、サイネックスは赤字の会社になっている。電話帳は発行をやめ、行政情報誌の広告も4割減る。自治体の発信はアプリとAIの案内係に移り、紙の冊子の出番は小さくなる。
DXサポートの人の作業の仕事はAIに置き換わり、発送代行もダイレクトメールの減りで量が3割減る。本社の費用を削っても追いつかず、全社は営業赤字になる。
配当は減らし、現金と上場株を赤字の穴埋めに使う。少数の株主には、資産の使い道を決める力がない。帳簿の自己資本は残っても、稼がない資産になる。
本社の費用の削減は、退職の費用を先に払う必要があり、効果は遅れて出る。
- 情報メディア(行政情報誌・電話帳):数量 2.0(推定広告掲載件数(万件))× 価格 24(1件あたり平均単価(万円))→ 売上 48 億円・営業利益 4 億円。紙の媒体が崩れる
- DXサポート(ふるさと納税支援・Web・システム):数量 1.9(推定作業量(人月・千))× 価格 0.96(1人月あたり単価(百万円))→ 売上 18 億円・営業利益 0 億円。AIに置き換わる
- ロジスティクス(DM・ポスティング):数量 61.8(推定取扱通数(百万通))× 価格 1.04(1通あたり単価(百円))→ 売上 64 億円・営業利益 0 億円。量が3割減る
- ヘルスケア(歯科材料の卸):数量 90.0(取扱量の指数(今=100))× 価格 1.25(値段の指数(今=1))→ 売上 12 億円・営業利益 0 億円。微減
- 投資(不動産賃貸):数量 100(賃貸面積の指数(今=100))× 価格 1.15(賃料の指数(今=1))→ 売上 1 億円・営業利益 1 億円。横ばい
倍率:赤字でPERは使えない。今の自己資本80.6億円に0.11倍。床の資産9億円(floor_assets)で置いた。
確率:今期の第1四半期は既に営業赤字。紙の媒体の縮みが速まり、AIエージェントが広告の営業を置き換えれば自然に起きる。AI代替の型の決まり(やや悲観+悲観で35%以上)に沿い、2割半に置いた。
悲観 15% 本業が消え、資産を食いつぶす 利益 −7 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 107 円6 億円
10年後、サイネックスは構造的に負けている。行政情報誌は自治体のアプリに置き換わり、広告の量は半分を割る。発送代行も大口の取引先を失い、赤字の仕事だけが残る。
毎年の赤字で現金は減り、借入の返済にも追われる。会社は事業の売却や拠点の閉鎖を重ね、退職の費用もかさむ。
配当は止まる。上場株と不動産を売っても、赤字の穴埋めに消える。少数の株主に残るのは、資産を食いつぶしたあとのごく一部だけだ。
自治体との長い付き合いも、紙の冊子が要らなくなれば値打ちを失う。帳簿の自己資本は、その過程で大きく減る。
株主に戻るものは、ほとんど残らない。
- 情報メディア(行政情報誌・電話帳):数量 1.5(推定広告掲載件数(万件))× 価格 22(1件あたり平均単価(万円))→ 売上 33 億円・営業利益 1 億円。自治体のアプリに置き換わる
- DXサポート(ふるさと納税支援・Web・システム):数量 1.3(推定作業量(人月・千))× 価格 0.88(1人月あたり単価(百万円))→ 売上 12 億円・営業利益 −1 億円。人月の仕事が消える
- ロジスティクス(DM・ポスティング):数量 53.0(推定取扱通数(百万通))× 価格 1.00(1通あたり単価(百円))→ 売上 53 億円・営業利益 −1 億円。大口を失う
- ヘルスケア(歯科材料の卸):数量 85.0(取扱量の指数(今=100))× 価格 1.20(値段の指数(今=1))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。微減
- 投資(不動産賃貸):数量 100(賃貸面積の指数(今=100))× 価格 1.10(賃料の指数(今=1))→ 売上 1 億円・営業利益 1 億円。横ばい
倍率:赤字でPERは使えない。今の自己資本80.6億円に0.074倍。床の資産6億円(floor_assets)で置いた。
確率:紙の媒体の事業が成り立たなくなる構造的な負け。純現金があり財務の存続の疑いは今は無いので1割半にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
情報メディア(行政情報誌・電話帳)
自治体と協働の行政情報誌『わが街事典』、50音別電話帳『テレパル50』、サイネージやポータル。地元の会社の広告でまかなう。
| 数量推定広告掲載件数(万件) | 価格1件あたり平均単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3.4 | 20 | 67 | 10 |
| 10 年後 中立 | 2.7 | 26 | 70 | 10 |
取り方:セグメントの売上66.94億円・利益10.32億円(2026/03期有報)。件数の開示は無く、1件の平均の広告の額を20万円と推定し約3.4万件とした。AIエージェント代替の「自社媒体の広告枠」の型で、中立の数量は電話帳の縮みと地方の商店の減りで10年0.8倍、価格は検索との比べ合いで物価を下回る1.30倍。
DXサポート(ふるさと納税支援・Web・システム)
自治体向けAIの案内係、ふるさと納税の支援、通販のサイト、Web広告とシステムの開発。
| 数量推定作業量(人月・千) | 価格1人月あたり単価(百万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.7 | 0.80 | 21 | 0 |
| 10 年後 中立 | 2.4 | 1.00 | 24 | 1 |
取り方:セグメントの売上21.36億円・利益0.39億円(同)。作業量の開示は無く、1人月80万円と推定し約2,700人月とした。AIエージェント代替の「人月」の型の上限寄りで、ふるさと納税の支援とAIの案内係は自治体との付き合いで残るとみて中立の数量0.9倍、価格1.25倍。
ロジスティクス(DM・ポスティング)
子会社エルネットなどによる企業のダイレクトメールの発送代行とポスティング。
| 数量推定取扱通数(百万通) | 価格1通あたり単価(百円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 88.3 | 0.80 | 71 | 0 |
| 10 年後 中立 | 70.6 | 1.07 | 76 | 1 |
取り方:セグメントの売上70.67億円・利益0.48億円(同)。通数の開示は無く、1通の平均単価を0.8百円と推定し約8,800万通とした。中立の数量は郵便料金の値上がりと紙の販促の減りで10年0.8倍、価格は物価並み。2027/03期の会社予想は全社で売上1割減。
ヘルスケア(歯科材料の卸)
子会社マルヤマ歯科商店の歯科医療機器・歯科材料の卸。
| 数量取扱量の指数(今=100) | 価格値段の指数(今=1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 1.00 | 11 | 0 |
| 10 年後 中立 | 95.0 | 1.30 | 13 | 0 |
取り方:セグメントの売上10.69億円・利益0.32億円(同)。数量は指数で、中立は歯科医院の数の横ばい〜微減で0.95倍、価格は物価をやや下回る1.30倍。
投資(不動産賃貸)
持っている不動産の賃貸。
| 数量賃貸面積の指数(今=100) | 価格賃料の指数(今=1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 1.00 | 1 | 1 |
| 10 年後 中立 | 100 | 1.20 | 1 | 1 |
取り方:セグメントの売上1.21億円・利益0.71億円(同)。数量は指数で横ばい、賃料は物価を下回る1.2倍。建物の償却は物価で増えないので利益率は少し上がる。
リスクと懸念
紙の媒体の縮み
電話帳はスマホの検索に置き換わり、毎年細る。行政情報誌の広告主である地方の商店も人口とともに減る。2026年3月期は情報メディアの利益が4分の1減った。
AIエージェントによる置き換え
地元の商店の広告の制作と営業、Web広告とシステムの開発は、人の作業時間で売る仕事だ。AIエージェントが広告を作り出し先を選ぶようになれば、量も値段も下がる。
重い本社の費用
本社の費用は年10億円を超え、事業の利益の大半を食う。物価と人件費で毎年増えるので、事業の利益が細れば全社はすぐ赤字に沈む。
発送代行の薄い利益
売上の4割を占める発送代行は利益率1%を切る。郵便料金の値上がりでダイレクトメールが減れば、量も利益も削られる。
利益を上回る配当
配当は利益を上回る額を払っており、配当性向は145%だった。利益が戻らなければ、配当を減らすか、手元の現金を削り続けるしかない。
今後の分かれ目
- 今期に計画どおり営業利益4億円を出したら
- 利益の出ない仕事を絞る効果が確かめられ、やや楽観の確率を少し上げる。
- 情報メディアの利益がさらに2年続けて減ったら
- 紙の媒体の縮みが速いと見て、中立の数量を下げ悲観の確率を上げる。
- 本社の費用の削減を数値で示したら
- 中立の本社の費用を下げ、利益率を上げる。
- 上場株や不動産を売り、自己株の買い戻しに回したら
- 余った現金の戻り方を1.0に近づける。
- 配当を減らしたら
- 利益が戻らない兆しと見て、悲観の側に確率を移す。
見ておくもの
- 情報メディアのセグメント利益
- 本社の費用(全社費用)の額
- ロジスティクスの売上と利益率
- 配当の額と配当性向
- 自治体向けDXの受注
倍率と資本コストの決め方
5つの事業に分け、数量は推定で、情報メディアとDXはAIエージェント代替の型で縮め、価格は物価を下回る所に理由を書いた。中立の営業利益率0.9%は過去12年の範囲内。倍率はROEがkを大きく下回るので1÷kの7割、悲観側は資産の床で置いた。今のPBR0.5倍やPER80倍台から逆算していない。帳簿の自己資本は床にしていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 8.9→11.76 倍・やや楽観 PER 8.3→11.76 倍・中立 PER 7.8→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にquality+1.5%。黒字で純現金、財務の存続の疑いは無いので上乗せは置かない。