結論
ケアサービスは、東京23区でデイサービスと訪問入浴を営む介護会社だ。もう一つの顔は、亡くなった方の身支度を整える「エンゼルケア」で、こちらが利益の大半を生んでいる。筆者の結論は「やや割安」である。10年の稼ぐ力に手元の現金を足すと、価値は今の時価総額を2割近く上回る。
理由は2つある。ひとつは純現金16億円が時価総額の6割を占めること。もうひとつは、エンゼルケアが売上28億円で利益6億円を稼ぐ、高い採算の事業を持つことだ。
一方で、介護の本業は苦しい。デイは利用者の伸びが鈍り、訪問入浴は人手不足で車が動かせない。2026年3月期の営業利益は1.3億円と、前の期の5分の1以下に落ちた。今期の会社予想は、投資を理由に営業利益がほぼゼロだ。
筆者がいちばん気にしているのは、本社などの共通費だ。部門の利益を足すと8億円あるのに、会社全体では1億円しか残らない。差の7億円をどこまで圧縮できるかが、10年の分かれ目になる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず現金を見る。純現金16億円は時価総額の6割で、安全域の中心になる。ただ、現金は事業を続けるための運転資金でもある。給与を毎月払う会社が、全部を自由に使えるわけではない。そのため、事業に要る分を差し引いて数える。
次に、稼ぐ力を見る。エンゼルケアは、葬儀という人生の節目に欠かせない仕事で、信頼と提携網が堀になる。ここは10年後も残ると筆者は見る。介護の本業は、公定価格で人手不足という、堀の薄い事業だ。
最後に、資本の使い方を見る。配当は手厚い。しかし、投資が実を結ぶ保証はない。今期の営業利益がほぼゼロという予想は、投資の大きさを示している。
以上から、筆者は現金とエンゼルケアの組み合わせに安全域を認める。ただし、共通費の圧縮という宿題が果たされるまで、確信は持てない。
何で稼ぐ会社か
事業は2本立てだ。ひとつは「在宅介護サービス」で、売上の7割を占める。デイサービス、訪問入浴、訪問介護、訪問看護、ケアプランの作成を、東京23区を中心に営む。施設は借りて運営し、全国で約110の拠点と約1,400人の従業員を抱える。
もうひとつは「シニア向け総合サービス」で、売上の3割だ。中核のエンゼルケアは、昔からある湯灌(ゆかん)に独自のサービスを加えたものだ。亡くなった方の洗髪・洗体、着替え、化粧を行い、家族と一緒に納棺する。依頼の多くは葬儀社を通じて入る。
介護の売上は国が決める介護報酬で決まる。利用者の数と回数に報酬の単価を掛けた形で、価格は自分で動かしにくい。一方、エンゼルケアは自由な価格で、葬儀の需要に連動する。2026年3月期は、在宅介護が売上64億円で利益2億円、エンゼルケアが売上29億円で利益6億円だった。
稼ぐ仕組みが違う2つを抱える点が、この会社の面白さであり、難しさでもある。介護の人員と、エンゼルケアの専門人材は、採用も教育も別で、本社が両方を束ねる負担は軽くない。
優良さと弱いところ
優良と言い切れないが、見るべき点が2つある。ひとつは、エンゼルケアの採算の高さだ。売上に対する利益が2割を超え、介護の本業を大きく上回る。葬儀社との提携網と、専門の訓練を受けた担い手がそろっていて、新規の参入者には簡単にまねできない。
もうひとつは、財務の強さだ。純現金16億円に対し、借入はほぼない。介護は需要が景気に左右されないので、現金は事業の守りとして厚い。
弱いのは、介護の本業だ。報酬は公定価格で上げにくく、人件費だけが物価で上がる。大手のツクイやSOMPOケア、ニチイなどと、人材の取り合いにもなる。2026年3月期の営業利益率は1.4%まで落ちた。
資本効率も低い。ROEは3.9%まで下がったが、以前は10%台だった。経営は2026年度を「第二創業期」と呼び、2031年3月期に営業利益6.4億円を掲げる。目標は高めに見え、実行を見極める段階だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
介護の市場は、高齢化で需要は伸びるが、人手が追いつかない。要介護の人は増えても、働き手が足りず、事業所は受け入れを増やせない。デイは利用者の伸びが鈍り、訪問入浴は車の稼働が人員不足で減った。需要より供給の制約が利益を決める局面だ。
価格は国が決める。介護報酬は物価の上昇に後れて改定され、処遇改善の加算で人件費の一部を補う形になる。物価が年3%で上がる世界では、報酬の改定が追いつくかが最大の論点だ。追いつかなければ、利益率は静かに削られる。
エンゼルケアは別の力学で動く。年間の死亡数は160万人前後で、2040年ごろまで微増が続く。ただ、葬儀は簡素になり、直葬や家族葬が増えて、会社は施行件数の減少を認めている。需要の絶対数は堅いが、1件あたりの規模は小さくなる。
競争の形は、介護が大手と中小の乱立、エンゼルケアが葬儀社の内製と専業の少数だ。ケアサービスは専業として提携網を持つが、葬儀社が自前で身支度を行えば、外注は減る。今後の分かれ目は、介護報酬の改定の方向と、葬儀の簡素化の速さである。人手が増やせない限り、需要の伸びは売上に変わらない。
資本政策と M&A
株主還元は手厚い方だ。配当は6期連続で増やし、2026年3月期の配当性向は7割を超えた。ただ、今期は利益の減少で、性向が100%を超える見込みだ。配当の維持は、手元の現金に支えられている。自社株買いの実績は見当たらない。
過去5年で、純現金は8億円から17億円に増えた。配当を出しても利益の大半は会社に残った計算だ。現金の使い道として、会社は出店とシステム投資を進める方針を示し、人材の採用も大きく増やす。
M&Aは大きくない。2026年第2四半期から連結をやめ、単独の決算に移った。外部の試算では、10年以内のTOBや買収の確率は2割程度だ。
株主優待は少額で、価値の計算には入れていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
エンゼルケアは、売上28億円で利益6億円を稼ぐ高採算の事業だ。会社は4事業所を新しく開き、出店を加速する。死亡数は2040年ごろまで増え、需要の底は堅い。提携する葬儀社の網が広がれば、施行件数は伸び、利益はさらに太る。
介護の本業は、不採算の事業所を閉じ、規模を適正にすることで立て直せる。デイは利用者の伸びが鈍っても、東京の高齢者は増え続ける。報酬の改定は物価に遅れながらも、処遇改善の加算を含めて引き上げられてきた。
財務は盤石だ。純現金16億円は時価総額の6割で、自己資本比率は76%ある。今期の営業利益がほぼゼロなのは、人材と仕組みへの戦略投資を前倒しするためで、投資が実れば2031年3月期の営業利益6.4億円という計画が見えてくる。共通費の7億円が圧縮されれば、利益は一気に戻る。配当も6期連続で増え、株主を重んじる姿勢が分かる。介護の人材確保でも、採用を大幅に増やす計画を打ち出しており、停滞を認めて動いている点は評価できる。東京23区という高齢者が集まる市場で、ドミナント戦略で効率を高める余地もある。
慎重な見方
利益の悪化は、一時的ではなく構造的だ。営業利益は2年で5.2億円から1.3億円まで落ち、会社予想は今期さらに悪化する。予想は2025年11月と2026年3月に続けて下げられた。売上の未達と人件費の上昇が、計画を二度崩した。
介護報酬は公定価格で、人件費は物価で上がる。大手との人材の取り合いで、訪問入浴は人手不足で車を動かせない。デイも利用者の伸びが鈍り、事業所の統廃合が続く。介護の本業は構造的に薄利のままだ。
エンゼルケアにも不安がある。葬儀は直葬や家族葬で簡素になり、全国の施行件数は減った。会社自身も減収を認めている。葬儀社が身支度を内製すれば、外注は減る。高い利益率は、競争が入れば長続きしない。
配当は利益を上回る水準で、性向は今期100%を超える。現金で配当を保つ形は続かない。第二創業期の投資は、成果が出る前に現金を使う。「割安」に見える現金は、投資で減る可能性がある。共通費の約7億円という、売上の7%を超える重い固定費は、介護の薄い利益では賄えない。売上が伸びても、人件費の上昇がそれを食う。経営は、利益が出ない間も採用を増やすというが、人が増えても稼働が戻る保証はない。
どちらに重みを置いたか
エンゼルケアの採算と現金の厚さでは、強気の見方が強い。一方で、共通費の重さと介護の人手不足は、慎重な見方が突いた通りの弱点だ。このため、中立を最も重く置き、楽観とやや楽観を合わせて3割強、やや悲観と悲観を合わせて3割弱に置いた。
確率を楽観側に寄せるには、共通費が実際に減る証拠が要る。それが出るまでは、現金の厚さを安全域として評価しつつ、稼ぐ力の戻りは控えめに見る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,295 円49 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 334 円13 億円)。 今の値に割り戻すと 844 円32 億円、今との差 +25.8%、 期待の年率 +9.3%(資本コスト 7.8%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 3,519 円133 億円 | 685 円26 億円 | +526.6% | +20.1% | 420 円16 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,185 円83 億円 | 527 円20 億円 | +304.2% | +15.0% | 542 円21 億円 |
| 中立 | 38% | 1,086 円41 億円 | 316 円12 億円 | +108.9% | +7.6% | 533 円20 億円 |
| やや悲観 | 22% | 316 円12 億円 | 158 円6 億円 | −29.3% | −3.4% | 104 円4 億円 |
| 悲観 | 10% | 237 円9 億円 | 53 円2 億円 | −56.8% | −8.0% | 29 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,295 円49 億円 | 334 円13 億円 | +142.8% | +9.3% | 1,629 円62 億円 |
今の株価時価総額 671 円25 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 10% エンゼルケアが全国に広がり、共通費の重さも薄まる 利益 7 億円 · PER 18.8 倍 · 株価時価総額 3,519 円133 億円
エンゼルケアは新しい事業所が立ち上がり、葬儀社との提携網が全国に広がる。施行件数は今の1.4倍近くに増え、利益率も24%を保つ。死亡数が2040年ごろまで増える追い風も効く。介護は不採算の事業所を閉じて規模を適正にし、採用した人員で訪問入浴の車の稼働が戻る。介護報酬の改定が物価に近づき、利益率は5%まで戻る。共通費は売上の伸びに薄められ、営業利益は過去最高圏に乗る。配当は増やされ、現金の使い道も明確になる。会社の中計の姿を、大きく上回る10年になる。経営の「第二創業期」の投資が、成果として出る筋書きだ。
- 在宅介護サービス:数量 724(年間の延べ利用回数(万回・推定))× 価格 0.12(1回あたり平均売上(億円/万回・名目、介護報酬))→ 売上 89 億円・営業利益 4 億円。利用回数1.08倍(採用の増加と周辺領域)、1回あたり1.30倍(報酬改定が物価に近づく)、利益率5%
- シニア向け総合サービス(エンゼルケア):数量 48.1(年間の施行件数(千件・推定))× 価格 1.07(1件あたり平均売上(億円/千件・名目))→ 売上 52 億円・営業利益 12 億円。施行件数1.35倍(出店加速・死亡数の増加)、1件あたり1.34倍、利益率24%
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 19.3% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)7 億円。全体の PER 18.79 倍、時価総額 132 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:出店の加速と介護の立て直しが同時に実現する必要がある。会社の中計(2031年3月期に営業利益6.4億円)より大きい姿で、確度は高くない。
やや楽観 20% 中計に近い成長で、利益率は過去の水準に戻る 利益 5 億円 · PER 16.8 倍 · 株価時価総額 2,185 円83 億円
エンゼルケアは出店で件数が1.25倍に増え、介護は規模を適正にして黒字を保つ。介護報酬の改定は物価に少し遅れながらも追いつき、利益率は4%に戻る。共通費は物価で増えるが、売上の伸びがそれを薄める。営業利益率は過去の5%に近づき、会社の中計に近い形になる。配当は少しずつ増え、現金は事業に回る分が増える。介護の人員確保と、エンゼルケアの出店が、計画に近い速度で進む。会社が描く姿に近い、手堅い上振れの10年になる。デイは利用者の伸びが戻り、訪問入浴は車両の稼働率が上がる。エンゼルケアの新しい事業所も、2年ほどで黒字に乗る。
- 在宅介護サービス:数量 683(年間の延べ利用回数(万回・推定))× 価格 0.12(1回あたり平均売上(億円/万回・名目、介護報酬))→ 売上 82 億円・営業利益 3 億円。利用回数1.02倍、1回あたり1.26倍、利益率4%
- シニア向け総合サービス(エンゼルケア):数量 44.5(年間の施行件数(千件・推定))× 価格 1.06(1件あたり平均売上(億円/千件・名目))→ 売上 47 億円・営業利益 11 億円。施行件数1.25倍、1件あたり1.32倍、利益率22.5%
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.9% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)7 億円。全体の PER 16.81 倍、時価総額 83 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の中計(2031年3月期に売上112億円・営業利益6.4億円)に近い成長で、過去の営業利益率(5%台)に戻る。起こりやすい上振れ。
中立 38% エンゼルケアが伸び、介護は横ばい。共通費の圧縮は半分 利益 3 億円 · PER 13.9 倍 · 株価時価総額 1,086 円41 億円
エンゼルケアは新しい事業所で件数が1割強増え、1件あたりも物価に連れて上がる。利益率は21%を保ち、利益は今の4割増になる。介護は統廃合で利用回数が少し減り、報酬の遅れで利益率は3%にとどまる。共通費は物価で増え、直近の水準から大きくは減らない。営業利益は3億円台に戻るが、過去の5億円台には届かない。配当は利益の6割ほどを保ち、現金は少しずつ増える。会社の中計ほどには伸びず、共通費の圧縮も半分にとどまる、現実的な10年だ。介護の人員確保は進むが、報酬の遅れがその効果を打ち消す。エンゼルケアは、新しい事業所が立ち上がるまでの費用が重く、全体の利益率はほとんど動かない。
- 在宅介護サービス:数量 650(年間の延べ利用回数(万回・推定))× 価格 0.12(1回あたり平均売上(億円/万回・名目、介護報酬))→ 売上 75 億円・営業利益 2 億円。利用回数0.97倍(人員制約と需要増が相殺)、1回あたり1.22倍(報酬は物価に遅れる)、利益率3%
- シニア向け総合サービス(エンゼルケア):数量 39.9(年間の施行件数(千件・推定))× 価格 1.04(1件あたり平均売上(億円/千件・名目))→ 売上 42 億円・営業利益 9 億円。施行件数1.12倍、1件あたり1.30倍、利益率21%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.0% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)7 億円。全体の PER 13.9 倍、時価総額 41 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:エンゼルケアの採算を保ちつつ件数が伸び、介護報酬の遅れが続く形。会社の中計よりは控えめで、直近の営業利益よりは戻る、中間の置き方。
やや悲観 22% 介護報酬が物価に追いつかず、薄い利益が続く 利益 0 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 316 円12 億円
介護報酬の改定が物価に追いつかず、人件費の上昇に価格が負ける。訪問入浴は人員不足が続き、利用回数は1割以上減る。エンゼルケアは葬儀の簡素化で件数が伸びず、利益率も競争で2ポイント下がる。共通費は一部を圧縮するが、売上の縮みを補えず、営業利益は0.4億円前後にとどまる。配当は利益を上回り、現金を取り崩して保つ形になる。余った現金は谷で食われ、今の0.75倍になる。第二創業期の投資が成果を生まず、10年が過ぎてしまう。経営は事業所を絞って守りに入るが、傷は浅くない。エンゼルケアの出店も止まり、介護の事業所は統廃合が進んで、地域の拠点が減る。
- 在宅介護サービス:数量 590(年間の延べ利用回数(万回・推定))× 価格 0.11(1回あたり平均売上(億円/万回・名目、介護報酬))→ 売上 64 億円・営業利益 1 億円。利用回数0.88倍(人員不足と統廃合)、1回あたり1.15倍(報酬が物価に追いつかない)、利益率1%
- シニア向け総合サービス(エンゼルケア):数量 33.9(年間の施行件数(千件・推定))× 価格 0.98(1件あたり平均売上(億円/千件・名目))→ 売上 33 億円・営業利益 6 億円。施行件数0.95倍、1件あたり1.22倍、利益率19%
倍率:稼ぐ力から出る価値(約7億円)より、売れる資産(floor_assets_oku)の方が大きいため、そちらを床にして今の自己資本×PBRで置いた。
確率:今期の営業利益がほぼゼロという会社予想が、そのまま続く筋書き。介護報酬の遅れと葬儀の簡素化が重なる、現実味の強い形。
悲観 10% 人手不足で介護が縮み、エンゼルケアも葬儀社に奪われる 利益 −2 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 237 円9 億円
人手不足がさらに深まり、訪問入浴とデイの利用回数は今の4分の3まで減る。報酬は物価に追いつかず、介護は赤字になる。エンゼルケアは葬儀社が身支度を自前で行う動きと、葬儀の簡素化で件数が2割減り、利益率も落ちる。共通費は事業の縮小に合わせて圧縮するが、営業損益は赤字になる。配当は大きく減り、事業所の閉鎖と現金の取り崩しが続く。清算されない限り、現金の使い道は少数株主には決められない。会社は小さな介護会社として残るが、エンゼルケアの優位は消え、稼ぐ力は大きく後退する。投資を抑えて守る道もあるが、人材が流出して回復の芽も摘まれる。
- 在宅介護サービス:数量 503(年間の延べ利用回数(万回・推定))× 価格 0.10(1回あたり平均売上(億円/万回・名目、介護報酬))→ 売上 53 億円・営業利益 −1 億円。利用回数0.75倍、1回あたり1.10倍、赤字2%
- シニア向け総合サービス(エンゼルケア):数量 28.5(年間の施行件数(千件・推定))× 価格 0.92(1件あたり平均売上(億円/千件・名目))→ 売上 26 億円・営業利益 3 億円。施行件数0.80倍(葬儀社の内製化・簡素化)、1件あたり1.15倍、利益率12%
倍率:赤字なので稼ぐ力は使えず、売れる資産(floor_assets_oku)の床で見る。今の自己資本29.5億円×PBR0.31が床の額に当たる。
確率:介護の人手不足の深刻化と、葬儀社の内製化・葬儀の簡素化が同時に起きる複合の負け筋。介護の現場は人材の取り合いで、すでに稼働が落ちている。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
在宅介護サービス
デイサービス・訪問入浴・訪問介護・訪問看護・ケアプラン作成。東京23区中心で施設は賃借。
| 数量年間の延べ利用回数(万回・推定) | 価格1回あたり平均売上(億円/万回・名目、介護報酬) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 670 | 0.10 | 64 | 2 |
| 10 年後 中立 | 650 | 0.12 | 75 | 2 |
取り方:売上63.65億円・セグメント利益1.88億円は開示。1回あたり平均売上を約0.95万円(デイ約0.8万円、訪問入浴約1.3万円、訪問介護約0.4万円の加重)と置き、延べ利用回数を約670万回と推定した(回数は開示で確認できず推定)。AI エージェント代替は現場の体の仕事なので、事務部分を除き置いていない。
シニア向け総合サービス(エンゼルケア)
湯灌を基にしたエンゼルケア。葬儀社経由が中心。全国に出店中。
| 数量年間の施行件数(千件・推定) | 価格1件あたり平均売上(億円/千件・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 35.6 | 0.80 | 29 | 6 |
| 10 年後 中立 | 39.9 | 1.04 | 42 | 9 |
取り方:売上28.51億円・セグメント利益6.43億円は開示。1件あたり平均売上を約8万円と置き、施行件数を約3.6万件(全国の死亡数約160万人の約2%)と推定した(件数は開示で確認できず推定。配食など他の売上が含まれる可能性があり、件数は上限に近い)。
リスクと懸念
共通費の重さ
部門の利益を足すと約8億円あるのに、会社全体の営業利益は1.3億円しか残らない。差の約7億円は本社・システム・採用などの共通費だ。第二創業期の投資で、この費用はさらに膨らむ。売上の伸びで薄められなければ、利益は戻らない。
介護報酬の遅れと人手不足
介護の収入は国が決める報酬で決まり、物価が年3%で上がっても改定は後れる。人件費の上昇に価格が追いつかなければ、利益率は削られる。訪問入浴は人手不足で車の稼働が減っており、売上の天井にもなっている。
葬儀の簡素化と内製化
全国の葬儀件数は減り、直葬や家族葬が増えて、1件あたりの規模も小さくなっている。会社自身が施行件数の減少を認めた。葬儀社が身支度を自前で行えば、外注のエンゼルケアは奪われる。高い利益率の源が、最も揺らぎやすい。
AI エージェント代替
介護の現場とエンゼルケアは人の体を使う仕事で、AIに置き換わりにくい。ただ、本社の事務、請求、シフト管理は代替の対象になりうる。逆に、省力化が進めば共通費を圧縮できる余地もある。10年の見立てでは、この効果は小さな上積みにとどめた。
施設の家賃と更新費
デイなどの施設は借りて運営する。家賃は売上が落ちても払う固定費で、悲観では重く残る。新リース会計基準(2028年3月期から)で数字の形は変わるが、中身の負担は変わらない。車両や設備の更新も物価で高くつく。
配当と現金の取り崩し
今期の配当性向は100%を超える見込みで、利益で配当を賄えていない。現金に支えられて続く形だが、投資が成果を出す前に現金が減る可能性がある。純現金16億円は事業の運転資金でもあり、全部が自由に使えるわけではない。
今後の分かれ目
- 共通費が実際に減り、営業利益が2億円を超えて定着したら
- 中立の利益水準を引き上げ、楽観・やや楽観の確率を上げる。共通費の圧縮が10年の最大の分かれ目になる。
- エンゼルケアの新規出店が成功し、施行件数が増え続けたら
- シニア向けの数量を上方修正し、中立の件数の伸びを高める。
- 介護報酬の改定が物価の上昇率に近づく水準で決まったら
- 介護の価格の前提を上げ、やや悲観の確率を下げる。
- 葬儀社が身支度を自前で行う動きが広がり、提携先の件数が減ったら
- エンゼルケアの数量を下げ、悲観側に重みを移す。
- 配当が減らされる、または投資の失敗が開示されたら
- 現金の戻り方を0.75から下げ、価値を引き下げる。
見ておくもの
- 四半期ごとのセグメント利益と、共通費の水準
- エンゼルケアの新規出店数と施行件数
- 介護報酬の改定の方向と、訪問入浴・デイの利用回数
- 配当方針と、投資に使った現金の額
倍率と資本コストの決め方
倍率は、事業の純利益÷自己資本と資本コスト7.75%、長期の成長率4%から、利益ベースの正当化PER(ROEがkを上回る分は先で半分薄れる)で決めた。今の株価や過去のPER・PBRには寄せていない。中立の10年後のPERは11倍で、今の時価総額(26億円)は見ていない。余った現金9億円は、事業に要る運転資金(給与の約1.5か月分と家賃)を除いて分け、戻り方0.75で足した。数量は実質、価格は名目。介護は報酬が物価に遅れるので10年1.22倍、エンゼルケアは自由価格で1.30倍とし、物価の二重がけはしていない。共通費も物価で増やした(過去に削減の実績がないため)。新リース会計基準(2028年3月期から)で数字の形が変わるが、10年後の数字は今と同じ形(家賃を費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15→18.79 倍・やや楽観 PER 14.2→16.81 倍・中立 PER 13.4→13.9 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。