結論
アディッシュは、企業の顧客対応、カスタマーサクセス、SNS監視、学校のネットトラブル対策を請け負う会社である。筆者の結論は「割高」だ。企業が顧客との関係を維持する必要は10年後もなくならない。しかし、その仕事を人の時間で請け負い続ける必要は急速に小さくなる。今の株価には、同社が人手中心の事業から高収益のAI活用型事業へ転換できるという期待が相当に含まれている。
2025年の売上高は約37億円だったが、営業利益はほぼゼロである。2023年と2024年には赤字を計上し、2025年も十分な利益を取り戻せなかった。2026年は売上41億円、営業利益0.7億円への回復を見込む。ただし、2026年中間期も営業損益は小幅赤字だった。事業規模が広がっても利益が伴わないことが、長期株主にとって最大の問題である。
希望がないわけではない。2025年の継続的な取引による売上は35.6億円で、顧客数は562社だった。2026年中間期には月次解約率が1.2%へ改善した。Zendesk、Fin、Gainsightなどを使う顧客支援の実務経験を持ち、2026年9月にはFCEと資本業務提携を結んだ。学校や自治体向けには、生成AIだけでは完結しにくい人間の判断も残る。
それでも、顧客が毎年費用を払うことと、同じ金額を10年後も払うことは別である。AIエージェントが問い合わせ、監視、記録作成、顧客分析の大半を処理できれば、契約が残っても請求できる工数は減る。中立の2036年売上は約34億円、営業利益は約1億円と見る。10年後の中立的な稼ぐ力だけで正当化できる時価総額は約8.3億円で、足元の約13.7億円には届かない。留保現金の価値を考慮しても、事業の変化と希薄化を引き受けるだけの十分な安全域は確認しにくい。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の立場から見ると、最初の問いは「顧客の問題を解決する力を、会社自身が所有しているか」である。アディッシュには顧客との実務関係、教育研修の経験、困難な相談に対応する人材がある。これは事業を始めるためには大切な資産だ。しかし、そこで生まれたノウハウが競合の進出を長期間防ぎ、価格を引き上げる力に変わっているかといえば、まだ弱い。
AIエージェントは、同社にとって道具であると同時に競争相手でもある。人が処理してきた問い合わせをAIが解決すれば、契約先の利益は増える。その価値の一部をアディッシュが成果報酬として受け取れるなら、従業員を増やさずに利益を伸ばす道が開ける。しかし、顧客がAIの利用料を直接ソフト会社に払い、同社には導入や監督の手数料だけを払う構造なら、十分な超過利益は残らない。価値を作ることと、その価値を自社の収益として獲得することを区別すべきだ。
もう一つの条件は、稼いだ利益を再投資するほど既存株主が豊かになることである。赤字が続いた時期を経て、近年は資本調達で自己資本を回復させている。過去の株数増加を考えれば、経営がいう成長のうち、どれだけが既存株主に帰属するのかを厳しく見る必要がある。将来の利益が資本コストを上回らなければ、成長するだけでは本質価値は増えない。
現時点で安心して10年間保有できるほどの堀も、長期の再投資利回りの実績も確認できない。したがって、2030年の目標をそのまま恒久的な利益水準に延ばすべきではない。顧客がAIを使う時代に、同社が欠かせない運用基盤へ変われるかを先に確かめ、その成果に見合う値段でのみ評価する姿勢が適切である。
何で稼ぐ会社か
アディッシュは会計上、カスタマーリレーション事業の単一セグメントである。ただし、顧客に提供するサービスの性質は異なる。2025年の開示では、グロース支援が25.52億円、アダプション支援が11.17億円、その他が0.27億円だった。以下では、この開示区分に従い収益を分ける。グロース支援が約69%を占めるため、全社の価値を左右するのは、企業の顧客支援業務をどれだけ効率よく提供できるかである。
グロース支援では、顧客企業に代わって問い合わせに対応し、サービスの導入・定着を手伝い、解約防止や追加利用につなげる。顧客はSaaS企業だけでなく、大企業や製造業にも広がっている。2026年には三菱電機の導入支援事例も紹介された。収益は主に継続契約から入るが、現状は人員を配置して支援する部分が大きい。Zendeskの構築支援やAIツールの導入も扱うものの、AIによる成果報酬やソフト販売手数料が全社売上の何割を占めるかは開示されていない。
アダプション支援は、企業のSNSやオンラインコミュニティの安全を守り、学校でのネットいじめ、誹謗中傷、相談対応などを支える。投稿の監視、風評対策、インターネット利用の教育、匿名相談などが含まれる。学校・自治体では実際の相談への責任ある判断が必要で、完全自動化しにくい部分が残る。他方、投稿の分類や定型報告、危険語の抽出はAIが得意とするため、従来の監視工数には減少圧力がかかる。
同社は、問い合わせ件数や顧客の成果に応じて料金を受け取るBPaaSへの転換を掲げる。これは人員数の増加に頼らず売上を伸ばすための正しい方向である。しかし、世界的なAI製品の技術と価格を握るのはFinやZendeskなどの提供元だ。アディッシュの取り分が販売・導入手数料にとどまれば、顧客の生産性が上がるほど同社の売上が減ることも起こりうる。
2025年の主要顧客であるストライプジャパンへの売上は約5.17億円で、全社の約14%を占めた。この顧客関係は営業上の強みだが、契約条件の変更が会社全体に及ぶ弱みでもある。子会社アディッシュプラスは地方拠点を通じて業務を担っている。人的サービスの実行力はあるが、独自製品が利用者を囲い込むプラットフォーム型の事業とは区別して考える必要がある。
優良さと弱いところ
同社の長所は、継続的な顧客接点と、問題が起きた際に人間が対応できる現場能力である。2025年の継続収益比率は96.1%だった。2026年中間期の月次解約率は1.2%で、前年同期の1.5%から改善した。新規顧客の獲得と既存顧客への追加提案によって、顧客当たり年間売上も増えている。この実務の積み重ねは、初めて顧客支援を外注する企業に対する信用につながる。
しかし、これを強い堀、つまり競争相手が容易には越えられない障壁と呼ぶには証拠が足りない。月次解約率1.2%は単純に年率換算すると約13%の解約に相当し、年5%未満という強い顧客固定力の水準ではない。顧客の業務記録の正本や主要なソフト基盤を同社が独占的に保有するわけでもない。顧客当たり売上の増加も、追加受注による効果と既存サービスの値上げを分離できず、値決め力の証拠にはならない。
利益の履歴はさらに慎重な評価を求める。2019年には営業利益率5%台を記録したが、2023年と2024年には営業赤字となり、2025年はほぼ収支均衡だった。2025年の自己資本は約5.4億円にとどまり、売上37億円という規模に比べて厚くない。純現金約2.6億円は当面の資金繰りを支えるものの、従業員給与、外注費、事務所賃料を負担するBPO事業であるため、全額を自由に株主へ戻せる余剰資産とはみなせない。
再投資の成績もまだ確立していない。2025年の研究開発費は約0.51億円、設備投資は約0.09億円だったが、2023年以降の累積的な利益創出は乏しい。投資額が小さいこと自体は利点でも、投じた資本が資本コスト以上の追加利益を生んでいるという実証にはならない。経営が目指す省人化と成果報酬への転換が実際の売上総利益率に表れるまでは、競争上の地位を「弱い堀」と評価する。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
需要そのものは長く残る。企業は顧客の継続利用を促し、ネット上のトラブルを防ぎ、苦情や不正を処理し続ける必要がある。しかし、需要の存在と外部BPO企業の収益成長は同じではない。日本の非IT系BPO市場は、矢野経済研究所によると2024年度に約1兆9,566億円だった。市場全体ではデジタル化や人手不足による外注需要が増えているが、業務をAIに置き換える動きも同時に進む。
会社はカスタマーサクセス市場を約800億円と推計している。これはSaaS市場約2兆円の4%という仮定による数字で、企業の内製人件費やシステム費も含む。外部委託企業が争う市場そのものではない。グロース支援の約25.5億円をこの800億円で割ると約3.2%になるが、これは支出規模との比較にすぎず、外注市場の確定シェアではない。非IT系BPO全体に対するグロース支援の売上比率は約0.13%、アダプション支援は約0.06%である。ただし、こちらも広い市場を分母とした参考値であり、それぞれの狭いサービス市場での正確なシェアを表さない。
グロース支援では、トランス・コスモス、ベルシステム24、パーソルビジネスプロセスデザインなどが競合する。これらは大規模な顧客基盤と人員、技術投資力を持つ。さらに、Zendesk、IntercomのFin、Salesforceなどは顧客自身がAIを使って対応する仕組みを提供する。アディッシュは既存の外注企業だけでなく、顧客の内製化やソフト会社との直接契約とも戦うことになる。
アダプション支援には、イー・ガーディアンや専門のSNS監視会社、自治体向け相談事業者が存在する。学校向けではFCEとの提携で販路が広がる余地がある。2026年9月の提携時点で私立学校向けサービスには約350校の導入実績が紹介された。ただし、学校数だけでは利用単価や更新率、サービス別利益は分からない。競合各社もこの狭い市場の正確なシェアを公表しておらず、推定値を確定事実として扱わない。
10年後の国内非IT系BPO市場については、現在価値の市場規模約1.96兆円に価格上昇を反映し、実質的な需要をやや弱く見ると、名目で約2.5兆円が一つの中立的な目安となる。その広い市場でアディッシュの売上比率が下がっても不思議ではない。業界全体の売上が名目で増えても、人間が処理する件数は減り、契約単価は物価ほど上がらない可能性がある。中立では、グロース支援とアダプション支援をいずれも人月・工数型の事業として評価し、10年間の請求可能な実質数量を現在の約7割まで縮小させる。独自の規制対応基盤や顧客データの正本を握るという証拠がないため、どちらも強い継続課金事業には分類しない。
資本政策と M&A
2026年3月に公表した中長期の経営ビジョンでは、2030年12月期に売上高70億円、営業利益5億円を目指す。売上総利益21.5億円、販管費16.5億円という収益構造も示された。会社の目標は明確であるが、2025年の営業利益がほぼゼロだったことを考えると、売上拡大と人件費効率の改善を同時に実現する必要がある。ROEの数値目標は確認できない。
株主還元については、当面の内部留保と事業投資を優先する方針である。配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い金額の具体的な数字の約束はない。2025年も無配で、自社株買いによる株主還元の実績も確認できない。一方、2025年には新株予約権と転換社債の権利行使などによって発行済株式数が増えた。会社の存続と事業転換には役立っても、既存株主の持分は薄まる。長期株主は利益の絶対額だけでなく、利益が何株で分けられるかを追う必要がある。
2026年にはハンモックとの資本業務提携に続き、9月にFCEとの提携を発表した。FCEが取得する9万8,000株は既存株主からの譲受けであり、この取引による新株発行や会社への資金流入はない。提携は販売網を広げる選択肢だが、契約売上や利益への寄与額はまだ明らかでない。また、2026年にはフィリピン子会社の売却を決め、事業の整理を進めた。これらを大型買収による成長の確証とはみなさない。
過去の増資、無配、利益率の変動を見る限り、資本配分の評価は保留すべき段階である。2025年末の上位10株主の保有割合は約45%で、強い支配によって少数株主への現金還元が著しく阻害されているとまでは判断しない。ただし、厚い還元実績もないため、将来積み上がる余剰現金は帳簿価額の75%を株主価値として評価する。大きな配当の開始は、楽観の筋書きに限る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
アディッシュを単なるコールセンター企業として扱うのは、将来の変化を見落とすことになる。企業が顧客を失わないように働きかける仕事は、問い合わせへの回答だけではない。顧客の利用状況を理解し、導入を支援し、複雑な問題を解決する必要がある。生成AIが普及するほど、そのAIを業務に定着させる支援や、誤回答の責任を引き受ける運用者が求められる可能性もある。
同社はすでに多くの顧客企業を支援し、継続収益比率は高い。顧客当たりの年間売上は2026年中間期に増加し、月次解約率も改善した。大企業への導入事例が生まれ、学校向けの独自の接点もある。FCEとの提携によって教育機関に商品を届ける機会が増えるうえ、FinやZendeskとの連携を通じてAIの導入・管理・人間による例外対応を一体で受託できる。海外製品の日本向け導入には言語、商慣行、個人情報保護への対応が必要であり、国内の実務経験が強みになる。
2030年の売上70億円、営業利益5億円という目標は、経営が利益率の改善を意識していることを示している。大きな設備投資を必要としないため、顧客への追加提案と現場の省人化が進めば、現金創出力は改善する。過去の赤字の後に固定費を見直し、継続契約の顧客基盤を生かせるなら、小さな自己資本から高い利益を生む会社へ変化する可能性がある。
ただし、利益率の改善が証明されるまでは過大な将来成長を織り込めない。AI成果課金による売上金額がまだ区分開示されていないため、最も好調な筋書きでも従来型サービスの請求可能数量は現在を超えない。上振れの中心は、価格維持とAIによる原価削減にある。
慎重な見方
アディッシュの最も大きな問題は、売上の継続性が利益の継続性を保証しないことである。2025年の継続収益比率は96%を超えたが、営業利益はほぼゼロだった。顧客が解約しなくても、従業員の賃金や外注費が上昇すれば利益は失われる。さらにAIエージェントが問い合わせ処理を減らせば、顧客は委託工数の削減を求める。会社がAIで作業を効率化しても、その利益の多くを値下げの形で顧客に渡さなければならなくなる。
技術の主導権も自社にない。顧客情報の正本や業務ソフトを握るのは顧客企業やZendesk、Salesforceなどである。AI製品の開発元が日本向け運用機能を整え、直接販売するようになれば、アディッシュの役割は初期導入支援や残った例外処理に限られる。現場の経験は一定の価値を持つものの、顧客が長年使い続ける独占的な基盤にはなりにくい。
財務と資本政策にも慎重さが必要である。2023年と2024年の赤字で利益剰余金を失い、2025年は新株発行や権利行使によって自己資本を支えた。株主への配当はなく、再投資した資金が資本コストを超える利益を生んだ証拠も乏しい。主要顧客ストライプジャパンの売上比率は14%に達する。大口契約の内製化や価格交渉が起これば、薄い営業利益はすぐに消える。
営業拠点の賃料や従業員の雇用費用は、売上が減った直後には同じ速度で減らせない。2025年の主要な賃借事務所の年間賃料は合計で約1.3億円に達する。2036年に売上が半減し、AIによる値下げ圧力が続けば、設備が軽い会社でも十分な利益を残せない。小さな純現金は重要な支えだが、赤字が続けばその現金も失われうる。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が優勢である。顧客基盤、学校との関係、AI製品の導入経験は評価するが、現在の利益率と値決め力を考えると、これらを強い堀にまで引き上げることはできない。特に、2025年の営業利益がほぼゼロであること、大口顧客への依存、成果報酬型AI事業の金額が未開示であることはアディッシュ固有の弱さである。
確率は楽観側26%、中立32%、悲観側42%とし、下側へ16ポイント寄せた。下に寄せる理由はAIという一般的な懸念を重ねて数えるためではない。従来型BPOの数量を中立ですでに縮めたうえで、収益構造の転換に失敗する場合の利益率と資本政策の脆さを別に評価したためである。10年後の本質価値は現在の時価総額を相当に下回ると判断する。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 397 円9 億円(+ 還元の換算額還元の合計 1 円0 億円)。 今の値に割り戻すと 180 円4 億円、今との差 −70.0%、 期待の年率 −4.0%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 1,192 円26 億円 | 7 円0 億円 | +100.1% | +7.2% | 96 円2 億円 |
| やや楽観 | 18% | 686 円15 億円 | 0 円0 億円 | +14.6% | +1.4% | 124 円3 億円 |
| 中立 | 32% | 381 円8 億円 | 0 円0 億円 | −36.4% | −4.4% | 122 円3 億円 |
| やや悲観 | 27% | 140 円3 億円 | 0 円0 億円 | −76.6% | −13.5% | 38 円1 億円 |
| 悲観 | 15% | 121 円3 億円 | 0 円0 億円 | −79.8% | −14.8% | 18 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 397 円9 億円 | 1 円0 億円 | −33.7% | −4.0% | 397 円9 億円 |
今の株価時価総額 599 円13 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 8% AI運用の収益性改善に成功 利益 2 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,192 円26 億円
AIを活用した運用を効率化し、顧客からの問い合わせに人手を大量投入する旧来型の体制を改める。FinやZendeskの製品に加え、顧客の業務設計、難しい案件の判断、AIの回答品質の管理を一括して請け負う。顧客企業への直接販売をソフト提供元に奪われず、日本での運用を担うパートナーとして存在感を残す。
三菱電機のような大企業への支援事例を横展開し、学校や自治体にはFCEの販売網を活用する。顧客数は増えるが、AIが作業を省くため請求可能な人月に換算した数量は現在を超えない。価格は物価上昇相当を確保する。新しい料金体系は原価を削減する方向では機能するものの、独立したAI成果課金収入の拡大までは計上しない。
2025年の本社共通費に物価上昇を織り込んだうえで、現場の人員当たり生産性が高まり、営業利益率は6%台まで改善する。過去のような継続的な新株発行への依存を脱し、収益の一部を株主に戻し始める。強い独占企業にはならないが、限られた人員で利益を生むBPO会社へ変わる。
- グロース支援:数量 396(年間契約相当数(件、全社開示ARPAで売上を換算した数量。実際の顧客社数ではない))× 価格 0.09(契約相当1件・年当たり売上(億円、名目))→ 売上 34 億円・営業利益 3 億円。数量は2025年比0.99倍、価格1.34倍。自動化により直接費が減り、本社共通費配賦前の利益率8%。広いBPO市場の約0.14%相当。
- アダプション支援:数量 174(年間契約相当数(件、全社ARPAを用いた換算数量。学校導入校数や実際の契約件数とは異なる))× 価格 0.09(契約相当1件・年当たり売上(億円、名目))→ 売上 15 億円・営業利益 1 億円。数量0.99倍、価格1.34倍。学校・自治体対応とAI監視の併用で共通費配賦前利益率6.8%。
- その他:数量 20.0(年間スポット案件相当数(件、推定))× 価格 0.02(案件相当1件当たり売上(億円、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。案件相当数は維持し、単価1.34倍。
倍率:k=8.25%、g_long=0%で、正当化PER=(1-g/RONIC)/(k-g)=1/0.0825=12.12倍となる。2036年のROEは約11.9%と資本コストを上回るが、成果報酬とAI導入支援の独占的な堀は確認できず、成長率を引き上げない。市場の過去のPERを参照せず式の上限を採用する。
確率:Fin・Zendeskとの連携、FCEの販路、企業の導入支援需要を同時に取り込む必要がある。2030年の会社目標には届かなくても、2036年に高めの営業利益率を定着させられる可能性を認める。ただし、成果課金事業の売上金額が独立して開示されていないため、確率を抑える。
やや楽観 18% 顧客を維持しながら省人化が進む 利益 1 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 686 円15 億円
顧客支援の大部分にAIが組み込まれ、人が請け負う作業は減る。それでも、複雑な案件や顧客ごとの業務設計にはアディッシュの担当者が必要とされる。グロース支援では大企業の契約を確保し、2026年に取り組んだ顧客当たり売上の拡大が継続する。社数の増加で従来型の工数減少を一部補うが、請求可能な実質数量は現在より小さくなる。
学校や自治体ではFCEとの提携を生かし、相談対応とAIによる監視を組み合わせた契約を増やす。AIのソフト基盤を自社で独占することはできず、導入手数料や運用支援の料金には競争がある。旧来の人月型売上は減るが、運用効率の改善が利益率を支える。
会社が掲げた2030年の売上70億円には届かずとも、2036年の売上は約42億円となる。本社経費の物価上昇を吸収した後、営業利益率は4%台を確保する。大きな買収や恒常的な増資に頼らず、獲得した利益を内部に留保するため、自己資本が緩やかに厚くなる。
- グロース支援:数量 344(年間契約相当数(件、全社開示ARPAで売上を換算した数量。実際の顧客社数ではない))× 価格 0.08(契約相当1件・年当たり売上(億円、名目))→ 売上 29 億円・営業利益 2 億円。数量0.86倍、価格1.32倍。AIで省人化するが一部を顧客への値下げとして還元する。
- アダプション支援:数量 154(年間契約相当数(件、全社ARPAを用いた換算数量。学校導入校数や実際の契約件数とは異なる))× 価格 0.08(契約相当1件・年当たり売上(億円、名目))→ 売上 13 億円・営業利益 1 億円。数量0.88倍、価格1.32倍。学校向けの人の判断が残る。
- その他:数量 17.0(年間スポット案件相当数(件、推定))× 価格 0.02(案件相当1件当たり売上(億円、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。数量0.85倍、価格1.30倍。
倍率:ROE約9.1%はk=8.25%をわずかに上回る。ただしg_long=0%であり、AI代替後の名目成長を見込まないため、正当化PERの上限は1/kの12.12倍。2025年に比べた利益改善は2036年の純利益に反映し、倍率側で重ねて成長を評価しない。
確率:既存顧客へのAI導入支援や追加受注が一定程度成功する筋書きであり、2030年の強い成長目標を全面的に信じる必要はない。人間の業務を減らしながら利益を維持するには、顧客にコスト削減効果をすべて渡さない交渉力が必要となるため、楽観ほどではないが実現余地を認める。
中立 32% AIで工数が縮み、利益は小幅に残る 利益 1 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 381 円8 億円
企業の顧客支援そのものは2036年にも必要である。しかし、FAQ回答、一次受付、投稿監視、定型報告の多くはAIエージェントが実行し、作業時間に応じた請求額が減る。顧客企業は同じサービスをより少ない人員で受けられるようになり、従来のBPO契約について価格の見直しを求める。アディッシュはAIツールを使って利益を残そうとするが、顧客側も削減効果を分け合う。
グロース支援では大企業との契約を残すものの、実質の請求可能数量は2025年の7割となる。アダプション支援では学校や自治体の相談対応が一定程度残るため、縮小幅はやや小さい。名目単価は10年で約3割上がるが、物価上昇のすべてを価格に転嫁できない。広いBPO市場が成長しても、同社の数量面でのシェアは低下する。
AIによる人員配置の効率化で現場の利益率は改善するが、研究開発、営業、品質管理、事務所といった共通費は残る。会社全体の売上は約34億円、営業利益は約1億円になる。2025年に比べれば稼ぐ力は回復するものの、自己資本に対する利益率は資本コストに届かない。配当を出さずに利益を蓄積しても、その資本が高収益の新事業へ転じたという証拠は不足する。
- グロース支援:数量 280(年間契約相当数(件、全社開示ARPAで売上を換算した数量。実際の顧客社数ではない))× 価格 0.08(契約相当1件・年当たり売上(億円、名目))→ 売上 23 億円・営業利益 1 億円。人月・工数型の中立数量0.70倍、価格1.30倍。広い非IT系BPO市場2.5兆円に対する参考売上比率は約0.09%。
- アダプション支援:数量 127(年間契約相当数(件、全社ARPAを用いた換算数量。学校導入校数や実際の契約件数とは異なる))× 価格 0.08(契約相当1件・年当たり売上(億円、名目))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。数量0.726倍、価格1.30倍。学校向けの例外対応が残るが、投稿監視の定型工数は縮む。広い市場に対する参考比率は約0.04%。
- その他:数量 13.0(年間スポット案件相当数(件、推定))× 価格 0.02(案件相当1件当たり売上(億円、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。数量0.65倍、価格1.25倍。単発の人的サービスに競争圧力が残る。
倍率:2036年のROEは0.6846÷10.7で約6.4%とk=8.25%を下回る。資本コスト以下の企業では長期成長を価値に上乗せせず、利益の稼ぐ力の上限1/k=12.12倍を採用する。g_long=0%であり、式からの上限と一致する。市場のPER・PBRを倍率の根拠には使用しない。
確率:現在の人月・工数依存、2025年の収支均衡、2026年の回復計画を出発点とする。顧客支援需要が存続しても、請求できる作業量はAI代替で約3割減る。原価削減の一部を会社が確保することで、過去の良好な時期を下回る営業利益率を保つ中心的な筋書きである。
やや悲観 27% 主力契約が縮み、再び営業赤字になる 利益 0 億円 · PBR 0.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 140 円3 億円
AIエージェントの機能が進み、顧客企業が問い合わせの大部分を自ら処理するようになる。アディッシュは難しい相談や監督業務に残るが、顧客は人員配置を前提とした契約を縮小する。グロース支援の請求可能数量は現在の55%、アダプション支援は約59%まで減り、単価の上昇も物価を下回る。
大口顧客の一部が業務を内製化し、競合BPO企業は価格を下げて残る契約を争う。学校や自治体の業務は一定程度残るものの、その規模ではグロース支援の減少を埋められない。フィリピン子会社の整理や拠点の統合で固定費を減らしても、品質管理と営業のための本社経費が残る。新しいAI成果報酬モデルは一定の引き合いを得るが、独立した利益の柱にはならない。
2036年の売上は約25.5億円、営業損益は小幅赤字となる。10年の前半に得た利益が後半の損失でおおむね相殺されるため、株主還元を伴う自己資本の増加は見込めない。会社は存続するが、収益力より現金と回収可能な保証金の価値が株式評価の中心になる。
- グロース支援:数量 220(年間契約相当数(件、全社開示ARPAで売上を換算した数量。実際の顧客社数ではない))× 価格 0.08(契約相当1件・年当たり売上(億円、名目))→ 売上 17 億円・営業利益 0 億円。数量0.55倍、価格1.23倍。受注規模が縮み、サービス利益は低水準。
- アダプション支援:数量 104(年間契約相当数(件、全社ARPAを用いた換算数量。学校導入校数や実際の契約件数とは異なる))× 価格 0.08(契約相当1件・年当たり売上(億円、名目))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。数量0.594倍、価格1.22倍。有人監視の需要は残るが十分な利益が出ない。
- その他:数量 12.0(年間スポット案件相当数(件、推定))× 価格 0.02(案件相当1件当たり売上(億円、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。数量0.60倍、価格1.13倍。
倍率:営業赤字のためPERではなく現在の自己資本5.4億円を評価基準として固定する。将来利益を積み上げた大きな自己資本には倍率を掛けない。2025年末の純現金2.6億円と回収可能な差入保証金の保守的評価額0.45億円から、床を3.05億円とする。PBR0.565×現在の自己資本5.4億円=3.051億円は資産の床と概ね一致する。事業の純利益が赤字なので正当化する稼ぐ力の上限は資産の床であり、過去の市場PBRは参照しない。
確率:AIによる問い合わせ削減、競合の直接販売、顧客企業の内製化が一定程度進む場合である。顧客を維持しても請求可能な工数が減り、賃料・本部費用が固定的に残るため利益が失われる。2023~2024年に実際に営業赤字を経験していることから、単なる極端な想定とは扱わない。
悲観 15% AIが既存業務を半減させ、収益構造の転換に失敗 利益 −1 億円 · PBR 0.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 121 円3 億円
企業の顧客サポートはAIエージェントが標準となり、人間が回答するのはごく一部の例外だけになる。顧客企業はZendeskやFinなどの製品を直接使い、監視やサポートの運用も内製化する。アディッシュは既存契約の更新時に大幅な工数削減を求められ、新しい成果課金型サービスへの転換でも主要な顧客接点を獲得できない。
グロース支援の実質数量は45%まで、アダプション支援は約46%まで縮む。名目価格も物価に追随せず、売上全体は2025年のおよそ半分となる。学校の相談事業は一部残るが、利益を支えられるほどの規模を持たない。顧客対応のための拠点賃料、品質管理、システム維持費は急には消えず、固定費が利益を圧迫する。
10年の前半には一時的な回復と黒字を得るが、後半のAI代替と契約縮小で累積的な利益を失う。2036年の営業赤字は約1.2億円に達し、普通の利益倍率で評価できる事業ではなくなる。設備や無形資産を高く売れるとは考えず、今の純現金に近い資産の床だけを残す。この状態では買収による救済も価格を保証しない。経営が新株を発行しなければ存続が難しくなる危険は、さらに下方の例外的な尾部リスクとして残る。
- グロース支援:数量 180(年間契約相当数(件、全社開示ARPAで売上を換算した数量。実際の顧客社数ではない))× 価格 0.07(契約相当1件・年当たり売上(億円、名目))→ 売上 13 億円・営業利益 0 億円。数量0.45倍、価格1.12倍。顧客の内製化とAI直接利用で契約単価が圧迫される。
- アダプション支援:数量 80.0(年間契約相当数(件、全社ARPAを用いた換算数量。学校導入校数や実際の契約件数とは異なる))× 価格 0.07(契約相当1件・年当たり売上(億円、名目))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。数量0.457倍、価格1.08倍。有人監視の収益性が失われる。
- その他:数量 8.0(年間スポット案件相当数(件、推定))× 価格 0.01(案件相当1件当たり売上(億円、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。数量0.40倍、価格は名目でも横ばい。
倍率:赤字で利益倍率が意味を持たないため、現在の自己資本5.4億円を倍率の基準とする。2025年末の純現金約2.6億円以外の保証金・無形固定資産などは、構造的な衰退下で回収を確実視しない。PBR0.482×5.4億円=2.6028億円は純現金の床約2.6億円と一致する。利益が資本コストを下回るので稼ぐ力を資産価値に上乗せしない。市場の過去の谷のPBRは使用しない。
確率:会社の人月BPOが構造的に縮小し、AI製品提供元と競合大手に顧客接点を奪われる筋書きである。2025年にほぼ利益が出ていないこと、大口顧客集中と過去の増資実績があることから、15%の低頻度だが無視できない確率を与える。倒産を必然とまでは見ず、資産の保守的な床を維持する。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
グロース支援
カスタマーサクセス、問い合わせ対応、顧客の導入・定着支援、継続利用の促進、Zendeskなどを用いた運用構築。収益の大半は人月・工数型BPOであり、AI成果報酬の独立した売上金額は未開示。
| 数量年間契約相当数(件、全社開示ARPAで売上を換算した数量。実際の顧客社数ではない) | 価格契約相当1件・年当たり売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 400 | 0.06 | 26 | 0 |
| 10 年後 中立 | 280 | 0.08 | 23 | 1 |
取り方:2025年有報の製品・サービス別外部売上2,552,213千円を正とする。2025年の会社開示は継続取引顧客562社、年間ARPA6.3百万円だが、グロース支援だけの顧客数・平均単価は非開示である。全社ARPAに近い年間約638万円を使い、25.52213億円÷約0.0638億円から400件の年次契約相当を推計した。顧客562社を400社と177社に正確に分けたという意味ではなく、実態は複数サービス利用・スポット収益を含む。営業利益0.32億円はサービス別利益の開示がないための本社共通費控除前の推定配賦額で、アダプション支援0.10億円と合わせ、共通費約0.40億円を控除すると全社の営業利益約0.02億円となる。AIエージェント代替の型は人月・工数型。中立の請求可能な実質数量は今の0.70倍、名目価格は1.30倍とし、AIによる業務量縮小と物価上昇分を分離した。広い非IT系BPO市場に対する2025年売上比率は約0.13%で、CS専門外注市場の確定シェアではない。
アダプション支援
インターネットモニタリング、SNS・コミュニティ運営、学校のネットいじめ・トラブル対策、相談対応。AIによる検知機能や小規模なツールも扱うが、開示売上の中心は人が関与する監視・運用サービスと判断する。
| 数量年間契約相当数(件、全社ARPAを用いた換算数量。学校導入校数や実際の契約件数とは異なる) | 価格契約相当1件・年当たり売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 175 | 0.06 | 11 | 0 |
| 10 年後 中立 | 127 | 0.08 | 11 | 0 |
取り方:2025年有報の製品・サービス別売上1,116,757千円を使用する。2025年からインターネットモニタリングがこの区分に移ったため、比較には会社が組み替えた2024年の11.76288億円を使用する。アダプション固有の顧客数・単価は非開示なので、全社ARPA約630万円に近い年間約638万円を代表単価として175契約相当に換算した。これは実契約175件という開示ではない。営業利益0.10億円は本社共通費控除前の仮配賦である。AIエージェント代替の型は監視・相談の人月・工数BPOを主とする。学校向けの人間の責任判断を考慮して、中立の数量を現在の0.726倍、価格を1.30倍とする。広い非IT系BPO市場に対する売上比率は約0.06%だが、SNS監視・学校安全分野の確定シェアは公開資料から算定できない。
その他
製品・サービス別開示のその他売上。個別の件数や単価が示されていない小規模なスポット取引として扱う。
| 数量年間スポット案件相当数(件、推定) | 価格案件相当1件当たり売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 20.0 | 0.01 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 13.0 | 0.02 | 0 | 0 |
取り方:有報のその他売上27,047千円を20件の案件相当に分解した仮定である。実際の案件数や単価は開示されていないため、案件相当数は推計であり確定した取扱件数ではない。主としてスポットの人的支援とみなし、AIエージェント代替の人月・工数型を適用する。売上比率は1%未満であり、全社価値への影響は限定的である。
リスクと懸念
AI エージェント代替
問い合わせへの一次回答、記録作成、SNS監視、顧客分析などはAIが処理しやすい。現在の主力は人月・工数型であり、顧客がAIによって必要人員を減らせば、契約が続いても売上が減る。会社が掲げる成果報酬型BPaaSへの転換は合理的だが、AI成果課金の独立した売上額が示されていないため、既存事業の縮小を埋めると決めつけられない。
大口顧客への依存
2025年のストライプジャパン向け売上は約5.17億円で、全社の14%に相当した。大口顧客は収益の安定と営業実績を支える一方、業務の内製化、調達先の変更、契約の価格交渉が会社全体の利益に直結する。現状の営業利益が薄いため、契約が一部減るだけでも赤字に戻る可能性がある。
高い継続収益比率と低い利益率の食い違い
2025年の継続収益比率は96.1%だったが、営業利益はほぼゼロだった。収益の継続性が高いという事実は、契約を処理する人件費や外注費を差し引いた利益の継続性を保証しない。顧客当たり売上が増えても、追加人員の費用を同じだけ必要とするなら、再投資した資本の利回りは改善しない。
外部AI製品への依存と顧客接点の喪失
Fin、Zendesk、Gainsightとの連携は短期の営業力を高める可能性がある。しかし、AIの技術と顧客が使うソフト基盤を保有するのは提携先である。製品提供元が日本で直接販売や運用を始めれば、アディッシュの役割は導入時の一時的な作業に縮小する。成果報酬の配分や販売手数料率を同社が一方的に決められる保証もない。
希薄化と資本配分
2025年は新株予約権や転換社債の行使によって発行済株式数が増えた。会社の資金繰りには資本調達が有効でも、既存株主が将来利益を受け取る割合は薄まる。配当や自社株買いの具体的な目標もない。赤字が続く中で追加の資金調達が必要になれば、会社の時価総額が回復しても、以前からの株主に帰属する価値が十分に増えない恐れがある。
固定費と事業縮小の速度差
BPO事業では従業員と拠点が収益を生む手段である一方、需要が縮んだ際には固定費にもなる。2025年の主要賃借事務所の年間賃料は約1.3億円だった。2026年には本社入居ビルの火災に伴う臨時拠点の費用も発生した。契約が短期間で減る一方、人員削減、拠点統合、品質維持の費用が残る場合には、赤字が急拡大する。
学校・自治体事業の成長を過大評価する危険
学校向けの相談やネットトラブル対策は、人間の判断が残る魅力的な分野である。しかし、FCEとの提携により販路が増えたことと、利益率の高い契約が大幅に増えることは別である。自治体の予算制約、入札、個人情報保護、事故対応の責任が費用となりうる。導入校数だけで売上や継続率を推定しないことが必要である。
今後の分かれ目
- AI成果課金、ツール販売手数料、従来型人月収入の内訳が金額付きで継続開示され、新しい収益の比率が上昇したら
- 人月型から成果報酬型への移行が実証されたと判断し、グロース支援の数量・単価の定義を更新する。売上総利益率も改善していれば、楽観とやや楽観の確率を引き上げる。
- 2027年以降、営業利益率が3%以上で複数年定着し、営業キャッシュフローも純利益に見合って増加したら
- 現場の省人化が値下げ圧力を上回っている証拠となる。中立の利益率と将来ROEを上方修正し、増分の投下資本利益率が資本コストを超えているかを確認する。
- ストライプジャパン向けを含む大口顧客の契約縮小が起こり、継続収益と売上総利益が同時に減少したら
- 顧客集中リスクが顕在化したとみなし、やや悲観の数量を下方修正する。減収が固定費削減より速ければ、悲観の比重も引き上げる。
- 月次解約率が0.4%以下へ低下し、それが複数年維持され、既存サービスの単価引き上げも確認できたら
- 強い顧客固定力と価格決定力の証拠が増えるため、堀の評価を再検討する。ただし、他社製AIツールの再販売だけでは記録の正本に分類しない。
- 学校・自治体向けの導入校数だけでなく、更新率、契約単価、事業別利益が開示され、十分な採算を示したら
- アダプション支援の実質数量の縮小幅を小さくし、継続的な需要と収益性を別々に評価する。FCEとの提携効果は成約金額と利益への寄与で判断する。
- 株数が再び大幅に増加する増資や転換社債発行が行われ、同時にROEが資本コストを下回り続けたら
- 将来の会社全体の利益額が改善しても既存株主の取り分は減るため、holder_shareを下方修正する。追加資金の使途と増分利益を確認するまでは評価を引き上げない。
- 2030年の売上70億円・営業利益5億円という計画に対し、実績売上と営業利益が数年連続で計画を上回る進捗となったら
- 人的工数の増加に依存せず利益率を改善できているかを検証する。価格上昇や事業買収による売上増だけでなく、既存株主に帰属する利益と現金の増加が確認できれば上側の筋書きを見直す。
見ておくもの
- AI成果課金・販売手数料・人月型収入を分けた売上開示と粗利益率
- 2026年計画の売上41億円・営業利益0.7億円に対する実績進捗と2027年以降の営業利益率
- 2025年末の継続収益35.6億円・継続収益率96.1%からの増減
- 月次解約率1.2%の維持と、既存契約の同条件値上げ実績
- 顧客当たり年間売上の増減と、追加受注・単価改定・顧客構成の内訳
- ストライプジャパン向け売上比率と、大口顧客の継続・内製化の動向
- Fin・Zendesk・Gainsightとの提携による実際の売上、利益、契約数
- FCE提携後の学校・自治体向け契約金額、更新率、事業別採算
- 新株予約権の残数、発行済株式数、第三者割当、株主還元の開始
- 現金及び預金、有利子負債、差入保証金、営業キャッシュフローの変化
- 2030年の売上70億円・営業利益5億円という経営目標の達成可能性
倍率と資本コストの決め方
現在の時価総額約13.7億円や過去・同業のPER、PBRを将来倍率の根拠には使用していない。2025年のサービス別売上、全社ARPA、実際の顧客数を起点とし、数量は請求可能な実質契約相当数、価格は名目単価で分けた。AI代替は中立の数量縮小とg_long=0%に反映し、資本コストの寿命上乗せには重ねていない。楽観でも、金額が開示されていないAI成果収入によって数量が増えるとは仮定しない。営業利益率には賃料や人件費の負担を残し、2025年の推定本社共通費約0.40億円は10年の物価上昇を反映して約0.54億円以上とした。2028年12月期以降の新リース会計基準による資産・負債の表示変更は、同一の賃料費用ベースへそろえて扱う。2025年末の純現金約2.6億円は給与・外注費の支払いがあるため余剰現金として別加算せず、悲観側の資産の床に用いた。確率は個別の利益率・顧客集中・資本政策に応じて設定し、現在の株価に合わせて動かしていない。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3.0%と株式リスクプレミアム4.5%の基本7.5%に事業品質の+0.75%を加える。過去の赤字は無視しないが、2025年はほぼ収支均衡し、2026年は黒字予想で純現金もあるため、事業存続懸念の追加上乗せは付けない。AI代替の理由で寿命上乗せを重ねない。