結論
エムアップは、アーティストやタレントの公式ファンクラブを裏方で運営する会社だ。会員から月々の会費を預かり、電子チケットとグッズ販売で稼ぎを厚くする。直近の売上は 317 億円、営業利益は 50 億円で、経常利益は 7 期続けて最高を更新している。筆者の結論は、今の値段は 10 年の本質価値と近く、適正の範囲というものだ。
事業は筋がいい。会員が増えるほど、解約が少なく、毎月の売上が積み上がる。システムは多くの案件で使い回せる。だから成長に必要な資金が小さく、自己資本利益率は 30% 台に達している。
一方で、稼ぎの源は他人の人気にある。大型案件はファンクラブの会費の多くを自分の取り分として要求する。実際、直近は課金会員が約 2 割増えたのに、利益率は 16% 台で動かなかった。筆者がいちばん気にしているのは、ここだ。
10 年の中立は、会員が 2 倍弱に増え、営業利益は今の 2.3 倍になる姿である。ただし、強い案件を失う筋書きでは利益は 3 分の 1 に縮む。伸びる力と、案件に握られる弱さを両方見て、確率をやや慎重に置いた。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、エムアップは良い事業の特徴を備えている。会費という毎月の売上、軽い設備、高い自己資本利益率。成長に資金が要らず、稼いだ利益のほとんどを株主に回せる。
問題は、堀の持ち主がだれかだ。会員を引きつけているのはアーティストの人気で、運営会社ではない。大型案件の取り分が上がるたび、利益は少しずつ削られる。直近も、会員が 2 割増えたのに営業利益率は動かなかった。成長の果実を、案件の側が持っていっている。
筆者は、この事業を 10 年持ち続けたいかと自問する。答えは、会員の基盤が育てば残るが、案件を失えば脆い、というものだ。わからない部分が大きく、確信度は高くない。
安全域は無い。10 年の本質価値は今の時価総額と近い。上振れの余地は大きいが、それは強い案件を長く取り続けた場合に限られる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心はファンクラブ・ファンサイト事業で、売上の 8 割弱を占める。アーティスト側の依頼を受けて公式サイトを作り、会員の募集、会費の徴収、コンテンツの配信までを請け負う。会員が払う会費から、アーティスト側へ取り分を渡し、残りが運営会社の売上と利益になる。
電子チケット事業は、ファンクラブの会員向けにライブの先行受付と発券を行う。2018 年に買収した EMTG が土台だ。顔認証による本人確認と、公式のチケットトレード(定価での譲渡の仕組み)が特徴で、直近の発券枚数は過去最高だった。
EC 事業は、CD・グッズの販売とオンラインくじである。売上は小さく、くじ商品の比率が上がって利益率は薄い。ファンクラブから客を送る出口の役割で、単体の稼ぎ頭ではない。売上全体に占める比率は 1 割に届かない。
3 つは連動する。会員が増えるとチケットとグッズの母数が増え、1 人から取れる額が上がる。グループは、Fanplus・チケットプラスなどの子会社を持株会社の下に置く形で、2020 年 4 月に持株体制へ移った。米国に法人を作り、海外の会員も年 2 割台で増えている。
優良さと弱いところ
堀の中心は、会員を抱えた運営の実績と、案件を運用するシステムの蓄積だ。ファンクラブは一度入った会員が簡単には抜けない。アーティストの側も、会員の移行とシステムの入れ替えには手間がかかる。この切り替えの面倒さが、長く続く収益の土台になっている。
弱みは 2 つある。1 つは、案件の人気に会員数が左右される点だ。アーティスト 1 組の活動停止が、そのまま解約につながる。もう 1 つは、取り分の交渉力が大型案件の側にある点だ。直近もロイヤリティの負担が重く、増収ほどには利益が伸びなかった。
資本の効率は高い。会費とチケット代金を一時預かる商売の性質で、手元の現金は多いが、これは自由に使えるお金ではない。借入は重くなく、財務の不安は小さい。
経営は代表の美藤宏一郎氏が率い、同氏は約 1 割強を持つ筆頭の個人株主だ。株主還元は増配の方向だが、自社株買いは見つからない。競合は、低手数料のFanclove、ifan、QON などがあり、堀は絶対ではない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
市場は 2 つに分けて見る。1 つはファンクラブ運営で、国内のサブスク型コミュニティの会費は、矢野経済の調べで 2021 年度に 415 億円だった。ただし音楽以外へ広がる最近の姿は反映されておらず、実態はもっと大きい。筆者は、芸能の分野だけで数千億円規模と見る(根拠が弱い推定である)。
もう 1 つがライブ市場だ。ぴあ総研の調べでは、2025 年のチケット販売額は 8,564 億円と 3 年続けて過去最高になった。動員は 9,223 万人、1 人あたりの単価は前年比で 4.5% 上がった。2035 年には 1 兆円台に達する見込みだ。
競合は、運営の請負では Fanclove(会費の 8% だけを取る低価格型)、ifan、QON、CAMPFIRE や pixiv FANBOX など。ファンクラブの導入実績は、自社が約 300 超のアーティストとされる。チケットではぴあ、イープラス、ローチケなど大手が強い。
10 年の分かれ目は 2 つだ。1 つは、AI やアプリで個人でも運営ができるようになり、手数料が下がる恐れだ。もう 1 つは、推し活がアニメや配信者へ広がり、運営の需要がさらに増える可能性だ。人口は減るが、1 人あたりの推し活の支出は増える。
資本政策と M&A
資本政策は、事業の成長を優先し、増配で還元する形だ。配当は 26 年 3 月期が期末一括で、27 年 3 月期は前期から 2 割増の予定(2026 年 1 月に 1 株を 2 株に分割している)。純利益に対する比率は 5〜6 割で、自社株買いは確認できない。
M&A は小さい。2018 年に EMTG を株式交換で子会社にして、電子チケットに入った。このとき株価が上がり、会計上の取得額が膨らんで、2019 年 3 月期に大きな減損を出した。実際のお金が出ていく損ではないが、2019 年の赤字はこれが原因だ。
投資有価証券の償還で、27 年 3 月期の第 1 四半期に約 4 億円の損を出した。小さな金額だが、資金の運用は本業の外にある。買収されるリスクは、筆頭株主が信託口で、代表が約 1 割強を持つ構成からみて、可能性は限られる。時価総額が 600 億円台と小さいため、同業や大手エンタメ企業の目に留まる余地は残る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ファンクラブは、一度入ると抜けにくい。既存サイトの課金会員は約 2 割増え、新規のファンクラブ開設も 1 割強増えた。Fan+Kit を使うアーティストも 3 割増えた。会員の伸びは、利益に直結する。システムは使い回せるので、案件が増えるほど 1 件あたりの費用が下がる。
電子チケットは、利益率が 30% を超えた。発券枚数は過去最高で、公式のチケットトレードは非音楽の興行にも広がっている。ライブ市場は 8,564 億円と 3 年続けて過去最高で、2035 年に 1 兆円を超える見込みだ。市場の追い風の中で、会員の基盤を持つ会社は有利になる。
海外の会員も約 24% 増え、米国法人も作られた。推し活はアニメ・スポーツ・配信者へ広がっており、運営の請負の需要は音楽の外へ伸びる。財務は軽く、自己資本利益率は 30% を超える。10 年で営業利益が 3 倍を超える可能性は、十分にある。会員の積み上がりは複利のように効き、毎年の新規案件が土台を厚くする。ここまで揃った会社は、国内では数少ない。
慎重な見方
稼ぎの源は他人の人気で、運営会社に価格を決める力がない。直近は課金会員が約 2 割増えたのに、利益率は 16% 台で動いていない。大型案件のロイヤリティが重くなり、増収の果実を案件の側が持っていくからだ。案件の規模が大きいほど、この傾向は強まる。
技術面でも守りは薄い。ファンクラブの運営システムは、Fanclove のように会費の 8% だけで請け負う競合がすでにある。AI で作る費用が下がれば、個人や事務所が自前で運営できるようになる。大型案件が一つ離れれば、会員の 1 割以上が一度に消えかねない。
時価総額は 600 億円台と小さく、大型案件の 1 つが利益を左右する。自己資本比率は 30% を切り、電子チケットではぴあ・イープラスなど大手が強い。10 年で今の高い成長が続くと見るのは、楽観すぎる。成長の果実を握るのは案件の側で、運営会社は人気の乗り物にすぎないという見方だ。営業利益率が 16% から動かない事実が、それを物語っている。
どちらに重みを置いたか
どちらにも一理ある。成長の実績は強気が上だが、取り分を握られる構造は慎重な見方が上だ。筆者は、利益率が上がらないという慎重な指摘のほうが重いと判断し、確率を悲観側へやや寄せた。やや楽観を 20%、中立を 33%、やや悲観を 27% に置き、悲観は 13% とした。強い案件を失う筋書きは現実にあるが、会員の基盤が 10 年で崩れる証拠もない。結論は、今の時価総額に近い、適正の範囲となった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,742 円1,217 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 321 円224 億円)。 今の値に割り戻すと 1,025 円716 億円、今との差 +16.6%、 期待の年率 +8.9%(資本コスト 8.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 3,907 円2,730 億円 | 522 円365 億円 | +403.9% | +17.6% | 310 円217 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,946 円2,058 億円 | 435 円304 億円 | +284.7% | +14.4% | 676 円472 億円 |
| 中立 | 33% | 2,108 円1,472 億円 | 354 円247 億円 | +180.0% | +10.8% | 812 円567 億円 |
| やや悲観 | 27% | 606 円423 億円 | 235 円164 億円 | −4.3% | −0.4% | 227 円159 億円 |
| 悲観 | 13% | 155 円108 億円 | 133 円93 億円 | −67.3% | −10.6% | 37 円26 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,742 円1,217 億円 | 321 円224 億円 | +134.7% | +8.9% | 2,063 円1,441 億円 |
今の株価時価総額 879 円614 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 7% 推し活の基盤として定着し、会員が 1,000 万人に迫る 10 年 利益 130 億円 · PER 20.6 倍 · 株価時価総額 3,907 円2,730 億円
ファンクラブの運営が、音楽だけでなくアニメ・スポーツ・配信者へ広がる。会員は 1,000 万人規模まで増え、海外の会員も厚くなる。大型の案件ほど取り分を要求してくるが、会員数の伸びが重みを上回る。
チケットとグッズの送客が噛み合い、会員 1 人あたりの稼ぎが上がる。電子チケットの発券枚数は倍近くになり、本人確認とチケットトレードが標準の仕組みとして使われる。
固定費の重いシステムは薄まり、利益率は 20% 近くに乗る。ただし伸びの前提は、強い IP を取り続けることに尽きる。この筋書きは、その成功が 10 年切れない形である。
- ファンクラブ・ファンサイト:数量 1,050(課金会員(万人・年間の平均換算))× 価格 9,163(会員 1 人あたり年間の売上(円))→ 売上 962 億円・営業利益 192 億円。課金会員 1,050 万人×年会費の取り分(物価 1.4 倍)
- EC(くじ・グッズ):数量 180(購入者数(万人・年間))× 価格 4,211(1 人あたり年間の購入額(円))→ 売上 76 億円・営業利益 6 億円。購入者 180 万人
- 電子チケット:数量 2,280(発券枚数(万枚・年間))× 価格 513(1 枚あたりの売上(円))→ 売上 117 億円・営業利益 39 億円。発券 2,280 万枚×手数料 1.4 倍
倍率:事業の純利益 130 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 37.4% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 22.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.6 倍。全体の PER 20.6 倍、時価総額 2,676 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:強い IP を長く取り続ける前提が、10 年途切れない必要がある。直近 7 期の連続増益と会員の伸びを見ても、確率は他の同領域の会社の 6〜7% と揃えた。
やや楽観 20% 会員も取扱も着実に伸び、チケットとの相乗効果が利益率を押し上げる 10 年 利益 98 億円 · PER 20.3 倍 · 株価時価総額 2,946 円2,058 億円
新しい案件の獲得が続き、会員は 2 倍強に増える。大型案件の移管も取れるが、取り分の水準は高止まりする。
電子チケットは、公式のチケットトレードが非音楽の興行にも広がり、発券枚数が 6 割ほど増える。ECはくじ商品が中心で、利益率は低いままだ。
利益率は 19% 手前まで上がる。システムと運営の固定費が薄まる分が、ロイヤリティの重さを上回る。中立より良いが、構造が変わるほどの話ではない。システムと運営の固定費が薄まる分が、ロイヤリティの重さを上回る。会員 1 人あたりの稼ぎも、チケットとグッズの送客で少し上がる。
- ファンクラブ・ファンサイト:数量 863(課金会員(万人・年間の平均換算))× 価格 8,967(会員 1 人あたり年間の売上(円))→ 売上 773 億円・営業利益 145 億円。課金会員 860 万人×同 1.37 倍
- EC(くじ・グッズ):数量 153(購入者数(万人・年間))× 価格 4,121(1 人あたり年間の購入額(円))→ 売上 63 億円・営業利益 4 億円。購入者 153 万人
- 電子チケット:数量 1,920(発券枚数(万枚・年間))× 価格 502(1 枚あたりの売上(円))→ 売上 96 億円・営業利益 31 億円。発券 1,920 万枚
倍率:事業の純利益 98 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 34.9% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 21.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.3 倍。全体の PER 20.34 倍、時価総額 2,002 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会員の伸びと送客の相乗効果は実績がある。ただ取り分が重く、利益率が大きく上がる確度は中程度。同領域の 17〜20% に揃えた。
中立 33% 会員は 2 倍弱に伸びるが、取り分の重さで利益率は横ばいの 10 年 利益 71 億円 · PER 20.0 倍 · 株価時価総額 2,108 円1,472 億円
ファンクラブの会員は 2 倍弱に増える。ライブ市場の拡大と、新しい案件の獲得が支えになる。ただ、人口は減り、大型案件の取り分は上がる。会員 1 人あたりの会費は物価並みに上がるが、利益率はほぼ横ばいだ。
電子チケットは発券枚数が 3 割半ば増え、利益率は 30% 台を保つ。ECはくじ商品に偏り、小さな脇役のままである。
営業利益は今の 2.3 倍ほどになる。成長は続くが、市場を取り切る話ではなく、取り分と競合に削られながら進む。それが筆者の中心の見立てだ。配当は利益の半分ほどを続け、残りで自己資本が積み上がる。大型案件の更新が続くという前提は、確率の面で最も揺らぎやすい部分だ。
- ファンクラブ・ファンサイト:数量 675(課金会員(万人・年間の平均換算))× 価格 8,770(会員 1 人あたり年間の売上(円))→ 売上 592 億円・営業利益 104 億円。課金会員 675 万人×同 1.34 倍
- EC(くじ・グッズ):数量 126(購入者数(万人・年間))× 価格 4,031(1 人あたり年間の購入額(円))→ 売上 51 億円・営業利益 3 億円。購入者 126 万人
- 電子チケット:数量 1,620(発券枚数(万枚・年間))× 価格 491(1 枚あたりの売上(円))→ 売上 80 億円・営業利益 25 億円。発券 1,620 万枚
倍率:事業の純利益 71 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 32.1% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 20.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.0 倍。全体の PER 20.02 倍、時価総額 1,413 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会員の拡大は続くが、取り分と競合で利益率は横ばい。最も重みを置く筋書き。
やや悲観 27% 大型案件の取り分交渉と低手数料の競合で、伸びが鈍り利益率が下がる 10 年 利益 35 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 606 円423 億円
会費の取り分を巡って大型案件との交渉が厳しくなり、運営側の取り分が下がる。低手数料のFanclove のような競合も、中堅の案件を取っていく。会員は 25% ほどしか増えない。
会費は物価に追いつかず、10 年で 1.25 倍にとどまる。電子チケットも、発券枚数は横ばいに近い。
システム費は物価で上がるのに、売上の伸びは鈍い。営業利益率は 14% まで下がる。事業は残るが、今の高い伸びは過去の話になる。配当は利益の半分を保つが、利益そのものが伸びないため、株主への還元の総額は中立の 3 分の 2 にとどまる。
- ファンクラブ・ファンサイト:数量 469(課金会員(万人・年間の平均換算))× 価格 8,181(会員 1 人あたり年間の売上(円))→ 売上 384 億円・営業利益 54 億円。課金会員 470 万人×同 1.25 倍(物価に届かない)
- EC(くじ・グッズ):数量 90.0(購入者数(万人・年間))× 価格 3,760(1 人あたり年間の購入額(円))→ 売上 34 億円・営業利益 1 億円。購入者 90 万人
- 電子チケット:数量 1,260(発券枚数(万枚・年間))× 価格 458(1 枚あたりの売上(円))→ 売上 58 億円・営業利益 16 億円。発券 1,260 万枚
倍率:ROE 13.7%。事業の ROE は k 8.0% を超え、正当化 PER は 15.8 倍。ただし筋書きでは取り分の下落と競合で利益が頭打ちになり、残る超過収益は薄い。構造的に弱った事業として上限の約 6.6 割(10.5 倍)に置いた。7 割へは引き上げない。
確率:大型案件への依存と低手数料の競合は現実の脅威で、強気側より少し厚く 27% とした。quality の寿命と同じ理由では上げていない。
悲観 13% 大型の推し活が自前運営へ流れ、会員も取り分も細る 10 年 利益 12 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 155 円108 億円
大型の案件が、自前のアプリや他のプラットフォームへ移る。人気の波で個別のファンクラブも解約が続き、会員は 2 割減る。残った案件も、運営側の取り分は削られる。
電子チケットは、大手のチケット会社と本人確認の標準化に押され、発券枚数が 2 割減る。ECの利益はほぼ消える。
システムと人員の固定費は残り、営業利益率は 9% まで落ちる。利益は今の 3 分の 1 ほどになる。1 社の IP 依存という構造の弱さが、そのまま出る筋書きだ。会員の基盤が縮むため、新しい案件を取ってもすぐには穴を埋められない。配当は維持されるが、利益の水準が下がるので総額は小さくなる。
- ファンクラブ・ファンサイト:数量 300(課金会員(万人・年間の平均換算))× 価格 7,527(会員 1 人あたり年間の売上(円))→ 売上 226 億円・営業利益 20 億円。課金会員 300 万人×同 1.15 倍
- EC(くじ・グッズ):数量 63.0(購入者数(万人・年間))× 価格 3,459(1 人あたり年間の購入額(円))→ 売上 22 億円・営業利益 0 億円。購入者 63 万人
- 電子チケット:数量 960(発券枚数(万枚・年間))× 価格 422(1 枚あたりの売上(円))→ 売上 40 億円・営業利益 9 億円。発券 960 万枚
倍率:ROE 6.4% は k 8.0% 以下で、PER の上限は 1÷k = 12.5 倍。利益が縮み続ける事業で、ためた利益の価値は額面未満。上限の 7 割強の 9.0 倍に置いた。純現金は預かり金の性質で、床に使わない。
確率:大型 IP の流出と取り分の下落が重なる構造的な負け。長期の実績は良く、決定的な代替は見えないので 13%(同領域の 13〜18% の下端)。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ファンクラブ・ファンサイト
アーティスト・タレントの公式ファンクラブの運営。会員から会費を預かり、案件側に取り分を払って、残りが運営の収益になる。
| 数量課金会員(万人・年間の平均換算) | 価格会員 1 人あたり年間の売上(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 375 | 6,545 | 245 | 44 |
| 10 年後 中立 | 675 | 8,770 | 592 | 104 |
取り方:開示は売上のみで会員数は非公開。月会費は数百円台と推定し、売上 245 億円から会員を約 375 万人(年平均)と逆算した推定。ファンクラブ・EC の合計の利益 45.15 億円から、EC を 1.6 億円と置いて差し引いた。会費は案件側が決め、物価並みの 10 年 1.34 倍が中立。 数量は実物(課金会員数)で、名目の市場の伸びからは置いていない。
EC(くじ・グッズ)
CD・グッズ、オンラインくじ「Fanpla Chance」の販売。ファンクラブからの送客の出口で、くじの比率が上がり利益率は低い。
| 数量購入者数(万人・年間) | 価格1 人あたり年間の購入額(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 90.0 | 3,008 | 27 | 2 |
| 10 年後 中立 | 126 | 4,031 | 51 | 3 |
取り方:購入者数は非公開。売上 27.07 億円を 1 人あたり年 3 千円ほどとして約 90 万人と推定した。くじは原価が重く利益率は 6% 前後と置いた。
電子チケット
ファンクラブ会員向けのライブチケットの先行受付・電子発券・公式のチケットトレード。1 枚ごとの手数料で稼ぐ。
| 数量発券枚数(万枚・年間) | 価格1 枚あたりの売上(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,200 | 367 | 44 | 14 |
| 10 年後 中立 | 1,620 | 491 | 80 | 25 |
取り方:発券枚数は非公開。ぴあ総研の 2025 年の動員 9,223 万人に対し、約 1,200 万枚(13%)と推定し、売上 43.99 億円から 1 枚あたり 4 百円弱と逆算した。数量は市場の動員とシェアで、価格は手数料の物価並みの上昇(10 年 1.34 倍)。
リスクと懸念
大型案件の離脱
売上の多くを少数の大型案件が占める可能性が高い。人気の変動、活動停止、自前運営への移行が起きると、会員と利益が一度に減る。10 年の悲観はこの筋書きだ。
取り分の上昇
大型案件のロイヤリティ負担は、直近の決算でも利益率の重しだった。会員が増えても、案件の取り分が上がれば利益は増えない。10 年の中立でも、この重さは残る前提だ。
低手数料の競合
Fanclove は会費の 8% だけを取る。AI で作る費用が下がると、中堅の案件の価格交渉力が上がり、運営の手数料が下がる。技術の転換点で、価格が構造的に下がる恐れがある。
推し活の人気の移ろい
会員の課金は、アーティストの人気という外部要因に依存する。特定の分野が飽きられると、会員が数年で減る。分散が進むほど影響は薄まるが、単一の案件の依存は残る。
チケット・課金のルール変更
チケットの転売規制や、課金の表示規制、個人情報の取り扱いルールが変わると、チケットトレードや会員の情報の使い方が制限される。電子チケットの利益率に直結する。
小型の時価総額と流動性
時価総額が 600 億円台と小さく、代表と信託口で保有が偏る。株価の変動は事業以上に大きくなりうる。本質価値と値動きは別なので、安全域の判断には効かないが、保有の苦しさにはなる。
今後の分かれ目
- 大型案件が自前運営やほかのプラットフォームへ移る
- 会員と利益が一度に減る。やや悲観から悲観の筋書きに近づく。
- ロイヤリティの率が下がり、利益率が 20% 近くに上がる
- 会員の伸びが利益に直結する形に変わり、やや楽観以上の筋書きに近づく。
- アニメ・スポーツ・配信者の案件が全体の 3 割を超える
- 音楽の人気に左右される構造が薄まり、悲観の確率を下げる材料になる。
- 電子チケットの公式トレードが大型興行の標準になる
- 手数料の稼ぎが 1 枚あたりで増え、チケット事業の利益率の維持に効く。
- 低手数料の競合が中堅の案件を大量に取る
- 会費の単価が物価に追いつかず、中立の価格 1.34 倍が崩れる。
見ておくもの
- 課金会員数の伸び(既存サイトと新規開設)と、海外会員比率
- コンテンツ事業の利益率(ロイヤリティ負担の増減)
- 電子チケットの発券枚数とチケットトレードの成立枚数
- 大型案件の継続・契約更新に関する開示
- 配当と自社株買いの方針(増配の継続と還元性向)
倍率と資本コストの決め方
自己資本は今の値に期間の純利益を足し、還元の半分を引いて流した(ROE は結果)。資本コスト 8.0%(基本 7.5% に quality +0.5%)、g 4.0%。ROE が k を超える筋書きは、超過分が先で半分に薄れるとして利益ベースの正当化 PER を出し、楽観は上限の 9 割、やや楽観は 8 割、中立は 7.5 割に置いた。やや悲観・悲観は構造的な負けとして上限の 7 割に届かせていない。今の PER・PBR や同業の倍率は使っていない。純現金は預かり金性なので床にも足さず、時価総額の比較は最後に行った。新リース会計基準は事務所の賃借が中心で影響は小さく、10 年後の数字は今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 17.5→20.6 倍・やや楽観 PER 15.1→20.34 倍・中立 PER 13.5→20.02 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。